特開2018-192574(P2018-192574A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-192574(P2018-192574A)
(43)【公開日】2018年12月6日
(54)【発明の名称】ワーク把持装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20181109BHJP
【FI】
   B25J15/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-99082(P2017-99082)
(22)【出願日】2017年5月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 剛
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707DS01
3C707ES03
3C707ES10
3C707EU14
3C707EV07
3C707EV13
3C707EV20
3C707EV22
3C707EV23
3C707HS12
3C707NS09
(57)【要約】
【課題】少なくとも一部に板状部分を有する異なる形状のワークを把持することが可能なワーク把持装置を提供する。
【解決手段】ワーク把持装置10は、ワークWの板状部分Wpが挿入可能なスリット25を有する把持本体部14と、ワークWを位置決めするために、把持本体部14のスリット25内でワークWの板状部分Wpに係合するように構成された係合部28を有する位置決め機構16と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットに取り付けて使用され、少なくとも一部に板状部分を有するワークを把持するためのワーク把持装置であって、
前記ワークの前記板状部分が挿入可能なスリットを有する把持本体部と、
前記ワークを位置決めするために、前記把持本体部の前記スリット内で前記ワークの前記板状部分に係合するように構成された係合部を有する位置決め機構と、を備える、
ことを特徴とするワーク把持装置。
【請求項2】
請求項1記載のワーク把持装置において、
前記把持本体部は、基部と、前記基部から延出するとともに互いに対向した2つのアーム部とを有し、全体として細長い棒状に構成されており、
前記2つのアーム部間に前記スリットが形成されている、
ことを特徴とするワーク把持装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のワーク把持装置において、
前記2つのアーム部の少なくとも一方の先端は、くさび形状に形成されている、
ことを特徴とするワーク把持装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載のワーク把持装置において、
前記位置決め機構は、前記スリットの厚さ方向に可動な位置決めピンと、前記位置決めピンを駆動する位置決め用アクチュエータとを有する、
ことを特徴とするワーク把持装置。
【請求項5】
請求項4記載のワーク把持装置において、
前記アクチュエータは、前記スリットの厚さ方向に動作する出力部を有し、
前記位置決めピンは、前記把持本体部に設けられたピン挿入孔に挿入されるとともに、前記出力部の先端部に固定されている、
ことを特徴とするワーク把持装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のワーク把持装置において、
前記スリットに挿入された状態の前記ワークの動きを抑制するためのスタビライザを備え、
前記スタビライザは、前記ワークの縁部に当接可能な当接部と、前記当接部を移動させるアクチュエータとを有する、
ことを特徴とするワーク把持装置。
【請求項7】
請求項6記載のワーク把持装置において、
前記当接部は、前記スリット内に配置されている、
ことを特徴とするワーク把持装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載のワーク把持装置において、
前記位置決め機構は、前記スリットの厚さ方向に可動な位置決めピンを有し、
前記当接部は、前記位置決めピンよりも前記スリットの奥側に配置されている、
ことを特徴とするワーク把持装置。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のワーク把持装置において、
