特開2018-191636(P2018-191636A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人広島大学の特許一覧
<>
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000006
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000007
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000008
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000009
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000010
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000011
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000012
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000013
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000014
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000015
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000016
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000017
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000018
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000019
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000020
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000021
  • 特開2018191636-癌の診断デバイス 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-191636(P2018-191636A)
(43)【公開日】2018年12月6日
(54)【発明の名称】癌の診断デバイス
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20181109BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20181109BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20181109BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20181109BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20181109BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALN20181109BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20181109BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   G01N33/48 P
   G01N33/50 P
   C12M1/34
   C12Q1/04
   C12Q1/6886 Z
   C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2018-92557(P2018-92557)
(22)【出願日】2018年5月11日
(31)【優先権主張番号】特願2017-96018(P2017-96018)
(32)【優先日】2017年5月12日
(33)【優先権主張国】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.Triton
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501155803
【氏名又は名称】株式会社 京都モノテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】堀 貫治
(72)【発明者】
【氏名】平山 真
(72)【発明者】
【氏名】丸山 征郎
(72)【発明者】
【氏名】田口 好弘
(72)【発明者】
【氏名】黒川 洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 謙也
(72)【発明者】
【氏名】水口 博義
【テーマコード(参考)】
2G045
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA16
2G045AA24
2G045AA26
2G045BA13
2G045BB03
2G045BB10
2G045BB12
2G045BB24
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB01
2G045CB02
2G045CB03
2G045CB07
2G045CB08
2G045CB11
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA30
2G045DA36
2G045FA05
2G045FB02
2G045FB03
2G045FB06
2G045FB12
2G045FB15
2G045GC15
2G045JA01
2G045JA07
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB20
4B029FA12
4B029FA15
4B029GB01
4B029GB09
4B063QA01
4B063QA07
4B063QA19
4B063QQ20
4B063QQ52
4B063QQ57
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
(57)【要約】
【課題】癌を高感度・特異的に診断することが可能なデバイスを提供する。
【解決手段】癌細胞由来の細胞外小胞が有する表面糖鎖に特異的に結合し得るレクチンが固定化された固定化担体を、1種または2種以上の上記表面糖鎖のそれぞれに対応させて備える細胞外小胞捕捉部と、上記細胞外小胞に含まれるマイクロRNAを検出するための検出部と、を備える癌の診断デバイス。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌細胞由来の細胞外小胞が有する表面糖鎖に特異的に結合し得る1種または2種以上のレクチンが固定化された固定化担体を、1種または2種以上の上記表面糖鎖のそれぞれに対応させて備え、上記表面糖鎖と、上記レクチンとの特異的な結合によって上記細胞外小胞を捕捉する細胞外小胞捕捉部と、
上記細胞外小胞に含まれるマイクロRNAを検出するための検出部と、
を備えることを特徴とする、癌の診断デバイス。
【請求項2】
上記細胞外小胞が、エクソソームおよび/またはマイクロパーティクルであることを特徴とする、請求項1に記載の癌の診断デバイス。
【請求項3】
上記固定化担体が、モノリスゲルまたはレクチン固相化磁性ビーズであることを特徴とする、請求項1または2に記載の癌の診断デバイス。
【請求項4】
上記モノリスゲルがシリカモノリスであることを特徴とする、請求項3に記載の癌の診断デバイス。
【請求項5】
試料を上記細胞外小胞捕捉部に導入する導入部と、上記細胞外小胞捕捉部から溶出されたマイクロRNAを含む液を排出する排出部とを備え、
上記導入部と上記排出部との間に上記細胞外小胞捕捉部が配置され、上記導入部と、上記細胞外小胞捕捉部との間、および、上記細胞外小胞捕捉部と上記排出部との間に流路を備え、
上記排出部が、上記固定化担体の数に対応させて設けられていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の癌の診断デバイス。
【請求項6】
上記1種または2種以上のレクチンは、
上記表面糖鎖が高マンノース型糖鎖である場合は、1種または2種以上の高マンノース型糖鎖結合性レクチンであり、
上記表面糖鎖がシアリルルイス型糖鎖である場合は、1種または2種以上のシアリルルイス型糖鎖結合性レクチンであり、
上記表面糖鎖がコアα1‐6フコースである場合は、1種または2種以上のコアα1‐6フコース結合性レクチンであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の癌の診断デバイス。
【請求項7】
上記高マンノース型糖鎖結合性レクチンが、SolninA、SolninB、SolninC、ESA−1、ESA−2、EAA−1、EAA−2、EAA−3、EDA−1、EDA−2、EDA−3、ECA−1(KAA−1)、ECA−2(KAA−2)、KAA−3、KSA−1、KSA−2、MPA−1、MPA−2、Granin−BP、ASL−1、ASL−2、OAA、BCA、BPL17、BML17、BCL17、およびMPL−1からなる群より選ばれる1種または2種以上のレクチンであることを特徴とする、請求項6に記載の癌の診断デバイス。
【請求項8】
上記シアリルルイス型糖鎖結合性レクチンがセレクチンであることを特徴とする、請求項6に記載の癌の診断デバイス。
【請求項9】
上記コアα1‐6フコース結合性レクチンが、HypninA−1、HypninA−2、およびHypninA−3からなる群より選ばれる1種または2種以上のレクチンであることを特徴とする、請求項6に記載の癌の診断デバイス。
【請求項10】
上記細胞外小胞が、血液、血漿、血清、唾液、涙、拭い液、痰、尿、髄液、羊水、関節液、腹水、および胸水からなる群より選ばれる1種または2種以上の試料に含まれることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の癌の診断デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は癌の診断デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
1981年以降、癌は我が国における死亡原因の第一位であり続けており、癌のリスク低下や健康寿命延長に向けた対策は重要な課題である。癌は、ステージが上がるにつれ、予後が不良となる。ステージ1の段階で癌を発見できれば、ほとんど完治可能であるため、できるだけ早いステージで癌を発見しうる技術が重要である。特に、血液・尿等の診断がしやすい試料を用いて、癌を早期に診断したいというニーズが高い。
【0003】
上記の観点から、従来より各種癌マーカーが探索され、癌を早期に検出しようという努力がなされている。しかしながら、上記マーカーは感度が圧倒的に不足しているため、早期の癌を診断できず、発症している癌のモニタリング用途として使われているに過ぎない。また、癌に対する特異性も十分ではなく、癌以外の疾患でもマーカーの濃度が上昇する。さらに、様々な癌種で同じ癌マーカーの濃度上昇が見られるため、癌種の特定もできていなかった。
【0004】
一方、最近になって、細胞外小胞に内蔵されたマイクロRNA(miRNA)の分析による癌の早期診断や再発モニタリングの試みがなされるようになった。癌細胞から分泌された細胞外小胞は、血中や尿中などの体液中に存在し、安定性が高く、細胞外小胞に内蔵される複数のマイクロRNAを検査することにより、初発・再発の癌、転移した癌が小さい段階で発見でき、癌が存在する臓器を特定可能であるとされている。
【0005】
例えば、非特許文献1では、肺癌や胃癌等の主要な癌において検出される循環マイクロRNAの特徴について調査されている。該調査の結果から、循環マイクロRNAが癌細胞におけるマーカーとして用いられることが期待されている。
【0006】
また、癌由来の細胞外小胞は、癌の転移先において、癌細胞の増殖を促進する転移先ニッチェの形成に関連することがわかっている。そのため、血中の細胞外小胞のマイクロRNAを分析することにより、癌の転移先を予測することも期待されている。
【0007】
そして、従来技術として、細胞外小胞の一つであるエクソソームの分離・定量に関しては、エクソソームを含むサンプルを、基材に固定したGNA等のレクチンと接触させる工程、エクソソームに結合する検出可能な薬剤をエクソソームと接触させる工程、および、薬剤からのシグナルを検出し、エクソソームを定量する方法が知られている(特許文献1)。
【0008】
さらに、本発明者らは、エクソソームおよび/または癌細胞等に発現している目的のタンパク質を効率よく分離するため、検体中に含有される、高マンノース型糖鎖を有するタンパク質を特異的に認識するタンパク質分離デバイスを開発している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0323756号明細書(2013年12月5日公開)
【特許文献2】日本国公開特許公報「特開2016−147839号公報(公開日:2016年8月18日)」
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Kai Wang et. al.,Clinical Chemistry,p.1138-1155,2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、免疫細胞、その他の正常細胞などの、癌細胞以外の細胞も細胞外小胞を分泌している。また、早期の癌は小さく、幼若な癌細胞が血中等に分泌する細胞外小胞は少なく、かつ血中では低濃度であり、血中の細胞外小胞における癌細胞由来の細胞外小胞の割合が非常に少ないため、期待されているような癌の早期診断は依然難しい。
【0012】
さらに、血中において顕著に増加または減少するマイクロRNAは、各癌種で重なっていることが多く、癌種の特定には、増加幅および減少幅の少ない微量のマイクロRNAの検出が必要である。これらの理由から、初発・再発・転移癌を臓器特異的に、癌が小さな段階で発見することは、未だ難しいのが実情である。
【0013】
そして、細胞外小胞自体の濃縮は、超遠心または抗体を用いて行うことが可能であるが、癌細胞由来の細胞外小胞と、その他の正常細胞が分泌する細胞外小胞とを無差別に濃縮してしまうことから、癌細胞由来の微量のマイクロRNAが、その他の細胞由来のマイクロRNAに埋もれてしまい、期待される感度・特異性向上が達成できていない。
【0014】
このように、癌細胞由来の細胞外小胞を体液中から抽出し、内包されるマイクロRNAを分析することにより、初期の癌や再発・転移などの早期診断を可能にしていこうとする開発が進められている中、上記細胞外小胞をより特異的に分離・濃縮することが求められているが、解決できる手法は存在しないのが現状である。
【0015】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、体液等に含有される、癌細胞由来の細胞外小胞をより特異的に分離・濃縮すること、および、分離・濃縮された細胞外小胞に内蔵されるマイクロRNAの検出により、癌を高感度・特異的に診断することが可能なデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討し、癌細胞由来の細胞外小胞が有するタンパク質の表面糖鎖に特異的に結合し得るレクチンを用いることにより、上記細胞外小胞を正常細胞由来の細胞外小胞と区別して選択的に捕捉・濃縮することが可能であり、高感度で癌を診断することが可能であることを見出した。
【0017】
また、上記表面糖鎖の糖鎖構造のパターンと、細胞外小胞に内包されるマイクロRNAの存在パターンとを解析することにより、診断の特異性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
さらに、捕捉した細胞外小胞からのマイクロRNAの抽出時に、マイクロパーティクル中に存在するマイクロRNAと、エクソソーム中に存在するマイクロRNAとを区別して抽出することにより、各々の細胞外小胞に存在するマイクロRNAに関する情報を得ることができる。そして、この情報と上記表面糖鎖の糖鎖構造の情報とを組み合わせることにより、診断の特異性をさらに向上させることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
【0019】
〔1〕癌細胞由来の細胞外小胞が有する表面糖鎖に特異的に結合し得る1種または2種以上のレクチンが固定化された固定化担体を、1種または2種以上の上記表面糖鎖のそれぞれに対応させて備え、上記表面糖鎖と、上記レクチンとの特異的な結合によって上記細胞外小胞を捕捉する細胞外小胞捕捉部と、上記細胞外小胞に含まれるマイクロRNAを検出するための検出部と、を備えることを特徴とする、癌の診断デバイス。
【0020】
〔2〕上記細胞外小胞が、エクソソームおよび/またはマイクロパーティクルであることを特徴とする、〔1〕に記載の癌の診断デバイス。
【0021】
〔3〕上記固定化担体が、モノリスゲルまたはレクチン固相化磁性ビーズであることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の癌の診断デバイス。
