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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-190915(P2018-190915A)
(43)【公開日】2018年11月29日
(54)【発明の名称】電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/40 20060101AFI20181102BHJP
   H01G 4/252 20060101ALI20181102BHJP
   H01G 4/232 20060101ALI20181102BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20181102BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20181102BHJP
【FI】
   H01G4/40 321
   H01G1/14 V
   H01G4/12 352
   H01F17/00 D
   H01G4/30 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-94578(P2017-94578)
(22)【出願日】2017年5月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】小坂 武史
(72)【発明者】
【氏名】天野 崇
【テーマコード(参考)】
5E001
5E070
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AC05
5E001AD04
5E001AD05
5E001AF03
5E001AH01
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ01
5E001AJ02
5E001AJ03
5E070AA05
5E070AB07
5E070CB04
5E070CB12
5E070CB13
5E070CB18
5E070EA01
5E070EB04
5E082AA01
5E082AB03
5E082BB05
5E082BC14
5E082BC35
5E082BC36
5E082BC38
5E082BC39
5E082DD08
5E082EE13
5E082EE23
5E082FF05
5E082FG22
5E082FG26
5E082FG27
5E082FG52
5E082FG54
5E082GG10
5E082GG26
5E082GG28
5E082JJ02
5E082JJ03
5E082JJ05
5E082JJ07
5E082JJ23
5E082KK01
5E082LL02
5E082PP09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】積層体の小型化および端子の厚さを均一化する。
【解決手段】ダイプレクサ100は、複数の誘電体層が積層され上面および下面を有する積層体10と、積層体内に設けられた複数の導電体パターンと、積層体の下面に設けられた複数の端子20に含まれ、第1金属層と、第1金属層の積層体と反対側に設けられた第2金属層とを備える第1端子と、複数の端子に含まれ、複数の導電体パターンのいずれを介しても複数の端子のうち他の端子と直流電流で導通せず複数の導電体パターンの少なくとも1つを介し互いに直流電流で導通するように設けられ、各々、第1金属層より薄い第3金属層と、第3金属層の前記積層体と反対側に設けられ、第2金属層より厚く第2金属層と同じ材料からなる第4金属層とを備え、合計の面積が前記第1端子の面積より大きい複数の第2端子と、を具備する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層が積層され、上面および下面を有する積層体と、
前記積層体内に設けられた複数の導電体パターンと、
前記積層体の前記下面に設けられた複数の端子に含まれ、前記複数の導電体パターンのいずれを介しても前記複数の端子のうち他の端子と直流電流で導通しないように設けられ、第1金属層と、前記第1金属層の前記積層体と反対側に設けられた第2金属層と、を備える第1端子と、
前記複数の端子に含まれ、前記複数の導電体パターンのいずれを介しても前記複数の端子のうち他の端子と直流電流で導通せずかつ前記複数の導電体パターンの少なくとも1つを介し互いに直流電流で導通するように設けられ、各々、前記第1金属層より薄い第3金属層と、前記第3金属層の前記積層体と反対側に設けられ、前記第2金属層より厚く前記第2金属層と同じ材料からなる第4金属層と、を備え、合計の面積が前記第1端子の面積より大きい複数の第2端子と、
を具備する電子部品。
【請求項2】
前記第2金属層および前記第4金属層は、前記第1金属層および前記第3金属層より融点の低い金属層を含む請求項1記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1端子と前記第2端子との厚さの差は、前記第2金属層と前記第4金属層との厚さの差より小さい請求項1または2記載の電子部品。
【請求項4】
前記複数の端子に含まれ、前記複数の導電体パターンのいずれを介しても前記複数の端子のうち他の端子に直流電流で導通しないように設けられ、複数のとき前記複数の導電体パターンの少なくとも1つを介し互いに直流電流で導通するように設けられ、各々、前記第1金属層より薄く前記第3金属層より厚い第5金属層と、前記第5金属層の前記積層体と反対側に設けられ、前記第2金属層より厚く前記第4金属層より薄く前記第2金属層および前記第4金属層と同じ材料からなる第6金属層と、を備え、合計の面積が前記第1端子の面積より大きく前記複数の第2端子の合計の面積より小さい1または複数の第3端子を具備する請求項1から4のいずれか一項記載の電子部品。
