ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物が有効成分として含有された精巣障害予防及び/又は改善剤である。前記化合物はオレウロペイン、オレウロペイン誘導体及びヒドロキシチロソールからなる群から選択され得る。前記化合物はオリーブに含有されているものでよい。
【背景技術】
【0002】
近年、出産計画の高齢化、精子数の減少、ストレス等により、日本において6〜7組に1組のカップルが不妊症であると言われている。そのため少子化が加速する社会問題が生じている。
その対策として、生殖補助医療が行われている。人工授精、体外受精、顕微授精の件数は、年々急増し、今では年間40万件近くも行われている。人工授精等の費用は、1回に約30万〜40万円もする。しかし、1回で成功することが少なく、家計への経済的負担が大きい。なによりも女性への肉体的・精神的負担が大きい。
【0003】
しかし、不妊症の原因は男女半々に由来するものである。よって男性不妊にもアプローチすることが求められる。
男性不妊症は造精機能障害によるものが約90%を占める。男性不妊症の原因は、精索静脈瘤や精巣炎の発症、精巣温度の上昇、血流障害等であると言われている。しかし、昨今の世界的な精子数減少を考えると、体内で酸化ストレスに変換される様々なストレスもその要因と予想される。
【0004】
男性不妊で重要なことの一つは、精子の数や状態である。精子は、始原生殖細胞から、精原細胞、精母細胞、精子細胞の順で成長して成熟精子となる。この成長の過程で熱等のストレスがかかると、造精能に影響し、精子形成がうまくいかず、精子の数が減少したり能力が劣ってしまう。
また、成熟精子となって精巣上体尾部に蓄えられ、精巣に熱ストレスを含む種々のストレスがかかっても、精子の運動能力や受精能力が低下する。
【0005】
また、不妊症は人間だけの問題ではなく家畜等の動物にも生じている。家畜の不妊は、夏の気温上昇(地球温暖化)、家畜の富栄養化、ストレス等に起因する。
特に、夏季の高温・高湿度による暑熱ストレスは、家畜の生殖能力を低下させる。これは夏季不妊と呼ばれる。周産期病による繁殖力低下と共に畜産業では深刻な問題となっている。
【0006】
家畜の不妊は、ひいては食糧(タンパク源)自給率の更なる低下をもたらすこととなる。そのため、家畜でも体外受精が行われているが、夏季においてはその有効性は低いとされている。
【0007】
そこで、上記状況を改善すべく、男性又は家畜等の雄の不妊対策が種々検討されている。
例えば、食用植物由来の精子機能改善剤が開発されている(特許文献1)。該精子機能改善剤は、アシタバ抽出物に含まれるキサントアンゲロール、4−ヒドロキシデリシン有効成分として含有する。
該精子機能改善剤は食品や飼料に配合すればよく、経口投与できる。よって、不妊の男性、家畜は容易に摂取できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1.精巣障害予防及び/又は改善剤>
本発明の精巣障害予防及び/又は改善剤の有効成分は、ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物である。ヒドロキシチロソール及びチロソールは、様々な天然物に存在するフェノール系の抗酸化物質である。
ヒドロキシチロソール骨格は下記構造式(I)で示される。
【0017】
チロソール骨格は下記構造式(II)で示される。
【0019】
ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物として、例えば、オレウロペイン、オレウロペイン誘導体、ヒドロキシチロソールが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。本発明では、上記化合物を単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。
オレウロペインは、下記式(III)の構造を有する。
【0021】
オレウロペイン誘導体は、本発明において、上記構造式(I)のヒドロキシチロソール骨格又は上記構造式(II)のチロソール骨格を有する化合物と同等の精巣障害改善作用を生体内で発揮し得る化合物を意味する。具体的には、オレウロペインから酸化/還元、加水分解/脱水、メチル化/脱メチル化、エステル化、脱炭酸反応等の生体内反応によって生じ得る化合物である。
【0022】
オレウロペイン誘導体の具体例として、下記構造式(IV)で示されるオレウロペインアグリコン、下記構造式(V)で示される脱メチル型オレウロペインアグリコン、下記構造式(VI)で示されるオレウロペインアグリコン(2)、下記構造式(VII)で示されるジアルデヒド型オレウロペインアグリコン、下記構造式(VIII)で示されるジアセト型オレウロペインアグリコン誘導体が挙げられる。なお、オレウロペインアグリコンは、オレウロペインからグルコースがはずれた化合物である。
【0028】
ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物、オレウロペイン、オレウロペイン誘導体及びヒドロキシチロソールは、天然物のオリーブ、エンジュ、イボタ等に含まれる。これらは、そのままの天然物、或いは乾燥、冷凍、加熱、粉砕、圧搾、抽出等による加工物、抽出物の精製物、又はこれらの由来物等を原料として本発明に用いることができる。もちろん、化学合成されたオレウロペイン等を使用することも可能である。
【0029】
ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物等を天然物抽出物から得る場合、特にオリーブ(Olea europaea)からの抽出が好適である。オリーブは地中海原産の常緑樹であり、その実から得られるオリーブオイルは古くから食用されている。オリーブオイルに関しては、その成分であるオレイン酸がLDLコレステロール量を低下させる作用を有することが広く知られている。
【0030】
本発明に好適なオレウロペイン等は、オリーブに多く含まれることが既に知られており、水、アルコール等の有機溶剤や油等により、オリーブからオレウロペイン等を含む抽出物を得ることができる。オリーブ抽出のための有機溶剤には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エーテル類、クロロホルム、及びジクロロメタン等を用いることができる。さらに、得られた抽出物を公知の方法で濃縮すれば、オレウロペイン等を精製物として得ることができる。
【0031】
オリーブには、その実、葉、花、茎、根のいずれの部分も用いることができ、これらは生の状態で用いてもよく、或いは乾燥物、粉砕物等を用いてもよい。オリーブは強い渋味成分を含むため、苛性ソーダ等による周知のアルカリ処理を施してから、本剤の原材料に用いてもよい。
【0032】
特に、オリーブの葉にはオレウロペイン等が多く含まれるため、剪定や伐採されたオリーブの葉を有効に利用してオレウロペイン等を抽出することができる。オリーブの葉には、乾燥重量で5〜20%のオレウロペインが含まれる。また、オリーブの実からオリーブオイルを搾油する際には大量の植物水、処理水及び絞りかすが発生するが、これらからオレウロペイン等を抽出することもできる。さらに、オレウロペイン等はオリーブオイルにも含まれていることから、オリーブオイルから抽出したり、場合によってはオリーブオイルそのものを利用してもよい。
【0033】
上述のように、オリーブオイルは古くから食用されており、このことはオリーブ抽出物の高い安全性を示すものである。従って、オリーブ抽出物由来のオレウロペイン等を有効成分とする本発明の精巣障害予防及び/又は改善剤、及びこれを含有する医薬品、飲食品、飼料において、次のような優位性がある。
【0034】
すなわち、天然物由来成分であるため、その医薬品、サプリメント等の健康補助飲食品(機能性飲食品)を長期にわたって連続的に適用できる可能性が高く、副作用も少ない可能性が高い。また、産業動物の飼料に適用すれば、飼育環境の管理不良によるストレスや暑熱ストレスを原因とする精巣障害の発生を予防できる可能性がある。
【0035】
<2.医薬品>
本発明の医薬品は、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、顆粒剤等として経口的に、或いは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液又は懸濁液剤等の注射剤の形で非経口的に使用できる。本発明の医薬品の剤形は特に限定されないが、投与容易性の点から経口剤であることが好ましい。
【0036】
本発明の医薬品は、本発明の精巣障害予防及び/又は改善剤を、生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤等とともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造される。錠剤、カプセル剤等に混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸等のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤等が用いられる。
【0037】
本発明の医薬品は、精巣障害予防及び/又は改善剤に加えて、更なる、動物(ヒトを含む)にとって何らかに有効なその他の成分、例えば、ポリフェノール類、タンパク質、アミノ酸、ステロイド剤、ビタミン類、糖質、脂質、ミネラル、ホルモン剤、抗生物質、色素等を配合してもよい。具体的には、アスタキサンチン、コエンザイムQ10、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、塩化カリウム、グルコン酸カルシウム、サッカリンナトリウム等が挙げられる。
【0038】
本発明の医薬品への上記精巣障害予防及び/又は改善剤の配合量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。また、剤形によっても配合量は変化し得る。
医薬品への配合量は、例えば、オリーブ又はその抽出物(乾燥物換算)で、通常1〜95質量%、さらに5〜90質量%、特に10〜50質量%とするのが好ましい。
【0039】