【0022】
〔4〕上記モノリスゲルがシリカモノリスであることを特徴とする、〔3〕に記載の癌の診断デバイス。
【0023】
〔5〕試料を上記細胞外小胞捕捉部に導入する導入部と、上記細胞外小胞捕捉部から溶出されたマイクロRNAを含む液を排出する排出部とを備え、上記導入部と上記排出部との間に上記細胞外小胞捕捉部が配置され、上記導入部と、上記細胞外小胞捕捉部との間、および、上記細胞外小胞捕捉部と上記排出部との間に流路を備え、上記排出部が、上記固定化担体の数に対応させて設けられていることを特徴とする、〔1〕から〔4〕のいずれか1つに記載の癌の診断デバイス。
【0024】
〔6〕上記1種または2種以上のレクチンは、上記表面糖鎖が高マンノース型糖鎖である場合は、1種または2種以上の高マンノース型糖鎖結合性レクチンであり、上記表面糖鎖がシアリルルイス型糖鎖である場合は、1種または2種以上のシアリルルイス型糖鎖結合性レクチンであり、上記表面糖鎖がコアα1‐6フコースである場合は、1種または2種以上のコアα1‐6フコース結合性レクチンであることを特徴とする、〔1〕から〔5〕のいずれか1つに記載の癌の診断デバイス。
【0025】
〔7〕上記高マンノース型糖鎖結合性レクチンが、SolninA、SolninB、SolninC、ESA−1、ESA−2、EAA−1、EAA−2、EAA−3、EDA−1、EDA−2、EDA−3、ECA−1(KAA−1)、ECA−2(KAA−2)、KAA−3、KSA−1、KSA−2、MPA−1、MPA−2、Granin−BP、ASL−1、ASL−2、OAA、BCA、BPL17、BML17、BCL17、およびMPL−1からなる群より選ばれる1種または2種以上のレクチンである〔6〕に記載の癌の診断デバイス。
【0026】
〔8〕上記シアリルルイス型糖鎖結合性レクチンがセレクチンであることを特徴とする、〔6〕に記載の癌の診断デバイス。
【0027】
〔9〕上記コアα1‐6フコース結合性レクチンが、HypninA−1、HypninA−2、およびHypninA−3からなる群より選ばれる1種または2種以上のレクチンであることを特徴とする、〔6〕に記載の癌の診断デバイス。
【0028】
〔10〕上記細胞外小胞が、血液、血漿、血清、唾液、涙、拭い液、痰、尿、髄液、羊水、関節液、腹水、および胸水からなる群より選ばれる1種または2種以上の試料に含まれることを特徴とする、〔1〕から〔9〕のいずれか1つに記載の癌の診断デバイス。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様によれば、癌を高感度・特異的に診断することが可能なデバイスを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る癌の診断デバイスのうち、上記細胞外小胞捕捉部、および、上記マイクロRNA収容部の構成の一例を示す模式図である。
図2】細胞外小胞捕捉部から抽出された抽出液を、マイクロRNAのcDNAをプローブとして固定したアレイに供する一例を示した模式図である。
図3図2に示したアレイからの蛍光の観察結果に基づいて癌を診断する一例を示した模式図である。
図4】実施例1におけるSDS−PAGEの結果を示す図である。
図5】実施例1における、一次抗体として抗CD9抗体を用いたウエスタンブロットの結果を示す図である。
図6】実施例1における、一次抗体として抗CD63抗体を用いたウエスタンブロットの結果を示す図である。
図7】実施例2における、エクソソーム回収画分中のマイクロRNAの含有量を比較した結果を示す図である。
図8】高マンノース型糖鎖の構造の一例を示す図である。
図9】実施例4における、細胞外小胞の捕捉の手順を示す図である。
図10】6種の癌細胞由来の超遠心画分について、抗CD9抗体および抗CD81抗体を使用したウエスタンブロットを行った結果を示す図である。
図11】癌細胞由来の細胞外小胞画分を添加したAIST−OAA1カラムの溶出液等を、抗CD9抗体を用いたウエスタンブロットに供し、免疫染色を行った結果を示す図である。
図12】捕捉回収された細胞外小胞の相対的定量解析を行った結果を示す図である。
図13】A375の細胞外小胞の特性を示す図であり、(a)は超遠心画分の調製の手順を示し、(b)は超遠心画分のウエスタンブロットの結果を示し、(c)は超遠心画分のナノ粒子トラッキング解析の結果を示し、(d)は超遠心画分のTEMによる観察結果を示す。
図14】細胞外小胞に含まれる糖鎖をHPLCにて分画した結果を示す図である。(a)は、PAでラベル化した上記糖鎖をHPLCにて分画した結果を示し、(b)は、PAでラベル化した糖鎖の量を、デュアルグラジエント逆相HPLCによって評価した結果を示す。
図15】(a)は、高マンノース型N型糖鎖の構造を示す図であり、(b)はエンドグリコシダーゼHで処理した超遠心画分のウエスタンブロットの結果を示す図である。
図16】(a)は、エンドグリコシダーゼHで処理した超遠心画分等のウエスタンブロットの結果を示す図である。(b)は、図16の(a)に示す結果を定量化した結果を示す図である。
図17】(a)の左側の図は、OAA固相化磁性ビーズの調製方法を示す模試図であり、(a)の右側の図は、抗体−OAA複合体、および、抗体−GFP複合体をウエスタンブロットに供した結果を示す図である。(b)は、OAA固相化磁性ビーズおよびGFP固相化磁性ビーズを用い、A375由来の細胞外小胞のプルダウンアッセイを行った結果を示す図である。(c)は、上記OAA固相化磁性ビーズおよびGFP固相化磁性ビーズに捕捉された成分を免疫沈降に供した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施することができる。
【0032】
なお、本明細書において、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを表す。また、本明細書中に記載された特許文献および非特許文献は、本明細書中において参考として援用される。
【0033】
〔1.癌の診断デバイス〕
本発明の一実施形態に係る癌の診断デバイスは、癌細胞由来の細胞外小胞が有する表面糖鎖に特異的に結合し得る1種または2種以上のレクチンが固定化された固定化担体を、1種または2種以上の上記表面糖鎖のそれぞれに対応させて備え、上記表面糖鎖と、上記レクチンとの特異的な結合によって上記細胞外小胞を捕捉する細胞外小胞捕捉部と、上記細胞外小胞に含まれるマイクロRNAを検出するための検出部と、を備える。
【0034】
<1−1.細胞外小胞捕捉部>
(A)細胞外小胞、表面糖鎖、レクチン
既に述べたように、癌細胞および正常細胞は、血中等に細胞外小胞を分泌している。当該細胞外小胞としては、エクソソーム、マイクロパーティクル、アポトーシス小体等が挙げられる。癌細胞由来の細胞外小胞が有するタンパク質は、当該細胞外小胞に特異的な表面糖鎖を有する。「表面糖鎖」とは、上記タンパク質分子の表面に結合した糖鎖をいう。
【0035】
上記表面糖鎖としては、乳癌細胞、前立腺癌細胞およびメラノーマ細胞由来の細胞外小胞が有する高マンノース型糖鎖、肝臓癌細胞由来の細胞外小胞が有するコアα1‐6フコース、膵臓癌、胃癌細胞および肺癌細胞由来の細胞外小胞が有するシアリルルイス型糖鎖等を挙げることができる。
【0036】
上記細胞外小胞捕捉部は、癌細胞由来の細胞外小胞が有する表面糖鎖に特異的に結合し得る1種または2種以上のレクチンが固定化された固定化担体を、1種または2種以上の上記表面糖鎖のそれぞれに対応させて備える。当該構成を備えることにより、上記表面糖鎖と、上記レクチンとの特異的な結合によって、癌細胞由来の細胞外小胞を、血液等のサンプルから選択的に回収することができる。特に、早期の癌に見られる幼若な癌細胞が分泌する細胞外小胞は少なく、かつ血中では低濃度であるが、そのような細胞外小胞をも効率的に回収することが可能である。
【0037】
「癌細胞由来の細胞外小胞が有する表面糖鎖に特異的に結合し得る1種または2種以上のレクチン」とは、上記表面糖鎖が高マンノース型糖鎖である場合は、1種または2種以上の高マンノース型糖鎖結合性レクチンである。つまり、1種類のみの高マンノース型糖鎖結合性レクチンが固定化担体に固定化されていてもよいし、2種類以上の高マンノース型糖鎖結合性レクチンが固定化担体に固定化されていてもよい。2種類以上用いる場合、高マンノース型糖鎖結合性レクチンの使用量の比は任意であってよい。
【0038】
また、上記表面糖鎖がシアリルルイス型糖鎖である場合は、1種または2種以上のシアリルルイス型糖鎖結合性レクチンである。2種類以上用いる場合、シアリルルイス型糖鎖結合性レクチンの使用量の比は任意であってよい。
【0039】
さらに、上記表面糖鎖がコアα1‐6フコースである場合は、1種または2種以上のコアα1‐6フコース結合性レクチンである。2種類以上用いる場合、コアα1‐6フコース結合性レクチンの使用量の比は任意であってよいが、後述するように、HypninAの使用量が多いことが好ましい。
【0040】
上記「固定化担体を、1種または2種以上の上記表面糖鎖のそれぞれに対応させて備える」とは、捕捉対象とする細胞外小胞の表面糖鎖の種類ごとに、対応する固定化担体を備えることを意味する。
【0041】
例えば、高マンノース型糖鎖を有する細胞外小胞のみを捕捉対象とする場合は、1種または2種以上の高マンノース型糖鎖結合性レクチンが固定化された固定化担体のみを備えればよい。また、例えば、高マンノース型糖鎖を有する細胞外小胞、シアリルルイス型糖鎖を有する細胞外小胞、およびコアα1‐6フコースを有する細胞外小胞を捕捉対象とする場合は、1種または2種以上の高マンノース型糖鎖結合性レクチンが固定化された固定化担体、1種または2種以上のシアリルルイス型糖鎖結合性レクチンが固定化された固定化担体、および1種または2種以上のコアα1‐6フコース結合性レクチンが固定化された固定化担体を備えればよい。
【0042】
血液等の試料中に含まれる可能性がある細胞外小胞が有し得る、できるだけ多くの表面糖鎖の種類に対応したレクチンが固定化された固定化担体を備えることにより、より多くの癌種を診断対象とすることができる。そのため、上記細胞外小胞捕捉部は、高マンノース型糖鎖、シアリルルイス型糖鎖、およびコアα1‐6フコースのそれぞれに対応したレクチンが固定化された固定化担体を備えることが好ましい。
【0043】
本明細書において、「糖鎖」とは、直鎖または分岐したオリゴ糖または多糖を意味する。オリゴ糖とは、単糖または単糖の置換誘導体が2〜10個脱水結合して生じたものをいう。さらに多数の単糖が結合している糖質を多糖という。
【0044】
上記「高マンノース型糖鎖」とは、N型糖鎖に共通する「トリマンノシルコア」と呼ばれる〔Manα1-6(Manα1-3)Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAc〕からなる共通母核構造に加え、分岐構造部分にα‐マンノース残基のみを含んでおり、〔Manα1-6(Manα1-3)Manα1-6(Manα1-3)Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAc〕という七糖を共通の母核として含む糖鎖である。
【0045】
高マンノース型糖鎖と特異的に結合し得る高マンノース型糖鎖結合性レクチンとして、例えば、分岐オリゴマンノシドの認識部位と一次構造の違いとに基づいて下記の4つのタイプに分類されるレクチン(堀貫治、バイオサイエンスとインダストリー vol.71 No.2(2013)129-133)、つまり、タイプIレクチン、タイプIIレクチン、タイプIIIレ
クチンおよびタイプIVレクチンからなる群より選ばれる1種または2種以上のレクチンを用いることができる。図8は、高マンノース型糖鎖の構造の一例を示す図である。図中、D1〜D3は、それぞれD1アーム〜D3アームを表す。
【0046】
(a)タイプI:高マンノース型糖鎖のD2アームの非還元末端にα(1‐3)Man残基を有するものと強く結合し、当該残基にα(1‐2)Manが付加したものでは結合力が著しく低下する。また、Manα1‐6(Manα1‐3)Manα1‐6(Manα1‐3)‐Man構造を認識部位とする。
【0047】
(b)タイプII:D1アームの非還元末端のα(1‐2)Man残基、D2アームの非還元末端のα(1‐2)Man残基、およびD3アームの非還元末端のα(1‐2)Man残基を認識部位とし、α(1‐2)Man残基数が多い高マンノース型糖鎖に対してより強く結合する。非還元末端にα(1‐2)Man残基をもたない高マンノース型糖鎖とは結合しない。
【0048】
(c)タイプIII:分岐糖鎖部分の構造の違いを認識せず、全ての高マンノース型糖鎖と遊離トリマンノシルコア構造((Manα1-6(Manα1-3)Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAc-PA)とに結合する。遊離トリマンノシルコア構造への結合性よりも、高マンノース型糖鎖への結合性の方がより高い。
【0049】
(d)タイプIV:D3アームの非還元末端にα(1‐2)Man残基を持つものとのみ結合する。
【0050】
上記(a)〜(d)のいずれかに属するレクチンとしては、海藻類または藍藻類から単離可能なレクチンである藻類由来レクチンを挙げることができる。なお、「レクチン」とは、分子内に糖結合ドメインをもつタンパク質で、抗体を除くものの総称である。
【0051】
上記藻類由来レクチンとしては、例えば、タイプIレクチンとして、淡水産藍藻Oscillatoria agardhii由来のOAA(UniProtKB/Swiss-Prot Accession No.: P84330);海藻Kappaphycus alvarezii由来のKAA(KAA−1(GenBank Accession No: LC007080、ECA−1としても知られる)、KAA−2(GenBank Accession No: LC007081、ECA−2としても知られる)、KAA−3);海藻Kappaphycus striatum由来のKSA(KSA−1、KSA−2);海藻トゲキリンサイ(Eucheuma serra)由来のESA(ESA−1、ESA−2(GenBank Accession No.: P84331);海藻アマクサキリンサイ(Eucheuma amakusaensis)由来のEAA(EAA−1、EAA−2、EAA−3);海藻Eucheuma denticulatum由来のEDA(EDA−1、EDA−2(GenBank Accession No.: LC007085)、EDA−3);海藻ミリン(Solieria pacifica)由来のSolnin(SolninA、SolninB、SolninC);海藻トサカノリ(Meristotheca papulosa)由来のMPA(MPA−1(GenBank Accession No: LC008514)、MPA−2(GenBank Accession No: LC008515));海藻シラモ(Gracilaria bursa-pastoris)由来のGranin‐BP;海藻Agardhiella subulata由来のASL(ASL−1(GenBank Accession No: LC007083)、ASL−2(GenBank Accession No: LC007084));細菌Pseudomonas fluorescens由来のPFL(GenBank Accession No: ABA72252);細菌Myxococcus xanthus由来のMBHA(GenBank Accession No: M13831;細菌Burkholderia oklahomensis由来のBOA(GenBank Accession No: AIO69853)等を用いることができる。
【0052】
タイプIIレクチンとしては、例えば、海藻アオモグサ(Boodlea coacta)由来のBCA(GenBank Accession No: BAK23238)等を用いることができる。
【0053】
タイプIIIレクチンとしては、例えば、海藻ハネモ(Bryopsis plumosa)由来のBPL17(GenBank Accession No: BAI43482);ネザシハネモ(Bryopsis corticulans)由来のBCL17(GenBank Accession No: LC008516);海藻オオハネモ(Bryopsis maxima)由来のBML17(GenBank Accession No: BAI94585)等を用いることができる。
【0054】
タイプIVレクチンとしては、例えば、海藻Meristhotheca papulosa由来のMPL−1(GenBank Accession No: LC007082)、MPL−P2、MPL−2およびMPL−P4等を挙げることができる。
【0055】
シアリルルイス型糖鎖は、シアル酸(N−アセチルノイラミン酸)と、ガラクトースと、N−アセチルグルコサミンと、フコースとから構成される糖鎖であり、タンパク質に結合している。
【0056】
シアリルルイス型糖鎖結合性レクチン(シアリルルイス型糖鎖と結合性を有するレクチン)としては、例えば、動物由来のC型レクチンに属するCa2+依存性のレクチンであるセレクチン(E−セレクチン、L−セレクチン、P−セレクチン)を用いることができる。シアリルルイス型糖鎖結合性レクチンは、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0057】
セレクチンは、シアリルルイス型糖鎖に対する結合性を有するため、シアリルルイス型糖鎖結合性レクチンとして用いることが可能である。
