【解決手段】 基板111を含む支持体1と、電極層3と、主走査方向xに配列された複数の発熱部40を含み、電極層3の少なくとも一部を覆う抵抗体層4と、を備えるサーマルプリントヘッドA1であって、抵抗体層4は、主走査方向xに延びる帯状であり、副走査方向y両側に基板111が広がる方向に対して起立した一対の抵抗体側面41を有する。
前記電極層は、各々が副走査方向に延びており且つ主走査方向に互いに離間配置された複数の共通電極帯状部と、各々が副走査方向に延びており且つ隣り合う前記共通電極帯状部の間に各別に配置された複数の個別電極帯状部と、を有し、
前記抵抗体層は、前記複数の共通電極帯状部および前記複数の個別電極帯状部を主走査方向に横断するように覆っている、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
前記抵抗体層は、前記一対の抵抗体側面に対して前記基板側に繋がり且つ前記基板に近づくほど副走査方向外方に位置する形状である一対の抵抗体傾斜面を有する、請求項2ないし6のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
前記共通電極帯状部および前記個別電極帯状部の少なくともいずれかの主走査方向両側に隣接し且つ前記抵抗体層と同じ材質からなるとともに前記基板に近づくほど主走査方向外方に位置する形状である被覆体傾斜面を有する被覆体をさらに備える、請求項7または8に記載のサーマルプリントヘッド。
前記支持体は、前記基板と前記電極層および前記抵抗体層との間に介在するグレーズ層をさらに備える、請求項1ないし10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
前記除去工程においては、副走査方向に離間した一対の貫通部を有するマスクを用いて、当該一対の貫通部を前記抵抗体ペーストに対して主走査方向に移動させながら、当該一対の貫通部から投射材を吹き付ける、請求項14に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
前記乾燥工程の後、前記抵抗体層形成工程の前に、ショットブラストにより前記抵抗体ペーストの一部を凹ませる凹部形成工程をさらに備える、請求項14または15に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、抵抗体層をより均一に発熱させることが可能なサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、基板を含む支持体と、電極層と、主走査方向に配列された複数の発熱部を含み、前記電極層の少なくとも一部を覆う抵抗体層と、を備えるサーマルプリントヘッドであって、前記抵抗体層は、主走査方向に延びる帯状であり、副走査方向両側に前記基板が広がる方向に対して起立した一対の抵抗体側面を有する。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記電極層は、各々が副走査方向に延びており且つ主走査方向に互いに離間配置された複数の共通電極帯状部と、各々が副走査方向に延びており且つ隣り合う前記共通電極帯状部の間に各別に配置された複数の個別電極帯状部と、を有し、前記抵抗体層は、前記複数の共通電極帯状部および前記複数の個別電極帯状部を主走査方向に横断するように覆っている。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗体層は、副走査方向において前記一対の抵抗体側面の間に位置する天面を有する。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記天面は、前記基板から離間する側に膨出する曲面状である。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記天面は、前記基板側に凹む凹部を有する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記天面は、平坦な面である。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗体層は、前記一対の抵抗体側面に対して前記基板側に繋がり且つ前記基板に近づくほど副走査方向外方に位置する形状である一対の抵抗体傾斜面を有する。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗体傾斜面の前記基板の厚さ方向における寸法は、前記抵抗体側面の前記厚さ方向における寸法よりも小である。