【解決手段】コイル部品100は、柱状部11を含んで構成されている第1磁性コア10と、柱状部11の一端面12に対して対向する対向面(例えば第1主面21)を有する第2磁性コア20と、非磁性材料により構成されていて対向面と一端面12との間に配置されており対向面と一端面12との間に磁気ギャップを構成している磁気ギャップ構成層50と、柱状部11が挿通されているコイル30と、磁性材料により構成されていて第1磁性コア10とコイル30とを覆っている磁性モールド40と、を備え、コイル部品100を柱状部11の軸心方向に視たときに、磁気ギャップ構成層50が柱状部11の周囲にはみ出している。
前記磁気ギャップ構成層は、前記対向面と前記コイルとの間にも配置されており、前記対向面と前記コイルとの間にも磁気ギャップを構成している請求項1に記載のコイル部品。
前記磁気ギャップ構成層は、前記一端面と前記対向面との対向間隔を規定する粒子状のフィラーを含有する樹脂材料により構成されている請求項1から5のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0010】
〔第1実施形態〕
先ず、
図1から
図5を用いて第1実施形態に係るコイル部品100について説明する。
図1又は
図2のいずれかに示すように、本実施形態に係るコイル部品100は、柱状部11を含んで構成されている第1磁性コア10と、柱状部11の一端面12に対して対向する対向面(本実施形態の場合、第1主面21)を有する第2磁性コア20と、非磁性材料により構成されていて対向面と一端面12との間に配置されており対向面と一端面12との間に磁気ギャップを構成している磁気ギャップ構成層50と、柱状部11が挿通されているコイル30と、磁性材料により構成されていて第1磁性コア10とコイル30とを覆っている磁性モールド40と、を備えている。そして、
図2に示すように、コイル部品100を柱状部11の軸心方向に視たときに、磁気ギャップ構成層50が柱状部11の周囲にはみ出している。
【0011】
コイル部品100を柱状部11の軸心方向に視たときに、磁気ギャップ構成層50が柱状部11の周囲にはみ出していることにより、コイル30の内周面34と柱状部11の側周面14との間にクリアランスが存在し、このクリアランスに磁性モールド40の一部分が侵入していても、第1磁性コア10と第2磁性コア20との相互間での磁束の流れを良好に阻害できることから、磁気ギャップ構成層50により構成される磁性ギャップの機能をより十分なものとすることができる。その結果、第1磁性コア10及び第2磁性コア20の材料特性を上回る直流重畳特性を得ることができる。すなわち、直流重畳特性の向上が可能である。このように、本実施形態によれば、構造が簡素でありながら大電流に対応することが可能なコイル部品100を提供することができる。また、コイル部品100を柱状部11の軸心方向に視たときの柱状部11からの磁気ギャップ構成層50のはみ出し寸法の調節により、L値の調整を行うことができる。
【0012】
本実施形態の場合、第1磁性コア10は、柱状(例えば円柱状)に形成されている。つまり、第1磁性コア10の全体が柱状部11となっている。第1磁性コア10は、例えば、互いに平行に配置されている一端面12と他端面13とを有している。
【0013】
また、本実施形態の場合、第2磁性コア20は、板状に形成された板状コアである。第2磁性コア20の平面形状は特に限定されないが、例えば、
図2及び
図4から分かるように、第2磁性コア20の平面形状は矩形状となっており、第2磁性コア20は直方体形状に形成されている。第2磁性コア20は、互いに平行に配置されている第1主面21と第2主面22とを有している。
【0014】
第2磁性コア20の第1主面21と第2主面22とのうち、第1主面21が第1磁性コア10の一端面12と対向している。より詳細には、第1主面21と一端面12とは互いに平行に対向している。
このように、本実施形態の場合、コイル部品100は、柱状(棒状)の第1磁性コア10と板状の第2磁性コア20とを組み合わせることにより構成されたT字型コアを備えている。
なお、一端面12は、第1主面21の中央部に対して対向していることが好ましい。
【0015】
このように、本実施形態の場合、第2磁性コア20は板状コアであり、上記の対向面は、板状コアの一方の主面である第1主面21となっている。
【0016】
磁気ギャップ構成層50は、第2磁性コア20の外表面の一部分に沿って配置されていることが好ましい。より詳細には、本実施形態の場合、磁気ギャップ構成層50は第1主面21の一部分に沿って配置されている。
【0017】
本実施形態の場合、
