(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-192263(P2018-192263A)
(43)【公開日】2018年12月6日
(54)【発明の名称】精度及び干渉に対する位置耐性を向上させるための近位位置センサの使用
(51)【国際特許分類】
A61B 34/20 20160101AFI20181109BHJP
【FI】
A61B34/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-96004(P2018-96004)
(22)【出願日】2018年5月18日
(31)【優先権主張番号】15/599,942
(32)【優先日】2017年5月19日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(57)【要約】
【課題】 遠位端センサと少なくとも1つの他のセンサとを有するツールの位置を決定するためのシステム及び方法を提供すること。
【解決手段】 この方法は、遠位端センサからデータを取得することと、取得データに対して収束を行うことであって、収束は取得データがじょう乱されているか否かを示す、収束を行うことと、取得データがじょう乱されていないことを収束が示す場合には、取得データを用いてツールの位置を計算することと、取得データがじょう乱されていることを収束が示す場合には、少なくとも1つの他のセンサから付加データを取得し、取得した付加データに対して収束を行い、取得した付加データを用いてツールの位置を計算することと、を含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端センサと少なくとも1つの他のセンサとを有するツールの位置を決定するための方法であって、
前記遠位端センサからデータを取得することと、
前記取得データに対して収束を行うことであって、前記収束は前記取得データがじょう乱されているか否かを示す、収束を行うことと、
前記取得データがじょう乱されていないことを前記収束が示す場合には、前記取得データを用いて前記ツールの位置を計算することと、
前記取得データがじょう乱されていることを前記収束が示す場合には、
前記少なくとも1つの他のセンサから付加データを取得し、
前記取得した付加データに対して前記収束を行い、
前記取得した付加データを用いて前記ツールの位置を計算することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記収束を行う工程が、
前記取得データと、同一位置における実際の磁界と、の差を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記収束を行う工程は、
前記差が所定の閾値未満である場合に収束が示されていると判定することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ツールの位置をディスプレイスクリーン上に表示することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記取得データと干渉する磁界を別のツールから放出することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記取得データが磁界データである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
遠位端センサと少なくとも1つの他のセンサとを有するツールの位置を決定するためのシステムであって、
ディスプレイ装置と、
プロセッサであって、
前記遠位端センサからデータを取得することと、
前記取得データに対して収束を行うことであって、前記収束は前記取得データがじょう乱されているか否かを示す、収束を行うことと、
前記取得データがじょう乱されていないことを前記収束が示す場合には、前記取得データを用いて前記ツールの位置を計算することと、
前記取得データがじょう乱されていることを前記収束が示す場合には、
前記少なくとも1つの他のセンサから付加データを取得し、
前記取得した付加データに対して前記収束を行い、
前記取得した付加データを用いて前記ツールの位置を計算することと、を行うように構成されているプロセッサと、を含む、システム。
【請求項8】
前記プロセッサが、
前記取得データと、同一位置における実際の磁界と、の差を計算するように更に構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記差が所定の閾値未満である場合に収束が示されていると判定するように更に構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
ディスプレイスクリーンを更に含み、前記プロセッサは、前記ツールの位置を前記ディスプレイスクリーン上に表示するように更に構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
別のツールを更に含み、前記プロセッサは、前記取得データと干渉する磁界を前記別のツールから取得するように更に構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記取得データが磁界データである、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
コンピュータソフトウェア製品であって、コンピュータプログラム命令が記憶された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含み、前記命令は、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、
