【解決手段】 白色顔料を含む1本又は複数本のフィラメントを有し且つ所望の色彩に着色された第1の白色顔料含有糸5aがタフトされたパイル列G1と、前記第1の白色顔料含有糸に隣接した列であって、白色顔料を含む1本又は複数本のフィラメントを有し且つ所望の色彩に着色された第2の白色顔料含有糸5bがタフトされたパイル列G2と、を有し、隣接した第1の白色顔料含有糸5aと第2の白色顔料含有糸5bが、白色顔料の含有率が同じフィラメントを有しつつ互いに異なる糸である。
白色顔料を含む1本又は複数本のフィラメントを有し且つ所望の色彩に着色された第1の白色顔料含有糸がタフトされたパイル列と、前記第1の白色顔料含有糸に隣接した列であって、白色顔料を含む1本又は複数本のフィラメントを有し且つ所望の色彩に着色された第2の白色顔料含有糸がタフトされたパイル列と、を有し、
隣接した前記第1の白色顔料含有糸と第2の白色顔料含有糸が、白色顔料の含有率が同じフィラメントを有しつつ互いに異なる糸である、タイルカーペット。
【背景技術】
【0002】
従来から、オフィスビル、商業施設、マンションなどの床面に、タイルカーペットが敷設されている。タイルカーペットは、通常、平面視正方形状(例えば、500mm×500mmの正方形状など)に形成されている。
前記タイルカーペットは、隣接するタイルカーペットの端縁同士を突き合わせながら床面に敷設される。
このタイルカーペットの敷設方式としては、隣接するタイルカーペットの糸のタフト方向が直交するように複数枚のタイルカーペットを敷設していく方式、隣接するタイルカーペットの糸のタフト方向が平行となるように複数枚のタイルカーペットを敷設していく方式、などが知られている。以下、前者の敷設方式を「市松貼り方式」といい、後者の敷設方式を「流し貼り方式」という。
前記市松貼り方式は、床面全体を見る者に対して、市松模様の仕上がり外観を与えることができる。
前記流し貼り方式は、床面全体を見る者に対して、あたかも1枚のカーペットの如き仕上がり外観を与えることができる。
【0003】
しかしながら、前記流し貼り方式に従い、従来のタイルカーペットを床面に敷設すると、床面全体を見渡したときに、複数のうちの一部のタイルカーペットが目立ち易い、或いは、隣接するカーペットの目地(継ぎ目とも呼ばれる)が目立ち易いという問題点がある。
一部のタイルカーペットや目地が目立つと、見る者が、複数のタイルカーペットからなることを簡単に認識してしまう。このため、流し貼り方式の特徴である、1枚もののカーペットが敷設された如きの仕上がり外観を、見る者に対して与えることが難しい。
【0004】
この流し貼り方式の場合に一部のタイルカーペットや目地が目立つ理由として、次のような事項が考えられる。
具体的には、タイルカーペットは、通常、染色性の異なる複数種の後染め糸を引き揃えて複数のパイル糸を準備する準備工程と、前記複数種の後染め糸を含むパイル糸の複数本を基布にタフトするタフト工程と、その各パイル糸の各後染め糸を、染料にて染色する染色工程と、染色後の基布にPVCなどの樹脂による裏打加工を行うバッキング工程と、裏打加工が施された基布を所定形状に裁断し、タイルカーペットを得る裁断工程と、を経て製造される。以下、前記後染め糸を含むパイル糸を基布にタフトした構造体を、「パイル生機(きばた)」という場合がある。
【0005】
前記染色工程での染色法として、一般には、ウィンス染色法、或いは、連続染色法が用いられている。
ウィンス染色法は、バッチ式染色方法の代表的なものであり、所定幅の長尺状のパイル生機を、所定長さに裁断し、その所定長さのパイル生機を輪状にし、その輪状のパイル生機を染料が満たされた染槽に浸漬さて回転させながら、後染め糸を染色する方法である。なお、ウィンス染色法は、染槽内にパイル生機を浮遊させながら染色するものであるから、浴比の小さい染色には適さない。
【0006】
連続染色法は、所定幅の長尺状のパイル生機を、長手方向下流側に連続的に送りながら、パイル糸に染料を塗布し、その染料によって後染め糸を染色する方法である。連続染色法は、全ての染色工程を連続的に行えることから「連続染色」と呼ばれている。連続染色法を実施する設備は、一般的に、染料付与、蒸熱処理、水洗、薬液付与、乾燥などを独立して行う単位機械が一連に連結されており、この設備は、染色工程の最初から最後までを一貫して行うことができるので、大量のパイル生機を染色するのに適している。
【0007】
前記連続染色法は、パイル生機の後染め糸を連続的に染色できるので、短時間でタイルカーペットを製造できる。つまり、連続染色法は、生産性に優れている。
しかしながら、前記連続染色法は、パイル生機の幅方向における染料の濃度を均一に調整することが難しい。このため、染色後のパイル生機を裁断して複数枚のタイルカーペットを得たとき、パイル生機の幅方向において切り出された各タイルカーペットのパイル糸の色彩に差が生じ、いわゆる「染色斑」が生じ易い。
このように染色斑を生じたパイル生機から切り出された複数枚のタイルカーペットは、相互に染色度合いが微妙に違うので、これを流し貼り方式にて敷設した際には、一部のタイルカーペットが目立ち易かったり、敷設されて隣接するカーペットの目地が目立ち易い。
【0008】
特許文献1には、染色性が異なる複数種の捲縮糸を予め製造しておき、その中から任意の2種の捲縮糸を選択し、組み合わせて交絡処理または撚糸処理することにより得られた複数本の2杢糸の中から、任意の2本の2杢糸を選択し、これら2本の2杢糸を相互に隣り合うように基布にタフトし、次いで、染色処理することによって多杢調カーペットを製造することが開示されている。
かかる製法によれば、色調が複雑でコントラストがあり、高級感のある多杢調のカーペットが得られると、特許文献1には記載されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1には、複数枚のタイルカーペットを流し貼り方式で敷設した場合に、複数枚のタイルカーペットの全体を見渡したときに、一部のタイルカーペットや目地が目立つという問題点及びその解決手段について、一切開示又は示唆されていない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、「〜」で表される数値範囲は、「〜」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「〜」で結んだ範囲とすることができるものとする。「複数」は、2以上を意味する。
また、本明細書において、用語の頭に、「第1」、「第2」を付す場合があるが、この第1などは、用語を区別するためだけに付加されたものであり、その順序や優劣などの特別な意味を持たない。
各図に表された厚み及び長さなどの寸法は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0019】
[タイルカーペット]
図1乃至
図4において、本発明のタイルカーペット1は、パイル層2と、前記パイル層2の裏面側に設けられたバッキング層3と、を有する。前記パイル層2は、基布4と、基布4にタフトされた糸5と、を有する。
タイルカーペット1は、例えば、平面視略正方形状などの枚葉状に形成されている。もっとも、タイルカーペット1の平面視形状は、略正方形状に限定されず、例えば、略長方形状、略三角形状や略六角形状などの略多角形状、略円形状、略楕円形状などに形成されていてもよい(図示せず)。
本明細書において、形状を表す際の「略」は、本発明の属する技術分野において許容される形状を意味する。平面視略正方形状、略長方形状、略三角形状などの略多角形状の「略」は、例えば、角部が面取りされている形状、辺の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、辺が若干湾曲している形状などが含まれる。また、平面視略円形状及び略楕円形状の「略」は、例えば、周の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、周の一部が若干直線又は斜線とされた形状などが含まれる。
