(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-189845(P2018-189845A)
(43)【公開日】2018年11月29日
(54)【発明の名称】光伝送モジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 6/26 20060101AFI20181102BHJP
【FI】
G02B6/26
G02B6/26 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-93311(P2017-93311)
(22)【出願日】2017年5月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(74)【代理人】
【識別番号】100109689
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 結
(72)【発明者】
【氏名】小林 茂
【テーマコード(参考)】
2H137
【Fターム(参考)】
2H137AB01
2H137AB15
2H137BA04
2H137BC58
(57)【要約】
【課題】光信号伝送能を高周波側に延ばす構造が採用された光伝送モジュールを提供する。
【解決手段】光伝送モジュール10は、拡散板11と光ファイバ12を備えている。光ファイバ12は、入射端121と出射端122とを有する。拡散板11は、光ファイバ12の入射端121(または光ファイバ12の途中位置)に配置されている。そして、この光伝送モジュール10は、拡散板11を配置しない場合と比べ、光信号伝送能が高周波側に延びている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射端と出射端とを有する導光体と、該導光体の入射端または該導光体の途中位置に配置された、光信号伝送能を高周波側に延ばす拡散板とを備えたことを特徴とする光伝送モジュール。
【請求項2】
前記導光体が、さらに光コネクタを備えていることを特徴とする請求項1に記載の光伝送モジュール。
【請求項3】
前記導光体が、ステップインデックス型マルチモード光ファイバであることを特徴とする請求項1または2に記載の光伝送モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射された信号光を伝送する光伝送モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光信号を伝送するための、光ファイバ等の導光体として、種々のタイプのものが開発されて利用に供せられている。ここで、光信号伝送用として高周波信号まで伝送することができる高性能な導光体も知られている。ただし、そのような高性能な導光体は一般的に高価である。そこで、比較的安価な導光体を採用しながら高周波信号まで伝送することの可能性が追及されている。
【0003】
特許文献1には、光導波路から得られた光を位相補償板を用いてガウス分布に近づくまで集光する集光光学系が開示されている。しかしながら、この特許文献1には、光信号伝送能を高周波側に延ばす点については何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−54658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、光信号伝送能を高周波側に延ばす構造が採用された光伝送モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の光伝送モジュールは、入射端と出射端とを有する導光体と、導光体の入射端または導光体の途中位置に配置された、光信号伝送能を高周波側に延ばす拡散板とを備えたことを特徴とする。
【0007】
ここで、本発明の光伝送モジュールにおいて、上記導光体が、さらに光コネクタを備えていてもよい。
【0008】
安価な導光体を採用すると、その導光体に入射した信号光は、その導光体内を進行している途中でそのプロファイルが徐々に変化し、その変化に応じて、光信号、特に高周波信号が劣化してくる。導光体の途中位置に光コネクタを配置するとその光コネクタによってもプロファイルが変化し、高周波信号の劣化が進む。
【0009】
本発明の発明者は、実験により、拡散板で光のプロファイルを大きく広げて、そのプロファイルが広がった光を導光体で伝送させると、高周波信号の劣化が抑えられることを見い出した。すなわち、本発明によれば、光信号伝送能が高周波側に延びた光伝送モジュールとなる。
【0010】
本発明の光伝送モジュールでは、上記導光体として、ステップインデックス型マルチモード光ファイバが好適に採用される。
【0011】
ステップインデックス型マルチモード光ファイバは、比較的安価である。本発明の光伝送モジュールによれば、この比較的安価なステップインデックス型マルチモード光ファイバを採用して、光信号伝送能を高周波側に延ばすことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上の本発明によれば、光信号伝送能が高周波側に延びた光伝送モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態の光伝送モジュールの原理説明図である。
【
図2】
図1に原理説明図を示した光伝送モジュールの模式図である。
【
図3】本発明の第2実施形態の光伝送モジュールの原理説明図である。
【
図4】
図3に原理説明図を示した光伝送モジュールの模式図である。
【
図5】光伝送モジュールの入射光および出射光のプロファイルを示した図である。
【
図6】光伝送モジュールの周波数特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態の光伝送モジュールの原理説明図である。
【0016】
この
