【解決手段】この偏光板は、基板と、前記基板に対して突出する複数の凸部と、を備え、前記複数の凸部は、平面視で第1方向に延びる凸部が周期的に配列してなり、前記凸部は、反射層と、先端部と、をそれぞれ有し、前記先端部は、前記反射層より前記基板から離れた位置にあり、前記先端部は、前記基板および前記第1方向と垂直な第1切断面において、先端である第1端部から前記基板側の第2端部に向かって連続的に拡幅し、前記先端部の第1面は連続する第1曲面を含む。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0022】
「偏光板」
図1は、第1実施形態にかかる偏光板100の断面模式図である。偏光板100は、ワイヤグリッド構造を有する偏光板である。偏光板100は、基板10と複数の凸部20とを備える。複数の凸部20は、平面視で第1方向に延びる。以下、基板10が延びる平面をxy平面とし、複数の凸部20の延びる方向をy方向とする。またxy平面に直交する方向をz方向とする。
図1は、偏光板100をxz平面で切断した断面図である。
【0023】
偏光板100は、凸部20が延びるy方向に平行な電界成分をもつ偏光波(TE波(S波))を減衰し、y方向に垂直な電界成分をもつ偏光波(TM波(P波))を透過する。偏光板100は、y方向が吸収軸であり、x方向が透過軸である。
【0024】
(基板)
基板10は、偏光板100の使用帯域の波長の光に対して透明性を有する。「透明性を有する」とは、使用帯域の波長の光を100%透過する必要はなく、偏光板としての機能を保持可能な程度に透過できればよい。基板10の平均厚みは、0.3mm以上1mm以下であることが好ましい。
【0025】
基板10には、屈折率1.1〜2.2の材料を用いることが好ましい。例えば、ガラス、水晶、サファイア等を用いることができる。基板10として用いられるガラス材料の成分組成は特に制限されない。
【0026】
例えばケイ酸塩ガラスは、光学ガラスとして広く流通し、安価である。また石英ガラス(屈折率1.46)、ソーダ石灰ガラス(屈折率1.51)は、コストが安く、透過性に優れる。これに対し水晶、サファイアは、熱伝導性に優れる。基板10の材料は、偏光板100に求められる性能に応じて適宜選択できる。例えば、プロジェクタの光学エンジン用の偏光板は、強い光が照射されるため、耐光性及び放熱性が要求される。そのため、基板10には、水晶又はサファイアを用いることが好ましい。
【0027】
基板10の第1面10aの形状は、平坦面に限られない。例えば基板10は、xz切断面において台形の台座11を第1面10a側に有してもよい。台座11により第1面10aの形状は凹凸状となる。
【0028】
台座11は、y方向に延びる。台座11は、基板10と空気との間の屈折率界面における屈折率変化をなだらかにし、反射を抑制する。台座11の高さは、10nm以上100nm以下であることが好ましい。台座11の幅は、凸部20の後述する反射層30の幅より広いことが好ましい。台座11は、基板10と同一材料からなってもよく、異なる材料で構成されていてもよい。
【0029】
(凸部)
凸部20は、y方向に延びる。凸部20は、x方向に周期的に配列している。隣接する凸部20のx方向のピッチPは、偏光板100の使用帯域の波長の光より短い。例えばピッチPは、100nm以上200nm以下であることが好ましい。ピッチPがこの範囲内であれば、凸部20の作製が容易になり、凸部20の機械的安定性、及び、光学特性の安定性が高まる。
【0030】
隣接する凸部20のピッチPは、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡により平均値として計測できる。例えば、任意の4か所において隣接する凸部20のx方向の距離を測定し、その算術平均によりピッチPが求められる。複数の凸部20のうち任意の4か所の計測値を平均化する測定方法を、電子顕微鏡法と称する。
【0031】
凸部20は、基板10に対して突出する。凸部20が突出する主方向は、z方向である。凸部20のx方向の平均幅は、ピッチPの20%以上50%以下であることが好ましい。ここで凸部20の平均幅とは、凸部20をz方向に10分割した各点における幅の平均値を意味する。凸部20の高さは、250nm以上400nm以下であることが好ましい。また凸部20の高さを平均幅で割ったアスペクト比は、5以上13.3以下であることが好ましい。