遠位端センサと少なくとも1つの他のセンサとを有するツールからデータを取得する工程であって、前記データは前記遠位端センサから取得される、工程と、
前記取得データに対して収束を行う工程であって、前記収束は前記取得データがじょう乱されているか否かを示す、工程と、
前記取得データがじょう乱されていないことを前記収束が示す場合には、前記取得データを用いて前記ツールの位置を計算する工程と、
前記取得データがじょう乱されていることを前記収束が示す場合には、
前記少なくとも1つの他のセンサから付加データを取得し、
前記取得した付加データに対して前記収束を行い、
前記取得した付加データを用いて前記ツールの位置を計算する工程と、を行わせる、コンピュータソフトウェア製品。
【請求項14】
前記収束を行うことが、
前記取得データと、同一位置における実際の磁界と、の差を計算することを含む、請求項13に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項15】
前記収束を行うことは、
前記差が所定の閾値未満である場合に収束が示されていると判定することを更に含む、請求項14に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項16】
前記ツールの位置をディスプレイスクリーン上に表示することを更に含む、請求項13に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項17】
前記取得データと干渉する磁界を別のツールから放出することを更に含む、請求項13に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項18】
前記取得データが磁界データである、請求項13に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【0001】
遠位端センサと少なくとも1つの他のセンサとを有するツールの位置を決定するためのシステム及び方法が提示される。一実施形態では、本方法は、遠位端センサからデータを取得する工程と、取得データに対して収束を行う工程であって、収束は取得データがじょう乱されているか否かを示す工程と、取得データがじょう乱されていないことを収束が示す場合には、取得データを用いてツールの位置を計算する工程と、取得データがじょう乱されていることを収束が示す場合には、少なくとも1つの他のセンサから付加データを取得し、取得した付加データに対して収束を行い、取得した付加データを用いてツールの位置を計算する工程と、を行うことができる。
【0002】
一実施形態では、本方法は、取得データと、同一位置における実際の磁界と、の差を計算することもできる。一実施形態では、本方法は、差が所定の閾値未満である場合に収束が示されていると判定することもできる。一実施形態では、本方法は、ツールの位置をディスプレイスクリーン上に表示することもできる。
【0003】
一実施形態では、本方法は、取得データと干渉する磁界を別のツールから取得することもできる。一実施形態では、取得データは磁界データである。
【0004】
遠位端センサと少なくとも1つの他のセンサとを有するツールの位置を決定するためのシステムは、ディスプレイ装置と、プロセッサであって、遠位端センサからデータを取得することと、取得データに対して収束を行うことであって、収束は取得データがじょう乱されているか否かを示す、収束を行うことと、取得データがじょう乱されていないことを収束が示す場合には、取得データを用いてツールの位置を計算することと、取得データがじょう乱されていることを収束が示す場合には、少なくとも1つの他のセンサから付加データを取得し、取得した付加データに対して収束を行い、取得した付加データを用いてツールの位置を計算することと、を行うように構成されているプロセッサと、を含むことができる。
【0005】
一実施形態では、本システムは、取得データと、同一位置における実際の磁界と、の差を計算することもできる。一実施形態では、本システムは、差が所定の閾値未満である場合に収束が示されていると判定することもできる。一実施形態では、本システムは、ツールの位置を表示することができるディスプレイスクリーン又はモニタなどのディスプレイ装置を更に含むことができる。
【0006】
一実施形態では、本システムは別のツールを更に含むことができ、プロセッサは、取得データと干渉する磁界を他のツールから取得するように更に構成されている。一実施形態では、取得データは磁界データである。
【0007】
精度及び干渉に対する位置耐性を向上させるための近位位置センサを用いるためのコンピュータプログラム製品も提示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付の図面と共に一例として与えられる以下の説明から、より詳細な理解が可能になる。
【
図1】本発明の一実施形態によるシステムの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるツールの遠位端の断面図である。
【
図3】金属物体の存在下での本発明の別の実施形態によるツールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
