特開2018-192764(P2018-192764A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニチカ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2018192764-積層構造体 図000003
  • 特開2018192764-積層構造体 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-192764(P2018-192764A)
(43)【公開日】2018年12月6日
(54)【発明の名称】積層構造体
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20181109BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20181109BHJP
   D04H 3/147 20120101ALI20181109BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20181109BHJP
   D01F 8/06 20060101ALI20181109BHJP
   D01F 8/14 20060101ALI20181109BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20181109BHJP
【FI】
   B32B5/26
   B32B5/02 A
   D04H3/147
   D04H3/16
   D01F8/06
   D01F8/14 D
   B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-100922(P2017-100922)
(22)【出願日】2017年5月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森岡 辰太
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4L041
4L047
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA19
3E086BB02
3E086BB47
3E086BB51
3E086BB71
3E086CA35
3E086DA08
4F100AK05A
4F100AK05C
4F100AK07B
4F100AK41A
4F100AK41C
4F100AK42B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10
4F100BA10A
4F100DG06A
4F100DG06B
4F100DG06C
4F100DG15A
4F100DG15B
4F100DG15C
4F100EJ19
4F100EJ42
4F100GB16
4F100JA04A
4F100JA04B
4F100JA04C
4F100JD02
4F100JD05
4F100JL12A
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4L041AA07
4L041BA02
4L041BA05
4L041BA21
4L041BC04
4L041BC20
4L041BD11
4L041CA06
4L041CA36
4L041DD05
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA27
4L047AB03
4L047AB08
4L047BA09
4L047BB01
4L047BB06
4L047BB09
4L047CA05
4L047CB08
4L047CB10
4L047CC03
4L047EA05
(57)【要約】
【課題】芯鞘型複合長繊維と極細繊維を用い、極細繊維層がフィルム化することなく一体化し、通気性の低下や粉末の外部飛散を防止する積層不織布を提供する。
【解決手段】積層不織布はヒートシール層と中間層と表層とを具備する。ヒートシール層と表層が、鞘が高密度ポリエチレン、芯がポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維の集積体であり、中間層が、ポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維の集積体であり、ヒートシール層を構成する鞘成分の高密度ポリエチレンの多くは溶融し芯成分から分離して前記極細繊維相互間に食い込んで固化してヒートシール層と中間層とが貼合され、表層を構成する鞘成分の高密度ポリエチレンの多くは芯成分から分離せず軟化又は溶融して固化し、表層と中間層とが貼合される。積層不織布同士は、それぞれのヒートシール層が向き合って重なり合った部分に形成されて、積層不織布同士が一体化している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層不織布同士が重なり合ってヒートシール部が形成されてなる積層構造体であって、
