【解決手段】一実施形態に係る発電体は、第1面を有する第1部材と、第2面を有する第2部材とを備える。第1部材は、第1面を構成する第1絶縁膜を有する。第2部材は、第2面を構成し、かつ第1絶縁膜と接することにより第1絶縁膜と逆の極性に帯電する第2絶縁膜を有する。第1部材と前記第2部材とは、第1面と第2面とが対向して接するように配置される。第1部材及び第2部材が相対的に近づくように圧力が加わることにより、第1面と第2面との真実接触面積が変化する。
前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜を構成する材料は、ポリメチルメタクリレート、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリイソプチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリクロロプレン、天然ゴム、ポリアクリロニトリル、ポリジフェノールカーボネート、塩化ポリエーテル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン及び六フッ化プロピレン共重合体からなる群から選択され、
前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜を構成する材料は、互いに異なる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発電体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発電体においては、第1電極構造体と第2電極構造体とを離間して配置する必要があるため、発電体の構造が複雑となる。特許文献2に記載の発電体においては、導電層の下面を摩擦層の上面に対して相対的にスライド可能な構造を有する必要があるため、発電体の構造が複雑となる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。具体的には、本発明は、構造をシンプル化させることが可能な発電体、発電装置及び圧力センサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る発電体は、第1面を有する第1部材と、第2面を有する第2部材とを備える。第1部材は、第1面を構成する第1絶縁膜を有する。第2部材は、第2面を構成し、かつ第1絶縁膜と接することにより第1絶縁膜と逆の極性に帯電する第2絶縁膜を有する。第1部材と前記第2部材とは、第1面と第2面とが対向して接するように配置される。第1部材及び第2部材が相対的に近づくように圧力が加わることにより、第1面と第2面との真実接触面積が変化する。本発明の一態様に係る発電体によると、発電体の構造をシンプル化させることができる。
【0009】
上記の発電体において、第1部材は、第1絶縁膜に接する導電性の第1可撓部をさらに有していてもよい。第2部材は、第2絶縁膜に接する導電性の第2可撓部をさらに有していてもよい。第1可撓部の弾性率は、前記第1絶縁膜よりも低くてもよい。第2可撓部の弾性率は、第2絶縁膜よりも低くてもよい。第1面及び第2面の少なくとも一方には、凹凸が設けられる。
【0010】
上記の発電体において、第1可撓部及び第2可撓部は、導電性のエラストマー又は表面が導電膜で被覆された絶縁性のエラストマーにより構成されていてもよい。
【0011】
上記の発電体は、第1部材及び第2部材のうち、上方に位置する方に取り付けられるおもりをさらに備えていてもよい。この場合、発電量を上昇させることができる。
【0012】
上記の発電体において、第1面及び第2面の少なくとも一方は、100μm以上2mm以下の十点平均粗さを有していてもよい。この場合、発電量を上昇させることができる。
【0013】
上記の発電体は、第3部材をさらに備えていてもよい。第3部材は、第1可撓部の第1絶縁膜とは反対側及び第2可撓部の第2絶縁膜とは反対側に取り付けられていてもよい。第3部材の弾性率は、第1可撓部及び第2可撓部よりも小さくてもよい。この場合、発電量を上昇させることができる。
【0014】
上記の発電体において、第1部材は、導電性の第1繊維をさらに有していてもよい。第2部材は、導電性の第2繊維をさらに有していてもよい。第1繊維の外周面は、第1絶縁膜により被覆され、第2繊維の外周面は、第2絶縁膜により被覆されていてもよい。第1部材及び第2部材が相対的に近づくように圧力が加わることにより、第2部材が第1面に沿って変形することにより第1面と第2面との真実接触面積が変化してもよい。
【0015】