医療用具、カテーテル、無線デバイス、有線デバイスなどのツールをナビゲートするために使用する磁気ナビゲーションシステムは、一般に、磁界を有するコイルを含み、各コイルはその独自の周波数を有する。システムはまた、空間内に1つ以上のセンサを含み、各センサは典型的に全てのコイル周波数を受信する。各コイルは、他のコイルに対して固有の周波数を有するので、センサによってどのコイルがどこにあるかを知ることができる。磁気システムは典型的に、特定のツールのナビゲーションに対して極めて正確であるが、本システムは他の磁気素子及び/又はデバイスからの干渉の影響を非常に受けやすい。例えば、システムによってナビゲートされている特定(第1)のツールとは異なる第2の磁気ツールを作動させるか又は使用すると、この第2のツールによって干渉が生じる。すなわち、第1のツールをセンサによってナビゲートしていて、第2のツールを第1のツールの付近に導入すると、第2のツールの磁界が第1のツールの磁界と干渉して、第1のツールの読み取り値が不正確になる。このような干渉及び不正確な読み取り値は、第1のツールのナビゲーションを中断するため問題である。そのため、第1のツールの位置を計算することはできるが、第1のツールの計算位置は有効ではない。第1のツールは、別の磁界からの干渉によって「じょう乱」されているため、第1のツールの正確な位置は分からない。代わりに、干渉が存在することだけが分かる。
【0010】
このような磁気ナビゲーションシステムの1つは、CARTO(商標)(Biosense Webster,Inc.(Diamond Bar,California)により製造)において見ることができる。磁気ナビゲーションシステムでは、磁界は通常、磁界発生器からなる位置バッドによって生成される。磁気ナビゲーションシステムでは、磁気位置検知を用いて、患者の器官内のツールの遠位端の位置座標を決定することができる。この目的のために、コンソール又は位置パッド内の駆動回路が、磁界発生器を駆動して、患者の体内に磁界を生成する。典型的には、磁界発生器はコイルを含み、これらコイルは、患者の胴体の下の、患者の体外の既知の位置に置かれる。これらのコイルは、診査すべき患者の器官を含む既定の作業体積内に磁界を生成する。ツールの遠位端内部の磁界センサが、これらの磁界に応答して電気信号を生成する。信号プロセッサが、通常は位置座標及び姿勢座標の両方を含む遠位端部の位置座標を決定するために、これらの信号を処理する。この位置検知の方法は、上述のCARTO(商標)システムに実装され、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に記載されており、その開示が全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0011】
特定のツール、例えばカテーテルを用いる処置の間、磁気ナビゲーションシステムによって、カテーテルの遠位センサの位置が、典型的には、ナビゲーションシステムにおいて可能になる主磁界を測定することによって決定される。これらの磁界測定値は典型的には特定のツールの遠位センサによって検知され、検知した測定値に対して収束が行われ、ツールは剛性がありツールに対する遠位センサの位置が既知であるためツールの位置(例えば位置及び向き)が決定される。磁気ナビゲーションシステムにおいて、磁界は典型的には、磁界発生器からなる位置バッドによって生成される。各磁界発生器は、特定の周波数で磁界を発する。一実施形態では、位置バッドの磁界発生器によって生成される位置磁界は、15の周波数を発する。
【0012】
しかし、遠位センサは、例えば金属干渉によってデータを受信することが困難な場合がある。任意の金属物体若しくは要素、又は任意の金属物体群が、干渉を生じさせる可能性があり、及び/又はセンサを不耐性にし、例えば、センサが不正確なデータをもたらすようにする可能性がある。遠位センサにおけるデータが収束しない場合、遠位センサの位置を決定することは困難であり、そのためカテーテルのナビゲーションが困難になる。
【0013】
遠位センサの干渉問題及び不耐性を克服する本発明の解決策が提示される。本発明のシステムにおいて、2つ以上の付加的な近位センサをツール、例えばカテーテルチューブ上に配置することができる。これらのセンサは、遠位センサに加えて、主磁界の強度を測定することができる。遠位センサの位置が収束しない場合、付加的な近位センサの1つ以上を用いてツールの位置を決定して、より正確なナビゲーションを可能にすることができる。特に、近位センサの方が遠位センサよりも収束が良好であるかどうかを確認することができる。近位センサの方が収束が良好な場合、これは、遠位センサが磁気じょう乱を受けている(本来は完全に収束する)ことを示す。後述するように、収束は、「等級」又は数値であって、例えば閾値と比較して、それが理論磁界のどのくらい近くまで収束するかを決定することができる「等級」又は数値である。
【0014】
したがって、本システムは、特定のセンサ(例えば、遠位センサ)からの磁気干渉があるときを検出し、他のセンサ(例えば、近位センサ)の1つ以上を選択して正確な測定を行う。したがって、本発明のシステムは、ツール上に複数のセンサを含み、収束をテストし、干渉を受けていないセンサに切り換えることができる。一実施形態では、収束は、受信した磁界の値から、特定の点又は位置にあると(較正に基づいて)想定される磁界の値を引いたものの二乗誤差(RMSE)の計算としてテストされる。
【0015】
