(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-19282(P2018-19282A)
(43)【公開日】2018年2月1日
(54)【発明の名称】電子部品取付け構造
(51)【国際特許分類】
H01P 5/103 20060101AFI20180105BHJP
H01P 5/04 20060101ALI20180105BHJP
【FI】
H01P5/103 B
H01P5/04 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-148762(P2016-148762)
(22)【出願日】2016年7月28日
(71)【出願人】
【識別番号】301072650
【氏名又は名称】NECスペーステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寿俊
(72)【発明者】
【氏名】村上 利幸
(72)【発明者】
【氏名】榊 伸一
(72)【発明者】
【氏名】星 遼子
(72)【発明者】
【氏名】田中 英樹
(57)【要約】
【課題】 電子部品の信号端子の周辺においてパッケージと筐体間の面圧を高くすることができ、EMC耐性を強化する技術を提供する。
【解決手段】 取付け構造は、高周波信号を入出力するRF信号端子11を有するハイブリッドIC1と、導波管21が内蔵される筐体2と、導波管21への挿入長が調整される調整ネジ3と、調整ネジ3を利用してハイブリッドIC1を筐体2に押しつけるナット5と、を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を入出力する信号端子を有する電子部品と、
導波管が内蔵される筐体と、
前記導波管への挿入長が調整される調整ネジと、
前記調整ネジを利用して前記電子部品を前記筐体に押しつける押し付け部と、
を有する電子部品取付け構造。
【請求項2】
前記電子部品は、前記調整ネジを通す貫通穴を有するパッケージを有し、
前記押し付け部は、前記調整ネジに取り付けられるナットである、
請求項1に記載の電子部品取付け構造。
【請求項3】
前記ナットは、前記調整ネジを締め付けたとき、前記調整ネジが調整された前記挿入長で前記導波管に挿入され、かつ、前記パッケージを押し付けて固定できる厚さを有する、
請求項2に記載の電子部品取付け構造。
【請求項4】
前記ナットは、前記挿入長の調整結果に基づいて前記調整ネジを締め付けたとき、前記調整ネジが調整された前記挿入長で前記導波管に挿入され、かつ、前記パッケージを押し付けて固定できる厚さに加工された、
請求項2又は3に記載の電子部品取付け構造。
【請求項5】
前記パッケージは、前記調整ネジを通す複数の貫通穴を有する、
請求項2又は3に記載の電子部品取付け構造。
【請求項6】
前記電子部品は、前記調整ネジを通す貫通穴を有するパッケージを有し、
前記調整ネジは、前記挿入長の調整結果に基づいて前記調整ネジを締め付けたとき、前記調整ネジが調整された前記挿入長で前記導波管に挿入され、かつ、前記パッケージを押し付けて固定できる長さに加工された、
請求項1に記載の電子部品取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品取付け構造に関し、特に高周波用のハイブリッドIC(Integrated Circuit)のように、高周波信号を入出力する電子部品取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1にマイクロ波用電子部品の取付け構造が開示されている。
図6は、特許文献1に開示の取り付け構造の構成を示す断面図である。特許文献1には、2つのマイクロ波用電子部品101、102の入力端子101a、102a及び出力端子101b、102bをそれぞれ通す通穴101c、101d、102c、102dが管状の外部導体103に設けられ、この外部導体103に2つのマイクロ波用電子部品101、102が実装されることが開示されている。また特許文献1には、2つのマイクロ波用電子部品101、102間に複数の調整ネジ104を所定間隔おきに取り付け、各調整ネジ104を調整することにより、各マイクロ波用電子部品101、102間の入出力インピーダンス整合をとることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−310203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ハイブリッドICは、ハイブリッドICのパッケージに設けられた複数の貫通穴に取付けネジを挿入し、内部に導波管を備えた筐体にネジ止めすることにより、筐体に取り付けられる。このようなハイブリッドICの実装構造においては、取付けネジが導波管内を貫通しないよう導波管の外になるよう配置される。しかしRF信号端子の周辺の広い範囲が導波管内となっているためRF(Radio Frequency)信号端子に対して取付けネジ本数を多くすることが困難であり、また取付けネジがRF信号端子から離れた位置に配置される。このためRF信号端子周辺の面圧が弱くなり、ハイブリッドICのパッケージの接地が弱くなり、これはすなわち隙間が生じることになる。これによりRF信号端子からRF信号が漏洩したり、あるいは外部からRF信号端子を介してRF信号が入り込んだりすることになる。したがってハイブリッドICを含む機器のEMC(Electro Magnetic Compatibility)耐性が弱くなる。特許文献1にはこの課題を解決する技術は開示されていない。