積層不織布は、ヒートシール層と中間層と表層とを具備する積層不織布であり、
ヒートシール層と表層が、鞘成分が高密度ポリエチレンよりなり、芯成分が前記高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維の集積体からなり、
中間層が、前記高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維の集積体からなり、
前記ヒートシール層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くは溶融し芯成分から分離して前記極細繊維相互間に食い込んで固化し、これによって前記ヒートシール層と前記中間層とが貼合されており、
前記表層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くは芯成分から分離せず軟化又は溶融して固化し、前記表層と前記中間層とが貼合されており、
ヒートシール部は、前記積層不織布同士が、それぞれの積層不織布におけるヒートシール層が向き合って重なり合った部分に形成されてなり、ヒートシール部においては、それぞれのヒートシール層における鞘成分である高密度ポリエチレンが軟化又は溶融して固化することにより、積層不織布同士が一体化していることを特徴とする積層構造体。
【請求項2】
ヒートシール層及び表層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの融点は120℃〜140℃であり、芯成分であるポリエステルの融点250℃〜260℃であり、極細繊維を構成するポリプロピレンの融点は150℃〜170℃であり、また極細繊維を構成するポリブチレンテレフタレートの融点は220℃〜240℃である請求項1記載の積層構造体。
【請求項3】
積層不織布の耐水圧が400mmHO以上であることを特徴する請求項1〜2のいずれかに記載の積層構造体。
【請求項4】
積層不織布の通気度が1cc/cm・秒以上であることを特徴する請求項1〜3のいずれかに記載の積層構造体。
【請求項5】
積層不織布の平均孔径が1〜20μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層構造体。
【請求項6】
請求項1〜5記載の積層構造体が、袋の形態であることを特徴とする積層構造体からなる袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性、透湿性、耐水性に優れ、脱臭剤や乾燥剤等の粉末を良好に収納して袋状物を得る際に好適な積層不織布により構成される積層構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートシール処理によって製袋加工を行うことができる不織布としては、鞘部にポリエチレン、芯部にポリエステルを配した芯鞘型繊維からなる不織布が知られている(例えば、特許文献1)。このような芯鞘型繊維からなる不織布は、例えば、一種のポリマーからなる単相の繊維からなる不織布と比較して、ヒートシール部分の強度に優れ、接着強力が高い。このような芯鞘型繊維からなる不織布をヒートシールにより得られた袋状物は、各種用途に用いられるが、例えば、袋の口から粉末を収納して用いる用途では、繊維間の空隙から粉末が漏れる恐れがある。
【0003】
一方、長繊維不織布層、極細繊維不織布層及び複合長繊維不織布層の順で積層されたものが提案されている(特許文献2の請求項1)。この積層不織布は、複合長繊維不織布層をヒートシール層とするものであり、極細繊維不織布層が袋状物に収納した粉末が外部に飛散しないようにするためのフィルター層となっているものである。しかしながら、この積層不織布は極細繊維不織布層によって、長繊維不織布層及び複合長繊維不織布層を接合するもので(特許文献2の段落0026)、極細繊維不織布層が溶融しフィルム状となるものである(特許文献2の段落0042)。かかる積層不織布は極細繊維不織布層がフィルム化されるので、通気性が低下するということがあった。このため、脱臭剤や乾燥剤等の粉末を収納した袋状物として使用する場合、脱臭性能や乾燥性能が低下するということがあった。また、フィルム化された箇所に亀裂が入ると、袋状物に収納した粉末(特に微粉末)が外部に飛散する恐れがあった。
【0004】
また、特許文献2に記載された積層不織布は、長繊維不織布層、極細繊維不織布層及び複合長繊維不織布層を部分的熱圧着 (エンボスロールと平滑ロールとを用いて行う熱圧着)で一体化するもので、長繊維不織布層表面が凹凸状態となっており、印刷適性に劣るということがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平8−14069号公報