図1に示す光伝送モジュール10は、拡散板11と光ファイバ12とを備えている。ここで、光ファイバ12は、本発明にいう導光体の一例であって、入射端121と出射端122とを有する。本実施形態では、光ファイバ12として、長さ1.2mのものが採用されている。また、本実施形態では、光ファイバ12として、ステップインデックス型マルチモード光ファイバが採用されている。
【0017】
拡散板11は、本実施形態では、光ファイバ12の入射端121に配置されている。この拡散板11としては、大きな拡散角度を有する拡散板が望ましい。本実施形態では、拡散角度60°の拡散板が採用されている。
【0018】
また、この
図1には、光源21と集光光学系22が示されている。光源21からは、光の変調により情報を担持した信号光が出射する。集光光学系22は、光源21からの出射光を集光し拡散板11を介して光ファイバ12に、その入射端121から入射させる。この集光光学系22は開口数(NA)が大きいことが好ましく、ここでは開口数0.4の集光光学系が採用されている。
【0019】
図2は、
図1に原理説明図を示した光伝送モジュールの模式図である。
【0020】
図1にも示した拡散板11と光ファイバ12は、一体の光伝送モジュール10として構成される。この光伝送モジュール10に上記の収束光を入射すると、拡散板11が配置されていない場合と比べ、光ファイバ12内を進行する信号光の高周波側の周波数特性の劣化が抑えられる。
【0021】
図3は、本発明の第2実施形態の光伝送モジュールの原理説明図である。ここでは、
図1に示した第1実施形態の光伝送モジュール10との相違点を中心に説明する。
【0022】
この
図3に示す光伝送モジュール30は、拡散板31と、光ファイバ32と、光コネクタ33とを備えている。ここで、光ファイバ32は、本発明にいう導光体の一例であって、入射端321と出射端322とを有する。本実施形態では、光ファイバ32として、
図1に示した第1実施形態の場合と同様、ステップインデックス型マルチモード光ファイバが採用されている。また、拡散板31も、
図1に示した第1実施形態における拡散板11と同様、拡散角度60°の拡散板が採用されている。この拡散板31は光コネクタ33内に配置されている。すなわち、この光ファイバ31は、その途中が、拡散板31が配置された光コネクタ33で接続されている。
【0023】
また、この
図3には、
図1と同様、光源21と集光光学系22が示されている。
【0024】
ここで、この第2実施形態の場合、拡散板31は、光ファイバ32の途中位置に配置されている。このため、集光光学系22は、光源21からの信号光を光ファイバ32の入射端321から光ファイバ32に効率よく入射させることができればよく、大きなNAを有している必要はない。
【0025】
図4は、
図3に原理説明図を示した光伝送モジュールの模式図である。
【0026】
図3に示した拡散板31と光ファイバ32と光コネクタ33は、一体の光伝送モジュール30として構成される。この光伝送モジュール30の入射端321から光を入射すると、拡散板31によりそのプロファイルが広げられ、光信号伝送能が高周波側に延びた信号光が伝送される。
【0027】
図5は、光伝送モジュールの入射光および出射光のプロファイルを示した図である。
【0028】
この
図5において、横軸は放射角度(°)、縦軸はEAF(Encircled Angular Flux)である。このEAFは、光ビームの、横軸に示す放射角度(°)以内に、その光ビームの何割の光強度が含まれているかを示す指標である。
【0029】
グラフaは、光源からの出射光、すなわち光伝送モジュールへの入射光のEAFを示している。また、グラフbは、光ファイバ32からの出射光のEAFである。ただし、このグラフbの場合、
図3に示す光伝送モジュール30を構成する光コネクタ33から拡散板31が取り外されている。ここでは、長さ2mの光ファイバ32が採用されている。このグラフbは、本発明に対する比較例に相当する。このグラフbに示すように、拡散板31が配置されていないと、光ファイバ32への入射光は、その光ファイバ32内を進行する間にそのプロファイルが大きく変化する。
【0030】
グラフcは、
図3に示す、拡散板31が配置された光コネクタ33を備えた光伝送モジュール30の出射光のEAFである。すなわち、このグラフcは、本発明の実施例に相当する。このグラフcに示すように、拡散板31が配置されていると、光ファイバ32からの出射光は、グラフaに示す入射光のプロファイルに近似したプロファイルを保っている。
【0031】
図6は、光伝送モジュールの周波数特性を示した図である。
【0032】
この
図6において、横軸は周波数(MHz)、縦軸は減衰率(dB)である。すなわち、この
図6は、光ファイバに入射した信号光がその光ファイバ内を進行した結果、その信号光がどの程度減衰するかを周波数別に示した図である。ここでは、
図3に示した態様の光伝送モジュールであって、長さ1.2mの光ファイバを採用している。
【0033】
グラフbは、光コネクタ33から拡散板31を取り外し、拡散板31を取り外した光コネクタ33で光ファイバ32を接続したときの周波数特性を示している。このグラフbは、
図5に示したグラフbと同様、本発明に対する比較例に相当する。
【0034】
グラフcは、
図3に示す、拡散板31が配置された光コネクタ33を備えた光伝送モジュール30の周波数特性を示している。すなわち、このグラフcは、本発明の実施例に相当する。ここでは、減衰率−3dBを目安にしてグラフcをグラフbと比較する。この比較により、拡散板31が配置されていると、光信号伝送能が100MHz以上、高周波側に延びていることが分かる。
【0035】
このように、
図3,
図4に示した光伝送モジュール30は、拡散板31に配置により、光信号伝送能が高周波側に延びた光伝送モジュールとなっている。
図1,
図2に示した光伝送モジュール10の場合も同様である。
【符号の説明】
【0036】
10,30 光伝送モジュール
11,31 拡散板
21 光源
22 集光光学系
121,321 入射端
122,322 出射端