【解決手段】本発明は、シクロベンザプリンHClおよびマンニトールの共融物を含む、薬学的組成物および前記薬学的組成物を製造する方法に関するものである。本発明の実施形態において有用な化合物は、シクロベンザプリンHClである。一部の実施形態では、該化合物は微細化されている。これに代わる実施形態では、該化合物は微細化されていない。一部の実施形態では、該化合物は、1つまたはそれより多くの結晶アイソフォームで存在し得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な記載)
特に断らなければ、本願で使用されている科学的および技術的用語は、当業者が普通に理解している意味を有するものとする。一般的に、本明細書で記載されている、薬理学、細胞および組織培養、分子生物学、細胞および癌生物学、神経生物学、神経化学、ウイルス学、免疫学、微生物学、遺伝子およびタンパク質および核酸化学の技術に関連して使用されている命名法および技術は、当業界で周知の慣用的なものである。
【0018】
本発明の方法および技術は、一般的に、特に断らなければ、当業界で周知の慣用的方法に従って、また本明細書全体を通して引用され、検討されている様々な一般的およびより特定された参考文献に記載された要領で実施される。
【0019】
本明細書で使用されている化学用語は、“The McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms”、Parker S.編、McGraw−Hill、サンフランシスコ、カリフォルニア(1985)により具体的に示されているように、当業界における慣用法にしたがって使用されている。
【0020】
本願で参照されている上記および任意の他の出版物、特許および公開された特許出願の全てについて、参照により本明細書に特に援用する。対立する場合、本明細書が、その明確な定義を含め、支配するものとする。
【0021】
本明細書全体を通して、「〜を含む(comprise)」の語または「〜を含む(comprises)」または「〜を含む(comprising)」などの変形は、述べられた完全体(または成分)または完全体(または成分)の群が包含されることを意味するが、任意の他の完全体(または成分)または完全体(または成分)の群を排除するものではないものと解釈される。
【0022】
単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈に明らかな他の指摘がなければ、複数の場合も含む。
【0023】
「〜を含む(including)」の語は、「限定される訳ではないが、〜を含む」を意味するのに使用される。「〜を含む」および「限定される訳ではないが、〜を含む」は互換可能に使用される。
【0024】
「患者」、「被験体」または「個体」は、互換可能に使用されており、ヒトまたはヒト以外の動物のいずれかを指す。これらの用語は、ヒト、霊長類、家畜(ウシ、ブタなどを含む)、愛玩動物(例、イヌ、ネコなど)およびげっ歯類(例、マウスおよびラット)などの哺乳類を包含する。
【0025】
ある状態または患者を「処置する」とは、臨床結果を含む、有益な、または所望の結果を得るために行動を起こすことをいう。有益な、または所望の臨床結果には、限定される訳ではないが、本明細書記載の疾患または状態に関連した1つまたはそれより多くの症状の軽減または改善が含まれる。
【0026】
被験体にある物質、化合物、または薬剤「を投与する(こと)」または「の投与」は、当業者に周知の様々な方法の1つを用いて実施され得る。例えば、化合物または薬剤は、舌下または鼻腔内、肺への吸入または直腸経由で投与され得る。また、投与は、例えば、1回または複数回、および/または1つまたはそれを超える延長期間にわたって実施され得る。一部の実施態様では、投与は、自己投与を含む直接投与および薬物処方の行為を含む間接投与の両方を含む。例えば、本明細書で使用されているように、患者に対し、薬物を自己投与するよう指示するか、または別の者に薬物を投与させる指示をする、および/または患者に薬物の処方箋を提供する医師は、患者に薬物を投与している。
【0027】
固体薬物製品の製剤化では、原薬と賦形剤と間に起こり得る相互作用の知識は、化学的および物理的安定性の予測にとって重要なポイントである。
【0028】
溶解性および化学的構造が変えられるため、非常に多くの場合賦形剤はAPIの生物活性および化学的安定性を改変し得る。場合によっては、賦形剤が経時的な化学的安定性プロファイルを改善し、最終剤形の望ましくない物理的作用を回避することも可能である。
【0029】
共融系は、同じ成分で作製された任意の他の組成物よりも低温で融解する単一化学組成を有する化学的化合物または要素の混合物である。共融物を含む組成物は、共融組成物として知られ、その融解温度は共融温度として知られている。共融組成物を規定するためには、異なる化合物比を分析することにより、2元相図を構築するべきである。
【0030】
錠剤特性に対する共融物の効果は、圧縮により緊密な接触および共融物の形成に十分な相溶性が提供されることを示す。共融組成物は、それらの非共融対応物質よりも高い安定性および/または溶解速度を有することが多い。共融物は溶解性を高めるため、それらを使用することにより、固体分散液および分散系における透過性を増加させることができる。しかしながら、ある種の錠剤化剤形の開発において、望ましくない共融物形成(湿式造粒法などの製造作業中)は、低い共融物融解温度、粘着性、予測できない硬度、不安定性または安定性の迅速審査における難点など、錠剤の物理または化学特性の望まれていない変化を招き得る。
【0031】
マンニトールおよびソルビトールは、固体薬物製品で一般的に使用される賦形剤である。マンニトールおよびソルビトールは、6炭素糖アルコール異性体である。糖アルコールは、カルボニル基が第1級または第2級ヒドロキシル基に還元された水素化炭水化物である。他の6炭素糖アルコールとしては、イノシトール、ガラクチトール、フシトールおよびイジトールが挙げられる。
【0032】
マンニトールおよびソルビトールは薬学的組成物中に含まれ得るが、典型的にはそれらが物理的には不活性であるが、甘味または口内での冷涼効果などの質的な利益をもたらすためである。したがって、マンニトールが、塩基性化剤と一緒でも薬学的に許容される安定性を有する錠剤をもたらす、シクロベンザプリンHClとの共融組成物を形成したことの発見は、驚くべきことであった。対照的に、ソルビトールは、(示差走査熱量測定装置で)加熱するとシクロベンザプリンHClを溶解し、共融物を形成せず、室温で塩基性化剤によって分解する錠剤をもたらしており、共融物形成の不確実性およびマンニトールと形成された共融物の保護効果が強調される。理論に拘束されることを望むものではないが、マンニトールおよびシクロベンザプリンHClの2つの結晶格子が共に浸透し、この共浸透性の物理的状態によって、シクロベンザプリンHClが水和および他の化学的相互作用から保護される可能性がある。
(化合物)
【0033】
本発明の実施形態において有用な化合物は、シクロベンザプリンHClである。一部の実施形態では、該化合物は微細化されている。これに代わる実施形態では、該化合物は微細化されていない。一部の実施形態では、該化合物は、1つまたはそれより多くの結晶アイソフォームで存在し得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「シクロベンザプリンHCl」は、シクロベンザプリンの医薬的に許容され得るシクロベンザプリン塩酸塩をいう。
(共融組成物)
【0035】
一部の実施形態において、本発明は、マンニトールおよび医薬品有効成分の共融混合物を含む薬学的組成物を提供する。ある特定の実施形態では、医薬品有効成分は、シクロベンザプリンHClである。
【0036】
一部の実施形態において、本発明は、マンニトールおよびシクロベンザプリンHClの共融混合物(例えば、βマンニトール共融物、δマンニトール共融物、またはそれらの組み合わせ)を含む薬学的組成物を提供する。ある特定の実施形態(例えば、組成物がβマンニトール共融物を含むとき)では、共融物は、143.6±3℃の融解温度を有する。ある特定の実施形態では、共融物の融解温度は、おおよそ135.6℃、136.6℃、137.6℃、138.6℃、139.6℃、140.6℃、141.6℃、142.6℃、143.6℃、144.6℃、145.6℃、146.6℃、147.6℃、148.6℃、149.6℃、150.6℃、151.6℃、152.6℃、または153.6℃である。ある特定の実施形態(例えば、組成物がδマンニトール共融物を含むとき)では、共融物は、134±3℃の融解温度を有する。ある特定の実施形態(例えば、組成物がδマンニトール共融物を含むとき)では、共融物の融解温度は、おおよそ124℃、125℃、126℃、127℃、128℃、129℃、130℃、131℃、132℃、133℃、134℃、135℃、136℃、137℃、138℃、139℃、140℃、141℃、142℃、143℃、または144℃である。当業者であれば、測定された融解温度は、使用した装置および条件によってばらつく場合もあるが、しかし、βマンニトールおよびδマンニトールの対照試料を使用して、所与の試料中のβマンニトールとδマンニトールの融解温度を容易に識別できるということを理解する。