【特許文献2】再公表WO2007/086429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記問題に鑑みて、特許文献2記載と同様の三層構造の積層不織布でありながら、特定の素材からなる芯鞘型複合長繊維と特定の素材からなる極細繊維を用いて、極細繊維不織布層をフィルム化させることなく一体化でき、通気性の低下や粉末の外部飛散を防止しうる積層不織布によって構成され、かつ袋状とした際にも良好にヒートシールされてなる積層構造体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、積層不織布同士が重なり合ってヒートシール部が形成されてなる積層構造体であって、
積層不織布は、ヒートシール層と中間層と表層とを具備する積層不織布であり、
ヒートシール層と表層が、鞘成分が高密度ポリエチレンよりなり、芯成分が前記高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維の集積体からなり、
中間層が、前記高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維の集積体からなり、
前記ヒートシール層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くは溶融し芯成分から分離して前記極細繊維相互間に食い込んで固化し、これによって前記ヒートシール層と前記中間層とが貼合されており、
前記表層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くは芯成分から分離せず軟化又は溶融して固化し、前記表層と前記中間層とが貼合されており、
ヒートシール部は、前記積層不織布同士が、それぞれの積層不織布におけるヒートシール層が向き合って重なり合った部分に形成されてなり、ヒートシール部においては、それぞれのヒートシール層における鞘成分である高密度ポリエチレンが軟化又は溶融して固化することにより、積層不織布同士が一体化していることを特徴とする積層構造体を要旨とするものである。
【0008】
[ヒートシール層について]
ヒートシール層は、本発明における積層不織布を重ね合せてヒートシールする際に、ヒートシール層同士が向き合うように配置して、接着層(ヒートシール層)として機能する層である。ヒートシール部を形成するにあたっては、積層不織布の表層に熱源を当接してヒートシールする際に、ヒートシール層を構成する鞘成分が溶融して向き合ってなるヒートシール層同士を熱接合する。
【0009】
ヒートシール層は、ヒートシール層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くは溶融し芯成分から分離して前記極細繊維相互間に食い込んで固化し、これによってヒートシール層と中間層とが貼合されている。鞘成分である高密度ポリエチレンの多くが芯成分から分離しているが、ヒートシール部を形成するにあたっては、熱と圧を付加するため、ヒートシール部に位置する鞘成分は加熱および加圧により再流動して、ヒートシール層同士の接着箇所に移動し、良好に接着成分として機能する。
【0010】
ヒートシール層は、鞘成分が高密度ポリエチレンよりなり、芯成分が高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維の集積体からなる。高密度ポリエチレンの融点は140℃以下であるのが好ましい。また、ヒートシール層における高密度ポリエチレンの融点は、表層における高密度ポリエチレンの融点と同等もしくは表層における高密度ポリエチレンの融点以下であることが好ましい。表層における高密度ポリエチレンの融点よりも高いと、ヒートシール時に表層における高密度ポリエチレンが溶融して、熱源に付着する恐れがある。
【0011】
ヒートシール層における芯鞘型複合長繊維の芯成分であるポリエステルの融点は、鞘成分である高密度ポリエチレンの融点よりも高く、250℃〜260℃であるのが好ましい。この程度の融点であると、ヒートシール時に高密度ポリエチレンが溶融して、ポリエステルが軟化あるいは溶融することなく、また劣化することなく、当初の繊維形態を維持する。これにより、ヒートシール箇所に芯成分が繊維形態で残存しており、ヒートシール箇所の引裂強力の低下を防止しうる。
【0012】
ヒートシール層における高密度ポリエチレンのメルトフローレート(JIS K 6922に記載の方法に準拠し、温度190℃で荷重21.18Nで測定した。)は、接着性や適度な流動性を考慮すると、10〜30g/10分が好ましい。
【0013】