一実施形態では、データは変更することもできる。一実施形態では、少なくとも9つの読み取り値の収束がカテーテルの位置を示し、9つの読み取り値の各々は異なる周波数に由来する。9よりも少ない又は多い読み取り値を用いることができる。典型的には9より多い読み取り値が可能であるので、付加的な読み取り値をテストして、これらの付加的な磁界のうちの1つ以上が特定の位置に合うかどうかを決定することができる。そうであれば、その位置を良好に判定することができる。初期読み取り値と組み合わせた付加的な読み取り値のうち磁気位置に合うものが十分でない場合、その磁界はじょう乱されていると考えられ、すなわち、干渉を受けていると考えられる。一実施形態では、収束のために少なくとも9つの読み取り値が必要である。典型的には、複数のセンサからデータを収集し、このデータが一緒になる傾向があるか又は特定の点に集まる傾向があるかどうかを決定することによって、収束が行われる。一実施形態では、共役勾配法が収束アルゴリズムとして使用される。
【0016】
遠位センサの干渉問題及び不耐性を克服する本発明の解決策が提示される。本発明のシステムでは、2つ以上の付加的な近位センサをツール、例えばカテーテルチューブ上に配置することができる。これらのセンサは、遠位センサに加えて、主磁界の強度を測定することができる。遠位センサの位置が収束しない場合、付加的な近位センサの1つ以上を用いてツールの位置を決定して、より正確なナビゲーションを可能にすることができる。したがって、本システムは、特定のセンサ(例えば、遠位センサ)からの磁気干渉があるときを検出し、他のセンサ(例えば、近位センサ)の1つ以上を選択して正確な測定を行う。したがって、本発明のシステムは、ツール上に複数のセンサを含み、収束をテストし、干渉を受けていないセンサに切り換えることができる。一実施形態では、収束は、受信した磁界の値から、特定の点又は位置にあると(較正に基づいて)想定される磁界の値を引いたものの二乗誤差(RMSE)の計算としてテストされる。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態によるシステムの概略図である。
図1に示すように、本システムは、医療ツール10(例えば、カテーテル、カテーテルチューブ等)、少なくともプロセッサ14及びディスプレイ又はモニタ16を含むワークステーション12、カテーテルハブ18、LPドライバ20、患者(頭部のみを示す)22、WiFiアンテナ24、RF同期Txアンテナ26、RF同期Rxアンテナ28、並びに位置バッド30を含むことができる。医療ツール10は、有線であっても無線であってもよい。一実施形態では、カテーテルハブ18は、ナビゲートされる全てのセンサ32、34、36からデータを受信し、LPドライバ20は位置パッド30に電流を流し、電流によって、磁界発生器が磁界を生成することが可能になる。一実施形態では、カテーテルハブ18は、ナビゲートされるツールから信号を受信するために、WiFiアンテナ24及びRF同期Rxアンテナ28を含む。一実施形態では、LPドライバ20は、WiFiアンテナ24と、RF同期Txアンテナ26と、を含んで、LPドライバ20が位置バッド30に電流を送ることを可能にする。
【0018】
磁界位置センサ32、34、36の位置を決定することにより、ツール10の遠位端の位置及び向きを確認することができる。ツール10は、電磁場又は音場のような非イオン化場によって位置決め可能であってよい。上記のように、ツール10の先端は、当該磁界用の送受信アンテナ(図示せず)を備え得る。非イオン化場用の送受信アンテナ(図示せず)を検査される患者に装着する。受信機又は送信機をこれらのアンテナに接続し、受信した磁界波を電気的位置又は画像信号に変換する。
【0019】
位置バッド30は、本発明の実施形態で使用され得る磁気トランスデューサの1つの種類であるコイル(図示せず)を含むことができる。「磁気トランスデューサ」とは、本特許出願の文脈において、また特許請求の範囲において、印加された電流に応答して磁界を発生させ、及び/又は、印加された磁界に応答して電気信号を出力する装置を意味するものである。本明細書の実施形態では、コイルを磁気トランスデューサとして使用しているが、代わりの実施形態では、当業者にとって明らかとなるように、他の種類の磁気トランスデューサを用いてもよい。
【0020】
ワークステーション12は、ディスプレイ16に取り外し可能に接続することができる。ワークステーション12はまた、1つ以上の医療ツール10が接続可能なカテーテルハブ18に取り外し可能に接続される。接続は、配線での接続若しくはWiFi接続、又はその両方であってよい。カテーテル又はENTツールのようなツール10は、患者の頭部22を介してナビゲートすることができる。ワークステーション12、LPドライバ20及びカテーテルハブ18は別個の部品として示されているが、それらは全て別個の部品であってもよいし、単一部品にまとめられていてもよいし、より少ない部品として様々に組み合わせられてもよい。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態によるツール10の遠位端の断面図である。
図2に示すように、ツール10は複数のセンサ32、34、36を有している(3つのセンサを示しているが、3つを超える又はそれ未満のセンサを用いてもよい)。各センサは、位置バッド30内のコイルから信号を受信することができる。また、コイルの1つ以上を、典型的には位置パッド30内に配置される磁界発生器によって生成される磁界に応答して信号を出力するために用いてもよく、そのためそれらは位置検知コイルとして機能することができる。プロセッサ14は、磁界発生器により規定される外部座標系でツール10の遠位端10の座標(位置及び配向)を測定するために、これら信号を処理する。
【0022】
