(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-190781(P2018-190781A)
(43)【公開日】2018年11月29日
(54)【発明の名称】車両用磁性部品
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20181102BHJP
H01F 27/36 20060101ALI20181102BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20181102BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20181102BHJP
B60L 11/18 20060101ALI20181102BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F27/36 B
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L11/18 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-89925(P2017-89925)
(22)【出願日】2017年4月28日
(71)【出願人】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中根 俊介
(72)【発明者】
【氏名】藏本 公貴
(72)【発明者】
【氏名】田端 隆伸
(72)【発明者】
【氏名】東山 在徳
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 浩章
(72)【発明者】
【氏名】常川 知恵美
【テーマコード(参考)】
5E058
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5E058CC13
5E058CC15
5E058DB03
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC07
5H105CC19
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC26
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】本発明は、非接触電力伝送コイルと共に用いられる磁性部品を適切な形状および大きさにすると共に、磁性部品における電力損失を低下させることを目的とする。
【解決手段】送電コイルユニットは、矩形の平坦な周回形状に形成された送電コイル18に重なる4つの平坦な磁性体部24を備えている。磁性体部24は、送電コイル18の角に対応する位置に配置されている。各磁性体部24は、送電コイル18の中心から、送電コイル18の角に向かう方向に伸びる仮想線に関して対称な形状を有する一対の磁性体片14を備えており、送電コイル18の内側から外側に及んでいる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な周回形状に形成された非接触電力伝送コイルに重なる複数の平坦な磁性体部を備え、
前記複数の磁性体部は、
前記非接触電力伝送コイルの周回方向に沿った複数の位置で、前記非接触電力伝送コイルに重ねて配置されており、
各前記磁性体部は、
前記非接触電力伝送コイルの内側から外側に及んでいることを特徴とする車両用磁性部品。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用磁性部品において、
各前記磁性体部は、
前記非接触電力伝送コイルの内側から外側に伸びる仮想線に関して対称な形状を有する一対の磁性体片を備えることを特徴とする車両用磁性部品。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用磁性部品において、
前記非接触電力伝送コイルは、多角形の周回形状を有しており、
各前記磁性体部は、
前記多角形の角に対応する位置に配置されており、
前記非接触電力伝送コイルの内側から、前記多角形の角に向かう方向に伸びる仮想線に関して対称な形状を有する一対の磁性体片を備えることを特徴とする車両用磁性部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用磁性部品に関し、特に、非接触電力伝送コイルと共に用いられる部品に関する。
【背景技術】
【0002】
外部充電装置が搭載された電気自動車、ハイブリッド自動車等の電動車両が広く用いられている。外部充電装置には、商用電源コンセントから電力を取得するものが実用化されている。その他、一般家庭、公共施設、娯楽施設等における駐車場やサービスステーションに設けられた電力供給装置によって非接触給電を行うものが提案されている。