ヒートシール層における芯鞘型複合長繊維の芯成分と鞘成分の重量比は任意であるが、芯成分:鞘成分=0.25〜4:1であるのが好ましく、特に芯成分:鞘成分=0.6〜2.5:1であるのがより好ましく、芯成分:鞘成分=1:1であるのが最も好ましい。鞘成分の重量比がこの範囲を超えて少なくなると、鞘成分が極細繊維相互間に食い込みにくく、積層不織布において3層が良好に一体化しにくく、また、接着成分が少なくなるため、ヒートシール接着力が低下する傾向が生じる。また、鞘成分の重量比がこの範囲を超えて多くなると、ヒートシール層がフィルム化する恐れが生じる。
【0014】
ヒートシール層における芯鞘型複合長繊維の繊維径は任意であるが、1〜7dtexであるのが好ましい。繊維径が1dtex未満であると、芯鞘型複合長繊維の鞘成分の絶対量が少なくなり、ヒートシール時における接着力が低下する傾向が生じる。また、繊維径が7dtexを超えると、ヒートシール層のヒートシール面(中間層の反対側に位置する面)に凹凸が生じやすくなり、ヒートシール時における接着力が低下する傾向が生じる。
【0015】
ヒートシール層と中間層も明確に分離することは困難であるが、概ねヒートシール層と中間層とを分離した場合、ヒートシール層の繊維量は、10〜70g/mであるのが好ましい。ヒートシール層の繊維量が10g/m未満になると、ヒートシール層における芯鞘型複合長繊維の鞘成分の絶対量が少なくなり、ヒートシール部における接着力が低下する傾向が生じる。また、ヒートシール層の繊維量が70g/mを超えると、過剰品質であり、得られる積層構造体の重量が重くなる傾向が生じる。
【0016】
[中間層について]
中間層は、ヒートシール層と表層の間に挟持されているものであり、例えば、積層構造体を袋状物とした際に、袋状物内に収納した粉末(特に微粉末)を外部へ飛散させないようにするため、フィルター層として機能するものである。また、袋状物内に流動性を有する樹脂や液体を収納して使用する場合や、オムツの各種部材の一部として使用する場合に、浸透による染み出しを抑制する機能を担うものである。すなわち、中間層は極細繊維の集積体で構成されており、極細繊維相互間の間隙は微細になっており、微粉末が透過して外部に飛散する、あるいは液状物等の浸透による染み出しを防止する。極細繊維の繊維径は、0.1〜10μmであるのが好ましく、特に0.5〜6μmであるのが好ましい。極細繊維の繊維径を0.1μm未満とするのは、製造上困難であり、得られたとしても生産性が極端に劣る。また、極細繊維の繊維径が10μmを超えると、極細繊維相互間の間隙が大きくなって、袋状物内に収納される微粉末が外部に飛散する、あるいは液状物が浸透して染み出す傾向が生じやすくなる。このような極細繊維で構成される中間層は、いわゆるメルトブロー法により得られるメルトブロー不織布が好ましく用いられる。
【0017】
極細繊維はポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる。ポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維の融点は、表層を構成している芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの融点よりも高くなっている。したがって、高密度ポリエチレンが溶融して、極細繊維相互間に食い込んでも、ポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維は、軟化又は溶融せずに、当初の極細繊維形態を維持している。よって、極細繊維の集積体が持つフィルター機能を十分に発揮するのである。ポリプロピレンよりなる極細繊維の融点は、表面層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの融点よりも約10℃〜50℃高く、150℃〜170℃であるのが好ましい。また、ポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維の融点は、当該高密度ポリエチレンの融点よりも約80℃〜120℃高く、220℃〜240℃であるのが好ましい。
【0018】
中間層の繊維量は、5〜100g/mであるのが好ましく、特に10〜50g/mであるのが好ましい。中間層の繊維量が5g/m未満であると、極細繊維相互間で形成された微細な間隙が少なくなり、フィルター機能が低下する傾向が生じる。また、中間層の繊維量が100g/mを超えると、中間層の内部にまで、溶融した高密度ポリエチレンが食い込みにくくなり、中間層自体が層剥離する傾向が生じる。
【0019】
[表層について]
表層は、積層不織布同士を重ね合せて積層構造体を得たとき、積層構造体の両面における外層となるものである。
【0020】