【0032】
基板10が水晶等の光学活性な結晶の場合は、結晶の光学軸に対して平行又は垂直な方向と凸部20の延びる方向とを一致させることが好ましい。ここで光学軸とは、その方向に進む光の常光線(O)と異常光線(E)の屈折率の差が最小となる方向軸である。当該方向に凸部20を延在させることで、光学特性を向上させることができる。
【0033】
凸部20は、反射層30と先端部40とをそれぞれ有する。
図1に示す凸部20は、基板10側から反射層30、先端部40の順に積層されている。
【0034】
<先端部>
先端部40は、反射層30より基板10から離れた位置にある。先端部40は、基板10から遠い外表面側に先端(第1端部40A)を有する。
図1に示すように、先端部40は、xz平面で切断した第1切断面において、第1端部40Aから第2端部40Bに向けて連続的に拡幅する。第2端部40Bは、先端部40の基板10側の端部である。
【0035】
ここで「連続的に拡幅する」とは、第1端部40Aから第2端部40Bに向かって先端部のx方向の幅が、狭くならないことを意味する。すなわち、第1端部40Aから第2端部40Bに向かって先端部のx方向の幅が徐々に広くなる場合、第1端部40Aから第2端部40Bに至る途中まで先端部のx方向の幅が広がり、その後に一定となる場合を含む。例えば、先端部40をz方向に10分割した際に、切断幅が第1端部40Aから第2端部40Bに向かって狭くなる部分を含まない場合、先端部40が連続的に拡幅しているとみなせる。
【0036】
xz平面における先端部40のx方向の幅の変化率は、第2端部40B側より第1端部40A側で大きいことが好ましい。
【0037】
先端部40の第1面40aは、第1曲面を含む。
図1の先端部40の第1面40aは、第1曲面をなす。先端部40の第1面40aが第1曲面を含むことで、偏光板100の透過軸反射率を低減できる。第1面40aにおける第1曲面は、+z方向に凸の湾曲面であることが好ましい。
【0038】
図2は、先端部40の第1面40aをxz平面に投影した図である。
図2は、先端部40の第2端部40Bの中心を原点としている。
図2に示すように、一例として第1面40aは、以下の関係式(1)で近似できる。
z=(−D
T2/4H
T)x
2+H
T …(1)
上記関係式(1)において、D
Tは先端部40の最大幅であり、H
Tは先端部40の高さである。先端部40は、第1端部40Aから第2端部40Bに向かって拡幅するため、第2端部40Bの幅が最大幅に該当する。先端部40の第1面40aの形状が、上記関係式(1)で近似できると、偏光板100の光学特性が向上する。
【0039】
先端部40の最大幅D
T及び先端部40の高さH
Tは上述の電子顕微鏡法を用いて測定できる。先端部40の最大幅D
Tは、ピッチPの20%以上50%以下であることが好ましい。
【0040】
図1に示す先端部40は、基板10側から誘電体層42と、吸収層44と、第2誘電体層46を有する。誘電体層42、吸収層44及び第2誘電体層46は、反射層30で反射した偏光波(TE波(S波))を干渉により減衰する。
【0041】
「誘電体層」
図1に示す誘電体層42は、反射層30上に積層されている。誘電体層42は、必ずしも反射層30と接している必要はなく、誘電体層42と反射層30の間に別の層が存在してもよい。誘電体層42は、y方向に帯状に延びる。誘電体層42は、先端部40の一部をなす。
【0042】
誘電体層42の膜厚は、吸収層44で反射する偏光波に応じて決定できる。吸収層44で反射した偏光波の位相と反射層30で反射した偏光波の位相とが、半波長分だけずれるように誘電体層42の膜厚を決定する。誘電体層42の膜厚は、具体的には、1nm以上500nm以下であることが好ましい。当該範囲内であれば、反射した2つの偏光波の位相の関係を調整でき、干渉効果を高めることができる。誘電体層42の膜厚は、上述の電子顕微鏡法を用いることができる。
【0043】
誘電体層42には、金属酸化物、フッ化マグネシウム(MgF