【0058】
コアα1‐6フコース結合性レクチン(コアα1‐6フコースと結合性を有するレクチン)としては、例えばカギイバラノリ(Hypnea japonica)由来のHypninA(HypninA−1(Accession No: JC5773)、HypninA−2(Accession No: JC5774)、HypninA−3(Accession No: P85888));海藻Hypnea cervicornis由来のHc−hypnin−A(Hc−hypninA−1(GenBank Accession No: LC013892)、Hc−hypninA−2、Hc−hypninA−3)、レンズマメ(Lens culinaris)由来のLCA(GenBank Accession No: P02870)、ヒイロチャワンダケ(Aleuria aurantia)由来のAAL(GenBank Accession No:P18891)、コウジカビ(Aspergillus oryzae)由来のAOL(GenBank Accession No: BAB88318)、スギタケ(Pholiota squarrosa)由来のPhoSL(GenBank Accession No:LF715849)等を用いることができる。
【0059】
Hypnin Aは、コアα1‐6フコース結合性レクチンの中でもコアα1‐6フコースに対する結合特異性が厳密である。それゆえ、コアα1‐6フコース結合性レクチンとしては、Hypnin Aを用いることがより好ましい。2種以上のコアα1‐6フコース結合性レクチンを用いる場合も、Hypnin Aの使用量が他のレクチンよりも多いことが好ましい。Hypnin Aを用いることによって、癌細胞由来の細胞外小胞が有するコアα1‐6フコースへの結合特異性をより一層高めることができるため、癌診断の特異性を高めることができる。
【0060】
Hypnin Aとしては、上述したHypnin A−1、Hypnin A−2、Hypnin A−3の何れを用いてもよく、Hypnin A−1、Hypnin A−2およびHypnin A−3からなる群より選ばれる2種以上のHypnin Aを用いてもよい。2種以上用いる場合の混合比は任意であってよい。
【0061】
一方、AOL、AALおよびLCAのコアα1‐6フコースに対する結合特異性は、Hypnin Aよりも低いが、コアα1‐6フコースへの結合性は十分有しているため、これらもコアα1‐6フコース結合性レクチンとして用いることが可能である。
【0062】
ここで、上記レクチンが糖鎖に対する結合性を有するか否か、つまり、レクチンが糖鎖と結合するか否かは、例えば標的となる糖鎖、または糖鎖が結合した抗体あるいは糖タンパク質等を固定化したカラムに、試験対象であるレクチンを通し、当該カラムにレクチンが結合したか否かをその通過液に含まれるレクチンの量、または特異的溶出剤でカラムから溶出したレクチンの量により評価することができる。
【0063】
また、標的となる糖鎖が結合した抗体をメンブレン等に固定化し、ビオチン、フルオレセインイソチオシアネート、ペルオキシダーゼ等で標識したポリペプチドを用いて検出するウエスタンブロット法(法医学の実際と研究、37, 155, 1994 参照)、ドットブロット法(Analytical Biochemistry, 204(1), 198, 1992 参照)を用いて評価することができる。
【0064】
また、標的となる糖鎖、または糖鎖が結合した抗体あるいは糖タンパク質等を固定化したチップと、試験対象であるレクチンとの親和性を、表面プラズモン共鳴法(SPR法)を用いて測定すればよい。上記方法によれば、その親和性の有無のみならず、その強度まで測定できるために好ましい方法であるといえる。このとき得られる親和定数(K)が、10(M−1)以上、より好ましくは10(M−1)以上、最も好ましくは10(M−1)以上であればレクチンと糖鎖とが結合していると判断できる。
【0065】
例示したレクチンのうち、PFL、MBHA、BOA、セレクチン、LCA、AAL、AOLおよびPhoSL以外の上記レクチンは、従来の方法によって海藻類または藍藻類から単離することができる。
【0066】
例えば、ESA−1は文献(Kawakubo, A. et al., J. Appl. Phycol. 9, 331-338,1997)に開示の方法;EAA−1、EAA−2およびEAA−3は文献(Kawakubo, A. et al., J. Appl. Phycol. 11, 149-156,1999)に開示の方法;EDA−1およびEDA−3は文献(Hung,L.D. et al., J. Appl. Phycol. 27, 1657-1669, 2015)に開示の方法;KAA−3は文献(Hung, L.D. et al., Fish. Sci. 75, 723-730,2009)に開示の方法;KSA−1およびKSA−2は文献(Hung, L.D. et al., Phytochemistry 72, 855-861,2011)に開示の方法;Solnin A、Solnin BおよびSolnin Cは文献(Hori, K. et al., Phytochemistry 27, 2063-2067,1988)に開示の方法;Granin−BPは文献(Okamoto, T. et al., Experientia. 46, 975-977,1990)に開示の方法;MBHAは文献(Cumsky, M. G., Zusman, D. R., J. Biol. Chem. 256, 12581-12588, 1981)に開示の方法、によってそれぞれ単離することができる。
【0067】
上記レクチンは天然の精製産物、化学合成手順の産物、および原核生物宿主または真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生された産物を含む。また、これらのレクチンは、市販品を用いてもよい。
【0068】
一実施形態において、上記レクチンは、それぞれの公開されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよいし、当該ポリペプチドの変異体であってもよい。
【0069】
変異体としては、欠失、挿入、逆転、反復、およびタイプ置換(例えば、親水性の残基の別の残基への置換)を含む変異体が挙げられる。
【0070】
ポリペプチドのアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このポリペプチドの構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。当業者は、周知技術を使用してポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸を容易に変異させることができる。
【0071】
好ましい変異体は、保存性もしくは非保存性アミノ酸置換、欠失、または挿入を有する。好ましくは、サイレント置換、挿入、および欠失であり、特に好ましくは、保存性置換である。これらは、本発明にかかるポリペプチド活性を変化させない。
【0072】
代表的に保存性置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの中での1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換;ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrの間の置換である。
【0073】
上記レクチンは、それぞれの公開されたアミノ酸配列からなるポリペプチド;または、上記アミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列、からなるポリペプチドであることが好ましい。
【0074】
上記「1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ポリペプチド作製法により置換、欠失、挿入、もしくは付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、最も好ましくは5個以下)のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されていることを意味する。このような変異ポリペプチドは、上述したように、公知の変異ポリペプチド作製法により人為的に導入された変異を有するポリペプチドに限定されるものではなく、天然に存在するポリペプチドを単離精製したものであってもよい。
【0075】
一方、本発明の一実施形態に係る癌の診断デバイスに用いるレクチンは、配向制御して固定化担体に固定化することが好ましい。つまり、上記レクチンは、ペプチド鎖の一端で上記固定化担体に固定化されていることが好ましい。この点については後述するが、配向制御して固定化担体に固定化するためには、(1)レクチンの天然由来のアミノ酸配列が、システイン残基を1個以下有すること;(2)レクチンの天然由来のアミノ酸配列が、システイン残基を含まないこと;もしくは、(3)レクチンの天然由来のアミノ酸配列が、システイン残基およびリジン残基を含まないこと、がより好ましい。そのため、上述したアミノ酸置換またはアミノ酸添加を行うことは可能であるが、あるアミノ酸のシステインまたはリジンへの置換は行わないことがより好ましい。
【0076】
なお、本発明の一実施形態に係る癌の診断デバイスに用いるレクチンは、アミノ酸がペプチド結合しているポリペプチドであればよいが、これに限定されるものではなく、ポリペプチド以外の構造を含む複合ポリペプチドであってもよい。本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド以外の構造」としては、糖鎖やイソプレノイド基等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0077】
また、上記レクチンは、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。付加的なポリペプチドとしては、例えば、HisやMyc、Flag等のエピトープ標識ポリペプチドが挙げられる。
【0078】
上記レクチンは、融合タンパク質のような改変された形態で組換え体として発現され得る。後述するように、固定化担体としてシリカモノリス等のモノリスゲルを用いる場合、上記ポリペプチドのカルボキシ末端にリンカー配列、固定化反応用配列、および精製タグ配列を付加した組換え体として発現させることが好ましい。上記精製タグ配列は、融合タンパク質の簡便な精製に寄与することができ、ポリペプチドの最終調製の前に除去され得る。
【0079】
精製タグ配列としては、例えばヘキサヒスチジンペプチド(例えば、pQEベクター(Qiagen,Inc.)において提供されるタグ)、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)タンパク質由来のエピトープに対応する精製のために有用な「HA」タグ等を利用することができる。
【0080】
(B)レクチンが固定化された固定化担体
本発明の一実施形態に係る癌の診断デバイスは、レクチンが固定化された固定化担体を備える。上記固定化担体としては、例えば、モノリスゲル、ビーズ(例えば、ガラスビーズ)等の無機質固定化担体、天然または合成高分子からなるラテックスまたはビーズ、天然または合成高分子からなる繊維、織布、不織布、中空糸等の有機質固定化担体(フィルター)等を使用することができる。これらの固定化担体は、後述する配向制御を行いやすくする観点から、一級アミノ基を有する固定化担体であることが好ましい。
【0081】
上記ビーズとしては、例えば、ヒスチジンなどのタグを付したレクチンと、上記タグに対する抗体との複合体と、プロテインGを固相化した磁性ビーズとが結合したレクチン固相化磁性ビーズを用いることも好ましい。レクチン固相化磁性ビーズは、上記複合体を構成する抗体と、上記プロテインGとを反応させることによって調製することができる。
【0082】
一級アミノ基を有する市販の固定化担体としては、例えばアミノ-セルロファイン(商品名:生化学工業で販売)、AF-アミノトヨパール(商品名:TOSOHで販売)、EAH-セファローズ4B及びリジン-セファローズ4B(商品名:アマシャムファルマシアで販売)、ポラス20NH(商品名:ベーリンガーマンハイムで販売)などが利用可能である。また、シラン化合物で一級アミノ基を有する化合物(例えば、3-アミノプロピルメトキシシランなど)を用いてガラスビーズなどに一級アミノ基を導入し、利用することも可能である。
【0083】
中でも、溶液の流路となるマクロポア(マクロ細孔)と、分離の場となるメソポア(メソ細孔)とを備え、上記レクチンを固定しやすく、かつ、全血をも処理可能であり、上記レクチンと検体中の細胞外小胞が含有する表面糖鎖との結合を効率的に行うことができることから、固定化担体としては、モノリスゲルを用いることが好ましい。
【0084】
モノリスゲルとは、モノリス材料(モノリス型ポリマー)でできたゲルをいう。モノリス材料は、単一の連続的な構造体から構成され、その構造を貫通する連続的な流路となる孔を有する。モノリスゲルは、水溶液ゾルを作成するゾル化ステップ、得られたゾルを加温してゲルにするゲル化ステップ、得られたゲルを焼成する焼成ステップにより製造することができる。
【0085】
モノリスゲルは、例えば、シリカを主成分とする反応溶液を、相分離を伴うゾル−ゲル転移を起こさせることにより得られる。ゾル−ゲル反応に用いられるゲル形成を起こす網目成分の前駆体としては、金属アルコキシド、錯体、金属塩、有機修飾金属アルコキシド、有機架橋金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解生成物、部分重合生成物である多量体を用いることができる。水ガラスほかケイ酸塩水溶液のpHを変化させることによるゾル−ゲル転移も、同様に利用することができる。
【0086】
さらに具体的に、モノリスゲルは、水溶性高分子、熱分解性の化合物を酸性水溶液に溶かし、それに加水分解性の官能基を有する金属化合物を添加して加水分解反応を行い、生成物が固化した後、次いで湿潤状態のゲルを加熱することにより、ゲル調製時にあらかじめ溶解させておいた低分子化合物を熱分解させ、次いで乾燥し加熱して製造することが好ましい。
【0087】
ここで、上記水溶性高分子は、理論的には適当な濃度の水溶液と成し得る水溶性有機高分子であって、加水分解性の官能基を有する金属化合物によって生成するアルコールを含む反応系中に均一に溶解し得るものであれば良い。具体的には、高分子金属塩であるポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩またはカリウム塩、高分子酸であって解離してポリアニオンとなるポリアクリル酸、高分子塩基であって水溶液中でポリカチオンを生ずるポリアリルアミンおよびポリエチレンイミン、あるいは中性高分子であって主鎖にエーテル結合を持つポリエチレンオキシド、側鎖にカルボニル基を有するポリビニルピロリドン等が好適である。また、有機高分子に代えてホルムアミド、多価アルコール、界面活性剤を用いてもよく、その場合多価アルコールとしてはグリセリンが、界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル類が最適である。
【0088】
上記加水分解性の官能基を有する金属化合物としては、金属アルコキシド又はそのオリゴマーを用いることができ、これらのものは例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数の少ないものが好ましい。また、その金属としては、最終的に形成される酸化物の金属、例えばSi、Ti、Zr、Alが使用される。この金属としては1種又は2種以上であっても良い。一方オリゴマーとしてはアルコールに均一に溶解分散できるものであればよく、具体的には10量体程度まで使用できる。
【0089】
また、上記酸性水溶液としては、通常塩酸、硝酸等の鉱酸0.001モル濃度以上のもの、あるいは酢酸、ギ酸等の有機酸0.01モル濃度以上のものが好ましい。
【0090】
相分離・ゲル化は、溶液を室温40〜80℃で0.5〜5時間保存することにより達成できる。相分離・ゲル化は、当初透明な溶液が白濁してシリカ相と水相との相分離を生じついにゲル化する過程を経る。この相分離・ゲル化で水溶性高分子は分散状態にありそれらの沈殿は実質的に生じない。
【0091】
あらかじめ共存させる、上記熱分解性の化合物の具体的な例としては、尿素あるいはヘキサメチレンテトラミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の有機アミド類を利用できるが、加熱後の溶媒のpH値が重要な条件であるので、熱分解後に溶媒を塩基性にする化合物であれば特に制限はない。
【0092】
共存させる上記熱分解性化合物は、化合物の種類にもよるが、例えば尿素の場合には、反応溶液10gに対し、0.05〜0.8g、好ましくは0.1〜0.7gである。また、加熱温度は、例えば尿素の場合には40〜200℃で、加熱後の溶媒のpH値は、6.0〜12.0が好ましい。
【0093】
また、熱分解によってフッ化水素酸のようにシリカを溶解する性質のある化合物を生じるものも、同様に利用できる。
【0094】