平面視略正方形状又は略長方形状のタイルカーペット1の寸法は、特に限定されないが、例えば、タフト方向の長さ×ゲージ方向の長さが200mm〜1000mm×200mm〜1000mmなどである。
なお、
図1及び
図2では、平面視略正方形状のタイルカーペット1を例示している。
【0020】
前記基布4にタフトされた糸5は、パイルとも呼ばれるが、そのパイル形状は特に限定されず、ループパイルでもよいし、或いは、カットパイル(図示せず)でもよい。図示例では、ループパイルを表している。
前記糸5は、基布4の所定方向にタフトされており、従って、タフト方向において1つの糸5が連続して1つのパイル列を構成している。
パイル層2は、前記糸5をタフトすることによって構成されるパイル列をゲージ方向に複数有する。パイル列の本数は、タイルカーペット1のゲージ方向の長さと後述するゲージ数に基づいて求められる。1つの糸が構成するパイル列の本数は、1本又は2本以上である。
なお、タフト方向は、糸5がタフトされていく方向をいい、ゲージ方向は、タフト方向に対して直交する方向をいう。
【0021】
また、パイル高も特に限定されず、例えば、2mm〜10mmであり、好ましくは3mm〜8mmである。
パイル高は、タフト方向及びゲージ方向において同じ高さでもよく、或いは、タフト方向及び/又はゲージ方向において異なっていてもよい(図示せず)。
パイル高がタフト方向において異なっている部分を有するパイル面(パイル面は、パイル層2の表面)は、タフト方向において凹凸を生じ、パイル高がゲージ方向において異なっている部分を有するパイル面は、ゲージ方向において凹凸を生じ、パイル高がタフト方向及びゲージ方向において異なっている部分を有するパイル面は、面方向において凹凸を生じる。図示例では、パイル高がタフト方向及びゲージ方向において同じであるパイル層2を表している。
【0022】
前記パイル層2において、1インチ(2.54cm)当たりのステッチ数及びゲージ数は、特に限定されず、ステッチ数は、例えば、5〜25であり、好ましくは8〜20であり、ゲージ数は、例えば、1/3〜1/20であり、好ましくは1/4〜1/16である。ステッチ数及びゲージ数を上記範囲とすることにより、適度な柔軟性及び腰を有するパイル層2を構成できる。
なお、ステッチ数は、タフト方向における、1インチ(2.54cm)当たりの糸5の打ち込み本数を意味する。例えば、ステッチ数がαとは、タフト方向1インチ当たりにα本打ち込まれていることを表す。また、ゲージ数は、ゲージ方向における、1インチ当たりの糸5の本数(ニードルの本数)を意味し、このゲージ数は、複数のパイル列の間隔とも言える。例えば、ゲージ数が1/βとは、ゲージ方向1インチ当たりにβ本のパイル列が配列されていることを表す。なお、ゲージ数が1/βである場合には、パイル列は、1インチ当たりにβ本存在する。
【0023】
前記パイル層2を構成する糸5は、所望の色彩に着色されている。かかる着色は、後述するように、カーペットの製造過程において未染色の糸を染料で染色することにより主としてもたらされている。つまり、所望の色彩に着色された糸5には、染料が結合されている。
前記パイル層2の全体的な色彩は、1色でもよく、2色以上でもよい。前記所望の色彩に着色された糸5によって、パイル面に任意のデザインが表出されている。また、前述のように、パイル高を異ならせてパイル面に凹凸が形成される場合には、凹凸による陰影と糸5の色彩によって任意のデザインが表出される。
【0024】
ここで、パイル層を構成する糸は、基布にタフトした後に染色可能であるか否かという後染可否の観点では、後染め糸と非後染め糸に分けられる。後染め糸とは、基布4にタフトされた後に染料を用いて所望の色彩に着色可能な糸をいう。非後染め糸とは、基布4にタフトされた後に染料を用いて着色困難な糸をいう。
前記後染め糸としては、染料を用いて所望の色彩に着色可能な白色を呈する未染色の糸、顔料などを混合して着色された糸であって染料を用いて着色可能な白色以外の所望の色彩を呈する未染色の糸などが挙げられる。なお、一般に、顔料などを混合して着色された糸であって白色以外の所望の色彩を呈する糸を「原着糸」と呼ぶ場合があるが、後染め糸の範疇に含まれる原着糸は、染料を用いて所望の色彩に着色可能な原着糸であり、非後染め糸の範疇に含まれる原着糸は、染料を用いて所望の色彩に着色困難な原着糸である。つまり、後染め糸の範疇に含まれる原着糸は、染料の結合部位を有する原着糸である。
本発明において、後染可否の観点では、パイル層2を構成する糸5は、少なくとも後染め糸を含んでいればよい。例えば、本発明の糸5は、後染可否の観点では、後染め糸のみから構成されていてもよく、或いは、後染め糸と非後染め糸の双方から構成されていてもよいが、色設定が容易なことから、後染め糸のみから構成されていることが好ましい。
また、本発明に使用される後染め糸は、上述の白色を呈する未染色の糸のみから構成されていてもよく、白色を呈する未染色の糸と顔料などを混合して着色された糸であって染料を用いて着色可能な白色以外の所望の色彩を呈する未染色の糸の双方から構成されていてもよいが、染色設定が容易なことから、白色を呈する未染色の糸のみから構成されていることが好ましい。
【0025】
前記パイル層2を構成する糸5は、白色顔料を含む1本又は複数本のフィラメントを有する糸を含んでいる。以下、白色顔料を含むフィラメントを有する糸を「白色顔料含有糸」という。白色顔料含有糸は、後染可否の観点では、後染め糸である。白色顔料含有糸は、白色顔料を含むフィラメントを1本又は複数本有していることを条件として、白色顔料を含まないフィラメントを有していてもよい。
白色顔料含有糸は、白色顔料を含むフィラメントを有しているので、その光沢が抑制される。かかる白色顔料含有糸は、染料を用いて所望の色彩に着色する際に、綺麗に着色でき且つ光沢を抑制できる。
【0026】
白色顔料含有糸を構成するフィラメントは、白色顔料以外の顔料を含んでいてもよく、或いは、それを含んでいなくてもよい。白色顔料含有糸が白色顔料以外の顔料を含むフィラメントを有する場合、その含有糸は、通常、白色以外の色彩を呈する。白色顔料含有糸は、白色顔料以外の顔料を実質的に含まないフィラメントから構成されていることが好ましく、このような白色顔料含有糸は、白色を呈する。実質的に含まないとは、不可避的に含まれる程度の微量の顔料の混入は許容され、有意な量の混入は除外されるという意味である。
白色顔料としては、例えば、酸化チタン(二酸化チタン)、酸化亜鉛、リトポン(硫化亜鉛と硫酸バリウムとの混合物)、硫化亜鉛などが挙げられ、これらは、1種単独で又は2種以上併用できる。
白色による隠蔽力に優れ、糸の光沢を抑制できることから、白色顔料は、酸化チタンを含むことが好ましい。酸化チタンを含む白色顔料は、酸化チタンのみでもよく、酸化チタンと他の白色顔料を含んでいてもよいが、光沢抑制効果が高いことから、酸化チタンのみを用いることが好ましい。
酸化チタンは、結晶構造において、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型が存在する。本発明では、何れの型の酸化チタンを用いてもよいが、汎用的に入手できることから、アナターゼ型又は/及びルチル型を用いることが好ましく、容易に製造でき且つ安定供給され得ることから、アナターゼ型の酸化チタンを用いることがより好ましい。また、酸化チタンは、糸を損傷させないために、不活性化させたものが好ましい。
【0027】
前記白色顔料含有糸は、1本のフィラメント(長繊維)から構成されていてもよいが、通常、
図5に示すように、複数本のフィラメント6を有するマルチフィラメントが用いられる。白色顔料含有糸が1本のフィラメントからなる場合には、そのフィラメントは白色顔料を含む。また、白色顔料含有糸が複数本のフィラメント6を有するマルチフィラメントからなる場合には、後述するように、複数本のフィラメント6のうち少なくとも1本のフィラメント6が白色顔料を含み、好ましくは、全てのフィラメント6が白色顔料を含む。