前記スリット内に突出した押圧部材を備え、
前記押圧部材により、前記スリット内に挿入された状態の前記ワークを、前記ワークの厚さ方向に押圧する、
ことを特徴とするワーク把持装置。
【請求項10】
請求項9記載のワーク把持装置において、
前記押圧部材は、前記位置決め機構の前記係合部よりも前記スリットの奥側に配置されている、
ことを特徴とするワーク把持装置。
【請求項11】
請求項9又は10記載のワーク把持装置において、
前記押圧部材は、ボールと、前記ボールを弾性的に付勢するバネとを有するボールプランジャである、
ことを特徴とするワーク把持装置。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載のワーク把持装置において、
前記押圧部材は、前記把持本体部に設けられた孔部に挿入されている、
ことを特徴とするワーク把持装置。
【請求項13】
請求項9〜11のいずれか1項に記載のワーク把持装置において、
前記スリットに挿入された状態の前記ワークの動きを抑制するためのスタビライザを備え、
前記スタビライザは、前記ワークの縁部に当接可能な当接部と、前記当接部を移動させるアクチュエータとを有し、
2つの前記押圧部材が、それらの間に前記当接部の進入を許容するように互いに離間して配置されている、
ことを特徴とするワーク把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに取り付けて使用されるワーク把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生産効率を向上させるため、生産ラインの各工程の少なくとも一部において、ロボットに作業を行わせる自動化が進められている。例えば、ワークを所定の場所から取り出して別の場所へと搬送するために、ロボットにはワーク把持装置(いわゆるロボットハンド)が取り付けられる(例えば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のワーク把持装置は、板金部品のような板状部材からなる異なる形状のワークを把持することができるものではなかった。例えば、特許文献1のワーク把持装置は、異なるサイズのワークを把持できるように構成されているものの、異なる形状のワークを把持できるようには構成されていない。
【0005】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、少なくとも一部に板状部分を有する異なる形状のワークを把持することが可能なワーク把持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、ロボットに取り付けて使用され、少なくとも一部に板状部分を有するワークを把持するためのワーク把持装置であって、前記ワークの前記板状部分が挿入可能なスリットを有する把持本体部と、前記ワークを位置決めするために、前記把持本体部の前記スリット内で前記ワークの前記板状部分に係合するように構成された係合部を有する位置決め機構と、を備える。
【0007】
上記のように構成されたワーク把持装置によれば、把持本体部のスリットにワークの板状部分が挿入されるように把持本体部を移動させるとともに、スリットに挿入されたワークを位置決め機構により位置決めすることにより、板状部分を有する異なる形状のワークを良好に把持することができる。従って、ワーク把持装置が取り付けられたロボットにより、ワークを自動的に搬送することができる。
【0008】
前記把持本体部は、基部と、前記基部から延出するとともに互いに対向した2つのアーム部とを有し、全体として細長い棒状に構成されており、前記2つのアーム部間に前記スリットが形成されていることが好ましい。
【0009】
これにより、把持本体部をコンパクトに構成することができる。
【0010】
前記2つのアーム部の少なくとも一方の先端は、くさび形状に形成されていることが好ましい。
【0011】
この構成により、複数のワークが重なり合って載置されている場合に、重なり合うワーク間に、先端にくさび形状を有するアーム部を挿入することにより、重なり合うワークから1つのワークを容易に把持することができる。
【0012】
前記位置決め機構は、前記スリットの厚さ方向に可動な位置決めピンと、前記位置決めピンを駆動する位置決め用アクチュエータとを有することが好ましい。
【0013】