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記共通電極帯状部および前記個別電極帯状部の少なくともいずれかの主走査方向両側に隣接し且つ前記抵抗体層と同じ材質からなるとともに前記基板に近づくほど主走査方向外方に位置する形状である被覆体傾斜面を有する被覆体をさらに備える。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記被覆体は、前記基板の厚さ方向視において前記抵抗体層に繋がる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記支持体は、前記基板と前記電極層および前記抵抗体層との間に介在するグレーズ層をさらに備える。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記グレーズ層は、前記抵抗体層と前記基板との間に位置し且つ前記基板から離間する側に膨出する膨出部を含む。
【0018】
本発明の第2の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドの製造方法は、基板を含む支持体に、導電性ペーストを印刷する導電性ペースト印刷工程と、前記導電性ペーストを焼成することにより電極層を形成する電極層形成工程と、前記電極層の少なくとも一部を覆うように抵抗体ペーストを印刷する抵抗体ペースト印刷工程と、前記抵抗体ペーストを乾燥させる乾燥工程と、乾燥した前記抵抗体ペーストの副走査方向両側部分を除去する除去工程と、前記抵抗体ペーストを焼成することにより抵抗体層を形成する抵抗体層形成工程と、を備えることを特徴としている。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記除去工程においては、ショットブラストを用いる。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記除去工程においては、副走査方向に離間した一対の貫通部を有するマスクを用いて、当該一対の貫通部を前記抵抗体ペーストに対して主走査方向に移動させながら、当該一対の貫通部から投射材を吹き付ける。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記乾燥工程の後、前記抵抗体層形成工程の前に、ショットブラストにより前記抵抗体ペーストの一部を凹ませる凹部形成工程をさらに備える。
【0022】
本発明の第3の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドの製造方法は、抵抗体ペーストを中間支持体に印刷する抵抗体ペースト印刷工程と、前記中間支持体に印刷された前記抵抗体ペーストの溶媒を前記中間支持体によって吸収する溶媒吸収工程と、前記中間支持体に印刷された前記抵抗体ペーストを、支持体に形成された電極層の少なくとも一部を覆うように転写する転写工程と、転写された前記抵抗体ペーストを焼成することにより抵抗体層を形成する抵抗体層形成工程と、を備えることを特徴としている。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗体ペースト印刷工程においては、スクリーン印刷を用いる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、抵抗体層をより均一に発熱させることができる。
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0028】
図1〜
図12は、本発明に係るサーマルプリントヘッドの一例を示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA1は、支持体1、電極層3、抵抗体層4、保護層5、駆動IC71、封止樹脂72、コネクタ73、配線基板74および放熱部材75を備えている。サーマルプリントヘッドA1は、たとえばバーコードシートやレシートを作成するためにプラテンローラ81によって押圧される感熱紙82に対する印刷を施すプリンタに組み込まれるものである。なお、理解の便宜上、
図1、
図3〜
図5においては、保護層5を省略している。これらの図においては、主走査方向xおよび副走査方向yと基板11の厚さ方向zを座標基準として用いている。
【0029】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す平面図である。
図2は、
図1のII−II線に沿う断面図である。