【請求項5】
前記複数の導電体パターンの少なくとも1つから形成された1または複数のインダクタと、
前記複数の導電体パターンの少なくとも1つから形成された1または複数のキャパシタと、
を具備し、
前記複数の第2端子は、前記1または複数のキャパシタの少なくとも1つを介し前記複数の端子のうち他の端子と直流電流で導通しないように設けられ、
前記第1端子および前記複数の第2端子の少なくとも一方の複数の端子は、前記1または複数のインダクタの少なくとも1つを介し互いに直流電流で導通するように設けられている請求項1から4のいずれか一項記載の電子部品。
【請求項6】
前記1または複数のインダクタの少なくとも1つおよび前記1または複数のキャパシタの少なくとも1つを有するフィルタを具備する請求項5記載の電子部品。
【請求項7】
前記1または複数のインダクタのうち少なくとも1つおよび前記1または複数のキャパシタのうち少なくとも1つを有する第1フィルタと、
前記1または複数のインダクタのうち別の少なくとも1つおよび前記1または複数のキャパシタのうち別の少なくとも1つを有する第2フィルタと、を含むマルチプレクサを具備する請求項7記載の電子部品。
【請求項8】
前記積層体は、直方体形状であり、前記直方体のうち最も大きい面の短辺および長辺は、それぞれ0.8mm以下および1.6mm以下である請求項1から7のいずれか一項記載の電子部品。
【請求項9】
前記積層体の前記上面には他の電子部品を実装する端子は設けられていない請求項1から9のいずれか一項記載の電子部品。
【請求項10】
上面および下面を有する積層体内に複数の導電体パターンが設けられ、複数の誘電体層が積層された前記積層体を形成する工程と、
前記積層体の前記下面に設けられる複数の端子に含まれ、前記複数の導電体パターンのいずれを介しても前記複数の端子のうち他の端子と直流電流が導通しないように設けられた第1端子の一部である第1金属層と、前記複数の端子に含まれ、前記複数の導電体パターンのいずれを介しても前記複数の端子のうち他の端子と直流電流が導通せずかつ前記複数の導電体パターンの少なくとも1つを介し互いに直流電流が導通するように設けられ、合計の面積が前記第1端子の面積より大きい複数の第2端子の一部であり、前記第1金属層より薄い第3金属層を形成する工程と、
前記第1金属層および前記第3金属層を形成した後、前記第1金属層の前記積層体と反対側に第2金属層と、前記第3金属層の前記積層体の反対側に前記第2金属層より厚い第4金属層と、を同時に、バレルメッキ法を用い形成する工程と、
を含む電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記第1金属層および前記第3金属層を形成する工程の後、前記積層体を個片化する工程と、
前記個片化する工程の後、前記積層体を焼成する工程と、
を含み、
前記第2金属層および前記第4金属層を形成する工程は、個片化された積層体に前記焼成する工程の焼成温度より融点の低い金属層を含む前記第2金属層および前記第4金属層を同時にバレルメッキ法を用い形成する工程である請求項10記載の電子部品の製造方法。
【請求項12】
複数の誘電体層が積層され、上面および下面を有する積層体と、
前記積層体内に設けられた複数の導電体パターンと、
前記積層体の前記下面に設けられた複数の端子に含まれ、前記複数の導電体パターンのいずれを介しても前記複数の端子のうち他の端子と直流電流で導通せずかつ前記複数の導電体パターンの少なくとも1つを介し互いに直流電流で導通するよう設けられ、各々、第1金属層と、前記第1金属層の前記積層体と反対側に設けられた第2金属層と、を備える複数の第1端子と、
前記複数の端子に含まれ、前記複数の導電体パターンのいずれを介しても前記複数の端子のうち他の端子と直流電流で導通せずかつ前記複数の導電体パターンの少なくとも1つを介し互いに直流電流で導通するよう設けられ、各々、前記第1金属層より薄い第3金属層と、前記第3金属層の前記積層体と反対側に設けられ、前記第2金属層より厚く前記第2金属層と同じ材料からなる第4金属層と、を備え、合計の面積が前記複数の第1端子の合計の面積より大きい複数の第2端子と、
を具備する電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品およびその製造方法に関し、例えば複数の誘電体層が積層された電子部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートホンや携帯電話等の無線通信端末等に用いられる電子部品として、内部に複数の導電体パターンを有し誘電体層を積層した積層体を有する電子部品が知られている。電子部品の小型化のため、積層体の下面に端子(ランド電極)を有するLGA(Land Grid Array)を用いることが知られている。端子の厚さを均一化するため、端子の一部と直流(DC:Direct Current)的に接続されたメッキ用電極を積層体の表面に設けることが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−39334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、メッキ用電極は、周辺の導電体パターンと高周波的に干渉する。このような干渉を抑制しようとすると、メッキ用電極と導電体パターンとの間にスペースを確保することになる。これにより、電子部品が大型化する。