【0003】
以下の特許文献1に見られるように、非接触給電用の電力供給装置には、電力伝送用の電磁界を発生する送電コイルが設けられている。他方、電動車両には、電力伝送用の電磁界を受信する受電コイルが設けられている。電力供給装置から電動車両には、送電コイル側の回路と受電コイル側の回路との共鳴によって電力が伝送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/074106号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非接触給電用の送電コイルおよび受電コイル(以下、これらを併せて非接触電力伝送コイルという。)には、導線を平面状に周回させたものがある。
図6には、導線44を矩形状に周回させた非接触電力伝送コイル40の例が示されている。導線44は内側の一端Sから始まって1周する毎に1ピッチだけ外側を周回し外側の他端Eに至る。導線44が周回する領域は、中心が欠損した矩形状となっている。非接触電力伝送コイル40には、漏れ磁束を低減して伝送電力を増加させるため、導線44が周回する領域に対向する磁性体板42が配置されている。
図6には、非接触電力伝送コイル40と磁性体板42とが直接重ねられた模式図が示されているが、実際には、プラスチック樹脂等の絶縁体で形成されたボビンに非接触電力伝送コイル40が固定され、ボビンを挟んで非接触電力伝送コイル40と磁性体板42とが重ねられることが多い。
【0006】
磁性体板としては、様々な形状および大きさのものが製造されているものの、非接触電力伝送コイルの形状または大きさによっては、磁性体板の製造が困難となって製造コストが増加することがある。そこで、磁性体の小片を組み合わせて所望の形状および大きさの磁性体板を形成することも考えられる。しかし、磁性体の小片間にギャップが形成され、電力損失が増加してしまうことがある。
【0007】
本発明は、非接触電力伝送コイルと共に用いられる磁性部品を適切な形状および大きさにすると共に、磁性部品における電力損失を低下させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、平坦な周回形状に形成された非接触電力伝送コイルに重なる複数の平坦な磁性体部を備え、前記複数の磁性体部は、前記非接触電力伝送コイルの周回方向に沿った複数の位置で、前記非接触電力伝送コイルに重ねて配置されており、各前記磁性体部は、前記非接触電力伝送コイルの内側から外側に及んでいることを特徴とする。
【0009】
望ましくは、各前記磁性体部は、前記非接触電力伝送コイルの内側から外側に伸びる仮想線に関して対称な形状を有する一対の磁性体片を備える。
【0010】
望ましくは、前記非接触電力伝送コイルは、多角形の周回形状を有しており、各前記磁性体部は、前記多角形の角に対応する位置に配置されており、前記非接触電力伝送コイルの内側から、前記多角形の角に向かう方向に伸びる仮想線に関して対称な形状を有する一対の磁性体片を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非接触電力伝送コイルと共に用いられる磁性部品を適切な形状および大きさにすると共に、磁性部品における電力損失を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】磁性体片の形状を導出する過程を例示する図である。
【
図4】送電コイルおよび各磁性体片を示す図である。
【
図5】送電コイルと磁性体片とが重なる部分における断面を模式的に示す図である。
【
図6】導線を矩形状に周回させた非接触電力伝送コイルの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には、非接触給電用の電力供給装置に用いられる送電コイルユニット10の分解斜視図が示されている。送電コイルユニット10は、電気回路筐体12、磁性体片14、ボビン16、送電コイル18、および樹脂カバー20を備えている。ボビン16は、プラスチック樹脂等によって形成され、表面および裏面を必要に応じて凹ませ、あるいは突出させた形状を有している。ボビン16には、平坦な矩形状に導線を周回させた送電コイル18を受け入れるコイル溝22が形成されている。送電コイル18は、コイル溝22に受け入れられた状態でボビン16に固定される。
【0014】