図3は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部平面図である。
図4は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。
図5は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。
図6は、
図5のVI−VI線に沿う要部断面図である。
図7は、
図5のVI−VI線に沿う要部拡大断面図である。
図8は、
図5のVIII−VIII線に沿う要部断面図である。
図9は、
図5のVIII−VIII線に沿う要部拡大断面図である。
図10は、
図5のX−X線に沿う要部断面図である。
図11は、
図5のXI−XI線に沿う要部断面図である。
図12は、
図5のXI−XI線に沿う要部拡大断面図である。
【0030】
支持体1は、電極層3、抵抗体層4および保護層5を支持するものである。支持体1は、基板11およびグレーズ層12からなる。
【0031】
基板11は、たとえばAlN、Al
2O
3などのセラミックスからなり、たとえばその厚さが0.6〜1.0mm程度とされている。
図1に示すように、基板11は、主走査方向xに長く延びる長矩形状とされている。
図2に示すように、たとえばガラスエポキシ樹脂からなる基材層とCuなどからなる配線層とが積層された配線基板74が、支持体1に隣接して設けられた構造としてもよい。基板11の下面には、たとえばAlなどの金属からなる放熱部材75が設けられている。配線基板74を有する構成においては、たとえば放熱部材75上に基板11および配線基板74が隣接して配置され、基板11上の電極層3と配線基板74の配線(またはこの配線に接続されたIC)とが、たとえばワイヤボンディングなどにより接続される。さらに、配線基板74に、
図1に示すコネクタ73を設けてもよい。
【0032】
グレーズ層12は、基板11上に形成されており、たとえば非晶質ガラスなどのガラス材料からなる。このガラス材料の軟化点は、たとえば800〜850℃である。グレーズ層12は、ガラスペーストを厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。本実施形態においては、基板11の図中上面すべてがグレーズ層12によって覆われている。また、本実施形態においては、グレーズ層12は、膨出部121および補助部122を有する。
【0033】
膨出部121は、主走査方向xに延びる帯状であり、図中上方に若干膨出した断面円弧形状である。抵抗体層4は、膨出部121上に形成されている。膨出部121は、抵抗体層4の発熱部40から発せられた熱が、基板11へと過度に伝達されることを抑制するためのものである。
【0034】
補助部122は、基板11のうち膨出部121から露出した部分を覆うように形成されている。膨出部121は、相対的に粗面である基板11の表面を覆うことにより、電極層3を形成するのに適した平滑面を構成するためのものである。
【0035】
膨出部121および補助部122は、たとえばガラスからなる。かかるガラスの具体的選定は、膨出部121の蓄熱機能および補助部122の平滑機能を十分に発揮させることを鑑みてなされる。なお、補助部122の材料として、膨出部121の材料となるガラスペーストよりも低粘度のガラスペーストを用いることが好ましい。
【0036】
電極層3は、抵抗体層4に通電するための経路を構成するためのものであり、導電性材料によって形成されている。電極層3の材質は特に限定されず、たとえば添加元素としてロジウム、バナジウム、ビスマス、シリコンなどが添加されたAuまたはPtからなる。本実施形態においては、電極層3の主成分は、Auである。電極層3は、有機化合物を含むレジネートAuのペーストを厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。このような電極層3は、焼成過程を経ることにより、ガラス粒子を含む。電極層3は、複数のAu層を積層させることによって構成してもよい。電極層3の厚さは、たとえば0.4μm〜1.0μm程度である。
【0037】
図3に示すように、電極層3は、共通電極33および複数の個別電極36を有している。
【0038】
共通電極33は、複数の共通電極帯状部34および共通電極連結部35を有している。共通電極連結部35は、基板11の副走査方向y下流側端寄りに配置されており、主走査方向xに延びる帯状である。複数の共通電極帯状部34は、各々が共通電極連結部35から副走査方向yに延びており、主走査方向xに等ピッチで配列されている。また、本実施形態においては、