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、積層体の小型化および端子の厚さの均一化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の誘電体層が積層され、上面および下面を有する積層体と、前記積層体内に設けられた複数の導電体パターンと、前記積層体の前記下面に設けられた複数の端子に含まれ、前記複数の導電体パターンのいずれを介しても前記複数の端子のうち他の端子と直流電流で導通しないように設けられ、第1金属層と、前記第1金属層の前記積層体と反対側に設けられた第2金属層と、を備える第1端子と、前記複数の端子に含まれ、前記複数の導電体パターンのいずれを介しても前記複数の端子のうち他の端子と直流電流で導通せずかつ前記複数の導電体パターンの少なくとも1つを介し互いに直流電流で導通するように設けられ、各々、前記第1金属層より薄い第3金属層と、前記第3金属層の前記積層体と反対側に設けられ、前記第2金属層より厚く前記第2金属層と同じ材料からなる第4金属層と、を備え、合計の面積が前記第1端子の面積より大きい複数の第2端子と、を具備する電子部品である。
【0007】
上記構成において、前記第2金属層および前記第4金属層は、前記第1金属層および前記第3金属層より融点の低い金属層を含む構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記第1端子と前記第2端子との厚さの差は、前記第2金属層と前記第4金属層との厚さの差より小さい構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記複数の端子に含まれ、前記複数の導電体パターンのいずれを介しても前記複数の端子のうち他の端子に直流電流で導通しないように設けられ、複数のとき前記複数の導電体パターンの少なくとも1つを介し互いに直流電流で導通するように設けられ、各々、前記第1金属層より薄く前記第3金属層より厚い第5金属層と、前記第5金属層の前記積層体と反対側に設けられ、前記第2金属層より厚く前記第4金属層より薄く前記第2金属層および前記第4金属層と同じ材料からなる第6金属層と、を備え、合計の面積が前記第1端子の面積より大きく前記複数の第2端子の合計の面積より小さい1または複数の第3端子を具備する構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記複数の導電体パターンの少なくとも1つから形成された1または複数のインダクタと、前記複数の導電体パターンの少なくとも1つから形成された1または複数のキャパシタと、を具備し、前記第1端子および前記複数の第2端子の少なくとも一方の端子は、前記1または複数のキャパシタの少なくとも1つを介し前記複数の端子のうち他の端子と直流電流で導通しないように設けられ、前記複数の第2端子は、前記1または複数のインダクタの少なくとも1つを介し互いに直流電流で導通するように設けられている構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記1または複数のインダクタの少なくとも1つおよび前記1または複数のキャパシタの少なくとも1つを有するフィルタを具備する構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記1または複数のインダクタのうち少なくとも1つおよび前記1または複数のキャパシタのうち少なくとも1つを有する第1フィルタと、前記1または複数のインダクタのうち別の少なくとも1つおよび前記1または複数のキャパシタのうち別の少なくとも1つを有する第2フィルタと、を含むマルチプレクサを具備する構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記積層体は、直方体形状であり、前記直方体のうち最も大きい面の短辺および長辺は、それぞれ0.8mm以下および1.6mm以下である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記積層体の前記上面には他の電子部品を実装する端子は設けられていない構成とすることができる。
【0015】
本発明は、上面および下面を有する積層体内に複数の導電体パターンが設けられ、複数の誘電体層が積層された前記積層体を形成する工程と、前記積層体の前記下面に設けられる複数の端子に含まれ、前記複数の導電体パターンのいずれを介しても前記複数の端子のうち他の端子と直流電流が導通しないように設けられた第1端子の一部である第1金属層と、前記複数の端子に含まれ、前記複数の導電体パターンのいずれを介しても前記複数の端子のうち他の端子と直流電流が導通せずかつ前記複数の導電体パターンの少なくとも1つを介し互いに直流電流が導通するように設けられ、合計の面積が前記第1端子の面積より大きい複数の第2端子の一部であり、前記第1金属層より薄い第3金属層を形成する工程と、前記第1金属層および前記第3金属層を形成した後、前記第1金属層の前記積層体と反対側に第2金属層と、前記第3金属層の前記積層体の反対側に前記第2金属層より厚い第4金属層と、を同時に、バレルメッキ法を用い形成する工程と、を含む電子部品の製造方法である。
【0016】
上記構成において、前記第1金属層および前記第3金属層を形成する工程の後、前記積層体を個片化する工程と、前記個片化する工程の後、前記積層体を焼成する工程と、を含み、前記第2金属層および前記第4金属層を形成する工程は、個片化された積層体に前記焼成する工程の焼成温度より融点の低い金属層を含む前記第2金属層および前記第4金属層を同時にバレルメッキ法を用い形成する工程である構成とすることができる。