フィラメント6の材質は、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂などからなる合成繊維が挙げられる。前記熱可塑性樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリアミド、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、セルロース、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。これらの中では、染色性が良く且つ色落ちも少なく、さらに、耐久性にも優れることから、ポリアミドを主成分とするポリアミド系樹脂が好ましい。なお、必要に応じて、前記合成繊維に、綿、羊毛などの天然繊維を少量混入してフィラメントを作製してもよい。
【0028】
本発明のパイル層2を構成する糸5は少なくとも後染め糸を含んでいるので、前記フィラメント6は染料によって染色可能な材質(例えば、各種染料の染着座席を有するポリマー)が用いられる。例えば、酸性染料で染色する場合には、酸性染料の染着座席を有するポリマーである、NH
2基などの塩基性基を比較的多く含むポリマーからなるフィラメント6が用いられる。また、カチオン性染料で染色する場合には、カチオン性染料の染着座席を有するポリマーである、SO
3基などの酸性基を比較的多く含むポリマーからなるフィラメント6が用いられる。
一般に、ポリアミド系樹脂から形成されたフィラメント6は、酸性染料、カチオン性染料、分散染料及び金属錯塩染料によって染色可能である。アクリルを主成分とするアクリル系樹脂から形成されたフィラメント6は、カチオン性染料で染色可能である。ポリエステルを主成分とするポリエステル系樹脂から形成されたフィラメント6は、分散染料によって染色可能である。前記ポリアミド系樹脂から形成されたフィラメント6や前記ポリエステル系樹脂から形成されたフィラメント6をカチオン可染化処理することにより、カチオン性染料によって染色可能なフィラメント6とすることもできる。
各種ポリマーに白色顔料を混合し、必要に応じて公知の添加剤を混合した樹脂組成物を、公知の方法にて紡糸することにより、白色顔料を含むフィラメント6を得ることができる。
【0029】
以下、白色顔料含有糸及びパイル層2を構成する糸5について、複数本のフィラメント6からなるマルチフィラメントが用いられる場合を主として説明する。
マルチフィラメントからなる白色顔料含有糸は、白色顔料を含む複数本のフィラメント6のみからなる、又は、白色顔料を含む1本又は複数本のフィラメント6と白色顔料を含まない残余のフィラメント6とからなる。好ましくは、白色顔料含有糸は、白色顔料を含むフィラメント6の複数本のみからなる。
白色顔料を含むフィラメント6は、白色顔料以外の顔料を含んでいてもよく、或いは、それを含んでいなくてもよいが、白色顔料以外の顔料を実質的に含まないことが好ましい。白色顔料以外の顔料を実質的に含まないフィラメントは、白色を呈する。
マルチフィラメントは、通常、複数本のフィラメント6から構成される。複数本のフィラメント6は、互いに交絡され又は撚られていてもよい。
前記各フィラメント6は、捲縮されていてもよく、捲縮されていなくてもよい。光沢を抑制でき、さらに、嵩高いパイル層2を構成できることから、捲縮されたフィラメント6を用いることが好ましい。
また、前記フィラメント6の断面構造は、特に限定されず、断面視略円形状、略楕円形状のような定型的な形状のほか、断面視略Y字状、略L字状、略田の字状、略三角形状、略四角形状などの異形断面形状であってもよい。
なお、通常、フィラメント6の表面は平滑であり、フィラメントの表面自体は、ある程度の光沢を有する。
【0030】
各フィラメント6の太さは、特に限定されないが、余りに小さいと破断し易くなり、余りに大きいと、パイル面が硬くなり過ぎる。かかる観点から、各フィラメント6の太さは、それぞれ独立して、2dtex(デシテックス)〜500dtexが好ましく、5dtex〜30dtexがより好ましい。
また、白色顔料含有糸の太さは、特に限定されないが、余りに小さいと破断し易くなり、余りに大きいと、基布4にタフトすることが困難となる。かかる観点から、白色顔料含有糸の太さは、500dtex〜6000dtexが好ましく、600dtex〜5000dtexがより好ましい。
なお、1本の白色顔料含有糸を構成するフィラメント6の本数は、その糸5の太さ/1本のフィラメント6の太さ、で表すことができ、例えば、20本〜1000本であり、好ましくは、40本〜500本である。
【0031】
基布4には、互いに異なる2種以上の白色顔料含有糸がタフトされている。
異なる2種以上の白色顔料含有糸は、それぞれ独立してタフトされてパイル列を構成している。例えば、パイル層2は、1種の白色顔料含有糸(第1の白色顔料含有糸)がタフトされた第1のパイル列と、前記第1の白色顔料含有糸に隣接した列であって、第1の白色顔料含有糸とは異なる白色顔料含有糸(第2の白色顔料含有糸)がタフトされた第2のパイル列と、を少なくとも有する。前記隣接した第1の白色顔料含有糸と第2の白色顔料含有糸は、白色顔料の含有率が同じフィラメントを有する。つまり、前記第1の白色顔料含有糸と第2の白色顔料含有糸は、白色顔料の含有率が同じフィラメントを有しつつ互いに異なる糸である。以下、「白色顔料の含有率」を「白色含有率」と記す場合がある。
【0032】
ここで、2種の白色顔料含有糸が「白色含有率が同じフィラメントを有しつつ互いに異なる」とは、対比する2種の白色顔料含有糸が、何れも白色含有率が同じ値のフィラメントを少なくとも1本含んでいるが、糸全体として見たときに同一でない関係にあることをいう。
互いに異なる2種の白色顔料含有糸の例としては、(1)白色顔料含有糸を構成するフィラメントの材質が異なっている場合、(2)白色顔料含有糸を構成するフィラメントの太さが異なっている場合、(3)白色顔料含有糸を構成するフィラメントの本数が異なっている場合、(4)前記(1)乃至(3)から選ばれる少なくとも2つの組み合わせの場合、などが挙げられる。前記(1)のフィラメントの材質が異なる場合としては、(a)フィラメントを構成するポリマーが異なる場合、(b)フィラメントの白色含有率が異なる場合、(c)フィラメントの染色性が異なる場合、(d)フィラメントの染色度合いが異なる場合、(e)前記(a)乃至(d)から選ばれる少なくとも2つの組み合わせの場合、などが挙げられる。
【0033】
好ましくは、パイル層2は、第1の白色顔料含有糸がタフトされた第1のパイル列と、前記第1の白色顔料含有糸に隣接した列であって、第1の白色顔料含有糸とは異なる第2の白色顔料含有糸がタフトされた第2のパイル列と、前記第2の白色顔料含有糸に隣接した列であって、第1及び第2の白色顔料含有糸とは異なる白色顔料含有糸(第3の白色顔料含有糸)がタフトされた第3のパイル列と、を少なくとも有し、より好ましくは、前記第1乃至第3のパイル列に加えて、第3の白色顔料含有糸に隣接した列であって、第1乃至第3の白色顔料含有糸とは異なる白色顔料含有糸(第4の白色顔料含有糸)がタフトされた第4のパイル列と、を少なくとも有する。前記第1乃至第4の白色顔料含有糸は、白色顔料の含有率が同じフィラメントを有しつつ互いに異なる。好ましくは、前記第1乃至第4の白色顔料含有糸は、白色顔料の含有率が同じフィラメントを有しつつ、染色度合いが異なるフィラメントから構成される。前記染色度合いの異なるフィラメントは、特に限定されないが、1〜4種類が好ましく、1〜3種類がより好ましい。
【0034】
また、前記2種以上の白色顔料含有糸は、互いに白色顔料の含有率が異なっていることが好ましい。白色含有率が異なる白色顔料含有糸の種類数が多いほど、糸間の光沢差を小さくできることから、白色含有率が異なる3種以上の白色顔料含有糸がタフトされていることが好ましく、4種以上の白色顔料含有糸が基布4にタフトされていることがより好ましい。
つまり、タイルカーペット1のパイル層2は、白色含有率が異なる2種以上の白色顔料含有糸を有し、好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上の白色顔料含有糸を有する。白色顔料含有糸の種類の上限は、特に限定されないが、余りに多すぎると糸5の管理が煩雑になることから、20種以下が好ましく、さらに、15種以下がより好ましく、10種以下がさらに好ましい。