特定の実施形態では、共融物の融解温度は、融解が始まる温度である。これに代わる実施形態では、共融物の融解温度は、最大の融解が観察される温度である。ある特定の実施形態では、組成物は、5重量%を超えるシクロベンザプリンHClおよび95重量%未満のマンニトールを含む。ある特定の実施形態では、組成物は、1重量%〜5重量%のシクロベンザプリンHClおよび99重量%〜95重量%のマンニトールを含む。ある特定の実施形態では、組成物は、5重量%〜10重量%のシクロベンザプリンHClおよび95重量%〜90重量%のマンニトールを含む。ある特定の実施形態では、組成物は、10重量%〜20重量%のシクロベンザプリンHClおよび90重量%〜80重量%のマンニトールを含む。ある特定の実施形態では、組成物は、10重量%〜90重量%のシクロベンザプリンHClおよび90重量%〜10重量%のマンニトール、例えば、60重量%〜90重量%のシクロベンザプリンHClおよび40重量%〜10重量%のマンニトールまたは70重量%〜80重量%のシクロベンザプリンHClおよび30重量%〜20重量%のマンニトールを含む。具体例としての組成物は、60重量%±2重量%のシクロベンザプリンHClおよび40重量%±2重量%のマンニトール、65重量%±2重量%のシクロベンザプリンHClおよび35重量%±2重量%のマンニトール、70重量%±2重量%のシクロベンザプリンHClおよび30重量%±2重量%のマンニトール、75重量%±2重量%のシクロベンザプリンHClおよび25重量%±2重量%のマンニトール、80重量%±2重量%のシクロベンザプリンHClおよび20重量%±2重量%のマンニトール、85重量%±2重量%のシクロベンザプリンHClおよび15重量%±2重量%のマンニトール、および90重量%±2重量%のシクロベンザプリンHClおよび10重量%±2重量%のマンニトールを含む。ある特定の実施形態(例えば、βマンニトール共融物を含む組成物)では、組成物は、75重量%±10重量%のシクロベンザプリンHClおよび25重量%±10重量%のマンニトールを含む。ある特定の実施形態では、組成物は、75重量%±2重量%のシクロベンザプリンHClおよび25重量%±2重量%のマンニトールを含む。ある特定の実施形態では、組成物は、75重量%のシクロベンザプリンHClおよび25重量%のマンニトールを含む。ある特定の実施形態(例えば、δマンニトール共融物を含む組成物)では、組成物は、65重量%±10重量%のシクロベンザプリンHClおよび35重量%±10重量%のマンニトールを含む。ある特定の実施形態では、組成物は、65重量%±2重量%のシクロベンザプリンHClおよび35重量%±2重量%のマンニトールを含む。ある特定の実施形態では、組成物は、65重量%のシクロベンザプリンHClおよび35重量%のマンニトールを含む。ある特定の実施形態では、組成物は、1.70±0.1〜1.80±0.1のシクロベンザプリンHCl:マンニトールのモル比でシクロベンザプリンHClおよびマンニトールを含む。ある特定の実施形態では、モル比は、約1.6〜2.0である。特定の実施形態では、モル比(ration)は、1.70±0.1、1.71±0.1、1.72±0.1、1.73±0.1、1.74±0.1、1.75±0.1、1.76±0.1、1.77±0.1、1.78±0.1、1.79±0.1、または1.80±0.1である。ある特定の実施形態では、モル比は、1.60±0.5、1.65±0.5、1.70±0.5、1.75±0.5、1.80±0.5、1.85±0.5、1.90±0.5、1.95±0.5,または2.0±0.5である。ある特定の実施形態では、モル比は、1.76±0.1である。ある特定の実施形態では、モル比は、1.76±0.5である。
【0037】
ある特定の実施形態では、追加のマンニトールが、例えば、希釈剤として、または崩潰剤(explosant)(Pearlitol(登録商標)Flashなどの、口腔での崩壊を
促進する薬剤)の成分として共融物に加えられる。こうした実施形態では、マンニトールの合計量は、もともと形成されている共融物中に存在するマンニトールの量より多くなる。例えば、追加のマンニトールが加えられるとき、組成物は、おおよそ90重量%、おおよそ85重量%、おおよそ80重量%、おおよそ75重量%、おおよそ70重量%、おおよそ65重量%、おおよそ60重量%、またはおおよそ55重量%のマンニトールを含んでよい。マンニトールが加えられている具体例としての組成物は以下である:
【表1】
【0038】
本発明の共融組成物の別の利点は、シクロベンザプリンHClを含む錠剤の増強された安定性である。一部の実施形態では、本発明は、シクロベンザプリンHClおよびマンニトールを含む薬学的組成物を提供し、ここで該組成物は、マンニトールの存在しない同じ錠剤、例えばマンニトールではなくソルビトールを含む錠剤と比べて錠剤形態の高い安定性を有する。事実、シクロベンザプリンHCl、K
2HPO
4およびマンニトールを含有する錠剤は、40℃および75%の相対湿度で3か月間安定していた。対照的に、同じ条件で貯蔵されたシクロベンザプリンHCl、K
2HPO
4およびソルビトールを含有する錠剤は、1週間すら経たないうちに崩壊した。
【0039】
一部の実施形態では、本発明は、シクロベンザプリンHClおよびマンニトールを含む薬学的組成物を提供し、ここで該組成物は、シクロベンザプリンHCl単独の場合または塩基性化剤ではない1つまたはそれより多くの賦形剤を含む製剤での場合と比べて安定錠剤の溶解速度の増加を示す。例えば、37.0±0.5℃で100mLの50mMクエン酸pH4と混合したとき、5分目での該組成物は、100%の、95%より大きい、90%より大きい、85%より大きい、80%より大きい、75%より大きい、70%より大きい、65%より大きい、60%より大きい、55%より大きい、50%より大きい、45%より大きい、40%より大きい、35%より大きい、30%より大きい、または25%より大きい溶解性を呈し得る。例えば、37.0±0.5℃で100mLの50mMクエン酸pH4と混合したとき、10分目での該組成物は、100%の、95%より大きい、90%より大きい、85%より大きい、80%より大きい、75%より大きい、65%より大きい、60%より大きい、55%より大きい、50%より大きい溶解性を呈し得る。例えば、37.0±0.5℃で100mLの50mMクエン酸pH4と混合したとき、240分目での該組成物は、100%の、95%より大きい、90%より大きい、85%より大きい、80%より大きい、75%より大きい、65%より大きい、60%より大きい、55%より大きい、50%より大きい溶解性を呈し得る。可溶性の高い化合物(例えば、シクロベンザプリンHCl)については、連続流溶出装置を使用して溶解性を測定することができる。
【0040】
マンニトールは、α、βおよびδの3多形状態で結晶化することができる。これら3形態は、X線粉末回折により区別され得、各多形は異なる融点を有する。例えば、SharmaおよびKalonia、AAPS PharmaSciTech 5(1):E10(2004)参照。シクロベンザプリンHClおよびマンニトール(β多形)による第1の共融物の観察結果よりさらにいっそう驚くべきものは、異なる多形形態のマンニトール(δ多形)による第2の共融物の観察結果であった。δマンニトールおよびシクロベンザプリンHClを含む共融物(本明細書では「δマンニトール共融物」とも称す)は、βマンニトールおよびシクロベンザプリンHClを含む共融物(本明細書では「βマンニトール共融物」とも称す)を凌ぐ幾つかの有利な点を有する。これらの中でも優良な点は、βマンニトール共融物より融点が低く、βマンニトール共融物よりも溶解性が高まっていることである。別の利点は、薬学的組成物(錠剤を含めた)の安定性が、塩基性化剤を含有する組成物を含めた、βマンニトール共融物より高いことである。さらに別の利点は、薬学的組成物(錠剤を含めた)の局所忍容性が、塩基性化剤を含有する組成物を含めた、βマンニトール共融物より高いことである。溶解およびシクロベンザプリン遊離塩基への変換が改善されれば、錠剤を舌下投与する際の舌の一過性のしびれが軽減されて舌下吸収が向上することを含めて、忍容性も改善されるはずである。
【0041】
一部の実施形態において、本発明は、シクロベンザプリンHClおよびマンニトールを含む共融薬学的組成物を提供し、この場合マンニトールは、そのβ多形状態である。一部の実施形態では、本発明は、シクロベンザプリンHClおよびマンニトールを含む共融薬学的組成物を提供し、この場合マンニトールは、そのδ多形状態である。ある特定の実施形態では、マンニトールをそのβ多形状態で含む薬学的組成物は、舌下用組成物である。ある特定の実施形態では、マンニトールをそのβ多形状態で含む薬学的組成物は、経口用組成物である。ある特定の実施形態では、マンニトールをそのδ多形状態で含む薬学的組成物は、舌下用組成物である。ある特定の実施形態では、マンニトールをそのδ多形状態で含む薬学的組成物は、経口用組成物である。組成物が経口用組成物である特定の実施形態では、経口用組成物は、5mgのシクロベンザプリンHCl経口錠剤(例、Flexeril 5mg)と生物学的同等性を示す。組成物が経口用組成物である特定の実施形態では、経口用組成物は、10mgのシクロベンザプリンHCl経口錠剤(例、Flexeril 10mg)と生物学的同等性を示す。Flexeril錠剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化鉄、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、澱粉、および二酸化チタンにより構成される。有志の健常被験者において10mgを1日3回投与すると、定常状態でのAUC(4日間の投与後)は177ng.hr/mL(範囲、80〜319ng.hr/mL)であり、C