一実施形態では、プロセッサ14は、ツール10上のセンサ32、34、36によって生成される信号データをカテーテルハブ18を介して受信する。プロセッサ14は、ツール10の位置を決定するために、これらの信号データを処理する。この処理には、上記のように収束計算の分析を含めることができる。一実施形態では、特定位置における較正された磁界と、同一位置における実際の磁界(例えば、ガウス/アンペアで)と、の差が所定の閾値よりも小さいときに、収束を見出すことができる。例えば、方程式||B_較正−B_実際||<閾値を用いて収束を決定できる。収束計算の結果は、ツール10の遠位端の計算された位置である。
【0023】
本発明は、体内でのツールの正確な位置決めを必要とする用途、特に、心臓及び身体のその他の器官の両方において侵襲性プローブを使用する治療及び診断用途において適用することができる。一例として、本発明のシステムにおいて実行される位置及び圧力検知のための装置及び技術は、カテーテル挿入シースの使用の誘導及び制御に応用することができる。もしシースの位置が適切に制御されず、その挿入において過剰な力が用いられると、シースが心臓壁又は血管組織を穿孔する可能性がある。この不測の事態は、シースの遠位先端の位置及びそこにかかる圧力を検知することにより防止できる。これに関して、本明細書で使用する「遠位先端」という用語には、プローブ本体に対して屈曲及び/又は変位する場合がある、プローブの遠位端におけるいかなる種類の構造体も含まれることを理解すべきである。
【0024】
図3は、金属物体、例えば外部金属ツール38の存在下でのツール10の概略図である。前述したように、この物体38に起因する干渉は、ツール10の遠位端に近接したときに顕著となる。この干渉を克服するために、近位センサ34、36からのデータを用いて収束を計算することができる。また、センサ32(遠位端センサ)からのデータは無視することができる。前述したように、収束計算の結果は、ツール10の遠位端の計算された位置である。この計算はまず、遠位端センサ32からのデータを用いて行う。しかし、遠位端センサ32において干渉が判定された場合は、ツール10上の他のセンサ34、36からのデータを用いて収束計算を行う。
【0025】
図4は、本発明の方法のフローチャートである。一実施形態では、本方法は次のように進行することができる。工程S1では、ツール10の遠位端センサ32からデータを取得する。この取得データを用いて収束アルゴリズムを行う。
【0026】
工程S2では、この取得データ(例えば、遠位端センサ32から)がじょう乱されているか(例えば干渉があるか)否かを判定する。遠位端センサ32からのデータがじょう乱されていない場合(S2=NO)、工程S3において、取得データを用いてツール10の位置を計算する。続けて工程S1で処理を行う。
【0027】
遠位端センサ32からのデータがじょう乱されている場合(S2=YES)、工程S4において、ツール10上の他のセンサ34、36からデータを取得する。工程S5では、他のセンサ34、36から取得したデータを分析し、非遠位端(非じょう乱)センサからのデータを用いて収束アルゴリズムを行う。工程S6では、非遠位端センサからの付加データを用いてツール10の位置を計算する。
【0028】
本明細書の開示に基づいて多くの変更例が可能であることを理解されたい。特徴及び要素が特定の組み合わせで上に説明されているが、各特徴又は要素は、他の特徴及び要素を用いずに単独で、又は他の特徴及び要素を用いて若しくは用いずに様々な組み合わせで使用されてよい。
【0029】
提供される方法は、汎用コンピュータ、プロセッサ、又はプロセッサコアにおける実施を含む。好適なプロセッサとしては、例として、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、従来型プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと関連する1つ以上のマイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)回路、任意のその他の種類の集積回路(IC)、及び/又は状態機械が挙げられる。このようなプロセッサは、処理されたハードウェア記述言語(HDL)命令及びネットリスト等のその他の中間データ(このような命令は、コンピュータ可読媒体に記憶することが可能である)の結果を用いて製造プロセスを構成することにより、製造できる。このような処理の結果は、本明細書に記載の方法を実施するプロセッサを製造するための半導体製造プロセスで後に使用されるマスクワークとすることができる。
【0030】
本明細書に提供される方法又はフローチャートは、汎用コンピュータ又はプロセッサによる実行のために非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に組み込まれるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアにおいて実施することができる。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体の例としては、ROM、ランダムアクセスメモリ(RAM)、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリデバイス、磁気媒体、例えば内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスク、磁気光学媒体、並びに光学媒体、例えば、CD−ROMディスク及びデジタル多用途ディスク(DVD)が挙げられる。
【0031】
〔実施の態様〕