図4に示すように、共通電極連結部35には、Ag層351が積層されている。Ag層351は、共通電極連結部35の抵抗値を低減させるためのものである。
【0039】
複数の個別電極36は、抵抗体層4に対して部分的に通電するためのものであり、共通電極33に対して逆極性となる部位である。個別電極36は、抵抗体層4から駆動IC71に向かって延びている。複数の個別電極36は、主走査方向xに配列されており、各々が個別電極帯状部38、個別電極連結部37およびボンディング部39を有している。
【0040】
各個別電極帯状部38は、副走査方向yに延びた帯状部分であり、共通電極33の隣り合う2つの共通電極帯状部34の間に位置している。個別電極36の個別電極帯状部38と共通電極33の共通電極帯状部34とは、幅がたとえば25μm以下とされており、隣り合う個別電極36の個別電極帯状部38と共通電極33の共通電極帯状部34との間隔はたとえば40μm以下となっている。
【0041】
個別電極連結部37は、個別電極帯状部38から駆動IC71に向かって延びる部分であり、そのほとんどが副走査方向yに沿った部位および副走査方向yに対して傾斜した部位を有している。個別電極連結部37のほとんどの部位は、その幅がたとえば40μm以下とされており、隣り合う個別電極連結部37どうしの間隔はたとえば40μm以下となっている。なお、図示された例においは、個別電極連結部37の幅は、個別電極帯状部38の幅よりも大である。
【0042】
共通電極33の複数の共通電極帯状部34および複数の個別電極36の個別電極帯状部38は、膨出部121上に形成されている。
【0043】
図3に示すように、ボンディング部39は、個別電極36の副走査方向y端部に形成されており、個別電極36と駆動IC71とを接続するためのワイヤ61がボンディングされている。隣り合う個別電極36のボンディング部39どうしは、副走査方向yに互い違いに配置されている。これにより、ボンディング部39は、個別電極連結部37のほとんどの部位よりも幅が大きいにも関わらず、たがいに干渉することが回避されている。
【0044】
個別電極連結部37のうち隣り合うボンディング部39に挟まれた部位は、個別電極36において最も幅が小さく、その幅がたとえば10μm以下である。また、個別電極連結部37と隣のボンディング部39との間隔もたとえば10μm以下となっている。このように、共通電極33および複数の個別電極36は、線幅および配線間隔が小さい微細パターンとなっている。
【0045】
抵抗体層4は、電極層3を構成する材料よりも抵抗率が大であるたとえば酸化ルテニウムなどからなり、主走査方向xに延びる帯状に形成されている。抵抗体層4は、共通電極33の複数の共通電極帯状部34と複数の個別電極36の個別電極帯状部38とに交差している。さらに、抵抗体層4は、共通電極33の複数の共通電極帯状部34と複数の個別電極36の個別電極帯状部38に対して基板11とは反対側に積層されている。抵抗体層4のうち各共通電極帯状部34と各個別電極帯状部38とに挟まれた部位が、電極層3によって部分的に通電されることにより発熱する発熱部40とされている。発熱部40の発熱によって印字ドットが形成される。抵抗体層4の厚さは、たとえば4μm〜10μmである。
【0046】
図5〜
図9に示すように、本実施形態においては、抵抗体層4は、一対の抵抗体側面41、天面42および一対の抵抗体傾斜面44を有する。
【0047】
一対の抵抗体側面41は、抵抗体層4の副走査方向y両側に位置しており、基板11が広がる方向(xy平面)に対して起立した面である。本明細書における起立した面とは、基準となる平面となす角度が典型的には90°の面であるが、少なくとも基準となる平面になだらかに繋がる面を含まない意図である。たとえば、抵抗体側面41の一例としては、
図7および
図9に示す角度αが80°〜90°程度である面をいう。
【0048】
天面42は、一対の抵抗体側面41の間に位置しており、基板11とは反対側を向いている。本実施形態においては、天面42は、基板11から離間する側に膨出する曲面状である。
【0049】
一対の抵抗体傾斜面44は、一対の抵抗体側面41に対して基板11側に繋がっており、厚さ方向zにおいて基板11に近づくほど副走査方向y外方に位置する形状の面である。図示された例においては、抵抗体傾斜面44は、凹曲面とされている。また、抵抗体傾斜面44の厚さ方向zにおける寸法は、抵抗体側面41の厚さ方向zにおける寸法よりも小である。
【0050】
本実施形態においては、
図5、
図12に示すように、サーマルプリントヘッドA1には、複数の被覆体48が設けられている。なお、