【0005】
本発明の目的は、電子部品の信号端子の周辺においてパッケージと筐体間の面圧を高くすることができ、EMC耐性を強化する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子部品取付け構造は、高周波信号を入出力する信号端子を有する電子部品と、導波管が内蔵される筐体と、前記導波管への挿入長が調整される調整ネジと、前記調整ネジを利用して前記電子部品を前記筐体に押しつける押し付け部と、を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電子部品の信号端子の周辺においてパッケージと筐体間の面圧を高くすることができ、EMC耐性を強化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態の取付け構造の構成を示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図1の第2の変形例の調整ネジによる調整時の様子を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図1の第2の変形例の調整ネジ調整後にナットによりパッケージを押さえつけた様子を示す断面図である。
【
図8】
図8は、特許文献1に開示される取付け構造の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の電子部品取付け構造の構成を示す平面図である。
図2は、
図1の電子部品取付け構造の構成を示す断面図である。
図3は、
図1のパッケージの構成を示す平面図である。
図4は、
図1の筐体の構成を示す平面図である。
【0010】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の電子部品取付け構造は、ハイブリッドIC1と、導波管21を内蔵する筐体2と、導波管21への挿入長が調整される調整ネジ3と、ハイブリッドIC1のパッケージ12を筐体2に取付ける取付けネジ4を備えている。さらに、本実施形態の電子部品取付け構造は、調整ネジ3を利用してパッケージ12を筐体2に押し付けて固定するナット5を備えている。
【0011】
ハイブリッドIC1は、RF信号端子11と、パッケージ12と、貫通穴13、14を備えている。ハイブリッドIC1は、高周波信号を入力または出力するのであれば、ハイブリッドICに限定されない。RF信号端子11は、パッケージ12に収容されている電子回路に電気的に接続されている。RF信号端子11は、外部で発生した高周波信号をパッケージ12に収容されている電子回路に入力し、又は、パッケージ12に収容されている電子回路で発生する高周波信号を外部へ出力する。
【0012】
パッケージ12は、矩形状の板状に形成されている。パッケージ12は、例えば、樹脂成型品などによって構成される。ハイブリッドIC1のパッケージ12には、
図3に示されるように、RF信号端子11の周辺に、例えばRF信号端子11を挟んで2か所に貫通穴14が設けられている。この貫通穴14は、ハイブリッドIC1を筐体2に取付けネジ4によって実装する際に用いられる。
【0013】
ハイブリッドIC1のパッケージ12は、RF信号端子11からみて取付けネジ4を通す2つの貫通穴14と異なる方向に調整ネジ3を通す貫通穴13を備えている。
【0014】
また
図4に示すように、筐体2は、導波管21と、RF信号端子11を通す貫通穴22と、調整ネジ3に対応するタップ23と、取付けネジ4に対応するタップ24を備えている。パッケージ12の調整ネジ3を通す貫通穴13に対応する位置にタップ23が切られている。またパッケージ12の取付けネジ4を通す貫通穴14に対応する位置にタップ24が切られている。
【0015】
調整ネジ3は、
図1および
図2に示すように貫通穴13及びタップ23を通して導波管21内へ挿入され、挿入長が調整される。
【0016】
本実施形態では、調整ネジ3を利用してナット5によりハイブリッドIC1のパッケージ12が筐体2に押しつけられる。例えば、厚さの異なるナット5を複数準備しておき、RF特性が最適に調整された調整後の調整ネジ3の挿入長を測定し、調整ネジ3の挿入長の調整結果に基づいてナット5の厚さを選択することで実現してもよい。
【0017】
次に本実施形態のICパッケージの取付け方法について説明する。まずハイブリッドIC1のパッケージ12が取付けネジ4により筐体2に取付けられる。
【0018】