(1) 遠位端センサと少なくとも1つの他のセンサとを有するツールの位置を決定するための方法であって、
前記遠位端センサからデータを取得することと、
前記取得データに対して収束を行うことであって、前記収束は前記取得データがじょう乱されているか否かを示す、収束を行うことと、
前記取得データがじょう乱されていないことを前記収束が示す場合には、前記取得データを用いて前記ツールの位置を計算することと、
前記取得データがじょう乱されていることを前記収束が示す場合には、
前記少なくとも1つの他のセンサから付加データを取得し、
前記取得した付加データに対して前記収束を行い、
前記取得した付加データを用いて前記ツールの位置を計算することと、を含む、方法。
(2) 前記収束を行う工程が、
前記取得データと、同一位置における実際の磁界と、の差を計算することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記収束を行う工程は、
前記差が所定の閾値未満である場合に収束が示されていると判定することを更に含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記ツールの位置をディスプレイスクリーン上に表示することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記取得データと干渉する磁界を別のツールから放出することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
【0032】
(6) 前記取得データが磁界データである、実施態様1に記載の方法。
(7) 遠位端センサと少なくとも1つの他のセンサとを有するツールの位置を決定するためのシステムであって、
ディスプレイ装置と、
プロセッサであって、
前記遠位端センサからデータを取得することと、
前記取得データに対して収束を行うことであって、前記収束は前記取得データがじょう乱されているか否かを示す、収束を行うことと、
前記取得データがじょう乱されていないことを前記収束が示す場合には、前記取得データを用いて前記ツールの位置を計算することと、
前記取得データがじょう乱されていることを前記収束が示す場合には、
前記少なくとも1つの他のセンサから付加データを取得し、
前記取得した付加データに対して前記収束を行い、
前記取得した付加データを用いて前記ツールの位置を計算することと、を行うように構成されているプロセッサと、を含む、システム。
(8) 前記プロセッサが、
前記取得データと、同一位置における実際の磁界と、の差を計算するように更に構成されている、実施態様7に記載のシステム。
(9) 前記プロセッサは、
前記差が所定の閾値未満である場合に収束が示されていると判定するように更に構成されている、実施態様8に記載のシステム。
(10) ディスプレイスクリーンを更に含み、前記プロセッサは、前記ツールの位置を前記ディスプレイスクリーン上に表示するように更に構成されている、実施態様7に記載のシステム。
【0033】
(11) 別のツールを更に含み、前記プロセッサは、前記取得データと干渉する磁界を前記別のツールから取得するように更に構成されている、実施態様7に記載のシステム。
(12) 前記取得データが磁界データである、実施態様7に記載のシステム。
(13) コンピュータソフトウェア製品であって、コンピュータプログラム命令が記憶された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含み、前記命令は、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、
遠位端センサと少なくとも1つの他のセンサとを有するツールからデータを取得する工程であって、前記データは前記遠位端センサから取得される、工程と、
前記取得データに対して収束を行う工程であって、前記収束は前記取得データがじょう乱されているか否かを示す、工程と、
前記取得データがじょう乱されていないことを前記収束が示す場合には、前記取得データを用いて前記ツールの位置を計算する工程と、
前記取得データがじょう乱されていることを前記収束が示す場合には、
前記少なくとも1つの他のセンサから付加データを取得し、
前記取得した付加データに対して前記収束を行い、
前記取得した付加データを用いて前記ツールの位置を計算する工程と、を行わせる、コンピュータソフトウェア製品。
(14) 前記収束を行うことが、
前記取得データと、同一位置における実際の磁界と、の差を計算することを含む、実施態様13に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(15) 前記収束を行うことは、
前記差が所定の閾値未満である場合に収束が示されていると判定することを更に含む、実施態様14に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【0034】
(16) 前記ツールの位置をディスプレイスクリーン上に表示することを更に含む、実施態様13に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(17) 前記取得データと干渉する磁界を別のツールから放出することを更に含む、実施態様13に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(18) 前記取得データが磁界データである、実施態様13に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【外国語明細書】