【解決手段】タイヤ幅方向Wに振幅を持ってタイヤ周方向Cに延びる3本又は4本のジグザグ状の主溝18と、主溝に交差する方向に延びる複数の横溝20と、主溝と横溝とにより形成されたブロック列22と、をトレッド部16に備えた空気入りタイヤ10において、タイヤ接地時の接地面内における主溝18の溝中心線Pの長さの総和LAと、該接地面内における主溝18の振幅中心線Qの長さの総和LBとの比LA/LBを、1.05〜1.25に設定する。
タイヤ幅方向に振幅を持ってタイヤ周方向に延びる3本又は4本のジグザグ状の主溝と、主溝に交差する方向に延びる複数の横溝と、主溝と横溝とにより形成されたブロック列と、をトレッド部に備えた空気入りタイヤにおいて、
タイヤ接地時の接地面内における前記主溝の溝中心線の長さの総和LAと、前記接地面内における前記主溝の振幅中心線の長さの総和LBとの比LA/LBが、1.05〜1.25である、空気入りタイヤ。
タイヤ接地時の接地面内における前記横溝の溝中心線の長さの総和LCと、前記接地面内における前記主溝の溝中心線の長さの総和LAとの比LC/LAが、0.50〜1.00である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
前記主溝は、タイヤ周方向に対して傾斜した第1溝部と、前記第1溝部よりも短くかつ当該第1溝部よりもタイヤ周方向に対して大きく傾斜した第2溝部とを、鈍角状の屈曲部を介して、タイヤ周方向に交互に繰り返してなるジグザグ状溝である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
一実施形態に係る空気入りタイヤ10は、
図1に示すように、左右一対のビード部12及びサイドウォール部14と、左右のサイドウォール部14の径方向外方端部同士を連結するように両サイドウォール部間に設けられたトレッド部16とを備えて構成されており、トレッドパターン以外については一般的なタイヤ構造を採用することができる。
【0011】
図1〜3に示すように、トレッド部16のトレッドゴム表面には、タイヤ周方向Cに延びる複数の主溝18と、主溝18に交差する複数の横溝20とにより、タイヤ幅方向Wに複数のブロック列22が設けられている。
【0012】
この例では、主溝18は、タイヤ幅方向Wに間隔をおいて3本形成されている。タイヤ赤道CL上に位置するセンター主溝18Aと、その両側に配された一対のショルダー主溝18B,18Bである。3本の主溝18は、いずれも、タイヤ幅方向Wに振幅を持って屈曲しながらタイヤ周方向Cに延びるジグザグ状の溝である。なお、主溝18は、一般に5mm以上の溝幅(開口幅)を持つ周方向溝である。
【0013】
トレッド部16には主溝18によって複数の陸部が区画形成され、各陸部は、複数の横溝20がタイヤ周方向Cに間隔をおいて設けられることで、ブロック列22として形成されている。詳細には、センター主溝18Aとショルダー主溝18Bとの間に挟まれた左右一対のセンター陸部は、横溝20Aを設けることにより、複数のセンターブロック24をタイヤ周方向Cに配設してなるセンターブロック列22Aとして形成されている。センターブロック列22Aは、トレッド部16において、タイヤ幅方向Wの中央部に位置するブロック列である。また、ショルダー主溝18Bとタイヤ接地端Eとの間に挟まれた左右一対のショルダー陸部は、横溝20Bを設けることにより、複数のショルダーブロック26をタイヤ周方向Cに配設してなるショルダーブロック列22Bとして形成されている。ショルダーブロック列22Bは、トレッド部16において、タイヤ幅方向両端部に位置するブロック列である。
【0014】
横溝20A,20Bは、主溝18A,18Bに対して交差する方向に延びて上記各陸部を横断する溝である。横溝20A,20Bは、タイヤ幅方向Wに延びる溝であれば、必ずしもタイヤ幅方向Wに平行でなくてもよい。この例では、横溝20A,20Bは、傾斜しつつタイヤ幅方向Wに延びる溝である。
【0015】
センターブロック24は、
図2〜4に示すように、左右の主溝18A,18Bに面する左右一対の縦側面部28,28と、前後の横溝20A,20Aに面する前後一対の横側面部30,30とを備える。ここで、縦側面部28とは、ブロック24の側面部のうち主溝18に面する(即ち、主溝に接して主溝の溝壁面の一部を構成する)側面部である。横側面部30とは、ブロック24の側面部のうち横溝20に面する(即ち、横溝に接して横溝の溝壁面の一部を構成する)側面部である。