上記の発電体においては、第1絶縁膜及び第2絶縁膜を構成する材料は、ポリメチルメタクリレート、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリイソプチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリクロロプレン、天然ゴム、ポリアクリロニトリル、ポリジフェノールカーボネート、塩化ポリエーテル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン及び六フッ化プロピレン共重合体からなる群から選択されてもよい。上記の発電体においては、第1絶縁膜及び第2絶縁膜を構成する材料は互いに異なっていてもよい。
【0016】
上記の発電体においては、第1絶縁膜及び第2絶縁膜のうち正に帯電する方は、ダイヤモンドライクカーボン膜であってもよい。この場合、発電量の経時変化を抑制することができる。
【0017】
上記の発電体においては、第1絶縁膜及び第2絶縁膜のうち負に帯電する方は、パーフルオロポリエーテル膜であってもよい。この場合、発電量の経時変化を抑制することができる。
【0018】
上記の発電体においては、第1絶縁膜及び第2絶縁膜の少なくとも一方は、厚さが20μm以下であってもよい。この場合、発電量を上昇させることができる。
【0019】
本発明の一態様に係る発電装置は、上記の発電体を、複数備える。複数の発電体の各々は、第1部材から第2部材に向かう方向に沿って積層される。本発明の一態様に係る発電装置によると、シンプルな構造により発電量を増加させることができる。
【0020】
本発明の一態様に係る圧力センサは、上記の発電体と、上記の発電体に接続される検知部とを備える。検知部は、発電体から出力される電流及び電圧の少なくとも一方を検知する。本発明の一態様に係る圧力センサによると、発電体に外部から印加される圧力を検知することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様に係る発電体、発電装置及び圧力センサによると、構造をシンプル化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さないものとする。
【0024】
(第1実施形態)
以下に、第1実施形態に係る発電体の構成について説明する。
【0025】
図1は、第1実施形態に係る発電体の断面図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る発電体は、第1部材1と、第2部材2とを有している。第1部材1は、第1面1aを有している。第2部材2は、第2面2aを有している。
【0026】
第1部材1は、第1絶縁膜11を有している。第1絶縁膜11は、第1部材1の第1面1aを構成している。すなわち、第1絶縁膜11は、第1部材1の最も第1面1a側に位置している。第2部材2は、第2絶縁膜21を有している。第2絶縁膜21は、第2部材2の第2面2aを構成している。すなわち、第2絶縁膜21は、第2部材2の最も第2面2a側に位置している。
【0027】
第1絶縁膜11は、第2絶縁膜21と接することにより、第2絶縁膜21と逆の極性に帯電する材料により構成されている。例えば、第1絶縁膜11が第2絶縁膜21との接触により正に帯電する場合、第2絶縁膜21は、第1絶縁膜11との接触により、負に帯電する。第1絶縁膜11及び第2絶縁膜21を構成する材料は、例えば、ポリメチルメタクリレート、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリイソプチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリクロロプレン、天然ゴム、ポリアクリロニトリル、ポリジフェノールカーボネート、塩化ポリエーテル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン及び六フッ化プロピレン共重合体からなる群から選択される。
【0028】
第1絶縁膜11を構成する材料と第2絶縁膜21を構成する材料とは、互いに異なっている。第1絶縁膜11を構成する材料は、帯電列上において、第2絶縁膜を構成する材料から離れた位置にあることが好ましい。
【0029】
第1絶縁膜11は厚さT1を有しており、第2絶縁膜21は厚さT2を有している。厚さT1及び厚さT2の少なくとも一方は、20μm以下であることが好ましい。厚さT1及び厚さT2の双方は、20μm以下であることがさらに好ましい。
【0030】
第1部材1と第2部材2とは、第1面1aと第2面2aとが対向して接するように配置されている。但し、第1面1a及び第2面2aは、一部においては接しているが、全部においては接していない。第1部材1及び第2部材2が相対的に近づくように圧力(