図2に示すように、コイル部品100を柱状部11の軸心方向に視たときに、磁気ギャップ構成層50が柱状部11の周囲全周から外方にはみ出している。すなわち、コイル部品100を柱状部11の軸心方向に視たときに、磁気ギャップ構成層50の外形線の内側に柱状部11が収まっている。
本実施形態の場合、コイル部品100を柱状部11の軸心方向に視たときに、磁気ギャップ構成層50の外形線が、第2磁性コア20の外形線の内側に収まっている。より詳細には、例えば、磁気ギャップ構成層50の外形線が、コイル30の内周面34と同等の位置となるように、磁気ギャップ構成層50が形成されている。磁気ギャップ構成層50の外形線が、コイル30の内周面34に接していてもよい。
【0018】
磁気ギャップ構成層50は、絶縁性かつ非磁性体の材料により構成されている。
磁気ギャップ構成層50の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.01mm以上1.0mm以下とすることができ、0.1mm以下であることが好ましい。
【0019】
なお、一端面12と第1主面21との対向間隔には、磁性モールド40が侵入しないように、磁気ギャップ構成層50が形成されていることが好ましい。磁性モールド40は、磁性材料を含んで構成されていて空気よりも誘電率が高い。このような磁性モールド40が一端面12と第1主面21との対向間隔に侵入することを、磁気ギャップ構成層50によって阻害することで、コイル部品100の直流重畳特性を更に向上させることができる。
【0020】
磁気ギャップ構成層50の構造としては、以下に説明する各種の構造が挙げられる。
【0021】
例えば、磁気ギャップ構成層50は、粒子状のフィラーを含有する樹脂材料により構成することができる。この場合、例えば、柱状部11の一端面12と第2磁性コア20の第1主面21との対向間隔、すなわち磁気ギャップ構成層50の厚み寸法を、フィラーの最大粒径と略等しい間隔(寸法)に設定することができる。
このように、一例として、
図5に示すように、磁気ギャップ構成層50は、柱状部11の一端面12と第2磁性コア20の第1主面21との対向間隔を規定する粒子状のフィラー51を含有する樹脂材料により構成されている。
この場合、フィラー51の粒径を調節することによって、磁気ギャップ構成層50の厚み寸法、すなわち磁性ギャップの厚み寸法を容易に所望の厚みにすることができるため、コイル部品100の直流重畳特性及びL値を容易に所望の特性にすることが可能となる。
フィラー51の粒径は、特に限定されないが、例えば、0.03mm以上0.075mm以下とすることができる。フィラー51の粒径とは、フィラー51が球状の場合は直径であり、フィラー51が柱状の場合には横断面の直径である。
【0022】
上記フィラー51は、例えば、無機粒子とすることができる。金型により圧縮して磁性モールド40を成形する際に、フィラー51が第1磁性コア10と第2磁性コア20との間で挟まれて変形(縮径)しないように、十分な構造的強度を有するフィラー51を選定することが好ましい。
このようなフィラー51としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、ダイヤモンド等の炭素材料、マイカ、ガラスのようなケイ酸塩、酸化チタン、アルミナのような酸化物、ケイ酸マグネシウム、溶融シリカ、結晶シリカのようなケイ素化合物から選択される一種または二種以上のものを用いることができる。
【0023】
粒子状のフィラー51を含有する樹脂材料により磁気ギャップ構成層50を構成する場合、粒子状のフィラー51を含有する樹脂材料は接着剤であることが好ましい。例えば、この接着剤を第1主面21に塗布し、第1主面21と一端面12とを接着剤を介して相互に貼り合わせ、当該接着剤を硬化させることにより、第1磁性コア10と第2磁性コア20とを相互に接着させることができるとともに、磁気ギャップ構成層50を設けることができる。
例えば、第1主面21に対する接着剤の塗布範囲は、磁気ギャップ構成層50の形成範囲と等しくすることができる。すなわち、第1主面21に対し、一端面12よりも広い範囲(一端面12を包含する範囲)に接着剤を塗布した後、接着剤を介して第1主面21に一端面12を接着固定することができる。ただし、第1主面21に対する接着剤の塗布範囲は、この例に限らない。
粒子状のフィラー51を含有する樹脂材料により磁気ギャップ構成層50を構成する場合における樹脂材料の母材樹脂としては、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。母材樹脂の形態としては、水分散型、水可溶型、溶剤型、無溶剤型等が挙げられる。
