【課題】光硬化時あるいは硬化物の保存中にブルーミング等により、光重合増感剤等の添加物が表面ににじみ出し、硬化物の粉吹きや着色の問題を引き起こすことがなく、かつ実用上十分な光硬化速度を与える光重合増感剤を提供すること。
【発明を実施するための形態】
【0063】
(化合物)
本発明の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーは、繰り返し単位が下記一般式(1)で表される化合物である。
【0065】
一般式(1)において、nは繰り返し数を表し2〜50であり、X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Aは二価の置換基を表す。
【0066】
一般式(1)において、X又はYで表される炭素数1から8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基又は2−エチルヘキシル基等が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。なお、後述の一般式(2)〜(6)におけるそれぞれのXまたはYの具体例もまた一般式(1)におけるこれらの具体例と同様である。
【0067】
Aで表される二価の置換基としては、二つの水酸基と二官能性化合物との反応よって生成するエステル結合、ウレタン結合、エーテル結合などの結合を構成する二価の置換基であればよく、例えば下記のような二価の置換基が挙げられる。
【0069】
上記二価の置換基の一般式(A1)乃至(A4)において、星印記号(アスタリスク)は二価の置換基の結合位置を表し、D、E、G、Jは、炭素数1から20のアルキレン基、または炭素数6から20のアリーレン基を表し、該アルキレン基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ベンゼン環又はナフタレン環を含んでいてもよく、該ベンゼン環、ナフタレン環はアルキル基で置換されていてもよい。またアリーレン基は置換基を有していてもよく、複数の環がアルキレン基、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で結合されていてもよい。
【0070】
一般式(A1)乃至(A4)において、D、E、G、Jで表される炭素数1から20のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基及び下記の飽和環式のアルキレン基等が挙げられ、炭素数6から20のアリーレン基としては、フェニレン基及び下記のアリーレン基等が挙げられる。これら例示したアルキレン基、アリーレン基には、更にアルキル基やアルコキシカルボニル基等が置換していてもよい。
【0073】
二価の置換基がA1であるときが繰り返し単位が一般式(2)の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーであり、A2であるときが繰り返し単位が一般式(3)の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーであり、A3であるときが繰り返し単位が一般式(4)の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーであり、A4であるときが繰り返し単位が一般式(5)の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーとなる。
【0074】
本発明の繰り返し単位が一般式(1)で表される9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーの具体例を示す。まず一般式(1)において、AがA1である一般式(2)の化合物の具体例を表1及び表2に示す。
【0077】
次に、一般式(1)において、AがA2である一般式(3)の化合物の具体例を表3及び表4に示す。
【0080】
そして、一般式(1)において、AがA3である一般式(4)の化合物の具体例を表5及び表6に示す。
【0083】
更に、一般式(1)において、AがA4である一般式(5)の化合物の具体例を表7及び表8に示す。
【0086】
これら例示した化合物の中で、製造が容易でかつ光重合増感剤としての効果が大きいという点で、下記に示した46化合物が好ましい。
【0095】
上記挙げた好ましい化合物の中でも、化合物番号2−6のオリゴマー、化合物番号2−10のオリゴマー、化合物番号2−17のオリゴマー、化合物番号2−23のオリゴマー、化合物番号2−25のオリゴマー、化合物番号3−4のオリゴマー、化合物番号3−6のオリゴマー、化合物番号3−7のオリゴマー、化合物番号4−4、化合物番号4−6のオリゴマー、化合物番号4−8のオリゴマー、化合物番号4−10のオリゴマー、化合物番号4−11のオリゴマー、化合物番号4−12のオリゴマー、化合物番号5−2のオリゴマーが特に好ましい。
【0096】
(製造方法)
次に本発明の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーの製造方法について説明する。本発明の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーは、一般式(6)で表される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を下記の反応式−1に従い、触媒存在下あるいは無触媒で対応する二官能性化合物と反応させることにより得ることができる。
【0097】
二官能性化合物としては、水酸基と反応して結合を生成する官能基を少なくとも二つ有している化合物であればよい。例えば、水酸基と反応するカルボキシル基を二つ以上有する二塩基酸、二塩基酸ハライド又は二塩基酸エステル、水酸基と反応してウレタン結合を生成するイソシアネート基を二つ以上有するジイソシアネート化合物、水酸基と反応するジハロゲン化合物又はジオール化合物、ジグリシジル化合物等が挙げられる。
【0099】
反応式−1において、nは繰り返し数を表し2〜50であり、X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Aは二価の置換基を表す
【0100】
(一般式(6)の化合物の製造方法)
反応式−1において、原料として用いられる一般式(6)で表される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物は、9,10−アントラキノン化合物を還元することにより得られる。還元剤としては、ハイドロサルファイト、パラジウム/カーボンを触媒とする水素還元、二酸化チオ尿素等が挙げられる。
【0101】
当該反応において原料となる9,10−アントラキノン化合物の具体的な例としては、9,10−アントラキノン、2−メチル−9,10−アントラキノン、2−エチル−9,10−アントラキノン、2−t−ペンチル−9,10−アントラキノン、2,6−ジメチル−9,10−アントラキノン、2−クロロ−9,10−アントラキノン、2−ブロモ−9,10−アントラキノン等が挙げられる。
【0102】
また、9,10−ジヒドロキシアントラセンの場合は、工業的な方法として、1,4−ナフトキノンと1,3−ブタジエンのディールス・アルダー反応物である1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン又はその異性体である1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンのアルカリ金属塩を用いて9,10−アントラキノンを還元することにより、より簡便に9,10−ジヒドロキシアントラセンを得ることができる。即ち、1,4−ナフトキノンと1,3−ブタジエンとの反応により得られる1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノンを、水性媒体中、アルカリ金属水酸化物のようなアルカリ性化合物の存在下に9,10−アントラキノンと反応させることにより9,10−ジヒドロキシアントラセンのアルカリ金属塩の水溶液を得ることができる。
【0103】
当該反応で得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンのアルカリ金属塩の水溶液を酸素不存在下に酸性化することにより、9,10−ジヒドロキシアントラセンの沈殿を得ることができる。この沈殿を精製することにより、9,10−ジヒドロキシアントラセンを得ることができる。置換基を有する9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物も同様にして得ることができる。
【0104】
このようにして一般式(6)の9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を得ることができる。
【0105】
代表的な9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物としては例えば、9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−t−ペンチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−クロロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ブロモ−9,10−ジヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
【0106】
(一般式(1)の化合物の製造方法)
次に、一般式(6)で表される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を反応式−1に従い、触媒存在下あるいは無触媒で二官能性化合物と反応させることにより繰り返し単位が一般式(1)で表される9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを得ることができる。
【0108】
反応式−1において、nは繰り返し数を表し2〜50であり、X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Aは二価の置換基を表す。
【0109】
反応式−1において用いられる二官能性化合物としては、二塩基酸、二塩基酸ハライド又は二塩基酸エステル、ジイソシアネート化合物、ジハロゲン化合物又はジオール化合物、ジグリシジル化合物が挙げられる。
【0110】
下記反応式−2に示したように、二官能性化合物として二塩基酸、二塩基酸ハライド又は二塩基酸エステルを用いた場合は、繰り返し単位が一般式(2)の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを得ることができる。
【0112】
反応式−2において、nは繰り返し数を表し2〜50であり、X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Dは炭素数1から20のアルキレン基、または炭素数6から20のアリーレン基を表し、該アルキレン基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ベンゼン環又はナフタレン環を含んでいてもよく、該ベンゼン環、ナフタレン環はアルキル基で置換されていてもよい。またアリーレン基は置換基を有していてもよく、複数の環がアルキレン基、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で結合されていてもよい。
【0113】
二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。二塩基酸ハライドとしては、コハク酸クロライド、アジピン酸クロライド、セバコイル酸クロライド、フタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、テレフタル酸クロライド等が挙げられる。二塩基酸エステルとしては、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジ2−エチルヘキシル、2−メチルコハク酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジ2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0114】
二塩基酸、二塩基酸ハライド又は二塩基酸エステルとの反応において、塩基あるいは触媒を使用すると反応速度が上がり、効率的に製造することが可能になる。二塩基酸との反応に用いられる触媒としては、鉱酸(硫酸、塩酸)、有機酸(メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)、ルイス酸(フッ化ホウ素エーテラート、三塩化アルミニウム、四塩化チタン、三塩化鉄、二塩化亜鉛)固体酸触媒(フタムラ化学社製)、アンバーリスト(オルガノ社製)、ナフィオン(デュポン社製、ナフィオンはデュポン社登録商標)、テトラアルコキシチタン化合物(テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラメトキシチタン)、有機スズ化合物(ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズオキシド)等が挙げられる。二塩基酸ハライドとの反応に用いられる塩基としては、無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム)、有機塩基(ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、トリフェニルホスフィン)等が挙げられる。二塩基酸エステルとの反応に用いられる触媒としては、鉱酸(硫酸、塩酸)、有機酸(メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)、ルイス酸(フッ化ホウ素エーテラート、三塩化アルミニウム、四塩化チタン、三塩化鉄、二塩化亜鉛)固体酸触媒(フタムラ化学社製)、アンバーリスト(オルガノ社製)、ナフィオン(デュポン社製)、テトラアルコキシチタン化合物(テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラメトキシチタン)、有機スズ化合物(ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズオキシド)、塩基性化合物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、)等が挙げられる。
【0115】
触媒の添加量としては、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは0.01モル%以上、20モル%未満、より好ましくは、0.1モル%以上、10モル%未満である。0.01モル%未満であると、反応速度が遅く、また、20モル%以上だと生成物の純度が低下するので好ましくない。
