特開2018-188572(P2018-188572A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JXTGエネルギー株式会社の特許一覧
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-188572(P2018-188572A)
(43)【公開日】2018年11月29日
(54)【発明の名称】オリゴマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20181102BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20181102BHJP
【FI】
   C08F4/6592
   C08F10/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-93381(P2017-93381)
(22)【出願日】2017年5月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】相田 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】田川 一生
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA02
4J128AB00
4J128AC28
4J128AC46
4J128AD06
4J128AD13
4J128AF03
4J128BA00A
4J128BA02B
4J128BB00A
4J128BB02B
4J128BC15B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EC01
4J128FA02
4J128GA02
(57)【要約】
【課題】エチレンのオリゴマー化において、所望の分子量を有するオリゴマーを効率よく得ることができるオリゴマーの製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)一般式(1)で表されるrac−エチリデンインデニルジルコニウム化合物、(B)一般式(2)で表される鉄化合物、(C)メチルアルミノキサンおよび/またはホウ素化合物、ならびに、(D)有機亜鉛化合物および/またはメチルアルミノキサン以外の有機アルミニウム化合物、を含む触媒の存在下、エチレンをオリゴマー化させる工程を備える、オリゴマーの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表されるrac−エチリデンインデニルジルコニウム化合物、
(B)下記一般式(2)で表される鉄化合物、
(C)メチルアルミノキサンおよび/またはホウ素化合物、ならびに、
(D)有機亜鉛化合物および/またはメチルアルミノキサン以外の有機アルミニウム化合物、
を含む触媒の存在下、エチレンをオリゴマー化させる工程を備える、オリゴマーの製造方法。
【化1】

[式(1)中、Xはハロゲン原子、水素原子または炭素数1〜6のヒドロカルビル基を示す。]
【化2】

[式(2)中、Rは炭素数1〜6のヒドロカルビル基または炭素数6〜12の芳香族基を示し、同一分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよく、R’は酸素原子および/または窒素原子を有する炭素数0〜6の遊離基を示し、同一分子中の複数のR’は同一でも異なっていてもよく、Yは塩素原子または臭素原子を示す。]
【請求項2】
前記オリゴマーの数平均分子量(Mn)が200〜5000である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機アルミニウム化合物が、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドおよびエチルアルミニウムセスキクロライドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記有機亜鉛化合物が、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛およびジフェニル亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ホウ素化合物が、トリスペンタフルオロフェニルボラン、リチウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、ナトリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、リチウムテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレートおよびトリチルテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴマーの製造方法に関し、詳しくは、エチレンからオリゴマーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンおよびα−オレフィンの共重合に用いられる触媒としては、メタロセン化合物とメチルアルミノキサンとからなる触媒、パラジウム系触媒、鉄錯体、コバルト錯体等が知られている(非特許文献1〜3、特許文献1〜3)。