【0017】
本発明は、複数の誘電体層が積層され、上面および下面を有する積層体と、前記積層体内に設けられた複数の導電体パターンと、前記積層体の前記下面に設けられた複数の端子に含まれ、前記複数の導電体パターンのいずれを介しても前記複数の端子のうち他の端子と直流電流で導通せずかつ前記複数の導電体パターンの少なくとも1つを介し互いに直流電流で導通するよう設けられ、各々、第1金属層と、前記第1金属層の前記積層体と反対側に設けられた第2金属層と、を備える複数の第1端子と、前記複数の端子に含まれ、前記複数の導電体パターンのいずれを介しても前記複数の端子のうち他の端子と直流電流で導通せずかつ前記複数の導電体パターンの少なくとも1つを介し互いに直流電流で導通するよう設けられ、各々、前記第1金属層より薄い第3金属層と、前記第3金属層の前記積層体と反対側に設けられ、前記第2金属層より厚く前記第2金属層と同じ材料からなる第4金属層と、を備え、合計の面積が前記複数の第1端子の合計の面積より大きい複数の第2端子と、を具備する電子部品である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、積層体の小型化および端子の厚さの均一化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施例1に係るダイプレクサの回路図である。
図2図2(a)および図2(b)は、実施例1に係るダイプレクサの斜視図およびB−B断面図である。
図3図3は、実施例1における積層体の解体斜視図(その1)である。
図4図4は、実施例1における積層体の解体斜視図(その2)である。
図5図5は、実施例1に係るダイプレクサの製造方法を示すフローチャートである。
図6図6(a)および図6(b)は、比較例1に係るダイプレクサの断面図である。
図7図7(a)および図7(b)は、実施例1に係るダイプレクサの断面図である。
図8図8(a)から図8(c)は、実施例1における金属層21の形成方法を示す断面図である。
図9図9(a)から図9(c)は、実施例1における金属層21の別の形成方法を示す断面図である。
図10図10は、実施例2に係るダイプレクサの回路図である。
図11図11は、実施例2に係るダイプレクサの斜視図である。
図12図12(a)および図12(b)は、実施例2に係るダイプレクサの断面図である。
図13図13は、実施例3に係るダイプレクサの回路図である。
図14図14は、実施例3に係るダイプレクサの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
電子部品としてダイプレクサを例に説明する。図1は、実施例1に係るダイプレクサの回路図である。図1に示すように、ダイプレクサ100において共通端子Taと端子T1との間にLPF(ローパスフィルタ)24が接続されている。共通端子Taと端子T2との間にHPF(ハイパスフィルタ)26が接続されている。LPF24およびHPF26のグランド側はグランド端子Tgに接続されている。
【0022】
LPF24はインダクタL11およびL12とキャパシタC11からC13を備えている。インダクタL11およびL12は共通端子Taと端子T1との間に直列に接続されている。キャパシタC11はインダクタL12に並列に接続されている。キャパシタC12およびC13は、それぞれノードN1とグランド端子Tgとの間およびノードN2とグランド端子Tgとの間にそれぞれ接続されている。
【0023】
HPF26は、インダクタL21およびキャパシタC21からC23を備えている。キャパシタC21およびC23は共通端子Taと端子T2との間に直列に接続されている。キャパシタC22およびインダクタL21はキャパシタC21とC23との間のノードN3とグランド端子Tgとの間に直列に接続されている。
【0024】
各インダクタのインダクタンスは、例えば以下である。
L11:7nH、L12:4nH、L21:6nH
各キャパシタのキャパシタンスは以下である。
C11:2pF、C12:4pF、C13:2.5pF
C21:2.5pF、C22:5pF、C23:3pF
各フィルタの通過帯域は、例えば以下の周波数帯域を含むように設定されている。
LPF24:669MHz〜960MHz
HPF26:1710MHz〜2690MHz
【0025】
LPF24は、共通端子Ta(または端子T1)に入力する高周波信号のうち通過帯域内の信号を端子T1(または共通端子Ta)に通過させHPF26の通過帯域の信号を抑圧する。HPF26は、共通端子Ta(または端子T2)に入力する高周波信号のうち通過帯域内の信号を端子T2(または共通端子Ta)に通過させLPF24の通過帯域の信号を抑圧する。共通端子Taには例えばアンテナが接続される。端子T1およびT2には例えば高周波スイッチ等を介してそれぞれ低周波帯域用および高周波帯域用のデュプレクサが接続される。
【0026】
図2(a)および図2(b)は、実施例1に係るダイプレクサの斜視図およびB−B断面図である。図2(a)は、積層体10を透過して端子電極20を図示している。以下の斜視図も同様である。図2(a)および図2(b)に示すように、積層体10の下面に端子電極20が設けられている。端子電極20は、共通端子Ta、端子T1、T2およびグランド端子Tgを含む。端子電極20はLGAのランド電極であり、図2(b)のように、マザーボード30(回路基板または配線基板)に接続するための端子である。このため、全ての端子が積層体10の下面に設けられている。端子電極20は、積層体10の下面に設けられた金属層21と、金属層21の積層体10と反対側に設けられた金属層22と、を有する。
【0027】