【0016】
一対の縦側面部28,28は、タイヤ周方向Cに対して傾斜した互いに平行な稜線32A,32Aを持つ一対の第1縦側面部32,32と、第1縦側面部32の稜線32Aよりもタイヤ周方向Cに対して大きく傾斜した互いに平行な稜線34A,34Aを持つ一対の第2縦側面部34,34とからなる。ここで、稜線とは、ブロックの側面と上面(トレッド面)とが交わったところに生じる線のことである。第1縦側面部32の稜線32Aは、タイヤ周方向Cに対して角度αで一方側に傾斜した直線状をなし、第2縦側面部34の稜線34Aは、タイヤ周方向Cに対して角度βで他方側に傾斜した直線状をなす。そして、角度βが角度αよりも大きく設定されている(α<β)。例として、角度αは10°〜30°でもよく、角度βは30°〜55°でもよい。また、第2縦側面部34の稜線34Aは、第1縦側面部32の稜線32Aよりも短く設定されている。すなわち、稜線32Aの長さをJ1とし、稜線34Aの長さをJ2として、J1>J2に設定されている。更に、第2縦側面部34は、第1縦側面部32と鈍角に交わるように形成されている。すなわち、第1縦側面部32の稜線32Aと第2縦側面部34の稜線34Aのなす角度θは90°よりも大きい(θ>90°)。
【0017】
また、一対の横側面部30,30は、タイヤ幅方向Wに対して傾斜した互いに平行な稜線30A,30Aを持つ側面部である。稜線30Aのタイヤ幅方向Wに対する角度は、例えば20°以下でもよい。横側面部30は、一方の縦側面部28の第1縦側面部32と他方の縦側面部28の第2縦側面部34との間に介在して、両者を連結する側面部である。以上より、センターブロック24は、
図4に示すように、平面視で略六角形状(凸六角形状)をなしている。
【0018】
ショルダーブロック26は、
図2、
図3及び
図5に示すように、ショルダー主溝18Bに面する縦側面部36と、タイヤ接地端Eに面する縦側面部38と、前後の横溝20B,20Bに面する前後一対の横側面部40,40とを備える。縦側面部36,38は、ショルダーブロック26の側面部のうち主溝18又は接地端Eに面する(即ち、主溝又は接地端に接して主溝の溝壁面又は接地端壁面の一部を構成する)側面部である。横側面部40は、ショルダーブロック26の側面部のうち横溝20Bに面する(即ち、横溝に接して横溝の溝壁面の一部を構成する)側面部である。
【0019】
ショルダー主溝18Bに面する縦側面部36は、上記の縦側面部28と同様、タイヤ周方向Cに対して傾斜した稜線42Aを持つ第3縦側面部42と、第3縦側面部42の稜線42Aよりもタイヤ周方向Cに対して大きく傾斜した稜線44Aを持つ第4縦側面部44とからなる。第3縦側面部42の稜線42Aは、タイヤ周方向Cに対して角度αで一方側に傾斜した直線状をなし、第4縦側面部44の稜線44Aは、タイヤ周方向Cに対して角度βで他方側に傾斜した直線状をなし、角度βが角度αよりも大きく設定されている(α<β)。また、第4縦側面部44の稜線44Aは、第3縦側面部42の稜線42Aよりも短く、更に、第4縦側面部44は、第3縦側面部42と鈍角に交わるように形成されている(稜線42Aと稜線44Aのなす角度θが90°よりも大きい)。
【0020】
また、一対の横側面部40,40は、タイヤ幅方向Wに対して傾斜した互いに平行な稜線40A,40Aを持つ側面部である。稜線40Aのタイヤ幅方向Wに対する角度は、例えば20°以下でもよい。以上より、ショルダーブロック26は、
図5に示すように、平面視で略五角形状(凸五角形状)をなしている。
【0021】
以上のようなセンターブロック24及びショルダーブロック26の形状を持つため、主溝18及び横溝20は次のように設けられている。
図3に示すように、主溝18は、タイヤ周方向Cに対して角度αで一方側に傾斜した第1溝部46と、タイヤ周方向Cに対して角度βで他方側に傾斜した第2溝部48とを、鈍角状の屈曲部を介して、タイヤ周方向Cに交互に繰り返してなるジグザグ形状を有する。第2溝部48は、第1溝部46よりも短く、タイヤ周方向Cに対する傾斜角度βが第1溝部46の傾斜角度αよりも大きく設定されている。そして、隣り合う主溝18A,18B間で、屈曲部の頂部同士が向かい合うように配置され、その頂部同士を横溝20Aで連結することにより、センターブロック列22Aが形成されている。また、ショルダー主溝18Bのタイヤ幅方向外側に向いた各屈曲部の頂部からタイヤ接地端Eまで横溝20Bを設けることで、ショルダーブロック列22Bが形成されている。
