分画分子量3,000〜20,000である限外ろ過膜を用いて限外ろ過処理を行ったアルカリ処理抽出物に対し、酸処理を行うことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の燃料組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
すなわち本発明は、以下の工程(1)〜(5)を含む方法により得られる酸処理沈殿物からなる燃料組成物の製造方法である。
工程(1):リグノセルロース原料を亜硫酸処理して中間組成物を得ること、
工程(2):中間組成物を洗浄および脱水して亜硫酸処理物を得ること、
工程(3):亜硫酸処理物をアルカリ処理して、アルカリ処理抽出物を得ること、
工程(4):アルカリ処理抽出物の液温度T
Aを10〜55℃、且つ固形分濃度D
Aを10〜40重量%の範囲となるように調整すること、
工程(5):その後アルカリ処理抽出物を酸処理して酸処理沈殿物を得ること。
【0012】
本発明にかかる処理方法では、アルカリ処理抽出物に対し、酸処理を行う。アルカリ処理抽出物は、通常工程(1)〜(3)を経て排出される抽出液(排液)である。以下工程(1)〜(3)につき説明する。
【0013】
工程(1)は、リグノセルロース原料を亜硫酸処理して中間生成物を得る工程である。 リグノセルロース原料は、構成体中にリグノセルロースを含むものであれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、非木材などのパルプ原料が挙げられる。木材としては、エゾマツ、アカマツ、スギ、ヒノキなどの針葉樹木材、シラカバ、ブナなどの広葉樹木材が例示される。非木材としては、竹、ケナフ、葦、稲などが例示される。リグノセルロース原料は、これらのうち1種のみであっても2種以上の組み合わせであってもよい。木材の樹齢、採取部位は問わない。従って、リグノセルロース原料は、互いに樹齢の異なる樹木から採取された木材、互いに樹木の異なる部位から採取された木材の組み合わせであってもよい。
【0014】
亜硫酸処理は、亜硫酸および/または亜硫酸塩をリグノセルロース原料に接触させる処理である。
【0015】
亜硫酸処理の条件は、特に限定されず、リグノセルロース原料に含まれるリグニンの側鎖のα炭素原子にスルホン基が導入され得る条件であればよい。亜硫酸処理は、亜硫酸蒸解法により行うことが好ましい。これにより、リグノセルロース原料中のリグニンをより定量的にスルホン化することができる。
【0016】
亜硫酸処理は、亜硫酸蒸解法により行うことが好ましい。亜硫酸蒸解法は、亜硫酸および/または亜硫酸塩の溶液(例えば水溶液:蒸解液)中でリグノセルロース原料を高温下で反応させる方法であり、サルファイトパルプの製造方法として工業的に確立され使用されている。そのため、亜硫酸処理を亜硫酸蒸解法により行うことにより、経済性及び実施容易性を高めることができる。
【0017】
亜硫酸処理において亜硫酸および/または亜硫酸塩の溶液を用いる場合、溶液には必要に応じて、SO
2のほかに、カウンターカチオン、蒸解浸透剤(例えば、アントラキノンスルホン酸塩、アントラキノン、テトラヒドロアントラキノン等の環状ケトン化合物)を含ませてもよい。
【0018】
亜硫酸処理を行う際に用いる設備に限定はなく、例えば、一般に知られている溶解パルプの製造設備等を用いることができる。
【0019】
亜硫酸および/または亜硫酸塩の溶液からの中間組成物の分離は、常法に従って行えばよい。分離方法としては例えば、亜硫酸蒸解後の亜硫酸蒸解排液の分離方法が挙げられる。
【0020】
工程(2)では、中間組成物を洗浄および脱水して亜硫酸処理物を得る。これにより、中間処理物に含まれる、亜硫酸処理により除去しきれない成分を除去することができる。
【0021】
洗浄は、亜硫酸蒸解法により得られる未晒亜硫酸パルプの洗浄と同様にして行えばよい。洗浄は、一段階の洗浄でも多段階の洗浄でもよい。多段階洗浄することにより、洗浄を十分に行うことができる。
【0022】
洗浄の際には通常、洗浄機を用いる。洗浄の際に使用する洗浄機に特に限定はないが、例えば、置換洗浄型洗浄機、希釈脱水洗浄型洗浄機が挙げられる。
