【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するもので、本発明の内容を限定するものではない。
【0036】
<実施例1 ゴム接着液が塗布されたインナーライナーフィルムの製造>
実施例1−1
(1)フィルムインナーライナーの調製
本発明の実施例では、コーロン社が製造したオメガフィルムを使用した。前記フィルムインナーライナー7は、ポリアミド系セグメントとポリエーテル系セグメントとエラストマーの共重合体で構成され、30〜300μmの厚さおよび200cc/(m
2×24hr×atm)以下の空気透過度を有し、一面に厚さ0.1〜20μmのレゾルシノール−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)系接着層を含んでいる。
【0037】
(2)ゴム接着液の製造
炭素数16〜22の炭化水素系溶剤40重量%、炭素数6〜8の炭化水素系溶剤40重量%、天然ゴム7重量%、変性脂肪酸2重量%、テルペンフェノール樹脂3重量%、硫黄5重量%、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂1重量%、およびシリカ含有HMMM樹脂2重量%を配合した混合液を50℃の温度で20〜30rpmの速度で1時間攪拌することにより、フィルムインナーライナー接着用ゴム接着液を製造した。
【0038】
(3)ゴム接着液の塗布
調製したインナーライナーフィルムを温度100〜170℃のφ300mmのドラムにて5mpm速度で通過させてフィルムの表面を活性化した後、製造したゴム接着液を浸漬法で50μmの厚さにコーティングし、ゴム接着液をフィルムの表面に均一に付着させた後、50℃の熱風温度で3分間熱風乾燥させて両面または片面にゴム接着液をコーティングしたインナーライナーフィルムを製造した。
【0039】
実施例1−2
テルペンフェノール樹脂を使用せずに、天然ゴムを10重量%含む以外は、実施例1−1と同様にしてインナーライナーフィルムを製造した。
【0040】
実施例1−3
フェノール系樹脂2重量%、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂1.5重量%、シリカ含有HMMM樹脂3重量%および天然ゴム6.5重量%を含むゴム接着液を使用した以外は、実施例1−1と同様にしてインナーライナーフィルムを製造した。
【0041】
実施例1−4
テルペンフェノール樹脂を使用せずに、炭化水素系溶剤A30重量%、炭化水素系溶剤B30重量%および天然ゴム30重量%を含む以外は、実施例1−1と同様にしてインナーライナーフィルムを製造した。
【0042】
実施例1−5
テルペンフェノール樹脂10重量%、炭化水素系溶剤A36重量%、炭化水素系溶剤B36重量%および天然ゴム8重量%を含む以外は、実施例1−1と同様にしてインナーライナーフィルムを製造した。
【0043】
実施例1−6
レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂とHMMM樹脂を含まず、天然ゴム10重量%を含む以外は、実施例1−1と同様にしてインナーライナーフィルムを製造した。
【0044】
実施例1−7
硫黄、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂およびHMMM樹脂を含まず、炭化水素溶剤A50重量%および天然ゴム5重量%を含む以外は、実施例1−1と同様にしてインナーライナーフィルムを製造した。
【0045】
<実験例 ゴム接着液の接着力の評価>
実験例1 層間粘着力の評価
フィルムインナーライナーに、実施例1〜7の組成で製造したゴム接着液を塗布し、20秒間乾燥させた後、前記フィルムインナーライナー上に、付着させようとする別のフィルムインナーライナーまたはゴムシートを重ね合わせ、4.9Nの力で圧着させた。試験片を25.4mm×152mmの大きさに切断した後、それを引っ張ってT剥離するときの力を粘着力として測定した。このとき、剥離速度は100mm/minとした。
【0046】
実験例2 層間接着力の評価
実験例1と同様の方法で試験片を製作した後、2枚のシートを圧着させた試験片にプレス加硫機を用いて20分間50Nの圧力と160℃の熱を加えた。熱と圧力を加えた試験片を用いてシートの両端をT剥離するときの力を測定した。このとき、剥離速度は100mm/minとした。
【0047】
【表1】
【0048】
1)炭素数16〜22の炭化水素系溶剤である炭化水素系溶剤Aとして、ヘキサデカンを使用した。
2)炭素数6〜8の炭化水素系溶剤である炭化水素系溶剤Bとして、シクロヘキサンを使用した。
3)天然ゴムとして、マレーシア産ラテックスを使用した。
4)フェノール系樹脂として、テルペンフェノール樹脂(Terpene Phenolic Resin)であって、ニハマ製のYS POLYSTER T160を使用した。
5)レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂(Resosinol−formaldehyde resin)として、コーロン(株)で製造したKA−18を使用した。