図5においては、理解の便宜上、抵抗体層4に相対的に淡いトーンの離散点からなるハッチングを付しており、被覆体48に相対的に濃いトーンの離散点からなるハッチングを付している。複数の被覆体48は、グレーズ層12の膨出部121上において、共通電極帯状部34および個別電極帯状部38の少なくともいずれかの主走査方向x両側に隣接している。すなわち、被覆体48は、グレーズ層12の膨出部121と共通電極帯状部34および個別電極帯状部38の少なくともいずれかとの境界を覆っている。
図12は、個別電極帯状部38に隣接した抵抗体傾斜面44を示しており、同図に示された抵抗体傾斜面44と同様の抵抗体傾斜面44が、
図5から理解されるように共通電極帯状部34に隣接して設けられている。
【0051】
被覆体48は、抵抗体層4と同じ材質からなる。被覆体48は、被覆体傾斜面49を有する。被覆体傾斜面49は、厚さ方向zにおいて基板11に近づくほど主走査方向x外方に位置する形状である。図示された例においては、被覆体傾斜面49は、凹曲面である。また被覆体傾斜面49の大きさや曲率は、抵抗体傾斜面44の大きさや曲率と同じであってもよい。
図5に示すように、被覆体48は、厚さ方向z視において抵抗体層4に繋がっている。なお、共通電極帯状部34および個別電極帯状部38のうち被覆体48が隣接する領域は、抵抗体層4によって覆われた部分から副走査方向yにそれぞれ所定距離内にある領域である。この領域は、後述するサーマルプリントヘッドA1の製造方法に依存する。
【0052】
保護層5は、電極層3および抵抗体層4を保護するためのものである。保護層5は、たとえば非晶質ガラスからなる。ただし、保護層5は、複数の個別電極36のボンディング部39を含む領域を露出させている。
【0053】
駆動IC71は、複数の個別電極36を選択的に通電させることにより、抵抗体層4を部分的に発熱させる機能を果たす。駆動IC71には、複数のパッドが設けられている。駆動IC71のパッドと複数の個別電極36とは、それぞれにボンディングされた複数のワイヤ61を介して接続されている。ワイヤ61は、Auからなる。
図1および
図2に示すように、駆動IC71およびワイヤ61は、封止樹脂72によって覆われている。封止樹脂72は、たとえば黒色の軟質樹脂からなる。また、駆動IC71とコネクタ73とは、図示しない信号線によって接続されている。
【0054】
次に、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一例について、
図13〜
図16を参照しつつ以下に説明する。
【0055】
まず、
図13および
図14に示すように、たとえばAlNからなる基板11を用意する。次いで、基板11上にガラスペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより、膨出部121および補助部122を有するグレーズ層12を形成する。次いで、レジネートAuのペーストを厚膜印刷する導電性ペースト印刷工程を行う。次いで、電極形成工程を行う。この工程においては、導電性ペーストを焼成することにより、金属膜を形成する。なお、当該厚膜印刷および焼成の工程を、複数回繰り返して行ってもよい。次いで、金属膜に対してたとえばエッチング等を用いたパターニングを施すことにより、電極層3を形成する。電極層3は、共通電極33、複数の個別電極36および複数のボンディング部39を有している。
【0056】
次いで、たとえば酸化ルテニウムなどの抵抗体を含む抵抗体ペースト4Aを厚膜印刷する抵抗体ペースト印刷工程を行う。この工程においては、複数の共通電極帯状部34および複数の個別電極帯状部38を主走査方向xに横断するように抵抗体ペースト4Aを印刷する。また、印刷された抵抗体ペースト4Aの副走査方向y寸法は、上述した抵抗体層4よりも十分に大である。
図14に示すように、厚膜印刷された抵抗体ペースト4Aの表面は、厚さ方向zに緩やかに膨出する曲面である。また、抵抗体ペースト4Aのy方向両端は、グレーズ層12になだらかに繋がっており、起立した部位とはなっていない。
【0057】
次いで、乾燥工程を行う。この工程においては、電極層3および抵抗体ペースト4Aが意図しない変質等を生じない環境において、抵抗体ペースト4Aを乾燥させる。この乾燥により、抵抗体ペースト4Aに含まれる溶媒が減少する。このような乾燥した抵抗体ペースト4Aは、
図14に示す断面形状を維持するものの、乾燥前と比べて顕著に脆い性質のものとなる。
【0058】
次いで、
図15および