【0116】
塩基の添加量としては、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは2.0モル倍以上、20.0モル倍未満、より好ましくは、3.0モル倍以上、10.0モル倍未満である。2.0モル倍未満であると、反応が完結せず、また、20.0モル倍以上加えると副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0117】
無機塩基の水溶液中に9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を溶解させ、二塩基酸、二塩基酸ハライド又は二塩基酸エステルと反応させる場合は、相間移動触媒の使用が有効である。相間移動触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルエチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロマイド、トリオクチルブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラフブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルエチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムクロライド、トリオクチルブチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0118】
相間移動触媒の添加量としては、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは 0.01モル倍以上、1.0モル倍未満、より好ましくは、0.05モル倍以上、0.5モル倍未満である。0.01モル倍未満であると、反応速度が遅く、また、1.0モル倍以上だと生成物の純度が低下するので好ましくない。
【0119】
一般式(6)で表される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対する二塩基酸、二塩基酸ハライド又は二塩基酸エステルの添加量は、0.5モル倍以上、5.0モル倍以下、より好ましくは1.0モル倍以上、3.0モル倍以下である。0.5モル倍未満だと、平均分子量が小さくなり、移行性の抑制が実現できなくなるとともに、未反応の9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物が生成物中に残存し純度が低下する。また、5.0モル倍を超えて加えると、平均分子量が小さくなり、移行性の抑制が実現できなくなるとともに、未反応の二塩基酸、二塩基酸ハライド又は二塩基酸エステルが生成物中に残存し純度が低下する。
【0120】
また、一般式(6)で示される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物と二塩基酸、二塩基酸ハライド又は二塩基酸エステルのモル比が1に近付くにつれ、平均分子量が大きくなりすぎて、分子のモビリティが小さくなり、増感能が低下する可能性がある。その場合、一塩基酸、一塩基酸ハライド又は一塩基酸エステルを少量添加して分子量を調整してもよい。
【0121】
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用する二塩基酸、二塩基酸ハライド又は二塩基酸エステルと反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒及び水が用いられる。
【0122】
当該反応の反応温度は、二塩基酸又は二塩基酸エステルと反応させる場合は通常50℃以上、250℃以下、好ましくは100℃以上、200℃以下である。50℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、200℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
【0123】
二塩基酸ハライドと反応させる場合は通常0℃以上、100℃以下、好ましくは10℃以上、30℃以下である。0℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、100℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
【0124】
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常0.5時間から30時間程度である。より好ましくは1時間から10時間である。
【0125】
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は、反応後に析出した結晶を濾過・乾燥するかもしくは、そのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行って9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを得ることができる。
【0126】
また、下記反応式−3に示したように、二官能性化合物としてジイソシアネート化合物を用いた場合は、繰り返し単位が一般式(3)の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを得ることができる。
【0128】
反応式−3において、nは繰り返し数を表し2〜50であり、X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Eは炭素数1から20のアルキレン基、または炭素数6から20のアリーレン基を表し、該アルキレン基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ベンゼン環又はナフタレン環を含んでいてもよく、該ベンゼン環、ナフタレン環はアルキル基で置換されていてもよい。またアリーレン基は置換基を有していてもよく、複数の環がアルキレン基、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で結合されていてもよい。
【0129】
ジイソシアネート化合物としては、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートのいずれであってもよい。脂肪族ジイソシアネートとしては、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、リジンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン等が挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる(反応式−3)。
【0130】
ジイソシアネート化合物との反応において、触媒を使用すると反応速度が上がり、効率的に製造することが可能になる。ジイソシアネート化合物との反応に用いられる触媒としては、有機スズ化合物又は塩基性化合物が用いられる。有機スズ化合物としては、ジラウリン酸ジブチルスズ(DBTBL)、ジブチルスズオキシド等が挙げられ、塩基性化合物としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピリジン、ピペリジン、γ−ピコリン、ルチジン等が挙げられる。
【0131】
触媒の添加量としては、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは0.01モル%以上、20モル%未満、より好ましくは、0.1モル%以上、10モル%未満である。0.01モル%未満であると、反応速度が遅く、また、20モル%以上だと生成物の純度が低下するので好ましくない。
【0132】
無機塩基の水溶液中に9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を溶解させ、ジイソシアネート化合物と反応させる場合は、相間移動触媒の使用が有効である。相間移動触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルエチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロマイド、トリオクチルブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラフブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルエチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムクロライド、トリオクチルブチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0133】
相間移動触媒の添加量としては、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは 0.01モル倍以上、1.0モル倍未満、より好ましくは、0.05モル倍以上、0.5モル倍未満である。0.01モル倍未満であると、反応速度が遅く、また、1.0モル倍以上だと生成物の純度が低下するので好ましくない。
【0134】
一般式(6)で表される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対するジイソシアネート化合物の添加量は、0.5モル倍以上、5.0モル倍以下、より好ましくは1.0モル倍以上、3.0モル倍以下である。0.5モル倍未満だと、平均分子量が小さくなり、移行性の抑制が実現できなくなるとともに、未反応の9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物が生成物中に残存し純度が低下する。また、5.0モル倍を超えて加えると、平均分子量が小さくなり、移行性の抑制が実現できなくなるとともに、未反応のジイソシアネート化合物が生成物中に残存し純度が低下する。
【0135】
また、一般式(6)で示される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物とジイソシアネート化合物のモル比が1に近付くにつれ、平均分子量が大きくなりすぎて、分子のモビリティが小さくなり、増感能が低下する可能性がある。その場合、モノイソシアネート化合物を少量添加して分子量を調整してもよい。
【0136】
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用するジイソシアネート化合物と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒が用いられる。
【0137】
当該反応の反応温度は通常0℃以上、100℃以下、好ましくは20℃以上、80℃以下である。0℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、100℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
【0138】
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常1時間から30時間程度である。より好ましくは5時間から10時間である。
【0139】
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は濃縮途中に結晶が析出するので、アルコールやヘキサン等の貧溶媒から再結晶させるかもしくは、そのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行って9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを得ることができる。
【0140】
更に、下記反応式−4に示したように、二官能性化合物としてジハロゲン化合物又はジオール化合物を用いた場合は、繰り返し単位が一般式(4)の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを得ることができる。
【0142】
反応式−4において、nは繰り返し数を表し2〜50であり、X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Gは炭素数1から20のアルキレン基、または炭素数6から20のアリーレン基を表し、該アルキレン基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ベンゼン環又はナフタレン環を含んでいてもよく、該ベンゼン環、ナフタレン環はアルキル基で置換されていてもよい。またアリーレン基は置換基を有していてもよく、複数の環がアルキレン基、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で結合されていてもよい。
【0143】
ジハロゲン化合物としては、ジブロモメタン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、ジブロモブタン、ジブロモヘキサン、ジブロモヘプタン、ジブロモオクタン、ジブロモノナン、ジブロモデカン、1,5−ジブロモ−3−メチルペンタン等が挙げられる。ジオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
【0144】
ジハロゲン化合物との反応においては、塩基性化合物を必要とする。ジハロゲン化合物との反応に用いられる塩基性化合物としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピリジン、ピペリジン、γ−ピコリン、ルチジン等が挙げられる。ジオールとの反応においては、触媒を使用すると反応速度が上がり、効率的に製造することが可能になる。ジオール化合物との反応に用いられる触媒としては、鉱酸(硫酸、塩酸)、有機酸(メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)、ルイス酸(フッ化ホウ素エーテラート、三塩化アルミニウム、四塩化チタン、三塩化鉄、二塩化亜鉛)固体酸触媒(フタムラ化学社製)、アンバーリスト(オルガノ社製)、ナフィオン(デュポン社製)、テトラアルコキシチタン化合物(テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラメトキシチタン)、有機スズ化合物(ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズオキシド)等が挙げられる。
【0145】
塩基性化合物の添加量としては、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは2.0モル倍以上、5.0モル倍未満、より好ましくは、2.2モル倍以上、3.0モル倍未満である。2.0モル倍未満であると、反応が完結せず、また、5.0モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0146】