2)、氷晶石、ゲルマニウム、ケイ素、窒化ボロン、炭素又はこれらの組合わせを用いることができる。金属酸化物は、SiO
2等のSi酸化物、Al
2O
3、酸化ベリリウム、酸化ビスマス、酸化ボロン、酸化タンタル等が挙げられる。これらの中でも、誘電体層42は、Si酸化物であることが好ましい。
【0044】
誘電体層42の屈折率は、1.0より大きく2.5以下であることが好ましい。反射層30の光学特性は、周囲の屈折率(例えば、誘電体層42の屈折率)によっても影響を受ける。誘電体層42の屈折率を調整することで、偏光特性を制御できる。
【0045】
「吸収層」
図1に示す吸収層44は、誘電体層42上に積層されている。吸収層44は、y方向に帯状に延びる。吸収層44は、先端部40の一部をなす。
【0046】
吸収層44の膜厚は、例えば10nm以上100nm以下であることが好ましい。吸収層44の膜厚は、上述の電子顕微鏡法を用いることができる。
【0047】
吸収層44には、光学定数の消衰定数が零でない光吸収作用をもつ物質を1種以上用いることができる。吸収層44には、金属材料又は半導体材料を用いることができる。吸収層44に用いる材料は、使用帯域の光の波長範囲によって適宜選択できる。
【0048】
吸収層44に金属材料が用いられる場合、金属材料は、Ta、Al、Ag、Cu、Au、Mo、Cr、Ti、W、Ni、Fe、Sn等の単体金属又はこれらのうち1種以上の元素を含む合金であることが好ましい。また吸収層44に半導体材料が用いられる場合は、半導体材料はSi、Ge、Te、ZnO、シリサイド材料であることが好ましい。シリサイド材料は、例えば、β−FeSi
2、MgSi
2、NiSi
2、BaSi
2、CrSi
2、TaSi等が挙げられる。これらの材料を吸収層44に用いた偏光板100は、可視光域に対して高い消光比を有する。また吸収層44は、Fe又はTaとSiとを含むことが特に好ましい。
【0049】
吸収層44が半導体材料の場合、光の吸収作用に半導体のバンドギャップエネルギーが寄与する。そのため、半導体材料のバンドギャップエネルギーは、使用帯域の波長をエネルギー換算した値以下となる。例えば、使用帯域が可視光域の場合、波長400nm以上における吸収エネルギーにあたる3.1eV以下のバンドギャップエネルギーを有する半導体材料を用いることが好ましい。
【0050】
吸収層44は、1層に限られず2層以上で構成されていてもよい。吸収層44が2層以上の場合は、それぞれの層の材料は異なるものでもよい。吸収層44は、蒸着、スパッタリング法等の方法により成膜できる。
【0051】
「第2誘電体層」
図1に示す第2誘電体層46は、吸収層44上に積層されている。第2誘電体層46は、y方向に帯状に延びる。第2誘電体層46は、先端部40の一部をなす。
【0052】
第2誘電体層46は、上述の誘電体層42と同様の材料を用いることができる。第2誘電体層46は、誘電体層42と同一の材料からなっても、異なる材料からなってもよい。第2誘電体層46は、Si酸化物であることが好ましい。第2誘電体層46の屈折率も、上述の誘電体層42と同様の範囲であることが好ましい。第2誘電体層46の厚みは、例えば、10nm以上100nm以下であることが好ましい。第2誘電体層46の厚みは、上述の電子顕微鏡法を用いて測定できる。
【0053】
<反射層>
反射層30は、基板10と先端部40との間に位置する。基板10と反射層30との間には、別の層が挿入されていてもよい。反射層30は、基板10に対してz方向に突出し、y方向に帯状に延びる。反射層30は、TE波(S波)を反射し、TM波(P波)を透過する。
【0054】
図1に示すように反射層30は、反射層30のx方向の中心軸Cに対して窪む第2曲面30aを有することが好ましい。第2曲面30aは、x方向に凸又は凹の湾曲面であることが好ましい。
【0055】
第2曲面30aの最も中心軸Cに近い部分(反射層30の幅が最小となる位置)は、反射層30のz方向の中心位置より先端部40側に位置することが好ましい。すなわち、第2曲面30aは、反射層30の先端部40側に位置することが好ましい。
【0056】