上記方法では、水溶性高分子を酸性水溶液に溶かし、それに加水分解性の官能基を有する金属化合物を添加して加水分解反応を行うと、溶媒リッチ相と骨格相とに分離したゲルが生成する。生成物(ゲル)が固化した後、適当な熟成時間を経た後、湿潤状態のゲルを加熱することによって、反応溶液にあらかじめ溶解させておいたアミド系化合物が熱分解し、骨格相の内壁面に接触している溶媒のpHが上昇する。そして、溶媒がその内壁面を浸食し、内壁面の凹凸状態を変えることによって細孔径を徐々に拡大する。
【0095】
シリカを主成分とするゲルの場合には、酸性あるいは中性領域においては変化の度合は非常に小さいが、熱分解が盛んになり水溶液の塩基性が増すにつれて、細孔を構成する部分が溶解し、より平坦な部分に再析出することによって、平均細孔径が大きくなる反応が顕著に起こるようになる。
【0096】
巨大空孔を持たず3次元的に束縛された細孔のみを持つゲルでは、平衡条件としては溶解し得る部分でも、溶出物質が外部の溶液にまで拡散できないために、元の細孔構造が相当な割合で残る。これに対して巨大空孔となる溶媒リッチ相を持つゲルにおいては、2次元的にしか束縛されていない細孔が多く、外部の水溶液との物質のやり取りが十分頻繁に起こるため、大きい細孔の発達に並行して小さい細孔は消滅し、全体の細孔径分布は顕著に広がることがない。
【0097】
なお、加熱過程においては、ゲルを密閉条件下に置き、熱分解生成物の蒸気圧が飽和して溶媒のpHが速やかに定常値をとるようにすることが有効である。
【0098】
溶解・再析出反応が定常状態に達し、これに対応する細孔構造を得るために要する、加熱処理時間は、巨大空孔の大きさや試料の体積によって変化するので、それぞれの処理条件において実質的に細孔構造が変化しなくなる、最短処理時間を決定することが必要である。
【0099】
加熱処理を終えたゲルは、溶媒を気化させることによって、溝内において、管壁に密着した乾燥ゲルとなる。この乾燥ゲル中には、出発溶液中の共存物質が残存する可能性があるので、適当な温度で熱処理を行い、有機物等を熱分解することによって、目的の無機系多孔質体を得ることができる。なお、乾燥は、30〜80℃で数時間〜数十時間放置して行い、熱処理は、200〜800℃程度で加熱する。
【0100】
モノリスゲルとしては、例えば、アクリルアミド系、メタクリル酸エステル系、スチレン-ジビニルベンゼン系などの有機系モノリス、シリカモノリス等を用いることができ、後述する一級アミノ基を導入しやすいため、シリカモノリスが特に好適に用いられるが、これに限られるものではない。モノリスゲルの製造方法は、例えば特公平08‐029952号公報、特開平07‐041374号公報に記載されている。ケイ素を含むシリカモノリスの場合、酢酸、ポリエチレングリコール、テトラメトキシシランを混合し、混合溶液を例えば40℃で24時間焼成すればよい。
【0101】
上記モノリスゲルは、マクロポア径が1μm以上200μm以下であり、メソポア径が10nm以上300nm以下であることが好ましい。
【0102】
上記構成によれば、マクロポア径が血球を通過させうる大きさであると共に、メソポア径がエクソソームおよびマイクロパーティクルなどの細胞外小胞を通過させ得る大きさとなっている。そのため、上記モノリスゲルに上記レクチンを固定化することによって、癌細胞由来の細胞外小胞が有する表面糖鎖と上記レクチンとを特異的に結合させることができる。したがって、細胞外小胞を検体から効率よく分離することができる。
【0103】
上記モノリスゲルは、マクロポア径が20μm以上200μm以下であり、メソポア径が40nm以上200nm以下であることがより好ましい。上記構成によれば、マクロポアへの負荷圧を軽減しつつ、血球を通過させ、かつ、高分離能を維持することができる。また、上記構成によれば、メソポアがエクソソームおよびマイクロパーティクルなどの細胞外小胞をより通過させやすくできると共に、単位体積当たりの分離可能な細胞外小胞の量を高く維持することができる。したがって、細胞外小胞に発現している、上記表面糖鎖を有するタンパク質をより効率よく検体から分離することができ、全血等の検体の処理も容易に行うことができる。
【0104】
モノリスゲルは上述のようにゾル−ゲル法によって調製することができる。1μm以上200μm以下、20μm以上200μm以下などの所望の大きさのマクロポア径を有するモノリスゲルは、相分離を誘起するために加える水溶性ポリマーの分子量および添加量、相分離のタイミングに影響を与えるブロックコポリマーの添加量等を調整し、ゾルの粘度を調整すること等によって得ることができる。
【0105】
また、モノリスゲルのメソポア径は、ゲル化後のエージング条件によって制御することができる。例えば、エージングにおける溶媒組成、加熱温度、および加熱時間を調整することによって、10nm以上300nm以下、40nm以上200nm以下などの所望の大きさのメソポア径を有するモノリスゲルを得ることができる。
【0106】
マクロポア径およびメソポア径は、例えば水銀圧入法等の従来公知の方法によって細孔径の分布を測定することや、モノリスゲルを顕微鏡で観察すること等によって確認することができる。
【0107】
また、モノリスゲルは市販品を用いてもよい。市販品としては例えば、MonoBisカラム 低圧タイプ 未修飾 品番:3250L30SI マクロポア径1.4μm・メソポア径30nm((株)京都モノテック製)等を用いることができる。
【0108】
上記レクチンは、固定化担体1mlあたり2μg以上固定されることが好ましく、10μg以上固定されることがより好ましく、100μg以上固定されることがさらに好ましく、1mg以上固定されることが特に好ましい。上記構成によれば、固定化担体の単位体積当たりに上記レクチンが高密度に固定化されるため、上記レクチンとの結合性を持つ表面糖鎖を有する細胞外小胞を検体から効率よく分離する上で好ましい。
【0109】
なお、上記レクチンの固定化担体1ml当たりの固定化量の上限値は、10mg以下であることが好ましい。
【0110】
上記レクチンが固定化担体に所望の量固定化されているか否かについては、例えば、反応前後の反応溶液中の上記レクチンの280nmの吸光度を測定し、測定結果に基づき、反応で消費された上記レクチンの量を求め、この量を固定化量とすることによって確認することができる。
【0111】
(C)レクチンを固定化担体に固定化する方法
上記レクチンを固定化担体に固定化する方法は特に限定されないが、上記のように高密度に固定化するためには、上記レクチンを配向制御して固定化担体に固定化することが好ましい。配向制御したレクチンの固定化とは、レクチンをペプチド鎖の一端で上記固定化担体に固定化することをいい、例えばペプチド鎖のカルボキシ末端で固定化することをいう。配向制御してレクチンを固定化する方法としては、例えば特許第2517861号公報、特開2000−119300号公報、特開2003−344396号公報に記載の方法が挙げられる。
【0112】
上記固定化担体がモノリスゲルである場合、上記レクチンを固定化するために、モノリスゲルにエポキシ基を導入し、続いてアミノ基含有ポリマーを導入することによって、一級アミノ基をモノリスゲルに高密度に導入することが好ましい。これによって、上記レクチンを効率よく配向制御してモノリスゲルに固定化することができる。
【0113】
モノリスゲルへのエポキシ基の導入は、例えば、モノリスゲルをエポキシシランの溶液中に浸漬することによって行うことができる。また、一級アミノ基の導入はアミノ基含有ポリマーをモノリスゲル表面に添加し、内部に浸透させればよい。これらの操作によりモノリスゲルにエポキシ基を導入し、さらにエポキシ基に一級アミノ基を共有結合により結合させることができる。
【0114】
上記一級アミノ基への上記レクチンの固定化の一例として、特開2000−119300号公報に開示の方法に基づく方法について説明する。
【0115】
上記レクチン(ポリペプチド)を、一般式(2)で表す。
【0116】
NH -R -COOH・・・(2)
(式中、Rは任意のアミノ酸残基を表す)
次に、一般式(2)で表されるポリペプチドに、以下の一般式(3)で表されるペプチドが結合した、以下の一般式(4)で表される融合ポリペプチドを作製し、この融合ポリペプチドのSH基をシアノ化することによって、以下の一般式(5)で示されるシアノ基含有ポリペプチドに転換し、これを、以下の一般式(6)に示される固定化担体に導入された一級アミノ基に結合させることによって、以下の一般式(1)で示されるポリペプチドとして固定化担体に固定化することができる。
【0117】
NH -R -CO-NH-CH(CH-SH)-CO-X・・・(3)
(式中、Rは任意のアミノ酸残基、Xは、OHもしくは任意のアミノ酸残基を表す)
NH -R -CO-NH-R-CO-NH-CH(CH-SH)-CO-X・・・(4)(式中、R及びRは任意のアミノ酸残基、Xは、OHもしくは任意のアミノ酸残基を表す)
NH -R -CO-NH-R-CO-NH-CH(CH-SCN)-CO-X・・・(5)
(式中、R及びRは任意のアミノ酸残基、Xは、OHもしくは任意のアミノ酸残基を表す)
NH -Y・・・(6)
(式中、Yは任意の固定化担体を表す)
NH -R-CO-NH-R-CO-NH-Y・・・(1)
(式中、R及びRは任意のアミノ酸残基、Yは任意の固定化担体を表す)
一般式(1)に示すように、Rは、固定化しようとする一般式(2)で表されるポリペプチドと、一級アミノ基との間のリンカーペプチド(リンカー配列)となる。Rは任意のアミノ酸残基であり、アミノ酸の種類、数ともに特に限定されないが、例えば、グリシン5残基からなる配列、グリシン6残基からなる配列などを用いることができる。なお、Rも任意のアミノ酸残基であり、アミノ酸の種類、数ともに特に限定されない。
【0118】
一般式(3)中、-NH-CH(CH-SH)-CO-Xで表される部分は、本明細書において固定化反応用配列と称され、一般式(5)に示すようにシアノ化され、シアノ基を有するポリペプチドを生成することによって、一般式(6)で示される固定化担体との反応を可能とする。
【0119】
固定化反応配列には一般式(3)に示すように、一残基のシステインが含まれていることを要する。XはOHもしくは任意のアミノ酸残基(アミノ酸の種類、数ともに特に限定されない)であり、特に限定されないが、一般式(4)で示される物質の等電点は4〜5であることが好ましく、当該等電点を4〜5に調整することが容易であるため、Xとしてはアスパラギン酸やグルタミン酸を多く含む配列が好適である。例えば、アスパラギン酸6残基からなる配列や、アラニル−ポリアスパラギン酸を好適に用いることができる。アラニル−ポリアスパラギン酸は、一般式(5)に示されるシアノシステインの次位のアミノ酸をアラニンにすることにより、シアノシステイン残基を介したアミド結合形成反応を生じさせやすいことと、アミノ酸側鎖の中でアスパラギン酸のカルボキシル基が最も酸性であるため、上記等電点を4〜5に調整しやすいためである。
【0120】
固定化反応配列としては、一残基のシステインが含まれていれば特に限定されるものではないが、例えばシステイン1残基を含む8残基のアミノ酸からなる配列などを用いることができる。当該配列の例は、特許文献2に記載されている。上記Xとしては、固定化反応配列のC末端側に、さらに、上述した精製タグ配列が付加されていることが好ましい。
【0121】
一般式(2)で表されるポリペプチドの一般式(4)で表される融合ポリペプチドへの転換は、従来公知の組換えDNA手法を用いることによって行うことができる。すなわち、一般式(2)で示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、一般式(3)で示されるペプチド配列をコードするポリヌクレオチドとを結合することにより、一般式(4)で示される融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを作製し、これを大腸菌などの宿主生物で発現させ、その後、発現したポリペプチドを分離精製することにより、目的とする上記融合ポリペプチドを作製することができる。
【0122】
一般式(4)で表される融合ポリペプチドから一般式(5)で表される融合ポリペプチドへの転換、いわゆるシアノ化反応は、シアノ化試薬を用いて行うことができる。シアノ化試薬としては、通常、2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸(2-nitro-5-thiocyanobennzoic acid (NTCB))(Y.Degani, A.Ptchornik,Biochemistry,13,1-11(1974)に記載)または、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロほう酸(1-cyano-4−dimethylaminopyridinium tetrafluoroborate(CDAP))などを用いる方法が簡便である。
【0123】
NTCBおよびCDAPは市販のものをそのまま用いることができる。NTCBを用いたシアノ化は、pH7-9の間で効率よく行うことができ、かつ遊離するチオニトロ安息香酸の412nmの吸光度の増加(分子吸光係数=13,600M−1cm−1 )で反応効率を調べることができる。また、SH基のシアノ化は、例えば、文献(J.Wood
& Catsipoolas, J.Biol.Chem. 233, 2887(196
3))に記載の方法に従っても行うことができる。
【0124】
一般式(5)で示されるシアノ化された融合ポリペプチドと、一般式(6)で示される固定化担体との反応は、弱アルカリ条件下(pH8〜10)に、室温で行うことができる。
【0125】
固定化反応を行う溶媒としては、一般式(5)で示されるシアノ化した融合ポリペプチドが溶ける溶媒で、かつpHを調整できる溶媒であれば利用可能である。例えば、リン酸緩衝液、ほう酸緩衝液などの種々の緩衝液、メタノール、エタノールなどのアルコール類の他、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキサイドなどが利用可能である。反応温度は、室温で高い反応効率が得られるが、用いる溶媒が凍結もしくは沸騰しない範囲、及び一般式(5)で示されるシアノ化した融合ポリペプチドが変性の結果凝集しない温度範囲であれば問題なく用いることができる。
【0126】
このように、上記表面糖鎖に特異的に結合するレクチンを固定化担体に固定することによって、上記レクチンは、ペプチド鎖のカルボキシ末端で上記固定化担体に固定化される。つまり、配向制御して固定化担体に固定化されるため、当該担体に高密度に固定化される。それゆえ、上記表面糖鎖の結合効率を向上させることができるため、検体中に含まれる細胞外小胞をより効率的に検体から分離することができる。また、固定化された上記ポリペプチド同士が互いに衝突することができないため、上記ポリペプチドの変性を可逆的なものとすることができる。
【0127】
上記固定化担体は、検体を導入しやすくし、かつ、上記レクチンへの上記表面糖鎖の結合を円滑に行うために、カラム等に充填して用いることが好ましい。カラムとしては、例えば、従来公知のスピンカラム、液体クロマトグラフィー用のステンレスカラム等を用いることができる。
【0128】
また、上記固定化担体は、マイクロチップ上に配置した構成としてもよい。当該構成については後述する。
【0129】
<1−2.細胞外小胞からのマイクロRNAの抽出>
上記細胞外小胞捕捉部は、癌細胞由来の細胞外小胞が有するタンパク質の表面糖鎖に特異的に結合し得るレクチンを用いることにより、上記細胞外小胞を正常細胞由来の細胞外小胞と区別して選択的に捕捉することができる。捕捉された細胞外小胞に含有されるマイクロRNAを抽出し、上記表面糖鎖のパターンと、細胞外小胞に含有されるマイクロRNAの存在パターンとを解析することにより、初期の癌種の特定や、再発・転移を初期の段階で診断することが可能となる。そこで、以下、上記固定化担体からマイクロRNAを抽出する方法について説明する。
【0130】
上記固定化担体を、PBSなどを用いて十分に洗浄した後、例えば界面活性剤を用いて上記固定化担体を処理することによって、上記レクチンと結合した細胞外小胞に内包されたマイクロRNAを抽出することができる。
【0131】
上記細胞外小胞としては、上述のようにエクソソームおよび/またはマイクロパーティクル等が挙げられるが、エクソソームとマイクロパーティクルとは、それぞれ個別にマイクロRNAを含有している。ここで、界面活性剤の濃度を変化させることによって、エクソソームに含有されるマイクロRNAと、マイクロパーティクルに含有されるマイクロRNAとを、別々に抽出することができる。これは、マイクロパーティクルと、エクソソームとで、界面活性剤に対する崩壊の度合いが異なるためである。上記界面活性剤としては、例えばSDS、TritonX−100、デオキシコール酸、Tween20などを挙げることができる。
【0132】
例えば、上記固定化担体を、まず低濃度の界面活性剤(例えば、0.01重量%のSDSおよび0.025重量%のTritonX−100)で処理することによって、マイクロパーティクルを崩壊させ、内包されているマイクロRNAを抽出することができる。
【0133】
次に、マイクロパーティクル中のマイクロRNAを回収した後の上記固定化担体を、PBS等を用いて十分に洗浄した後、高濃度の界面活性剤(例えば、0.125重量%のSDS、0.075重量%のTritonX−100)で処理することによって、エクソソームを崩壊させ、内包されているマイクロRNAを抽出することができる。界面活性剤による処理は、上記固定化担体が充填されているカラムに界面活性剤の液を通液させること等によって行うことができる。
【0134】