表層は、上述したヒートシール層を構成する芯鞘型複合長繊維の集積体と同様の芯鞘型複合長繊維の集積体からなる。すなわち、鞘成分が高密度ポリエチレンよりなり、芯成分が高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維の集積体からなる。
【0021】
ヒートシール層と表層とは、同様の芯鞘型複合長繊維の集積体からなるものであるが、両者は、中間層との貼合の形態、すなわち、芯鞘型複合長繊維において、溶融した鞘成分において、芯成分に対する分離度合が異なる。ヒートシール層は、ヒートシール層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くは溶融し芯成分から分離して前記極細繊維相互間に食い込んで固化し、これによってヒートシール層と中間層とが貼合されている。これに対して、表層は、表層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くが芯成分から分離せずに軟化又は溶融して固化することによって、中間層と貼合されている。したがって、表層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くは、表層の外側面(中間層の反対側に位置する面)に露出しており、芯鞘型複合長繊維の芯成分が外側面に露出していないため、繊維形態を維持してなる芯成分が外側面に露出することなく、このような繊維形態の芯成分が剥がれて毛羽立つこともなく、耐摩耗性が良好であり、美麗な表層を呈するものとなる。
【0022】
表層における高密度ポリエチレンの融点は140℃以下であるのが好ましい。高密度ポリエチレンの融点が140℃を超えると、積層不織布を製造する際に、極細繊維の軟化又は溶融を防止しながら、高密度ポリエチレンを溶融させて極細繊維相互間に食い込ませにくくなる。なお、高密度ポリエチレンの下限は120℃程度がよい。
【0023】
一方、表層における芯鞘型複合長繊維の芯成分であるポリエステルの融点は、鞘成分である高密度ポリエチレンの融点よりも高く、250℃〜260℃であるのが好ましい。この程度の融点であると、ヒートシール時にも、高密度ポリエチレンが溶融して、ポリエステルが軟化あるいは溶融することなく、また劣化することなく、当初の繊維形態を維持すし、ヒートシール部を形成した際にも引裂強力の低下を防止しうる。
【0024】
表層における芯鞘型複合長繊維の芯成分と鞘成分の重量比は任意であるが、芯成分:鞘成分=0.25〜4:1であるのが好ましく、特に芯成分:鞘成分=0.6〜2.5:1であるのがより好ましく、芯成分:鞘成分=1:1であるのが最も好ましい。鞘成分の重量比がこの範囲を超えて少なくなると、積層不織布を得る際の接着一体化の熱により鞘成分が流動して、芯成分が露出しやすくなる傾向となり、芯成分が露出すると、その箇所が擦れた際に毛羽となって発生する可能性がある。一方、鞘成分の重量比がこの範囲を超えて多くなると、表層がフィルム化し引裂強力が低下する恐れが生じる。
【0025】
表層における芯鞘型複合長繊維の繊維径は任意であるが、引張強力等の物性面から、1〜7dtexであるのが好ましい。繊維径が1dtex未満であると、引張強度が低下する傾向が生じる。また、繊維径が7dtexを超えると、芯鞘型複合長繊維相互間の間隙が大きくなり、表層の表面を平滑化しにくくなる傾向が生じ、印刷適性に劣る傾向にもなる。
【0026】
表層と中間層とを明確に分離することは困難であるが、概ね表層と中間層とを分離した場合、表層の繊維量は、10〜50g/mであるのが好ましい。表層の繊維量が10g/m未満になると、中間層を隠蔽し保護する効果が低下する傾向となる。また、表層の繊維量が50g/mを超えると、過剰品質であり、得られる袋状物の重量が重くなる傾向が生じる。また、表層の厚みが大きくなるため、中間層と積層する際の熱処理工程で、表層の裏面(中間層側に位置する面)の鞘成分に十分に熱が伝わらない場合があり鞘成分の溶融が不足する傾向となると、中間層に鞘成分が溶融により食い込みにくい傾向となる。
【0027】
[積層不織布の製造方法について]
本発明に係る積層不織布は、たとえば、以下の方法で得ることができる。まず、鞘成分が高密度ポリエチレンよりなり、芯成分が高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維の集積体(ヒートシール層用)及び同様の芯鞘型複合長繊維の集積体(表層用)、高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維の集積体(中間層用)を準備する。集積体(ヒートシール層用)及び集積体(表層用)は、芯鞘型複合長繊維を溶融紡糸法で形成し、これを集積して長繊維相互間を接着する、いわゆるスパンボンド法で得ることができる。長繊維相互間の接着は、芯鞘型複合長繊維の鞘成分の軟化又は溶融により、行うことができる。集積体(中間層用)は、溶融させた樹脂を高速高温空気で吹き付けて細化し極細繊維として集積する、いわゆるメルトブロ一法で得ることができる。極細繊維相互間は、紡糸時の極細繊維自体の粘着性によって接着されていてもよいし、接着されていなくてもよい。