【0003】
また、鉄錯体は、エチレン重合の触媒としても知られている(非特許文献4〜6)。
【0004】
また、ブロックコポリマーを製造するための触媒として、ジエチル亜鉛、メタロセン化合物、パラジウム系触媒とジアルキル亜鉛とからなる触媒が知られている(非特許文献7、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2000−516295号公報
【特許文献2】特開2002−302510号公報
【特許文献3】中国特許出願公開第102432415号明細書
【特許文献4】特表2007−529616号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Macromol.Chem.Phys.」,197巻,1996年,p.3907
【非特許文献2】「J.Am.Chem.Soc.」,117巻,1995年,p.6414
【非特許文献3】「J.Am.Chem.Soc.」,120巻,1998年,p.7143
【非特許文献4】「J.Mol.Cat.A:Chemical」,179巻,2002年,p.155
【非特許文献5】「Appl.Cat.A:General」,403巻,2011年,p.25
【非特許文献6】「Organometallics」,28巻,2009年,p.3225
【非特許文献7】「Science」,312巻,2006年,p.714
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、エチレンのオリゴマー化において、所望の分子量を有するオリゴマーを効率よく得ることができるオリゴマーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、(A)下記一般式(1)で表されるrac−エチリデンインデニルジルコニウム化合物、(B)下記一般式(2)で表される鉄化合物、(C)メチルアルミノキサンおよび/またはホウ素化合物、ならびに、(D)有機亜鉛化合物および/またはメチルアルミノキサン以外の有機アルミニウム化合物、を含む触媒の存在下、エチレンをオリゴマー化させる工程を備える、オリゴマーの製造方法を提供する。
【0009】
【化1】

[式(1)中、Xはハロゲン原子、水素原子または炭素数1〜6のヒドロカルビル基を示す。]
【0010】
【化2】

[式(2)中、Rは炭素数1〜6のヒドロカルビル基または炭素数6〜12の芳香族基を示し、同一分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよく、R’は酸素原子および/または窒素原子を有する炭素数0〜6の遊離基を示し、同一分子中の複数のR’は同一でも異なっていてもよく、Yは塩素原子または臭素原子を示す。]
【0011】
上記本発明の製造方法によれば、エチレンのオリゴマー化において、得られるオリゴマーを効率よく所望の分子量まで向上させることができるとともに、ポリマー化の進行を十分に抑制することができる。
【0012】
上記製造方法においては、得られるオリゴマーの数平均分子量(Mn)を200〜5000とすることができる。
【0013】
有機アルミニウム化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドおよびエチルアルミニウムセスキクロライドからなる群より選ばれる少なくとも1種とすることができる。
【0014】
有機亜鉛化合物は、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛およびジフェニル亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種とすることができる。
【0015】
ホウ素化合物は、トリスペンタフルオロフェニルボラン、リチウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、ナトリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、リチウムテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレートおよびトリチルテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレートからなる群より選ばれる少なくとも1種とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エチレンのオリゴマー化において、所望の分子量を有するオリゴマーを効率よく得ることができるオリゴマーの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
[触媒]