端子電極20の大きさおよび面積は、例えば以下である。
共通端子Ta:180μm×125μm、22500μm
端子T1:180μm×400μm、72000μm
端子T2:180μm×400μm、72000μm
グランド端子Tg:180μm×125μm、22500μm
【0028】
共通端子Taと端子T1とは図1のようにインダクタL11およびL12を介し直流的に接続されている(図2(a)の実線52)。端子T2およびグランド端子Tgは、他の端子との間にキャパシタC12、C13またはC22が接続されており、他の端子と直流的に接続されていない。
【0029】
図3および図4は、実施例1における積層体の解体斜視図である。図3および図4に示すように、複数の誘電体層11aから11iが積層されている。誘電体層11bから11iの間に導電体パターン12bから12iが形成されている。誘電体層11iの下面に端子電極20が形成されている。端子電極20は、共通端子Ta、端子T1、T2およびグランド端子Tgに対応する。
【0030】
導電体パターン12bから12iはインダクタのコイル14およびキャパシタの電極15を形成する。導電体パターン12bから12i間はビア配線13により接続される。ビア配線13の接続は垂直方向の破線で示す。この例では、導電体パターン12bおよび12cにより、インダクタL11およびL21が形成され、導電体パターン12dおよび12eによりインダクタL12が形成される。導電体パターン12fおよび12gによりキャパシタC11およびC22が形成される。導電体パターン12fから12hによりキャパシタC12が形成される。導電体パターン12gから12iによりキャパシタC21およびC23が形成される。導電体パターン12hおよび12iによりキャパシタC13が形成される。
【0031】
LPF24に含まれるキャパシタの電極15およびコイル14と、HPF26に含まれるキャパシタの電極15およびコイル14と、は平面視において重なっていない。これにより、LPF24とHPF26との干渉を抑制することができる。
【0032】
各誘電体層11aから11iの膜厚は、例えば、35μm、15μm、80μm、15μm、75μm、10μm、10μm、10μmおよび35μmである。
【0033】
図5は、実施例1に係るダイプレクサの製造方法を示すフローチャートである。図5に示すように、シート状の誘電体層11を形成する(ステップS10)。誘電体層11は例えばドクターブレード法を用い作製する。誘電体層11は、例えばAl、Siおよび/またはCa等の酸化物を含むセラミックス材料である。
【0034】
誘電体層11を貫通するビア配線13を形成する(ステップS12)。例えば誘電体層11を貫通するビアホールをレーザ光照射により形成する。スキージ法等を用いビアホール内にビア配線13を形成する。
【0035】
誘電体層11の表面に導電体パターン12を形成する(ステップS14)。導電体パターン12は例えばスクリーン印刷法または転写法を用い形成する。導電体パターン12およびビア配線13は、例えばAg、Pd、Pt、Cu、Ni、Au、Au−Pd合金またはAg−Pt合金等の金属層である。
【0036】
誘電体層11のうち最も下層の誘電体層11iの下面に端子電極20のうち金属層21を形成する(ステップS16)。金属層21は例えばスクリーン印刷法または転写法を用い形成する。金属層21は、例えばAg、CuまたはAu等の金属層である。
【0037】
誘電体層11を積層し圧着する(ステップS18)。誘電体層11の積層には例えば熱加圧または接着剤を用いる。これにより、積層体が形成される。
【0038】
積層体をカットし個片化する(ステップS20)。積層体のカットは、例えばブレードを用いた押し切りにより行う。積層体は焼成の前のため容易に押し切りすることができる。
【0039】
積層体を焼成する(ステップS22)。焼成温度は、700℃以上である。これにより、誘電体層11が焼結体となる。焼成温度は、導電体パターン12および金属層21の融点より低いため、導電体パターン12および金属層21が溶融することはない。
【0040】
メッキ法を用い金属層21の下面に金属層22を形成する(ステップS24)。金属層22の形成には例えばバレルメッキ法を用いる。バレルメッキ法では、積層体10と導電性の金属粒(メディア)をメッキ液に浸す。メッキ液を攪拌しながらメッキ液に電流を流す。これにより、金属層21の表面にメッキ金属が析出する。電流は、メディアが積層体10の電極に接触したときに流れメッキ金属が析出する。金属層21の面積が大きいと、金属層21がメディアに接触する確率が高くなる。これにより、メッキ金属の析出量が多くなる。このように、メッキ金属の析出量は、金属層21の面積に依存する。金属層22は、例えば金属層21側からNi膜およびSn膜である。Sn膜は、電子部品をマザーボード等に実装するための半田層であり、Ni膜は、半田層と金属層21との間の相互拡散を抑制するためのバリア層である。
【0041】
電子部品の特性を検査する(ステップS26)。以上により、実施例1に係るダイプレクサが完成する。
【0042】
ステップS20の積層体をカットし個片化する工程はステップS22の焼成工程の前が好ましい。積層体を焼成すると積層体が硬くなるため押し切りができず、高価なダイシング工程等を行うことになるためである。ステップS24の金属層22の形成はステップS22の焼成工程の後が好ましい。金属層22として焼成温度より融点の低い半田等を用いると、焼成工程で溶融してしまうためである。ステップS24では、個片化した積層体10に金属層22を形成するため、バレルメッキ法を用いる。
【0043】