【0023】
脱水は、通常の条件で行うことができ、例えば、亜硫酸蒸解法において得られる洗浄後の未晒亜硫酸パルプの脱水と同様にして行えばよい。
【0024】
脱水の際には通常、脱水機を用いる。脱水の際に使用する脱水機に特に限定はないが、例えば、ドラム型絞り脱水機、ロータリープレス、および連続圧搾脱水機が挙げられる。
【0025】
洗浄を多段階行う場合には、脱水もその都度行ってもよいし、一部の回のみ行ってもよい。
【0026】
工程(3)では、工程(2)で得られる亜硫酸処理物をアルカリ処理し、アルカリ処理物を得る。
【0027】
アルカリ処理物は、亜硫酸処理物をアルカリ処理した後に得られる不溶物であり、アルカリ処理排液は、工程(3)において排出される液であって、亜硫酸処理物をアルカリ処理して得られる混合物から、アルカリ処理物を分離した後の残液を含む液である。アルカリ処理排液は、アルカリ処理物の洗浄液を含んでいてもよい。
【0028】
アルカリ処理においては、亜硫酸処理物をアルカリ性下におけばよい。アルカリ性とは、通常はpH8以上であり、好ましくはpH9以上である。上限は通常pH14である。
【0029】
アルカリ処理においては、通常、アルカリ性物質を亜硫酸処理物に接触させる。アルカリ性物質は、特に限定されないが、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、およびアンモニア、およびこれらのうち2以上の組み合わせが挙げられ、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0030】
亜硫酸処理物にアルカリ性物質を接触させる方法としては、亜硫酸処理物の分散液、溶液(例えば、水分散液、水溶液)を調製し該溶液中にアルカリ性物質を添加する方法、亜硫酸処理物にアルカリ性物質の溶液または分散液(例えば、水分散液、水溶液)を添加する方法が例示される。
【0031】
アルカリ処理に先立ち、必要に応じて、亜硫酸処理物の溶解、分散処理、濃度の調整(水等の水性溶媒の溶液又は分散液の調製)を行ってもよい。分散処理は、ディスクリファイナーの通過、ミキサー、ディスパーザーへの添加、ニーダー処理などによることができる。濃度の調整は、例えば水等の水性溶媒を用いて行うことができる。
【0032】
この様にして得られたアルカリ処理抽出物(排液)の成分は、木材に含まれる成分に由来する成分を含む。これらアルカリ処理抽出物の組成は工程(1)〜(3)の処理条件、リグノセルロース原料種類等により異なり、一義的に定めることは難しいが、通常、アルカリ処理排液中に含まれる全固形分を100重量%とした際に、還元性糖1〜5重量%、リグニンスルホン酸およびその塩10〜20重量%、糖変性物45〜70重量%、無機塩15〜25重量%、樹脂酸等のその他の有機成分1〜10重量%程度である。
【0033】
上記各成分の含有率の分析は、以下の方法により行うことができる。なお、実施例における各成分の含有率の分析は、以下の方法により行った。
【0034】
還元性糖の測定は、Somogyi−Schaffer法によって測定し、測定値をグルコース量に換算して還元性糖量とした。
【0035】
リグニンスルホン酸塩量は、試料中のメトキシル基量をHI法により求め、メトキシル基量からリグニンスルホン酸量に換算することにより求めた。
【0036】
無機塩類については、試料を10%塩酸溶液で100℃15分間処理した後、金属イオンに関しては誘導結合プラズマ(ICP)法、硫酸および亜硫酸イオンに関してはイオンクロマトグラフィーにより定量した。
【0037】
糖変性物の含有量は、以下の式1にて求めることができる。
【0038】
糖変性物の重量(重量%)=
100(%)−還元性糖の重量(重量%)−糖以外の成分(例えば、リグニンスルホン酸、無機物など)の重量(重量%)・・・(式1)
【0039】
その他有機成分については、次の方法により定量した。1Mの塩酸でpH1に調製した水溶液に試料を懸濁後、懸濁液をクロロホルムで抽出した。クロロホルム相を集めた後に、溶剤を留去し、残渣を誘導体化(トリメチルシリル(TMS)化)してガスクロマトグラフィーにより定量した。
【0040】