6)HMMMとして、ヘキサメトキシメチルメラミン(Hexa−Methoxy−Methyl−Melamine)樹脂とシリカ(Hi−sil
TM233)とが65:25の重量比で混合されたものであり、錦湖石油化学(株)製のKUMAD HM−Nを使用した。
【0049】
<実施例2 空気入りタイヤの製造>
実施例2−1
(1)スプライスジョイントの形成
粘着力と接着力に最も優れた実施例1−1のゴム接着液7Aが塗布されたインナーライナーフィルム7をタイヤ成形用バンドドラムに巻いて、インナーライナーフィルムの両末端が10mm程度重なり合うようにスプライスジョイントを形成した。
【0050】
(2)空気入りタイヤの製造
成形用ドラムに巻いてスプライスジョイントを形成したインナーライナーフィルム7上に、通常のグリーンケース成形方法と同様にカーカス層形成用ゴム6、ビーズ部材9、ベルト部5、キャッププライ部4、トレッドゴム層1を順次積層して空気入りタイヤを製造し、製造されたタイヤの規格は205/55 R16である。
【0051】
実施例2−2
インナーライナーフィルムの両末端が30mm重なり合うようにスプライスジョイントを形成した以外は、実施例2−1と同様にして空気入りタイヤを製造した。
【0052】
実施例2−3
インナーライナーフィルムの両末端が100mm重なり合うようにスプライスジョイントを形成した以外は、実施例2−1と同様にして空気入りタイヤを製造した。
【0053】
実施例2−4
インナーライナーフィルムの両末端が110mm重なり合うようにスプライスジョイントを形成した以外は、実施例2−1と同様にして空気入りタイヤを製造した。
【0054】
比較例1
ブチルゴムを含むフィルムインナーライナーを用いて、常法で空気入りタイヤを製造した。
【0055】
比較例2
フィルムインナーライナーを予めカーカスプライ層の片面に貼り、得られたフィルムインナーライナーを成形ドラムに巻いて円柱状フィルムインナーライナーを製造した。このとき、フィルムインナーライナーの長さがカーカスプライよりも短いため、カーカスプライが接合される一方の末端部位はフィルムインナーライナーが覆われなくなり、カーカスプライ層だけで接合がなされる。
【0056】
<試験例:空気入りタイヤの性能評価>
試験例3 スプライスジョイントの耐久性
実施例2および比較例1−2で製造された空気入りタイヤは、走行試験機を用いて120kPaの空気圧と7.24kNの荷重条件で81km/hの速度で80時間走行した後、スプライスジョイント部分の層分離または亀裂発生有無を調査し、3段階(不適合、良好、優秀)で評価した。
【0057】
走行済みのタイヤを肉眼で検査してスプライスジョイント部に層分離または亀裂が発生した製品は「不適合」と判定し、層分離または亀裂が発生していない製品は「良好」または「優秀」と判定した。また、製品の利用上には問題がないが、走行評価の後に、フィルムインナーライナージョイント部の表面に小さな変形があるかないかによって「良好」、「優秀」とそれぞれ区分した。
【0058】
試験例4 耐空気透過度
実施例2および比較例1−2で製造された空気入りタイヤをリムに取り付け、230kPaで空気圧を注入した後、3か月間保管し、その後、空気圧漏洩割合を計算した。耐空気透過度は、比較例1のタイヤで測定した場合を100と表記し、他の実施例と比較例1との空気圧漏洩割合を比較して指数で表記した。数値が大きいほど耐空気透過度に優れることを意味する。
【0059】
試験例5 均一性
JASO(日本自動車技術会規格)C−607−87に基づいてラジアル方向の力の変位(RFV)を測定し、比較例1のタイヤで測定した場合を100と表記し、他の実施例と比較例1とのラジアル方向の力の変位を比較して指数で表記した。数値が大きいほどバランスの程度が大きいため、車両の震え、傾きなどの発生が少ないことを意味する。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例1のゴム接着液を塗布して製造したインナーライナーフィルムを空気入りタイヤに適用した結果、比較例1のブチルゴムインナーライナー(ブチル含有量80%、厚さ1.40mm)を適用したタイヤと比較して、耐空気透過度が著しく高いことを確認することができた。
【0062】
また、本発明のゴム接着液を塗布して製造したインナーライナーフィルムは、フィルムを重ねるだけで接着がなされるため、ジョイント部分とそれ以外の部分との厚さの差を最小化することができて均一性に優れることを確認することができる。これに対し、比較例2のインナーライナーフィルムを適用したタイヤは、ジョイント部位でのオーバーラップ厚さにジョイントストリップゴム層の厚さまで加わって均一性に悪影響を与えることを確認することができる。
【0063】
一方、実施例2−1のようにスプライントジョイント部分のオーバーラップ長が20mm以下と過度に短い場合には、グリーンケース膨張の際に不安定な接合がなされるか走行後に層分離が発生し、実施例2−2、2−3、2−4のようにスプライスジョイントのオーバーラップ長を長くした場合には、走行後に層分離も良好または優秀であった。しかし、100mmを超えてオーバーラップしても、性能向上効果は、100mmをオーバーラップした場合と類似であることを確認することができた。