第2曲面30aの一部は、反射層30の先端部40側の第1端部30Aと接していることが好ましい。第2曲面30aが反射層30の第1端部30Aと接していることで、偏光板100の透過軸透過率を向上することができる。
【0057】
図3は、反射層30の第2曲面30aをxz平面に投影した図である。
図3は、反射層30の幅が最小となる位置の中点を原点としている。
図3に示すように、一例として第2曲面30aは、以下の関係式(2)で近似できる。
z
2=(−H
C2+2D
C)/4D
R2)x
2+(D
C/2) …(2)
上記関係式(2)において、H
Cは第2曲面30aの高さであり、D
Cは反射層30の最小幅であり、D
Rは反射層30の最大幅である。ここで第2曲面30aの高さとは、第2曲面30aのz方向の幅を意味する。
【0058】
また反射層30の高さをH
Rとし、第2曲面30aの高さH
Cをとした際に、0.3≦H
C/H
R≦1の関係が成り立つことが好ましく、0.4≦H
C/H
R≦0.6の関係が成り立つことがより好ましい。反射層30の全体高さH
Rに対して第2曲面30aの高さH
Cが上記範囲内であることで、偏光板100の透過軸透過率が高まる。
【0059】
反射層30の最大幅D
R、最小幅D
C、高さH
R及び第2曲面30aの高さH
Cは上述の電子顕微鏡法を用いて測定できる。反射層30の最大幅D
Rは、ピッチPの20%以上50%以下であることが好ましい。反射層30の高さは、例えば100nm以上300nm以下であることが好ましい。
【0060】
また反射層30は、先端部40との間で以下の関係を満たすことが好ましい。先端部40と反射層30との間の接続部分に段差Sを有していることが好ましい。先端部40の幅が反射層30の幅より広いと、偏光板100の透過性能が向上する。
【0061】
また反射層30の最大幅D
Rと先端部40の最大幅D
Tとは、1≦D
T/D
R≦2.3の関係を満たすことが好ましい。当該関係を満たすと、偏光板100の吸収軸反射率が低下する。
【0062】
反射層30には、使用帯域の波長の光に対して反射性を有する材料を用いることができる。例えば、Al、Ag、Cu、Mo、Cr、Ti、Ni、W、Fe、Si、Ge、Ta等の単体金属又はこれらの合金を用いることができる。これらの中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。また反射層30は、金属に限られず、着色等により表面反射率を高めた無機膜又は樹脂膜を用いることができる。
【0063】
図4は、本実施形態にかかる偏光板100における一つの凸部20の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した画像である。
図4に示すように断面SEM画像からも第1曲面をなす第1面40aを有する先端部40と第2曲面30aを有する反射層30とが確認できる。また
図4に示すように、凸部20の外表面には多少の凹凸がみられる。上記の関係式(1)及び(2)において近似できるとは、誤差として判断できる多少の凹凸を除いた理論形状に対して近似できることを意味する。
【0064】
(その他の構成)
偏光板100は、上記の構成以外の層を有してもよい。
例えば、誘電体層42又は第2誘電体層46と吸収層44との間に、拡散バリア層を有してもよい。拡散バリア層は、吸収層44における光の拡散を防止する。拡散バリア層は、Ta、W、Nb、Ti等の金属膜を用いることができる。
【0065】
また偏光板100の光の入射側に保護膜を形成してもよい。例えば、
図1において+z方向から−z方向に向かって光が入射する場合、基板10の第1面10a及び凸部20の周囲を覆うように保護膜を形成する。保護膜は、誘電体層42と同様の材料を用いることができる。保護膜は、反射層30等の金属膜が必要以上に酸化されることを抑制する。保護膜は、CVD(Chemical Vapor Deposition)、ALD(Atomic Layer Deposition)等を利用して形成できる。
【0066】
また偏光板100の光の入射側に撥水膜を形成してもよい。撥水膜は、例えば、パーフルオロデシルトリエトキシシラン(FDTS)等のフッ素系シラン化合物を用いることができる。撥水膜は、CVD、ALD等を利用して形成できる。撥水膜は、偏光板100の耐湿性を高め、信頼性を向上する。