この構成により、ワークに設けられた特定形状部(例えば、孔、切欠き、屈曲部等)に位置決めピンを係合させることにより、ワークを一層良好に位置決めすることができる。
【0014】
前記アクチュエータは、前記スリットの厚さ方向に動作する出力部を有し、前記位置決めピンは、前記把持本体部に設けられたピン挿入孔に挿入されるとともに、前記出力部の先端部に固定されていることが好ましい。
【0015】
これにより、良好な位置決め能力を有する位置決め機構を簡易構成で実現することができる。
【0016】
前記スリットに挿入された状態の前記ワークの動きを抑制するためのスタビライザを備え、前記スタビライザは、前記ワークの縁部に当接可能な当接部と、前記当接部を移動させるアクチュエータとを有することが好ましい。
【0017】
この構成により、ワーク把持装置で把持されたワークのグラツキを抑制することができる。
【0018】
前記当接部は、前記スリット内に配置されていることが好ましい。
【0019】
これにより、当接部はスリット内でワークに当接するため、コンパクトな構成でワークのグラツキを抑制することができる。
【0020】
前記位置決め機構は、前記スリットの厚さ方向に可動な位置決めピンを有し、前記当接部は、前記位置決めピンよりも前記スリットの奥側に配置されていることが好ましい。
【0021】
この構成により、位置決めピンと当接部との間にワークが保持されるため、ワーク把持の安定性が向上する。
【0022】
前記スリット内に突出した押圧部材を備え、前記押圧部材により、前記スリット内に挿入された状態の前記ワークを、前記ワークの厚さ方向に押圧することが好ましい。
【0023】
この構成により、ワーク把持の安定性が向上する。
【0024】
前記押圧部材は、前記位置決め機構の前記係合部よりも前記スリットの奥側に配置されていることが好ましい。
【0025】
この構成により、ワーク把持の安定性が一層向上する。
【0026】
前記押圧部材は、ボールと、前記ボールを弾性的に付勢するバネとを有するボールプランジャであることが好ましい。
【0027】
この構成により、把持本体部のスリットにワークが挿入される際の挿入抵抗が減少するため、ワークの把持をスムーズに行うことができる。
【0028】
前記押圧部材は、前記把持本体部に設けられた孔部に挿入されていることが好ましい。
【0029】
この構成により、把持本体部に押圧部材を容易に配置することができる。
【0030】
前記スリットに挿入された状態の前記ワークの動きを抑制するためのスタビライザを備え、前記スタビライザは、前記ワークの縁部に当接可能な当接部と、前記当接部を移動させるアクチュエータとを有し、2つの前記押圧部材が、それらの間に前記当接部の進入を許容するように互いに離間して配置されていることが好ましい。
【0031】
この構成により、当接部を押圧部材に干渉させることなく、当接部を押圧部材よりもスリットの先端側へと移動させることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のワーク把持装置によれば、少なくとも一部に板状部分を有する異なる形状のワークを把持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態に係るワーク把持装置の斜視図である。
図2】ワーク把持装置の一部省略断面図である。
図3】押圧部材及びその周辺の拡大断面図である。
図4図1におけるIV−IV線に沿った断面図である。
図5図5Aは、ワークの斜視図である。図5Bは、別の形状のワークの斜視図である。図5Cは、さらに別の形状のワークの斜視図である。
図6図5Aに示したワークをワーク把持装置により把持する場合の斜視説明図である。
図7図5Aに示したワークをワーク把持装置により把持する場合の断面説明図である。
図8図5Bに示したワークをワーク把持装置により把持する場合の斜視説明図である。
図9図5Cに示したワークをワーク把持装置により把持する場合の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係るワーク把持装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0035】
図1に示す本実施形態に係るワーク把持装置10は、ロボット12に取り付けられて使用される、いわゆるロボットハンドである。ワーク把持装置10が取り付けられたロボット12により、ワークW(図5A等参照)は、所定の場所(複数のワークWが収容又は載置されたパレット等)から取り出されて、別の場所(例えば、ワークWが組み付けられる他の部品)へと搬送される。