本実施形態に係る、エチレンのオリゴマー化のための触媒は、(A)rac−エチリデンインデニルジルコニウム化合物、(B)鉄化合物、(C)メチルアルミノキサンおよび/またはホウ素化合物、ならびに、(D)有機亜鉛化合物および/またはメチルアルミノキサン以外の有機アルミニウム化合物、を含む。
【0019】
以下、各成分について説明する。
【0020】
<(A)rac−エチリデンインデニルジルコニウム化合物>
本実施形態において、(A)rac−エチリデンインデニルジルコニウム化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0021】
【化3】
【0022】
式(1)中、Xはハロゲン原子、水素原子または炭素数1〜6のヒドロカルビル基を示す。このような化合物として具体的には、rac−エチリデンインデニルジルコニウムジクロライド、rac−エチリデンインデニルジルコニウムジブロマイド、rac−エチリデンインデニルジルコニウムジハイドライド、rac−エチリデンインデニルジルコニウムハイドライドクロライド、rac−エチリデンインデニルジルコニウムジメチル等が挙げられる。これらの中でも、入手の容易性の観点からrac−エチリデンインデニルジルコニウムジクロライドが好ましい。これらrac−エチリデンインデニルジルコニウム化合物は1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0023】
<(B)鉄化合物>
本実施形態において、(B)鉄化合物は、下記一般式(2)で表される。
【0024】
【化4】
【0025】
式(2)中、Rは炭素数1〜6のヒドロカルビル基または炭素数6〜12の芳香族基を示し、同一分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよい。Rの具体例としては、メチル基、フェニル基等が挙げられる。R’は酸素原子および/または窒素原子を有する炭素数0〜6の遊離基を示し、同一分子中の複数のR’は同一でも異なっていてもよい。R’の具体例としては、水素原子、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ニトロ基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、3級ブチル基、ヘキシル基、フェニル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。Yは塩素原子または臭素原子を示す。このような化合物として具体的には、下記一般式(2a)〜(2h)で表される各化合物が挙げられる。これら鉄化合物は1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
【化10】
【0032】
【化11】
【0033】
【化12】
【0034】
一般式(2)で表される鉄化合物において、配位子を構成するジイミン化合物(以下、単にジイミン化合物ということもある)は、例えば、ジベンゾイルピリジンおよびアニリン化合物を、酸の存在下、脱水縮合することで合成することができる。
【0035】
上記ジイミン化合物の製造方法の好ましい態様は、2,6−ジベンゾイルピリジン、アニリン化合物、および酸を溶媒に溶解し、溶媒加熱還流下で脱水縮合させる第1工程と、
【0036】
第1工程後の反応混合物について分離・精製処理を行い、ジイミン化合物を得る工程と、を備える。
【0037】
第1工程で用いられる酸としては、例えば有機アルミニウム化合物を用いることができる。有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミノキサン等が挙げられる。
【0038】
第1工程で用いられる酸としては、上記有機アルミニウム化合物のほかに、プロトン酸を用いることもできる。プロトン酸は、プロトンを供与する酸触媒として用いられる。用いるプロトン酸は、特に制限されないが、好ましくは有機酸である。このようなプロトン酸としては、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられる。これらのプロトン酸を使用する場合、水の副生を抑制する観点から、ディーンスタークウォーターセパレーター等で水を除去することが好ましい。また、モレキュラーシーブス等の吸着剤の存在下で反応を行うことも可能である。プロトン酸の添加量は特に制限されず、触媒量であればよい。
【0039】
また、第1工程で用いられる溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒等が挙げられる。炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0040】
第1工程における反応条件は、原料化合物、酸および溶媒の種類ならびに量に応じて、適宜選択することができる。
【0041】