白色含有率の異なる2種以上の白色顔料含有糸は、それぞれ独立してタフトされてパイル列を構成している。例えば、パイル層2は、1種の白色顔料含有糸がタフトされた第1のパイル列と、これと白色含有率が異なる白色顔料含有糸がタフトされた第2のパイル列と、を少なくとも有する。また、パイル層2は、1種の白色顔料含有糸がタフトされた第1のパイル列と、これと白色含有率が異なる白色顔料含有糸がタフトされた第2のパイル列と、これらと白色含有率が異なる白色顔料含有糸がタフトされた第3のパイル列と、を少なくとも有し、より好ましくは、さらに、第4のパイル列を少なくとも有する。
柄表現が豊かになり意匠性に優れるパイル層を形成できることから、白色含有率の異なる3種〜8種の白色顔料含有糸を用いて3種類〜8種類のパイル列を形成することが好ましく、4種〜6種の白色顔料含有糸を用いて4種類〜6種類のパイル列を形成することがより好ましい。
【0035】
白色含有率が異なる任意の2種の白色顔料含有糸を対比して、その白色含有率の差は、特に限定されないが、その差が余りに大きいと光沢差が大きくなりすぎるおそれがある。かかる観点から、異なる白色顔料含有糸の白色含有率の差は、0を越え1%以下が好ましく、さらに、0.05%〜0.5%がより好ましい。
また、白色含有率が異なる白色顔料含有糸が3種以上用いられている場合、その中から選ばれる任意の2種の白色顔料含有糸の白色含有率の差は、いずれも前記範囲であることが好ましい。この場合、任意の2種の白色顔料含有糸の白色含有率の差の最小値及び最大値は、特に限定されないが、例えば、その差の最小値は、0を越え0.1%以下であり、好ましくは0を越え0.09%以下であり、その差の最大値は、0.2%〜1%であり、好ましくは0.25%〜0.5%である。
具体的な数値を例に採って説明すると、白色含有率が0.02%である白色顔料含有糸、白色含有率が0.1%である白色顔料含有糸、白色含有率が0.2%である白色顔料含有糸、及び、白色含有率が0.5%である白色顔料含有糸という、白色含有率が異なる4種の白色顔料含有糸が用いられている場合には、その中から選ばれる任意の2種の白色顔料含有糸の白色含有率の差の最小値は、0.08%(0.1−0.02)であり、その差の最大値は、0.48%(0.5−0.02)である。
白色顔料含有糸の白色顔料の含有率(%)は、(白色顔料含有糸に含まれる白色顔料の全重量/その糸の全重量)×100、で求められ、フィラメントの白色顔料の含有率(%)は、(フィラメントに含まれる白色顔料の重量/そのフィラメントの重量)×100、で求められる。
なお、実際の白色顔料含有糸(又はフィラメント)の白色含有率の測定では、パイル層2から白色顔料含有糸(又はフィラメント)を解き出し、その糸(又はフィラメント)の一部を任意に取り出して試験片とされる。
【0036】
白色含有率が異なる白色顔料含有糸としては、例えば、次の(1)乃至(4)のような場合などが挙げられる。ただし、下記(1)乃至(4)に限定されるわけではない。
以下、白色含有率が異なる白色顔料含有糸又はフィラメントを区別するために、その用語の頭に「第1」、「第2」などを付す。
【0037】
(1)パターン1
第1の白色顔料含有糸が1種のフィラメントのみ又は2種以上のフィラメントからなり、第2の白色顔料含有糸が1種のフィラメントのみ又は2種以上のフィラメントからなり、第1及び第2の白色顔料含有糸が同じ白色含有率のフィラメントを有しつつ全体として白色含有率が異なる場合。
例えば、第1フィラメントの白色含有率と第2フィラメントの白色含有率が異なっており、第1の白色顔料含有糸が複数本の第1フィラメントのみからなり、第2の白色顔料含有糸が1本又は複数本の第1フィラメント及び1本又は複数本の第2フィラメントからなる場合。具体例としては、第1フィラメント=白色含有率が0.01%のフィラメント、第2フィラメント=白色含有率が0.3%のフィラメント、第1の白色顔料含有糸=複数本の第1フィラメント、第2の白色顔料含有糸=複数本の第1フィラメント+複数本の第2フィラメント、である場合など。
或いは、第1フィラメントの白色含有率と第2フィラメントの白色含有率と第3フィラメントの白色含有率が互いに異なっており、第1の白色顔料含有糸が複数本の第1フィラメントのみからなり、第2の白色顔料含有糸が1本又は複数本の第1フィラメント及び1本又は複数本の第2フィラメント及び1本又は複数本の第3フィラメントからなる場合。具体例としては、第1フィラメント=白色含有率が0.01%のフィラメント、第2フィラメント=白色含有率が0.3%のフィラメント、第3フィラメント=白色含有率が0.4%のフィラメント、第1の白色顔料含有糸=複数本の第1フィラメント、第2の白色顔料含有糸=1本又は複数本の第1フィラメント+1本又は複数本の第2フィラメント+1本又は複数本の第3フィラメント、である場合など。
或いは、第1フィラメントの白色含有率と第2フィラメントの白色含有率と第3フィラメントの白色含有率が互いに異なっており、第1の白色顔料含有糸が1本又は複数本の第1フィラメント及び1本又は複数本の第2フィラメントからなり、第2の白色顔料含有糸が1本又は複数本の第1フィラメント及び1本又は複数本の第3フィラメントからなる場合。具体例としては、第1フィラメント=白色含有率が0.01%のフィラメント、第2フィラメント=白色含有率が0.3%のフィラメント、第3フィラメント=白色含有率が0.4%のフィラメント、第1の白色顔料含有糸=複数本の第1フィラメント、第2の白色顔料含有糸=1本又は複数本の第1フィラメント+1本又は複数本の第2フィラメント+1本又は複数本の第3フィラメント、である場合など。
或いは、第1フィラメントの白色含有率と第2フィラメントの白色含有率と第3フィラメントの白色含有率と第4フィラメントの白色含有率が互いに異なっており、第1の白色顔料含有糸が1本又は複数本の第1フィラメント及び1本又は複数本の第2フィラメントからなり、第2の白色顔料含有糸が1本又は複数本の第1フィラメント及び1本又は複数本の第3フィラメント及び1本又は複数本の第4フィラメントからなる場合など。具体例としては、第1フィラメント=白色含有率が0.01%のフィラメント、第2フィラメント=白色含有率が0.3%のフィラメント、第3フィラメント=白色含有率が0.4%のフィラメント、第4フィラメント=白色含有率が0.5%のフィラメント、第1の白色顔料含有糸=1本又は複数本の第1フィラメント+1本又は複数本の第2フィラメント、第2の白色顔料含有糸=1本又は複数本の第1フィラメント+1本又は複数本の第3フィラメント+1本又は複数本の第4フィラメント、である場合など。
【0038】
(2)パターン2
第1の白色顔料含有糸と第2の白色顔料含有糸が白色含有率が同じフィラメントを有し且つ白色含有率の異なる2種以上のフィラメントをそれぞれ有し、第1の白色顔料含有糸の2種以上のフィラメントの本数比率が第2の白色顔料含有糸の2種以上のフィラメントの本数比率と異なる場合。
例えば、第1フィラメントの白色含有率と第2フィラメントの白色含有率が異なっており、第1の白色顔料含有糸が第1フィラメントと第2フィラメントを有し、第2の白色顔料含有糸が第1フィラメントと第2フィラメントを有し、第1の白色顔料含有糸の第1フィラメントと第2フィラメントの本数比率が第2の白色顔料含有糸の第1フィラメントと第2フィラメントの本数比率とは異なる場合。具体例としては、第1フィラメント=白色含有率が0.01%のフィラメント、第2フィラメント=白色含有率が0.3%のフィラメント、第1の白色顔料含有糸=20本の第1フィラメント+20本の第2フィラメント、第2の白色顔料含有糸=30本の第1フィラメント+10本の第2フィラメント、である場合など。