糖組成物は、通常、多糖、還元性糖、および/または糖変性物を含む。還元性糖は、還元性を示す糖であればよい。還元性糖は通常、塩基性溶液中でアルデヒド基またはケトン基を生じる。還元性糖としては、すべての単糖、マルトース、ラクトース、アラビノース、スクロースの転化糖などの二糖、および多糖などが例示される。糖変性物としては例えば、糖が酸化、スルホン化などの化学変性を受けてなる変性物、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、または/およびスルホ基などの置換基で置換されている糖誘導体が挙げられる。
【0041】
還元性糖とは、還元性を示す糖であり、塩基性溶液中でアルデヒド基またはケトン基を生じる糖を意味する。還元性糖としては、すべての単糖、マルトース、ラクトース、アラビノース、スクロースの転化糖などの二糖、および多糖などが例示される。還元性糖は、通常、セルロース、ヘミセルロース、およびそれらの分解物を含む。セルロースおよびヘミセルロースの分解物としては、例えば、ラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、グルコース、マンノース、フルクトースなどの単糖、キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖などのオリゴ糖が挙げられる。
【0042】
糖変性物とは、糖が酸化、スルホン化などの化学変性を受けてなる変性物を意味する。糖変性物は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、または/およびスルホ基などの官能基が糖の骨格中に導入された糖誘導体であってもよいし、糖誘導体2つ(2種)以上が結合した化合物などが例示される。
【0043】
アルカリ処理排液中の全固形分濃度は、工程(1)〜(3)の処理条件などにより異なり、一義的に定めることは難しいが、通常1〜10重量%の範囲にある。
【0044】
リグニンスルホン酸塩(リグニンスルホン酸)は、リグニンまたはその分解物の少なくとも一部がスルホ基(スルホン基)で置換されている化合物を意味する。リグニンスルホン酸のスルホン基は、電離していない状態であってもよいし、スルホン基の水素が金属イオン等のイオンに置換されていてもよい。
【0045】
無機塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。
【0046】
樹脂酸等のその他の有機成分としては、例えば、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、イソピマル酸、パラストリン酸、ピマール酸、レボピマル酸、サンダラコピマル酸、コムン酸、アンチコパル酸、ランベルチアン酸、ジヒドロアガト酸、アセチルイソクプレス酸、アセチルインブリカトル酸、インブリカトル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ヘプタデカン酸、ノナデカン酸、cis−9−オクタデセン酸、エライジン酸、cis−cis−9,12−オクタデカンジエン酸、ヘキサデカン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、安息香酸、ラウリン酸、ケイ皮酸、ペンタデカン酸、4−デセン酸、α―ピネン、β―ピネン、カンフェン、3‐カレン、テルピネオール、リモネン、β‐ガダレン、フェランドラル、イソピマラール、フェノール、グアイアコール、エチルグアイアコール、ヒドロオイゲノール、オイゲノール、cis−イソオイゲノール、trans−イソオイゲノール、アセトグアイアコールなどが挙げられる。
【0047】
<酸処理>
以下、本発明の酸処理沈殿物を得るための工程(4)及び工程(5)について詳述する。
【0048】
酸処理においては、アルカリ処理排液を酸性下におけばよい。酸性とは、通常はpH6以下であり、好ましくはpH4.5以下である。下限は通常pH1以上であり、好ましくはpH2以上である。したがって、酸処理における条件は、好ましくはpH2〜pH4.5である。
【0049】