触媒の添加量としては、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは0.01モル%以上、20モル%未満、より好ましくは、0.1モル%以上、10モル%未満である。0.01モル%未満であると、反応速度が遅く、また、20モル%以上加えると生成物の純度が低下するので好ましくない。
【0147】
無機塩基の水溶液中に9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を溶解させ、ジハロゲン化合物又はジオール化合物と反応させる場合は、相間移動触媒の使用が有効である。相間移動触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルエチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロマイド、トリオクチルブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラフブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルエチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムクロライド、トリオクチルブチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0148】
相間移動触媒の添加量としては、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは 0.01モル倍以上、1.0モル倍未満、より好ましくは、0.05モル倍以上、0.5モル倍未満である。0.01モル倍未満であると、反応速度が遅く、また、1.0モル倍以上だと生成物の純度が低下するので好ましくない。
【0149】
一般式(6)で表される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対するジハロゲン化合物又はジオール化合物の添加量は、0.5モル倍以上、5.0モル倍以下、より好ましくは1.0モル倍以上、3.0モル倍以下である。0.5モル倍未満だと、平均分子量が小さくなり、移行性の抑制が実現できなくなるとともに、未反応の9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物が生成物中に残存し純度が低下する。また、5.0モル倍を超えて加えても、平均分子量が小さくなり、移行性の抑制が実現できなくなるとともに、未反応のジハロゲン化合物又はジオール化合物が生成物中に残存し純度が低下する。
【0150】
また、一般式(6)で示される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物とジハロゲン化合物又はジオール化合物のモル比が1に近付くにつれ、平均分子量が大きくなりすぎて、分子のモビリティが小さくなり、増感能が低下する可能性がある。その場合、モノハロゲン化合物又はモノオール化合物を少量添加して分子量を調整してもよい。
【0151】
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用するジハロゲン化合物又はジオール化合物と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒、水が用いられる。
【0152】
当該反応の反応温度は、ジハロゲン化合物との反応に関しては、通常0℃以上、200℃以下、好ましくは50℃以上、150℃以下である。0℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、200℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。ジオール化合物との反応に関しては、通常50℃以上、250℃以下、好ましくは100℃以上、200℃以下である。50℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、250℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
【0153】
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常1時間から30時間程度である。より好ましくは5時間から10時間である。
【0154】
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は、反応後に析出した結晶を濾過・乾燥するかもしくは、そのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行って9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを得ることができる。
【0155】
更にまた、下記反応式−5に示したように、二官能性化合物としてジグリシジル化合物を用いた場合は、繰り返し単位が一般式(5)の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを得ることができる。
【0157】
反応式−5において、nは繰り返し数を表し2〜50であり、X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Jは炭素数1から20のアルキレン基、または炭素数6から20のアリーレン基を表し、該アルキレン基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ベンゼン環又はナフタレン環を含んでいてもよく、該ベンゼン環、ナフタレン環はアルキル基で置換されていてもよい。またアリーレン基は置換基を有していてもよく、複数の環がアルキレン基、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で結合されていてもよい。
【0158】
ジグリシジル化合物としては、脂肪族ジグリシジルエーテル化合物、脂環式グリシジルエーテル化合物、芳香族ジグリシジルエーテル化合物のいずれでもよい。脂肪族ジグリシジルエーテル化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられ、脂環式ジグリシジルエーテル化合物としては、水素化ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノール−Fジグリシジルエーテル等が挙げられ、芳香族ジグリシジルエーテルとしては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0159】
ジグリシジル化合物との反応において、塩基性化合物を必要とする。ジグリシジル化合物との反応に用いられる塩基性化合物としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピリジン、ピペリジン、γ−ピコリン、ルチジン等が挙げられる。
【0160】
塩基性化合物の添加量としては、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは2.0モル倍以上、5.0モル倍未満、より好ましくは、2.2モル倍以上、3.0モル倍未満である。2.0モル倍未満であると、反応が完結せず、また、5.0モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0161】
無機塩基の水溶液中に9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を溶解させ、ジグリシジル化合物と反応させる場合は、相間移動触媒の使用が有効である。相間移動触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルエチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロマイド、トリオクチルブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラフブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルエチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムクロライド、トリオクチルブチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0162】
相間移動触媒の添加量としては、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは 0.01モル倍以上、1.0モル倍未満、より好ましくは、0.05モル倍以上、0.5モル倍未満である。0.01モル倍未満であると、反応速度が遅く、また、1.0モル倍以上だと生成物の純度が低下するので好ましくない。
【0163】
一般式(6)で表される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対するジグリシジル化合物の添加量は、0.5モル倍以上、5.0モル倍以下、より好ましくは1.0モル倍以上、3.0モル倍以下である。0.5モル倍未満だと、平均分子量が小さくなり、移行性の抑制が実現できなくなるとともに、未反応の9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物が生成物中に残存し純度が低下する。また、5.0モル倍を超えて加えても、平均分子量が小さくなり、移行性の抑制が実現できなくなるとともに、未反応のジグリシジル化合物が生成物中に残存し純度が低下する。
【0164】
また、一般式(6)で示される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物とジグリシジル化合物のモル比が1に近付くにつれ、平均分子量が大きくなりすぎて、分子のモビリティが小さくなり、増感能が低下する可能性がある。その場合、モノグリシジル化合物を少量添加して分子量を調整してもよい。
【0165】
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用するジグリシジル化合物と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒、水が用いられる。
【0166】
当該反応の反応温度は、通常0℃以上、200℃以下、好ましくは50℃以上、150℃以下である。0℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、200℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
【0167】
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常1時間から30時間程度である。より好ましくは3時間から10時間である。
【0168】
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は濃縮途中に結晶が析出するので、アルコールやヘキサン等の貧溶媒から再結晶させるかもしくは、そのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行って9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを得ることができる。
【0169】
(光重合増感剤)
このようにして得られた本発明の繰り返し単位が一般式(1)で表される9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーは、光カチオン重合性化合物や光ラジカル重合性化合物を光重合開始剤存在下に重合させる際に、光カチオン重合増感剤又は光ラジカル重合増感剤として用いることができる。
【0170】
また、本発明の繰り返し単位が一般式(1)で表される9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを含有する光重合増感剤は、9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを有効成分とするものであり、その全量を、9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーとするもののほか、本発明の効果を損なわない限り、9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマー以外の光重合増感剤等を含んでもよい。
【0171】
このような9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマー以外の光重合増感剤としては、アントラセン化合物(9,10−ビスオクタノイルオキシアントラセン、9,10−ビスノナノイルオキシアントラセン)、チオキサントン化合物(例えば2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン)、ナフタレン化合物(例えば1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4−メトキシ−1−ナフトール)、アミン化合物(例えばジエチルアミノ安息香酸メチル)等が挙げられる。
【0172】
本発明の繰り返し単位が一般式(1)で表される9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーの合成原料である一般式(6)で表される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物もまた光重合増感剤としての効果を有する化合物であるが、当該化合物が二官能性化合物により、オリゴマー化することにより、耐マイグレーション性が著しく改善される。また、本発明の繰り返し単位が一般式(1)で表される9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーは、Aで表される二価の置換基が、酸素原子を介して直接アントラセン環に結合しており、オリゴマー中のアントラセン環濃度が高く、光重合増感剤としての効果が高い化合物である。
【0173】
9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーに対する9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマー以外の光重合増感剤の添加比率は、特に限定されないが、9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーに対して0.1重量倍以上10重量倍以下である。