このような抽出を、1種または2種以上の上記表面糖鎖のそれぞれに対応させて備えた固定化担体ごとに行うことにより、エクソソームおよびマイクロパーティクルに内包されたマイクロRNAを、細胞外小胞が有する表面糖鎖に対応させて、区別して回収することができる。そして、例えば、高マンノース型糖鎖結合性レクチンの固定化担体からの抽出液にmiR−1が含まれていれば、マイクロRNAと癌種との関係(例えば、Yuqing He et al., Clinical Chemistry, 61:9, 1138-1155, 2015など)に基づいて、乳癌に罹患していると診断することができる。本発明の一実施形態に係る癌の診断デバイスは、上記表面糖鎖と上記レクチンとの結合特異性を利用して、癌細胞由来の細胞外小胞を特異的に捕捉することができるため、癌細胞由来のマイクロRNAの回収を特異的かつ迅速に行うことができる。それゆえ、特異性の高い癌の診断を行うことができる。
【0135】
本発明の一実施形態に係る癌の診断デバイスは、エクソソームから抽出されたマイクロRNA、および、マイクロパーティクルから抽出されたマイクロRNAを、それぞれ、表面糖鎖の種類ごとに区別して収容する、マイクロRNA収容部を備えることが好ましい。
【0136】
例えば、上記固定化担体からの抽出液を後述する検出部へ直接送液し、マイクロRNAの解析を行うことも可能であるが、マイクロRNA収容部を備えることによって、固定化担体から抽出されたマイクロRNAを、種類に応じて確実に分取することができる。
【0137】
マイクロRNA収容部の構成としては、例えば、一枚のプレートに、エクソソームから抽出されたマイクロRNA、マイクロパーティクルから抽出されたマイクロRNA、および廃液をそれぞれ収容するための凹部を設けた構成を挙げることができる。
【0138】
上記抽出によって得られた抽出液は、マイクロRNA以外のRNA、ncRNA、DNA等、および界面活性剤を含むため、必要に応じて、カオトロピックイオンを用いたブーム法などの精製方法を用いて、精製することができる。
【0139】
<1−3.マイクロRNAを検出するための検出部>
本発明の一実施形態に係る癌の診断デバイスは、上記細胞外小胞に含まれるマイクロRNAを検出するための検出部を備える。上記検出部としては、例えば、細胞外小胞に含まれ得るマイクロRNAのcDNAをプローブとして固定したアレイ、マイクロRNAを増幅するためのウェル等を挙げることができる。
【0140】
癌細胞由来の細胞外小胞が有する表面糖鎖は、前述したように、乳癌、前立腺癌およびメラノーマの細胞由来の細胞外小胞が高マンノース型糖鎖を有し、肝臓癌の細胞由来の細胞外小胞がコアα1‐6フコースを有し、膵臓癌、胃癌および肺癌の細胞由来の細胞外小胞がシアリルルイス型糖鎖を有することが知られている。
【0141】
そこで、例えば、これらの細胞外小胞に含まれ得るマイクロRNAのcDNAをプローブとして固定したアレイ(検出部)を作製することによって、癌の有無および癌種を迅速かつ網羅的に診断することができる。上記アレイの作製は従来公知の方法に従って行えばよい。また、上記アレイを用いたマイクロRNAの検出も、従来公知の方法に従って行うことができる。
【0142】
すなわち、上記細胞外小胞捕捉部によって捕捉された細胞外小胞から抽出した抽出液に含まれるマイクロRNAから、cDNAを常法に従って調製する。次に当該cDNAを蛍光色素で標識した試料を作製し、当該試料を上記アレイに供して、上記cDNAと、上記プローブとのハイブリダイズを行う。続いて、各プローブDNA(各スポット)のシグナル(蛍光強度)をスキャンし、そのデータをコンピュータで解析する。蛍光が観察されたマイクロRNAのパターンから、癌の有無および癌種の診断を行うことができる。
【0143】
上記プローブは、アレイ上において、表面糖鎖の種類ごとにエリアを区分して配置することが好ましい。例えば、アレイ上のあるエリアには、高マンノース型糖鎖と関連する癌である乳癌、前立腺癌およびメラノーマの細胞由来の細胞外小胞に含まれるマイクロRNAのcDNAを配置する。別のエリアには、シアリルルイス型糖鎖と関連する癌である膵臓癌、胃癌および肺癌の細胞由来の細胞外小胞に含まれるマイクロRNAのcDNAを配置する。そして、さらに別のエリアには、コアα1‐6フコースと関連する癌である肝臓癌の細胞由来の細胞外小胞に含まれるマイクロRNAのcDNAを配置する。
【0144】
このような配置とすることにより、癌種の判断を迅速に行うことができる。例えば、メラノーマの細胞外小胞に含まれるマイクロRNAについて蛍光が観察された場合は、プローブが配置されているエリアが区別されているため、メラノーマに罹患していると迅速かつ一義的に判断することができる。
【0145】
上記マイクロRNAを増幅するためのウェルは、RT−PCRまたはLAMP法によって、癌細胞由来の細胞外小胞が有するマイクロRNAを検出するために用いられる。すなわち、上記ウェル中で、細胞外小胞から抽出したマイクロRNAからcDNAを常法に従って調製し、適切なプライマーを設計して、当該cDNAおよび上記プライマーを用いてDNAを増幅する。なお、上記ウェルは、増幅反応を行うことができることができれば足りるため、増幅反応を行うことができる限り、その構造は特に限定されるものではない。
【0146】
<1−4.癌の診断デバイスの一例および癌の診断について>
次に、図1〜3を参照して、本発明の一実施形態に係る癌の診断デバイス、およびこれを用いた癌の診断について説明する。
【0147】
図1は、本発明の一実施形態に係る癌の診断デバイスのうち、上記細胞外小胞捕捉部、および、上記マイクロRNA収容部の構成の一例を示す模式図である。図1中、1は癌の診断デバイス、11は送液システム、12はプレート、13、15a〜15c、19a〜19c、21a〜21cはそれぞれ第1〜第4の流路、14は導入部、16〜18は細胞外小胞捕捉部、16’〜18’は細胞外小胞捕捉部の収容部、20a〜20cは排出部、22はマイクロRNA収容部、23は廃液収容部、24はマイクロパーティクルから抽出されたマイクロRNAの収容部、25はエクソソームから抽出されたマイクロRNAの収容部である。また、図示しないが、マイクロRNA収容部に隣接して矢印方向に、上記検出部が備えられている。なお、プレート12の材質は、ガラス、アクリル系樹脂材料、シクロオレフィン系樹脂材料、ポリエステル系樹脂材料などの透明材料であることが好ましい。
【0148】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る癌の診断デバイス1は、試料を上記細胞外小胞捕捉部に導入する導入部14と、上記細胞外小胞捕捉部16〜18から溶出されたマイクロRNAを含む液を排出する排出部20a〜20cとを備え、上記導入部14と上記排出部20a〜20cとの間に上記細胞外小胞捕捉部16〜18が配置され、上記導入部14と、上記細胞外小胞捕捉部16〜18との間に第2の流路15a〜15cを備え、上記細胞外小胞捕捉部16〜18と上記排出部20a〜20cとの間に第3の流路19a〜19cを備え、上記排出部20a〜20cが、上記固定化担体の数に対応させて設けられていることが好ましい。
【0149】
上記構成を備えることによって、試料に細胞外小胞が含まれている場合、エクソソームおよびマイクロパーティクルに内包されたマイクロRNAを、細胞外小胞が有する表面糖鎖に対応させて、区別して回収することができる。それゆえ、上述したように、特異性の高い癌の診断を簡単な構造で精度良く行うことができる。
【0150】
送液システム11は、マイクロRNAの検出対象である試料を、第1の流路13を介して、プレート12上に設けられた導入部14へ送液する。上記試料としては、血液、血漿、血清、唾液、涙、拭い液、痰、尿、髄液、羊水、関節液、腹水、および胸水からなる群より選ばれる1種または2種以上の試料であることが好ましい。
【0151】
図示しないが、送液システム11は、液体を収容可能な貯液部と、送液システム11に加えられた外力を貯液部内の圧力変動として伝達可能な圧力伝達部を備えており、圧力伝達部により、貯液部内に収容された液体を、貯液部内の圧力変動に基づいて第1の流路13へ流出させる。上記液体としては、上記試料の他、洗浄液、マイクロRNAの抽出に用いる界面活性剤等が挙げられる。
【0152】
送液システム11によって第1の流路13に流出した上記試料は、導入部14から第2の流路15a〜15cへ入り、細胞外小胞捕捉部の収容部16’〜18’内に設置された細胞外小胞捕捉部16〜18に供される。細胞外小胞捕捉部16は、1種または2種以上の高マンノース型糖鎖結合性レクチンが固定化された固定化担体を備えている。細胞外小胞捕捉部17は、1種または2種以上のシアリルルイス型糖鎖結合性レクチンが固定化された固定化担体を備えている。細胞外小胞捕捉部18は、1種または2種以上のコアα1‐6フコース結合性レクチンが固定化された固定化担体を備えている。
【0153】
つまり、細胞外小胞捕捉部16〜18は、癌細胞由来の細胞外小胞が有する表面糖鎖である高マンノース型糖鎖、シアリルルイス型糖鎖、およびコアα1‐6フコースのそれぞれに対応した固定化担体を備えている。
【0154】
上記レクチンと結合しなかった素通り画分は、第3の流路19a〜19cから、それぞれ排出部20a〜20cへ、さらに排出部20a〜20cから、第4の流路21a〜21cを経て、廃液として廃液収容部23に収容される。試料中に上記レクチンに結合する細胞外小胞が存在すれば、当該細胞外小胞は、その表面糖鎖によってレクチンと結合し、捕捉される。そこで、細胞外小胞捕捉部が備える固定化担体を十分に洗浄した後、<1−2.細胞外小胞からのマイクロRNAの抽出>で説明したように、例えば濃度の異なる界面活性剤を上記固定化担体に通液させることによって、収容部24にマイクロパーティクルから抽出されたマイクロRNAを回収し、収容部25にエクソソームから抽出されたマイクロRNAを回収することができる。
【0155】
なお、マイクロRNA収容部22の近傍に、両方向の矢印が記載されているが、これはマイクロRNA収容部22が移動可能であることを示している。例えば、収容部23への廃液の回収が完了した後、マイクロRNA収容部22をプレート12側へ移動させ、流路21a〜21cの開放端が収容部24の略鉛直上方に位置するようにすることができる。同様に、収容部24へのマイクロパーティクルから抽出されたマイクロRNAの回収が完了した後、マイクロRNA収容部22をプレート12側へ移動させ、流路21a〜21cの開放端が収容部25の略鉛直上方に位置するようにすることができる。
【0156】
収容部24に回収されたマイクロRNAおよび収容部25に回収されたマイクロRNAは、<1−3.マイクロRNAを検出するための検出部>にて説明した検出部に送られる。検出部への供試は、例えば収容部24および収容部25から検出部への流路を設けて送液することによって行ってもよい。また、収容部24および収容部25から、一旦、サンプルチューブ等に回収し、精製した後、検出部へ供試してもよい。
【0157】
このように、癌の診断デバイス1は、異なる種類のレクチンが固定化された複数の固定化担体を1つのプレート12に配置しているため、上記試料の切換え時間を短縮することができるとともに、少ない量の試料で多項目の検査を行うことができる。
【0158】
次に、上記検出部が、上記細胞外小胞に含まれるマイクロRNAを検出するためのプローブが固定されたアレイである場合の、当該アレイを用いた癌の診断について、図2および図3に基づき説明する。
【0159】
図2は、細胞外小胞捕捉部16〜18から抽出された抽出液を、マイクロRNAのcDNAをプローブとして固定したアレイに供する一例を示した模式図である。図2において、部材14〜18は、図1に示したのと同じ部材を表している。導入部14の上に示した矢印は、試料を導入部14に流入させることを示す。また、図2,3に示した各四角形はプローブを固定した領域を示し、四角形の中には、プローブとして用いたマイクロRNAの名称を記載している。
【0160】
図2は、アレイに、乳癌細胞の細胞外小胞中に含まれることが知られているmiR−1および10b−5p、前立腺癌細胞の細胞外小胞中に含まれることが知られている141−3pおよび143、メラノーマ細胞の細胞外小胞中に含まれることが知られている146a−5pのcDNAをプローブとして固定し、高マンノース型糖鎖結合性レクチンを固定化した固定化担体を備える細胞外小胞捕捉部16から抽出された抽出液を、上記アレイに供することを示している。なお、乳癌細胞、前立腺癌細胞およびメラノーマ細胞の細胞外小胞は、いずれも、高マンノース型糖鎖を表面糖鎖として有する。
【0161】
また、図2は、膵臓癌細胞の細胞外小胞中に含まれることが知られている146a−5p、胃癌細胞の細胞外小胞中に含まれることが知られているmiR−1、肺癌細胞の細胞外小胞中に含まれることが知られている10b−5pおよび141−3pのcDNAをプローブとして固定し、シアリルルイス型糖鎖結合性レクチンを固定化した固定化担体を備える細胞外小胞捕捉部17から抽出された抽出液を、上記アレイに供することを示している。なお、膵臓癌細胞、胃癌細胞および肺癌細胞の細胞外小胞は、いずれも、シアリルルイス型糖鎖を表面糖鎖として有する。
【0162】
さらに、図2は、肝臓癌細胞の細胞外小胞中に含まれることが知られている143のcDNAをプローブとして固定し、コアα1‐6フコース結合性レクチンを固定化した固定化担体を備える細胞外小胞捕捉部18から抽出された抽出液を、上記アレイに供することを示している。なお、肝臓癌細胞の細胞外小胞は、コアα1‐6フコースを表面糖鎖として有する。
【0163】
図3は、上記アレイからの蛍光の観察結果に基づいて癌を診断する一例を示した模式図である。図3の(a)〜(g)において、四角形の背景がグレーとなっているものは、蛍光が観察されたことを示している。図3の(a)であれば、細胞外小胞捕捉部17から抽出された抽出液を供したパネルの146a−5pのみから蛍光が観察されているため、当該抽出液にはマイクロRNAとして146a−5pが含まれていたことになる。シアリルルイス型糖鎖を表面糖鎖として有する細胞外小胞から抽出されたマイクロRNAが146a−5pであるため、この場合、試料提供者は膵臓癌に罹患していると診断することができる。
【0164】
また、図3の(d)であれば、細胞外小胞捕捉部16から抽出された抽出液を供したパネルのmiR−1および10b−5pから蛍光が観察されているため、当該抽出液にはマイクロRNAとしてmiR−1および10b−5pが含まれていたことになる。高マンノース型糖鎖を表面糖鎖として有する細胞外小胞から抽出されたマイクロRNAがmiR−1および10b−5pであるため、この場合、試料提供者は乳癌に罹患していると診断することができる。
【0165】
同様に、図3の(b)の結果からは胃癌、図3の(c)の結果からは肺癌、図3の(e)の結果からは前立腺癌、図3の(f)の結果からはメラノーマ、図3の(g)の結果からは肝臓癌に、それぞれの試料提供者が罹患していると診断することができる。
【0166】
図3に示したのは診断の一例であるが、本発明の一実施形態に係る癌の診断デバイスは癌細胞由来の細胞外小胞を、当該細胞外小胞が有する表面糖鎖に基づいて特異的に分離することができ、当該細胞外小胞に内包されるマイクロRNAの種類を迅速に決定することができる。それゆえ、初発・再発・転移癌を臓器特異的に、癌が小さな段階で発見することができるという、非常に顕著な効果を奏することができる。
【0167】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0168】
以下、実施例に従って本発明を説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されるものではない。
【0169】
〔実施例1:ヒトメラノーマ細胞培養上清からのエクソソームの捕捉〕
スピンカラムに充填された固定化担体であるシリカモノリスに、タイプIのレクチンであるOAAを固定化することによって得られたOAA固定化スピンカラムを用いて、エクソソーム(およびエクソソームに発現したタンパク質)の捕捉を行った。実験は3回繰り返し、結果をその平均として示した。
【0170】
OAA固定化スピンカラムとしては、AIST−OAA1固定スピンカラム(4mm径×2mm厚、27μl容量、OAA1の固定化量42μg、京都モノテック製)を用いた。また、比較用のカラムとして、抗CD9抗体固定スピンカラム(27μl容量、Exo Trap(登録商標) Exosome Isolation Spin Column Kit for Protein Research, コスモバイオ(株)製)、および、ホスファチジルセリン結合性Tim4磁気ビーズ(PSアフィニティビーズ)(MagCapture(登録商標) Exosome Isolation Kit PS, WAKO製)を用いた。
【0171】
各スピンカラムは、スピンカラム中の保存液を遠心除去(4℃, 1500×g, 30秒)し、200 μlの超純水で3回同様に遠心洗浄後、200 μlの平衡化緩衝液(20 mM PB(pH7.4), 500mM NaCl)を加えて遠心分離(4℃, 1500×g, 30秒)し、この操作をさらに2回行って平衡化した。
【0172】
<1.サンプルの調製方法>
メラノーマ細胞としては、ATCCから購入したA375(ATCC(登録商標) CRL−1619)を用いた。
【0173】