電気回路筐体12には、非接触給電を行うための電気回路が収容されている。電気回路筐体12の上面の四隅のそれぞれには、一対の磁性体片14が固定される。磁性体片14は、フェライト、パーマロイ、鉄等の磁性材料によって平坦な板状に形成されている。電気回路筐体12の上方がボビン16で覆われることで、送電コイル18の四隅のそれぞれに、ボビン16を挟んで一対の磁性体片14が対向する。
【0015】
送電コイル18が固定されたボビン16によって4対の磁性体片14および電気回路筐体12が覆われ、さらに、樹脂カバー20によってボビン16の上方が覆われることで、送電コイルユニット10が組み立てられる。
【0016】
送電コイルユニット10は、例えば、駐車場に配置される。非接触給電が可能な電動車両が送電コイルユニット10の上方に停止することで、電動車両に搭載された受電コイルに送電コイル18が対向し、送電コイル18から受電コイルに非接触給電が行われる状態となる。
【0017】
図2には4対の磁性体片14の平面図が示されている。4対の磁性体片14は、送電コイルの周回方向に沿った4つの位置で、送電コイルに重ねて配置されている。すなわち、送電コイルの内側から送信コイルの四隅のそれぞれに向かう方向に一対の磁性体片14が延伸し、各磁性体片14は、送電コイルの内側から外側に及んでいる。1つの磁性体部24としての一対の磁性体片14は、中心Oから外側方向に伸びる仮想線26に関して対称な形状を有している。仮想線26に関して対称な一対の磁性体片14の間にはギャップが設けられている。
【0018】
各磁性体片14の形状は、例えば、
図3(a)〜(d)に示される過程を経て導かれる。すなわち、(a)矩形の磁性体板28の中心に八角形の穴30を設ける過程。(b)八角形の穴30の各頂点から外側方向に伸びる分割線32で、磁性体板28を分割する過程。なお、各分割線32の方向は各頂点を二等分する線の方向である。(c)磁性体板28の各辺の中央に二等辺三角形状の切れ込み34を設ける過程。(d)各磁性体片14に製造工程用または取り付け用の穴36を設ける過程。
【0019】
図4には、送電コイル18と各磁性体片14とが重ねて示されている。各磁性体片14はボビン16を介して送電コイル18と重なっているため、
図4では各磁性体片14が破線によって示されている。
【0020】
図5には、送電コイル18と磁性体片14とが重なる部分における断面が模式的に示されている。送電コイル18の近傍には送電コイル18を囲む磁束38が発生し、この磁束38が磁性体片14によって形成される磁路を通る。磁性体片14は空気よりも透磁率が大きいため、磁性体片14内に磁束が集中する。
【0021】
このような構成によれば、送電コイル18の四隅のそれぞれにおいて、磁性体片14による磁路が形成される。一般に、矩形のコイルの四隅近傍では直線区間よりも磁束が広がり易い。本実施形態に係る送電コイルユニット10では、送電コイル18の四隅に対応する位置に磁性体片14が配置されているため、送電コイル18の四隅付近において磁性体片14に磁束が集中する。これによって、漏れ磁束が低減され受電コイルへの伝送電力が増加する。
【0022】
また、送電コイル18の周りに発生する磁束には、送電コイル18を形成する導線の周囲を回る向きのものが多い。したがって、一対の磁性体片14が形成するギャップを横切る磁束は少ないため、ギャップによって生じる電磁気的な損失が低減される。さらに、磁性体片14は、送電コイル18の四隅に対応する位置に配置されるのみであるため各磁性体片14が小型となる。また、送電コイル18の四隅においてギャップに関して対称な形状とされているため各磁性体片14が同一の形状となり、必要な部品の種類が少なくなる。
【0023】
上記では、導線を矩形状に周回させた送電コイルについて説明したが、送電コイルは、その他の多角形状に周回させたものであってもよい。この場合、
図3に示された過程と同様の過程によって、各磁性体片の形状が導かれる。例えば、送電コイルが、正n角形状(nは3以上の整数)に周回させたものである場合、次の(i)〜(iv)の過程によって各磁性体片の形状が導かれる。(i)正n角形の磁性体板の中心に2n角形の穴を設ける過程。(ii)2n角形の穴の各頂点から外側方向に伸びる分割線で、磁性体板を分割する過程。(iii)磁性体板の各辺の中央に切れ込みを設ける過程。および(iv)各磁性体片に製造工程用または取り付け用の穴を設ける過程。
【0024】
なお、上記では、送電コイルに用いられる磁性体片について説明したが、磁性体片は受電コイルに対して用いてもよい。
【符号の説明】
【0025】
10 送電コイルユニット、12 電気回路筐体、14 磁性体片、16 ボビン、18 送電コイル、20 樹脂カバー、22 コイル溝、24 磁性体部、26 仮想線、28,42 磁性体板、30 八角形の穴、32 分割線、34 切れ込み、36 製造工程または取り付け用の穴、38 磁束、40 非接触電力伝送コイル、44 導線。