また、第2工程における分離・精製処理としては、特に制限されず、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶法等が挙げられる。特に、酸として上述した有機アルミニウム化合物を使用する場合には、反応溶液を塩基性水溶液と混合し、アルミニウムを分解・除去したのち、精製することが好ましい。
【0042】
本実施形態に係る鉄化合物は、中心金属として鉄を含有する。上記ジイミン化合物と、鉄との混合方法は特、特に制限されず、例えば、
(i)ジイミン化合物を溶解させた溶液に鉄の塩(以下、単に「塩」ということもある)を添加、混合する方法、
(ii)ジイミン化合物を溶解させた溶液および塩を溶解させた溶液を混合する方法、
(iii)ジイミン化合物と塩とを、溶媒を用いずに物理的に混合する方法、
などが挙げられる。
【0043】
また、ジイミン化合物と鉄との混合物から錯体を取り出す方法としては、特に制限されず、例えば、
(a)混合物に溶媒を使用した場合には溶媒を留去し、固形物をろ別する方法、
(b)混合物から生じた沈殿をろ別する方法、
(c)混合物に貧溶媒を加えて沈殿を精製させ、ろ別する方法、
(d)無溶媒混合物をそのまま取り出す方法、
などが挙げられる。この後さらに、ジイミン化合物を溶解可能な溶剤による洗浄処理、金属を溶解可能な溶剤による洗浄処理、適当な溶媒を用いた再結晶処理等を施してもよい。
【0044】
鉄の塩としては、例えば、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、アセチルアセトン鉄(II)、アセチルアセトン鉄(III)、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、等が挙げられる。これらの塩に溶媒、水等の配位子を有するものを用いてもよい。これらの中でも、鉄(II)の塩が好ましく、塩化鉄(II)がより好ましい。
【0045】
また、ジイミン化合物と鉄とを接触させる溶媒としては、特に制限されず、無極性溶媒および極性溶媒のいずれも使用できる。無極性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶媒などが挙げられる。極性溶媒としては、アルコール溶媒等の極性プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン等の極性非プロトン性溶媒などが挙げられる。アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。特に混合物をそのまま触媒として使用する場合には、エチレン重合に実質的に影響がない炭化水素系溶媒を使用することが好ましい。
【0046】
また、ジイミン化合物と鉄とを接触させる際の両者の混合比は、特に制限されない。ジイミン化合物/鉄の比の下限は、モル比で、好ましくは0.2/1以上、より好ましくは、0.3/1以上、さらに好ましくは0.5/1以上であり、ジイミン化合物/鉄の比の上限は、モル比で、好ましくは5/1以下、より好ましくは3/1以下、さらに好ましくは2/1である。なお、ジイミン化合物/鉄の比は、モル比で、特に好ましくは1である。
【0047】
ジイミン化合物における二つのイミン部位は、いずれもE体であることが好ましいが、いずれもE体であるジイミン化合物が含まれていれば、Z体を含むジイミン化合物を含んでいてもよい。Z体を含むジイミン化合物は、金属と錯体を形成しにくいことから、系内で錯体を形成させた後、溶媒洗浄等の精製工程で容易に除去することが可能である。
【0048】
<(C)メチルアルミノキサン、ホウ素化合物>
本実施形態に係る触媒は、(C)メチルアルミノキサンおよび/またはホウ素化合物を含む。
【0049】
メチルアルミノキサンは、溶媒で希釈された市販品を使用することができるほか、溶媒中でトリメチルアルミニウムを部分加水分解したものも使用できる。当該メチルアルミノキサンに未反応のトリメチルアルミニウムが残存している場合には、当該未反応のトリメチルアルミニウムを下記で詳述する(D)成分として用いてもよいし、トリメチルアルミニウムおよび溶媒を減圧下で留去した乾燥メチルアルミノキサンとして用いてもよい。また、トリメチルアルミニウムの部分加水分解の際に、トリイソブチルアルミニウムのようなトリメチルアルミニウム以外のトリアルキルアルミニウムを共存させ、共部分加水分解した修飾メチルアルミノキサンも使用することができる。この場合も同様に、残存するトリアルキルアルミニウムが存在する場合には、当該未反応のトリアルキルアルミニウムを下記で詳述する(D)成分として用いてもよいし、トリアルキルアルミニウムおよび溶媒を留去した乾燥修飾メチルアルミノキサンとして使用してもよい。
【0050】