或いは、第1フィラメントの白色含有率と第2フィラメントの白色含有率と第3フィラメントの白色含有率が互いに異なっており、第1の白色顔料含有糸が第1フィラメントと第2フィラメントと第3フィラメントを有し、第2の白色顔料含有糸が第1フィラメントと第2フィラメントと第3フィラメントを有し、第1の白色顔料含有糸の第1フィラメントと第2フィラメントと第3フィラメントの本数比率が第2の白色顔料含有糸の第1フィラメントと第2フィラメントと第3フィラメントの本数比率とは異なる場合など。具体例としては、第1フィラメント=白色含有率が0.01%のフィラメント、第2フィラメント=白色含有率が0.3%のフィラメント、第3フィラメント=白色含有率が0.4%のフィラメント、第1の白色顔料含有糸=10本の第1フィラメント+20本の第2フィラメント+30本の第3フィラメント、第2の白色顔料含有糸=30本の第1フィラメント+20本の第2フィラメント+10本の第3フィラメント、である場合など。
【0039】
なお、含有率の異なる白色顔料含有糸が3種以上用いられている場合には、その第3の白色顔料含有糸、第4の白色顔料含有糸、第5の白色顔料含有糸などについても、上記パターン1又はパターン2などから選ばれる関係を満たしていることが好ましい。
例えば、パイル列を構成した際に隣接する第2の白色顔料含有糸と第3の白色顔料含有糸とが上記パターン1又はパターン2の関係を満たし、パイル列を構成した際に隣接する第3の白色顔料含有糸と第4の白色顔料含有糸とが上記パターン1又はパターン2の関係を満たし、パイル列を構成した際に隣接する第4の白色顔料含有糸と第5の白色顔料含有糸とが上記パターン1又はパターン2の関係を満たしている場合などが挙げられる。
具体例としては、第1フィラメント=白色含有率が0.01%のフィラメント、第2フィラメント=白色含有率が0.3%のフィラメント、第1の白色顔料含有糸=40本の第1フィラメント、第2の白色顔料含有糸=20本の第1フィラメント+20本の第2フィラメント、第3の白色顔料含有糸=40本の第2フィラメント、である場合など。
【0040】
パイル層2は、1つの白色顔料含有糸がタフトされた列と、この白色顔料含有糸とは白色含有率の異なる白色顔料含有糸がタフトされた列と、の少なくとも2つのパイル列を有する。
例えば、パイル列は、第1の白色顔料含有糸がタフトされた列と、第1の白色顔料含有糸の列に隣接し且つ第2の白色顔料含有糸がタフトされた列と、第2の白色顔料含有糸の列に隣接し且つ第3の白色顔料含有糸がタフトされた列と、の3つ以上のパイル列を有し、好ましくは、第1の白色顔料含有糸がタフトされた列と、第1の白色顔料含有糸の列に隣接し且つ第2の白色顔料含有糸がタフトされた列と、第2の白色顔料含有糸の列に隣接し且つ第3の白色顔料含有糸がタフトされた列と、第3の白色顔料含有糸の列に隣接し且つ第4の白色顔料含有糸がタフトされた列と、の4つ以上のパイル列を有する。
【0041】
なお、前記第1の白色顔料含有糸がタフトされた列、第2の白色顔料含有糸がタフトされた列、第3の白色顔料含有糸がタフトされた列及び第4の白色顔料含有糸がタフトされた列は、それぞれ独立して、1列でもよく、或いは、並んだ2列以上でもよい。例えば、
図4では、便宜上、第1の白色顔料含有糸5aがタフトされた列G1は、ゲージ方向に連続して2列であり、これに隣接した第2の白色顔料含有糸5bがタフトされた列G2は、ゲージ方向に連続して3列であり、これに隣接した第3の白色顔料含有糸5cがタフトされた列G3は、ゲージ方向に1列であり、これに隣接した第4の白色顔料含有糸5dがタフトされた列G4は、ゲージ方向に連続して4列であり、これに隣接した第5の白色顔料含有糸5eがタフトされた列G5は、ゲージ方向に連続して2列であり、これに隣接した第6の白色顔料含有糸5fがタフトされた列G6は、ゲージ方向に連続して2列である場合を表している。なお、図示例では、第6の白色顔料含有糸5fまでを符号で表しているが、第7以降の白色顔料含有糸についても、その列数は特に限定されない。
また、前記第1などの複数の白色顔料含有糸がタフトされた1つの列パターンが、ゲージ方向に繰り返されていてもよく、或いは、2以上の異なる列パターンがゲージ方向に配置されていてもよい。
【0042】
前記のように第1の白色顔料含有糸5aがタフトされた列G1と第2の白色顔料含有糸5bがタフトされた列G2が隣接する場合において、第1の白色顔料含有糸5aと第2の白色顔料含有糸5bは、白色含有率が同じフィラメントを有しつつ互いに異なる糸であれば特に限定されない。
白色顔料の含有率が同じフィラメントを互いに有している2種の白色顔料含有糸は、上記(1)又は(2)の関係を満たす糸である。
なお、隣接する2種の白色顔料含有糸の組み合わせは、第1の白色顔料含有糸5aと第2の白色顔料含有糸5b以外に、上述の
図4に示す例では、第2の白色顔料含有糸5bと第3の白色顔料含有糸5c、第3の白色顔料含有糸5cと第4の白色顔料含有糸5d、第4の白色顔料含有糸5dと第5の白色顔料含有糸5eなどがあるが、それらから選ばれる1組の白色顔料含有糸も、それぞれ白色含有率が同じフィラメントを有しつつ互いに異なる糸であることが好ましく、それらの全ての組み合わせにおいて隣接する2種の白色顔料含有糸が、それぞれ白色含有率が同じフィラメントを有しつつ互いに異なる糸であることがより好ましい。
なお、パイル層を構成する全てのパイル列において、隣接した白色顔料含有糸の全てが白色含有率が同じフィラメントを有しつつ互いに異なる糸であるという関係を満たしていてもよい。或いは、パイル層を構成する全てのパイル列の中の一部において、隣接した白色顔料含有糸が白色含有率が同じフィラメントを有しつつ互いに異なる糸であるという関係を満たし、且つ、それ以外のパイル列において、隣接した糸が前記関係を満たさないものでもよい。
【0043】
前記糸5がタフトされた基布4及びバッキング層3は、従来公知のものを用いることができる。
前記基布4は、特に限定されず、例えば、織布、不織布、編み布などのシート状のものが挙げられる。基布4を構成する繊維の素材としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミドなどの合成繊維;セルロース、ウールなどの天然繊維;レーヨンなどの半合成繊維などが挙げられる。耐久性及び加工性に優れていることから、基布4として、ポリアミドやポリエステルを用いることが好ましい。
【0044】
前記バッキング層3は、パイル層2に積層される層であり、タイルカーペット1の接地面を構成する層である。
例えば、バッキング層3は、表面側から順に、接着層31と、補強シート32と、裏打ち層33と、を有する。接着層31は、パイル層2の裏面(パイル面とは反対側の面)に設けられる。裏打ち層33は、接着層31の裏面に設けられ、裏打ち層33の裏面が床面に接する。補強シート32は、前記接着層31と裏打ち層33との中間に設けられる。また、必要に応じて、裏打ち層33の中間又は/及び裏面にさらに別の補強シート(図示せず)を積層してもよい。
【0045】
接着層31及び裏打ち層33は、公知の合成樹脂によって形成される。例えば、接着層31及び裏打ち層33の合成樹脂としては、塩化ビニル系樹脂などのPVC系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などのEVA系樹脂、APP樹脂などのAPP系樹脂、ポリウレタンなどのPUR系樹脂などが挙げられる。加工性、耐久性、及びコスト面などから、ポリ塩化ビニル樹脂などのPVC系樹脂を用いることが好ましい。
補強シート32も特に限定されず、公知のシートを用いることができる。例えば、補強シート32としては、ガラス、ポリエステル、ポリアミドなどの無機繊維若しくは合成繊維の織布又は不織布などが挙げられる。特に、寸法安定性に優れていることから、補強シート32として、ガラス繊維製の織布又は不織布を用いることが好ましい。
【0046】
[タイルカーペットの使用]
本発明のタイルカーペット1は、従来と同様に、床面に敷設して使用される。
タイルカーペット1の敷設方式は、市松貼り方式でもよく、或いは、流し貼り方式でもよい。本発明のタイルカーペット1は、流し貼り方式で敷設しても、一部のタイルカーペット1やその目地が目立ち難くなるので、あたかも1枚のカーペットを敷設したような仕上がり外観のタイルカーペットの床面構造を構築できる。