【0067】
上述のように、本実施形態にかかる偏光板100は、反射率が低く、透過率が高い。そのため様々な光学機器に用いることができる。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0069】
図5は、第1実施形態にかかる偏光板の別の例の断面図である。
図5に示す偏光板101は、反射層32の形状が
図1に示す偏光板100と異なる。
図5に示す反射層32は、中心軸Cに対して窪む湾曲面を有さない。一方で、先端部40の第1面40aは第1曲面をなしている。そのため、
図4に示す偏光板101も光学特性に優れる。
【0070】
「偏光板の製造方法」
偏光板の製造方法は、基板準備工程と、成膜工程と、エッチング工程とを有する。
【0071】
基板準備工程では、基板10を準備する。基板10は市販のものを用いることができる。台座11を形成する場合は、基板10の上に下地層を形成する。
【0072】
成膜工程では、反射層となる層、誘電体層となる層、吸収層となる層及び第2誘電体層となる層を順に積層する。これらの層は、スパッタリング法又は蒸着法を用いることができる。
【0073】
エッチング工程では、成膜した各層をエッチングする。エッチングは、パターニングされたマスクを介して行う。マスクパターンは、フォトリソグラフィー法又はナノインプリント法等により形成する。エッチングは、ドライエッチングを用いることが好ましい。
【0074】
先端部40を構成する誘電体層42、吸収層44及び第2誘電体層46は、エッチングレートが異なる。このエッチングレートの違いを利用することで、先端部40の第1面40aの形状が第1曲面をなす。エッチングレートは、エッチングガス種、ガス流量、ガス圧、イオン又はラジカルを発生されるための出力電圧等を変えることで調整できる。
【0075】
また反射層30に第2曲面30aを設ける場合は、エッチングガス(Cl
2、BCl、N
2の分圧比を変更する。またエッチング時に基板温度を変更することで、第2曲面30aを形成してもよい。エッチング時の基板温度により反射層30を構成する例えばAlのエッチング異方性に違いが生じ、反射層30に第2曲面30aが形成される。
【0076】
さらに基板10に台座11を形成する場合は、成膜した下地層をエッチングする。ガス流量、ガス圧、イオン又はラジカルを発生されるための出力電圧及び基板10の冷却温度等のエッチング条件を最適化することで、台座11を形成できる。
【0077】
「光学機器」
第2実施形態にかかる光学機器は、上記の第1実施形態にかかる偏光板100、101を備える。光学機器は、液晶プロジェクタ、ヘッドアップディスプレイ、デジタルカメラ等が挙げられる。第1実施形態にかかる偏光板100、101は、透過軸方向の偏光の透過率が高く、吸収軸方向の偏光の反射率が低い。そのため、種々の用途に利用可能である。また偏光板100、101は無機材料により構成される。有機偏光板に比べて耐熱性が要求される液晶プロジェクタ、ヘッドアップディスプレイ等に、偏光板100、101は特に好適に用いられる。
【0078】
光学機器が複数の偏光板を備える場合、複数の偏光板のうち少なくとも一つが第1実施形態にかかる偏光板100、101であればよい。例えば、光学機器が液晶プロジェクタの場合は、液晶パネルの入射側及び出射側に偏光板は配置される。このうち一方の偏光板に、第1実施形態にかかる偏光板100、101を用いる。
【実施例】
【0079】
「実施例1、比較例1、比較例2」
実施例1、比較例1及び比較例2は、凸部の先端部の形状を変えた際の偏光板の光学特性の変化を測定した。偏光板の光学特性は、RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)法による電磁界シミュレーションにより検証した。シミュレーションには、Grating Solver Development社のグレーティングシミュレータGsolverV51を用いた。
【0080】
(実施例1)
実施例1では、
図5に示す偏光板101と同様の構成の偏光板を作製した。
図5を基に、実施例1の偏光板の具体的な構成について説明する。
【0081】