maxは25.9ng/mL(範囲、12.8〜46.1ng/mL)であった。経口投与されるシクロベンザプリンのさらなる薬物動態特性については、例えば、Winchellら、J Clin Pharmacol.42(1):61−9(2002)およびHuckerら、J
Clin Pharmacol.17(11−12):719−27(1977)で見ることができる。
【0042】
一部の実施形態では、本発明は、マンニトールおよびシクロベンザプリンHClの共融物を含む組成物を提供する。当業者であれば、これらの組成物が、本明細書記載のものなど、様々な方法での投与に好適であり得ることを理解する。例えば、組成物は、経口投与(シクロベンザプリンが消化管で吸収される場合の投与)または経粘膜吸収(例、舌下、口腔または鼻腔内吸収または吸入による)に適したものであり得る。
【0043】
一部の実施形態において、本発明は、顆粒状組成物である組成物を提供する。ある特定の実施形態では、顆粒は、シクロベンザプリンHClおよびマンニトールを含む顆粒である。特定の実施形態では、顆粒は、過剰のマンニトールを含む。さらに特定の実施形態では、顆粒は、βマンニトール、δマンニトール、または両方を含む。過剰のマンニトールを含む顆粒は、特に、βマンニトールおよびδマンニトールの両方を含有してよい。例えば、流動床乾燥などの方法によって生成された顆粒は、βマンニトールの内層およびδマンニトール−シクロベンザプリン共融物の外層を含んでよい。
(共融組成物を製造する方法)
【0044】
当業者であれば、本発明の共融組成物が多くの公知方法のいずれかにしたがって製造され得ることを認識する。一部の実施形態では、本発明は、API(シクロベンザプリンHCl)をマンニトールと粉砕すること、API(シクロベンザプリンHCl)をマンニトールと混合すること、またはその組み合わせを含む、本発明の共融組成物を生成する方法を提供する。例えば、APIおよびマンニトールを、めのう乳鉢で粉砕するか、または高せん断造粒機で混合することができる。高せん断混合では、高速インペラーおよびチョッパーブレードを用いて乾燥粉末を合わせ、成分を均一に混合する。混合ブレードのせん断力および高速性ゆえにある程度の粒子サイズの縮小は可能である。APIおよびマンニトールはまた、例えば、Turbula(登録商標)Shaker−Mixerで粉砕および混合され得る。ある特定の実施形態では、APIおよびマンニトールは、加圧により、例えばローラー圧縮により混合され得る。ローラー圧縮では、微粉末を2つの逆回転ロール間に押し進め、原料を固体圧縮物またはシート(フレークと称す)にプレス成型する。所望の粒サイズに達するまでフレークのサイズを縮小させる。ある特定の実施形態では、マンニトールを溶かし、シクロベンザプリンHClと混合することにより、共融組成物を形成することができる。ある特定の実施形態では、APIは微細化API(例えば、微細化シクロベンザプリンHCl)である。
【0045】
一部の実施形態において、本発明は、API(シクロベンザプリンHCl)とマンニトールの溶液を噴霧乾燥することを含む本発明の共融組成物を生成する方法を提供する。当業者であれば、噴霧乾燥は常用的であり、噴霧乾燥に関するパラメータについては過度の実験を行わなくとも判定できることを認識する。例えば、噴霧乾燥は、以下の条件のいずれかのもとで実施され得る:
T入口(℃):120〜150
T出口(℃):73〜90
フィード速度(ml/分):4〜6
流量(L/時):600〜800
吸引(100%):100
デルタ圧力(mbar):2〜20
また、これらの条件をスケールアップさせるまたは改変させることにより、より高度のハイスループット製造が達成され得る。
【0046】
一部の実施形態では、シクロベンザプリンHClとマンニトールからなるδマンニトール共融物を含む組成物は、マンニトールおよびシクロベンザプリンHClを混合することにより生成される。この混合は、例えば、高せん断湿式造粒を含む湿式造粒でよい。
図1に、シクロベンザプリンHCl、マンニトール、および水を用いた湿式造粒によって形成されたδマンニトール共融物(融点139.75℃)の具体例としての示差走査熱量測定(DSC)小ピークを示す。湿式造粒に続いて、流動床乾燥、および任意選択の粉砕を行って、組成物を生成することができる。理論に拘束されることを望むものではないが、湿式造粒の際、シクロベンザプリンおよび(そのβ型で出発する)マンニトールは、準安定になり、次いで、湿式造粒によって形成されたペースト中のβマンニトール結晶の湿った端部の一部または全部が、シクロベンザプリンHClとのβおよび/またはδマンニトール共融物に結晶化することが可能である。これは、溶媒が蒸発するにつれて生じることがあり、結晶共浸透および共融物への再結晶の過程は、混合期または乾燥期の間に、直接、または変性準安定性非晶質中間状態ならびにその後のβおよび/もしくはδマンニトール共融物を伴った核生成のいずれかを経て起こる。一部の実施形態では、湿式造粒および乾燥を反復周期で行って、δマンニトール共融物の形成を刺激または強化することができる。理論に拘束されることを望むものではないが、個々の一周期では可能な全δマンニトール共融物のほんの少ししか生成されないことがあるものの、各周期によって、追加のδマンニトール形成の波及が助けられるため、湿式造粒および乾燥を周期的に行うことで、δマンニトール共融物の形成を強化することができる。
【0047】
一部の実施形態では、シクロベンザプリンHClとマンニトールからなるδマンニトール共融物を含む組成物は、流動床(fluid bed)乾燥(流動床(fluidized bed)乾燥としても知られる)によって生成される。理論に拘束されることを望むものではないが、流動床乾燥は、湿った固体の穏やかで一様な制御された乾燥を実現するため、他の共融物形成法より有利となりうる。流動床生成物の激しい熱/物質交換により、この方法は、特に有効で時間を節約するものになる。この技術は、残留水分の非常に少ない噴霧造粒または押出し生成物の事後乾燥にも適している。
【0048】
ある特定の実施形態では、流動床乾燥をシクロベンザプリン薬物製品の形成において使用することができる。流動床乾燥を用いた乾燥プロセスでは、乾燥オーブンでの乾燥時間を他の方法のおおよそ20分の1に短縮することができる。加えて、流動床乾燥では、トレーでのむらの生じる恐れのある乾燥に比べて、乾燥条件が制御され、均一になる。さらに、流動床乾燥によって、1種または複数の賦形剤の表面への医薬品有効成分の均一な分布を改善することもできる。
【0049】
流動床乾燥技術は、可溶化された原薬(例えば、シクロベンザプリンHCl)を含有する溶液を賦形剤粒子の表面に噴霧するときに使用できる。このような方法では、賦形剤粒子表面上の霧状溶液によって、溶液と固体粒子との間に正の相互作用が生み出される。熱空気流中での乾燥ステップの際、水は表面から除去され、医薬品有効成分が賦形剤粒子に結合する。一部の実施形態では、シクロベンザプリンHCl溶液(例えば、シクロベンザプリンHClおよび水)をマンニトールに噴霧して、シクロベンザプリンとマンニトールとの間に共融物を形成する。理論に拘束されることを望むものではないが、医薬品有効成分(例えば、シクロベンザプリンHCl)の溶液が表面にノズルで拡散され、共融物が形成するとき、共融物粒子は、1種または複数の賦形剤を含む粒子と物理的に相互作用して、望ましい寸法の顆粒を生じうる。
【0050】
流動床乾燥の別の利点は、乾燥が、熱力学的平衡状態で行われることである。入口空気温度は、顆粒状物(granulate)の内部から表面へと細孔を介して輸送される量の水分だ
けが顆粒状物の表面から蒸発するように選択される。この水分移動の間、医薬品有効成分は、噴霧がなされた物質に結合することができる。例えば、シクロベンザプリンHClをマンニトールに噴霧するとき、共融物形成に必要とならない過剰のマンニトールが存在しても、正しい比率のシクロベンザプリンHClとマンニトールが混ざって、共融物を形成する。さらに驚くべきことに、このプロセスでは、シクロベンザプリンHClが噴霧されたマンニトールがβマンニトールであったとしても、シクロベンザプリンとδマンニトールの共融物が生成された。適正に使用すれば、流動床乾燥は、医薬品有効成分が錠剤全域にむらなく分布し、望ましくない崩壊を伴わない良好な打錠に適した顆粒粒子サイズを生み出すための有効な解決策を提供する。
【0051】