図2(a)のように、共通端子Taおよびグランド端子Tgは端子T1およびT2の面積より小さい。共通端子Taおよびグランド端子Tgが小さいのは小型化のためである。端子電極20内で面積を異ならせるのは、マザーボード30に実装するときの要求による。特に、端子電極20をLGAとすると、端子電極20は、積層体10の面のうち下面にのみ設けられることになる。ダイプレクサを小型化しようとすると、積層体10の下面の面積が小さくなる。よって、端子電極20の配置に制約ができ、端子電極20のうち一部の面積が小さくなる。
【0044】
図5のステップS24において、メッキ金属の析出量は、端子電極20(すなわち金属層21)の面積にほぼ比例する。すなわち、金属層22の膜厚は端子電極20の面積にほぼ比例する。導電体パターンを介し直流的に接続されている端子電極20における金属層22の膜厚は、接続された端子電極20の合計の面積に比例する。例えば、共通端子Taおよび端子T1は、インダクタL11およびL12を介し(導電体パターン12bから12iを介し)直流的に接続されている。このため、バレルメッキを行なうときの共通端子Taおよび端子T1の実質的な面積は、共通端子Taと端子T1の合計の面積となる。
【0045】
図6(a)および図6(b)は、比較例1に係るダイプレクサ110の断面図である。図6(a)および図6(b)は、それぞれ図2(a)のA−A断面およびB−B断面に相当する。図6(a)および図6(b)に示すように、金属層21の膜厚t1は、一定とし、例えば10μmとする。端子T1、T2、共通端子Taおよびグランド端子Tgにおける金属層22の膜厚をそれぞれt12,t22、ta2およびtg2とする。
【0046】
比較例1におけるダイプレクサ110の各端子における金属層22の膜厚は各端子の面積(直流的に接続されている場合、接続された端子の面積の合計)に比例する。金属層22の最低の膜厚を3μmとしたとき、各端子電極20の実質的な面積(直流的に接続された端子電極20の合計の面積)および金属層22の膜厚は例えば以下となる。
共通端子Ta:94500μm、ta2=12.6μm
端子T1:94500μm、t12=12.6μm
端子T2:72000μm、t22=9.6μm
グランド端子Tg:22500μm、tg2=3μm
【0047】
端子T2およびグランド端子Tgは共通端子Taおよび端子T1より薄くなってしまう。これにより、ダイプレクサ110のコプラナリティが悪化する。よって、ダイプレクサ110をマザーボード30に実装したときに、端子T1およびグランド端子Tgとマザーボード30との接合が弱くなってしまう可能性がある。
【0048】
図7(a)および図7(b)は、実施例1に係るダイプレクサの断面図である。図7(a)および図7(b)は、それぞれ図2(a)のA−A断面およびB−B断面に相当する。実施例1のダイプレクサ100では、金属層21の膜厚を端子ごとに異ならせる。端子T1、T2、共通端子Taおよびグランド端子Tgにおける金属層21の膜厚をそれぞれt11,t21、ta1およびtg1とする。各端子電極20の金属層21および22の膜厚は例えば以下となる。
共通端子Ta:ta1=10μm、ta2=12.6μm
端子T1:t11=10μm、t12=12.6μm
端子T2:t21=13μm、t22=9.6μm
グランド端子Tg:tg1=19.6μm、tg2=3μm
以上により、各端子電極20の膜厚はほぼ22.6μmとなる。このように、端子電極20の膜厚を均一化でき、コプラナリティを向上できる。
【0049】
特許文献1の方法では、コプラナリティは向上するものの、導電体パターンと接続されるメッキ用電極を積層体の表面に設ける。これにより、他の導電体パターンと高周波的に干渉してしまう。干渉を抑制しようとすると、メッキ用電極と導電体パターンとの配置の関係が制限される。これにより、電子部品が大型化してしまう。実施例1では、このような導電体パターンの配置の制限がないため、電子部品を小型化できる。
【0050】
図5のステップS24における金属層22の形成方法の例を説明する。図8(a)から図8(c)は、実施例1における金属層21の形成方法を示す断面図である。図8(a)に示すように、誘電体層11上(積層体の下面に相当する)に金属層21aを形成する。図8(b)に示すように、誘電体層11上に金属層21bを形成する。図8(c)に示すように、誘電体層11上に金属層21cを形成する。金属層21aから21cは、例えばスクリーン印刷法または転写法を用い形成する。このように、金属層21aから21cの厚さをそれぞれ異ならせて形成してもよい。金属層21aから21cを形成する順番は問わないが、金属層21aから21cのうち薄い金属層21aから順に形成することが好ましい。これにより、前に形成された金属層が後の金属層の形成工程の障害となることを抑制できる。
【0051】
図9(a)から図9(c)は、実施例1における金属層21の別の形成方法を示す断面図である。図9(a)に示すように、誘電体層11上に金属層21bおよび21cの一部となる金属層21dを形成する。図9(b)に示すように、誘電体層11上に金属層21cの一部となる金属層21eを形成する。図9(c)に示すように、誘電体層11上に金属層21aから21cの一部となる金属層21fを形成する。金属層21fにより金属層21aが形成される。金属層21dおよび21fにより金属層21bが形成される。金属層21dから21fにより金属層21cが形成される。金属層21dから21fは、例えばスクリーン印刷法または転写法を用い形成する。
【0052】
金属層21aから21cは、スクリーン印刷法および転写法以外に、インクジェット法を用い形成してもよい。
【0053】