10%(v/v)ウシ由来エクソソーム除去FBS(Exosome-depleted FBS Media Supplement(System bioscience社))、100 U/ml ペニシリンおよび100μg/mlストレプトマシンを含むDMEM培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium、Sigma製)中で5日間培養し、コンフルエントに達したメラノーマ細胞の培養液792mlを、遠心分離による段階的分画に供した。すなわち、300gにて10分間遠心分離して回収した上清をさらに2,000gにて10分間遠心分離して上清を得た。これをさらに10,000gにて30分間遠心分離して上清を得た。このようにして細胞画分と上清(遠心上清)とに分離した。
【0174】
細胞画分は、リン酸緩衝溶液(phosphate-buffered saline、PBS)10mlに懸濁させ、300gで10分間、遠心洗浄する操作を3回行った。
【0175】
洗浄後、細胞画分を10mlのPBSに懸濁させ、懸濁液中の細胞数をセルカウンターを用いてカウントした。細胞数をカウントした後、懸濁液を300gで10分間、遠心分離し、得られた細胞残渣を1mlのRIPA緩衝溶液(50mM Tris−HCl、150mM NaCl、5mM EDTA、1%NP−40、1mM PMSF、1mM DTT、1mg/mlタンパク質分解酵素抑制剤)に溶解させた。
【0176】
前述のようにして得た遠心上清のうち、100mlを超遠心画分の調製用(遠心上清A)とし、692mlを細胞外小胞捕捉用(遠心上清B)とした。上記遠心上清Aを、100,000g、70分間の条件下にて超遠心した。超遠心後、細胞外小胞が含まれるペレットに、PBSを500μl加え、細胞外小胞画分(超遠心画分)とした。細胞外小胞画分のうち、上記遠心上清1mlに相当する量を超遠心画分1とした。
【0177】
上記遠心上清Bは、孔径0.45μmのフィルター(ポリエーテルスルホン、DISMIC 25SS045RS、ADVANTEC製)を介して濾過した後、ろ液を上記AIST−OAA1スピンカラム3本(それぞれをAIST−OAAスピンカラム1〜3と称する)、および抗CD9抗体固定スピンカラム2本(それぞれを抗CD9抗体固定スピンカラム1,2と称する)にそれぞれ600μlずつアプライし、1500gにて30秒間遠心分離を行った。上記アプライおよび遠心分離は10回繰り返した。次に、上記各カラムにPBSをそれぞれ200μl添加し、1500gにて30秒間遠心分離して洗浄を行う工程を3回繰り返した。
【0178】
その後、AIST−OAAスピンカラム1および抗CD9抗体固定スピンカラム1のそれぞれに、SDS−PAGE試料用緩衝液(2%SDS、6% グリセロール、0.005%ブロモフェノールブルー、50mM Tris−HCl(pH6.8))100μlを添加し、AIST−OAAスピンカラム2および抗CD9抗体固定スピンカラム2のそれぞれに、定量PCR用緩衝液(QIAzol lysis buffer, Qiagen製)100μlを添加し、AIST−OAAスピンカラム3に、上記SDS−PAGE試料用緩衝液100μlを添加した。各カラムは30分間静置した。その後、400g、30秒間の条件下にてスピンダウンし、溶出液を得た。なお、実験を3回繰り返すため、AIST−OAAスピンカラム1〜3および抗CD9抗体固定スピンカラム1、2は、それぞれ3セット用意した。
【0179】
ここで、AIST−OAA1スピンカラム1〜3から得られた溶出液を、それぞれ溶出液2a〜2c、抗CD9抗体固定スピンカラム1、2から得られた溶出液を、それぞれ溶出液3a、3bと称する。
【0180】
また、上記ろ液の6mlについて、限外ろ過膜(10K、PLGCO4310、Amicon製)を用いて限外濾過を行った。得られた限外ろ過画分60μlを、60μlの上記PSアフィニティビーズ懸濁液に添加して、室温に3時間静置後、マニュアル(Exosome Isolation Kit PS)に従って洗浄操作の工程を3回繰り返した。洗浄した上記PSアフィニティビーズに、Exosome Elution Buffer(キレート剤含有、コスモバイオ製)を50μl添加し、マニュアルに従って溶出する工程を2回繰り返し、溶出液4を得た。
【0181】
<2.SDS−PAGE>
上記超遠心画分1、溶出液2a、3a、4を、SDS−PAGEに供した。SDS−PAGEは、低分子量タンパク質測定用に改善されたSchaggerとJagowの方法(1987)に順じ、トリス-トリシン系緩衝液(3.0M Tris−HCl、0.3%SDS、pH8.45)中で、12%アクリルアミドゲルを用いて行った。下部電極液に陽極緩衝液(0.2M Tris−HCl、pH8.9)、上部電極液に陰極緩衝液(0.1M Tris−HCl、0.1Mトリシン, 0.1%SDS、 pH8.25)を使用した。試料にSDS−PAGE試料用緩衝液を添加後、100℃で5分間加熱処理して、泳動用試料とした。電気泳動装置(AE−6530、ATTO)にゲルをセットして、定電圧(CV)100V、90分間通電した。泳動後のゲルをクマシーブリリアントブルーを用いてタンパク質染色した。上記超遠心画分1、溶出液2a、3a、4の添加量は、培養液の遠心上清1mlに相当する量とした。
【0182】
図4は、SDS−PAGEの結果を示す図である。図中、レーン1〜4はそれぞれ、上記超遠心画分1、溶出液2a、3a、4を供した結果を示している。
【0183】
図4より、AIST−OAA1スピンカラムから得られた溶出液2aには、多くのタンパク質成分が含まれていることが分かる。一方、抗CD9抗体固定スピンカラムから得られた溶出液3a、および、PSアフィニティビーズから得られた溶出液4に含まれるタンパク質の種類および量はともに少なかった。
【0184】
<3.一次抗体として抗CD9抗体を用いたウエスタンブロット>
次に、上記超遠心画分1、溶出液2a、3a、4を、一次抗体として、5000倍希釈したマウス抗CD9抗体(BD Pharmagen製)を用い、二次抗体として、10000倍希釈したHRP(horseradish peroxidase)標識ヤギ抗マウスIgG抗体(Santa Cruz Biotechnology製)を用いたウエスタンブロットに供した。超遠心画分1、溶出液2a、3a、4の添加量は、培養液の遠心上清1mlに相当する量とした。
【0185】
ウエット式転写装置Mini Trans0BrotR Cell Module(Bio-Rad)を使用して、泳動したSDSポリアクリルアミドゲルをPVDF膜(タカラバイオ)に転写した。転写後のPVDF膜に5%ブロッキング緩衝液(5%スキムミルク, TBS−T(20mM Tris−HCl(pH 8.0), 0.15 M NaCl, 0.05% Tween 20))を添加後、室温で1時間静置した。ブロッキング終了後、PVDF膜を、2.5%ブロッキング緩衝液で希釈した一次抗体と、4℃の条件下で16時間反応させた。
【0186】
次に、PVDF膜をTBS−Tで5回洗浄後、2.5%ブロッキング緩衝液で希釈した二次抗体を添加し、インキュベート(室温、 90分)した。このPVDF膜をTBS−Tで5回洗浄後、ECL(Bio Rad社製)に浸して5分間反応させた。化学発光の検出にはLas−3000(Fuji Film社製)を使用した。
【0187】
図5は、ウエスタンブロットの結果を示す図である。図中、1〜4は、それぞれ上記超遠心画分1、溶出液2a、3a、4を供した結果を示している。図5の(a)は免疫染色の結果を示し、図5の(b)は、免疫染色において染色陽性であった成分(すなわちCD9)の定量結果を示しており、縦軸は免疫染色後のCD9の発光量(化学発光剤添加後の輝度)の相対比を表す。
【0188】
なお、上記定量結果は、画像処理ソフトImageJを用い、当該ソフトのマニュアルに従って測定したものである。
【0189】
図5の(a)中、24kDa付近のバンドが、CD9の検出結果を示している。超遠心画分1には、少量のCD9が検出された。一方、抗CD9抗体固定スピンカラムからの溶出液3と比較して、AIST−OAA1スピンカラムの溶出液2aには、多量のCD9が検出された。なお、溶出液3aには165kDa付近に高分子量のバンドが検出されているが、該バンドは抗CD9抗体固定スピンカラムに含まれる抗CD9抗体(マウスIgG)に由来するものである。なお、抗CD9抗体は、エクソソームに共通する抗原CD9に対する抗体である。
【0190】
CD9の捕捉量は、溶出液4が最も高かったが、図4および5に示す結果から、AIST−OAA1スピンカラムは、抗CD9抗体固定スピンカラムよりも多くのCD9を捕捉できており、抗CD9抗体固定スピンカラムよりも多くのエクソソームを捕捉できること;AIST−OAA1スピンカラムは、超遠心による調製に比べて処理時間が極めて短いにも関わらず、より多量のエクソソームを捕捉できることが明らかとなった。この結果は、OAAが、癌細胞由来のエクソソームを効率よく捕捉できることを示している。
【0191】
なお、PSアフィニティビーズ(ホスファチジルセリン結合性Tim4が被覆されている)は、細胞外小胞(エクソソーム、マイクロパーティクル)の膜成分であるホスファチジルセリンに結合性を持つため、広く細胞外小胞を捕捉すると考えられる。一方、AIST−OAA1スピンカラムは、膜上に高マンノース型糖鎖をもつ細胞外小胞のみを捕捉するため、特定のエクソソームに対する選択的捕捉が可能であると予測される。それゆえ、AIST−OAA1スピンカラムを用いた場合、PSアフィニティビーズを用いた場合よりもCD9の検出量が少ないが、AIST−OAA1スピンカラムの方が、PSアフィニティビーズよりもエクソソームの捕捉に好適であると考えられる。
【0192】
<4.抗CD63抗体を用いたウエスタンブロット>
上記超遠心画分1、溶出液2a、3a、4を、一次抗体としてマウス抗CD63抗体(Santa Cruz Biotechnology製)を用い、二次抗体としてHRP標識ヤギ抗マウスIgG抗体(Santa Cruz Biotechnology製)を用いたウエスタンブロットに供した。超遠心画分1、溶出液2a、3a、4の添加量は、培養液の遠心上清1mlに相当する量とした。抗CD63抗体とは、抗CD9抗体同様、エクソソームに共通する抗原CD63に対する抗体である。CD63は、34〜55kDaの分子量を有している。
【0193】
図6は、ウエスタンブロットの結果を示す図である。図中、1〜4は、それぞれ上記超遠心画分1、溶出液2a、3a、4を供した結果を示している。図6の(a)は免疫染色の結果を示し、図6の(b)は、免疫染色において染色陽性であった成分(すなわちCD63)の定量結果を示しており、縦軸は免疫染色後のCD63の発光量(化学発光剤添加後の輝度)の相対比を表す。
【0194】
なお、上記定量結果は、画像処理ソフトImageJを用い、当該ソフトのマニュアルに従って測定したものである。
【0195】
図6の(a)に示されているように、抗CD9抗体固定スピンカラムからの溶出液3aにはほとんどCD63は検出されていないが、AIST−OAA1スピンカラムの溶出液2aには、多量のCD63が検出された。
【0196】
CD63の捕捉量は、溶出液4が最も高かったが、図4および6に示す結果から、AIST−OAA1スピンカラムは、抗CD9抗体固定スピンカラムよりも多くのCD63を捕捉できており、抗CD9抗体固定スピンカラムよりも多くのエクソソームを捕捉できること;AIST−OAA1スピンカラムは、超遠心による調製に比べて処理時間が極めて短いにも関わらず、より多量のエクソソームを捕捉できることが明らかとなった。この結果は、OAAが、癌細胞由来のエクソソームを効率よく捕捉できることを示している。
【0197】
なお、PSアフィニティビーズは、細胞外小胞(エクソソーム、マイクロパーティクル)の膜成分であるホスファチジルセリンに結合性を持つため、広く細胞外小胞を捕捉すると考えられる。一方、AIST−OAA1スピンカラムは、膜上に高マンノース型糖鎖をもつ細胞外小胞のみを捕捉するため、特定のエクソソームに対する選択的捕捉が可能であると予測される。それゆえ、AIST−OAA1スピンカラムを用いた場合、PSアフィニティビーズを用いた場合よりもCD63の検出量が少ないが、AIST−OAA1スピンカラムの方が、PSアフィニティビーズよりもエクソソームの捕捉に好適であると考えられる。
【0198】
〔実施例2:ヒトメラノーマ細胞由来のエクソソームに内包されるマイクロRNAの定量〕
実施例1において得られたエクソソームに内包されるマイクロRNAを、RT−PCR法により定量した。エクソソームからのマイクロRNAの抽出は、RNA結合スピンカラム(Qiagen製、miRNeasy Serum/Plasma Kit)を用いて、当該カラムに捕捉されたマイクロRNAをRNase free waterで溶出させることによって行った。また、RT−PCRは、high-capacity逆転写酵素で反応を行った後に、real time PCRにてマイクロRNAのレベルを検出し、定量することによって行った。
【0199】
図7は、エクソソーム回収画分中のマイクロRNAの含有量を比較した結果を示す図であり、(a)〜(c)はそれぞれ、miR-1300、miR-125、miR-28の有量を比較した結果を示す。図中、1〜4はそれぞれ、上述した超遠心画分1、溶出液2b、3b、4を表す。また、縦軸はマイクロRNA量の相対比(すなわち、マイクロRNAの発現の相対比)を示している。
【0200】
miR-1300、miR-125、miR-28は、いずれも、広範な癌細胞に発現するが、miR-1300は大腸癌細胞に、miR-125は乳癌細胞に、miR-28は腎細胞癌細胞に比較的多く発現するマイクロRNAである。
【0201】
図7に示されるように、miR-1300、miR-125、miR-28のいずれについても、AIST−OAA1スピンカラムから得られた溶出液2bにおける含有量が顕著に高いことが見いだされた。
【0202】
CD9およびCD63の検出量は、図5,6に示すように、PSアフィニティビーズを用いた溶出液4が最も高かったが、溶出液4におけるmiR-1300、miR-125、miR-28の含有量は、いずれも溶出液2bにおける含有量よりも少なかった。上述したように、AIST−OAA1スピンカラムは、特定のエクソソームに対する選択的捕捉が可能であると予測される。それゆえ、図7に示される結果は、AIST−OAA1スピンカラムによって、エクソソームの選択的捕捉が行われたことに基づくと推測される。
【0203】
実施例1および2の結果から、AIST−OAA1スピンカラムを用いたエクソソームの精製法は、既存の抗CD9抗体固定スピンカラム、および超遠心による精製法よりも、エクソソームを効率的に精製することができること;溶出液中に回収されたエクソソームのマイクロRNAのプロファイルは、用いた精製法によって異なり、AIST−OAA1スピンカラムは癌細胞由来のエクソソームを特異的に捕捉することができること;が分かる。
【0204】
また、実施例1および2の結果から、OAAだけではなく、数種の高マンノース型糖鎖特異的レクチン(分岐糖鎖の認識部位が互いに異なるもの)を固定化したカラムを用いて精製したエクソソームのマイクロRNAのプロファイルは互いに異なると予想される。つまり、該カラムを用いることによって、エクソソームを表面糖鎖構造の違いに基づいて分別することが可能である。
【0205】
〔実施例3:AIST−OAA1スピンカラムによるエクソソームの精製〕
実施例1において得られた溶出液2cに、10倍容の10%TCA/アセトン溶液を添加し、−20℃で1時間静置後、遠心分離(4℃、15,000×g、10分)した。上清を除去後、沈殿に1mlの氷冷アセトンを加え、−20℃で10分間静置後、遠心分離し、上清を除去した。この洗浄操作をさらに9回繰り返した後、沈殿を風乾して得た乾固試料を、−20℃で保存した。
【0206】
上記乾固試料に、100μg/100μlとなるように50mM 重炭酸アンモニウム(pH8.0)を加え、タンパク質溶液を調製した。このタンパク質溶液(100μl)に、4.2μlの500mMジチオスレイトールを添加し、60℃で1時間加温した。次に、これを室温で5分間静置後、9μlの500mM ヨードアセトアミドを添加し、暗所中、室温で30分間放置した。続いて、2.3μlの50mM 重炭酸アンモニウム(pH8.0)を加えてアルキル化反応を停止させた後、10倍容の10%TCA/アセトンを加えた。生じた沈殿をアセトンで洗浄後、風乾した。以上のようにして、上記乾固試料を還元し、アルキル化して、アルキル化物を得た。
【0207】
次に、トリプシン処理を行った。すなわち、上記アルキル化物を50mM 重炭酸アンモニウム(pH8.0)に溶解後、トリプシン溶液(500ng/μl 、Sigma)を0.5μl添加し、インキュベート(37℃、 一晩)した。これを−20℃で静置して反応を停止させた。
【0208】
続いて、Zip Tip C18(Millipore)を用いて脱塩処理を行った。まず、C18担体の活性化(100% アセトニトリル 10μl×3回)および平衡化(0.1% ギ酸10μl×3回)を行い、上記トリプシン処理を行った後の試料にギ酸10μlを添加し、試料ペプチドをZip Tip C18に吸着させた。次に、Zip Tip C18に吸着している試料ペプチドを、0.1%ギ酸、50%アセトニトリル10μlで溶出させた。溶出液を風乾させた後、風乾物を0.1%ギ酸に再溶解させ、Nano LC-MS/MS解析に供する試料とした。調製した試料は、測定するまで4℃下で保存した。
【0209】
上記試料を、Ultimate 3000RSLCnano(Thermo fisher Scientific)およびLTQ Orbitrap XL(Thermo Fisher Scientific)を用いたNano LC-MS/MS解析に供した。Nano LC-MS/MS解析は、広島大学自然科学研究支援開発センター低温・機器分析部門物質科学機器分析部に依頼した。