図2参照)が加えられることにより、第1面1aと第2面2aとの真実接触面積が変化する。なお、第1面1aと第2面2aとの接触は、例えばコの字型を有し、第1部材1及び第2部材2を挟持する挟持部材5により確保される。但し、第1面1aと第2面2aとの接触を確保するための構成は、これに限られるものではない。
【0031】
第1部材1は、第1可撓部12を有していてもよい。第1可撓部12は、第1絶縁膜11に接するように配置されている。より具体的には、第1可撓部12は、第1絶縁膜11の第1面1aとは反対側の面に接して配置されている。第1可撓部12は、可撓性を有している。すなわち、第1可撓部12は、第1絶縁膜11よりも弾性率が低い。第1可撓部12を構成する材料は、エラストマーであることが好ましい。すなわち、第1可撓部12を構成する材料は、ゴム弾性を有していることが好ましい。
【0032】
第1可撓部12は、導電性を有している。第1可撓部12は、例えば導電性を有するエラストマーにより構成されている。第1可撓部12は、表面が導電膜で被覆された絶縁性のエラストマーにより構成されていてもよい。絶縁性のエラストマーは、例えばニトリルゴム、シリコンゴムである。絶縁性のエラストマーの表面を被覆する導電膜を構成する材料は、例えばAg(銀)、Cu(銅)である。
【0033】
第1面1aには、凹凸が設けられていてもよい。第1面1aの十点平均粗さは、100μm以上2mm以下であることが好ましい。なお、第1面1aの十点平均粗さは、JIS B 0601:2001にしたがって測定される。例えば、第1可撓部12の第1絶縁膜11側の面に凹凸が設けられることにより、第1面1aの凹凸が形成されている。
【0034】
第2部材2は、第2可撓部22を有していてもよい。第2可撓部22は、第2絶縁膜21に接するように配置されている。より具体的には、第2可撓部22は、第2絶縁膜21の第2面2aとは反対側の面に接して配置されている。第2可撓部22は、可撓性を有している。すなわち、第2可撓部22は、第2絶縁膜21よりも弾性率が低い。第2可撓部22を構成する材料は、エラストマーであることが好ましい。すなわち、第2可撓部22を構成する材料は、ゴム弾性を有していることが好ましい。
【0035】
第2可撓部22は、導電性を有している。第2可撓部22は、例えば導電性を有するエラストマーにより構成されている。第2可撓部22は、表面が導電膜で被覆された絶縁性のエラストマーにより構成されていてもよい。絶縁性のエラストマーは、例えばニトリルゴム、シリコンゴムである。絶縁性のエラストマーの表面を被覆する導電膜を構成する材料は、例えばAg、Cuである。
【0036】
なお、第1実施形態に係る発電体から電流を取り出す際、第1可撓部12と第2可撓部22とは、電気的に接続される。
【0037】
第2面2aには、凹凸が設けられていてもよい。第2面2aの十点平均粗さは、100μm以上2mm以下であることが好ましい。なお、第2面2aの十点平均粗さは、第1面1aの十点平均粗さと同様の方法により測定される。例えば、第2可撓部22の第2絶縁膜21側の面に凹凸が設けられることにより、第2面2aの凹凸が形成されている。
【0038】
なお、第1面1a及び第2面2aの十点平均粗さは、双方が100μm以上2mm以下でなくてもよい。第1面1aの十点平均粗さ及び第2面2aの十点平均粗さのいずれか一方が、100μm以上2mm以下であればよい。
【0039】
以下に、第1実施形態に係る発電体の効果を説明する。
上記のとおり、第1面1a及び第2面2aは、一部においては接しているが、全部においては接していない。そのため、第1部材1及び第2部材2が相対的に近づくように圧力が印加されていない状態においては(以下においては、第1状態という。)、第1可撓部12及び第2可撓部22に誘導される電荷量は相対的に小さい。
【0040】
図2は、第1実施形態に係る発電体に外部から圧力が印加された状態を示す模式図である。
図2に示すように、第1実施形態に係る発電体には、外部から、第1部材1及び第2部材2が相対的に近づくように圧力が印加される(この圧力が印加された状態を、以下においては、第2状態という。)。
【0041】
上記のとおり、第1可撓部12及び第2可撓部22は、可撓性を有している。したがって、第1部材1及び第2部材2が相対的に近づくように圧力が印加されることにより、第1部材1及び第2部材2は、第1面1a及び第2面2aの凹凸が平坦になるように変形する。その結果、第2状態においては、第1面1aと第2面2aとの真実接触面積が増加する。これに伴い、第2状態においては、第1可撓部12及び第2可撓部22に誘導される電荷量が相対的に増加する。
【0042】