また、本発明の医薬品の投与量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、剤形の種類、投与方法、投与対象(ヒト、動物)の年齢や体重、症状等を考慮して適宜変更することができる。
投与対象が目的の効果を得る1日あたりの投与量は、例えば、オリーブ又はその抽出物(乾燥物換算)として、一日あたり5〜6000mg/60kg体重とするのが好ましく、さらに10〜3000mg/60kg体重、特に20〜1000mg/60kg体重とするのが好ましく、30〜200mg/60kg体重とするのが最も好ましい。
【0040】
<3.飲食品>
本発明の飲食品は、例えば、飲料、粉末、粉末飲料、錠剤、サプリメント、ゼリー、ハードカプセル又はソフトカプセル等の形状にすることができ、その形状は経口摂取に適したものである。
【0041】
本発明の飲食品は、上記精巣障害予防及び/又は改善剤に、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類等のミネラル、その他の種々の栄養素、色素、香料、保存剤等の、通常飲食品原料として使用されているものを適宜配合することにより製造することができる。また、一般に飲食品材料として使用される米、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、スイートポテト、大豆、昆布、ワカメ、テングサ等と混合してもよい。
【0042】
本発明の飲食品への精巣障害予防及び/又は改善剤の配合量は、特に限定されないが、オリーブ又はその抽出物(乾燥物換算、以下同じ)で、通常0.001〜10質量%、さらに0.01〜5質量%、特に0.1〜1質量%とするのが好ましい。
例えば飲料の場合では、飲料中にオリーブ又はその抽出物は、0.001〜0.5質量%、さらに0.005〜0.25質量%、特に0.02〜0.15質量%とするのが好ましい。
カプセル、タブレット等のサプリメントの場合では、オリーブ又はその抽出物を1〜95質量%、さらに5〜90質量%、特に10〜50質量%含有しているものが好ましい。
【0043】
飲食品の形態としては、例えば、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、経腸栄養食品等を挙げることができる。さらに、これらの飲食品は、動物に給餌することも可能である。
【0044】
<4.飼料>
本発明の飼料は、上記不妊治療剤と、生草や乾草、青刈飼料作物(青刈トウモロコシ等)、わら類等と混合することにより得ることができる。
【0045】
一般に、家畜の飼料は、粗飼料、濃厚飼料、及び特殊飼料の3種類に大別される。このうち、粗飼料は相対的に粗繊維含量が多く、容積が多い割には可消化栄養分が少ない飼料を指す。粗飼料には、生草や乾草、青刈飼料作物(青刈トウモロコシ等)、根菜類、わら類等が用いられている。また、濃厚飼料は比較的養分含量が高く、水分や粗繊維含量の低い飼料を指す。濃厚飼料には、トウモロコシ、マイロ、大麦、エンバク、米、アワ、ヒエ、キビ、コーリャン等の穀類や、米糠、ふすま類等の穀物副産物(糠類)、落花生粕、綿実粕、ヒマワリ粕、菜種粕、胡麻粕、亜麻仁粕等の油粕類等が用いられている。
【0046】
本発明の飼料は、これらの飼料に、オリーブの実や花、茎、根、好ましくは葉を、生の状態で或いは乾燥物として添加することにより製造することもできる。オリーブ葉等は、そのまま或いは粉砕して粉状としたものを添加し得る。また、オリーブオイルの搾油の際に発生した絞りかすを添加することもできる。
【0047】
本発明の飼料への精巣障害予防及び/又は改善剤の配合量及び投与量等は、上述の医薬品、飲食品に準じて決定することができる。
【0048】
<5.精巣障害を予防及び/又は改善する方法>
ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物を男性又はヒト以外の動物の雄に投与することにより、精巣障害を予防及び/又は改善することができる。
具体的には、上記医薬品、飲食品、飼料を上述した投与量で投与対象に摂取させればよい。
投与対象、症状等にもよるが、投与期間は、例えば1週間〜1年程、継続的に投与することが好ましい。
【0049】
なお、本発明の精巣障害予防及び/又は改善剤を投与しつつ、抗酸化剤の摂取や、食生活の見直し、喫煙等の生活習慣の見直し等を行うのもよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0051】
以下の実験では、ヒドロキシチロソール骨格又はチロソール骨格を有する化合物の例としてオレウロペインを用いて効果を検討したが、本発明はオレウロペインに限定されない。
また、実験動物としてマウスを用い、不妊原因を家畜において深刻な熱ストレスによるものとした。
【0052】
<6.オレウロペインによる成熟精子障害の予防改善効果の検討>
〔1〕マウスへのオレウロペイン投与と暑熱ストレス負荷
成熟雄マウスを、
(1)室温処理(室温処理)・オレウロペイン非投与
(2)暑熱処理(42℃)・オレウロペイン非投与
(3)暑熱処理(42℃)・オレウロペイン投与
の3群に分けた。