【0174】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、オニウム塩、ベンジルメチルケタール系、α−ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤等が好ましい。オニウム塩としては通常ヨードニウム塩またはスルホニウム塩が用いられる。ヨードニウム塩としては4−イソブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサメトキシアンチモネート、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタメトキシフェニルボレート、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート等が挙げられ、例えばビー・エー・エス・エフ社製イルガキュア250(イルガキュアはビー・エー・エス・エフ社の登録商標)、ローディア社製ロードシル2074(ロードシルはローディア社の登録商標)、サンアプロ社製のIK−1等を用いることができる。一方、スルホニウム塩としてはS,S,S’,S’−テトラフェニル−S,S’−(4、4’−チオジフェニル)ジスルホニウムビスヘキサメトキシフォスフェート、ジフェニル−4−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサメトキシフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサメトキシフォスフェート等が挙げられ、例えばダイセル社製CPI−100P、CPI101P、CPI−200K、ビー・エー・エス・エフ社製イルガキュア270、ダウ・ケミカル社製UVI6992等を用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で用いても2種以上併用しても構わない。
【0175】
また、ベンジルメチルケタール系、α−ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤等のラジカル重合開始剤に対しても優れた光重合増感効果を有している。
【0176】
具体的な化合物としては、ベンジルメチルケタール系ラジカル重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」ビー・エー・エス・エフ社製)等が挙げられ、α−ヒドロキシアルキルフェノン系ラジカル重合開始剤としては2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名「ダロキュア1173」ビー・エー・エス・エフ社製)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」ビー・エー・エス・エフ社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名「イルガキュア2959」ビー・エー・エス・エフ社製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−1−オン(商品名「イルガキュア127」ビー・エー・エス・エフ社製)が挙げられる。
【0177】
特に、ベンジルメチルケタール系ラジカル重合開始剤である2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」ビー・エー・エス・エフ社製)、α−ヒドロキシアルキルフェノン系ラジカル重合開始剤である2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名「ダロキュア1173」ビー・エー・エス・エフ社製)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」ビー・エー・エス・エフ社製)が好ましい。
【0178】
また、アセトフェノン系ラジカル重合開始剤であるアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−エトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−イソプロポキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−イソブトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル系ラジカル重合開始剤であるベンジル、4,4’−ジメトキシベンジル、アントラキノン系ラジカル重合開始剤である2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−フェノキシアントラキノン、2−(フェニルチオ)アントラキノン、2−(ヒドロキシエチルチオ)アントラキノン等も用いることができる。
【0179】
例示した光重合開始剤の中でもオニウム塩が特に好ましい。オニウム塩として、ヨードニウム塩だけではなく、スルホニウム塩に対しても、本発明の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーは、光重合増感効果を持つことも特徴の一つである。
【0180】
本発明の繰り返し単位が一般式(1)で表される9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを含有する光重合増感剤の光重合開始剤に対する使用量は、特に限定されないが、光重合開始剤に対して通常5重量%以上、100重量%以下の範囲、好ましくは10重量%以上、50重量%以下の範囲である。光重合増感剤の使用量が5重量%未満では光重合性化合物を光重合させるのに時間がかかりすぎてしまい、一方、100重量%を超えて使用しても添加に見合う効果は得られない。
【0181】
(光重合開始剤組成物)
本発明の繰り返し単位が一般式(1)で表される9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを含有する光重合増感剤は、直接、光重合性化合物に添加することもできるが、あらかじめ光重合開始剤と配合することにより光重合開始剤組成物を調製したのち、光重合性化合物に添加することもできる。すなわち、本発明の光重合開始剤組成物は、少なくとも、一般式(1)で表される9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを含有する光重合増感剤と光重合開始剤であるオニウム塩を含有する組成物である。
【0182】
(光重合性組成物)
さらに該光重合開始剤組成物と光重合性化合物を配合することにより、光重合性組成物を調製することもできる。本発明の光重合性組成物は、本発明の繰り返し単位が一般式(1)で表される9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを含有する光重合増感剤と光重合開始剤を含有する光重合開始剤組成物と、光ラジカル重合性化合物又は光カチオン重合性化合物とを含有する組成物である。本発明の繰り返し単位が一般式(1)で表される9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを含有する光重合増感剤と光重合開始剤は、別々に光ラジカル重合性化合物又は光カチオン重合性化合物に添加され、光ラジカル重合性化合物又は光カチオン重合性化合物中で、結果として光重合開始剤組成物を形成してもよい。
【0183】
光ラジカル重合性化合物としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の二重結合を有する有機化合物を用いることができる。これらのラジカル重合性化合物のうち、フィルム形成能等の面から、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル(以下、両者をあわせて(メタ)アクリル酸エステルという)が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカンジメタノールジアクリレート、イソボニルメタクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレート等が挙げられる。これらの光ラジカル重合性化合物は、一種でも二種以上の混合物であっても良い。
【0184】
光カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル等が挙げられる。エポキシ化合物として一般的なものは、脂環式エポキシ化合物、エポキシ変性シリコーン、芳香族のグリシジルエーテル等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製、商品名:セロキサイド2021P、セロキサイドはダイセル社の登録商標)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。エポキシ変性シリコーンとしては、東芝GEシリコーン製UV−9300等が挙げられる。芳香族グリシジル化合物としては、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン等が挙げられる。ビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。これらの光カチオン重合性化合物は、一種でも二種以上の混合物であっても良い。
【0185】
本発明の光重合性組成物において、光重合開始剤組成物の使用量は、光重合性組成物に対して0.005重量%以上、10重量%以下の範囲、好ましくは0.025重量%以上、5重量%以下である。0.005重量%未満だと光重合性組成物を光重合させるのに時間がかかってしまい、一方、10重量%を超えて添加すると光重合させて得られる光硬化物の硬度が低下し、硬化物の物性を悪化させるため好ましくない。
【0186】
なお、本発明の光重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、希釈剤、着色剤、有機又は無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の各種樹脂添加剤を配合してもよい。
【0187】
(光硬化物)
本発明の光硬化物は、光重合性組成物に光を照射して重合することにより、得ることができる。光重合性組成物に光を照射し重合させ光硬化させる場合、当該光重合性組成物をフィルム状に成形して光硬化させることもできるし、塊状に成形して光硬化させることもできる。フィルム状に成形して光硬化させる場合は、液状の当該光重合性組成物を例えばポリエステルフィルムなどの基材にバーコーターなどを用いて膜厚5〜300ミクロンになるように塗布する。一方、スピンコーティング法やスクリーン印刷法により、さらに薄い膜厚あるいは厚い膜厚にして塗布することもできる。
【0188】
このようにして調製した光重合性組成物からなる塗膜に、250〜500nmの波長範囲を含む紫外線を1〜1000mW/cm
2程度の強さで光照射することにより、光硬化物を得ることができる。用いる光源としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ガリウムドープドランプ、ブラックライト、405nm紫外線LED、395nm紫外線LED、385nm紫外線LED、365nm紫外線LED、青色LED、白色LED、フュージョン社製のDバルブ、Vバルブ等が挙げられる。また、太陽光等の自然光を使用することもできる。
【0189】
(光DSC測定)
本発明において、光重合性組成物の光照射下における光重合速度を定量的に評価する手法として、光DSC測定法を用いた。この手法によれば、試料に光を直接的に照射しながら、硬化に伴う発熱量を連続的にかつ簡便に測定することができる。光DSC測定装置にセットされた試料に光照射をすると光の硬化反応が始まり発熱が観測される。光硬化前は水平であったDSC曲線のベースラインが発熱側にシフトし、反応が終了すると元のベースラインの位置に戻る。このDSC曲線のピークの大きさから、発熱量を求めることができる。すなわち光重合性組成物に光を照射し、1mgあたりの発熱量を測定、比較することによって、重合の進行状況を評価することができる。
【0190】
(耐マイグレーション性の判定)
本発明の光重合性組成物に含まれる光重合増感剤がフィルム等に移行(マイグレーション)するかどうかを判定する方法としては、光重合増感剤を含む光重合性組成物を薄いフィルム状物に塗布したものを作成し、その上にポリエチレンフィルムを被せて一定温度(26℃)で一定期間保管し、その後ポリエチレンフィルムを剥がし、光重合増感剤がポリエチレンフィルムに移行しているかを調べ、耐マイグレーション性を判定した。剥がしたポリエチレンフィルムは、アセトンで表面の組成物を洗った後乾燥し、当該ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、光重合増感剤に起因する吸収強度の増大を調べることにより耐マイグレーション性を測定した。なお、当該測定には、紫外・可視分光光度計(島津製作所製、型式:UV2200)を用いた。比較例の化合物である9,10−ジブトキシアントラセンと量的な比較するために、得られた吸光度を9,10−ジブトキシアントラセンの吸光度の値に換算した。換算に当たっては、紫外・可視分光光度計により本発明の化合物及び9,10−ジブトキシアントラセンの260nmにおける吸光度を測定し、その吸光度の値とモル濃度からそれぞれのモル吸光係数を計算し、その比をもちいて換算した。
【実施例】
【0191】
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。また、特記しない限り、すべての部は重量部である。生成物の確認は下記の機器による測定に基づいて行った。
【0192】
(1)赤外線(IR)分光光度計:Thermo社製、型式is50 FT−IR
(2)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式ECS−400
(3)分子量分布:GPC、日本分光社製、2000シリーズ
【0193】
(本発明の化合物の合成実施例)
(実施例1)9,10−ジヒドロキシアントラセンとアジピン酸クロライドとの反応により得られるオリゴマー[化合物番号2−6]
窒素雰囲気下、撹拌翼を装着した200mlの四つ口フラスコに、20%NaOH水溶液30g(150ミリモル)、9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩17.4%水溶液28.7g(アントラキノンとして24ミリモル)、テトラブチルアンモニウムブロマイドの50%水溶液0.8g(1.2ミリモル)、反応溶媒としてトルエン50gを仕込んだ。そこにアジピン酸クロライド13.2g(72ミリモル)を、内温が20℃を超えないように3時間かけて滴下した。滴下終了後30分間撹拌を継続後、析出した結晶を減圧濾過し、トルエンとイオン交換水で洗浄した後に減圧乾燥することにより、9,10−ジヒドロキシアントラセンとアジピン酸クロライドとの反応により得られるオリゴマー8.4g(薄オレンジ色結晶)を得た。
(1)IR(cm
−1)2935、1754、1573、1362、1248、1110、908、756、733、609.