酸処理においては、通常、酸性物質をアルカリ処理排液に接触させる。酸性物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸および酢酸などの有機酸、およびこれらのうち2以上の酸の組み合わせが挙げられ、硫酸が好ましい。なお、工程(3)において添加したアルカリ性物質を、酸処理の前に反応系から分離してもよいし、pHさえ酸性に調整されればそのまま含んでいてもよい。
【0050】
酸処理する際には、アルカリ処理排液に含有される固形分濃度は10〜40重量%であることが重要であり、好ましくは15〜35重量%である。固形分濃度が10重量%以下だと、遊離する沈殿粒子が小さく分離が困難となる。固形分濃度が40%以上だと、沈殿粒子が凝集して塊状となり、分離は可能だが、製造が困難となる。
【0051】
アルカリ処理排液中の固形分濃度を本範囲に調整する方法としては、特に制限されず、エバポレーターや後述する限外濾過などを用いることができ、限外ろ過を行うことが工業生産上好ましい。
【0052】
アルカリ処理排液に酸を添加した後の固形分濃度は15〜45重量%であることがこのましく、より好ましくは15〜40重量%である。固形分濃度が15重量%以下だと、遊離する沈殿粒子が小さく分離が困難となる。固形分濃度が40%以上だと、沈殿粒子が凝集して塊状となり、分離は可能だが、製造が困難となる。
【0053】
アルカリ処理排液に酸性物質を接触させる方法としては、アルカリ処理排液に酸性物質の溶液または分散液(例えば、水分散液、水溶液)を添加する方法が例示される。
【0054】
酸処理において、酸性物質を添加する(酸処理)前のアルカリ処理排液温度(T
A)は10〜55℃であることが重要である。
【0055】
酸性物質を添加後あるいは添加中に排液温度を上昇させる方法が好ましい。そのような酸性物質を添加した(酸処理)後の排液温度(T
B)は、沈殿粒子の生成状況に応じて一義的には決められないが、一般に50〜80℃が好ましい。80℃を超えると粒子の凝集速度が速く塊状となり、分離は可能だが、製造が困難となる。
【0056】
酸処理前後の温度差(T
B−T
A)は、5〜70℃の範囲にあることが好ましく5〜60℃の範囲であることがより好ましい。酸処理前後の温度差が本範囲にあることで、沈殿粒子は適度な大きさとなることができ、製造効率に優れ、燃料組成物として利用する際の燃焼効率に優れる。
【0057】
酸処理の時間は特に限定されないが、上限は3時間以下であることが好ましく、2時間以下であることがより好ましい。
【0058】
酸処理により、通常、固形物と酸処理液とが生じ、生じた固形物は酸処理液から分離する。分離した固形物を酸処理液から除去する方法は、特に限定されず、分離した固形物の性状等に応じて、従来公知の方法により行うことができる。該方法として、固形物を除去するために用いられる方法が例示される。斯かる方法としては、圧搾、ろ過、沈降、遠心分離が例示される。分離の際に用いる装置は特に限定されないが、ベルトフィルター、デカンター、セパレーターが例示される。固形物を酸処理液から除去する方法としては、圧搾、ろ過、沈降、または遠心分離がより好ましく、ろ過がさらに好ましい。
【0059】
固形物を酸処理から除去する際の温度は、特に限定されない。
【0060】
分離した固形物は通常水分を含むため、分離工程の後、乾燥工程を設けることが望ましい。乾燥方法については特に限定されないが、真空乾燥、ドラムドライヤー、遠赤バンド乾燥、気流乾燥、凍結乾燥などが例示される。
【0061】
本発明の燃料組成物として利用できる上記固形物は、酸処理液から回収した際の平均粒子径が20〜500μmの範囲にあることが好ましい。回収時の平均粒子径を本範囲に調整することで、燃料組成物として利用する際の製造効率や燃焼効率に優れる。
【0062】
乾燥後の固形物はさらに粉砕および/または分級することができる。粉砕方法については特に限定されないが、ロールミル、カッターミル、ハンマーミル、ボールミルなどが例示される。また、分級方法についても特に限定されないが、気流式分級、振動ふるい、超音波ふるいなどが例示される。
【0063】
粉砕後の固形物は平均粒子径10〜400μmの範囲であることが好ましい。燃料組成物に含まれる該固形分が本範囲であることで、より高い燃焼効率を得ることができる。