【0210】
Nano LC-MS/MS解析からMascot searchでサーチされたタンパク質(114種類)について、さらに、Exocarta:Home-Exosome database(http://exocarta.org/)、Vesiclepedia: Home-Extracellular vesicles database(http://www.microvesicles.org/)などのデータベースを用いて、エクソソーム由来のタンパク質であるかどうかを確認した。その結果、検出された114種類のタンパク質中、110種類が、エクソソームに含有されることが知られているタンパク質であることが分かった。
【0211】
以上の結果から、AIST−OAA1スピンカラムを用いることによって、高マンノース型糖鎖特異的に、ヒトメラノーマ細胞由来のエクソソームをごく短時間で容易に精製することができると考えられる。
【0212】
〔実施例4:各種のヒト癌細胞の培養上清からのエクソソームの捕捉〕
実施例1で用いたAIST−OAA1固定スピンカラムを用いて、メラノーマ細胞、大腸癌細胞、肝癌細胞、膵臓癌細胞、乳癌細胞および前立腺癌細胞の培養上清から、エクソソーム(およびエクソソームに発現したタンパク質)の捕捉を行った。実験は3回繰り返し、結果をその平均として示した。AIST−OAA1固定スピンカラムのブランクカラムとしては、AIST−OAA1を固定していないこと以外はAIST−OAA1固定スピンカラムと同じであるポリリジンコーティングカラム(京都モノテック製)を、実施例1に記載した平衡化を行った後に用いた。
【0213】
<1.サンプルの調製方法>
(1)ヒト癌由来細胞株
メラノーマ細胞としては実施例1で用いたA375を用いた。大腸癌細胞としてはATCCから購入したHT−29(ATCC(登録商標) HTB−38)を用いた。肝癌細胞(HepG2:JCRB1054)、脾臓癌細胞(MIAPaCa−2:JCRB0070)、乳癌細胞(MCF−7:JCRB0134)および前立腺癌細胞(PC−3:JCRB9110)は、JCRB細胞バンクから購入した。
【0214】
(2)培地
A375、HT−29およびHepG2細胞は、 10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS, Biowest)および 1%(v/v)ペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco)を含有するDMEM培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium(Sigma)を用いて培養した。
【0215】
MIA PaCa−2細胞は、10%(v/v) FBS、1%(v/v)ペニシリン−ストレプトマイシンおよび2mM L−グルタミン(Wako)を含有するMEM培地(Minimum Essential Medium(Sigma))を用いて培養した。
【0216】
MCF−7細胞は、10%(v/v) FBS、 1%(v/v)ペニシリン−ストレプトマイシン、 2mM L−グルタミンおよび 1%(v/v)MEM用非必須アミノ酸(Wako)を含有するMEM−NEAA培地(Minimum Essential Medium)を用いて培養した。
【0217】
PC−3細胞は、7%(v/v)FBSおよび 1%(v/v)ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するHam’sF12培地(Ham’sF12 Medium(Gibco))を用いて培養した。
【0218】
なお、細胞外小胞(Extracellular vesicles : EVs)の回収に用いた最終継代培養液においては、FBSの代わりに、EXO-FBS Exosome-depleted FBS(SBI)を用いた。
【0219】
(3)ヒト癌由来細胞株の培養
15ml容ファルコンチューブに、37℃のウォーターバスで温めたFBS添加培地(上記(2)で述べた各培地)10mlを加えた。並行して、上記(1)に記載したヒト癌由来細胞株の凍結標品が入った保存チューブを37℃のウォーターバスに浸した。凍結細胞が半解凍したところで、それぞれの細胞を、先に用意したFBS添加培地10mlに添加した。
【0220】
細胞を加えた上記ファルコンチューブを、遠心(200×g , 4℃, 5分)後、アスピレーターで上清を取り除いた。さらに、ペレット(細胞)に、上記FBS添加培地を1ml加えて懸濁し、細胞懸濁液を調製した。この細胞懸濁液を直径60mmのシャーレ(IWAKI)に播種した。
【0221】
上記各シャーレに、上記FBS添加培地を5ml加え、シャーレをゆっくりと振盪し、シャーレ内の培養細胞を均等に分散させた。次に、上記各シャーレを37℃インキュベーター(5% CO, HERAcell)に静置し、コンフルエント状態(80〜90 %)に達するまで約3日〜4日培養した。この間、2日に1回、培地を交換し、新しい上記FBS添加培地を6ml加えた。
【0222】
細胞がコンフルエント状態に達したことを確認し、上記各シャーレ内の古い培養液をアスピレーターで吸引・除去後、10mlのリン酸塩緩衝液(pH7.4)で細胞を洗浄した。洗浄液をアスピレーターで吸引・除去後、0.5%トリプシン・EDTA(5.0 g/L トリプシン, 2.0 g/L EDTA・4Na, 8.5 g/L NaCl; Gibco)の1/10希釈液1mlを添加し、細胞全体に行き渡らせた後、直ちに上記各シャーレ内の上記希釈液を吸引・除去した(トリプシン処理)。
【0223】
上記各シャーレを37℃インキュベーター内に戻して5分間静置し、細胞が剥がれ始めたのを確認後、フラスコの側面を軽く叩いて、残っている細胞も完全に剥離させた。次に、トリプシン処理後の細胞を含有する上記各シャーレに上記FBS添加培地を1mlずつ加え、細胞を穏やかに懸濁させた後、それぞれの細胞を、上記FBS添加培地を9ml含む直径100mmのシャーレ(IWAKI)に播種した。
【0224】
上記各シャーレを37℃のインキュベーター中、約3日〜4日で細胞がコンフルエント状態に達するまで静置し、この間、2日に1回、10mlの上記FBS添加培地の交換を行った。この方法でコンフルエント状態の培養細胞を継代していき、各細胞種につき、継代毎に直径100 mmのシャーレの枚数を倍ずつ増やしていった。この継代培養を継続し、約12日〜16日で培養シャーレの枚数が、各細胞種について16枚目に達した段階で、次の最終継代培養に移行した。なお継代培養の際には、使用するリン酸塩緩衝液(WAKO)およびFBS添加培地は予め37℃で30分間、ウォーターバスで保温した。
【0225】
最終継代培養に先立ち、使用するリン酸塩緩衝液およびEXO-FBS Exosome-depleted FBS培地を37℃で30分間、ウォーターバスで保温した。EXO-FBS Exosome-depleted FBS培地は、上記(2)で述べた各培地において、FBSの代わりに、エクソソームを除去したFBSであるEXO-FBS Exosome-depleted FBSを含有させた培地である。各培地におけるEXO-FBS Exosome-depleted FBSの含有量は、上記(2)で述べた含有量と同じである。例えば、A375の培地として用いる上記(2)のDMEM培地では、10%(v/v)のFBSの代わりに、10%(v/v)のEXO-FBS Exosome-depleted FBSを用いる。
【0226】
細胞がコンフルエント状態に達したのを確認し、継代培養の方法に準じて、上記0.5%トリプシン・EDTAによりシャーレ内の細胞を剥がした。トリプシン処理した培養細胞にリン酸塩緩衝液10mlを添加し、穏やかに懸濁させた後、50ml容のファルコンチューブに細胞懸濁液を回収し、この細胞懸濁液にリン酸塩緩衝液40mlを加えて遠心後、アスピレーターで上清を吸引・除去した。この洗浄操作を計3回繰り返し、トリプシンおよびFBSを除去した。
【0227】
洗浄後のペレット(細胞)にリン酸塩緩衝液25mlを加え、穏やかに懸濁させた後、細胞計測器により細胞数をカウントし、細胞懸濁液中の総細胞数が2.5×10個となるように調整した。細胞数を調整した細胞懸濁液を遠心後、アスピレーターで上清を吸引・除去し、除去後のペレットに25mlのEXO-FBS Exosome-depleted FBS培地を加え、懸濁させた(2.5×10細胞/25ml)。
【0228】
次に、9mlの上記培地を含む直径100mmのシャーレを用意し、それぞれのシャーレに、先の細胞懸濁液を、1枚当たりの細胞数が1.0×10細胞となるように播種し、37℃のインキュベーター内で48時間静置した。この培養液の上清を電動ピペッターで50ml容ファルコンチューブに回収し、4℃下で保存した。続いて、EXO-FBS Exosome-depleted FBS培地を1つの培養シャーレあたり10ml添加し、37℃のインキュベーター内で48時間培養し、この培養液の上清を電動ピペッターで回収し、先の培養上清と合一した。
【0229】
得られた培養上清を、段階的に遠心(300×g, 10分、2000×g, 20分および10000×g, 30分)して回収した上清を0.20μmフィルター(Advantec製)により濾過し、培養上清として−80℃で保存した。このようにして得た培養上清を清澄化癌細胞培養上清とした。
【0230】
清澄化癌細胞培養上清として、A375は750ml、MCF−7は360 ml、HT−29は330ml、PC−3は330ml、HepG2は420ml、MIA−PaCa2は330ml、それぞれ回収した(表1)。
【0231】
【表1】
【0232】
(4)清澄化癌細胞培養上清からの超遠心画分(細胞外小胞画分)の調製
清澄化癌細胞培養上清を、表1の「供試量(ml)」に示した量、超遠心分離機(Himac)に供して、超遠心(4℃, 100,000×g, 70分)を行い、上清を廃棄した。細胞外小胞を含む残渣にリン酸緩衝液10mlを加えてピペッティング後、更に同様の超遠心処理に付し、洗浄した。上清を除去後、残渣をリン酸緩衝液中に懸濁させ、回収した。この懸濁液を超遠心画分とした。以下、超遠心画分を「細胞外小胞画分」または「EVs画分」と記載する場合がある。
【0233】
<2.超遠心画分中のタンパク質の定量>
上記1.(4)で得られた6種の癌細胞由来の超遠心画分に含まれるタンパク質の量は、Micro BCA protein assay kit(Thermo Fischer Scientific)を用いて測定した。上記1.(3)にて回収した清澄化癌細胞培養上清について、表1に示した「供試量(ml)」から得られた超遠心画分に含まれるタンパク質の量は、A375が82.5μg、MCF−7が59.4μg、HT−29が32.5μg、PC−3が25.0μg、HepG2が10.0μg、MIA−PaCa2が42.0μgであった。
【0234】
<3.AIST−OAA1カラムを用いた細胞外小胞(EVs)の捕捉>
まず、HT−29およびMIA−PaCa2について、清澄化癌細胞培養上清(上記1.(3))と、当該清澄化癌細胞培養上清から調製した超遠心画分(上記1.(4))とをそれぞれ用意し、AIST−OAA1カラムに添加し、細胞外小胞の捕捉を行った。手順を図9に示す。
【0235】
表1に記載した超遠心画分のタンパク質量を参考とし、超遠心画分についてはタンパク質4μg量を含有する超遠心画分を、清澄化癌細胞培養上清については超遠心画分のタンパク質4μgに相当する液量(HT−29の場合8.6ml、MIA−PaCa2の場合9.56 ml)を、それぞれ、AIST−OAA1カラム2本およびブランクカラム2本に添加した。
【0236】
清澄化癌細胞培養上清の場合は、上記液量を600μlずつに小分けしてカラムに通液させることによって添加(4℃、1500×g、30秒)した。試料添加後、200μlの平衡化緩衝液で3回洗浄操作(4℃、1500×g、30秒)を行い、吸着した細胞外小胞を以下の溶剤100μlを用いて可溶化させ、溶出させた。
【0237】
すなわち、ウエスタンブロッティング用として、AIST−OAA1カラム1本およびブランクカラム1本にSDS泳動用緩衝液(4% SDS、12%グリセロール(w/v)、0.01%ブロモフェノールブルー、50mM Tris−HCl(pH 6.8))を可溶化剤として添加した。また、miRNA解析用として、AIST−OAA1カラム1本およびブランクカラム1本にQIAsol lysis buffer (Qiagen)を可溶化剤として添加した。各カラムは、室温で30分間インキュベート後、遠心(4℃、400×g、30秒)し、可溶化液を回収した。
【0238】
次に、A375、MCF−7およびPC−3由来の清澄化癌細胞培養上清(上記1.(3))については、表1に記載した超遠心画分のタンパク質量を参考とし、超遠心画分のタンパク質4μgに相当する液量(A375の場合9.68ml、MCF−7の場合6.72ml、PC−3の場合16ml)を、それぞれ、AIST−OAA1カラム2本およびブランクカラム2本に添加し、HT−29およびMIA−PaCa2の場合と同様の方法で吸着した細胞外小胞を可溶化させ、溶出させた。
【0239】
<4.SDS−PAGEおよびウエスタンブロッティング>
SDS−PAGEは、実施例1と同じ条件で行った。ウエスタンブロッティングは、一次抗体として、5000倍希釈したマウス抗CD9抗体(BD Pharmagen製)の他に、5000倍希釈したマウス抗CD81抗体(Thermo Fisher Scientific製)をも用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で行った。抗CD9抗体および抗CD81抗体は、それぞれ、エクソソームに共通する抗原であるCD9およびCD81に対する抗体である。
【0240】
上記1.(4)で得られた6種の癌細胞由来の超遠心画分について、抗CD9抗体および抗CD81抗体を使用したウエスタンブロットを行った。図10はウエスタンブロットの結果を示す図である。図10に示すように、HepG2由来の超遠心画分を除き、CD9およびCD81に陽性のバンド成分(分子量24kDa付近)が検出された。よって、HepG2由来の超遠心画分を除く5種類の超遠心画分に細胞外小胞(エクソソーム)が存在することが明らかとなった。
【0241】
上記3.で得られたAIST−OAA1カラムの溶出液を、抗CD9抗体を用いたウエスタンブロットに供し、免疫染色を行った結果を図11に示す。Mはマーカーであり、丸囲みした数字はレーン番号である。当該レーン番号は、図9中の丸囲みした数字と対応している。
【0242】
図11に示すように、HT−29およびMIA−PaCa2細胞の超遠心画分(レーン1、図9のEVs画分−1)、超遠心画分をAIST−OAA1カラムに添加した後に得られたAIST−OAA1カラム溶出画分(レーン3、図9のEVs画分−2)、および、清澄化癌細胞培養上清をAIST−OAA1カラムに添加した後に得られたAIST−OAA1カラム溶出画分(レーン5、図9のEVs画分−3)に、陽性バンド(約24kDa)を確認することができた。陽性バンドは、図11において「CD9」と示したバンドである。
【0243】
また、図11に示すように、A375、MCF−7およびPC−3についても、超遠心画分(レーン1、図9のEVs画分−1)、および、清澄化癌細胞培養上清をAIST−OAA1カラムに添加した後に得られたAIST−OAA1カラム溶出画分(レーン5、図9のEVs画分−3)に、陽性バンド(約24kDa)を確認することができた。
【0244】
<5.エクソソームの相対的定量解析>
図11に示された抗CD9抗体陽性バンドの染色強度に基づいて、捕捉回収されたEVsの相対的定量解析を行った。上記バンドは、エクソソームに共通する抗原であるCD9の存在を示すため、エクソソームの存在を示すと考えられる。
【0245】
結果を図12に示す。解析は、画像処理ソフトImageJを用い、当該ソフトのマニュアルに従って行った。図12は、図11に示す免疫染色において染色陽性であった成分(すなわちCD9)の定量結果を示す図である。縦軸は、免疫染色後のCD9の発光量(化学発光剤添加後の輝度)の相対比を示す。当該相対比は、超遠心法で得られた癌細胞由来の超遠心画分中のCD9の発光量(図11のレーン1に対応)を1としたときの、AIST−OAA1カラムを用いる方法で得られた溶出液中のCD9の発光量(図11のレーン5に対応)である。図中、「レクチンカラムによる精製」とは、AIST−OAA1カラムを用いた精製を行ったことを示す。
【0246】
図12に示すように、AIST−OAA1カラムを用いる方法は、従来の標準法である超遠心法よりも、1.1倍〜5.0倍の高収量でエクソソームを回収できることが明らかとなった。また、AIST−OAA1カラムを用いた方法では、超遠心法を用いた場合の4時間に対し、わずか30分という、極めて短時間でエクソソームを調製することが可能であることも確認された。
【0247】
<6.細胞外小胞中のmiRNAアレイ解析>
A375につき、超遠心法で得られた超遠心画分(図11のレーン1)、および、清澄化癌細胞培養上清をAIST−OAA1カラムに添加した後に得られたAIST−OAA1カラム溶出画分(図11のレーン5)に含まれるmiRNAのプロファイル解析を行った。使用機器は、AgilentのSurePrint G3 Human miRNA Microarrayである。このアレイ解析は、2588種のmiRNAの検出に対応しており、サンプルに含まれるmiRNAを半網羅的に検出し、定量することができる。
【0248】