【0028】
次に、集積体(表層用)と集積体(中間層用)を積層した二層積層体を、集積体(表層用)が金属製加熱平滑ロール側に位置するようにして、弾性非加熱平滑ロールと金属製加熱平滑ロールとの間に挟んで加熱および加圧し、集積体(表層用)中の芯鞘型複合長繊維の鞘成分を溶融させるが、一対のロール間に通すことで、ロール同士の接触(線接触)による加熱であって過剰な熱を付加しないために、鞘成分の多くが芯鞘型複合長繊維の芯成分から分離することなく、集積体(中間層用)に貼合せる。ここで集積体(中間層用)側を、弾性非加熱平滑ロールに接触させる理由は、この加熱加圧工程によって、集積体(中間層用)の繊維相互間が密着して集積体(中間層用)表面がフィルム化したり、ぺーパーライクにならないようにするためである。よって、この加熱加圧工程によって、集積体(中間層用)を構成する繊維相互間は密着せずに繊維形態を保持した状態で堆積されており、通気性は低下しない。
【0029】
その後、得られた2層積層体の集積体(中間層用)面に集積体(ヒートシール層用)を積層し、集積体(ヒートシール層用)が加熱ロール側に位置するように供給し、3層の集積体が積層してなる積層体を加熱ロールの周面に沿わせる。集積体(ヒートシール層)は、加熱ロール周面に沿わせることにより時間をかけて加熱することによって、多量の熱を加えることにより、集積体(ヒートシール層)中の芯鞘型複合長繊維の鞘成分の多くを芯成分から溶融流動により分離させて、集積体(中間層)中の極細繊維相互間に食い込ませ、次いで、3層の積層体を金属製加熱平滑ロールと弾性非加熱平滑ロールとの間に挟み加熱および加圧し、集積体(ヒートシール層)中の芯鞘型複合長繊維の鞘成分の多くが溶融流動して芯成分から分離し、その溶融した鞘成分を集積体(中間層)中の極細繊維相互間に食い込ませた状態で、かつ3層として一体化させる。このとき、金属製加熱平滑ロール側に集積体(ヒートシール層)が接するように配置する。なお、集積体(ヒートシール層)を加熱ロールに沿わせて加熱する工程と、3層を一体化させるための金属製加熱平滑ロールと弾性非加熱平滑ロールとの間で加熱加圧処理する工程は、同一工程とし、加熱ロールを金属製加熱平滑ロールとして用いることもできる。すなわち、3層の集積体が積層してなる積層体を加熱ロールに沿わせて加熱熱処理し、加熱ロールの周面から離れる直前に、弾性非加熱平滑ロールと加熱ロールの間に挟んで加圧することもできる。
【0030】
その後、集積体(ヒートシール層)、集積体(中間層)及び集積体(表層)の順で積層された三層積層体を冷却し、集積体(ヒートシール層)及び集積体(表層)の芯鞘型複合長繊維の鞘成分を固化させる。このときの圧力は、集積体(中間層)自体が層剥離しない程度、かつ、通気性が本発明の範囲に収まるように適宜調整する。
【0031】
これによって集積体(ヒートシール層)の芯鞘型複合長繊維の鞘成分は、鞘成分の多くが芯成分から分離し、集積体(中間層)中の極細繊維相互間に食い込んだ状態で固化し、また、集積体(表層)の芯鞘型複合長繊維の鞘成分は、芯成分から分離することなく溶融固化することにより集積体(中間層)と貼り合わされて、集積体(ヒートシール層)、集積体(中間層)及び集積体(表層)の順で貼合され一体化された積層不織布が得られるのである。
【0032】
本発明における積層不織布を用いて、ヒートシール層/中間層/表層の順で積層されてなるものであり、ヒートシール部を形成する際には、ヒートシール層同士を重ね合わせて、特定の部位に熱と圧を付加することにより、ヒートシール部を形成し、本発明の積層構造体とする。ヒートシール層における鞘成分(接着成分)の多くは、芯成分から分離しているが、ヒートシール加工により、熱と圧とが付加された特定の部位においては、鞘成分(接着成分)が再溶融とともに再流動し、ヒートシール層同士の接合面へ移動して良好に接合し、ヒートシール部を形成し、本発明の積層構造体が得られるのである。
【0033】
積層構造体において、袋状物を得るには、2枚の積層不織布を準備してヒートシール層同士が向き合うように重ね合せるか、あるいは、1枚の積層不織布を準備して、ヒートシール層が内側面に位置するように折りあわせてヒートシール層同士が向き合うように重ね合せ、周縁をヒートシールすることにより、ヒートシール部を形成するとよい。
【0034】