第1部材1及び第2部材2に対する圧力が除去されることにより、再び発電体は第1状態に戻る。すなわち、第1部材1及び第2部材2に対する圧力が除去されることにより、第1面1a及び第2面2aの真実接触面積が減少する。その結果、第1可撓部12及び第2可撓部22に誘導される電荷量が再び相対的に減少する。そのため、第1可撓部12と第2可撓部22とが電気的に接続されている場合、第2状態において誘導された電荷が、第1可撓部12と第2可撓部22との間で移動し、第1可撓部12と第2可撓部22との間で電流が流れる。このように、第1実施形態に係る発電体によると、シンプルな構造により接触帯電による発電を行うことが可能となる。このような発電体の構造がシンプル化により、発電体の小型化、耐久性を向上及び製造コストを行うことが可能となる。
【0043】
以下に、第1面1a及び第2面2aの表面粗さの影響を評価した試験結果を説明する。この試験においては、第1可撓部12として、50mm×50mmのシリコンゴムの表面に、厚さ0.5μmのAgを蒸着したものを用いた。第1絶縁膜11として、厚さが7μmのポリウレタンを用いた。第2可撓部22として、50mm×50mmのニトリルゴムの表面に厚さが74μmのCu箔を接着したものを用いた。第2絶縁膜21として、厚さが12μmのフッ素樹脂(FEP)を用いた。
【0044】
図3は、第1面1aの十点平均粗さを変化させた場合の発電量の変化を示すグラフである。第1面1aの十点平均粗さは、30μmから3mmの範囲で変化させた。
図3に示すように、第1面1aの十点平均粗さが100μmから2mmの範囲において発電量が立ち上がっていることが確認された。このように、第1実施形態に係る発電体においては、第1面1a及び第2面2aの十点平均粗さの少なくとも一方を100μm以上2mm以下とすることにより、発電量が増加することが実験的に確認された。
【0045】
図4は、厚さT1と第1実施形態に係る発電体の発電量との関係を示す模式的なグラフである。
図4においては、厚さT1が20μmである場合の第1実施形態に係る発電体の発電量を1として、発電量を相対的に表示してある。
図4に示すように、第1実施形態に係る発電体の発電量は、厚さT1が小さくなるにしたがって増加する。特に、第1実施形態に係る発電体の発電量は、20μm以下で急激に増加する。このように、厚さT1(厚さT2)を20μm以下とすることにより、発電量の増加が実験的に確認された。
【0046】
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態に係る発電体を説明する。なお、以下においては、第1実施形態に係る発電体と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0047】
図5は、第2実施形態に係る発電体の断面図である。
図5に示すように、第2実施形態に係る発電体は、第1部材1と、第2部材2とを有している。第1部材1と第2部材2とは、第1面1aと第2面2aとが対向して接するように配置されている。第1面1aと第2面2aとの真実接触面積は、第1部材1及び第2部材2が相対的に近づくような圧力が加わることにより、変化する。
【0048】
第1部材1は、第1絶縁膜11と、第1可撓部12とを有している。第2部材2は、第2絶縁膜21と、第2可撓部22とを有している。これらの点において、第2実施形態に係る発電体の構成は、第1実施形態に係る発電体の構成と共通している。
【0049】
第2実施形態に係る発電体は、第3部材3をさらに有している。この点において、第2実施形態に係る発電体の構成は、第1実施形態に係る発電体の構成と異なっている。
【0050】
第3部材3は、第1可撓部12の第1絶縁膜11とは反対側の面に取り付けられる。第3部材3は、第2可撓部22の第2絶縁膜21とは反対側の面に取り付けられていてもよい。すなわち、第3部材3は、第1可撓部12の第1絶縁膜11とは反対側の面及び第2可撓部22の第2絶縁膜21とは反対側の面の少なくとも一方に取り付けられていればよい。
【0051】
第3部材3は、可撓性を有している。第3部材3は、弾性率が第1可撓部12及び第2可撓部22よりも小さい。第3部材3を構成する材料は、例えばニトリルゴムである。
【0052】
第3部材3は、可撓性があり、第1可撓部12及び第2可撓部22よりも弾性率が低いため、第1可撓部12及び第2可撓部22よりも緩やかに変形する。第2実施形態に係る発電体においては、第3部材3が第1可撓部12の第1絶縁膜11とは反対側の面(第2可撓部22の第2絶縁膜21とは反対側の面)に取り付けられているため、第1状態から第2状態に移行するのに要する時間及び第2状態から第1状態に復元するのに要する時間が長くなる。すなわち、発電に寄与する時間が長くなる。したがって、第2実施形態に係る発電体によると、発電量を増加させることができる。
