特開2018-192453(P2018-192453A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オルガノ株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2018192453-膜ろ過装置および膜ろ過方法 図000003
  • 特開2018192453-膜ろ過装置および膜ろ過方法 図000004
  • 特開2018192453-膜ろ過装置および膜ろ過方法 図000005
  • 特開2018192453-膜ろ過装置および膜ろ過方法 図000006
  • 特開2018192453-膜ろ過装置および膜ろ過方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-192453(P2018-192453A)
(43)【公開日】2018年12月6日
(54)【発明の名称】膜ろ過装置および膜ろ過方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20181109BHJP
   B01D 61/20 20060101ALI20181109BHJP
【FI】
   C02F1/44 C
   B01D61/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-100875(P2017-100875)
(22)【出願日】2017年5月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
【住所又は居所】東京都江東区新砂1丁目2番8号
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 佳介
【住所又は居所】東京都江東区新砂1丁目2番8号 オルガノ株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】國東 俊朗
【住所又は居所】東京都江東区新砂1丁目2番8号 オルガノ株式会社内
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006KA03
4D006KB13
4D006KC02
4D006KC13
4D006KC14
4D006KD08
4D006KD11
4D006KD12
4D006KD17
4D006KE30Q
4D006MC03
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC62
4D006MC63
4D006PA01
4D006PB04
4D006PB08
(57)【要約】
【課題】被処理水に凝集剤を添加して膜ろ過処理する膜ろ過方法において、混和槽を設けなくても、膜閉塞の発生を抑制し、良好な処理水質の処理水が得られる膜ろ過装置および膜ろ過方法を提供する。
【解決手段】被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加配管30と、凝集剤を添加した凝集剤添加水を、精密ろ過膜または限外ろ過膜の少なくとも1つを用いて膜ろ過処理するろ過装置14と、凝集剤添加配管30とろ過装置14との間に設けられ、凝集剤添加水が流通する流路34、および、流路34内に設けられ、モータ18により回転する撹拌翼20を有し、凝集剤添加水の撹拌を行うインラインミキサ12と、を備える膜ろ過装置1である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段と、
前記凝集剤を添加した凝集剤添加水を、精密ろ過膜または限外ろ過膜の少なくとも1つを用いて膜ろ過処理する膜ろ過手段と、
前記凝集剤添加手段と前記膜ろ過手段との間に設けられ、前記凝集剤添加水が流通する流路、および、前記流路内に設けられ、動力により回転する撹拌翼を有し、前記凝集剤添加水の撹拌を行う撹拌装置と、
を備えることを特徴とする膜ろ過装置。
【請求項2】
請求項1に記載の膜ろ過装置であって、
前記撹拌装置における撹拌強度が、0〜2300/sの範囲であることを特徴とする膜ろ過装置。
【請求項3】
請求項1に記載の膜ろ過装置であって、
前記撹拌装置における撹拌強度が、500〜1900/sの範囲であることを特徴とする膜ろ過装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜ろ過装置であって、
前記撹拌装置は、前記撹拌翼の回転数を制御する回転数制御装置をさらに備えることを特徴とする膜ろ過装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の膜ろ過装置であって、
前記凝集剤添加手段の前段に、前記被処理水に無機系の凝集助剤を添加する凝集助剤添加手段を備えることを特徴とする膜ろ過装置。
【請求項6】
被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加工程と、
前記凝集剤を添加した凝集剤添加水を、精密ろ過膜または限外ろ過膜の少なくとも1つを用いて膜ろ過処理する膜ろ過工程と、
を含み、
前記凝集剤添加工程と前記膜ろ過工程との間で、前記凝集剤添加水が流通する流路、および、前記流路内に設けられ、動力により回転する撹拌翼を有する撹拌装置によって前記凝集剤添加水の撹拌を行うことを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項7】
請求項6に記載の膜ろ過方法であって、
前記撹拌装置における撹拌強度が、0〜2300/sの範囲であることを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項8】
請求項6に記載の膜ろ過方法であって、
前記撹拌装置における撹拌強度が、500〜1900/sの範囲であることを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の膜ろ過方法であって、
前記撹拌装置は、前記撹拌翼の回転数を制御する回転数制御装置をさらに備えることを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の膜ろ過方法であって、
前記凝集剤添加工程の前段に、前記被処理水に無機系の凝集助剤を添加する凝集助剤添加工程を含むことを特徴とする膜ろ過方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水に凝集剤を添加して膜ろ過処理する膜ろ過装置および膜ろ過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜ろ過では、ろ過対象物質等がろ過膜の表面や細孔内に付着、堆積する膜閉塞(ファウリング)を軽減するために凝集剤を添加することがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような凝集膜ろ過法において、凝集剤を添加し、凝集条件を最適化しても膜閉塞は発生する。また、通常、凝集剤の添加、混和は混和槽を設けて行われているが、混和槽を設けて凝集剤の添加、混和を行うと、膜ろ過装置の設置面積やコストが増大する上、混和槽で圧力が開放されるため、水頭差を利用して被処理水をろ過装置へ供給する膜ろ過ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4517165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、被処理水に凝集剤を添加して膜ろ過処理する膜ろ過方法において、混和槽を設けなくても、膜閉塞の発生を抑制し、良好な処理水質の処理水が得られる膜ろ過装置および膜ろ過方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段と、前記凝集剤を添加した凝集剤添加水を、精密ろ過膜または限外ろ過膜の少なくとも1つを用いて膜ろ過処理する膜ろ過手段と、前記凝集剤添加手段と前記膜ろ過手段との間に設けられ、前記凝集剤添加水が流通する流路、および、前記流路内に設けられ、動力により回転する撹拌翼を有し、前記凝集剤添加水の撹拌を行う撹拌装置と、を備える膜ろ過装置である。
【0007】
前記膜ろ過装置において、前記撹拌装置における撹拌強度が、0〜2300/sであることが好ましい。
【0008】
前記膜ろ過装置において、前記撹拌装置における撹拌強度が、500〜1900/sの範囲であることが好ましい。
【0009】
前記膜ろ過装置において、前記撹拌装置は、前記撹拌翼の回転数を制御する回転数制御装置をさらに備えることが好ましい。
【0010】