なお、磁気ギャップ構成層50を構成する接着剤を塗布する工程は1工程に限らず、複数工程に分けて第2磁性コア20に接着剤を塗布し、磁気ギャップ構成層50を形成してもよい。
【0024】
また、磁気ギャップ構成層50は、第2磁性コア20の第1主面21に対して部分的に形成されたコート層であってもよい。
この場合、第2磁性コア20の第1主面21に部分的にコーティングを施すことにより、磁気ギャップ構成層50を設けることができる。
コート層は、エポキシ系樹脂、アクリル樹脂又はシリコーン樹脂等の硬質樹脂材料により構成することができる。
この樹脂材料をコーティングする工程では、硬化後の磁気ギャップ構成層50の厚みが所望の厚みとなるような塗布厚で、樹脂材料を塗布する。
この場合も、磁気ギャップ構成層50を構成する樹脂材料を塗布する工程は1工程に限らず、複数工程に分けて第2磁性コア20に樹脂材料を塗布し、磁気ギャップ構成層50を形成してもよい。
【0025】
また、磁気ギャップ構成層50は、第1主面21及び一端面12に対して接着された板状のスペーサ又はシート状のフィルムであってもよい。
この場合、予め準備したスペーサ又はフィルムを第1主面21及び一端面12に対して接着することにより、磁気ギャップ構成層50を設けることができる。
この場合、磁気ギャップ構成層50の厚み寸法は、スペーサ又はフィルムの厚み寸法を予め所定の厚み寸法に設定することによって調節することができる。
なお、スペーサやフィルムの材料は特に限定されないが、例えば、樹脂材料とすることができる。
【0026】
また、磁気ギャップ構成層50は、第1主面21及び一端面12の少なくとも一方に対して粘着されたシート状の粘着テープであってもよい。
なお、粘着テープは、両面が粘着性の両面テープであってもよいし、片面が粘着性の片面テープであってもよい。粘着テープが両面テープの場合、粘着テープを第1主面21及び一端面12の双方に対して貼り付けることができる。粘着テープが片面テープの場合、粘着テープを第1主面21又は一端面12の一方に対して貼り付け、他方に対して接着剤により接着することができる。
この場合、磁気ギャップ構成層50の厚み寸法は、使用する粘着テープの厚みを選択することによって調節することができる。
【0027】
また、磁気ギャップ構成層50は、互いに並列に配置された複数本の樹脂ワイヤを含んで構成されていても良い。または、磁気ギャップ構成層50は、格子状に配置された複数本の樹脂ワイヤを含んで構成されていてもよい。
例えば、これら複数本のワイヤを間に挟んで、接着剤を介して一端面12と第1主面21とを接着することにより、複数本のワイヤと接着剤とにより磁気ギャップ構成層50が構成されている。
複数本のワイヤが互いに並列に配置されている場合、一端面12と第1主面21との対向間隔は、ワイヤの外径(ワイヤの最大外径)と略等しくなる。
一方、複数本のワイヤが格子状に配置されている場合、一端面12と第1主面21との対向間隔は、縦方向に延在するワイヤと横方向に延在するワイヤとの交差部におけるこれらワイヤの外径の和と略等しくなる。
【0028】
また、磁気ギャップ構成層50は、上述した各種の構成の組み合わせとなっていてもよい。すなわち、磁気ギャップ構成層50は、粒子状のフィラーを含有する樹脂材料により構成された部分と、第2磁性コア20の第1主面21に対して部分的に形成されたコート層により構成された部分と、第1主面21及び一端面12に対して接着された板状のスペーサにより構成された部分と、第1主面21及び一端面12の少なくとも一方に対して粘着されたシート状の粘着テープにより構成された部分と、互いに並列又は格子状に配置された複数本のワイヤを含んで構成された部分と、のうちの二種以上を含んで構成されていてもよい。
この場合、二種以上の部分どうしは、相互に積層されていても良いし、第2磁性コア20の表面上において互いに異なる位置に配置されていても良い。
【0029】
図1、
図2及び
図4に示すように、コイル30は、金属製のワイヤ31を螺旋状に巻回することにより構成されている。コイル30は、当該コイル30の軸心が第2磁性コア20の第1主面21に対して直交する配置で、第2磁性コア20の第1主面21上に配置されている。コイル30の内周面34の内側に、第1磁性コア10の柱状部11が挿通されている。
【0030】
コイル30の両端部は、それぞれ延出部32となっている。延出部32は、コイル30における螺旋状の部分(以下、単に螺旋状部と称する場合がある)から延出している部分である。延出部32の一部分は、第2磁性コア20の側周面23及び第2主面22に対して係合して第2磁性コア20を保持する第2コア保持部32aを構成している。更に、第2コア保持部32aの一部分、例えば、第2主面22に沿って延在する部分は、端子部33を構成している。