【0022】
センターブロック24には、一対の第1縦側面部32,32のタイヤ周方向Cにおける中央部にそれぞれノッチ50,50が設けられている。ノッチ50は、ブロック上面から主溝18の溝底に向かってブロック底部まで切り欠かれた平面視コの字状の凹みであり、第1縦側面部32の稜線方向における中央部、即ち稜線中央付近に設けられている。
【0023】
センターブロック24には、ノッチ50に開口し、かつ両側のノッチ50,50間を繋ぐ第1サイプ52が設けられている。第1サイプ52は、タイヤ幅方向Wに延在し、両端が各ノッチ50に開口することで、センターブロック24をタイヤ幅方向Wに横断する、両端オープンサイプである。
【0024】
センターブロック24には、また、第1サイプ52のタイヤ周方向両側に、両端がブロック24内で終端する第2サイプ54がそれぞれ設けられている。すなわち、センターブロック24において、第1サイプ52により区画されたタイヤ周方向両側のブロック部分には、両端が当該ブロック部分内で終端した第2サイプ54がそれぞれ設けられている。第2サイプ54は、タイヤ幅方向Wに延在する、両端クローズドサイプである。
【0025】
第2サイプ54は、この例では、第1サイプ52のタイヤ周方向両側にそれぞれ2本ずつ設けられている。詳細には、第2サイプ54は、第2縦側面部34の稜線34Aに平行に延在する1本のサイプ54Aと、横側面部30の稜線30Aに平行に延在する1本のサイプ54Bとからなる。
【0026】
センターブロック24の横側面部30は、そのタイヤ幅方向Wの一端部30Bが横溝20A内に張り出し形成されている。この例では、
図4に示すように、横側面部30は、第1縦側面部32との接合部における端部30Bが、屈曲状に張り出し形成されている。詳細には、横側面部30の稜線30Aは、タイヤ幅方向Wに対して傾斜して延びる長辺部30A1と、該長辺部30A1とは屈曲部30A2を介して逆方向に傾斜する短辺部30A3とからなり、これにより短辺部30A3を稜線とする張り出し状の端部30Bが設けられている。
【0027】
ショルダーブロック26には、第3縦側面部42とタイヤ接地端Eに面する縦側面部38のタイヤ周方向Cにおける中央部にそれぞれノッチ56,56が設けられている。ノッチ56は、ブロック上面からブロック底部まで切り欠かれた平面視コの字状の凹みであり、第3縦側面部42及び縦側面部38の稜線方向における中央部、即ち稜線中央付近にそれぞれ設けられている。
【0028】
ショルダーブロック26には、一端がノッチ56に開口するとともに他端がショルダーブロック26内で終端する第3サイプ58が設けられている。第3サイプ58は、タイヤ幅方向Wに延在する2本のサイプで構成されており、それぞれ一端が各ノッチ56に開口するとともに、他端がタイヤ幅方向Wに互いに間隔をおいた位置で終端し、これによりショルダーブロック26の中央部にサイプのない領域が確保されている。
【0029】
ショルダーブロック26には、また、第3サイプ58のタイヤ周方向両側に、第4サイプ60がそれぞれ設けられている。この例では、第4サイプ60は、一端がタイヤ接地端Eに開口するとともに、他端がショルダーブロック26内で終端している。第4サイプ60は、タイヤ幅方向Wに延在するサイプであり、第3サイプ58のタイヤ周方向両側にそれぞれ1本ずつ設けられている。第4サイプ60は、タイヤ接地端Eからタイヤ幅方向Wの内側に向かって延び、ショルダーブロック26の幅方向中央部を越えて、ショルダー主溝18Bに至る前に終端している。
【0030】
上記第1、第2、第3及び第4サイプ52,54,58,60は、この例では、いずれも、複数箇所で屈曲したジグザグ形状のサイプであるが、直線状のサイプでもよい。また、これらのサイプ52,54,58,60は、タイヤ幅方向Wに延在するものであれば、必ずしもタイヤ幅方向Wに平行でもなくてもよく、傾斜しつつタイヤ幅方向Wに延びるものでもよい。これらサイプ52,54,58,60の溝幅は、特に限定されず、例えば、0.1〜1.5mmでもよく、0.2〜1.0mmでもよく、0.3〜0.8mmでもよい。
【0031】
横溝20の深さは、特に限定しないが、主溝18の深さの30〜80%でもよい。80%以下として横溝20の深さを浅くすることにより、ブロック剛性を確保しやすく、耐偏摩耗性の向上効果を高めることができる。また、30%以上とすることにより、横溝の容積を確保して、排土性を向上し、トラクション性の向上効果を高めることができる。