前記膜ろ過装置において、前記凝集剤添加手段の前段に、前記被処理水に無機系の凝集助剤を添加する凝集助剤添加手段を備えることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加工程と、前記凝集剤を添加した凝集剤添加水を、精密ろ過膜または限外ろ過膜の少なくとも1つを用いて膜ろ過処理する膜ろ過工程と、を含み、前記凝集剤添加工程と前記膜ろ過工程との間で、前記凝集剤添加水が流通する流路、および、前記流路内に設けられ、動力により回転する撹拌翼を有する撹拌装置によって前記凝集剤添加水の撹拌を行う膜ろ過方法である。
【0012】
前記膜ろ過方法において、前記撹拌装置における撹拌強度が、0〜2300/sであることが好ましい。
【0013】
前記膜ろ過方法において、前記撹拌装置における撹拌強度が、500〜1900/sの範囲であることが好ましい。
【0014】
前記膜ろ過方法において、前記撹拌装置は、前記撹拌翼の回転数を制御する回転数制御装置をさらに備えることが好ましい。
【0015】
前記膜ろ過方法において、前記凝集剤添加工程の前段に、前記被処理水に無機系の凝集助剤を添加する凝集助剤添加工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、被処理水に凝集剤を添加して膜ろ過処理する膜ろ過方法において、混和槽を設けなくても、膜閉塞の発生を抑制し、良好な処理水質の処理水が得られる膜ろ過装置および膜ろ過方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る膜ろ過装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る膜ろ過装置の他の例を示す概略構成図である。
図3】比較例で用いた膜ろ過装置を示す概略構成図である。
図4】実施例および比較例における、撹拌強度G値(/s)と膜間の差圧上昇速度(kPa/d)との関係を示す図である。
図5】実施例および比較例における、撹拌強度G値(/s)と処理水の色度(度)およびTOC(mg/L)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明の実施形態に係る膜ろ過装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。膜ろ過装置1は、撹拌装置として、凝集剤添加水が流通する流路(混合室)34、動力としてのモータ18、および、流路34内に設けられ、モータ18により回転する撹拌翼20を有するインラインミキサ12と、膜ろ過手段として、精密ろ過膜または限外ろ過膜の少なくとも1つのろ過膜を有するろ過装置14とを備える。膜ろ過装置1は、被処理水槽10を備えてもよい。
【0020】
図1の膜ろ過装置1において、被処理水槽10の入口には被処理水配管22が接続され、被処理水槽10の出口とインラインミキサ12の流路34の入口とは、ポンプ16を介して被処理水供給配管24により接続されている。インラインミキサ12の流路34の出口とろ過装置14の入口とは、凝集剤添加水配管26により接続されている。ろ過装置14の出口には処理水配管28が接続されている。被処理水供給配管24におけるポンプ16とインラインミキサ12の流路34の入口との間には、凝集剤添加手段として、凝集剤添加配管30が接続されている。すなわち、凝集剤添加配管30とろ過装置14との間に動力付きのインラインミキサ12が設けられている。
【0021】
本実施形態に係る膜ろ過方法および膜ろ過装置1の動作について説明する。
【0022】
被処理水は、被処理水配管22を通して必要に応じて被処理水槽10に貯留された後、ポンプ16により被処理水供給配管24を通してインラインミキサ12に送液される。ここで、被処理水供給配管24におけるポンプ16とインラインミキサ12の流路34の入口との間において、凝集剤添加配管30を通して凝集剤が添加される(凝集剤添加工程)。凝集剤添加水は、インラインミキサ12の流路34において、動力のモータ18で回転駆動される撹拌翼20により、撹拌、混和されて凝集処理が行われる。凝集剤とともに、図示しないpH調整剤添加配管を通してpH調整剤が添加されてもよい(pH調整剤添加工程)。その後、凝集剤添加水は、凝集剤添加水配管26を通してろ過装置14に送液される。凝集剤添加水は、ろ過装置14において精密ろ過膜または限外ろ過膜の少なくとも1つを用いて膜ろ過処理される(膜ろ過工程)。膜ろ過処理された処理水は、処理水配管28を通して排出される。
【0023】