コイル30の螺旋状部は、螺旋状に一繋がりに配置された複数の巻回部の集合体である。各巻回部は、コイル30の螺旋状部において、柱状部11の周囲を1周する部分である。
コイル30は、当該コイル30の各巻回部のうち、螺旋状部の軸心方向において互いに隣り合う巻回部どうしが密着する密着巻きとなっていることが好ましい。
【0031】
本実施形態では、ワイヤ31が平角線であり、コイル30がエッジワイズコイルである例を示している。すなわち、コイル30は平角線により構成されているエッジワイズコイルであり、コイル30の内周面34と柱状部11の側周面14との間にクリアランスが存在している。このクリアランスは、例えば、コイル30の螺旋状部を構成する複数の巻回部のうち、螺旋状部の軸方向において相互に隣り合う巻回部どうしの間隔(巻きピッチ)よりも大きい。
コイル30がエッジワイズコイルである場合、ワイヤ31を柱状部11の周囲に巻き付けてコイル30を形成することが困難であるため、通常は、予めワイヤ31を巻回して空芯のコイル30を形成した後で、コイル30に柱状部11を挿通する。この場合、コイル30の内周面34と柱状部11の側周面14との間にクリアランスが生じやすいため、このクリアランスへの磁性モールド40の侵入も生じやすい。
これに対し、本実施形態では、コイル部品100を柱状部11の軸心方向に視たときに、磁気ギャップ構成層50が柱状部11の周囲にはみ出していることにより、コイル30の内周面34と柱状部11の側周面14との間にクリアランスが存在し、このクリアランスに磁性モールド40の一部分が侵入していても、第1磁性コア10と第2磁性コア20との相互間での磁束の流れを良好に阻害できることから、磁気ギャップ構成層50により構成される磁性ギャップの機能をより十分なものとすることができる。
【0032】
なお、本発明において、コイル30はエッジワイズコイル以外の構造のものであってもよく、ワイヤ31は丸線などの平角線以外の線材であってもよい。
【0033】
コイル30には、柱状部11が挿通されている。本実施形態の場合、コイル30に第1磁性コア10が挿通されている。なお、コイル30の螺旋状部の軸心と柱状部11の軸心とが互いに一致するように、コイル30及び第1磁性コア10が配置されている。コイル30の螺旋状部の内周面34と柱状部11の側周面14との間には、クリアランスが存在している。
【0034】
磁性モールド40は、第1磁性コア10及びコイル30の周囲を覆っているとともに、板状コアである第2磁性コア20の側周面23を覆っている。
より詳細には、本実施形態の場合、第1磁性コア10及びコイル30の全体と、第2磁性コア20の第1主面21の全面及び側周面23の全面が磁性モールド40に埋設されている。
磁性モールド40の一部分は、コイル30の内周面34と柱状部11の側周面14との間のクリアランスや、コイル30の螺旋状部と第2磁性コア20との間のクリアランスにも侵入している。
本実施形態の場合、第2磁性コア20の第2主面22は、磁性モールド40から露出している。より詳細には、例えば、第2主面22の全面が磁性モールド40から露出している。
したがって、コイル30の端子部33(第2主面22に沿って延在している部分)は、磁性モールド40から露出している。
【0035】
コイル部品100は、以上のように構成されている。
なお、コイル部品100は、例えば、インダクタ、又は、チョークコイルなどである。
【0036】
次に、コイル部品100を製造する方法の一例について説明する。ここでは、粒子状のフィラー51を含有する樹脂材料により磁気ギャップ構成層50を構成する場合を説明する。
【0037】
先ず、第2磁性コア20とコイル30とを準備し、第2磁性コア20に対してコイル30を組み付ける。すなわち、
図3(a)に示すように、コイル30の一対の延出部32の第2コア保持部32aをそれぞれ第2磁性コア20の側周面23及び第2主面22に対して係合させる。この
図4は状態の斜視図である。
【0038】
次に、
図3(b)に示すように、第2磁性コア20の第1主面21に磁気ギャップ構成層50となる樹脂材料(接着剤52)を塗布し、第1磁性コア10をコイル30に挿入し、第1磁性コア10の一端面12を、磁気ギャップ構成層50を介して第2磁性コア20の第1主面21に対して押圧する。
これにより、接着剤52を押し潰し、当該接着剤52に含まれるフィラー51を単層に配置する(
図5参照)。
その後、接着剤52が硬化することにより、
図5に示すように磁気ギャップ構成層50が形成されるとともに、第1磁性コア10の一端面12と第2磁性コア20の第1主面21とが相互に接着される(
図3(c)、