【0053】
図6は、第2実施形態に係る発電体における発電量の時間変化を示す模式的なグラフである。なお、
図6に示される試験においては、第1可撓部12として、50mm×50mmのニトリルゴムの表面に、厚さ7μmのAgを蒸着したものを用いた。第1絶縁膜11として、厚さが0.5μmのポリウレタンを用いた。
図6に示される試験においては、第2可撓部22として、50mm×50mmのニトリルゴムの表面に厚さが74μmのCu箔を接着したものを用いた。第2絶縁膜21として、厚さが12μmのフッ素樹脂(FEP)を用いた。第3部材3として、第1可撓部12の第1絶縁膜11と反対側の面に、厚さが3mm、弾性率が3MPaの低弾性ゴムシートが取り付けられた。第1部材1及び第2部材2が相対的に近づくような圧力は、発電体を靴のかかとで踏みつけることにより加えられた。
図6中においては、比較例として、第3部材3が取り付けられていない場合の発電量が点線により示されている。
【0054】
図6に示すように、第2実施形態に係る発電体においては、発電開始から発電終了までの時間(発電時間)が、比較例と比べて長くなっている。また、比較例における圧力印加1回あたりの発電量が0.3μWであったのに対し、第2実施形態に係る発電体における圧力印加1回あたりの発電量は、6.1μWまで上昇した。このように、第2実施形態に係る発電体によると、発電量が増加することが、実験的にも確認された。
【0055】
(第3実施形態)
以下に、第3実施形態に係る発電体を説明する。なお、以下においては、第1実施形態に係る発電体と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0056】
図7は、第3実施形態に係る発電体の断面図である。
図7に示すように、第3実施形態に係る発電体は、第1部材1と、第2部材2とを有している。第1部材1と第2部材2とは、第1面1aと第2面2aとが対向して接するように配置されている。第1面1aと第2面2aとの真実接触面積は、第1部材1及び第2部材2が相対的に近づくような圧力が加わることにより、変化する。
【0057】
第1部材1は、第1絶縁膜11と、第1可撓部12とを有している。第2部材2は、第2絶縁膜21と、第2可撓部22とを有している。これらの点において、第3実施形態に係る発電体の構成は、第1実施形態に係る発電体の構成と共通している。
【0058】
第3実施形態に係る発電体は、おもり4を有している。この点において、第3実施形態に係る発電体は、第1実施形態に係る発電体と異なっている。
【0059】
おもり4は、第1部材1及び第2部材2が相対的に近づくような圧力を印加するように配置される。より具体的には、おもり4は、第1部材1及び第2部材2のうち、上方(重力方向と反対方向)に位置する方に取り付けられている。
図7の例においては、第2部材2が第1部材1の上方に位置し、おもり4は第2部材2に取り付けられている。
【0060】
第3実施形態に係る発電体は、第1面1aと第2面2aとの間の真実接触面積の変化を利用することにより発電を行う。おもり4が設けられることで、第3実施形態に係る発電体には、第1部材1及び第2部材2が相対的に近づくような圧力が印加される(以下においては、この圧力を初期押し付け圧力という。)。初期押し付け圧力が大きいほど、外部から第3実施形態に係る発電体に加速度が作用した際、第1部材1及び第2部材2に作用する圧力が大きく変動する。そして、第1部材1及び第2部材2に作用する圧力の変動が大きくなるにしたがい、第1面1aと第2面2aとの真実接触面積の変動も大きくなる。したがって、第3実施形態に係る発電体によると、発電量を増加させることができる。
【0061】
図8は、第3実施形態に係る発電体における初期押し付け圧力と発電量との関係を示す模式的なグラフである。
図8に示される試験においては、第1可撓部12として、50mm×50mmのニトリルゴムの表面に、厚さ0.5μmのAgを蒸着したものを用いた。第1絶縁膜11として、厚さが7μmのポリウレタンを用いた。
図5に示される試験においては、第2可撓部22として、50mm×50mmのニトリルゴムの表面に厚さが74μmのCu箔を接着したものを用いた。第2絶縁膜21として、厚さが12μmのフッ素樹脂(FEP)を用いた。
【0062】
おもり4の重量は、初期押し付け圧力が14.1kPa、20.8kPa、34.3kPa、41.1kPa、47.8kPa、54.5kPaとなるように設定された。
図8に示される試験においては、第3実施形態に係る発電体は、周波数40Hz、加速度2Gにて加振された。
【0063】
図8に示されるように、第3実施形態に係る発電体の発電量は、初期押し付け圧力が増加するにしたがい、増加している。このように、第3実施形態に係る発電体によると発電量が増加することは、実験的にも確認された。