ホウ素化合物としては、例えば、トリスペンタフルオロフェニルボラン等のアリールホウ素化合物が挙げられる。また、ホウ素化合物は、アニオン種を有するホウ素化合物を用いることができる。例えば、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、テトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート等のアリールボレートなどが挙げられる。アリールボレートの具体例としては、リチウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、ナトリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、リチウムテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート等が挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレートまたはトリチルテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレートが好ましい。これらホウ素化合物は1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0051】
<(D)有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物>
本実施形態に係る触媒は、(D)有機亜鉛化合物および/またはメチルアルミノキサン以外の有機アルミニウム化合物を含む。
【0052】
有機亜鉛化合物の具体例としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛等のアルキル亜鉛、ジフェニル亜鉛等のアリール亜鉛などが挙げられる。また、有機亜鉛化合物は、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等のハロゲン化亜鉛と、アルキルリチウム、アリールグリニア、アルキルグリニア、下記の有機アルミニウム化合物等とを作用させて、反応系内で有機亜鉛化合物を形成させてもよい。これら有機亜鉛化合物は1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0053】
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド等が挙げられる。これら有機アルミニウム化合物は1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0054】
また、(A)および(B)の含有量のモル数の合計をYとしたときの、当該Yおよび(C)の含有割合は、(C)としてメチルアルミノキサンのみを使用する場合、モル比でY/(C−Al)の下限が、1/1000以上であることが好ましく、1/500以上であることがより好ましい。一方、Y/(C−A1)の上限は、1/10以下であることが好ましく、1/20以下であることがより好ましい。(A)および(B)の合計量と、(C−Al)との含有割合が上記範囲内であれば、より十分な重合活性を発現しつつ、コストアップの要因を抑制することができる。なお、(C−Al)は、メチルアルミノキサンにおけるアルミニウム原子のモル数を表す。
【0055】
一方、(C)としてホウ素化合物のみを使用する場合、モル比でY/(C−B)の下限が、1/10以上であることが好ましく、1/2以上であることがより好ましい。一方、Y/(C−B)の上限は、10/1以下であることが好ましく、2/1以下であることがより好ましい。(A)および(B)の合計量と、(C−B)との含有割合が上記範囲内であれば、より十分な重合活性を発現しつつ、コストアップの要因を抑制することができる。なお、(C−B)は、ホウ素化合物のモル数を表す。(C)としてホウ素化合物のみを使用する場合には、特に(A)および(B)についてアルキル錯体を用いたり、アルキル錯体へと変換したりする操作を加えることが好ましい。アルキル錯体へと変換する方法としては、例えば、メチル錯体への変換で例示すると、トリメチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物、ジメチル亜鉛等の有機亜鉛化合物、メチルリチウム等の有機リチウム化合物、メチルマグネシウムクロライド等のグリニア化合物などと、(A)または(B)とを接触させることで、(A)または(B)のメチル錯体へと変換することが挙げられる。なお、ここで挙げた有機アルミニウム化合物および有機亜鉛化合物は、上記(D)に記載のものが使用できる。
【0056】
(C)としてメチルアルミノキサンとホウ素化合物とを併用して使用する場合、モル比でY/(C−Al)が1/100以上でありかつY/(C−B)が1/10以上であることが好ましく、Y/(C−Al)が1/50以上でありかつY/(C−B)が1/2以上であることがより好ましい。また、モル比の上限は、Y/(C−Al)が1/1以下でありかつY/(C−B)が1/1以下であることが好ましい。(A)および(B)の合計量と、(C−Al)との含有割合並びに(A)および(B)の合計量と、(C−B)の含有割合が上記範囲内であれば、より十分な重合活性を発現しつつ、コストアップの要因を抑制することができる。さらに、上述した(A)および(B)のアルキル錯体への変換も同時に行うことができる。
【0057】