図5)。なお、
図5においてはコイル30の図示を省略している。
【0039】
その後、
図3(c)に示す半製品を金型にセットし、金型の内部に、磁性モールド40となる磁性粉末を充填する。これにより、コイル部品100の第1磁性コア10、コイル30及び磁気ギャップ構成層50と、第2磁性コア20の側周面23と、が磁性粉末に埋設される。
次に、金型内で磁性粉末を加圧することによって、磁性モールド40を形成する。
【0040】
ここで、磁性粉末は、パテ状(粘土状)の混合材の状態で、ディスペンサ、プレス機または専用道具などによって金型に注入される。
【0041】
パテ状(粘土状)の混合材は、鉄を主成分としクロム、シリコン、マンガンなどを添加した金属磁性粉末と、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などの樹脂との混合物に、必要に応じて溶剤(ターピネオールなど)を添加して製造されている。
【0042】
例えば、パテ状の混合材は、金属磁性粉末(鉄、シリコン、およびクロムを少なくとも含有するアモルファス金属磁性粉末と鉄−シリコン−クロム系の合金粉末の1:1(wt)混合粉末)とエポキシ樹脂との構成比を91:9〜96:4(wt)として、溶剤を2%wt未満含めて(あるいは溶剤を含めずに)製造される。この混合材は、高い粘度を有し、混合材の塊を平面上に置いても液体のように流動、拡散しない程度に、低い流動性を有する。加圧により、パテ状の混合材が金型内に充填される。
【0043】
次に、所定の乾燥条件(乾燥工程での温度条件および時間条件)下で、混合材から溶剤を蒸発させて、充填された混合材を乾燥させる。なお、溶剤を含めずに混合材を製造した場合、この乾燥工程を省くことができる。
【0044】
次に、所定の硬化条件(硬化工程での温度条件および時間条件)下で、混合材を金型内、または取り出された状態で熱硬化炉内で熱硬化させる熱硬化工程を行う。これにより、磁性モールド40が形成される。その後、金型からコイル部品100が取り出される。なお、必要に応じて、磁性モールド40の表面の研磨が行われる。
また、上記乾燥工程と上記熱硬化工程は、同じ加熱装置中で、同じ加熱条件の下で行っても良い。
【0045】
以上のような第1実施形態によれば、コイル部品100は、柱状部11を含む第1磁性コア10と、柱状部11の一端面12に対して対向する第1主面21を有する第2磁性コア20と、非磁性材料により構成されていて第1主面21と一端面12との間に配置されており第1主面21と一端面12との間に磁気ギャップを構成している磁気ギャップ構成層50と、柱状部11が挿通されているコイル30と、磁性材料により構成されていて第1磁性コア10とコイル30とを覆っている磁性モールド40と、を備えている。そして、コイル部品100を柱状部11の軸心方向に視たときに、磁気ギャップ構成層50が柱状部11の周囲にはみ出している。
このような構成により、コイル30の内周面34と柱状部11の側周面14との間にクリアランスが存在し、このクリアランスに磁性モールド40の一部分が侵入していても、磁気ギャップ構成層50により構成される磁性ギャップの機能をより十分なものとすることができ、コイル部品100の直流重畳特性を向上することができる。また、L値の調整を容易に行うことができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
次に、
図6を用いて第2実施形態に係るコイル部品100について説明する。
本実施形態に係るコイル部品100は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係るコイル部品100と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係るコイル部品100と同様に構成されている。
【0047】
本実施形態の場合、磁気ギャップ構成層50は、第2磁性コア20の第1主面21とコイル30との間にも介在している。
すなわち、磁気ギャップ構成層50は、対向面(第1主面21)とコイル30との間にも配置されており、対向面とコイル30との間にも磁気ギャップを構成している。
これにより、コイル30と対向面(第1主面21)とが磁気ギャップ構成層50を介して離間した構成を実現できるため、コイル部品100の内部の耐圧性が向上するとともに、更に良好な直流重畳特性が得られる。
なお、本実施形態の場合、L値については上記の第1実施形態よりも低下する。
【0048】
より詳細には、本実施形態の場合、磁気ギャップ構成層50は対向面(第1主面21)の全面に配置されている。