図16に示すように、乾燥した抵抗体ペースト4Aの副走査方向両側部分を除去する除去工程を行う。除去工程における除去手法は特に限定されず、本実施形態においては、ショットブラストを用いている。支持体1に対してマスク91を対面させる。マスク91は、一対の貫通部92が設けられている。一対の貫通部92は、各々がマスク91を厚さ方向zに貫通する貫通孔であり、副走査方向yに離間して設けられている。一対の貫通部92どうしの間の距離は、形成すべき抵抗体層4の副走査方向y寸法とされる。
【0059】
一対の貫通部92が厚さ方向z視において乾燥した抵抗体ペースト4Aの副走査方向y両端に重ならせた状態で、一対の貫通部92から投射材を抵抗体ペースト4Aに吹き付ける。投射材は、適宜選択される粒状体であり、本実施形態においては、乾燥した抵抗体ペースト4Aを適切に除去しつつ、電極層3やグレーズ層12を傷つけない硬度のものが選択されることが好ましい。そして、一対の貫通部92からの投射材の吹付けを行いながら、マスク91を支持体1に対して主走査方向xに移動させる。これにより、抵抗体ペースト4Aの副走査方向y両側部分が連続的に除去される。抵抗体ペースト4Aのうち除去されることによって形成された側面が、上述した一対の抵抗体側面41となる。また、抵抗体ペースト4Aの表面の一部が、上述した天面42となる。残存した抵抗体ペースト4Aは、形成すべき抵抗体層4と厚さ方向z視における形状および寸法がほぼ同じとなっている。
【0060】
なお、粒状体である投射材は、所定の平均粒径を有するものである。このため、除去工程を経て残存した抵抗体ペースト4Aの副走査方向y両端には、投射材の平均粒径に相当するような平均半径の凹曲面が形成されうる。この凹曲面が、上述した抵抗体傾斜面44となる。また、抵抗体ペースト4Aのうち共通電極帯状部34および個別電極帯状部38に対して主走査方向xに隣接している部分は、ショットブラストによって概ね除去されるものの、投射材の平均粒径に相当するような平均半径の凹曲面を有する抵抗体ペースト4Aが、共通電極帯状部34および個別電極帯状部38に隣接して残存しうる。この残存した抵抗体ペースト4Aが、上述した被覆体傾斜面49を有する被覆体48となる。
【0061】
次いで、抵抗体層形成工程を行う。この工程においては、乾燥した抵抗体ペースト4Aを所定の温度によって焼成する。この結果、上述した構成の抵抗体層4が得られる。また、共通電極帯状部34および個別電極帯状部38に隣接して抵抗体ペースト4Aが残存していると、この抵抗体ペースト4Aが上述した被覆体48となる。
【0062】
この後は、たとえばガラスペーストを厚膜印刷し、これを焼成することにより、保護層5を形成する。そして、駆動IC71の実装およびワイヤ61のボンディング、基板11および配線基板74の放熱部材75への取り付けなどを行うことにより、サーマルプリントヘッドA1が得られる。
【0063】
次に、サーマルプリントヘッドA1およびサーマルプリントヘッドA1の製造方法の作用について説明する。
【0064】
本実施形態によれば、抵抗体層4が一対の抵抗体側面41を有している。抵抗体層4は、通電により発熱する層であり、所定の抵抗値を有することが望まれる。この所定値を達成するためには、抵抗体層4の主走査方向xに直角である断面積を所定面積以上確保する必要がある。厚膜印刷を用いて抵抗体層4を形成する場合、印刷された抵抗体ペーストは、表面が緩やかに膨出した曲面を呈する形状となる。このため、抵抗体層4の副走査方向y中央部分が副走査方向y両端部分と比べて顕著に厚い部位となる。このような形状の抵抗体層4の場合、所定面積を確保して所定の抵抗値を達成しても、通電時の電流が相対的に厚い副走査方向y中央部分に選択的に流れる。このため、抵抗体層4の副走査方向y中央部分が集中的に発熱し、副走査方向y両側部分が発熱にほとんど寄与しない状態に陥る。この点、本実施形態の抵抗体層4は、一対の抵抗体側面41を有するため、断面積を所定の面積とした場合に、副走査方向y中央部分と副走査方向y両側部分との厚さ方向z寸法の差を縮小することが可能である。これにより、抵抗体層4の副走査方向y両側部分をより効率よく発熱させることが可能である。したがって、抵抗体層4をより均一に発熱させることができる。
【0065】
また、抵抗体層4の副走査方向y中央部分と副走査方向y両側部分との厚さ方向z寸法の差を縮小することが可能であることにより、所定の断面積を確保した場合に、副走査方向y中央部分の厚さを薄くすることが可能である。
【0066】
天面42がなだらかな凸曲面であることにより、天面42を覆う保護層5の表面をなだらかな凸曲面とし易い。これは、サーマルプリントヘッドA1と印刷用紙とをスムーズに摺動させるのに好ましい。
【0067】
サーマルプリントヘッドA1の製造においては、
図13および