本実施形態に係る膜ろ過方法は、被処理水に凝集剤を添加して膜ろ過処理する膜ろ過方法において、凝集剤の注入点とろ過装置14をつなぐ配管の間に動力付のインラインミキサ12を設け、インラインミキサ12によって凝集剤と被処理水との混和を行い、膜ろ過処理を行う方法である。これにより、被処理水に凝集剤を添加して膜ろ過処理する膜ろ過方法において、混和槽を設けなくても、膜閉塞の発生が抑制され、良好な処理水質の処理水が得られる。また、膜ろ過装置の設置面積やコストを低減することができる。
【0024】
所定の時間、膜ろ過工程が行われた後、処理水または別途逆洗水を用いて、ろ過膜の逆洗を行ってもよいし、空気清浄を行ってもよい。これにより、膜閉塞の発生が抑制され、膜間差圧が回復し、膜の安定運転に寄与する。
【0025】
膜ろ過装置1において、被処理水は、被処理水槽10から水頭差を利用してインラインミキサ12へ送液されてもよい。これにより、ポンプ16を設けなくてもよく、ポンプの動力を低減することができる。
【0026】
凝集剤および必要な場合のpH調整剤の添加は、インラインミキサ12の手前の被処理水供給配管24において行われてもよいし、またはインラインミキサ12の流路34において行われてもよい。
【0027】
インラインミキサ12は、例えば、凝集剤添加水が流通する筒状等の流路(混合室)34を有し、動力としてモータ18と、撹拌手段として、流路(混合室)34内に設置され、モータ18で回転駆動される撹拌翼20とを有する。
【0028】
インラインミキサ12が備える動力は、撹拌手段を駆動するものであればよく、特に制限はないが、例えば、モータである。
【0029】
フロック形成における撹拌条件の指標の一つとして撹拌強度(G値)がある。G値は、一般に、下記の式で表される。混和槽における凝集剤によるフロック形成において、撹拌強度(G値)が小さ過ぎるとフロックの成長が遅くなり、大き過ぎるとせん断力によりフロックが破壊されてしまうことから、通常は、混和槽における撹拌強度を100〜300/s程度にする。しかし、本発明者らはインラインミキサを用いて撹拌強度をより大きくすることで、膜ろ過装置の差圧上昇速度を抑えることができることを見出した。また、インラインミキサによる撹拌強度が混和槽における撹拌速度と同等以下であっても、膜ろ過装置の差圧上昇速度を抑えることができることを見出した。インラインミキサ12における撹拌強度が0〜2300/sの範囲とすることが好ましく、160〜2300/sの範囲とすることがより好ましく、500〜1900/sの範囲とすることがさらに好ましく、500〜1300/sの範囲とすることが特に好ましい。インラインミキサ12における撹拌強度をこれらの範囲にすることによって、膜閉塞の発生がより抑制され、より良好な処理水質の処理水が得られる。
G=[ρCΣ(a)/2μV]1/2
ρ:水の密度(例えば、1.0×10kg/m、20℃)
C:撹拌翼の抵抗係数(=1.5)
:撹拌翼iの運動方向に直角な面積(m
:撹拌翼iの平均速度(m/s)
μ:水の粘性係数(例えば、1.0×10−3kg/m・s、20℃)
V:ミキサの容量(m
なお、上式において、水流が共回り運動を起こさないものとする。
【0030】
凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化第二鉄、ポリシリカ鉄(PSI)等の無機系凝集剤、ポリアクリルアミド等の有機系凝集剤が挙げられ、膜閉塞等の点から、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄およびポリシリカ鉄のうちの少なくとも1つを含む無機系凝集剤が好ましい。
【0031】
pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の酸や、水酸化ナトリウム等のアルカリが挙げられる。
【0032】
凝集処理における凝集剤添加水のpHは、凝集剤の金属イオンが水酸化物を生成するpHの範囲であることが好ましい。例えば凝集剤がポリ塩化アルミニウムの場合は、5〜8の範囲であることが好ましく、塩化第二鉄の場合は、3〜11の範囲であることが好ましい。凝集剤添加水のpHが前記pHの範囲から逸脱すると、凝集剤に含まれるアルミニウムや鉄がろ過膜の処理水にリークする場合がある。
【0033】
ろ過膜は、限外ろ過(UF)膜および精密ろ過(MF)膜のうち少なくとも1つである。ろ過膜としては、セラミック膜等の無機膜、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PS(ポリスルホン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の有機膜のいずれでもよい。また、ろ過膜は、外圧式、内圧式のいずれでもよい。空気清浄を行うことができる外圧式の有機膜が好ましい。