また、上記Yおよび(D)の含有割合は、モル比でY/(D)の下限が、1/1000以上であることが好ましく、1/800以上であることがより好ましい。一方、Y/(D)の上限は、1以下であることが好ましく、1/10以下であることがより好ましい。(A)および(B)の合計量と、(D)との含有割合が上記範囲内であれば、錯体(A)および(B)による連鎖組み換え重合の効果が顕著に表れ、反応効率をより効果的に向上させるとともに、より適切な分子量を有するオリゴマーを製造することができる。なお、上記(D)の含有割合は、(D)として有機アルミニウム化合物を用いる場合、有機アルミニウム化合物におけるアルミニウム原子のモル数を表す。
【0058】
[オリゴマーの製造方法]
本実施形態に係る製造方法においては、上記の触媒の存在下、エチレンをオリゴマー化させる工程を備える。
【0059】
本実施形態におけるオリゴマーの製造方法において、反応溶媒は、重合反応を良好に行う観点から、無極性溶媒であることが好ましい。無極性溶媒としては、例えば、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0060】
本実施形態における反応温度は、特に限定されないが、例えば、下限が0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。一方、反応温度の上限は、例えば、100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。反応温度が0℃以上であれば、冷却に多大なエネルギーを要することなく効率的に反応を行うことができ、100℃以下であれば、(B)鉄化合物の活性低下を抑制することができる。また、反応圧力についても特に限定されないが、例えば、下限が100kPa以上であることが好ましく、上限が5MPa以下であることが好ましい。反応時間についても特に限定されないが、例えば、下限が1分以上であることが好ましく、上限が24時間以下であることが好ましい。
【0061】
本実施形態における上記の製造方法によって得られるオリゴマーは、さらに無色透明であるため、例えば潤滑油組成物の成分として好適に使用することができる。
【0062】
本実施形態における上記の製造方法によって得られるオリゴマーとは、数平均分子量(Mn)の下限が、例えば200以上であり、好ましくは300以上である。また、Mnの上限は、例えば5000以下であり、好ましくは4000以下である。なお、オリゴマーの数平均分子量(Mn)は、例えば、GPC装置を用い、標準ポリスチレンから作成した検量線に基づき、ポリスチレン換算量として求めることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例にて本発明を例証するが、以下の実施例は本発明を限定することを意図するものではない。
【0064】
<触媒の製造およびオリゴマーの製造>
[材料の準備]
rac−エチリデンビスインデニルジルコニウムクロライドは、和光純薬から購入したものをそのまま用いた。鉄化合物は、後述する合成例に示した方法で合成を行った。その際用いた試薬類は購入品をそのまま用いた。トリメチルアルミニウムは日本アルキルアルミ製のものを乾燥トルエンで希釈して使用した。ジエチル亜鉛は東京化成製のトルエン溶液をそのまま使用した。メチルアルミノキサンは東ソーファインケム製、TMAO−341をそのまま用いた。トリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレートは東京化成製のものをそのまま用いた。
エチレンは住友精化製の高純度液化エチレンを使用し、モレキュラーシーブ4Aを通して乾燥して使用した。
溶媒のトルエンは、アルドリッチ製の脱水トルエンをそのまま使用した。
【0065】
[数平均分子量(Mn)の測定]
高温GPC装置(ポリマーラボラトリーズ社製、商品名:PL−20)にカラム(ポリマーラボラトリーズ社製、商品名:PL gel 10μm MIXED−B LS)を2本連結し、示差屈折率検出器とした。試料5mgにオルトジクロロベンゼン溶媒5mlを加え、140℃で約1時間加熱撹拌した。このように溶解した試料を流速1ml/分、カラムオーブンの温度を140℃に設定して、測定を行った。分子量の換算は、標準ポリスチレンから作成した検量線に基づいて行い、ポリスチレン換算分子量を求めた。
【0066】
[触媒効率の算出]
得られたオリゴマーの重量を、仕込んだ触媒のモル数の合計で割ることにより、触媒効率を算出した。
【0067】
[ジイミン化合物の合成]
2−メチル−4−メトキシアニリン(2.0893g、15.3mmol)(東京化成製)と2,6−ジアセチルピリジン(1.2429g、7.6mmol)(東京化成製)、モレキュラーシーブ4A(5.0g)、触媒量のパラトルエンスルホン酸を乾燥トルエン(60ml)に分散し、ディーンスタークウォーターセパレーターを利用して、水を除去しながら24時間加熱還流しながら撹拌した。
【0068】