具体的には、白色含有率が異なる白色顔料含有糸を対比すると、両糸の間には光沢差を有しており、かかる白色顔料含有糸は、所望の色彩に染色されていても、光沢差に起因した色彩の濃淡差を有する。例えば、第1の白色顔料含有糸5a(1つの白色顔料含有糸)がタフトされた列G1と第2の白色顔料含有糸5b(この白色顔料含有糸5aとは含有率の異なる白色顔料含有糸5b)がタフトされた列G2とが隣接している場合において、第1の白色顔料含有糸5aと第2の白色顔料含有糸5bが同じ色彩に染色されている場合でも、両糸5の光沢差により色彩の濃淡差を有する。
【0047】
本発明のタイルカーペット1は、白色顔料を含む1本又は複数本のフィラメントを有し且つ所望の色彩に着色された第1の白色顔料含有糸がタフトされたパイル列と、前記第1の白色顔料含有糸に隣接した列であって、白色顔料を含む1本又は複数本のフィラメントを有し且つ所望の色彩に着色された第2の白色顔料含有糸がタフトされたパイル列と、を有する。第1の白色顔料含有糸と第2の白色顔料含有糸は、白色顔料の含有率が同じフィラメントを有するので、両糸の間の光沢差は比較的小さく、両糸5の色彩の濃度差も比較的小さくなる。このため、隣接するパイル列において光沢差が際立つことがなく、パイル列間で光沢差に起因した濃淡が微妙に移り変わり、光沢差や色彩の濃淡差が目立ち過ぎることを防止できる。つまり、隣接するパイル列におけるグラデーションが自然な感じに表出される。かかる本発明のタイルカーペットを流し貼り方式で敷設しても、目地が目立ち難く、一部のタイルカーペット1が目立ち難くなる。
特に、第1の白色顔料含有糸及び第2の白色顔料含有糸に同じ染料が結合されているタイルカーペットは、第1の白色顔料含有糸と第2の白色顔料含有糸が同系色の色彩に着色されているので、目地がより目立ち難く、一部のタイルカーペット1がより目立ち難くなる。
【0048】
[タイルカーペットの製造方法]
本発明のタイルカーペット1は、例えば、次のような手順で得ることができる。もっとも、本発明のタイルカーペット1は、下記方法によって得られるものに限定されるわけではない。
本発明のタイルカーペット1の製造方法は、未染色の糸5が基布4にタフトされた複数本のパイル列を有する生機を準備する工程、前記未染色の糸5を染色する工程、バッキング層3を形成する工程、を有する。前記製造方法においては、必要に応じて、成形工程などの他の工程を適宜行ってもよい。
【0049】
(準備工程)
従来公知の方法に従い、未染色の糸を基布にタフトしてパイル生機を得る。なお、そのパイル生機の裏面にバッキング層を形成した後、後述する染色工程を行ってもよい。
なお、製造段階においては、長尺帯状の基布が用いられる。長尺帯状の基布は、長手方向の長さが短手方向よりも十分に長い長方形状であり、例えば、長さ10m以上、好ましくは長さ100m以上である。
【0050】
長尺帯状の基布に、パイル層を構成する未染色の糸(後染め糸)をタフトしていく。例えば、長尺帯状の基布及び/又はニードルをタフト方向に移動させながらタフトしてもよく、或いは、ニードルをゲージ方向に移動させながらタフト方向にタフトを行なう所謂ニードルシフトによってタフトしてもよい。
タフトされる糸のステッチ数、ゲージ数、パイル高などは、上記[タイルカーペット]の欄で説明した通りである。
長尺帯状の基布を用いる場合には、通常、その基布の長手方向がタフト方向とされる。
前記未染色の糸は、染料で染色されていないこと以外は、上記[タイルカーペット]の欄で説明したパイル層を構成する糸と同様である。
すなわち、未染色の糸は、未染色の白色顔料含有糸であって、白色含有率が異なる複数(2種以上)の白色顔料含有糸を含んでいる。
糸の染色性の観点では、前記白色含有率が異なる複数の白色顔料含有糸は、同種の染料で染色可能なものでもよく、或いは、異種の染料で染色可能なものでもよい。
【0051】
染料の種類としては、酸性染料、カチオン性染料、分散染料、金属錯塩染料などが挙げられる。なお、酸性染料、カチオン性染料、分散染料、金属錯塩染料などは互いに異種の染料である。
前記異種の染料で染色可能なものを用いる場合としては、例えば、複数の白色顔料含有糸のうち一部の白色顔料含有糸が酸性染料で染色可能で、残部の白色顔料含有糸がカチオン性染料で染色可能なものを用いる場合;酸性染料で染色可能なフィラメントとカチオン性染料で染色可能なフィラメントとから構成される白色顔料含有糸を用いる場合;1つのフィラメントに酸性染料で染色可能な領域とカチオン染料で染色可能な領域とが混在するフィラメントを含む白色顔料含有糸を用いる場合;などが挙げられる。
【0052】
本発明によれば、比較的自由に染料を選択しても、敷設時の目地が目立ち難いカーペットを構成できる。
好ましくは、第1の白色顔料含有糸及び第2の白色顔料含有糸を含む複数の白色顔料含有糸(望ましくは、全ての白色顔料含有糸)は、同種の染料で染色可能なものが用いられ、より好ましくは、酸性染料又はカチオン性染料で染色可能なものが用いられ、さらに好ましくは、酸性染料で染色可能なものが用いられる。酸性染料は種類が多いので、その選択の自由度が高く、また、堅牢度が高いので、カーペットの染色に好適である。
別の観点では、第1の白色顔料含有糸及び第2の白色顔料含有糸を含む複数の白色顔料含有糸(望ましくは、全ての白色顔料含有糸)は、1つの色彩に着色できる染料で染色可能なものが用いられる。1つの色彩に着色できる染料で染色可能な白色顔料含有糸を用いることにより、パイル生機を1つの色彩に着色でき、外観上綺麗で、且つ目地などが目立ち難いタイルカーペットを構成できる。
このような好ましい場合の具体例としては、例えば、全ての白色顔料含有糸が1つの色彩に着色できる酸性染料(例えば、赤色に染色できる酸性染料)で染色可能なものである場合;複数の白色顔料含有糸のうち一部の白色顔料含有糸が1つの色彩に着色できる酸性染料(例えば、赤色に染色できる酸性染料)で染色可能で且つ残部の白色顔料含有糸が前記酸性染料とは色彩の異なる酸性染料(例えば、青色に染色できる酸性染料)で染色可能なものである場合;全ての白色顔料含有糸が1つの色彩に着色できるカチオン染料で染色可能なものである場合;複数の白色顔料含有糸のうち一部の白色顔料含有糸が1つの色彩に着色できるカチオン性染料で染色可能で且つ残部の白色顔料含有糸が前記カチオン性染料とは色彩の異なるカチオン性染料で染色可能なものである場合;などが挙げられる。
【0053】
酸性染料で染色可能な白色顔料含有糸を構成するフィラメントは、上述のように、NH
2基などの塩基性基を比較的多く含むポリマーと白色顔料を含む。
カチオン性染料で染色可能な白色顔料含有糸を構成するフィラメントは、上述のように、SO
3基などの酸性基を比較的多く含むポリマーと白色顔料を含む。
【0054】
また、同種の染料で1つの色彩に着色できる複数の白色顔料含有糸は、染色濃さが同じものでもよく、或いは、染色濃さが異なるものでもよい。好ましくは、染色濃さが同じ複数の白色顔料含有糸を用いる。染色濃さが同じ複数の白色顔料含有糸を用いることにより、均一に1つの色彩に染色しつつ、白色顔料の含有率の差に起因する糸間の光沢差によって柄を表出することも可能である。
染色濃さが同じ複数の白色顔料含有糸は、後述するディープタイプ、ペールタイル、レギュラータイプのような区別がなく、所定の濃さに一律に染色されるものである。
【0055】
例えば、
図4に示す例において、酸性染料で染色可能な後染め糸である第1乃至第6の白色顔料含有糸5a乃至5fが、基布4にタフトされ、それぞれのパイル列が形成される。第1乃至第6の白色顔料含有糸5a乃至5fは、同種の染料で染色可能であり、それぞれ独立して、1種又は2種以上のフィラメントから形成されている。各パイル列において隣接した白色顔料含有糸は、白色顔料の含有率が同じフィラメントを有していることが好ましい。隣接した白色顔料糸は、糸5aと糸5b、糸5bと糸5c、糸5cと糸5d、糸5dと糸5e、糸5eと糸5fが該当する。
一例を挙げると、次のようにパイル列を構成することができる。
糸5a:フィラメントAのみ