【0036】
ワークWが取り付けられる対象となるロボット12として、例えば、複数の関節を有するアームを備えた多関節アーム型ロボット、2軸又は3軸の直交するスライド軸を備えた直交ロボット(いわゆるガンドリーロボット)等が挙げられる。図1において、ワーク把持装置10は、ロボット12の先端部12aに取り付けられている。
【0037】
ワーク把持装置10は、少なくとも一部に平坦な板状部分Wp(図5A等参照)を有するワークWを把持するように構成されている。ワーク把持装置10は、ワークWの板状部分Wpが挿入可能なスリット25を有する把持本体部14と、ワークWを位置決めする位置決め機構16と、スリット25に挿入された状態のワークWの動きを抑制するためのスタビライザ18と、スリット25内に突出した押圧部材20とを備える。
【0038】
把持本体部14は、基部22と、基部22から延出するとともに互いに対向した2つのアーム部24a、24bとを有し、全体として細長い棒状に構成されている。2つのアーム部24a、24b間にスリット25が形成されている。スリット25は、把持本体部14の先端方向に開口するとともに、各アーム部24a、24bの幅方向(矢印C方向)の両側で開口する空間である。各アーム部24a、24bは、板状に構成されており、スリット25の厚さ方向(矢印A方向)に弾性変形可能である。
【0039】
各アーム部24a、24bの先端は、くさび形状に形成されている。以下、くさび形状に形成されたアーム部24a、24bの先端を「くさび形状部26」という。図2に示すように、本実施形態では、くさび形状部26は、アーム部24a、24bの延在方向(矢印B方向)に対して傾斜した2つの傾斜面26aを有するV字形状を有する。なお、くさび形状部26は、1つの傾斜面のみを有する形状であってもよい。くさび形状部26は、2つのアーム部24a、24bのうちいずれか一方のみに設けられてもよい。
【0040】
位置決め機構16は、ワークWを位置決めするために、把持本体部14のスリット25内でワークWの板状部分Wpに係合するように構成された係合部28を有する。具体的に、位置決め機構16は、スリット25の厚さ方向に可動な位置決めピン30と、位置決めピン30を駆動する位置決め用アクチュエータ32とを有する。位置決めピン30の先端部が、係合部28を構成している。
【0041】
位置決めピン30は、把持本体部14の一方のアーム部24aに設けられたピン挿入孔29に挿入されている。位置決めピン30は、細長い直線棒形状に形成されている。位置決めピン30は、スリット25の厚さ方向に変位可能に支持されている。具体的に、アーム部24aに支持部材31が固定され、支持部材31の内部に配置されたブッシュ27により、位置決めピン30がその軸方向に変位可能に支持されている。
【0042】
位置決め用アクチュエータ32は、支持部材31を介して把持本体部14に固定されている。位置決め用アクチュエータ32は、スリット25の厚さ方向に動作する出力部34を有する。位置決めピン30は、出力部34の先端部に固定されている。本実施形態において、位置決め用アクチュエータ32は、ピストンロッド36を有するシリンダユニット33である。出力部34は、シリンダユニット33のピストンロッド36である。ピストンロッド36の基端部にピストン38が設けられている。シリンダユニット33のシリンダボディ40内に形成された圧力室41に圧力流体(例えば、圧縮エア)が供給・排出されることにより、ピストンロッド36がその軸方向(矢印A方向)に動作する。
【0043】
ピストンロッド36の動作に伴って、位置決めピン30も同一方向に動作する。位置決め用アクチュエータ32の駆動により、位置決めピン30は、係合部28がスリット25内に進出する位置(進出位置)と、係合部28がスリット25から退避する位置(後退位置)とに動作可能である。図2では、係合部28はスリット25から退避した状態が示されている。なお、位置決め用アクチュエータ32は、シリンダユニット33に限らず、例えば、リニアモータであってもよい。
【0044】
スタビライザ18は、ワークWの縁部76(図5A等参照)に当接可能な当接部44と、アーム部24a、24bの延在方向(矢印B方向)に当接部44を移動させるアクチュエータ46とを有する。本実施形態では、アクチュエータ46は、基端部にピストン48が設けられたピストンロッド50と、ピストン48が軸方向にスライド可能に配置されたシリンダボディ52とを有するシリンダユニット47である。ピストンロッド50の先端部が、当接部44を構成している。なお、ピストンロッド50の先端部に固定された他の部材が、当接部44を構成してもよい。