一部の実施形態では、アルコールを使用して、δマンニトール共融物の形成を刺激または強化する。具体例としてのアルコールとしては、限定される訳ではないが、エタノール、メタノール、およびイソプロパノールが挙げられる。ある特定の実施形態では、エタノールを噴霧乾燥と組み合わせて使用して、δマンニトール共融物の形成を刺激または強化する(示差走査熱量測定データについては
図10を、エタノールおよび水を用いた噴霧乾燥と水のみを用いた噴霧乾燥を比較するX線粉末回折データについては
図11を参照されたい)。例えば、噴霧乾燥の際に、シクロベンザプリンとマンニトールの5%(w/w)の混合物と共に1:1のエタノール:水混合物を導入して、δマンニトール共融物を作製することができる。これに代わる実施形態では、エタノールを湿式造粒混合と組み合わせて使用して、δマンニトール共融物の形成を刺激または強化する。さらに他の実施形態では、エタノールを凍結乾燥と組み合わせて使用して、δマンニトール共融物の形成を刺激または強化する。さらに他の実施形態では、エタノールを急速蒸発と組み合わせて使用して、δマンニトール共融物の形成を刺激または強化する。なおさらなる実施形態では、エタノールを流動床乾燥と組み合わせて使用して、δマンニトール共融物の形成を刺激または強化する。ある特定の実施形態では、メタノールを噴霧乾燥と組み合わせて使用して、δマンニトール共融物の形成を刺激または強化する。これに代わる実施形態では、メタノールを湿式造粒混合と組み合わせて使用して、δマンニトール共融物の形成を刺激または強化する。さらに他の実施形態では、メタノールを凍結乾燥と組み合わせて使用して、δマンニトール共融物の形成を刺激または強化する。さらに他の実施形態では、メタノールを急速蒸発と組み合わせて使用して、δマンニトール共融物の形成を刺激または強化する。なおさらなる実施形態では、メタノールを流動床乾燥と組み合わせて使用して、δマンニトール共融物の形成を刺激または強化する。エタノールを用いた噴霧乾燥によってδマンニトール共融物を得る噴霧乾燥についての具体例となるプロトコールは、次のとおりである。
設備:Buchi Mini Spry Dryer SD B290
1:1のv/v比のエタノール:水の溶媒
(例えば、65:35の比の)シクロベンザプリン:マンニトール混合物 溶液中の濃度:5%w/w
噴霧乾燥条件:
入口温度=150℃
出口温度=90℃
溶液流量=約6mL/分
(設備上に分布した粉末の完全な再結晶化に要求される)設備から粉末を除去する前の遅延時間=1〜2時間
【0052】
一部の実施形態では、急速蒸発のプロセスを使用して、δマンニトール共融物の形成を刺激または強化する。急速蒸発とは、シクロベンザプリンHClとマンニトールの混合物を溶媒(例えば、水、または水とメタノールもしくはエタノールなどのアルコールとの混合物)と混合した後、例えば溶液に熱空気を通すことにより、溶媒をすばやく蒸発させるステップを行うことを指す。シクロベンザプリンHCl、マンニトールおよび水を混合すると、(湿式造粒でのように)ペーストを形成する場合もあり、または溶液を形成する場合もある。例として、65%のシクロベンザプリン:35%のマンニトール(w/w)の混合物をメタノール:水の1:1混合物中で急速蒸発にかけたもの(シクロベンザプリン/マンニトール混合物の最終濃度5%〜20%の間)は、乾燥のおおよそ30分後にδマンニトール共融物を形成する(
図9を参照されたい)。シクロベンザプリンおよびマンニトールをメタノールと水の混合物に溶解させた後、急速蒸発にかけることにより形成されたδマンニトール共融物については、
図2〜4も参照されたい。
【0053】
一部の実施形態では、凍結乾燥を使用して、δマンニトール共融物の形成を刺激または強化する。ある特定の実施形態では、凍結乾燥は、徐冷なしで行う。徐冷なしで凍結乾燥することにより形成されたδマンニトール共融物については、それぞれ、X線粉末回折データおよび相図を示す
図5および6を参照されたい。これらの形跡は、当初の組成物では低い結晶化度を示しているが、結晶化期間の後、δマンニトール共融物結晶がよりはっきりと形成した。これに代わる実施形態では、凍結乾燥は、徐冷と共に行う。徐冷を行って凍結乾燥することにより形成されたδマンニトール共融物については、それぞれ、X線粉末回折データおよび相図を示す
図7および8を参照されたい。これらの形跡は、当初の組成物では低い結晶化度を示しているが、結晶化期間の後、δマンニトール共融物結晶がよりはっきりと形成した。
(共融組成物を検出する方法)
【0054】
共融組成物を検出する方法は周知されている。当業者であれば、共融組成物が、これらの方法のいずれかにより検出され得ることを認識する。例えば、迅速な示差走査熱量測定(「DSC」)を用いて、共融融解およびそれと共融組成物の融解熱との比較から記録された熱量を評価することにより、共融融点を検出することができる。DSCの低速走査中、るつぼ中の温度上昇により、2成分(マンニトールおよびシクロベンザプリンHClなど)が実験開始前に混合されていなかった可能性のあるときでさえ共融物の形成が促される。対照的に、迅速なDSC走査では、るつぼ内の温度が分析中に急速に上昇し、マンニトールが融解する値に急速に到達するため、共融組成物がるつぼ中で形成され得る時間が減少する。別の有用な方法は、圧縮力対DSC共融融点を測定することである。この方法では、混合物を公知比率で調製し、次いで明確に定義された圧縮力にかける。次いで、DSC分析を実施し、次いで共融融解熱対圧縮力を記録し、プロットする。これらの値を、共融比率で得られた値と比較することにより、製剤中における共融物のパーセンテージが得られる。
【0055】
組成物中における共融物の量の検出に使用され得るさらなる方法は、引張強度および加圧力の比較である。この方法では、錠剤を異なる加圧力でマンニトールおよびAPIのみにより調製する。調製された各錠剤について、形成された共融物のパーセンテージ対錠剤の引張強度は相関している。引張強度と緊密接触面積間には比例的線形相関関係がある。この相関関係の傾きから、形成された共融物のパーセンテージが得られる。
【0056】
調製物中の共融組成物のパーセンテージと組成物中の粉末の空隙率の間には線形相関関係がある。この方法では、異なる比率の成分(ただし、成分の少なくとも1つは様々な異なる粒子サイズを有するものとする)で試料を調製し、比表面積および粉末の空隙率を測定し、共融物のパーセンテージに対する空隙率をプロットすることにより、標準曲線が作成され得る。2つのパラメータの間には線形相関関係があるため、共融混合物について記録されたこの相関関係の傾きから、形成された共融物のパーセンテージが得られる。
【0057】
共融物はより高い溶解性およびより高い生物学的利用能を有し得るため、溶解速度は共融物のパーセントを検出するのにも使用され得る。この方法では、単成分の固有の溶解速度(規定された適切な媒体中でディスク試料ホルダーを用いる)を計算し、次いで共融混合物の溶解速度を計算する。熱力学的パラメータ(エントロピー)に基づくと、共融物は、当然他の混合物よりも速い溶解速度を有する。これらの分析により、生物学的利用能に関する錠剤の性能についての情報を得ることも可能である。また、このアプローチにより、個々の成分の混合物に対する共融物の高い生物学的利用能を評価することができる。
【0058】
走査型電子顕微鏡(SEM)は、該共融物および該混合物に対し、各純粋成分のEMの走査を実施し、異なる形状の粒子を見分けることによって異なる結晶形態を観察することにより使用され得る。
(共融組成物を投与する方法)
【0059】
本発明の薬学的組成物を被験体に投与する適切な方法は、例えば、被験体の年齢、被験体が投与時に活動的であるか非活動的であるか、被験体が投与時にある疾患または状態の症状を経験しているか否か、症状の程度、ならびにAPIの化学的および生物学的特性(例、溶解度、消化性、生物学的利用能、安定性および毒性)によって異なる。一部の実施形態では、薬学的組成物は経口または経粘膜吸収用として投与される。
【0060】
経口吸収用の組成物を投与する方法は、当業界では周知である。例えば、組成物は、錠剤、カプセル剤、丸薬または散剤により経口投与され得る。これらの実施形態において、組成物は、呑み込まれた後に消化管により吸収される。ある特定の実施形態では、組成物は、フィルムまたは膜(例、半透膜)を欠いている。
【0061】
経粘膜吸収用の組成物を投与する方法は、当業界では周知である。例えば、組成物は、バッカル錠、トローチ剤、口腔用散剤、および口腔用噴霧液により口腔吸収用として投与され得る。組成物は、舌下錠、舌下フィルム、液体、舌下散剤、および舌下噴霧液により舌下吸収用として投与され得る。ある特定の実施形態では、組成物は、フィルムまたは膜(例、半透膜)を欠いている。組成物は、鼻スプレーにより鼻腔内吸収用として投与され得る。組成物は、エーロゾル化組成物および吸入用乾燥粉末により肺吸収用として投与され得る。マンニトール粉末は、米国では吸入製品(商標名:Aridol(登録商標);Pharmaxis Ltd.)であるため、吸入は、特に有益な投与形態であり得る。スプレーまたはエーロゾル化組成物により投与するとき、組成物は、溶液として食塩水により調製され得、ベンジルアルコールまたは他の好適な保存剤を使用し得るか、または生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の可溶化剤または分散剤を含み得る。