図14に示すように、抵抗体ペースト印刷工程によって印刷された抵抗体ペースト4Aを、乾燥工程において乾燥させる。そして、乾燥工程を経て脆い性質となった抵抗体ペースト4Aを、除去工程によって部分的に除去する。このため、除去工程においては、抵抗体ペースト4Aの所望の除去対象部分を容易に除去可能である。また、抵抗体ペースト4Aを除去するために、ことさらに強力な除去機能を発揮する除去手法を採用する必要がない。このため、除去工程において、電極層3やグレーズ層12を不当に傷つけるおそれが少ないという利点がある。
【0068】
除去工程においてショットブラストを用いれば、抵抗体ペースト4Aの所望箇所を確実に除去することができる。また、
図15および
図16に示すように、一対の貫通部92を抵抗体ペースト4Aに対して主走査方向xに相対的に移動させながらショットブラストを行うことにより、除去された後の抵抗体ペースト4Aの副走査方向y側面は、マスク91を移動させる精度と同等の平坦度を有するものとなる。この側面は、抵抗体層4において抵抗体側面41となる部位であり、抵抗体側面41の平坦度をより高め、主走査方向xに沿った形状とするのに適している。
【0069】
また、抵抗体層4は、抵抗体傾斜面44を有している。抵抗体傾斜面44は、抵抗体層4と電極層3やグレーズ層12との接合部分において、接合面積を拡大する。このため、抵抗体層4の接合強度の向上に好ましい。また、サーマルプリントヘッドA1の使用における抵抗体層4の発熱部40の発熱等に起因して、抵抗体層4と電極層3やグレーズ層12との接合箇所に応力が生じた場合に、この応力を緩和することが期待できる。
【0070】
被覆体48は、共通電極帯状部34および個別電極帯状部38に対して主走査方向xに隣接している。このため、被覆体48は、共通電極帯状部34および個別電極帯状部38とグレーズ層12との接合箇所を覆う格好となる。このような被覆体48によって、共通電極帯状部34および個別電極帯状部38とグレーズ層12との接合強度を高めることができる。また、被覆体48は、
図13〜
図16に示すように抵抗体ペースト4Aのうち除去工程によってショットブラスト等が施された領域が部分的に残存したものである。このため、被覆体48は、厚さ方向z視において抵抗体層4と繋がる。抵抗体層4に対して副走査方向yに繋がる共通電極帯状部34および個別電極帯状部38は、発熱部40の発熱により温度サイクルが付与される。このような位置にある共通電極帯状部34および個別電極帯状部38に隣接する被覆体48が設けられていることにより、共通電極帯状部34および個別電極帯状部38の意図しない剥離等を回避することができる。ショットブラストを用いた除去工程によれば、抵抗体層4の抵抗体傾斜面44や被覆体48を合理的に形成することができる。なお、抵抗体傾斜面44および被覆体48は、たとえばショットブラストを用いた除去工程において形成されうるものであり、ショットブラストに用いられる投射材の性状等の条件によっては、抵抗体傾斜面44および被覆体48のいずれか一方および双方を備えない構成であってもよい。
【0071】
図17〜
図24は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0072】
図17は、本発明の第2実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA2は、抵抗体層4の天面42の構成が上述した実施形態と異なっている。
【0073】
本実施形態においては、天面42は、凹部43を有している。凹部43は、天面42の副走査方向y中央に位置しており、基板11側に凹んだ部位である。このような凹部43を有する抵抗体層4は、たとえば、
図15および
図16に示す除去工程におけるショットブラストの後に、
図18に示すように、貫通部93を有するマスク91を用いてショットブラストを行うことによって形成可能である。貫通部93は、副走査方向yにおいて除去工程を経た抵抗体ペースト4Aの中央に位置している。この貫通部93から投射材を吹き付けながら、マスク91を主走査方向xに移動させる。貫通部93から吹き付けられる投射材は、抵抗体ペースト4Aの厚さ方向z寸法を若干減じさせる程度の強度である。
【0074】
このような実施形態によっても、抵抗体層4をより均一に発熱させることができる。また、凹部43を有することにより、抵抗体層4に通電した場合に、抵抗体層4の副走査方向y両側部分により多くの電流を流すことができる。抵抗体層4の副走査方向y中央部分は、抵抗体層4の副走査方向y両側部分に挟まれた部分であるため、相対的に放熱の度合いが小である。言い換えると、抵抗体層4の副走査方向y両側部分は、相対的に放熱の度合いが大である。このような副走査方向y両側部分により多くの電流を流すことにより、印刷用紙により均一に熱を伝えることが可能であり、より鮮明な印刷に有利である。