【0045】
アクチュエータ46は、把持本体部14の基部22に固定されている。シリンダユニット47のシリンダボディ52内に形成された圧力室53に圧力流体(例えば、圧縮エア)が供給・排出されることにより、ピストンロッド50がその軸方向に動作する。ピストンロッド50は、把持本体部14のアーム部24a、24bの延在方向と平行に配置されている。
【0046】
当接部44は、スリット25内に配置されている。当接部44は、位置決めピン30よりもスリット25の奥側に配置されている。アクチュエータ46の駆動により、当接部44は、スリット25内で、スリット25の長さ方向(矢印B方向)に進退動作する。アクチュエータ46が最も伸長した際(ピストンロッド36が最も前進した際)、押圧部材20よりもスリット25の先端側に当接部44が到達するように、アクチュエータ46が構成及び配置されている。
【0047】
本実施形態では、ピストンロッド50の軸の延長線がスリット25内での係合部28の移動経路25aを通るようにピストンロッド36が配置されている。なお、ピストンロッド36の軸の延長線が係合部28の移動経路25aからずれた位置を通るように、ピストンロッド36が配置されていてもよい。なお、アクチュエータ46は、シリンダユニット47に限らず、例えば、リニアモータであってもよい。
【0048】
押圧部材20は、スリット25内に挿入された状態のワークWを、ワークWの厚さ方向に押圧するように構成されている。押圧部材20は、把持本体部14に固定されている。図1に示すように、本実施形態では、2つの押圧部材20が互いに離間して配置されている。
【0049】
図3に示すように、押圧部材20は、把持本体部14(一方のアーム部24a)に設けられた孔部56に挿入されている。孔部56は、一方のアーム部24aを厚さ方向に貫通するネジ孔であり、その内周部には雌ネジ57が形成されている。押圧部材20の外周部に形成された雄ネジ21と、孔部56の雌ネジ57とが螺合している。押圧部材20には、把持本体部14の外面側で、固定用ナット58が螺合している。本実施形態では、押圧部材20は、位置決め機構16の係合部28よりもスリット25の奥側に配置されている。
【0050】
押圧部材20は、ボール60と、ボール60を弾性的に付勢するバネ62と、ボール60及びバネ62を収容するハウジング64とを有するボールプランジャ66である。ボールプランジャ66の軸は、スリット25の厚さ方向(矢印A方向)と平行である。初期状態で、ボール60の一部は、ハウジング64の先端開口から突出し、スリット25に露出している。ハウジング64の内部方向への所定以上の力がボール60に作用すると、バネ62の弾性力に抗してボール60がハウジング64の内部方向へと移動する。
【0051】
図4に示すように、2つの押圧部材20は、それらの間に当接部44の進入を許容するように互いに離間して配置されている。具体的に、2つの押圧部材20は、スリット25の厚さ方向及び把持本体部14の延在方向(矢印B方向)に直交する方向(矢印C方向)に互いに離間して配置されている。ピストンロッド36の前進時、当接部44は、2つの押圧部材20間を通過して、押圧部材20よりもスリット25の先端側まで移動可能である。
【0052】
次に、上記のように構成された本実施形態に係るワーク把持装置10の作用を説明する。
【0053】
以下では、異なる形状のワークWとして、図5A図5Cに示すワークW(以下、特定のワークWに言及する場合には、それぞれ「ワークW1」、「ワークW2」、「ワークW3」という)を例示し、各ワークWをワーク把持装置10により把持する場合を説明する。ワークW1、W2、W3は、例えば板金加工により形成された板状部材である。図示されるように、ワークW1、W2、W3は、平坦な板状部分Wpを少なくとも有するものであるが、板状部分Wp以外の部分Wr(例えば、ボルト68)を有していてもよい。当該部分Wrは、ボルト68に限らず、ブロック状部分であってもよい。板状部分Wpの板厚は、例えば、0.8〜2.2mmである。
【0054】
図5Aに示すワークW1は、板状部分Wpを厚さ方向に貫通する貫通孔70を有する。図5Bに示すワークW2は、板状部分Wpの縁部76に切欠き72を有する。図5Cに示すワークW3は、板状部分WpにV字状の屈曲部74を有する。