【0062】
用量および用法は、処置される被験体の必要性に応じて当業者により決定され得る。専門家は、被験体の年齢または体重、処置されている疾患または状態の重症度、および被験体の処置に対する応答などの因子を考慮し得る。本発明の組成物は、例えば、必要に応じて、または日常的に投与され得る。一部の実施形態では、組成物は、就寝直前または就寝の数時間前に投与され得る。就寝前の投与は、処置されている疾患または状態の症状が始まる前に治療効果を提供することにより有益であり得る。投薬は、様々な期間にわたって行われ得る。例えば、用法は、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間またはそれより長い期間続行され得る。一部の実施形態では、用法は、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月またはそれより長い期間続行され得る。
(治療用途)
【0063】
本発明の薬学的組成物は、結合組織炎としても知られる線維筋痛症候群の発現を処置または予防するのに使用され得る(例、Moldofskyら、J Rheumatol 38(12):2653−2663(2011)およびThomas、J Rheumatol 38(12):2499−2500(2011)参照)。線維筋痛症は、慢性の非炎症性リウマチ障害である。米国リウマチ学会(The American College of Rheumatology、ACR)は、1990年に線維筋痛症についての分類基準を公表した(Wolfe,F.ら、Arthritis and Rheumatism 33:160−172(1990))。それに続いて、ACR基準に修正を加えたことを公表した(Wolfeら、J Rheumatol 38(6):1113−22(2011))。診断基準はまた、“Outcome Measures in Rheumatology” clinical trialsまたはOMERACTと呼ばれる研究グループの国際ネットワークによっても公表された(Mease Pら、J Rheumatol.2009;36(10):2318−29)。線維筋痛症は、従来、硬直または放散性疼痛、うずく痛み、筋肉痛、睡眠妨害状態または疲労を特徴とする。疼痛は、概して広汎性であり、しばしば特定の「圧痛点」に局在し、これが触れられた時に広汎性疼痛および筋肉痙攣を引き起こし得る。他の症状としては、集中力低下および過敏性などの精神障害および情緒障害、うつ病および不安などの神経精神症状、関節腫脹、頭痛、無感覚がある。線維筋痛症は、爽快感のない睡眠、倦怠感、睡気、逆流、並行作業が困難となる場合を含む意識混濁(mental fog)および認知障害と関連している。
線維筋痛症はまた、睡眠障害、疲労、非回復性睡眠、不安およびうつ病と併存していることが多い。本発明の組成物および方法は、上記で示した状態のいずれか1つ、およびそれらの任意の組み合わせを処置するのに使用され得る。
【0064】
専門家によっては、さらに線維筋痛症を2つの範疇、すなわち原発性線維筋痛症または二次性−随伴性線維筋痛症に分類している場合もある。一般的に、原発性線維筋痛症候群は、別の重大な状態が存在しない場合に起こる線維筋痛症であるとみなされ得、二次性−随伴性線維筋痛症は、患者の線維筋痛症により誘発された可能性があるか、または単にそれに付随したものである、別の重大な医学的障害が存在する場合に起こる線維筋痛症であるとみなされ得る。二次性または随伴性線維筋痛症は、典型的または確定的関節リウマチ、膝または手の骨関節炎、腰痛症候群、頸部痛症候群、癌疼痛症候群、顎関節症、片頭痛、閉経、心的外傷後ストレス障害および間質性膀胱炎または膀胱痛症候群(またはそれらの組み合わせ)を患う患者における線維筋痛症を包含し得る。
【0065】
本発明の組成物はまた、トラウマ事象後のPTSD症状の進行(開始、定着または持続)を処置または予防するのに使用され得る。トラウマ事象は、現実の死もしくは死が迫っている状況または現実的もしくは切迫した状況としての重症の外傷、または身体的統合にとっての他の脅威、または別の人の死、外傷もしくは身体的統合にとっての脅威を含む事象を目撃すること、または家族の一員または他の身近な関係者が経験した予想外または非業の死、深刻な危害、または死もしくは外傷の脅威について学ぶことを含む直接的な個人的経験として定義される。直接経験されるトラウマ事象としては、限定される訳ではないが、戦闘、暴力的な個人攻撃(性的暴行、身体的攻撃、略奪、強奪)、誘拐されること、人質に取られること、テロ攻撃、拷問、捕虜として、または強制収容所での投獄、自然または人為的災害、深刻な自動車事故、または生命を脅かす病気の診断が下されることがある。子供の場合、性的トラウマ事象は、切迫した状況の、または現実的な暴力または外傷を伴わない発達上不適切な性的経験を含み得る。目撃事象には、限定される訳ではないが、暴力的襲撃、事故、戦争または災害に起因する別の人の重症の外傷または不自然な死を注視すること、または死体または死体の一部を想定外で目撃することが含まれる。学習される他人が経験した事象には、限定される訳ではないが、家族の一員または身近な友人が経験した暴力的な個人攻撃、深刻な事故または重症の外傷、家族の一員または身近な友人の突然の想定外の死について学ぶこと、または自分の子供が生命を脅かす疾患を有することを学ぶことが含まれ得る。ストレス要因が故意のもの(例、拷問または強姦)であるとき、障害は特に深刻で長く続き得る。PTSD症状の開始は、典型的にはトラウマ事象の直後に起こり、そのうちにPTSDの症状が現れ、ますます重症になっていく。PTSDがどのように進行するかについての1つの理論は、トラウマの記憶が心に深く染み込んでいる間にあるタイプの「学習する」または補強プロセスがあるということである。これらの記憶がさらに固定されるとき(定着と呼ばれるプロセス)、フラッシュバックおよび悪夢などの症状の重症度および頻度が増大する。この重大な時期における介入により、患者によっては最も悪化したPTSDを発現するのが阻止され得る。PTSD症状の定着は、典型的にはトラウマ事象後の数週間および数か月の間に起こる。その事象についての人の記憶はより鮮明で具体的な記憶へと定着し、フラッシュバックまたは悪夢として頻度の増加と共に再体験することになる。この時期の間、過覚醒症状および回避性行動はますます重症となり、無力な状態になり得る。PTSD症状の持続は、一旦トラウマの記憶が定着してから起こり、再体験された症状(フラッシュバックおよび悪夢)および過覚醒症状は持続的になり、患者にとって機能的に何もできないレベルのままとなる。
【0066】
本発明の組成物は、トラウマ事象後に様々な時間間隔でPTSD進行における異なる相を処置するのに使用され得る。例えば、開始相のPTSDの処置は、トラウマ事象後に間もなく、例えば最初の1週間以内、2週目以内、3週目以内または4週目以内またはそれ以降に本発明組成物の投与を必要とし得る。対照的に、定着相のPTSDを処置する時、専門家は、トラウマ事象後遅いめに、そして症状の進行中遅いめに、例えば最初の1か月以内、2か月目以内、または3か月目以内またはそれ以降に本発明組成物を投与することが可能であり得る。PTSDの持続相は、トラウマ事象の3か月後またはそれ以降、例えば3か月目以内、4か月目以内、5か月目以内、またはそれ以降に投与される本発明組成物で処置され得る。開始相、定着相または持続相での処置の結果として、PTSD症状は改善または除去される。
【0067】
本発明組成物はまた、外傷性脳損傷(TBI)を処置するのにも使用され得る。TBIは、睡眠障害、睡眠妨害状態、疲労、非回復性睡眠、不安およびうつ病と関連している。本発明の組成物および方法はまた、TBIの処置と組み合わせるかまたはそれとは独立して、上記の状態のいずれかを処置するのに使用され得る。
【0068】
本発明組成物はまた、慢性外傷性脳症(CTE)にも使用され得る。CTEは、睡眠障害、睡眠妨害状態、疲労、非回復性睡眠、不安およびうつ病と関連している。本発明の組成物および方法はまた、CTEの処置と組み合わせるかまたはそれとは独立して、上記の状態のいずれかを処置するのに使用され得る。
【0069】