基板10:無アルカリガラス(イーグルXG、コーニング社製)
台座11高さ:60nm
隣接する凸部20のピッチP:140nm
反射層32:アルミニウム
反射層32の最大幅D
R:30nm
反射層32の高さH
R:250nm
隣接する反射層32の最短距離:110nm
先端部40の最大幅D
T:50nm
先端部40の高さH
T:60nm
先端部40の構成:
誘電体層42:SiO
2、厚み5nm
吸収層44:Fe(5atm%)及びSi(95atm%)、厚み25nm
第2誘電体層46:SiO
2、厚み30nm
先端部40の断面形状:上に凸の第1曲面(第1曲面の形状は、関係式(1)で近似できる。)
【0082】
(比較例1)
比較例1は、先端部40の断面形状を矩形にした点のみが実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0083】
(比較例2)
比較例2は、先端部40の断面形状を三角形にした点のみが実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0084】
図6は、実施例1、比較例1及び比較例2の偏光板の光学特性を計測した結果である。
図6(a)は透過軸透過率Tpの結果であり、
図6(b)は吸収軸透過率Tsの結果であり、
図6(c)は透過軸反射率Rpの結果である。測定は、波長500nm〜600nmのG帯域の波長の光に対する透過率又は反射率を求めた。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、透過軸透過率及び吸収軸透過率は、先端部の形状を変えても大きく変動しなかった。これに対し、
図6(c)に示すように、透過軸反射率は、先端部の断面形状が第1曲面をなすと低減された。
【0085】
(実施例2)
実施例2は、
図5に示す偏光板101と同様の構成の偏光板を作製した。先端部40の最大幅D
Tと反射層32の最大幅D
Rとの関係を変化させた場合における偏光板の光学特性の変化を測定した。光学特性は実施例1と同様の方法で測定した。反射層32の最大幅D
Rを30nmで固定し、先端部40の最大幅D
Tを10nm、20nm、30nm、50nm、70nm、90nmと変化させた。先端部40の最大幅D
T以外のパラメータは実施例1と同じとした。
【0086】
図7は、実施例2における偏光板の光学特性を計測した結果である。
図7(a)は透過軸透過率の結果であり、
図7(b)は吸収軸反射率の結果である。測定は、波長500nm〜600nmのG帯域の波長の光に対する透過率又は反射率を求めた。
図7に示すように、反射層32の最大幅D
Rと、先端部40の最大幅D
Tとが、1≦D
T/D
R≦2.3の関係を満たす際に、透過軸透過率が高く、吸収軸反射率が低くなった。
【0087】
(実施例3)
実施例3は、
図1に示す偏光板100と同様の構成の偏光板を作製した。すなわち、反射層30が第2曲面30aを有する点が、実施例1と異なる。第2曲面30aの形状は、反射層30の中心軸に向かって下に凸の形状とし、関係式(2)で近似できるものとした。
【0088】
実施例3では、反射層30の最大幅D
Rと反射層30の最小幅D
Cとの関係を変化させた場合における偏光板の光学特性の変化を測定した。光学特性は実施例1と同様の方法で求めた。反射層30の最大幅D
Rは30nmで固定し、反射層30の最小幅D
Cを1nm、10nm、15nm、25nm、30nmと変化させた。第2曲面30aの高さH
Cは、50nmで固定した。反射層30が第2曲面30aを備える点及びその最小幅D
C以外のパラメータは実施例1と同じとした。
【0089】
図8は、実施例3における偏光板の光学特性を計測した結果である。
図8は透過軸透過率の結果である。測定は、波長500nm〜600nmのG帯域の波長の光に対する透過率又は吸収率を求めた。
図8に示すように、反射層30が中心軸Cに向かって窪む第2曲面30aを備えることで、透過軸透過率が向上した。
【0090】
(実施例4)
実施例4は、
図1に示す偏光板100と同様の構成の偏光板を作製した。実施例4は、反射層30の高さH
Rに対する第2曲面30aの高さH
Cの関係を変えた点が実施例3と異なる。反射層30の最小幅D