【0064】
(第4実施形態)
以下に、第4実施形態に係る発電体を説明する。なお、以下においては、第1実施形態に係る発電体と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0065】
図9は、第4実施形態に係る発電体の断面図である。
図9に示すように、第4実施形態に係る発電体は、第1部材1と、第2部材2とを有している。第1部材1と第2部材2とは、第1面1aと第2面2aとが対向して接するように配置されている。第1面1aと第2面2aとの真実接触面積は、第1部材1及び第2部材2が相対的に近づくような圧力が加わることにより、変化する。
【0066】
第1部材1は、第1絶縁膜11と、第1可撓部12とを有している。第2部材2は、第2絶縁膜21と、第2可撓部22とを有している。これらの点において、第4実施形態に係る発電体の構成は、第1実施形態に係る発電体の構成と共通している。
【0067】
第4実施形態に係る発電体においては、第1絶縁膜11及び第2絶縁膜21のうち、正に帯電する方が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜となっている。この点において、第4実施形態に係る発電体は、第1実施形態に係る発電装置と異なっている。第4実施形態に係る発電体においては、第1絶縁膜11及び第2絶縁膜21のうち、負に帯電する方が、パーフルオロポリエーテル膜であってもよい。
【0068】
第1実施形態に係る発電体は、上記のとおり、第1面1aと第2面2aとの真実接触面積の変化を利用して発電を行うため、第1面1a及び第2面2aに摩耗が生じる。そのため、第1実施形態に係る発電体においては、このような摩耗に伴い、発電量が経時劣化するおそれがある。
【0069】
他方、第3実施形態に係る発電体においては、第1絶縁膜11及び第2絶縁膜21のうち、正に帯電する方が、DLC膜となっている。DLC膜は、高い硬度を有する。また、DLC膜は、摩擦係数が低い。そのため、第3実施形態に係る発電体においては、第1面1a及び第2面2aの摩耗に伴う発電量の経時劣化が生じにくい。
【0070】
図10は、第4実施形態に係る発電体の発電回数と発電量との関係を示す模式的なグラフである。なお、
図10に示される試験においては、第1可撓部12として、50mm×50mmのニトリルゴムの表面に、厚さ0.5μmのAgを蒸着したものを用いた。第1絶縁膜11としては、厚さが2μmのDLC膜を用いた。
図10に示される試験においては、第2可撓部22として、50mm×50mmのニトリルゴムの表面に厚さが74μmのCu箔を接着したものを用いた。第2絶縁膜21としては、厚さが12μmのフッ素樹脂(FEP)を用いた。
図10中においては、比較例として、第1絶縁膜11としてポリウレタンを用いた場合の発電回数と発電量との関係が、点線により示されている。なお、
図10中において、相対発電量は、初回発電時の発電量を100パーセントとして評価した。
【0071】
図10に示されるように、比較例においては、発電回数が増加するにしたがって、発電量が低下した。より具体的には、比較例においては、発電回数が60万回以上の範囲内において、発電量が20パーセント程度低下した。他方、第4実施形態に係る発電体においては、発電回数が増加しても、発電量の低下は特になかった。このように、第4実施形態に係る発電体によると、発電量の経時変化が抑制されることが、実験的にも確認された。
【0072】
パーフルオロエーテル膜は、潤滑性が高い。そのため、第4実施形態に係る発電体において、第1絶縁膜11及び第2絶縁膜21のうち、負に帯電する方が、パーフルオロポリエーテル膜である場合も、第1面1a及び第2面2aの摩耗に伴う発電量の経時劣化が生じにくい。
【0073】
(第5実施形態)
以下に、第5実施形態に係る発電体を説明する。なお、以下においては、第1実施形態に係る発電体と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0074】
図11は、第5実施形態に係る発電体の平面図である。
図12は、
図11のXII−XIIにおける断面図である。
図11及び
図12に示すように、第5実施形態に係る発電体は、第1部材1と、第2部材2とを有している。第1部材1と第2部材2とは、第1面1aと第2面2aとが対向して接するように配置されている。第1面1aと第2面2aとの真実接触面積は、第1部材1及び第2部材2が相対的に近づくような圧力が加わることにより変化する。これらの点において、第5実施形態に係る発電体は、第1実施形態に係る発電体と共通している。
【0075】