図2に示すように、この例では、前後のセンターブロック24,24間、及び前後のショルダーブロック26,26間を、それぞれ繋ぐブリッジ部62を、各横溝20A,20Bの溝底に隆起状に設けており、これにより、横溝20を主溝18に対して浅く形成している。
【0032】
なお、
図2に示すように、主溝18には、石噛みを防止するための突起64がタイヤ周方向Cに間隔をおいて複数設けられている。
【0033】
本実施形態に係る空気入りタイヤ10では、タイヤ接地時の接地面内における主溝18の溝中心線Pの長さの総和LAと、接地面内における主溝18の振幅中心線Qの長さの総和LBとの比LA/LBが、1.05〜1.25に設定されている。即ち、1.05≦LA/LB≦1.25である。
【0034】
接地面の形状は
図6に示す通りである。
図6では、主溝18と横溝20の溝中心線を理解しやすくするため、主溝18と横溝20の境界に線を付している。ここで、主溝18の溝中心線Pは、主溝18の溝幅中心(主溝の長さ方向における各位置での幅方向の中心)を通るジグザグ状の線であり、その総和LAとは、接地面内に存在する複数(
図6では3本)の溝中心線Pの長さを合計した値である。また、主溝18の振幅中心線Qは、タイヤ幅方向Wに振幅Sを持つジグザグ状の主溝18の振れの中心を通る直線であり、その総和LBとは、接地面内に存在する複数(
図6では3本)の振幅中心線Qの長さを合計した値である。
【0035】
本実施形態によれば、比LA/LBを1.05以上に設定したことにより、直線状に延びる主溝を持つパターンに比べて、溝稜線を長くすることによりトラクション性を向上することができる。また、比LA/LBを1.25以下に設定したことにより、主溝のジグザグの振り幅が大きくなりすぎないようにして耐偏摩耗性の低下を抑えることができる。そのため、トラクション性と耐偏摩耗性を両立することができる。比LA/LBは、より好ましくは1.10〜1.20である。
【0036】
ここで、接地面とは、空気タイヤを正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態で平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するトレッド面のことである。正規リムは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"Measuring Rim"となる。正規内圧は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"INFLATION PRESSURE"であるが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。また、正規荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば"LOAD CAPACITY"であるが、タイヤが乗用車用である場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
【0037】
本実施形態に係る空気入りタイヤ10では、また、タイヤ接地時の接地面内における横溝20の溝中心線Rの長さの総和LCと、接地面内における主溝18の溝中心線Pの長さの総和LAとの比LC/LAが、0.50〜1.00に設定されている。即ち、0.50≦LC/LA≦1.00である。ここで、横溝20の溝中心線Rは、横溝20の溝幅中心(横溝の長さ方向における各位置での幅方向の中心)を通る線であり、その総和LCとは、接地面内に存在する複数の溝中心線Rの長さを合計した値である。
【0038】
本実施形態によれば、比LC/LAを0.50以上に設定したことにより、接地面内のトラクション要素(横溝要素)を確保して、トラクション性を向上することができる。また、比LC/LAを1.00以下に設定したことにより、横溝要素が多くなりすぎないようにして、ブロック24,26の面積を確保することができ、そのため、偏摩耗発生を抑制することができる。比LC/LAは、より好ましくは0.60〜0.90であり、更に好ましくは0.70〜0.80である。
【0039】