Cは15nmとした。
【0091】
実施例4では、反射層30の高さH
Rと第2曲面30aの高さH
Cとの関係を変化させた場合における偏光板の光学特性の変化を測定した。光学特性は実施例1と同様の方法で求めた。反射層30の高さは250nmで固定し、第2曲面30aの高さを0nm、25nm、50nm、75nm、100nm、125nm、150nm、250nmと変化させた。なお第2曲面30aの高さが0nmは、第2曲面30aを有さない実施例1に対応する。
【0092】
図9は、実施例4における偏光板の光学特性を計測した結果である。
図9は透過軸透過率の結果である。測定は、波長500nm〜600nmのG帯域の波長の光に対する透過率又は吸収率を求めた。
図9に示すように、いずれの場合も高い透過軸透過率を示した。特に、反射層の高さH
Rと、第2曲面30aの高さH
Cをとが、0.3≦H
C/H
R≦1の関係を満たす場合に特に透過率透過率が向上した。
【0093】
(実施例5)
実施例5は、
図10に示す偏光板102と同様の構成の偏光板を作製した。
図10に示す偏光板102は、反射層34の形状が
図1に示す偏光板100と異なる。
図10に示す偏光板102は、反射層34の第1端部34Aと第2曲面30aの端部とが接していない点が、
図1に示す偏光板100と異なる。実施例5は、反射層34の第1端部34Aと第2曲面34aの端部との距離Lを変えた点が実施例3と異なる。反射層34の最小幅D
Cは15nmとし、第2曲面34aの高さH
Cは50nmとした。
【0094】
実施例5では、反射層34の高さH
Rと、反射層34の第1端部34Aと第2曲面34aの端部との距離Lと、の関係を変化させた場合における偏光板の光学特性の変化を測定した。光学特性は実施例1と同様の方法で求めた。反射層34の高さH
Rは250nmで固定し、第1端部34Aと第2曲面34aの端部との距離Lを、0nm、50nm、100nm、150nmと変化させた。
【0095】
図11は、実施例5における偏光板の光学特性を計測した結果である。
図11は透過軸透過率の結果である。測定は、波長500nm〜600nmのG帯域の波長の光に対する透過率又は吸収率を求めた。
図11に示すように、第1端部34Aと第2曲面34aの端部との距離Lが近づくにつれ、透過軸透過率は向上した。第2曲面34aの一部が、反射層34の第1端部34Aと接しているときに、透過軸透過率は特に向上した。
【0096】
(実施例6、比較例1)
実施例6は、
図1に示す偏光板100と同様の構成の偏光板を作製した。具体的な構成は以下とした。
【0097】
基板10:無アルカリガラス(イーグルXG、コーニング社製)
台座11高さ:60nm
隣接する凸部20のピッチP:140nm
反射層30:アルミニウム
反射層30の最大幅D
R:30nm
反射層30の最小幅D
C:25nm
反射層30の高さH
R:250nm
第2曲面30aの高さH
C:125nm
第2曲面30aの形状:中心軸に向かって下に凸の形状(関係式(2)で近似できる)
隣接する反射層30の最短距離:110nm
先端部40の最大幅D
T:30nm
先端部40の高さH
T:60nm
先端部40の構成:
誘電体層42:SiO
2、厚み5nm
吸収層44:Fe(5atm%)及びSi(95atm%)、厚み25nm
第2誘電体層46:SiO
2、厚み30nm
先端部40の断面形状:上に凸の第1曲面(第1曲面の形状は、関係式(1)で近似できる)
【0098】
比較例3は、先端部40の断面形状を矩形にした点のみが実施例6と異なる。その他の条件は、実施例6と同様とした。
【0099】
実施例6及び比較例3の波長ごとの光学特性を測定した。
図12は、実施例6及び比較例3の光学特性を測定した結果である。
図12(a)は透過軸透過率の結果であり、
図12(b)は吸収軸透過率の結果であり、
図12(c)は透過軸反射率の結果であり、
図12(d)は反射軸反射率の結果である。図示点線が実施例6の結果であり、図示実線が比較例3の結果である。先端部40の断面形状が第1曲面であることで、偏光板の光学特性が向上することが確認できる。表1に、
図12における波長520〜590nmの結果を抜き出した。
【0100】
【表1】