(2)
1H−MNR(400MHz,DMSO−D
6):δ=0.91−0.94(m),1.29−1.33(m),1.47−1.50(m),1.69−1.75(m),1.81−1.85(m),2.03−2.08(m)、2.17−2.19(m)、2.32−2.35(m)、3.06−3.09(m)、7.57−7.64(m)、7.94−7.95(m)、8.04−8.10(m)、8.21−8.23(m)
(3)分子量分布 n=2〜20
【0194】
(実施例2)9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマー[化合物番号2−10]
窒素雰囲気下、撹拌翼を装着した200mlの四つ口フラスコに、20%NaOH水溶液30g(150ミリモル)、9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩17.4%水溶液28.7g(アントラキノンとして24ミリモル)、テトラブチルアンモニウムブロマイドの50%水溶液0.8g(1.2ミリモル)、反応溶媒としてトルエン50gを仕込んだ。そこにセバコイル酸クロライド17.2g(72ミリモル)を、内温が20℃を超えないように3時間かけて滴下した。滴下終了後1時間撹拌を継続後、析出した結晶を減圧濾過し、イオン交換水とメタノールで洗浄した後に減圧乾燥することにより、9,10−ジヒドロキシアントラセンとアジピン酸クロライドとの反応により得られるオリゴマー5.9g(薄黄色結晶)を得た。
(1)IR(cm
−1)2927、2851、1751、1703、1353、1171、1102、755、736、609.
(2)
1H−MNR(400MHz,DMSO−D
6):δ=1.23(s)、1.32−1.83(m)、2.13−2.19(m)、2.25−2.32(m)、3.03−3.06(m)、3.56(s)、7.61−7.63(m)、7.93−7.95(m)、8.02−8.04(m)、8.21−8.23(m)
(3)分子量分布 n=2〜7
【0195】
(実施例3)2−メチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとアジピン酸クロライドとの反応により得られるオリゴマー[化合物番号2−17]
窒素雰囲気下、撹拌翼を装着した100mlの四つ口フラスコに、16%NaOH水溶液35.6g(140ミリモル)、2−メチル−9,10−アントラキノン2.0g(9ミリモル)、二酸化チオ尿素3.9g(36ミリモル)を仕込んだ。50〜60℃で1時間撹拌し、2−メチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩水溶液を調製した。20℃以下まで冷却後、テトラブチルアンモニウムブロマイドの50%水溶液0.3g(0.4ミリモル)、反応溶媒としてトルエン20gを仕込んだ。そこにアジピン酸クロライド4.9g(27ミリモル)を、内温が20℃を超えないように3時間かけて滴下した。滴下終了後1時間撹拌を継続後、析出した結晶を減圧濾過し、イオン交換水とメタノールで洗浄した後に減圧乾燥することにより、2−メチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとアジピン酸クロライドとの反応により得られるオリゴマー3.0g(オレンジ色結晶)を得た。
(1)IR(cm
−1)2943、1754、1367、1350、1110、914、811、744、711.
(2)
1H−MNR(400MHz,DMSO−D
6):δ=0.91−0.94(m)、1.29−1.31(m)、1.69−1.73(m)、1.80−1.86(m)、2.06(s)、2.29(s)、7.15−7.24(m)、7.41(s)、7.56(s)、7.74−7.81(m)、7.91−8.05(m)、8.11−8.13(m)、8.20−8.21(m).
(3)分子量分布 n=2〜11
【0196】
(実施例4)2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとアジピン酸クロライドとの反応により得られるオリゴマー[化合物番号2−23]
窒素雰囲気下、撹拌翼を装着した100mlの四つ口フラスコに、15%NaOH水溶液35.4g(135ミリモル)、2−エチル−9,10−アントラキノン2.0g(8.5ミリモル)、二酸化チオ尿素3.7g(34ミリモル)を仕込んだ。50〜60℃で1時間撹拌し、2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩水溶液を調製した。20℃以下まで冷却後、テトラブチルアンモニウムブロマイドの50%水溶液0.3g(0.4ミリモル)、反応溶媒としてトルエン20gを仕込んだ。そこにアジピン酸クロライド4.6g(25ミリモル)を、内温が20℃を超えないように3時間かけて滴下した。滴下終了後1時間撹拌を継続後、析出した結晶を減圧濾過し、イオン交換水とメタノールで洗浄した後に減圧乾燥することにより、2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとアジピン酸クロライドとの反応により得られるオリゴマー2.7g(オレンジ色結晶)を得た。
(1)IR(cm
−1)2931、1748、1352、1110、1038、815、739、592.
(2)
1H−MNR(400MHz,DMSO−D
6):δ=0.90−0.94(m)、1.17−1.18(m)、1.24−1.32(m)、1.48−1.55(m)、1.68−1.73(m)、1.80−1.84(m)、2.06(s)、2.25(s)、2.29(s)、2.75−2.83(m)、3.05(s)、3.12−3.40(m)、7.45(s)、7.56(s)、7.74−7.78(m)、7.91−8.05(m)、8.13−8.15(m)、8.19−8.22(m).
(3)分子量分布 n=2〜22
【0197】
(実施例5)2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマー[化合物番号2−25]
窒素雰囲気下、撹拌翼を装着した100mlの四つ口フラスコに、15%NaOH水溶液35.4g(135ミリモル)、2−エチル−9,10−アントラキノン2.0g(8.5ミリモル)、二酸化チオ尿素3.7g(34ミリモル)を仕込んだ。50〜60℃で1時間撹拌し、2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩水溶液を調製した。20℃以下まで冷却後、テトラブチルアンモニウムブロマイドの50%水溶液0.3g(0.4ミリモル)、反応溶媒としてトルエン20gを仕込んだ。そこにセバコイル酸クロライド6.1g(25ミリモル)を、内温が20℃を超えないように3時間かけて滴下した。滴下終了後1時間撹拌を継続後、析出した結晶を減圧濾過し、イオン交換水とメタノールで洗浄した後に減圧乾燥することにより、2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマー3.5g(黄色結晶)を得た。
(1)IR(cm
−1)2928、2855、1754、1349、1150、1099、1040、815、757、733.
(2)
1H−MNR(400MHz,DMSO−D
6):δ=0.91−0.94(m)、1.23−1.49(m)、1.85(s)、2.00−2.06(m)、7.59−7.99(m).
(3)分子量分布 n=2〜22
【0198】
(実施例6)9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマー[化合物番号3−6]
窒素雰囲気下、撹拌子を入れた50mlの四つ口フラスコに、9,10−ジヒドロキシアントラセン1g(4.8ミリモル)、イソホロンジイソシアネート1.6g(7.1ミリモル)、トリエチルアミン0.05g(0.5ミリモル)、反応溶媒としてテトラヒドロフラン20gを仕込んだ。室温で2時間、65℃で2時間撹拌後、メタノール1mlで反応をクエンチし、室温まで冷却した。不溶分を濾別後、濾液を濃縮乾固することにより、9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマー2.4g(オレンジ色結晶)を得た。
(1)IR(cm
−1)3310、2949、1698、1526、1232、1042、696.
(2)
1H−MNR(400MHz,DMSO−D
6):δ=0.75−1.15(m)、1.39−1.51(m)、1.73−1.77(m)、2.69−2.74(m)、3.08−3.14(m)、3.48−3.61(m)、6.95−6.97(m)、7.08−7.11(m)、7.61(s)、7.92−7.96(m)、8.02−8.04(m)、8.20−8.23(m).