オレウロペイン(Extrasynthese社(フランス)、Cat.No.SSX0204)は、暑熱処理の5日前から毎日経口投与(5 mg/kg/day)した。
暑熱処理は、マウスの精巣及び精巣上体尾部を含む後部1/2を42℃の恒温槽に20分間暴露することにより行った。室温処理(コントロール)は、マウスを恒温槽に入れず室温に静置した。温度以外の環境条件(照明、換気、給餌方法等)は、両群において同条件とした。
暑熱処理及び室温処理から24時間後に精巣上体尾部に存在する成熟精子を採取し、以下の解析を行った。
【0053】
〔2〕精子濃度の測定
採取した精子を、37℃の加温盤上に設置した精子用Buffer(2.2 mM HEPES、1.2 mM MgCl
2、100 mM NaCl、4.7 mM KCl、1 mM Pyruvic acid、4.8 mM Lactic acid hemi calcium salt、5.5 mM D-Glucose、20 mM Sodium bicarbonate、pH 7.35)にて培養し、15分後に精子培養液を回収した。
精子培養液を遠心(条件:100 g、1 min)し、上清中の精子を測定した。精子濃度の測定には精子運動解析装置SMAS(Sperm Motility Analysis System)(ディテクト社(日本))を用いた。1サンプルにつき200匹以上の精子を測定し、平均値を結果とした。
【0054】
(結果)
精子濃度の測定結果を
図1に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は明らかに精子濃度が低下した。一方、暑熱処理の5日前からオレウロペインを投与していた暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等の精子濃度であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に精子濃度が高かった。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる成熟精子の減少を抑え、成熟精子障害を予防、改善できることが明らかとなった。
【0055】
〔3〕精子運動率の測定
精子の運動率は、精子運動解析システム SMAS(Sperm Motility Analysis System)(ディテクト社(日本))を用いて、該システムの操作手順に従って測定した。
【0056】
(結果)
精子運動率の測定結果を
図2に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は明らかに精子運動率が低下した。一方、オレウロペインを投与していた暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等又はそれ以上の精子運動率であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に精子運動率が高かった。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる成熟精子の運動率の低下を抑え又は向上させ、成熟精子障害を予防、改善できることが明らかとなった。
【0057】
また、精子濃度と精子運動率を掛け合わせて算出される運動精子濃度の結果を
図3に示す。運動精子濃度は、実際に受精に関わることができる精子の濃度を表しており、更なる重要な男性又は雄不妊の指標となり得る。
運動精子濃度についても、コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は顕著に低下していたが、暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等又はそれ以上の良好な結果であった。また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に運動精子濃度が高かった。
【0058】
〔4〕精子の直線速度の測定
精子の直線速度は、上記精子運動解析システム SMASを用いて測定した。
【0059】
(結果)
精子の直線速度の測定結果を
図4に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は明らかに直線速度が低下した。一方、暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等又はそれ以上の直線速度であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に直線速度が高かった。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる成熟精子の直線速度の低下を抑え又は向上させ、成熟精子障害を予防、改善できることが明らかとなった。
【0060】
〔5〕精子の曲線速度の測定
精子の曲線速度は、上記精子運動解析システム SMASを用いて測定した。
【0061】
(結果)
精子の曲線速度の測定結果を