表2に、上記超遠心画分におけるmiRNAの発現量を1としたときの、AIST−OAA1カラム溶出画分におけるmiRNAの発現量を対比した結果を示す。
【0249】
【表2】
【0250】
表2には、超遠心画分における発現量に対するAIST−OAA1カラム溶出画分における発現量が2倍以上であったmiRNAが23配列あったことを示しているが、上記発現量が1倍以上であったmiRNAは20配列検出された。上記発現量が2倍以上であったmiRNAおよび上記発現量が1倍以上であったmiRNAを、表3に示す。
【0251】
【表3】
【0252】
表2に示すように、AIST−OAA1カラム溶出画分では、上記超遠心画分よりも2倍以上発現しているmiRNAの配列が23検出され、上記超遠心画分よりも10倍以上発現しているmiRNAの配列が8検出された。また、表3に示すように、AIST−OAA1カラム溶出画分では、上記超遠心画分よりも1倍以上発現しているmiRNAの配列が20検出された。中でもhsa−miR−133bは、上記超遠心画分よりも42倍高発現しており、その他にも表2に示す高い相対発現量を示すmiRNAが検出された。この結果から、AIST−OAAカラムを用いることによって、メラノーマに密接に関連するmiRNAを選択的に捕捉することができる可能性が示唆される。
【0253】
〔実施例5:OAAを磁性ビーズ上に固定化したカラムにより捕捉した細胞外小胞が有する表面糖鎖の解析〕
(1)A375からの細胞外小胞の調製
メラノーマ由来の細胞外小胞の表面糖鎖の解析を行うために、まず、A375から超遠心画分を調製した。図13は、A375の細胞外小胞の特性を示す図であり、図13の(a)は超遠心画分の調製の手順を示す図である。
【0254】
実施例4の1.(3)と同様にA375を培養し、最終継代培養を行った培養液(図中のcell culture medium)を、遠心(500×g、10分)し、得られた上清を遠心(20000×g、20分)して上清(図中のS20k)を回収した。この上清を超遠心分離機(Himac)に供して、超遠心(4℃, 100,000×g, 70分)を行い、上清を廃棄した。細胞外小胞を含む残渣(図中のP100k)にリン酸緩衝液10mlを加えてピペッティング後、更に同様の超遠心処理に付し、洗浄した。上清を除去後、残渣をリン酸緩衝液中に懸濁させ、回収した。この懸濁液を超遠心画分とした(図中のExosomes (EVs))。
【0255】
(2)A375由来の細胞外小胞のウエスタンブロット
ウエスタンブロットは、一次抗体として、マウス抗Alix抗体(Santa Cruz Biotechnology製)、マウス抗Hsp70抗体(Santa Cruz Biotechnology製)、ラビット抗Flotillin-1抗体(Santa Cruz Biotechnology製)、マウス抗CD63抗体(Santa Cruz Biotechnology製)およびマウス抗CD81抗体(Santa Cruz Biotechnology製)を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で行った。Alix、Hsp70、Flotillin-1、CD63およびCD81は、エクソソームに共通する抗原である。
【0256】
図13の(b)に、ウエスタンブロットの結果を示す。図中、「WCL」は全細胞溶解液を指す。「EVs」は上記(1)で得られた超遠心画分を指し、「P20k」は、図13の(a)に記載したP20kに該当する。A375から得られた超遠心画分には、Alix、Hsp70、Flotillin-1、CD63およびCD81の全てについて、陽性のバンド成分が検出された。つまり、上記超遠心画分には細胞外小胞(エクソソーム)が存在することが分かった。
【0257】
(3)ナノ粒子トラッキング解析
上記(1)で得た超遠心画分(細胞外小胞画分)を、上記最終継代培養を行った培養液に含まれる細胞外小胞の濃度となるようにPBSで希釈した。
【0258】
希釈した超遠心画分は、ナノ粒子解析システムNano Sight(Malvern製)を用いたナノ粒子トラッキング解析に供し、A375由来の細胞外小胞の粒径分布を測定した。図13の(c)は、ナノ粒子トラッキング解析の結果を示す図である。図13の(c)に示す通り、上記細胞外小胞は、およそ140nmを中心とする粒径分布であった。
【0259】
(4)A375由来の細胞外小胞のTEMによる観察
上記(1)で得た超遠心画分を、ラベルせずにTEMを用いて観察した結果を図13の(d)の左図に示し、上記(1)で得た超遠心画分を免疫金標識し、TEMを用いて観察した結果を図13のd)の右図に示す。抗体としては抗マウスAlix抗体(Santa Cruz Biotechnology製)を用いた。図13のd)の右図に示すように、上記超遠心画分には、エクソソームが矢印で示す位置に存在することが明らかとなった。
【0260】
(5)A375由来の細胞外小胞が有する表面糖鎖のHPLC分析
上記(1)で得た超遠心画分中の細胞外小胞の表面に発現する高マンノース型N型糖鎖を、HPLCを用いて解析した。まず、上記(1)で得た超遠心画分100μgを、エンドグリコシダーゼH(Endo H、Roche製)3.8(v/v)%と37℃で反応させ、細胞外小胞から糖鎖を切断した。当該糖鎖画分をエタノール沈殿することによって回収し、凍結乾燥した。
【0261】
次に、Blot Glyco Kit(住友ベークライト製)を用いて、糖鎖画分を2−アミノピリジン(PA)でラベルし、ラベル化した糖鎖を逆相カラムおよび陰イオン交換カラムを用いた二次元マップ法によりHPLC解析を行った。
【0262】
図14の(a)は、PAでラベル化した糖鎖をHPLCにて分画した結果を示す図である。ピークを分画し、図14の(a)に示す糖鎖構造は、デュアルグラジエント逆相HPLC解析によって推定したものである。図中、「GU」はグルコース単位を示し、アスタリスクはラベル化に用いた試薬に由来するピークを示す。図中、8および9に対応するピークが高マンノース型糖鎖である。図14の(a)より、A375由来の細胞外小胞が有する表面糖鎖の主成分は高マンノース型糖鎖であることが確認された。
【0263】
図14の(b)は、PAでラベル化した糖鎖の量を、外部標準としてPAラベル化グルコースヘキサマーを用い、デュアルグラジエント逆相HPLCによって評価した結果を示す図である。図14の(b)の横軸は糖鎖構造を示し、縦軸は糖鎖の量を示す。図14の(b)より、上記(1)で得た超遠心画分中の細胞外小胞の表面には、図14の(a)に示す9に対応する高マンノース型糖鎖が最も多く発現しており、次いで図14の(a)に示す8に対応する高マンノース型糖鎖が多く発現していることが明らかとなった。
【0264】
(6)エンドグリコシダーゼHで処理した超遠心画分のウエスタンブロットによる分析
上記(5)にてエンドグリコシダーゼHで処理した超遠心画分、および、エンドグリコシダーゼHの代わりにPBSで処理した対照の超遠心画分を、SDS-PAGEに供した。電気泳動の条件は実施例1と同じである。泳動したSDSポリアクリルアミドゲルをニトロセルロース膜に転写し、ブロッキングした後、5μg/mlのOAA溶液(溶媒は1% BSA/リン酸緩衝液(pH7.4)、0.02%Tween20(以下「PBS−T」と称する))と室温で2時間反応させ、OAAを細胞外小胞の表面糖鎖と反応させた。
【0265】
次に、ニトロセルロース膜を、マウス抗6×His抗体(和光純薬製)と4℃にて16時間反応させた。反応終了後、上記ニトロセルロース膜をPBS−Tで3回洗浄し、HRP(ペルオキシダーゼ)標識ヒツジ抗マウス抗体(GE製)と反応(室温、1時間)させた。このニトロセルロース膜をPBS−Tで3回洗浄後、SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate(Thermo Fisher製)を用い、化学発光させた。検出はAmersham Hyperfilm(GE製)を用いた。また、上記(5)にてエンドグリコシダーゼHで処理した超遠心画分の代わりに、PNGaseFで処理した超遠心画分も用意した。すなわち、上記(1)で得た超遠心画分に、0.2Mの2−メルカプトエタノールを添加後、100℃で3分間加熱変性させた。冷却後、2.5(v/v)% PNGaseFを添加し、37℃で16時間反応を行うことによって、PNGaseFで処理した超遠心画分を調製した。
【0266】
図15の(a)は、高マンノース型N型糖鎖の構造を示す図であり、高マンノース型N型糖鎖は、図中のRecognizing structure of OAAと示した部分にてOAAと結合する。図15の(b)は、ウエスタンブロットの結果を示す図である。図15の(b)の左図は、PNGaseFで処理した細胞外小胞(図中の「+」)の結果およびPNGaseFで処理していない細胞外小胞(図中の「−」)の結果を示す。図15の(b)の右図は、Endo Hで処理した細胞外小胞(図中の「+」)の結果およびEndo Hで処理していない細胞外小胞(図中の「−」)の結果を示す。図中の「−」のレーンは酵素処理されていないため、高マンノース型糖鎖と結合したOAAが検出されているが、「+」のレーンは、酵素処理によって高マンノース型糖鎖が切断され、高マンノース型糖鎖がOAAと反応することができなかったため、バンドは検出されなかった。
【0267】
(7)OAAが高マンノース型N型糖鎖に依存してA375由来の細胞外小胞と結合することの確認
上記(5)にてエンドグリコシダーゼHで処理した超遠心画分30μgを、OAA1.2μgと共にインキュベート(室温、2時間)し、次いで超遠心(100,000g、70分、4℃)を行った。得られた沈殿および上清(Sup)を、マウス抗6xHis抗体(和光純薬製)、マウス抗Alix抗体(Santa Cruz Biotechnology製)、ラビット抗flotillin−1抗体(Santa Cruz Biotechnology製)、およびラビット抗CD9抗体(SBI製)を用いたウエスタンブロットに供した。ウエスタンブロットは、上記(2)と同様の手順で行った。
【0268】
図16の(a)はウエスタンブロットの結果を示す図である。図16の(a)の最も左側の列に示す結果はインプットを表しており、図中「EVs」と記載したレーンの結果と、「OAA」と記載したレーンは、各タンパク質のバンド位置を示している。
【0269】
図16の(a)の中央の列に示す結果は、上記「エンドグリコシダーゼHで処理した超遠心画分」の代わりに、エンドグリコシダーゼHで処理せずに得た超遠心画分を用いて得られた沈殿から調製した画分(図中の「EV」)と、Sup画分の結果を表している。図中「EV」と記載したレーンの結果と、「Sup」と記載したレーンの結果との対比により、EV画分にOAAが多く存在し、OAAが細胞外小胞と結合していることが分かる。
【0270】
図16の(a)の最も右側の列に示す結果は、上記「エンドグリコシダーゼHで処理した超遠心画分」を用いて得られた沈殿から調製した画分(図中の「EV」)と、Sup画分の結果を表している。図中「EV」と記載したレーンの結果と、「Sup」と記載したレーンの結果との対比により、エンドグリコシダーゼHで処理した細胞外小胞はOAAと結合しないことが分かる。
【0271】
図16の(b)は、図16の(a)に示す結果を定量化した結果を示す図である。図16の(b)に示す結果は、画像処理ソフトImageJを用い、当該ソフトのマニュアルに従って求めた。図中、「EV control」と記載したグラフは図16の(a)の中央の列の「OAA(6xHis)」に示す結果に対応し、「EV endoH」と記載したグラフは図16の(a)の最も右側の列の「OAA(6xHis)」に示す結果に対応する。また、図16の(b)の「Pellet」は図16の(a)の「EV」を示し、「Sup」は図16の(a)の「Sup」を示し、縦軸は各分画におけるOAAの回収率を表している。図16の(b)に示す結果から、OAAは細胞外小胞と結合することが分かる。
【0272】
(8)OAA固相化磁性ビーズを用いたA375由来細胞外小胞の精製
ここでは、実施例1等で用いたAIST−OAAスピンカラムの代わりに、OAAをプロテインG固相化磁性ビーズに固相化したOAA固相化磁性ビーズを用いて、A375由来細胞外小胞の精製を行った。
【0273】
図17の(a)の左側の図は、OAA固相化磁性ビーズの調製方法を示す模試図である。まず、OAAに6xヒスチジン(His)を結合させて得たHis−OAA(His-tag OAA)40μgと、抗6xHis抗体(和光純薬製)10μgとを、室温で2時間混合することによって抗体−OAA複合体(図中、His-OAAと記載)を調製した。
【0274】
次に、抗体−OAA複合体と、予めPBSで洗浄しておいたProtein G固相化磁性ビーズ(Thermo Fisher製、図中、「protein G beads」と記載)50μlとを混和し、室温で10分間反応させることによって、Protein G固相化磁性ビーズに上記複合体を固相化した。
【0275】
反応終了後、未反応物を除去する為、磁性ビーズをPBSによって3回洗浄し、OAA固相化磁性ビーズ(図中、「OAA beads」と記載)を得た。
【0276】
なお、対照として、OAAの代わりにGFPを用い、OAAを用いる場合と同様の方法によって、GFP固相化磁性ビーズ(図中「GFP beads」と記載)も調製した。
【0277】
図17の(a)の右側の図は、抗体−OAA複合体、および、抗体−GFP複合体をウエスタンブロットに供した結果を示す図である。ウエスタンブロットは、上記(2)と同様の手順で行った。抗体−OAA複合体を供した場合(図中「OAA beads」と記載)は、IgGの軽鎖(アスタリスクを付したバンド)、および、His-tag OAA(「OAA(His)」と記載したバンド)が検出された。抗体−GFP複合体を供した場合(図中「GFP beads」と記載)は、IgGの軽鎖(アスタリスクを付したバンド)およびGFPに6xヒスチジン(His)を結合させて得たHis-tag GFP(「GFP(His)」と記載したバンド)が検出された。
【0278】
図17の(b)は、OAA固相化磁性ビーズおよびGFP固相化磁性ビーズを用い、A375由来の細胞外小胞のプルダウンアッセイを行った結果を示す図である。図中、アスタリスクはIgGの軽鎖を示す。
【0279】
まず、OAA固相化磁性ビーズおよびGFP固相化磁性ビーズを、それぞれ、上記(1)で得た超遠心画分と混和し、4℃、16時間の条件下で反応させた。OAA固相化磁性ビーズおよびGFP固相化磁性ビーズの使用量は50μlであり、上記超遠心画分の使用量は30μgであった。
【0280】
反応終了後、OAA固相化磁性ビーズおよびGFP固相化磁性ビーズを回収し、PBSを用いて3回洗浄することによって、非特異的吸着物を除去した。次に、OAA固相化磁性ビーズおよびGFP固相化磁性ビーズを、それぞれ2×サンプルバッファー(125mM Tris−HClバッファー(pH6.8)、4%SDS、20%グリセリン、0.02%ブロモフェノールブルー)に溶解させ、100℃、5分間加熱還元後、OAA固相化磁性ビーズおよびGFP固相化磁性ビーズを回収した後の上澄みを、それぞれ、実施例1と同じ条件にて、SDS−PAGEにて電気泳動した。
【0281】
ウエスタンブロットは、一次抗体として、マウス抗Alix抗体(Santa Cruz Biotechnology製)、ラビット抗Flotillin-1抗体(Santa Cruz Biotechnology製)、およびマウス抗CD81抗体(Santa Cruz Biotechnology製)を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で行った。
【0282】
図17の(b)に示すように、OAA固相化磁性ビーズを用いた場合、Alix、Flotillin-1(図中、「Flot」と表示)、およびCD81についてバンドが鮮明に検出された。よって、OAA固相化磁性ビーズによって、上記超遠心画分中の細胞外小胞(エクソソーム)を捕捉することができたことが分かった。
【0283】
図17の(c)は、上記OAA固相化磁性ビーズおよびGFP固相化磁性ビーズに捕捉された成分を免疫沈降(図中、「IP」と記載)後、OAAにてブロットした結果を示す図である。図17の(c)の左側のレーンは、GFP固相化磁性ビーズに捕捉された成分を供した結果を示し、図17の(c)の右側のレーンは、OAA固相化磁性ビーズに捕捉された成分を供した結果を示し、左側のレーンは、GFP固相化磁性ビーズに捕捉された成分を供した結果を示す。図中のダブルアスタリスクは、右側のレーンがHis-tag OAAを示し、左側のレーンがHis-tag GFPを示す。
【0284】
図17の(c)より、OAA固相化磁性ビーズでOAAが認識する糖タンパク質が捕捉されていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0285】
本発明は、癌の診断に利用することができる。
【符号の説明】
【0286】
1 ・・・癌の診断デバイス
11・・・送液システム
12・・・プレート
13、15a〜15c、19a〜19c、21a〜21c・・・流路(第1〜第4の流路)
14・・・導入部
16〜18・・・細胞外小胞捕捉部
16’〜18’ ・・・細胞外小胞捕捉部の収容部
20a〜20c・・・排出部
22・・・マイクロRNA収容部
23・・・廃液収容部
24・・・マイクロパーティクルから抽出されたマイクロRNAの収容部
25・・・エクソソームから抽出されたマイクロRNAの収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17