本発明の組成物および方法は、睡眠障害または睡眠妨害状態を処置するのに使用され得る。「睡眠障害」は、睡眠機能障害の4つの主たる範疇のいずれか1つであり得る(DSM−IV、551−607頁;また、The International Classification of Sleep Disorders:(ICSD)Diagnostic and Coding Manual、1990、American Sleep Disorders Associationも参照)。1番目の範疇、原発性睡眠障害は、別の精神障害、物質または全身病状から生じるものではない睡眠障害を含む。それらの例としては、限定される訳ではないが、原発性不眠症、原発性過眠症、ナルコレプシー、概日リズム睡眠障害、悪夢障害、睡眠驚愕障害、夢遊病、レム睡眠行動障害、睡眠麻痺、昼夜逆転および他の関連障害;物質誘導性睡眠障害;および全身病状に起因する睡眠障害がある。原発性不眠症非回復性睡眠は、主要な問題が、元気が回復していない状態または全く爽快感の無い状態で目覚めることである原発性不眠症の1タイプとしてDSM−IV−TRにより記載されている。2番目の範疇は、医薬および依存性薬物など、物質に起因する睡眠障害を含む。3番目の範疇は、睡眠/覚醒系に対する全身病状の作用から生じる睡眠妨害状態を含む。睡眠障害の4番目の範疇は、気分障害または不安障害などの特定できる精神障害から生じるものを含む。睡眠障害の5番目の範疇は、非回復性睡眠として記載されたものを含む。非回復性睡眠の1つの定義は、主要な問題が、元気が回復していない状態または全く爽快感の無い状態で目覚めることである原発性不眠症の1タイプ(A1.3)としてDSM−IV−TRに示されている。睡眠障害の各範疇の症状は、当業界では公知である。「睡眠妨害状態」は、疲労を回復させる睡眠が損なわれていることであり得る。かかる臨床診断は、覚醒時の疲労感についての患者の自己申告または睡眠の質の悪さについての患者の記録に基づいて為され得る。良質な睡眠に対するかかる妨害は、周期性交代性パターン(CAP)A2もしくはA3割合またはサイクル持続時間の増加またはノンレム睡眠におけるCAP(A2+A3)/CAP(A1+A2+A3)により求められる正規化CAP A2+A3の増加(例、Moldofskyら、J Rheumatol 38(12):2653−2663(2011)およびThomas、J Rheumatol 38(12):2499−2500(2011)参照)、ノンレム睡眠におけるアルファ・リズム混入、または深い身体回復性睡眠中におけるデルタ波の欠如と関連し得る浅い眠りまたは頻回の覚醒として報告され得る。かかる「睡眠妨害状態」は、DSM−IVで定義するところの「睡眠障害」のレベルまで上昇する場合もしない場合もあり得るが、「睡眠妨害状態」および「睡眠障害」は、1つまたはそれより多くの症状を共有し得る。睡眠妨害状態の症状は、当業界では公知である。公知症状には、意識朦朧または現実離れした感じ、倦怠感、疲労感、および覚醒時間中における集中困難が含まれる。本発明の方法および組成物で処置され得る睡眠関連状態には、睡眠異常(例、睡眠状態誤認、精神生理性不眠症、特発性不眠症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、中枢性睡眠時無呼吸症候群、中枢性肺胞低換気症候群、むづむづ脚症候群、および周期性四肢運動障害などの内在因性睡眠障害;環境因性睡眠障害、適応性睡眠障害、しつけ不足睡眠障害、刺激薬依存性睡眠障害、アルコール依存性睡眠障害、毒物起因性睡眠障害、入眠時関連障害、睡眠薬依存性睡眠障害、不適切な睡眠衛生、高地不眠症、睡眠不足症候群、夜間摂食症候群、および夜間飲水症候群などの外在因性睡眠障害;ならびにジェット時差症候群、睡眠相後退症候群、睡眠相前進症候群、交代勤務睡眠障害、非24時間睡眠覚醒症候群、および不規則型睡眠・覚醒パターンなどの概日リズム睡眠障害)、睡眠時随伴症(例、睡眠時遊行症、錯乱性覚醒、および睡眠時驚愕症などの覚醒障害ならびに律動性運動障害、寝言および睡眠時ひきつけ、および夜間下肢こむらがえりなどの睡眠覚醒移行障害)、ならびに内科または精神科的状態または障害に伴う睡眠障害が含まれる。本発明の組成物はまた、筋肉痙攣の処置にも使用され得る。筋肉痙攣は、筋肉痛、例えば背部痛と関連し得る。本発明の組成物および方法はまた、筋肉痙攣の処置と組み合わせて、またはそれとは独立して、上記状態のいずれかを処置するのにも使用され得る。
(塩基性化剤)
【0070】
本発明の組成物は、塩基性化剤を含み得る。本明細書で使用される場合、「塩基性化剤」は、シクロベンザプリンHClを含有する溶液のpHを上昇させる薬剤(例、シクロベンザプリンHClを含む液体の局所的pHを増加させる物質、例えば、リン酸二水素カリウム(リン酸一カリウム、一塩基性リン酸カリウム、KH
2PO
4)、リン酸水素二カリウム(リン酸二カリウム、二塩基性リン酸カリウム、K
2HPO
4)、リン酸三カリウム(K
3PO
4)、リン酸二水素ナトリウム(リン酸一ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、NaH
2PO
4)、リン酸水素二ナトリウム(リン酸二ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、Na
2HPO
4)、リン酸三ナトリウム(Na
3PO
4)、クエン酸三ナトリウム無水物、重炭酸塩または炭酸塩、ボレート、水酸化物、シリケート、ニトレート、溶解アンモニア、一部の有機酸の共役塩基(ビカルボネートを含む)、および硫化物がある)を包含する。理論に縛られるのは望むところではないが、塩基性化剤はまた、シクロベンザプリンHClを含む薬学的組成物に有益な薬物動態属性を提供する一方で、HClと塩基性化剤との間の相互作用ゆえにシクロベンザプリンHClを不安定にさせ得る。したがって、本明細書で記載されている共融組成物は、塩基性化剤を含む組成物において特に有用であり得る。
(賦形剤)
【0071】
一部の実施形態において、本発明の組成物は、医薬として有用である。一部の実施形態において、本発明は、医薬の製造における本発明の組成物の使用を提供する。一部の実施形態において、本発明の組成物に1つまたはそれより多くの賦形剤を含ませることは有益であり得る。当業者であれば、任意の1つの賦形剤の選択が、いずれかの他の賦形剤の選択に影響を及ぼし得ることを認識する。例えば、賦形剤の組み合わせは望ましくない影響をもたらすこともあるため、特定の賦形剤の選択は、1つまたはそれより多くの追加的賦形剤の使用を排除することになり得る。当業者であれば、本発明の製剤にどの追加的賦形剤(あるとすれば)を含ませるかを経験的に決定できる。例えば、シクロベンザプリンHClを、溶媒、増量剤、結合剤、保湿剤、分解剤(disintegrating agent)、溶解遅延剤、崩壊剤(disintegrant)、滑剤、吸収促進剤、湿潤剤、可溶化剤、滑沢剤、甘味剤または着香料などの医薬的に許容され得る担体の少なくとも1つと組み合わせることができる。「医薬的に許容され得る担体」とは、製剤の他の成分と適合可能であり、受容者に有害なものではない希釈剤または賦形剤を包含する。医薬的に許容され得る担体は、標準的医薬実践にしたがって所望の投与経路に基づいて選択され得る。
(増量剤)
【0072】
一部の実施形態では、本発明の組成物に増量剤を含ませることが有益であり得る。増量剤は、組成物の体積を増すために薬学的組成物で常用されている。増量剤は当業界では周知である。したがって、本明細書記載の増量剤について膨大なリストを作成するつもりはないが、本発明の組成物および方法で使用され得る単なる具体例としての増量剤を提供する。
【0073】
具体例としての増量剤としては、炭水化物、糖アルコール、アミノ酸および糖酸を挙げることができる。増量剤としては、限定される訳ではないが、モノ−、ジ−もしくはポリ−炭水化物、澱粉、アルドース、ケトース、アミノ糖、グリセルアルデヒド、アラビノース、リキソース、ペントース、リボース、キシロース、ガラクトース、グルコース、ヘキソース、イドース、マンノース、タロース、ヘプトース、グルコース、フルクトース、メチルα−D−グルコピラノシド、マルトース、ラクトン、ソルボース、エリトロース、トレオース、アラビノース、アロース、アルトロース、グロース、イドース、タロース、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、タガトース、グルコサミン、ガラクトサミン、アラビナン、フルクタン、フカン、ガラクタン、ガラクツロナン、グルカン、マンナン、キシラン、イヌリン、レバン、フコイダン、カラゲーナン、ガラクトカロロース、ペクチン、アミロース、プルラン、グリコーゲン、アミロペクチン、セルロース、微晶性セルロース、プスツラン、キチン、アガロース、ケラチン、コンドロイチン、デルマタン、ヒアルロン酸、キサンガム、スクロース、トレハロース、デキストラン、ラクトース、アルジトール、イノシトール、ソルビトール、マンニトール、グリシン、アルドン酸、ウロン酸、アルダル酸、グルコン酸、イソアスコルビン酸、アスコルビン酸、グルカル酸、グルクロン酸、グルコン酸、グルカル酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、ノイラミン酸、ペクチン酸、コーンスターチ、およびアルギン酸が挙げられる。
(崩壊剤)
【0074】
一部の実施形態では、本発明の組成物に崩壊剤を含ませることが有益であり得る。崩壊剤は、固体組成物の崩壊を助け、有効薬学的組成物の送達を促進する。崩壊剤は当業界では周知である。一部の崩壊剤は、迅速な特性を有するため超崩壊剤と称されており、本発明の場合にも崩壊剤として使用され得る。したがって、本明細書記載の崩壊剤について膨大なリストを作成するつもりはないが、本発明の組成物および方法で使用され得る単なる具体例としての崩壊剤を提供する。具体例としての崩壊剤には、クロスポビドン、微晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、澱粉グリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルカルシウム・クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、Indion 414、澱粉、アルファ化澱粉、炭酸カルシウム、ゴム、アルギン酸ナトリウム、およびPearlitol Flash(登録商標)が挙げられる。Pearlitol Flash(登録商標)(Roquette)は、口腔内崩壊錠(ODT)用に特別設計されたマンニトール−コーンスターチ崩壊剤である。ある種の崩壊剤は、発泡性を有する。