本実施形態に係る空気入りタイヤ10では、また、タイヤ接地時における接地長LDと接地幅LEとの比LD/LEが0.9以上に設定されている。即ち、LD/LE≧0.9である。ここで、接地長LDは、接地面におけるタイヤ幅方向Wに垂直な方向での最大長さであり、通常はタイヤ赤道CLでの長さである。また、接地幅LEは、接地面におけるタイヤ幅方向Wの最外位置である接地端E,E間の距離である。
【0040】
本実施形態によれば、比LD/LEを0.9以上に設定したことにより、接地面内の横溝要素を増やして、トラクション性及び排土性を向上することができる。比LD/LEは、1.0以上であることが好ましい。比LD/LEの上限は特に限定されないが、例えば1.3以下である。
【0041】
また、本実施形態によれば、主溝18を、タイヤ周方向Cに対して傾斜した第1溝部46と、該第1溝部46よりもタイヤ周方向に対して大きく傾斜しかつ長さが短い第2溝部48とを、鈍角状の屈曲部を介して、タイヤ周方向Cに交互に繰り返してなるジグザグ状溝としたので、耐偏摩耗性を維持しつつ、トラクション性を向上することができる。
【0042】
センターブロック24において、一対の第1縦側面部32にノッチ50を設けたことにより、トラクション要素を増やして、トラクション性を向上することができる。また、ノッチ50を第1縦側面部32の中央部に設けたことにより、各ブロック24の剛性差を無くして偏摩耗を抑制することができる。また、センターブロック列22Aは接地圧が高く、トラクション効果も高いため、かかるセンターブロック24において、ノッチ50に開口しノッチ50間を繋ぐ第1サイプ52を設けることにより、トラクション性の向上効果に優れる。また、該第1サイプ52のタイヤ周方向両側に第2サイプ54を設けたことにより、トラクション性を向上することができるとともに、センターブロック24内の接地圧を均一化して偏摩耗を抑制することができる。しかも、第2サイプ54は両端がブロック内で終端したサイプであるため、ブロック欠けの要因となるおそれを低減することができる。
【0043】
本実施形態によれば、また、第1サイプ52の両側に設ける第2サイプ54を、第2縦側面部34の稜線34Aに平行に延在するサイプ54Aと、横側面部30の稜線30Aに平行に延在するサイプ54Bとで構成したことにより、センターブロック24内の接地圧をより一層均一化して偏摩耗を抑制することができる。
【0044】
また、センターブロック24の横側面部30において、タイヤ幅方向Wの一端部30Bを横溝20A内に張り出し形成したことにより、タイヤの駆動時にこの張り出し状の端部30Bが動くことにより、横溝20A内に進入する土(泥)を排出することができ、排土性を向上することができる。
【0045】
本実施形態によれば、ショルダーブロック26において、左右の縦側面部36,38にノッチ56を設けたことにより、トラクション要素を増やして、トラクション性を向上することができる。また、ノッチ56を第3縦側面部42と縦側面部38の中央部に設けたことにより、各ブロック26の剛性差を無くし偏摩耗を抑制することができる。
【0046】
また、一般に前後方向(タイヤ周方向)と横方向(タイヤ幅方向)からの力の入力があるショルダーブロック26では偏摩耗が生じやすい。本実施形態によれば、ショルダーブロック26においては、一対のノッチ56,56間をサイプで繋がず、ブロック中央部で途切れた第3サイプ58を設けたことにより、ブロック剛性を確保して、偏摩耗の発生を抑制することができる。また、該第3サイプ58の両側に第4サイプ60をそれぞれ設けたことにより、ショルダーブロック26内の接地圧を均一化して、偏摩耗を抑制することができる。
【0047】
また、ショルダーブロック26には、タイヤ接地端Eからの横力が入るため、第4サイプ60をタイヤ接地端Eに開口させて設けたことにより、横力を緩和させることができ、耐偏摩耗性を向上することができる。
【0048】
なお、上記実施形態では、ブロック列22がセンターブロック列22Aとショルダーブロック列22Bを含む場合について説明したが、本実施形態はかかるトレッドパターンに限定されるものではなく、タイヤ幅方向に振幅を持ってタイヤ周方向に延びる3本又は4本のジグザグ状の主溝と、主溝に交差する方向に延びる複数の横溝と、主溝と横溝とにより形成されたブロック列と、をトレッド部に備えた様々な空気入りタイヤに適用することができる。例えば、ショルダー陸部について、複数の横溝をタイヤ接地端に開口しつつショルダー陸部内で終端する形態に設けることにより、タイヤ周方向に連続したショルダーリブとして形成してもよい。