糸5b:フィラメントA+フィラメントBの混繊
糸5c:フィラメントBのみ
糸5d:フィラメントB+フィラメントCの混繊
糸5e:フィラメントC+フィラメントDの混繊
糸5f:フィラメントDのみ
ただし、フィラメントAは白色顔料の含有率が0.3%、フィラメントBは白色顔料の含有率が0.1%、フィラメントCは白色顔料の含有率が0.05%、フィラメントDは白色顔料の含有率が0%であって、フィラメントA乃至Dは、いずれも同じ濃さで染色されるフィラメントである。
【0056】
一方、染色濃さが異なる複数の白色顔料含有糸として、具体的には、同種の染料で染色可能な白色顔料含有糸であっても、比較的濃く染まるタイプ(以下、ディープタイプという場合がある)、比較的薄く染まるタイプ(以下、ペールタイプという場合がある)、ディープタイプとペールタイプの中間に染まるタイプ(以下、レギュラータイプという場合がある)が知られている。
例えば、同一の酸性染料で染色できる白色顔料含有糸でも、比較的濃く染まる白色顔料含有糸、比較的薄く染まる白色顔料含有糸、中間的に染まる白色顔料含有糸がある。或いは、同一のカチオン性染料で染色できる白色顔料含有糸でも、比較的濃く染まる白色顔料含有糸、比較的薄く染まる白色顔料含有糸、中間的に染まる白色顔料含有糸がある。
上記同種の染料で染色可能な複数の白色顔料含有糸において、その一部の白色顔料含有糸がディープタイプで、一部の白色顔料含有糸がペールタイプで、一部の白色顔料含有糸がレギュラータイプでもよい。例えば、第1の白色顔料含有糸がディープタイプで、第2の白色顔料含有糸がペールタイプで、第3の白色顔料含有糸がレギュラータイプである場合などが挙げられる。
酸性染料で染色可能な白色顔料含有糸については、その糸を構成するポリマーとして塩基性基を比較的多く含むポリマーを用いることにより、ディープタイプの白色顔料含有糸を構成でき、塩基性基を比較的少なく含むポリマーを用いることにより、ペールタイプの白色顔料含有糸を構成でき、塩基性基を中間的に含むポリマーを用いることにより、レギュラータイプの白色顔料含有糸を構成できる。
カチオン性染料で染色可能な白色顔料含有糸については、同様に、酸性基の含有量の異なるポリマーを用いることにより、ディープタイプ、ペールタイプ及びレギュラータイプの白色顔料含有糸をそれぞれ構成できる。
【0057】
例えば、
図4に示す例において、第1の白色顔料含有糸5aとして、酸性染料で染色可能なディープタイプの後染め糸が基布4にタフトされ、第2の白色顔料含有糸5bとして、酸性染料で染色可能なディープタイプの後染め糸が基布4にタフトされ、第3の白色顔料含有糸5cとして、酸性染料で染色可能なレギュラータイプの後染め糸が基布4にタフトされ、第4の白色顔料含有糸5dとして、酸性染料で染色可能なレギュラータイプの後染め糸が基布4にタフトされ、第5の白色顔料含有糸5eとして、酸性染料で染色可能なペールタイプの後染め糸が基布4にタフトされ、第6の白色顔料含有糸5fとして、酸性染料で染色可能なペールタイプの後染め糸が基布4にタフトされる。
【0058】
[染色工程]
長尺帯状の基布に未染色の白色顔料含有糸をタフトして得られた生機を、長手方向に送り、その途中で、生機のパイル面に、染料を塗布する。染料は、使用される白色顔料含有糸(後染め糸)を染色できる染料であり、その染色性に応じて適宜選択される。例えば、酸性染料で染色可能な白色顔料含有糸が基布にタフトされている場合には、酸性染料が用いられる。
染料の塗布方法は、特に限定されず、例えば、吐出ノズルから生機のパイル面に染料を噴射する方法、染料が満たされた染槽中に生機を通す方法、などが挙げられる。
通常、生機を送るラインの途中に、生機の幅方向及び長手方向に所定間隔を開けて複数の吐出ノズルが設けられ、そのノズルから生機のパイル面に染料を塗布する。
例えば、酸性染料で染色可能な白色顔料含有糸とカチオン性染料で染色可能な白色顔料含有糸とが基布にタフトされている場合には、酸性染料とカチオン性染料とを混合した染料を、各ノズルから吐出してもよいし、複数のノズルから酸性染料又はカチオン性染料を噴射し、他の複数のノズルからカチオン性染料又は酸性染料を噴出してもよい。
【0059】
染料を塗布した後、生機を熱処理することにより、後染め糸に染料を結合させて定着させる。
熱処理は、例えば、温風、スチームなどにより行うことができる。
パイル糸の後染め糸に略均一に熱が加わりやすいことから、スチームを用いて熱処理することが好ましい。
このように未染色の白色顔料含有糸を染料で染色することにより、所望の色彩に着色された糸を有するパイル層を構成できる。
染色性に関しては、1色以上の染料で染色することができる。なお、1色の染料とは、単一の染料だけでなく、酸性染料同士などのような同じ種類で、異なる色彩の染料を混ぜ合わせて色彩を調整した所謂混合染料も含まれる。たとえば、同じ種類の染料であって3原色の染料を適宜量混合して所望の色彩に調整し、混合染料を得ることができる。
一般に、1色の染料で染色すると、シンプル且つ単調な柄のパイル層が形成されるので、染色斑が目立ちやすくなる。本発明のように白色含有率の異なる2種以上の白色顔料含有糸を用いることにより、1色の染料で染色した場合でも染色斑が目立つことを抑制できる。よって、本発明は、1色で染色されたタイルカーペットに適用することが効果的である。
【0060】
また、異種の染料のうち、酸性染料とカチオン性染料とを混ぜ合わせる場合、又は、金属錯塩染料とカチオン性染料とを混ぜ合わせる場合には、両者が異なる色彩であっても色が混合することはなく、それぞれの染料の色で糸が染色される。具体的には、酸性染料で染まるフィラメントは酸性染料の色彩に、カチオン性染料で染まるフィラメントはカチオン性染料の色彩に染色される。このように異なる色彩の2種以上の染料でパイル層の糸を全体的に染色した場合には、パイル面に2色以上の色模様が生じるので、染色斑が目立ち難くなるが、本発明では、2種以上の白色顔料含有糸の光沢度の差が色模様に重畳されることによって、染色斑を目立たなくすることができる。
本発明のように、白色含有率の異なる2種以上の白色顔料含有糸を用いることにより、パイル面の全体を1色に染色した場合或いは2色以上に染色した場合であっても染色斑が目立ち難いタイルカーペット1を提供できる。
【0061】
[洗浄工程]
洗浄工程は、前記染色工程後に、染色済み生機に付着した染料などを除去する工程である。
染色後の生機には、染料が残存している。
この残存染料を除去するため、必要に応じて、洗浄することが好ましい。
洗浄工程の洗浄液は、残存染料を除去できるものであれば特に限定されないが、例えば、水、低濃度のアルコール水などが挙げられる。
洗浄液の温度は、通常、5℃〜50℃程度である。
洗浄方法としては、特に限定されず、例えば、吐出ノズルから生機のパイル面に洗浄液を吹き付ける方法、洗浄液が満たされた浴中に生機を通す方法、などが挙げられる。
洗浄後の生機は、乾燥される。
乾燥処理は、自然乾燥でもよいが、時間短縮のため、温風などを用いた強制的な乾燥が好ましい。
【0062】
[バッキング層の形成工程]
バッキング層の形成工程は、前記染色後の生機の裏面にバッキング層を形成する工程できる。
バッキング層は、タイルカーペットの接地層を構成するものであり、従来公知の方法で形成できる。
例えば、図示例のような、接着層31と補強シート32と裏打ち層33とを有するバッキング層3は、接着層/補強シート/裏打ち層からなる積層体を作製し、その接着層を生機の裏面に接着させることによって形成できる。
【0063】
[裁断工程]
以上ようにして得られたバッキング層を有する生機を、所定の平面視四角形状に裁断することにより、本発明のタイルカーペット1が得られる。なお、タイルカーペット1の形状は、正方形状、長方形状、ひし形状などの四角形状に限られず、三角形状、六角形状などの多角形状などでもよい。特に、縦横の寸法が整数倍の比率である四角形状が好ましく、特に、比率が1:1の正方形状がより好ましい。また、長方形状であっても、縦横の比率が1:2、1:4など整数倍であれば、縦方向と横方向とを混ぜて複数のタイルカーペットを敷設できるので好適である。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0065】