【0075】
図19は、本発明の第3実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA3は、抵抗体層4の天面42の構成が上述した実施形態と異なっている。
【0076】
本実施形態においては、天面42は、平坦な面であり主走査方向xおよび副走査方向yに沿っている。角度αは、上述した実施形態と同様の範囲にあるが、サーマルプリントヘッドA1およびサーマルプリントヘッドA2における角度αよりも大であってもよい。
【0077】
また、本実施形態においては、抵抗体層4は、抵抗体傾斜面44を有していない。また、サーマルプリントヘッドA3においては、被覆体48は形成されていない。
【0078】
図20は、サーマルプリントヘッドA3の製造方法の一例を示している。本実施形態の製造方法においては、
図20および
図21に示す抵抗体印刷工程を行う。図示された例においては、スクリーン95およびスキージ96を用いて抵抗体ペースト4Aを中間支持体97にスクリーン印刷の手法によって印刷する。中間支持体97は、円柱形状の部材であり、周面に抵抗体ペースト4Aの溶媒を吸収する材質が設けられている。このような材質としては、たとえばシリコーンが挙げられる。
図21において中間支持体97に印刷された複数の抵抗体ペースト4Aは、各々が抵抗体層4となるものであり、紙面奥行方向が主走査方向xとなる。
【0079】
抵抗体印刷工程によって中間支持体97に印刷された抵抗体ペースト4Aは、中間支持体97によって溶媒が吸収される。これが、溶媒吸収工程である。溶媒吸収工程によって溶媒が吸収されると、抵抗体ペースト4Aは、それ以降の形状変化が抑制される。
【0080】
次いで、
図22および
図23に示す転写工程を行う。
図22に示すように、支持体材料1Aを用意する。支持体材料1Aは、複数の支持体1を形成しうる材料である。支持体材料1Aは、基板材料11Aとグレーズ層12とを有する。基板材料11Aは、複数の基板11を形成しうる材料である。基板材料11Aには、複数の支持体1の膨出部121に対応する膨出部121(グレーズ層12)が形成されている。また、支持体材料1Aには、図示しない複数の電極層3が形成されている。
【0081】
複数の抵抗体ペースト4Aが印刷された中間支持体97を支持体材料1Aに対向させ、支持体材料1Aに対して相対移動させながら回転させる。この際、複数の抵抗体ペースト4Aが複数の膨出部121に各別に転写されるように移動および回転させる。これにより、溶媒が吸収された抵抗体ペースト4Aが支持体材料1Aの膨出部121に転写される。
【0082】
この後は、支持体材料1Aに転写された抵抗体ペースト4Aを焼成することにより、抵抗体層形成工程を行い、抵抗体層4を形成する。そして、支持体材料1Aを分割して複数の支持体1を得る。そして、上述したサーマルプリントヘッドA1と同様の工程を経る事により、サーマルプリントヘッドA3が得られる。
【0083】
本実施形態によっても、抵抗体層4をより均一に発熱させることができる。抵抗体層4の天面42が平坦であることにより、抵抗体層4の厚さ方向z寸法をより均一化することが可能である。また、抵抗体層4を覆う保護層5の表面を平坦に近づけるのに好ましい。
【0084】
印刷工程において中間支持体97に印刷された抵抗体ペースト4Aは、溶媒吸収工程において溶媒が吸収される。これにより、抵抗体ペースト4Aは、印刷工程において形成された形状がほぼそのまま維持される。これにより、支持体材料1Aに転写された抵抗体ペースト4Aは、なだらかな曲面を有する形状等にだれてしまうおそれが少ない。したがって、平坦な天面42を有する抵抗体層4を適切に形成することができる。
【0085】
図24は、本発明の第4実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA4は、グレーズ層12の構成が上述した実施形態と異なっている。
【0086】
本実施形態においては、グレーズ層12は、上述した膨出部121を有しておらず、基板11の全面を覆うほぼ均一な厚さのものとされている。このように上述したサーマルプリントヘッドA1〜A3においても、膨出部121を有さないグレーズ層12を採用してもよい。
【0087】
本発明に係るサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。