【0055】
ワークW1を把持する場合、図6及び図7に示すように、ワーク把持装置10は、ワークWの貫通孔70を利用して把持を行うことができる。この場合、具体的には、まず、ワークWの板状部分Wpが把持本体部14のスリット25内に挿入されるように、ロボット12(図1参照)によりワーク把持装置10を移動させる。その際、ワークW1の板状部分Wpが、押圧部材20とアーム部24bとの間に挟持される。板状部分Wpの厚みによっては、図7のように、ワークW1の挟持に伴い、アーム部24a、24bが弾性変形して若干だけ外側に撓む。
【0056】
次に、位置決め用アクチュエータ32を駆動して、位置決めピン30を後退位置から前進位置へと移動させる。位置決めピン30の移動に伴い、位置決めピン30の先端部に設けられた係合部28がスリット25内へと進出し、ワークW1に設けられた貫通孔70に位置決めピン30が挿入される。これにより、位置決めピン30がワークW1に係合する。
【0057】
次に、スタビライザ18の当接部44を移動させ、当接部44をワークW1の縁部76に当接させる。具体的には、アクチュエータ46のピストンロッド50を前進させ、ピストンロッド50の先端部に設けられた当接部44を、ワークW1の厚み方向と垂直な方向(矢印B方向)から、ワークW1の縁部76に押し付ける。この結果、ワークW1のうち縁部76と貫通孔70との間の部分が、当接部44と係合部28とによって保持される。
【0058】
このようにワーク把持装置10がワークW1を把持したら、ワーク把持装置10が取り付けられたロボット12(図1参照)により、ワークW1を所定場所へと搬送する。その搬送先で、位置決めピン30が後退してワークW1に対する係合が解除されてから、ワークW1が搬送先に引き渡される。その際、搬送先でワークW1が相手部品や治具等により把持される場合には、位置決めピン30を後退させた状態でワーク把持装置10をワークW1から退避させる方向に移動させることにより、スリット25からワークW1が離脱する。すなわち、ワークW1に対する把持が解除される。なお、搬送先でワークW1が相手部品や治具等により把持される場合には、ピストンロッド50をワークW1から退避させた後に、位置決めピン30をワークW1から退避させてもよい。
【0059】
なお、搬送先でワークW1が相手部品や治具等により把持されない場合には、ピストンロッド50(当接部44)によりワークW1を押すことで、ワークW1をスリット25から離脱させてもよい。
【0060】
ワークW2を把持する場合、図8に示すように、ワーク把持装置10は、ワークW2の切欠き72を利用して把持及び搬送を行うことができる。その場合のワーク把持装置10の動作は、貫通孔70に位置決めピン30を挿入することに代えて、切欠き72に位置決めピン30を挿入すること以外は、ワークW1を把持する場合の動作と概ね同様である。
【0061】
ワークW3を把持する場合、図9に示すように、例えば、ワークW3のうち、V字状の屈曲部74の近傍の端部78を把持することができる。この場合でも、位置決めピン30の係合部28をワークW3に押し付けるとともに、スタビライザ18の当接部44をワークW3の縁部76に押し付けることにより、ワークW3を良好に把持することができる。なお、可能である場合には、屈曲部74の凹部側(谷側)に、位置決め機構16の係合部28を係合させてもよい。
【0062】
この場合、本実施形態に係るワーク把持装置10は、以下の効果を奏する。
【0063】
図1及び図2に示すように、ワーク把持装置10は、ワークWの板状部分Wpが挿入可能なスリット25を有する把持本体部14と、ワークWを位置決めするために、把持本体部14のスリット25内でワークWの板状部分Wpに係合するように構成された係合部28を有する位置決め機構16とを備える。このため、把持本体部14のスリット25にワークWの板状部分Wpが挿入されるように把持本体部14を移動させるとともに、スリット25に挿入されたワークWを位置決め機構16により位置決めすることにより、板状部分Wpを有する異なる形状のワークW(ワークW1、W2、W3)を良好に把持することができる。従って、ワーク把持装置10が取り付けられたロボット12により、異なる形状のワークWを自動的に搬送することができる。
【0064】