このような構成によって、コイル部品100の内部の耐圧性がより確実に向上するとともに、磁性モールド40と第2磁性コア20との間にも磁気ギャップが形成されることによって、より一層良好な直流重畳特性が得られる。
また、対向面(第1主面21)の全面に磁気ギャップ構成層50を形成すれば良いため、磁気ギャップ構成層50の形成がより容易になるとともに、磁気ギャップの形成範囲をより拡大することができる。
【0049】
〔第3実施形態〕
次に、
図7を用いて第3実施形態に係るコイル部品100について説明する。
本実施形態に係るコイル部品100は、以下に説明する点で、上記の第2実施形態に係るコイル部品100と相違しており、その他の点では、上記の第2実施形態に係るコイル部品100と同様に構成されている。
【0050】
本実施形態の場合、磁気ギャップ構成層50は、第2磁性コア20の側周面23と、磁性モールド40において側周面23を覆っている部分と、の間にも介在している。
このように、本実施形態の場合、磁性モールド40は、板状コア(第2磁性コア20)の側周面23を覆っており、磁気ギャップ構成層50は、板状コアの側周面23と磁性モールド40との間にも配置されており、板状コアの側周面23と磁性モールド40において板状コアの側周面23を覆っている部分との間にも磁気ギャップを構成している。
このような構成により、更に優れた直流重畳特性を得ることができる。
【0051】
〔第4実施形態〕
次に、
図8を用いて第4実施形態に係るコイル部品100について説明する。
本実施形態に係るコイル部品100は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係るコイル部品100と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係るコイル部品100と同様に構成されている。
【0052】
本実施形態の場合、第1磁性コア10自体がT字型コアである。すなわち、本実施形態における第1磁性コア10は、第1実施形態における第1磁性コア10と同様の形状の柱状部11と、柱状部11における一端面12とは反対側の端部に連接されている板状部15と、を備えて構成されている。板状部15の平面形状は柱状部11の平面形状よりも広い。
コイル30は、第2磁性コア20の第1主面21と板状部15との間に配置されている。
本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0053】
なお、
図8では、磁気ギャップ構成層50の形成範囲が第1実施形態(
図1)と同様である例を示しているが、本実施形態においても、磁気ギャップ構成層50の形成範囲は、第2実施形態(
図6)又は第3実施形態(
図7)と同様にしてもよく、このようにすることによって、第2実施形態又は第3実施形態と同様の効果が得られる。
また、
図8では、磁性モールド40が板状部15の上面及び側周面を覆っている例を示しているが、板状部15の上面は磁性モールド40から露出していても良い。また、板状部15の側周面も磁性モールド40から露出していてもよい。
【0054】
〔第5実施形態〕
次に、
図9を用いて第5実施形態に係るコイル部品100について説明する。
本実施形態に係るコイル部品100は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係るコイル部品100と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係るコイル部品100と同様に構成されている。
【0055】
本実施形態の場合、第1磁性コア10及び第2磁性コア20がそれぞれ柱状(例えば円柱状)に形成されている。第1磁性コア10の形状は、第1実施形態で説明した通りである。第2磁性コア20は、互いに平行に配置されている一端面25と他端面26とを有している。第1磁性コア10と第2磁性コア20とは互いに同径に形成されている。第1磁性コア10及び第2磁性コア20が、コイル30に挿通されている。第1磁性コア10の軸心と第2磁性コア20の軸心とが互いに同軸に配置されている。
【0056】
第2磁性コア20の一端面25が第1磁性コア10の一端面12に対して対向(例えば平行に対向)している。
第1磁性コア10の一端面12と第2磁性コア20の一端面25との間には、磁気ギャップ構成層50が配置されている。本実施形態の場合、コイル部品100を柱状部11(第1磁性コア10)の軸心方向に視たときに、磁気ギャップ構成層50が柱状部11(第1磁性コア10)の周囲にはみ出しているとともに第2磁性コア20の周囲にはみ出している。
【0057】