[使用材料]
マルチフィラメントa:塩基性基を有するポリアミド繊維(ナイロン6)からなる太さ約21.7dtexのフィラメントを54本撚り合わせた未染色のもの。このフィラメントaの白色含有率は、約0.3%であった。
マルチフィラメントb:塩基性基を有するポリアミド繊維(ナイロン6)からなる太さ約21.7dtexのフィラメントを54本撚り合わせた未染色のもの。このフィラメントbの白色含有率は、約0.1%であった。
マルチフィラメントc:塩基性基を有するポリアミド繊維(ナイロン6)からなる太さ約21.7dtexのフィラメントを54本撚り合わせた未染色のもの。このフィラメントcの白色含有率は、約0.05%であった。
マルチフィラメントd:塩基性基を有するポリアミド繊維(ナイロン6)からなる太さ約26.8dtexのフィラメントを54本撚り合わせた未染色のもの。このフィラメントdの白色含有率は、約0.05%であった。
なお、マルチフィラメントa乃至dは、染色濃さが同じもの(レギュラータイプ)を使用した。
【0066】
白色顔料含有糸A:2本のマルチフィラメントaを撚り合わせることによって、糸を作製した。この糸の太さは約2340dtexであり、白色含有率は、約0.3%であった。
白色顔料含有糸B:1本のマルチフィラメントaと1本のマルチフィラメントbを撚り合わせることによって、糸を作製した。この糸の太さは約2340dtexであり、白色含有率は、約0.2%であった。
白色顔料含有糸C:2本のマルチフィラメントbを撚り合わせることによって、糸を作製した。この糸の太さは約2340dtexであり、白色含有率は、約0.1%であった。
白色顔料含有糸D:1本のマルチフィラメントbと1本のマルチフィラメントcを撚り合わせることによって、糸を作製した。この糸の太さは約2340dtexであり、白色含有率は、約0.18%であった。
白色顔料含有糸E:2本のマルチフィラメントcを撚り合わせることによって、糸を作製した。この糸の太さは約2340dtexであり、白色含有率は、約0.05%であった。
白色顔料含有糸F:1本のマルチフィラメントcと1本のマルチフィラメントdを撚り合わせることによって、糸を作製した。この糸の太さは約2620dtexであり、白色含有率は、約0.05%であった。
白色顔料含有糸G:2本のマルチフィラメントdを撚り合わせることによって、糸を作製した。この糸の太さは約2900dtexであり、白色含有率は、約0.05%であった。
【0067】
[実施例1]
(パイル生機の作製)
前記白色顔料含有糸A乃至Dを、基布(幅4.2mの所定長さのポリエステルスパンボンド不織布。ユニチカ(株)製の商品名「マリックス」)の幅4mの範囲においてその長手方向にタフトすることにより、パイル生機を作製した。
作製にあたっては、1/10ゲージタフティング機を用い、目付け800g/m
2、パイル高2.5〜5.0mmのマルチレベルループにてタフトした。
白色顔料含有糸A乃至Dの配列は、AABABABBABBBBBBBBBCBBCBCBCCBCCCCCCCCCDCCDCDCDDCDDDDDを1つの列パターンとし、この列パターンをゲージ方向に繰り返したものである。なお、前記配列の「AABABABBABBBBBBBBBC…」は、白色顔料含有糸Aがゲージ方向に2列、それに隣接して白色顔料含有糸Bが1列、それに隣接して白色顔料含有糸Aが1列、それに隣接して白色顔料含有糸Bが1列、それに隣接して白色顔料含有糸Aが1列、それに隣接して白色顔料含有糸Bが2列、それに隣接して白色顔料含有糸Aが1列、それに隣接して白色顔料含有糸Bが9列、それに隣接して白色顔料含有糸Cが1列…を意味する。
【0068】
(パイル生機の染色)
前記パイル生機を連続染色機の長手方向に送りながら、その途中に幅方向に所定間隔を開けて配置された吐出ノズルを通じて、前記生機のパイル面に、グレーに染色できる酸性染料(HANTSMAN社製の商品名「Tectilon」)を噴射した。その後、スチームにより前記パイル生機を約4分間熱処理し、さらに、冷水で十分に濯いで染料を除去した。その後、十分に乾燥することによって、パイル生機の染色を完了した。
【0069】
(バッキング層の形成)
コンベア上に、補強シートとしてポリエステル樹脂製ネット(倉敷紡績株式会社製の商品名「クレネット」)が埋設された厚み約3.5mmのペースト状ポリ塩化ビニル樹脂からなるバッキング層を形成した。そのバッキング層の上に、前記染色済みの生機を載せた後、全体を加熱してポリ塩化ビニル樹脂を硬化させた。
このようにして得られたカーペットを、裁断機によってタフト方向及び幅方向に500mm角に裁断することにより、正方形状に形成することにより、実施例1のタイルカーペットを作製した。
【0070】
得られたタイルカーペットを平坦な床面上に流し貼りした後、それを少し離れたところから全体的に観察したところ、目地を視認できず、また、全体的に1つのカーペットのような外観となっていた。
【0071】
[実施例2]
白色顔料含有糸A乃至Dの配列のパターンを、AAABBBCCCDDDCCCBBBとし、この列パターンをゲージ方向に繰り返してタフトしたこと以外は、実施例1と同様にしてタイルカーペットを作製した。
【0072】
[実施例3]
白色顔料含有糸A及びBの2種の糸を用いたこと、その白色顔料含有糸A及びBの配列のパターンを、ABAABBBAABAAABBBABBAABとし、この列パターンをゲージ方向に繰り返してタフトしたこと以外は、実施例1と同様にしてタイルカーペットを作製した。
【0073】
[実施例4]
白色顔料含有糸A乃至Gの7種の糸を用いたこと、その白色顔料含有糸A乃至Gの配列のパターンを、AAABBBCCCDDDEEEFFFGGGとし、この列パターンをゲージ方向に繰り返してタフトしたこと以外は、実施例1と同様にしてタイルカーペットを作製した。
【0074】
[実施例5]
白色顔料含有糸A乃至Cの3種の糸を用いたこと、その白色顔料含有糸A乃至Cの配列のパターンを、AAABBBCCCABBCとし、この列パターンをゲージ方向に繰り返してタフトしたこと以外は、実施例1と同様にしてタイルカーペットを作製した。
【0075】
実施例1乃至5のカーペットのパイル面をそれぞれ目視で観察したところ、いずれも、全体的に自然なグラデーションが表出されていた。これは、隣接するパイル列が白色含有率が同じフィラメントを有する糸から構成されているためと考えられる。例えば、実施例2及び実施例3のタイルカーペットは、含有糸Aのパイル列と含有糸Bのパイル列が隣接されており、含有糸A及びBは白色含有率が同じフィラメントを有するので、タイルカーペット全体で、上記列パターンの繰り返し部分においても、自然なグラデーションが表出されていた。
【0076】
なお、実施例5の隣接するパイル列の一部分(含有糸Cのパイル列と含有糸Aのパイル列が隣接した部分)は、色調の変化が僅かに目立っていたものの、全体として違和感のない意匠を表出していた。
本発明のタイルカーペットは、その全体において全ての隣接するパイル列が同じ白色含有率のフィラメントを有する含有糸から構成されていることが好ましいが、一部にそうでない隣接するパイル列を有していてもよい。例えば、隣接するパイル列が同じ白色含有率のフィラメントを有する含有糸から構成されている隣接するパイル列は、全てのパイル列の本数を100とした場合、7割以上であることが好ましく、8割以上がより好ましく、9割以上が特に好ましい。最も好ましくは、実施例1乃至4のように、全ての隣接するパイル列が同じ白色含有率のフィラメントを有する含有糸から構成される(10割)。
本発明のタイルカーペットは多種の白色顔料含有糸を用いて作製でき、その数は限定されないが、実施例1乃至5のタイルカーペットを考慮すると、例えば、3種類〜10種類の白色顔料含有糸を用い、4種類〜8種類の白色含量含有糸を用いることが好ましい。この範囲であれば、糸の種類が多くなり過ぎることなく、自然なグラデーションで柄表現が豊かな意匠を表出させることができる。