また、この袋状物の中に炭や活性炭、クレイ(粘土)等の吸湿性粉末や脱臭性粉末を収納しておけば、各種食品等と共に包装することによって、吸湿材や脱臭材となる。特に、中間層が極細繊維の集積体よりなるため、吸湿性微粉末や脱臭性微粉末を収納してもこれが外部に飛散しにくく、好ましい。さらには、袋状物の中に流動性を有する樹脂や液体を収納して使用する場合や、オムツの各種部材の一部として使用する場合に、浸透による染み出しを抑制しやすく、好ましい。また、極細繊維の集積体がフィルム化していないので、1cc/cm・秒以上の通気度(JIS L1096A法フラジール形法)があり、吸湿性能や脱臭性能が低下しない。なお、通気度の上限は、20cc/cm・秒程度がよい。また、耐水圧(JIS L1092静水圧法)が400mmHO(mmAq)以上であり、液状物の浸透による染み出しを抑制することが可能である。
【0035】
さらに、積層不織布における平均孔径(ASTM F−361−86に基づき測定されるミーン・フロー・ポアサイズ(MFP)を平均孔径とする。本発明においては、パーム・ポロメーター(POROUS MATERIALS,INC製)を用いて測定した。)が1〜20μmであることが好ましい。より好ましくは5〜15μmである。平均孔径が20μmを超えて大きいと、通気度及び耐水圧を上記の範囲を保ちにくい傾向となり、また微細な粉末の漏れが生じる傾向となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の積層構造体を構成する積層不織布は、ヒートシール層/中間層/表層の順で積層されてなり、ヒートシール層を構成している芯鞘型複合長繊維の鞘成分の多くは芯成分から分離して中間層の極細繊維相互の間隙に食い込んで中間層の極細繊維と貼合され、ヒートシール層/中間層/表層が一体化している。したがって、中間層を構成している極細繊維は溶融固化しておらず繊維形態を維持しており、またヒートシール層及び表層の芯鞘型複合長繊維の芯成分も当初の繊維形態を維持した状態で、3層が一体化している。この積層不織布は、各層がフィルム化しておらず、特に中間層がフィルム化していないため、通気性の低下が少ない。
【0037】
よって、前記した積層不織布を用いてヒートシール部を形成した積層構造体において、例えば、脱臭剤や乾燥剤等の粉末を収納して袋状物とした場合、脱臭性能や乾燥性能が低下しにくいという効果を奏する。また、フィルム化されておらず、当初の繊維形態を維持しているので、折り曲げ等によって亀裂が入りにくく、袋状物に収納した粉末(特に微粉末)が外部に飛散しにくいという効果を奏する。また、耐水性も有することから、液状物の浸透による染み出しも抑制することができる。
【0038】
さらに、表層の芯鞘型複合長繊維の鞘成分の多くは、芯成分から分離せずに残存しているため、繊維形状を維持している芯成分が表側に露出することがなく、摩擦抵抗が少なく、毛羽立ち難く、表面平滑性に優れているため、印刷適性も良好である。
【実施例】
【0039】
実施例1
[繊維集積体(ヒートシール層用)の準備]
融点256℃のポリエステルと融点134℃でありMFRが24g/分の高密度ポリエチレンを、複合溶融紡糸装置に導入し、ポリエステルを芯成分とし高密度ポリチレンを鞘成分とする芯鞘型複合長繊維を溶融紡糸すると共に、コンベア上に集積して長繊維ウェブを得た後、エンボス装置に長繊維ウェブを導入し、芯鞘型複合長繊維相互間を部分的に圧接して繊維集積体を、スパンボンド法により得た。なお、芯鞘型複合長繊維の繊維径は3.3dtexであり、芯成分と鞘成分の重量比は1:1であった。また、繊維集積体の目付は20g/mであった。
【0040】
[繊維集積体(表層用)の準備]
前記したヒートシール層用の繊維集積体と同じものを表層用として準備した。
【0041】
[繊維集積体(中間層)の準備]
融点163℃のポリプロピレンをメルトブローダイに導入し、ダイ中から加熱空気を吹き付けて極細繊維を形成し、コンベア上に集積して繊維集積体を得た。極細繊維の繊維径は3μmであり、繊維集積体の目付は20g/mであった。
【0042】
[3層の積層]
繊維集積体(表層用)と繊維集積体(中間層用)を積層した二層積層体を、繊維集積体(表層用)が金属製加熱平滑ロール側となるように、弾性非加熱平滑ロールと金属製加熱平滑ロールで挟んで、ロール間の線接触により加圧して、一体化させた。金属製加熱平滑ロールの周面温度は140℃とした。
【0043】
次いで、この二層積層体の繊維集積体(中間層用)側に繊維集積体(ヒートシール層用)を積層し、3層積層体を、金属製加熱平滑ロールの周面に当接させて加熱処理を施した。このとき、繊維集積体(ヒートシール層)側が金属製加熱平滑ロールに当接するようにして処理した。なお、金属製加熱平滑ロールの周面温度は135℃とした。
【0044】
次に、三層積層体が当該周面に沿わせて搬送されて、時間をかけながら面接触により加熱し、金属製加熱平滑ロールの周面から離れる直前に、弾性非加熱平滑ロールと金属製加熱平滑ロールの間に挟んで加圧した。 加圧後、搬送すると共に冷却され、巻取ロールに巻き取って積層不織布を得た。なお、この積層不織布は、通気度が4cc/cm・秒程度、耐水圧が600mmH0、平均孔径が9μm程度であった。