(3)分子量分布 n=2〜9
【0199】
(実施例7)9,10−ジヒドロキシアントラセンと2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマー[化合物番号3−4]
窒素雰囲気下、撹拌子を入れた50mlの四つ口フラスコに、9,10−ジヒドロキシアントラセン1g(4.8ミリモル)、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート1.5g(7.1ミリモル)、トリエチルアミン0.05g(0.5ミリモル)、反応溶媒としてテトラヒドロフラン20gを仕込んだ。室温で2時間、65℃で2時間撹拌後、メタノール1mlで反応をクエンチし、室温まで冷却した。不溶分を濾別後、濾液を濃縮乾固することにより、9,10−ジヒドロキシアントラセンと2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマー1.7g(黄色結晶)を得た。
(1)IR(cm
−1)3327、2954、2262、1710、1522、1220、1166、1041、621.
(2)
1H−MNR(400MHz,DMSO−D
6):δ=0.76−1.03(m)、1.16−1.60(m)、2.81−3.22(m)、7.57(s)、7.93−7.95(m)、8.01(s)、8.20−8.23(m).
(3)分子量分布 n=2〜33
【0200】
(実施例8)9,10−ジヒドロキシアントラセンと2,4−トルエンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマー[化合物番号3−7]
窒素雰囲気下、撹拌子を入れた50mlの四つ口フラスコに、9,10−ジヒドロキシアントラセン1g(4.8ミリモル)、2,4−トルエンジイソシアネート2.1g(12ミリモル)、ジラウリン酸ジブチルスズ0.05g(0.08ミリモル)、反応溶媒としてテトラヒドロフラン20gを仕込んだ。室温で2時間、65℃で2時間撹拌後、メタノール1mlで反応をクエンチし、室温まで冷却した。反応液を濃縮乾固することにより、9,10−ジヒドロキシアントラセンと2,4−トルエンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマー3.0g(黄色結晶)を得た。
(1)IR(cm
−1)3291、2261、1715、1592、1516、1367、1200、1170、1060、990、869、869、810、737.
(2)
1H−MNR(400MHz,DMSO−D
6):δ=0.84(s)、1.23(s)、1.73−1.78(m)、1.96−2.01(m)、2.08−2.26(m)、3.57−3.61(m)、4.23−4.27(m)、4.75−5.04(m)、6.35−7.41(m)、7.64−7.72(m)、7.93−7.95(m)、8.14−8.28(m).
(3)分子量分布 n=2〜33
【0201】
(実施例9)9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,4−ジブロモブタンとの反応により得られるオリゴマー[化合物番号4−4]
攪拌機、温度計付きの500mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、1,4−ジブロモブタン25.9g(120ミリモル)、メチルイソブチルケトン80.0g、50%テトラブチルアンモニウムブロマイド水溶液3.1gを入れた。内温を92℃まで昇温し、9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩17.9%水溶液111.7g(アントラキノンとして96ミリモル)の滴下を開始した。3時間かけて滴下を行い、その後内温を保ったまま、押し込み反応を2時間行った。反応終了後、室温まで冷却し析出物を濾過し、メチルイソブチルケトン20.0ml、純水40.0mlで各2回洗浄し、乾燥することで9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,4−ジブロモブタンとの反応により得られるオリゴマー24.8g(黄色結晶)を得た。
(1)IR(cm
−1)2953,2881,1409,1349,1065,1019,964,769,678.
(2)
1H−MNR(400MHz,CDCl
3):δ=2.00−2.50(m),3.50−3.60(m),4.10−4.30(m),7.30−7.50(m),8.10−8.40(m)
(3)分子量分布 n=2〜13
【0202】
(実施例10)9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモペンタンとの反応により得られるオリゴマー[化合物番号4−6]
攪拌機、温度計付きの100mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、1,5−ジブロモペンタン6.9g(30ミリモル)、メチルイソブチルケトン20.0g、50%テトラブチルアンモニウムブロマイド水溶液0.8gを入れた。内温を75℃まで昇温し、9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩17.9%水溶液27.9g(アントラキノンとして24ミリモル)の滴下を開始した。3時間かけて滴下を行い、その後、内温を90℃まで昇温し、押し込み反応を2時間行った。反応終了後、室温まで冷却し析出物を濾過し、メチルイソブチルケトン5.0ml、純水10.0mlで各2回洗浄し、乾燥することで9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモペンタンとの反応により得られるオリゴマー5.5g(黄色結晶)を得た。
(1)IR(cm
−1)2938,2862,1404,1373,1344,1065,960,769,679.
(2)
1H−MNR(400MHz,CDCl
3):δ=1.80−1.90(m),2.00−2.30(m),3.45−3.55(m),4.15−4.35(m),7.40−7.55(m),8.20−8.40(m)
(3)分子量分布 n=2〜22
【0203】
(実施例11)9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,8−ジブロモオクタンとの反応により得られるオリゴマー[化合物番号4−10]
攪拌機、温度計付きの100mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、1,8−ジブロモオクタン8.2g(30ミリモル)、メチルイソブチルケトン20.0g、50%テトラブチルアンモニウムブロマイド水溶液0.8gを入れた。内温を75℃まで昇温し、9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩17.9%水溶液27.9g(アントラキノンとして24ミリモル)の滴下を開始した。3時間かけて滴下を行い、その後、内温を90℃まで昇温し、押し込み反応を2時間行った。反応終了後、室温まで冷却し析出物を濾過し、メチルイソブチルケトン5.0ml、純水10.0mlで各2回洗浄し、乾燥することで9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,8−ジブロモオクタンとの反応により得られるオリゴマー9.0g(黄色結晶)を得た。
(1)IR(cm
−1)2912,2853,1463,1404,1346,1065,1018,770,750,673.
(2)
1H−MNR(400MHz,CDCl
3):δ=1.30−2.20(m),3.30−3.45(m),4.05−4.25(m),7.30−7.50(m),8.15−8.35(m)
(3)分子量分布 n=2〜11
【0204】
(実施例12)9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,9−ジブロモノナンとの反応により得られるオリゴマー[化合物番号4−11]
攪拌機、温度計付きの100mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、1,9−ジブロモノナン8.6g(30ミリモル)、メチルイソブチルケトン20.0g、50%テトラブチルアンモニウムブロマイド水溶液0.8gを入れた。内温を75℃まで昇温し、9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩17.9%水溶液27.9g(アントラキノンとして24ミリモル)の滴下を開始した。3時間かけて滴下を行い、その後、内温を90℃まで昇温し、押し込み反応を2時間行った。反応終了後、室温まで冷却し、水層(下層)を除き濃縮乾固することで9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,9−ジブロモノナンとのオリゴマー11.2g(オレンジ色結晶)を得た。
(1)IR(cm
−1)2926,2853,1404,1348,1066,1018,769,677.
(2)
1H−MNR(400MHz,CDCl
3):δ=0.80−2.30(m),3.30−3.45(m),4.05−4.25(m),7.35−7.55(m),8.15−8.40(m)
(3)分子量分布 n=2〜31
【0205】
(実施例13)9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,10−ジブロモデカンとの反応により得られるオリゴマー[化合物番号4−12]
攪拌機、温度計付きの100mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、1,10−ジブロモデカン9.0g(30ミリモル)、メチルイソブチルケトン20.0g、50%テトラブチルアンモニウムブロマイド水溶液0.8gを入れた。内温を75℃まで昇温し、9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩17.9%水溶液27.9g(アントラキノンとして24ミリモル)の滴下を開始した。3時間かけて滴下を行い、その後、内温を90℃まで昇温し、押し込み反応を2時間行った。反応終了後、室温まで冷却し、メタノール40.0ml入れて結晶を析出させ、析出物を濾過し、純水10.0ml、メタノール10.0mlで各2回洗浄し、乾燥することで9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,10−ジブロモノデカンとの反応により得られるオリゴマー(黄色結晶)9.7gを得た。
(1)IR(cm
−1)2923,2851,1404,1346,1064,1017,764,726,675.
(2)
1H−MNR(400MHz,CDCl
3):δ=1.20−2.20(m),3.35−3.45(m),4.10−4.30(m),7.40−7.55(m),8.20−8.35(m)
(3)分子量分布 n=2〜34
【0206】
(実施例14)9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモ−3−メチルペンタンとの反応により得られるオリゴマー[化合物番号4−8]
攪拌機、温度計付きの100mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、1,5−ジブロモ−3−メチルペンタン3.7g(15ミリモル)、メチルイソブチルケトン10.0g、50%テトラブチルアンモニウムブロマイド水溶液0.4gを入れた。内温を75℃まで昇温し、9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩17.9%水溶液14.0g(アントラキノンとして12ミリモル)の滴下を開始した。3時間かけて滴下を行い、その後、内温を90℃まで昇温し、押し込み反応を1時間行った。反応終了後、室温まで冷却し析出物を濾過し、メチルイソブチルケトン5.0ml、純水10.0mlで各2回洗浄し、乾燥することで9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモ−3−メチルペンタンとの反応により得られるオリゴマー1.8g(黄色結晶)を得た。
(1)IR(cm
−1)2957,2928,2871,1457,1434,1404,1343,1064,755,676.