このように、1または複数の金属層21dから21fを積層することにより金属層21aから21cを形成してもよい。金属層21aから21cを形成する順番は問わないが、金属層21dから21fのうち薄い金属層21dから順に形成することが好ましい。これにより、前に形成された金属層が後の金属層の形成工程の障害となることを抑制できる。金属層21bおよび21cの膜厚が、スクリーン印刷法または転写法を用い一度に形成できる膜厚を越えている場合、図9(a)から図9(c)の金属層21の形成方法を用いることが好ましい。
【実施例2】
【0054】
図10は、実施例2に係るダイプレクサの回路図である。図10に示すように、ダイプレクサ102では、グランド端子Tgが3つ設けられている。その他の構成は実施例1の図1と同じであり説明を省略する。
【0055】
図11は、実施例2に係るダイプレクサの斜視図である。図11に示すように、ダイプレクサ102では、積層体10の下面に端子電極20が設けられている。端子電極20は、共通端子Ta、端子T1、T2および3つのグランド端子Tgを含む。端子電極20の大きさは互いに同じであり、端子電極20の1つ当たりの大きさは180μm×125μm、面積は22500μmである。
【0056】
共通端子Taと端子T1とは図10のようにインダクタL11およびL12を介し直流的に接続されている(図11の実線52)。3つのグランド端子Tgは直流的に接続されている(図15の点線54)。端子T2は、他の端子との間にキャパシタC23が接続されており、他の端子と直流的に接続されていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0057】
図12(a)および図12(b)は、実施例2に係るダイプレクサの断面図である。図12(a)および図12(b)は、それぞれ図11のA−A断面およびB−B断面に相当する。実施例2のダイプレクサ102では、共通端子Taと端子T1が直流的に接続され、3つのグランド端子Tgが直流的に接続されている。よって、共通端子Taおよび端子T1と端子T2と3つのグランド端子Tgとの実質的な面積比は2:1:3である。
【0058】
金属層22の最低の膜厚を4μmとしたとき、各端子電極20の金属層21および22の膜厚を、例えば以下とする。
共通端子Ta:ta1=14μm、ta2=8μm
端子T1:t11=14μm、t12=8μm
端子T2:t21=18μm、t22=4μm
グランド端子Tg:tg1=10μm、tg2=12μm
各端子電極20の膜厚はほぼ22μmとなる。このように、端子電極20の膜厚を均一化でき、コプラナリティを向上できる。
【実施例3】
【0059】
図13は、実施例3に係るダイプレクサの回路図である。図13に示すように、ダイプレクサ104では、グランド端子Tgが2つ設けられている。インダクタおよびキャパシタに接続されていないダミー端子Tdが設けられている。その他の構成は実施例2の図10と同じであり説明を省略する。
【0060】
図14は、実施例3に係るダイプレクサの斜視図である。図14に示すように、ダイプレクサ104では、端子電極20は、共通端子Ta、端子T1、T2、2つのグランド端子Tgおよびダミー端子Tdを含む。ダミー端子Tdは積層体10内の導電体パターンとは電気的に接続されておらず、マザーボード30と機械的に接続するための端子である。
【0061】
共通端子Taおよび端子T1と端子T2と2つのグランド端子Tgとダミー端子Tdとの実質的な面積比は2:1:2:1である。実施例1および2と同様に、金属層21の膜厚を各端子電極20で異ならせる。これにより、端子電極20の膜厚を均一化でき、コプラナリティを向上できる。その他の構成は実施例2と同じであり説明を省略する。
【0062】
以下に実施例1から3をまとめる。積層体10の下面に設けられた複数の端子電極20を、複数の端子群AからCに分けて考える。積層体10内の導電体パターン12bから12iのいずれを介しても他の端子電極20に直流電流が導通しないように設けられておらず、複数の導電体パターン12bから12iの少なくとも1つを介し互いに直流電流が導通するように設けられた1または複数の端子電極20を端子群AからCとする。
【0063】
表1は実施例1における端子群AからCをまとめた表である。実施例1では、表1および図2(a)のように、端子T1と共通端子Taが端子群Aであり、グランド端子Tgは端子群B、端子T2は端子群Cである。
【表1】
【0064】
表2は実施例2における端子群AからCをまとめた表である。実施例2では、表2および図11のように、3つのグランド端子Tgが端子群Aであり、端子T1と共通端子Taが端子群Bであり、端子T2は端子群Cである。
【表2】
【0065】
表1および表2に示すように、端子群Aが最も合計の面積が大きく金属層22が最も厚くなる。このため、端子群Aの金属層21を最も薄くする。端子群Cが最も合計の面積が小さく金属層22が最も薄くなる。このため、端子群Cの金属層21を最も厚くする。端子群Bにおける合計の面積は端子群Aより小さく端子群Cより大きい。端子群Bの金属層22は、端子群Aより薄く端子群Cより厚くなる。このため、端子群Bの金属層21を、端子群Aより厚く端子群Cより薄くする。
【0066】
例えば、端子群A(1または複数の第2端子)の合計の面積は端子群B(1または複数の第1端子)より大きい。このとき、端子群Aの金属層21(第3金属層)は、端子群Bの金属層21(第1金属層)より薄い。端子群Aの金属層22(第4金属層)は、端子群Bの金属層22(第2金属層)より厚い。端子群Aと端子群Cとの関係、および端子群Bと端子群Cとの関係も上記端子群Aと端子群Bとの関係と同様である。
【0067】