【0045】
また、得られた積層不織布(8cm×8cm)2枚を準備し、ヒートシール層同士が向き合うように重ね合せ、周縁を幅3mmのヒートシール部となるようにヒートシールして、ヒートシール部を形成し、袋状物を得た。
【0046】
実施例2
繊維集積体(中間層)の極細繊維の繊維径を1μmとした他は、実施例1と同一の方法により、積層不織布を得た。なお、この積層不織布は、通気度が2cc/cm・秒、耐水圧が800mmHOであった。
【0047】
実施例3
繊維集積体(中間層)の目付を30g/mとした他は、実施例1と同一の方法により、積層不織布を得た。なお、この積層不織布は、通気度が2cc/cm・秒、耐水圧が800mmHOであった。
【0048】
実施例4
融点226℃のポリブチレンテレフタレートをメルトブローダイに導入し、ダイ中から加熱空気を吹き付けて極細繊維を形成し、コンベア上に集積して繊維集積体(中間層用)を得た。極細繊維の繊維径は4μmであり、繊維集積体(中間層用)の目付は20g/mであった。
【0049】
実施例1で用いた繊維集積体(中間層)に代えて、上記のポリブチレンテレフタレート極細繊維からなる織維集積体(中間層)を用いる他は、実施例1と同一の方法により、積層不織布を得た。
【0050】
実施例1〜4で得られた積層不織布は、ヒートシール層/中間層/表層(素材構成はヒートシール層と同じ)の順で積層一体化されたものである。ヒートシール層では、ヒートシール層を構成している芯鞘型複合長繊維の鞘成分の多くが溶融して芯成分から分離して、中間層を構成する極細繊維相互間に食い込んでいるため、界面の接着が良好な状態にあった。また、中間層を構成している極細繊維は、当初の繊維形態を維持しており、フィルム化されていないため、通気性と耐水圧に富んだ状態が維持されていた。また、表層では、表層を構成している芯鞘型複合長繊維の鞘成分は芯成分から分離せずに、中間層を構成する極細繊維相互間に食い込んで良好に接着するとともに、芯成分は露出していないことから、表面は毛羽立ちにくく、平滑性に優れたものであった。
【0051】
図1は、積層不織布のヒートシール層の表面(中間層の反対側に位置する面)側からの電子顕微鏡写真である。ヒートシール層を構成している芯鞘型複合長繊維の鞘成分の多くが溶融し、背後の中間層を構成する極細繊維相互間に食い込んでいるのが観察される。図2は、積層不織布の表層の表面(中間層の反対側に位置する面)側からの電子顕微鏡写真である。表層を構成している芯鞘型複合長繊維は、ヒートシール層に比べて、鞘成分の多くが、背後の中間層に食い込んでいないのが観察される。また、図1及び2から、中間層を構成している極細繊維は、当初の繊維形態を維持しており、フィルム化されていないことが観察される。
【0052】
比較例1
融点130℃のポリエチレンをメルトブローダイに導入し、ダイ中から加熱空気を吹き付けて極細繊維を形成し、コンベア上に集積して繊維集積体(中間層用)を得た。極細繊維の繊維径は5μmであり、繊維集積体(中間層用)の目付は30g/mであった。
【0053】
実施例1で用いた繊維集積体(中間層用)に代えて、このポリエチレンからなる極細繊維によって構成される織維集積体(中間層用)を用いた他は、実施例1と同様にして繊維積層体を得た。得られた繊維積層体は、表裏面の鞘部が溶けて、かつ中間層の繊維も溶融して繊維形状が残存していなかった。そこで、2層積層体を得る加熱加圧処理の際の金属製加熱平滑ロールの周面温度を115℃に設定し、3層積層体を得る際の金属加熱平滑ロールの周面温度も115℃に設定し、繊維積層体を得た。得られた繊維積層体を観察すると、それぞれの層間の界面での接着は強固であり、剥離しなかった。中間層の繊維集積体を観察すると、極細繊維は残存せず、溶融または軟化して、表面層と裏面層とを接着する熱接着剤として機能したことが確認された。なお、中間層のポリエチレンの極細繊維は、メルトブロー法に適用するために一般に分子量が低く溶融粘度が低いため、影響を受け易すく、融点以下の加熱条件での熱処理であっても過剰に溶融流動が生じたことによる現象であると推定する。
【0054】
得られた繊維積層体の通気度は4cc/cm・秒であり、耐水圧は180mmHOであった。また、中間層が熱の影響により繊維形状を維持できず溶融して表裏層内へ流動により入り込んでしまい、極細繊維による細密な構造が破壊されてしまったので、耐水圧が下がったと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明の一例に係る積層不織布のヒートシール層の表面(中間層の反対側に位置する面)側からの電子顕微鏡写真である。
図2】本発明の一例に係る積層不織布の表層の表面(中間層の反対側に位置する面)側からの電子顕微鏡写真である。
図1
図2