(2)
1H−MNR(400MHz,CDCl
3):δ=0.85−1.30(m),1.75−2.20(m),2.25−2.55(m),3.45−3.60(m),4.15−4.40(m),7.40−7.50(m),8.20−8.40(m)
(3)分子量分布 n=2〜15
【0207】
(実施例15)9,10−ジヒドロキシアントラセンとネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルとの反応により得られるオリゴマー[化合物番号5−2]
攪拌機、温度計付きの100mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル6.5g(30ミリモル)、メチルイソブチルケトン20.0g、50%テトラブチルアンモニウムブロマイド水溶液0.8gを入れた。内温を75℃まで昇温し、9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩17.9%水溶液27.9g(アントラキノンとして24ミリモル)の滴下を開始した。30分かけて滴下を行い、2時間反応させた後、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル6.5g(30ミリモル)を追加し、さらに5時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却し、水層(下層)を除いた。その後、反応液の不溶分濾過を行い、ろ液を濃縮乾固することで、9,10−ジヒドロキシアントラセンとネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルとの反応により得られるオリゴマー11.8g(橙色水あめ)を得た。
(1)IR(cm
−1)3398,2869,1706,1458,1398,1349,1100,1065,995,771.
(2)
1H−MNR(400MHz,DMSO−D
6):δ=0.65−0.90(m),3.00−4.70(m),5.25−5.40(m),7.35−7.55(m),8.20−8.40(m)
(3)分子量分布 n=2〜30
【0208】
(光重合性組成物と光重合開始剤としてヨードニウム塩を用いた系における光DSC測定)
本実施例において光DSC測定は下記のようにして行った。DSC測定装置は日立ハイテク社製XDSC−7200を用い、それに光DSC測定用ユニットを装着し光を照射しながらDSC測定ができるよう設えた。光照射用の光源は林時計工業社製LA−410UVを用い、バンドパスフィルターで405nm光を取り出してサンプルに照射できるようにした。光の照度は50mW/cm
2とした。光源の光はグラスファイバーを用いてサンプル上部まで導けるようにし、光照射開始と同時にDSC測定ができるよう光源のシャッターをトリガー制御できるようにした。光DSCの測定はサンプルを1mg程度測定用アルミパンの中に精秤し、DSC測定部に収めたのち光DSCユニットを装着した。その後測定部内を窒素雰囲気に保ち10分間静置して、測定を開始した。測定は通常光を照射しながら6分間継続した。一回目の測定後、サンプルはそのままで再度同条件で測定を行い、一回目の測定結果から二回目の測定結果を差し引いた値を該サンプルの測定結果とした。結果は特に断らない限り光照射後1分間におけるサンプル1mgあたりの総発熱量で比較した。測定条件によっては1分間で光反応が完結しない場合もあるが光照射初期の反応挙動を比較するために1分間の総発熱量で比較した。光照射に伴ってサンプル(光重合性組成物)の重合が生じた場合、重合に伴う反応熱が生ずるが光DSCではその反応熱を測定することができる。そのため、光DSCによって光照射による重合進行の状況が測定できることになる。本実施例では光照射後1分間の総発熱量を測定しているが、同一の重合性化合物を用いている限りにおいてはその値を比較した場合値が大きいほど重合が効率的に進行していると考えることができる。
【0209】
本発明の,9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを光カチオン増感剤とする光カチオン重合性組成物の光重合性能評価試験について以下に記載する。
【0210】
「光硬化速度評価例1」
光カチオン重合性化合物として3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製、商品名:セロキサイド2021P、セロキサイドはダイセル社の登録商標)100重量部に対して、光重合開始剤である4−イソブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート(ビー・エー・エス・エフ社製、商品名イルガキュア250)2重量部、光カチオン重合増感剤として、実施例5で得られた2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマー0.5重量部を室温で混合し、光カチオン重合性組成物を調製した。この光重合性組成物について光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は94mJ/mgであった。
【0211】
「光硬化速度評価例2」
「光硬化速度評価例1」の2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーを、実施例6と同様に得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーに変えた以外は「光硬化速度評価例1」と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は52mJ/mgであった。
【0212】
「光硬化速度評価例3」
「光硬化速度評価例1」の2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーを、実施例10と同様に得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモペンタンとの反応により得られるオリゴマーに変えた以外は「光硬化速度評価例1」と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は102mJ/mgであった。
【0213】
「光硬化速度評価例4」
「光硬化速度評価例1」の2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーを、実施例12と同様に得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,9−ジブロモノナンとの反応により得られるオリゴマーに変えた以外は「光硬化速度評価例1」と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は134mJ/mgであった。
【0214】
「光硬化速度評価例5」
「光硬化速度評価例1」の2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーを、実施例13と同様に得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,10−ジブロモデカンとの反応により得られるオリゴマーに変えた以外は「光硬化速度評価例1」と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は142mJ/mgであった。
【0215】
「光硬化速度評価例6」
「光硬化速度評価例1」の2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーを、実施例14と同様に得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモ−3−メチルペンタンとの反応により得られるオリゴマーに変えた以外は「光硬化速度評価例1」と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は186mJ/mgであった。
【0216】
「光硬化速度評価例7」
「光硬化速度評価例1」の2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーを、実施例15と同様に得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンとネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルとの反応により得られるオリゴマーに変えた以外は「光硬化速度評価例1」と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は114mJ/mgであった。
【0217】
「光硬化速度比較例1」
光カチオン重合性化合物として3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製、商品名:セロキサイド2021P、セロキサイドはダイセル社の登録商標)100重量部に対して、光重合開始剤である4−イソブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート(ビー・エー・エス・エフ社製、商品名イルガキュア250)2重量部を室温で混合し、光カチオン重合性組成物を調製した。この光重合性組成物について光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は0.3mJ/mgであった。
【0218】
「光硬化速度比較例2」
「光硬化速度評価例1」の2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーの代わりに公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンを使用すること以外は「光硬化速度評価例1」と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は147mJ/mgであった。
【0219】
光硬化速度評価例1から7と比較例1及び2の結果を表9にまとめた。
【0220】
【表9】
【0221】
本発明での化合物を光ラジカル重合増感剤とするラジカル重合性組成物の光重合性能評価試験について以下に記載する。
【0222】
「光硬化速度評価例8」
光ラジカル重合性化合物として25重量部のトリメチロールプロパントリアクリレート(東京化成社製)、75重量部のフェノキシエチルメタクリレート(日立化成社製)に対して、光開始剤である4−イソブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート(ビー・エー・エス・エフ社製、商品名イルガキュア250)4重量部、光カチオン重合増感剤として、実施例6で得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマー0.5重量部を室温で混合し、光ラジカル重合性組成物を調製した。この光重合性組成物について光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は75mJ/mgであった。
【0223】
「光硬化速度評価例9」
「光硬化速度評価例8」の9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーを、実施例10と同様に得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモペンタンとの反応により得られるオリゴマーに変えた以外は「光硬化速度評価例8」と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は258mJ/mgであった。
【0224】
「光硬化速度評価例10」
「光硬化速度評価例8」の9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーを、実施例12と同様に得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,9−ジブロモノナンとの反応により得られるオリゴマーに変えた以外は「光硬化速度評価例8」と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は51mJ/mgであった。
【0225】
「光硬化速度評価例11」
「光硬化速度評価例8」の9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーを、実施例13と同様に得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,10−ジブロモデカンとの反応により得られるオリゴマーに変えた以外は「光硬化速度評価例8」と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は58mJ/mgであった。
【0226】
「光硬化速度評価例12」
「光硬化速度評価例8」の9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーを、実施例14と同様に得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモ−3−メチルペンタンとの反応により得られるオリゴマーに変えた以外は「光硬化速度評価例8」と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は56mJ/mgであった。
【0227】
「光硬化速度評価例13」
「光硬化速度評価例8」の9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーを、実施例15と同様に得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンとネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルとの反応により得られるオリゴマーに変えた以外は「光硬化速度評価例8」と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は164mJ/mgであった。
【0228】
「光硬化速度比較例3」
光ラジカル重合性化合物として25重量部のトリメチロールプロパントリアクリレート(東京化成社製)、75重量部のフェノキシエチルメタクリレート(日立化成社製)に対して、光開始剤である4−イソブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート(ビー・エー・エス・エフ社製、商品名イルガキュア250)4重量部を室温で混合し、光ラジカル重合性組成物を調製した。この光重合性組成物について光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は3mJ/mgであった。
【0229】
「光硬化速度比較例4」
「光硬化速度評価例8」の9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーのオリゴマーを、公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンを使用すること以外は「光硬化速度評価例8」と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から1分間の総発熱量は15mJ/mgであった。
【0230】
光硬化速度評価例8から13と比較例3及び4の結果を表10にまとめた。
【0231】
【表10】
【0232】
光硬化速度評価例1から7と光硬化速度比較例1の結果を比較することにより明らかなように、光カチオン重合において本願の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを添加することにより、総発熱量が増加しており、著しく重合反応を促進していることがわかる。また、光硬化速度評価例8から13と光硬化速度比較例1の結果を比較することにより明らかなように、光ラジカル重合においても本願の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーを添加することにより、総発熱量が増加しており、著しく重合反応を促進していることがわかる。すなわち、本願の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーが、光カチオン重合及び光ラジカル重合のいずれにおいても光重合増感効果を持つことが分かる。