このように、合計面積の大きい端子群Aの金属層22が端子群Bより厚くなっても、端子群Aの金属層21を端子群Bより薄くする。これにより、端子電極20の厚さを均一化することができる。特許文献1のように導電体パターンの一部と接続されたメッキ用電極を形成すると、導電体パターンとメッキ用電極との干渉を抑制するため積層体10が大型化する。実施例1から3では、導電体パターン12bから12iと接続されたメッキ用電極を設けなくてもよいため、積層体10の小型化が可能となる。
【0068】
端子群Aと端子群Bとの端子電極20の厚さの差は、端子群Aの金属層22と端子群Bの金属層22との厚さの差より小さい。このように、金属層21の厚さを調整することで、端子電極20の厚さを均一化することができる。端子群AからCの端子電極20の厚さは、互いに略同じであることが好ましい。
【0069】
実施例2の端子群Aと端子群Bのように、1または複数の第1端子および1または複数の第2端子はいずれも複数でもよい。実施例1の端子群Aと端子群B、実施例2の端子群Aと端子群Cまたは端子群Bと端子群Cとのように、1または複数の第1端子および1または複数の第2端子のいずれか一方の端子は複数であり、他方の端子は1であってもよい。実施例1の端子群Bおよび端子群Cのように、1または複数の第1端子および1または複数の第2端子はいずれも1でもよい。
【0070】
端子群Aを1または複数の第1端子とし、端子群Cを1または複数の第2端子としてもよい。端子群Bを1または複数の第3端子としてもよい。端子群Bの合計の面積は端子群Cの合計の面積より大きく端子群Aの合計の面積より小さくなる。このとき、端子群Bの金属層21は端子群Aの金属層21より厚く端子群Cの金属層21より薄い。端子群Bの金属層22は端子群Aの金属層21より薄く端子群Cの金属層21より厚い。このように、端子電極20は、3以上の端子群を有してもよい。
【0071】
実施例1および2のように、端子電極20は全て導電体パターン12bから12iの少なくとも1つに接続されていてもよい。実施例3のダミー端子Tdのように、端子電極20の一部の端子電極20は、導電体パターン12bから12iのいずれとも接続されていなくてもよい。実装に影響せず、コプラナリティが問題とならない端子電極20は、金属層21の膜厚を調整しなくてもよい。
【0072】
図3および図4のように、1または複数のインダクタが複数の導電体パターン12bから12iの少なくとも1つから形成され、1または複数のキャパシタが複数の導電体パターン12bから12iの少なくとも一部から形成されている。図1および図10のように、各端子群AからCは、1または複数のキャパシタの少なくとも1つを介し他の端子と直流電流が導通しないように設けられている。また、同じ端子群AからはC内の複数の端子電極20は、1または複数のインダクタの少なくとも1つを介し互いに直流電流が導通する。このように、導電体パターン12bから12iにより、インダクタおよびキャパシタが形成されていてもよい。
【0073】
図1および図10のように、積層体10には、1または複数のインダクタの少なくとも1つおよび1または複数のキャパシタの少なくとも1つを有するフィルタ(LPF24およびHPF26)が形成されていてもよい。各フィルタ内のキャパシタおよびインダクタの個数および接続関係は任意に設計できる。また、フィルタは、バンドパスフィルタまたはバンドストップフィルタでもよい。積層体10にはカップラが形成されていてもよい。
【0074】
LPF24(第1フィルタ)は、1または複数のインダクタのうち少なくとも1つおよび1または複数のキャパシタのうち少なくとも1つを有する。HPF26(第2フィルタ)は、1または複数のインダクタのうち別の少なくとも1つおよび1または複数のキャパシタのうち別の少なくとも1つを有する。電子部品はLPF24とHPF26を有するマルチプレクサでもよい。マルチプレクサとしてはダイプレクサ以外に、デュプレクサ、トライプレクサまたはクワッドプレクサ等でもよい。
【0075】
金属層22は、バレルメッキ法を用い形成される。バレルメッキ法を用いると合計の面積が大きい端子群Aの金属層22が端子群Bより厚くなる。よって、端子群Aの金属層21を端子群Bより薄くすることが好ましい。これにより、端子電極20の厚さを均一化することができる。
【0076】
図5のステップS16において金属層21を形成した後、ステップS20のように積層体10を個片化する。これにより、個片化工程を押し切り等の簡易な方法で行うことができる。個片化後、ステップS24のように、個片化された積層体10に焼成温度より融点の低い金属層を含む端子群Aと端子群Bとの金属層22を同時にバレルメッキ法を用い形成する。バレルメッキ法により、焼成温度より融点の低い金属層22を個片化された積層体10に形成できる。
【0077】
実施例1から3では、積層体10の上面に他の電子部品を実装する端子が設けられていない誘電体フィルタを例に説明したが、積層体10は回路基板であり、積層体10上に他の電子部品が実装されていてもよい。積層体10を誘電体フィルタとして用いる場合、積層体10の直方体形状のうち最も大きい面の短辺および長辺は、それぞれ0.8mm以下および1.6mm以下であることが好ましい。短辺および長辺は0.7mm以下および1.5以下がより好ましい。
【0078】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
10 積層体
11、11a−11i 誘電体層
12、12b−12j 導電体パターン
13、13a、13b ビア配線
14 コイル
15 電極
20 端子電極
24 LPF
26 HPF
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14