把持本体部14は、基部22と、基部22から延出するとともに互いに対向した2つのアーム部24a、24bとを有し、全体として細長い棒状に構成されている。そして、2つのアーム部24a、24b間にスリット25が形成されている。これにより、把持本体部14をコンパクトに構成することができる。
【0065】
2つのアーム部24a、24bの少なくとも一方の先端は、くさび形状に形成されている。この構成により、複数のワークWが重なり合って載置されている場合に、重なり合うワークW間に、先端にくさび形状を有するアーム部24a(又はアーム部24b)を挿入することにより、重なり合うワークWから1つのワークWを容易に把持することができる。
【0066】
図2に示すように、位置決め機構16は、スリット25の厚さ方向に可動な位置決めピン30と、位置決めピン30を駆動する位置決め用アクチュエータ32とを有する。この構成により、ワークWに設けられた特定形状部(例えば、貫通孔70、切欠き72、屈曲部74等)に位置決めピン30を係合させることにより、ワークWを一層良好に位置決めすることができる。
【0067】
位置決め用アクチュエータ32は、スリット25の厚さ方向に動作する出力部34を有する。そして、位置決めピン30は、把持本体部14に設けられたピン挿入孔29に挿入されるとともに、出力部34の先端部に固定されている。これにより、良好な位置決め能力を有する位置決め機構16を簡易構成で実現することができる。
【0068】
ワーク把持装置10は、スリット25に挿入された状態のワークWの動きを抑制するためのスタビライザ18を備える。スタビライザ18は、ワークWの縁部76に当接可能な当接部44と、当接部44を移動させるアクチュエータ46とを有する。この構成により、ワーク把持装置10で把持されたワークWのグラツキ(係合部28を中心とするワークWの揺動)を抑制することができる。
【0069】
当接部44は、スリット25内に配置されている。これにより、当接部44はスリット25内でワークWに当接するため、コンパクトな構成でワークWのグラツキを抑制することができる。
【0070】
当接部44は、位置決めピン30よりもスリット25の奥側に配置されている。この構成により、位置決めピン30と当接部44との間にワークWが保持されるため、ワーク把持の安定性が向上する。
【0071】
ワーク把持装置10は、スリット25内に突出した押圧部材20を備える。そして、ワーク把持装置10は、押圧部材20により、スリット25内に挿入された状態のワークWを、ワークWの厚さ方向に押圧する。この構成により、ワーク把持の安定性が向上する。
【0072】
押圧部材20は、位置決め機構16の係合部28よりもスリット25の奥側に配置されている。この構成により、ワーク把持の安定性が一層向上する。
【0073】
図3に示すように、押圧部材20は、ボール60と、ボール60を弾性的に付勢するバネ62とを有するボールプランジャ66である。この構成により、把持本体部14のスリット25にワークWが挿入される際の挿入抵抗が減少するため、ワークWの把持をスムーズに行うことができる。
【0074】
押圧部材20は、把持本体部14に設けられた孔部56に挿入されている。この構成により、把持本体部14に押圧部材20を容易に配置することができる。
【0075】
図4に示すように、2つの押圧部材20が、それらの間に当接部44の進入を許容するように互いに離間して配置されている。この構成により、当接部44を押圧部材20に干渉させることなく、当接部44を押圧部材20よりもスリット25の先端側へと移動させることができる。
【0076】
なお、上述した実施形態では、位置決め機構16として、位置決めピン30及び位置決め用アクチュエータ32を有する構成を例示したが、位置決め機構16の構成はこれに限らない。例えば、変形例に係る位置決め機構16として、把持本体部14のスリット25側の内面に突起が設けられてもよい。この場合、当該突起が、ワークWに係合する係合部28として機能する。
【0077】
押圧部材20は1つだけ設けられてもよい。押圧部材20は、ワーク把持装置10に要求される仕様によっては、なくしてもよい。
【0078】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0079】
10…ワーク把持装置 12…ロボット
14…把持本体部 16…位置決め機構
25…スリット 28…係合部
W、W1、W2、W3…ワーク Wp…板状部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9