(滑剤)
【0075】
一部の実施形態では、本発明の組成物に滑剤を含ませることが有益であり得る。滑剤は、粉末が自由に流動する能力を助ける。滑剤は当業界では周知である。したがって、本明細書記載の滑剤について膨大なリストを作成するつもりはないが、本発明の組成物および方法で使用され得る単なる具体例としての滑剤を提供する。具体例としての滑剤には、コロイド状シリカ(二酸化ケイ素)、ステアリン酸マグネシウム、澱粉、タルク、ベヘン酸グリセリン、DL−ロイシン、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸ナトリウムが挙げられる。
(滑沢剤)
【0076】
一部の実施形態では、本発明の組成物に滑沢剤を含ませるのが有益であり得る。滑沢剤は、組成物の成分が凝集しないようにするのを助ける。滑沢剤は、当業界では周知である。したがって、本明細書記載の滑沢剤について膨大なリストを作成するつもりはないが、本発明の組成物および方法で使用され得る単なる具体例としての滑沢剤を提供する。具体例としての滑沢剤には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、植物ベースの脂肪酸、タルク、鉱油、軽鉱油、水添植物油(例、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、ベニバナ油、キャノーラ油、ココナッツ油および大豆油)、シリカ、ステアリン酸亜鉛、エチルオレエート、エチルラウレートが挙げられる。
(甘味剤)
【0077】
一部の実施形態では、本発明の組成物に甘味剤を含ませるのが有益であり得る。甘味剤は、組成物に甘味を付与することにより組成物の嗜好性を改善するのを助ける。甘味剤は、当業界では周知である。したがって、本明細書記載の甘味剤について膨大なリストを作成するつもりはないが、本発明の組成物および方法で使用され得る単なる具体例としての甘味剤を提供する。具体例としての甘味剤には、限定される訳ではないが、単糖、二糖、三糖、多糖およびオリゴ糖などのサッカリドファミリー;スクロース、グルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトース、マルトデキストリンおよびポリデキストロースなどの糖類;ナトリウム塩およびカルシウム塩などのサッカリンおよびその塩;シクラミン酸およびその塩;ジペプチド甘味剤;スクラロースおよびジヒドロカルコンなどの塩素化糖誘導体;ソルビトール、ソルビトールシロップ、マンニトール、キシリトール、ヘキサ−レゾルシノールなどの糖アルコールなど、ならびにそれらの組み合わせから選択される化合物が含まれる。水素添加澱粉加水分解物、ならびに3,6−ジヒドロ−6−メチル−1−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキシドのカリウム塩、カルシウム塩、およびナトリウム塩も使用され得る。
(着香料)
【0078】
一部の実施形態では、本発明の組成物に着香料を含ませるのが有益であり得る。着香料は、組成物により望ましい風味を付与することにより組成物の嗜好性を改善するのを助ける。着香料は、当業界では周知である。したがって、本明細書記載の着香料について膨大なリストを作成するつもりはないが、本発明の組成物および方法で使用され得る単なる具体例としての着香料を提供する。具体例としての着香料としては、限定される訳ではないが、ミント、ペパーミント、スペアミント、ヒメコウジ、メントール、アニス、チェリー、イチゴ、西瓜、ブドウ、バナナ、モモ、パイナップル、アプリコット、西洋ナシ、ラズベリー、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、プラム、リンゴ、ライム、フルーツパンチ、パッションフルーツ、ザクロ、チョコレート(例、ホワイト、ミルク、ダーク)、バニラ、カラメル、コーヒー、ヘーゼルナッツ、シナモン、これらの組み合わせなどの天然および/または合成(すなわち、人工的)化合物が挙げられる。
(着色剤)
【0079】
着色剤は、組成物を色分けするため、例えばその中に含まれる治療剤のタイプおよび用量を識別するために使用され得る。着色剤は、当業界では周知である。したがって、本明細書記載の着色剤について膨大なリストを作成するつもりはないが、本発明の組成物および方法で使用され得る単なる具体例として着色剤を提供する。具体例としての着色剤には、限定される訳ではないが、FD & C着色剤、天然果汁濃縮物、酸化チタン、二酸化ケイ素および酸化亜鉛などの顔料、それらの組み合わせなどの天然および/または人工的化合物がが挙げられる。
(併用療法)
【0080】
上記のように、本発明の組成物および方法は、PTSD、うつ病、線維筋痛症、外傷性脳損傷、睡眠障害、非回復性睡眠、慢性疼痛、および不安障害を処置するのに使用され得る。また、上記処置方法の任意のものは、処置の成果を改善するため精神療法的介入と併用され得る。具体例としての精神療法的介入は、心理的デブリーフィング、認知行動療法および眼球運動による脱感作および再処理法、系統的脱感作、リラクゼーション訓練、バイオフィードバック、認知処理療法、ストレス免疫訓練、自己主張訓練、疑似体験療法、ストレス免疫訓練と疑似体験療法の併用、疑似体験療法およびリラクゼーション訓練の併用および認知療法を含め、トラウマ的記憶を修正するかまたはトラウマ的記憶に対する情緒的反応を低減させることを目指す。それぞれの場合における介入の目標は、トラウマ的記憶を修正するかまたはトラウマ的記憶に対する情緒的反応を低減させることを含む。目的とする成果は、一般的に、生理学的応答、不安、うつ病および疎外感に関して証明される、PTSDの症状の改善または症状の発生の低減化である。
【0081】
本発明の一部の実施形態では、組成物を、PTSD、うつ病、線維筋痛症、外傷性脳損傷、睡眠障害、非回復性睡眠、慢性疼痛、または不安障害の症状をさらに軽減し得る薬物と組み合わせる。この薬物には、アルファ−1−アドレナリン作動性受容体アンタゴニスト、ベータ−アドレナリン作動性アンタゴニスト、抗痙攣薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、および鎮痛薬が含まれる。具体例としての抗痙攣薬には、カルバマゼピン、ガバペンチン、ラモトリジン、オクスカルバゼピン、プレガバリン、チアガビン、トピラメートおよびバルプロエートが挙げられる。具体例としてのアルファ−1−アドレナリン作動性受容体アンタゴニストは、プラゾシンである。具体例としての選択的セロトニン再取り込み阻害剤またはセロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤としては、ブプロピオン、シタロプラム、デスベンラファキシン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、エスシタロプラム、フルボキサミン、ミルナシプラン、パロキセチン、セルトラリン、トラゾドン、およびベンラファキシンが挙げられる。具体例としての鎮痛薬には、プレガバリン、ガバペンチン、アセトアミノフェン、トラマドール、および非ステロイド系抗炎症薬(例、イブプロフェンおよびナプロキセンナトリウム)が挙げられる。本発明の組成物と併用され得るさらなる薬物には、ナトリウムオキシベート、ゾルピデム、プラミペキソール、モダフィニル、テマゼパム、ザレプロン、およびアルモダフィニルがある。
【0082】
記載されている本発明の実施態様は、単に本発明の原理の応用のいくつかの実証となるものに過ぎないことは言うまでもない。本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく本明細書に提示した教義に基づいて、当業者により多くの改変が加えられ得る。
【0083】
以下の実施例は、本発明の代表的なものとして示されている。これらの実施例および他の均等内容の実施形態は、本開示、図面および添付の請求の範囲を考慮すれば明らかとなるものであるため、これらの実施例は本発明の範囲を制限するものとしてみなされるべきではない。
【実施例】
【0084】
(実施例1)湿式造粒
シクロベンザプリンHClとのδマンニトール共融物を生成するために、次のプロトコールを使用した。
1. 52.830%のシクロベンザプリンHCl(w/w)(例えば、368.4g)および47.170%のマンニトール(w/w)(例えば、328.9g)を高せん断造粒機に装入する。
2.任意選択で、シクロベンザプリンHClとマンニトールを、500rpmのインペラー回転速度を使用して5分間混合する。