図5に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は明らかに曲線速度が低下した。一方、暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等又はそれ以上の曲線速度であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に曲線速度が高かった。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる成熟精子の曲線速度の低下を抑え又は向上させ、成熟精子障害を予防、改善できることが明らかとなった。
【0062】
〔6〕精子の平均速度の測定
精子の曲線速度は、上記精子運動解析システム SMASを用いて測定した。
【0063】
(結果)
精子の平均速度の測定結果を
図6に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は明らかに平均速度が低下した。一方、暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等又はそれ以上の平均速度であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に平均速度が高かった。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる成熟精子の平均速度の低下を抑え又は向上させ、成熟精子障害を予防、改善できることが明らかとなった。
【0064】
〔7〕精子の頭部振幅の測定
精子の頭部振幅は、上記精子運動解析システム SMASを用いて測定した。
【0065】
(結果)
精子の頭部振幅の測定結果を
図7に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は明らかに頭部振幅が低下した。一方、暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等の頭部振幅であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に頭部振幅していた。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる成熟精子の頭部振幅の低下を抑え、成熟精子障害を予防、改善できることが明らかとなった。
【0066】
<7.オレウロペインによる精子形成能(造精能)の改善効果の検討>
暑熱処理を15分行い、その後マウスを室温で飼育した他は、オレウロペイン投与のタイミング、投与量等を上記<6.オレウロペインによる成熟精子障害の改善効果の検討>と同様に行い、28日後に精巣、及び精巣上体尾部に存在する精子を採取し、以下の解析を行った。
【0067】
〔1〕精巣重量比の測定
採取した精巣とマウスの重量を測定し、マウス体重あたりの精巣重量比を算出した。
【0068】
(結果)
精巣重量比の算出結果を
図8に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群では精巣重量比が減少する傾向を示した。一方、暑熱処理の5日前からオレウロペインを投与していた暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールとほぼ同等の精巣重量比であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも精巣重量比が増加する傾向を示した。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる精子形成能の低下を予防、改善できることが明らかとなった。
【0069】
〔2〕精子濃度の測定
上記精子濃度の測定方法と同じ方法で行った。
【0070】
精子濃度の測定結果を
図9に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は明らかに精子濃度が低下した。一方、暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等又はそれ以上の精子濃度であり、また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に高い精子濃度であった。このことから、オレウロペインは、暑熱ストレスによる精子形成能の低下を予防、改善できることが明らかとなった。
【0071】
〔3〕精子運動率の測定
上記精子運動率の測定方法と同じ方法で行った。
【0072】
精子運動率の測定結果を
図10に示す。
コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群及び暑熱処理・オレウロペイン投与群は精子運動率が低下する傾向を示した。
【0073】
また、精子濃度と精子運動率を掛け合わせて算出される運動精子濃度の結果を
図11に示す。
運動精子濃度についても、コントロール(室温処理)と比較して、暑熱処理・オレウロペイン非投与群は顕著に低下していたが、暑熱処理・オレウロペイン投与群は、コントロールと同等又はそれ以上の良好な結果であった。また、暑熱処理・オレウロペイン非投与群よりも顕著に運動精子濃度が高かった。