【0034】
凝集剤添加配管30の前段に、被処理水に無機系の凝集助剤を添加する凝集助剤添加手段として例えば凝集助剤添加配管または凝集助剤添加槽等を設けて、凝集剤の添加の前に無機系の凝集助剤が添加されてもよい(凝集助剤添加工程)。凝集剤が添加される前に無機系の凝集助剤が添加されることによって膜閉塞の発生が抑制され、膜の安定運転に寄与する。通常、凝集助剤は、凝集剤により生成した微細フロックを吸着架橋作用により、大きなフロックにして沈降分離を促進させるために使用され、被処理水に凝集剤を添加して膜ろ過処理する膜ろ過方法においては、一般的に高分子凝集剤が使用される。無機系の凝集助剤はろ過抵抗の要因となるので、通常は無機系の凝集助剤を添加することは行われなかったが、本発明者は、被処理水に凝集剤が添加される前に無機系の凝集助剤を添加することにより、予想外に膜閉塞の発生が抑制されることを見出した。これは、膜閉塞の主要因となる懸濁物質、TOC成分、凝集剤の金属イオン等が凝集助剤に吸着され、荷電的にろ過膜に付着しにくくなると考えられる。また、凝集助剤によってフロックが大きくなることによって、逆洗や空気洗浄等のときにろ過膜面に付着したフロックが洗浄水や洗浄空気等から受ける抵抗が大きくなり、ろ過膜面からはがれやすくなったためと考えられる。
【0035】
無機系の凝集助剤としては、ベントナイト、カオリン、活性ケイ酸、活性炭等の無機鉱物系の凝集助剤が挙げられ、ベントナイト、カオリン、活性ケイ酸および活性炭のうちの少なくとも1つを含むものであることが好ましい。凝集助剤としては、高分子ポリマー系のものも考えられるが、高分子ポリマー系では、上記のような膜閉塞発生の抑制効果はほとんど発揮されない。
【0036】
凝集助剤の体積平均粒径は、1〜50μmの範囲であることが好ましく、5〜20μmの範囲であることが好ましい。凝集助剤の体積平均粒径が1μm未満であると、凝集助剤が膜閉塞の原因になる場合があり、50μmを超えると、凝集不良を改善する効果が小さくなる場合がある。凝集助剤の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定法で測定することができ、例えば、島津サイエンス製SALD−200V ERを用いて測定することができる。
【0037】
凝集助剤の添加量は、ビーカーテスト、設備の試運転のときや実運転のときにおけるデータ採取等により適宜決定、調整されればよいが、5〜50mg/Lの範囲であることが好ましく、原水中の懸濁物質量との和が20〜100mg/Lの範囲となるように添加することが好ましい。凝集助剤の添加量が5mg/L未満であると、膜閉塞発生の抑制効果が小さくなる場合があり、50mg/Lを超えると、凝集助剤が濾過抵抗を生じ、安定運転を阻害する場合がある。
【0038】
凝集助剤の添加は、ろ過装置14におけるろ過膜の膜間差圧に基づき行われてもよい。例えば、ろ過膜の膜間差圧をモニタしながら、所定の膜間差圧の上限値に達したときに、凝集助剤の添加を行い、所定の膜間差圧の下限値にまで低下したときに、凝集助剤の添加を停止すればよい。また、凝集助剤の添加は、所定の時間間隔で所定の時間行ってもよい。例えば、凝集助剤の添加は、10時間に1回以下の頻度で1回あたり5時間以上行うことが好ましい。これらの他、ビーカーテスト、設備の試運転のときや実運転のときにおけるデータ採取等により適宜決定、調整することもできる。
【0039】
被処理水のTOC濃度は、0.5〜10mg/Lの範囲であることが好ましい。被処理水の懸濁物質(SS)濃度は、1〜100mg/Lの範囲であることが好ましい。また、被処理水は、TOC濃度が0.5〜10mg/Lの範囲、懸濁物質(SS)濃度が1〜20mg/Lの範囲のうちの少なくとも1つの範囲にあることが好ましい。被処理水のTOC濃度が0.5mg/Lよりも低い場合、膜閉塞が発生しにくいため、本実施形態に係る膜ろ過方法を適応する優位性が薄れる場合がある。被処理水のTOC濃度が10mg/Lよりも高い場合、本実施形態に係る膜ろ過方法を適応しても膜閉塞が発生しやすくなる。被処理水のSS濃度が低いほど、凝集の核となるSSがないため凝集処理が困難になる場合がある。凝集不良が発生すると有機物が十分に除去されなかったり、凝集剤自身が膜閉塞の原因となる場合がある。そのため、本実施形態に係る膜ろ過方法は、SS濃度が1〜20mg/Lの範囲で特に効果的である。
【0040】