3.次の条件下で1分間混合する。インペラー回転速度:200rpm、チョッパー回転速度:2000rpm、時間:2分。
4.混合を続けながら、粉末ブレンドに水(10%w/w)を噴霧する。
5.さらに1分間混合する。
6.流動床乾燥機において、次の条件下で2.0%以下(NMT)の乾燥減量(LOD)に乾燥させる。空気流:100m
3/時間、湿球温度:65℃、LOD:0.31%。
7.試料を採取する。
一例として、シクロベンザプリンHCl−マンニトールδ共融物は、368.4gのシクロベンザプリンHCl、328.9gのPearlitol 100SD、および55.8gの水を混合することによる湿式造粒によって調製することができる。これらの量を使用することで、合計95%の回収率で正味収量662.2gの乾燥顆粒が生成された。
【0085】
上記方法によって形成された共融混合物を、次いで、次のとおりの他の賦形剤とブレンドした。
シクロベンザプリン共融混合物:232.4g
Dye D&C Yellow #10 Lake:0.667g
Pearlitol Flash:1144g
クロスポビドン−Kollidon CL:87.7g
二塩基性リン酸カリウム無水物:52.7g
天然および人工のスペアミント香料:83.3g
コロイド状二酸化ケイ素:22.0g
フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV):43.8
打錠については、重量むらが2%未満であり、崩壊時間がおおよそ40〜50秒であり、硬度がおおよそ3kpである錠剤を形成するための具体例としての加圧パラメータは、任意選択で事前加圧(3.0kN)を行う、5.0kNの加圧力を用いた30rpmでの加圧を含む。これに代わる具体例としての加圧パラメータは、40rpmでの加圧(5.5kNの加圧力、3.0kNの事前加圧力)を含み、重量むらが2%未満であり、崩壊時間がおおよそ90秒であり、硬度が3.0〜3.5kpである錠剤が得られる。
(実施例2)流動床乾燥
【0086】
シクロベンザプリンを含む錠剤を流動床乾燥を使用して作製するために、次のプロトコールを使用した。
粒子サイズが20ミクロン未満であるβマンニトールを、流動床乾燥機の底部にあるたらい(basin)に沈積させた。次いで、温かい空気流を起こして、チャンバー内部に激しい乱流を引き起こした。チャンバーにおけるすべての物体が、制御された一定の乱流に巻き込まれた後、シクロベンザプリンを含む水溶液を、設備の中心に存在するノズルにつないだ。この液体は、蠕動ポンプによって、底部からフィルターに向かう乱流中のマンニトール粒子に拡散され、小さい、ほぼ霧状になった液滴が、マンニトール粒子の表面を湿らせた。マンニトールの表面に存在するこの液相によって、マンニトール粒子表面の部分的な可溶化が引き起こされた。水分を除去する熱空気のプロセスによって、準安定期に始まり、その後結晶する共融物が、粒子の表面に形成した。顆粒に対する熱分析(示差走査熱量測定)およびX線粉末回折(XRPD)によって実施した予備的な分析によって、混合物内部の共融物成分の存在、およびシクロベンザプリンHClのマトリックス全体における均一な分布が確認された。理論に拘束されることを望むものではないが、噴霧によって誘発されて共融物を形成する、シクロベンザプリンのマンニトールとのこの相互作用によって、単純な機械的混合物より高い、原薬の化学的安定性が促進されうる。興味深いことに、このプロセスでは、βマンニトールコアおよびδマンニトール−シクロベンザプリン共融物外表面を有する顆粒が生成された。これらの顆粒は、他の方法によって形成された共融物にまさる改善された打錠特性を有していた。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
マンニトールおよびシクロベンザプリンHClの共融物を含む薬学的組成物。
(項目2)
60重量%〜90重量%のシクロベンザプリンHClおよび40重量%〜10重量%のマンニトールを含む、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目3)
60重量%±2重量%シクロベンザプリンHClおよび40重量%±2重量%マンニトール、65重量%±2重量%シクロベンザプリンHClおよび35重量%±2重量%マンニトール、70重量%±2重量%シクロベンザプリンHClおよび30重量%±2重量%マンニトール、75重量%±2重量%シクロベンザプリンHClおよび25重量%±2重量%マンニトール、80重量%±2重量%シクロベンザプリンHClおよび20重量%±2重量%マンニトール、85重量%±2重量%シクロベンザプリンHClおよび15重量%±2重量%マンニトール、および90重量%±2重量%シクロベンザプリンHClおよび10重量%±2重量%マンニトールから選択された量のシクロベンザプリンHClおよびマンニトールを含む、項目2に記載の薬学的組成物。
(項目4)
75重量%±2重量%のシクロベンザプリンHClおよび25重量%±2重量%のマンニトールを含む、項目3に記載の薬学的組成物。
(項目5)
前記シクロベンザプリンHCl:マンニトールのモル比が1.76±0.1である、項目1〜4のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
(項目6)
前記シクロベンザプリンHClが、微細化されたシクロベンザプリンHClである、項目1〜5のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
(項目7)
さらに塩基性化剤を含む、項目1〜6のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
(項目8)
前記塩基性化剤がK
2HPO
4である、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目9)
前記塩基性化剤がNa
2HPO
4である、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目10)
前記塩基性化剤がクエン酸三ナトリウムの無水物である、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目11)
前記組成物が顆粒を含む、項目1〜10のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
(項目12)
前記顆粒がシクロベンザプリンおよびマンニトールを含む、項目11に記載の薬学的組成物。
(項目13)
前記マンニトールがβマンニトールおよびδマンニトールである、項目12に記載の薬学的組成物。
(項目14)
前記顆粒が、βマンニトールを含む内層ならびにマンニトールおよびシクロベンザプリンHClの共融物を含む外層を含む、項目11〜13のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
(項目15)
シクロベンザプリンHClおよびマンニトールを混合することを含む、項目1〜14のいずれか1項に記載の共融組成物を製造する方法。
(項目16)
前記混合が湿式造粒混合である、項目15に記載の方法。
(項目17)
アルコールを前記シクロベンザプリンHClおよび前記マンニトールと混合することをさらに含む、項目15または16に記載の方法。
(項目18)
前記アルコールがメタノールである、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記アルコールがエタノールである、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記湿式造粒後に乾燥させることをさらに含む、項目16〜19のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記の湿式造粒および乾燥が1回または複数回繰り返される、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記湿式造粒後に結晶化をさらに含む、項目16〜19のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記の湿式造粒および結晶化が1回または複数回繰り返される、項目22に記載の方法。
(項目24)
シクロベンザプリンHClおよびマンニトールを流動床乾燥することを含む、項目1〜14のいずれか1項に記載の共融組成物を製造する方法。
(項目25)
前記共融組成物がβマンニトールを含む、項目15〜24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記組成物がシクロベンザプリンHClを含み、前記共融物が143.6±3℃で融解する、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記共融組成物がδマンニトールを含む、項目15〜24のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
前記組成物がシクロベンザプリンHClを含み、前記共融物が134℃±3℃で融解する、項目27に記載の方法。