次に調整ネジ3をパッケージ12の貫通穴13及び筐体2のタップ23を通して導波管21に挿入してRF特性が最適となるように調整する。そしてRF特性が最適に調整された調整ネジ3の挿入長を測定する。
【0019】
次に調整された調整ネジ3の挿入長の測定結果に基づいて調整ネジ3が調整された挿入長で導波管21に挿入され、かつ、ハイブリッドIC1のパッケージ12を押し付けて固定できるような厚さのナット5を調整ネジ3に取り付ける。
【0020】
そしてナット5を取り付けた調整ネジ3を貫通穴13に挿入し筐体2のタップ23に十分なトルクで締め付けネジ止めすることにより調整ネジ3が最適な挿入長で挿入されるとともにハイブリッドIC1のパッケージ12が筐体2に押し付けられて固定される。
【0021】
このような取付け構造によりRF信号端子11の周辺の面圧を高くすることができ、パッケージ12と筐体2の間の接地が強化されるため、EMCの耐性が向上する。
【0022】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0023】
例えば上記説明ではRF信号端子11の周辺部に調整ネジ3を通す貫通穴13を1つ設けるとして説明したが、これに限らない。
図5は、
図1の第1の変形例の構成を示す平面図である。
図5に示すように、ハイブリッドIC1のパッケージ12のRF信号端子11の周辺部に複数の貫通穴15、16を設けて、複数の調整ネジ6、7が挿入できるようにしてもよい。
【0024】
この場合、まずパッケージ12に調整ネジ6、7を挿入して、RF特性が最適となったときのそれぞれの挿入長を測定する。次にそれぞれ最適な挿入長でハイブリッドICのパッケージ12を固定できる厚さのナット8、9がそれぞれ調整ネジ6、7に取り付けられる。そしてナット8を取付けた調整ネジ6を貫通穴15に挿入し、ナット9を取付けた調整ネジ7を貫通穴16に挿入し、それぞれがネジ止めされることによりハイブリッドICのパッケージ12が筐体10に固定される。
【0025】
このように本変形例によればRF信号端子11の周辺に複数の調整ネジ6、7を設けて、これを取り付けネジとして併用することで、RF信号端子11の周辺の面圧を高め、接地を強化することができる。これによりEMC耐性の向上が期待できる。
【0026】
また、上記説明では最適な挿入長でハイブリッドICパッケージ1を固定できる厚さのナット5を調整ネジ3に取り付けるとして説明したが、これに限らない。例えばナットと調整ネジ3のネジ頭との間にはさむ、厚さの異なるワッシャを複数準備しておき、RF特性が最適に調整された調整後の調整ネジ3の挿入長を測定し、調整ネジ3の挿入長の調整結果に基づいてワッシャの厚さを選択することで実現してもよい。
【0027】
また調整ネジ3の挿入長の調整結果に基づいてナット5の厚さを加工することで実現してもよい。
【0028】
さらに調整ネジ3の調整時には、ナット5の位置はパッケージに接触しないように調整ネジのネジ頭よりに配置し、調整後に、ナット5を締め付け、パッケージ12を押さえ付けるようにしてもよい。
図6は、
図1の第2の変形例の調整ネジによる調整時の様子を示す断面図である。
図7は、
図1の第2の変形例の調整ネジ調整後にナットによりパッケージを押さえつけた様子を示す断面図である。
【0029】
この場合、
図6に示すように、ナット5が調整ネジのネジ頭よりの位置までねじ込まれ、調整ネジ3がパッケージ12の貫通穴13及び筐体2のタップ23を通して導波管21に挿入されてRF特性が最適となるように調整される。調整後に、
図7に示すように、ナット5が締め付けられナット5によってパッケージ12が押し付けられる。
【0030】
このように本変形例によれば、複数のナットを準備したり、ナットの厚さを加工したりする必要がなく、調整ネジ3を利用したパッケージ12の固定が容易に実現できる。
【0031】
また、ナットを用いず、挿入長の調整後、調整ネジ3の挿入長の調整結果に基づいてRF特性が最適に調整されたときの調整ネジ3の挿入長にする長さの調整ネジを選択する構成としてもよい。あるいは挿入長の調整後、調整ネジ3の長さを、挿入長の調整結果に基づいてRF特性が最適に調整されたときの挿入長にする長さに加工してもよい。
【0032】
このようにすれば、ナットを不要として、パッケージを固定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、マイクロ波を使用した装置で使用されるハイブリッドICのみならず、他の用途で使用されるハイブリッドIC全般へも応用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 ハイブリッドIC
2 筐体
3 調整ネジ
4 取付けネジ
5 ナット
11 RF信号端子
12 パッケージ
13、14、15、16 貫通穴
21 導波管
22 貫通穴
23、24 タップ
101、102 マイクロ波用電子部品
101a、102a 入力端子
101b、102b 出力端子
103 外部導体
104 調整ネジ