第5実施形態に係る発電体において、第1部材1及び第2部材2は、繊維状の部材である。第1部材1及び第2部材2は、織り込まれることにより、織物状になっている。これらの点において、第5実施形態に係る発電体は、第1実施形態に係る発電体と異なっている。なお、第5実施形態に係る発電体においては、繊維状の部材である第1部材1及び第2部材2の外周面が、第1面1a及び第2面2aにそれぞれ対応している。
【0076】
第5実施形態に係る発電体において、第1部材1は、第1繊維13を有している。第1繊維13は、導電性を有している。好ましくは、第1繊維13は、可撓性を有している。第1繊維13は、例えばCu線、ステンレス鋼線である。第1繊維13は、外周面13aを有している。外周面13aは、第1絶縁膜11により被覆されている。第5実施形態に係る発電体において、第2部材2は、第2繊維23を有している。第2繊維23は、導電性を有している。好ましくは、第2繊維23は、可撓性を有している。第2繊維23は、例えばCu線、ステンレス鋼線である。第2繊維23は、外周面23aを有している。外周面23aは、第2絶縁膜21により被覆されている。
【0077】
図13は、第5実施形態に係る発電体に外部から圧力が印加された状態を示す模式図である。
図13に示すように、第5実施形態に係る発電体に、第1部材1及び第2部材2が相対的に近づくような圧力が外部から加えられることにより、第2部材2(第1部材1)は、第1部材1の第1面1a(第2部材2の第2面2a)の形状に沿って変形する。これにより、第1面1aと第2面2aとの真実接触面積が変化する。そのため、第5実施形態に係る発電体においては、この第1面1aと第2面2aとの真実接触面積の変化に起因して、第1実施形態に係る発電体と同様に、シンプルな構造で発電を行うことができる。
【0078】
第5実施形態に係る発電体の実施例として、第1部材1と第2部材2とを編み込んで30mm×40mmの織物を準備した。なお、この実施例においては、第1絶縁膜11は、厚さ30μmのポリエステルであり、第1繊維13は、0.2mm径のCu線であった。また、この実施例においては、第2絶縁膜21は、厚さ3μmのパーフルオロエーテルであり、第2繊維23は、0.2mmのステンレス鋼線であった。この織物全体をアルミニウム板で挟んで荷重を印加したところ、この織物から約0.45Vの最大電圧を取り出すことができた。このように、第5実施形態に係る発電体によると、シンプルな構造で発電が可能であることが、実験的にも確認された。
【0079】
(第6実施形態)
以下に、第6実施形態に係る発電装置を説明する。
【0080】
図14は、第6実施形態に係る発電装置の断面図である。
図14に示すように、第6実施形態に係る発電装置は、複数の第1部材1と、複数の第2部材2とを有している。第2部材2は、第1部材1の間に配置されている。第2面2aは、第2部材2の両面に設けられている。第2部材2は、第2面2aが第1面1aと対向して接するように、第1部材1の間に配置されている。
【0081】
このことを別の観点からいえば、第6実施形態に係る発電装置は、上記の第1実施形態ないし第5実施形態に係る発電体が、第1部材1から第2部材2に向かう方向に複数積層された構造を有している。
【0082】
第6実施形態に係る発電装置によると、第1面1aと第2面2aとの真実接触面積が変化することによる発電が、複数箇所において行われる。そのため、第6実施形態に係る発電装置によると、発電量を増加させることができる。
【0083】
(第7実施形態)
以下に、第6実施形態に係る圧力センサを説明する。
【0084】
図15は、第7実施形態に係る圧力センサの模式図である。
図15に示すように、第7実施形態に係る圧力センサは、発電体100と、検知部200とを有している。発電体100は、第1実施形態ないし第5実施形態に係る発電体である。検知部200は、発電体100から出力される電流を検知する。なお、検知部200は、発電体100から出力される電圧を検知してもよい。検知部200は、発電体100に接続されている。より具体的には、検知部200は、第1可撓部12及び第2可撓部22(又は第1繊維13及び第2繊維23)に接続されている。検知部200としては、例えばオペアンプを用いたコンパレータ回路が用いられる。
【0085】
上記のとおり、発電体100に第1部材1及び第2部材2が相対的に近づくような圧力が外部から加わった場合、発電体100は、電流及び電圧を出力する。そのため、この電流又は電圧を検知部200で検知することにより、発電体100に外部から印加された圧力を検知することができる。
【0086】
以上のように、本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。