【0049】
本実施形態に係る空気入りタイヤとしては、乗用車用タイヤ、トラック、バス、ライトトラック(例えば、SUV車やピックアップトラック)などの重荷重用タイヤなど、各種車両用のタイヤが挙げられ、また、サマータイヤ、ウインタータイヤ、オールシーズンタイヤなどの用途も特に限定されない。好ましくは、重荷重用タイヤである。
【0050】
なお、本明細書における上記各寸法は、特に言及した場合を除いて、空気入りタイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態でのものである。
【実施例】
【0051】
上記の効果を確認するために、実施例1〜6および比較例1〜4の重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ:11R22.5)を22.5×7.50のリムに装着し、内圧700kPaを充填して、定積載量10tの車輌に装着し、トラクション性、排土性、耐偏摩耗性について評価を行った。
【0052】
実施例4のタイヤは、
図1〜6に示す実施形態の特徴を備えたものである(主溝の溝幅=11.5mm、主溝の深さ=16.5mm、α=20°、β=47°、θ=113°、J1/J2=1.7)。実施例1〜3,5,6及び比較例3のタイヤは、実施例4のトレッドパターンをベースとして、上記の比LA/LB、LC/LA、及びLD/LEを、下記表1に記載の通り変更したものである。比較例1,2及び4のタイヤは、
図7に示すストレート状の主溝を持つトレッドパターンの例であり(従って、比LA/LB=1.00)、比LC/LA及びLD/LEを、表1に記載の通り変更したものである。なお、比LA/LB及びLC/LAの値は、例えば、ジグザグ状の主溝の振幅及びピッチ、並びに横溝のピッチによって調整することができ、ここでは、主として主溝の振幅により比LA/LBの値を、また、主として横溝のピッチにより比LC/LAの値を、それぞれ表1の値となるように調整した。また、比LD/LEの値は、例えば、トレッドゴムの厚み、ベルト角度や枚数によって調整することができ、ここでは、トレッドゴムの厚みとベルト角度により表1の値となるように調整した。
【0053】
各評価方法は以下の通りである。
【0054】
・トラクション性:水深1.0mmの路面上を停止状態から20m進んだ時点の到達時間を測定し、到達時間の逆数について比較例1の値を100として指数化した。指数が大きい程、到達時間が短く、トラクション性が良いことを示す。
【0055】
・排土性(マッド性):泥濘地を停止状態から20m進んだ時点の到着時間を測定し、到着時間の逆数について比較例1の値を100として指数化した。指数が大きい程、到着時間が短く、排土性が良いことを示す。
【0056】
・耐偏摩耗性:20,000km走行後の偏摩耗状態(ヒールアンドトウ摩耗量)を測定し、ヒールアンドトウ摩耗量の逆数について比較例1の値を100として指数化した。指数が大きい程、偏摩耗の発生が少なく、耐偏摩耗性に優れることを示す。
【0057】
【表1】
【0058】
結果は、表1に示す通りであり、比LA/LBが1.05〜1.25の範囲内である実施例1〜6であると、比LA/LBが1.00である比較例1及び2に対して、耐偏摩耗性を損なうことなく、トラクション性を向上することができた。なお、比較例3では、比LA/LBが大きすぎ、トラクション性には優れていたものの、耐偏摩耗性が顕著に低下した。また、比較例4では、比LC/LAが小さく、かつ比LD/LEが小さいため、横溝要素が少なく、そのため、耐偏摩耗性には優れたものの、トラクション性が顕著に悪化した。
【0059】
実施例1〜6を比較したところ、実施例6では比LC/LAが小さく、かつ比LD/LEが小さいため、トラクション性の改善効果が他の実施例に比べて小さかった。実施例3〜5は、実施例1,2に対して、比LA/LBが大きいため、トラクション性の改善効果に優れていた。実施例3は、比LA/LB及びLC/LAがともに上限付近であったため、特にトラクション性の改善効果が高いものであった。トラクション性、耐偏摩耗性及び排土性のバランスとしては、比LA/LB及びLC/LAともに中間値付近である実施例4が最も優れていた。
【0060】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。