本実施形態に係るコイル部品100は、更に、第3磁性コア60を備えている。第3磁性コア60は、第1実施形態における第2磁性コア20と同様のものである。すなわち、第3磁性コア60は、板状に形成された板状コアであり、互いに平行に配置されている第1主面61と第2主面62とを有している。そして、第3磁性コア60の第1主面61と第2磁性コア20の他端面26とが互いに対向(例えば平行に対向)している。
【0058】
第2磁性コア20の他端面26と第3磁性コア60の第1主面61との間には、磁気ギャップ構成層70が配置されている。磁気ギャップ構成層70は、第1実施形態における磁気ギャップ構成層50と同様のものである。コイル部品100を柱状部11(第1磁性コア10)の軸心方向に視たときに、磁気ギャップ構成層70が第2磁性コア20の周囲にはみ出している。
【0059】
本実施形態の場合、コイル部品100を柱状部11の軸心方向に視たときに、磁気ギャップ構成層50が柱状部11の周囲にはみ出しているとともに第2磁性コア20の周囲にはみ出していることにより、第1磁性コア10と第2磁性コア20との相互間での磁束の流れを良好に阻害できることから、磁気ギャップ構成層50により構成される磁性ギャップの機能を十分なものとすることができる。
更に、コイル部品100を柱状部11の軸心方向に視たときに、磁気ギャップ構成層70が第2磁性コア20の周囲にはみ出していることにより、第2磁性コア20と第3磁性コア60との相互間での磁束の流れを良好に阻害できることから、磁気ギャップ構成層70により構成される磁性ギャップの機能を十分なものとすることができる。
その結果、第1磁性コア10、第2磁性コア20及び第3磁性コア60の材料特性を上回る直流重畳特性を得ることができる。また、コイル部品100を柱状部11の軸心方向に視たときの柱状部11からの磁気ギャップ構成層50のはみ出し寸法や、第2磁性コア20からの磁気ギャップ構成層70のはみ出し寸法の調節により、L値の調整を行うことができる。
【0060】
以上、図面を参照して各実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、上記の各実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜に組み合わせることができる。
【0061】
例えば、各磁性コア(第1磁性コア10、第2磁性コア20、第3磁性コア60)の形状は、第1磁性コア10が柱状部11を含む限りにおいて、上述した例に限らない。磁性モールド40によりモールドされていて互いに隣り合って配置されている複数の磁性コアどうしの間に磁気ギャップ構成層が配置されていて、これら隣り合う磁性コアの並び方向にコイル部品を視たときに、磁気ギャップ構成層が少なくとも一方の磁性コアの外形線からはみ出していればよい。
【0062】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)柱状部を含んで構成されている第1磁性コアと、
前記柱状部の一端面に対して対向する対向面を有する第2磁性コアと、
非磁性材料により構成されていて前記対向面と前記一端面との間に配置されており、前記対向面と前記一端面との間に磁気ギャップを構成している磁気ギャップ構成層と、
前記柱状部が挿通されているコイルと、
磁性材料により構成されていて前記第1磁性コアと前記コイルとを覆っている磁性モールドと、
を備え、
前記柱状部の軸心方向に視たときに、前記磁気ギャップ構成層が前記柱状部の周囲にはみ出しているコイル部品。
(2)前記磁気ギャップ構成層は、前記対向面と前記コイルとの間にも配置されており、前記対向面と前記コイルとの間にも磁気ギャップを構成している(1)に記載のコイル部品。
(3)前記磁気ギャップ構成層は前記対向面の全面に配置されている(2)に記載のコイル部品。
(4)前記第2磁性コアは板状コアであり、
前記対向面は当該板状コアの一方の主面である(1)から(3)のいずれか一項に記載のコイル部品。
(5)前記磁性モールドは、前記板状コアの側周面を覆っており、
前記磁気ギャップ構成層は、前記板状コアの側周面と前記磁性モールドとの間にも配置されており、前記板状コアの側周面と前記磁性モールドにおいて前記板状コアの側周面を覆っている部分との間にも磁気ギャップを構成している(4)に記載のコイル部品。
(6)前記磁気ギャップ構成層は、前記一端面と前記対向面との対向間隔を規定する粒子状のフィラーを含有する樹脂材料により構成されている(1)から(5)のいずれか一項に記載のコイル部品。
(7)前記コイルは、平角線により構成されているエッジワイズコイルであり、
前記コイルの内周面と前記柱状部の側周面との間にクリアランスが存在している(1)から(6)のいずれか一項に記載のコイル部品。