被処理水は、例えば、河川水、工場排水等が挙げられる。
【0041】
被処理水が河川水等である場合、被処理水中のTOCやSSが変動する場合がある。この場合、膜ろ過装置は、インラインミキサ12のモータ18等の回転数を制御する回転数制御装置をさらに備えることが好ましい。
【0042】
例えば、図2に示す膜ろ過装置3は、図1の膜ろ過装置1の構成に加えて、回転数制御装置32を備える。膜ろ過装置3において、回転数制御装置32はインラインミキサ12の動力のモータ18に電気的接続等によって接続されている。回転数制御装置32を備えることによって、より効率的に凝集処理を行うことができる。
【0043】
回転数制御装置32によって、インラインミキサ12における撹拌強度が0〜2300/sとなるように制御することが好ましく、160〜2300/sとなるように制御することがより好ましく、500〜1900/sとなるように制御することがさらに好ましく、500〜1300/sとなるように制御することが特に好ましい。インラインミキサ12における撹拌強度をこれらの範囲に制御することによって、膜閉塞の発生がより抑制され、より良好な処理水質の処理水が得られる。
【0044】
回転数制御装置32は、インラインミキサ12のモータ18等の動力の回転数を制御することができるものであればよく、特に制限はないが、例えば、インバータである。
【実施例】
【0045】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
<実施例1、比較例1>
実施例1として、図2に示すような、凝集剤添加水が流通する流路(混合室)34、動力としてのモータ18、および、流路34内に設けられ、モータ18により回転する撹拌翼20を有するインラインミキサ12を用いた膜ろ過装置3(以下、インライン系)と、比較例1として、図3に示す、膜ろ過装置3のインラインミキサ12の代わりに撹拌装置60を有する混和槽52を設けた膜ろ過装置5(以下、凝集混和系)で比較試験を行った。図3の膜ろ過装置5において、被処理水槽50の入口には被処理水配管62が接続され、被処理水槽50の出口と混和槽52の入口とは、ポンプ56を介して被処理水供給配管64により接続されている。混和槽52の出口とろ過装置54の入口とは、ポンプ58を介して凝集剤添加水配管66により接続されている。ろ過装置54の出口には処理水配管68が接続されている。混和槽52には、凝集剤添加配管70が接続されている。
【0047】
実施例1と比較例1とは、撹拌方法以外の条件は同じで、フラックス1.5m/d、ろ過装置の回収率95%、凝集剤(PAC)注入率25mg/Lで運転した。実施例1では、インラインミキサ12に回転数制御装置32としてインバータを設け、回転数を変化させて(実施例1:撹拌強度G値(/s)=0,160,500,1300,1900,2300、比較例1:撹拌強度G値(/s)=160)通水した。インラインミキサは、マルチラインミキサー(佐竹化学機械工業株式会社製)を用いた。撹拌強度G値(/s)と膜間の差圧上昇速度(kPa/d)との関係を図4に示す。
【0048】
実施例1は従来の凝集混和系である比較例1と比べて、低い膜間差圧で推移した。撹拌装置を回転させなくても、撹拌装置の撹拌翼によって乱流が発生して凝集剤が撹拌されるため、比較例1と同等の差圧上昇速度であった。これらの結果から、インラインミキサによるインライン凝集膜ろ過の優位性が示された。
【0049】
インラインミキサの回転数(G値)による処理水質の違いを図5に示す。インラインミキサの回転数を変化させることで、処理水質を向上させることができることが確認された。インラインミキサを用いることによって、混和槽を設けなくても、凝集膜ろ過を行うことができた。インラインミキサにインバータを設け、回転数を制御することによって処理水質をより向上させることができた。
【0050】
このように実施例の方法により、被処理水に凝集剤を添加して膜ろ過処理する膜ろ過方法において、混和槽を設けなくても、膜閉塞の発生を抑制し、良好な処理水質の処理水が得られた。
【符号の説明】
【0051】
1,3,5 膜ろ過装置、10,50 被処理水槽、12 インラインミキサ、14,54 ろ過装置、16,56,58 ポンプ、18 モータ、20 撹拌翼、22,62 被処理水配管、24,64 被処理水供給配管、26,66 凝集剤添加水配管、28,68 処理水配管、30,70 凝集剤添加配管、32 回転数制御装置、34 流路、52 混和槽、60 撹拌装置。
図1
図2
図3
図4
図5