【0233】
更に、光硬化速度評価例1から8と光硬化速度比較例2の結果を比較することにより明らかなように、光カチオン重合において本願の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーは、公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンと同等もしくはそれ以上の光重合増感効果を持つことがわかる。また、光硬化速度評価例8から13と光硬化速度比較例4の結果を比較することにより明らかなように、光ラジカル重合においても本願の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーは、公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンと同等もしくはそれ以上の光重合増感効果を持つことがわかる。
【0234】
(光カチオン重合における耐マイグレーション性の評価実施例)
(マイグレーション評価例1)
エポキシ光カチオン重合性化合物として3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製、商品名:セロキサイド2021P、セロキサイドはダイセル社の登録商標)100部に対し、光カチオン重合増感剤として実施例5の方法で合成した2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーを0.5部混合し調製した組成物をポリエステルフィルム上で膜厚が12ミクロンになるようにバーコーターを用いて塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したもの、三日間保管したもの、六日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い乾燥した後、フィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーに起因する吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.011、三日保管後0.005、六日保管後0.004であった。
【0235】
(マイグレーション評価例2)
光重合増感剤として2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーの代わりに実施例6と同様の方法で合成した9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーを使用すること以外はマイグレーション評価例1と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーに起因する吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後、三日保管後、六日保管後ともに0.000であった。
【0236】
(マイグレーション評価例3)
光重合増感剤として2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーの代わりに実施例10と同様の方法で合成した9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモペンタンとの反応により得られるオリゴマーを使用すること以外はマイグレーション評価例1と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモペンタンとの反応により得られるオリゴマーに起因する吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.003、三日保管後0.000、六日保管後0.000であった。
【0237】
(マイグレーション評価例4)
光重合増感剤として2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーの代わりに実施例12と同様の方法で合成した9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,9−ジブロモノナンとの反応により得られるオリゴマーを使用すること以外はマイグレーション評価例1と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,9−ジブロモノナンとの反応により得られるオリゴマーに起因する吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.007、三日保管後0.009、六日保管後0.004であった。
【0238】
(マイグレーション評価例5)
光重合増感剤として2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーの代わりに実施例13と同様の方法で合成した9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,10−ジブロモデカンとの反応により得られるオリゴマーを使用すること以外はマイグレーション評価例1と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,10−ジブロモデカンとの反応により得られるオリゴマーに起因する吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.014、三日保管後0.020、六日保管後0.043であった。
【0239】
(マイグレーション評価例6)
光重合増感剤として2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーの代わりに実施例14と同様の方法で合成した9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモ−3−メチルペンタンとの反応により得られるオリゴマーを使用すること以外はマイグレーション評価例1と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモ−3−メチルペンタンとの反応により得られるオリゴマーに起因する吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.000、三日保管後0.000、六日保管後0.001であった。
【0240】
(マイグレーション評価例7)
光重合増感剤として2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーの代わりに実施例15と同様の方法で合成した9,10−ジヒドロキシアントラセンとネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルとの反応により得られるオリゴマーを使用すること以外はマイグレーション評価例1と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ジヒドロキシアントラセンとネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルとの反応により得られるオリゴマーに起因する吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.002、三日保管後0.000、六日保管後0.000であった。
【0241】
(マイグレーション比較例1)
光重合増感剤として2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセンとセバコイル酸クロライドとの反応により得られるオリゴマーの代わりに公知の光カチオン重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンを使用すること以外は評価例1と同様に調製した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ジブトキシアントラセンの吸光度は、一日保管後0.430、二日保管後0.452、四日保管後0.427であった。
【0242】
マイグレーション評価例1から7と比較例1の結果を表11にまとめた。
【0243】
【表11】
【0244】
(光ラジカル重合における耐マイグレーション性の評価実施例)
【0245】
(マイグレーション評価例8)
光ラジカル重合性化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート25部、フェノキシエチルメタクリレート75部を光ラジカル重合増感剤として実施例6と同様の方法で合成した9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマー0.5部を混合し調製した組成物をポリエステルフィルム上で膜厚が12ミクロンになるようにバーコーターを用いて塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したものと三日間保管したものと六日間保管したものを調製し、それぞれ保管後、被せたポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い、乾燥した後、当該ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーに起因する吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後、三日保管後、六日後保管後ともに0.000であった。
【0246】
(マイグレーション評価例9)
9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーの代わりに実施例10と同様の方法で合成した9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモペンタンとの反応により得られるオリゴマーを使用すること以外はマイグレーション評価例8と同様に調製して試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモペンタンとの反応により得られるオリゴマーに起因する吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.012、三日保管後0.012、六日保管後0.012であった。
【0247】
(マイグレーション評価例10)
9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーの代わりに実施例12と同様の方法で合成した9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,9−ジブロモノナンとの反応により得られるオリゴマーを使用すること以外はマイグレーション評価例8と同様に調製して試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,9−ジブロモノナンとの反応により得られるオリゴマーに起因する吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.006、三日保管後0.009、六日保管後0.008であった。
【0248】
(マイグレーション評価例11)
9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーの代わりに実施例13と同様の方法で合成した9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,10−ジブロモデカンとの反応により得られるオリゴマーを使用すること以外はマイグレーション評価例8と同様に調製して試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,10−ジブロモデカンとの反応により得られるオリゴマーに起因する吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.015、三日保管後0.035、六日保管後0.013であった。
【0249】
(マイグレーション評価例12)
9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーの代わりに実施例14と同様の方法で合成した9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモ−3−メチルペンタンとの反応により得られるオリゴマーを使用すること以外はマイグレーション評価例8と同様に調製して試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ジヒドロキシアントラセンと1,5−ジブロモ−3−メチルペンタンとの反応により得られるオリゴマーに起因する吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.000、三日保管後0.004、六日保管後0.000であった。
【0250】
(マイグレーション評価例13)
9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーの代わりに実施例15と同様の方法で合成した9,10−ジヒドロキシアントラセンとネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルとの反応により得られるオリゴマーを使用すること以外はマイグレーション評価例8と同様に調製して試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ジヒドロキシアントラセンとネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルとの反応により得られるオリゴマーに起因する吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後、三日保管後、六日保管後ともに0.000であった。
【0251】
(マイグレーション比較例2)
9,10−ジヒドロキシアントラセンとイソホロンジイソシアネートとの反応により得られるオリゴマーの代わりに公知の光ラジカル重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンを使用すること以外はマイグレーション評価例1と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、得られた9,10−ジブトキシアントラセンの吸光度は、一日保管後0.402、三日保管後0.401、六日後0.409であった。
【0252】
マイグレーション評価例8から13と比較例2の結果を表12にまとめた。
【0253】
【表12】
【0254】
マイグレーション評価例1から7とマイグレーション比較例1を比較することにより明らかなように、光カチオン重合性組成物中において、公知の光カチオン重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンは該光カチオン重合性組成物の上に被せたフィルムにかなりの程度移行しているのに対して、本願の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーは、いずれの場合もその移行程度は極めて低く、耐マイグレーション性に優れているといえる。また、更に、マイグレーション評価例8から13とマイグレーション比較例2を比較することにより明らかなように、光ラジカル重合性組成物中においても、公知の光ラジカル重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンは、光ラジカル重合性組成物の上に被せたフィルムにかなりの程度移行しているのに対して、本願の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーは、いずれの場合もその移行程度は極めて低く、耐マイグレーション性に優れているといえる。
【0255】
以上の結果より、本発明の9,10−ビス(置換オキシ)アントラセン化合物のオリゴマーは、光カチオン重合及び光ラジカル重合において、公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン化合物と比較して、同等の光重合増感能を有するだけでなく、耐マイグレーション性が高い優れた化合物であり、光重合増感剤として極めて有用な化合物であることが判る。