反応液からモレキュラーシーブをろ過で除き、トルエンでモレキュラーシーブを洗浄した。洗浄液とろ過した反応液を混合して濃縮乾固し、粗固体(2.8241g)を得た。ここで得られた粗固体(2g)を量りとり、無水エタノール(30ml)で洗浄した。エタノール不溶固体をろ別して、その不溶固体をさらにエタノールで洗浄した。残存固体を十分に乾燥して下記ジイミン化合物を収率50%で得た。
【0069】
H−NMR(600MHz,CDCl):2.1(s,6H),2.4(s,6H),3.8(s,6H),6.6(m,2H),6.7(m,2H),6.8(m,2H),7.9(m,1H),8.4(m,2H)
13C−NMR(600MHz,CDCl):16、18,56,116,119,122,125,129,137,138,143,156,167
【0070】
【化13】
【0071】
[鉄化合物の合成]
FeCl・4HO(0.2401g、1.2mmol)(関東化学製)を脱水テトラヒドロフラン(30ml)(アルドリッチ製)に溶解し、先に合成したジイミン化合物(0.4843g、1.2mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10ml)を加えた。黄色のジイミン化合物を加えることで、瞬時に暗緑色のテトラヒドロフラン溶液となった。さらに、室温にて2時間撹拌した。反応液から溶媒を蒸発乾固させ、析出した固体を脱水エタノールでろ液に色がなくなるまで洗浄を続けた。さらに洗浄した固体を脱水ジエチルエーテルで洗浄し、溶媒を除去して鉄錯体を得た。得られた鉄化合物は、FD−MASSにて527.0820(計算値:527.0831)が得られたことから、下記の構造を示唆している。
【0072】
【化14】
【0073】
<実施例1>
上記で得られた鉄化合物を脱水トルエンに加えて、鉄化合物の濃度が2mMの溶液(A)を調製した。同様に、rac−エチリデンインデニルジルコニウムジクロライドを脱水トルエンに加えて、濃度が2mMの溶液(B)を調製した。50mlナスフラスコに脱水トルエン20mlを入れ、続いて溶液(A)0.5mlおよび溶液(B)0.5mlを加え、さらにTMAO−341(3.46Mヘキサン溶液、0.03ml、ジルコニウムと鉄のモル数の合計を「金属」として、Al/金属=50)を加えた後、トリメチルアルミニウム(2Mトルエン溶液、0.05ml、Al/金属=50)を加え、触媒を作製した。
【0074】
乾燥トルエン(80ml)が導入されたオートクレーブに、上記で作製した触媒を加え、室温(25℃)で0.19MPaのエチレンを連続的に導入した。30分後にエチレンの導入を止め、未反応のエチレンを除去し、窒素でオートクレーブ内のエチレンをパージし、ごく少量のエタノールを加えた。オートクレーブを開放し、内容物を200mlナスフラスコに移して、溶媒を減圧留去することで、半固形物のオリゴマーを得た。触媒効率(C.E.)は3343kg/金属 molであった。また、得られたオリゴマーのMnは320であった。
【0075】
<実施例2>
エチレンの導入時間を60分間とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。触媒効率(C.E.)は4645kg/金属 molであった。また、得られたオリゴマーのMnは310であった。
【0076】
<実施例3>
トリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(ホウ素化合物)を脱水トルエンに溶解して、当該ホウ素化合物の濃度が2mMの溶液(C)を調製した。50mlナスフラスコに脱水トルエン20mlを入れ、続いて溶液(A)0.5mlおよび溶液(B)0.5mlを加え、さらに溶液(C)(1ml、ホウ素/金属=1/1)を加えた後、トリメチルアルミニウム(2Mトルエン溶液、0.05ml、Al/金属=50)を加え、触媒を作製した。
【0077】
乾燥トルエン(80ml)が導入されたオートクレーブに、上記で作製した触媒を加え、10℃で0.19MPaのエチレンを連続的に導入した。60分後にエチレンの導入を止め、未反応のエチレンを除去し、窒素でオートクレーブ内のエチレンをパージし、ごく少量のエタノールを加えた。オートクレーブを開放し、内容物を200mlナスフラスコに移して、溶媒を減圧留去することで、半固形物のオリゴマーを得た。触媒効率(C.E.)は5148kg/金属 molであった。また、得られたオリゴマーのMnは340であった。
【0078】
<比較例1>
50mlナスフラスコに脱水トルエン20mlを入れ、続いて溶液(A)0.5mlを加え、さらにトリメチルアルミニウム(2Mトルエン溶液、0.05ml、Al/Fe=500)を加え、触媒を作製した。
【0079】
乾燥トルエン(80ml)が導入されたオートクレーブに、上記で作製した触媒を加え、室温(25℃)で0.19MPaのエチレンを連続的に導入した。30分後にエチレンの導入を止め、未反応のエチレンを除去し、窒素でオートクレーブ内のエチレンをパージし、ごく少量のエタノールを加えた。オートクレーブを開放し、内容物を200mlナスフラスコに移して、溶媒を減圧留去することで、半固形物のオリゴマーを得た。触媒効率(C.E.)は1395kg/Fe molであった。また、得られたオリゴマーのMnは370であった。