【0064】
酸処理液から除去された固形物は、有機物として、リグニンスルホン酸塩その他の成分を含むため、回収し、本発明の燃料組成物として利用することができる。
【0065】
固形物の組成は、処理条件等や用いるリグノセルロース原料により異なり、一義的に定めることは難しいが、固形物(沈殿物)の全固形分を100重量%とすると、以下のとおりである。
通常、還元性糖は1〜5重量%である。
リグニンスルホン酸およびその塩は、通常2〜70重量%、好ましくは30〜70重量%である。
通常、糖変性物は20〜50重量%である。
通常、無機塩は5〜60重量%、好ましくは5〜25重量%である。
通常、その他樹脂酸等の有機成分は、1〜30重量%程度である。
【0066】
酸処理液の組成は、処理条件等や用いるリグノセルロース原料により異なり、一義的に定めることは難しいが、通常、酸処理液の全固形分を100重量%とすると、以下のとおりである。
【0067】
通常、還元性糖は0〜5重量%である。
【0068】
通常、リグニンスルホン酸およびその塩は0〜10重量%である。
【0069】
通常、糖変性物は25〜45重量%である。
【0070】
通常、無機塩は、50〜70重量%である。
【0071】
通常、樹脂酸等のその他の有機成分は0〜10重量%程度である。
【0072】
<限外ろ過処理>
本発明の方法は、アルカリ処理抽出物に対して、限外ろ過(UF)処理を行うことを含んでよい。限外ろ過処理により分子量分画をすることができる。
【0073】
本発明において、UF処理は限外ろ過膜(UF膜)を用いて行う処理であればよい。UF膜は、通常概ね0.01〜0.001μm程度の孔径を有し、UF膜の孔径および溶質の分子の大きさに応じて分子レベルでふるい分けを行うことにより、溶質の分離、分画、濃縮および精製などを行うことができる。
【0074】
本発明のUFによる処理条件は、特に限定がなく、例えば、工業的に通常行われている条件を用いることができる。UFによる処理の温度条件としては、処理温度20℃〜80℃が好ましく、膜材質の耐熱面から20℃〜50℃がより好ましい。またUFにより処理されるアルカリ処理抽出物のpHは2〜11が好ましい。UFにより処理されるアルカリ処理抽出物中の固形分濃度は2〜30重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましく、10〜30重量%がさらに好ましい。
【0075】
UFによる処理は、処理されるアルカリ処理抽出物をUF膜から透過させることにより行うことが好ましく、濃縮倍率は1.2倍v/v以上15倍v/v以下が好ましい。透過時にはUF膜内に水を加えて浄化を促進してもよい。
【0076】
本発明におけるUFによる処理に用いられるUF膜は、分画分子量が2,000以上のであることが好ましく、3,000以上であることがより好ましい。本発明におけるUFによる処理に用いられるUF膜は、分画分子量が100,000以下であることが好ましく、20,000以下であることがより好ましい。したがって、本発明におけるUFによる処理に用いられるUF膜は、分画分子量が2,000〜100,000であることが好ましく、3,000〜20,000であることがより好ましい。
【0077】
UF処理により得られるUF濃縮物の組成は、処理条件等や用いるリグノセルロース原料により異なり、一義的に定めることは難しいが、通常、UF濃縮物の全固形分を100重量%とした際に、還元性糖1〜5重量%、リグニンスルホン酸およびその塩15〜40重量%、糖変性物20〜70重量%、無機塩5〜25重量%、その他樹脂酸等の有機成分1〜20重量%程度である。
【0078】
UF処理により得られるUF透過液の組成は、処理条件等や用いるリグノセルロース原料により異なり、一義的に定めることは難しいが、通常、UF透過液の全固形分を100重量%とすると、以下のとおりである。
【0079】
通常、還元性糖は1〜10重量%である。
【0080】
通常、リグニンスルホン酸およびその塩は1〜10重量%である。
【0081】
通常、糖変性物は30〜60重量%である。
【0082】
通常、無機塩は、25〜45重量%である。
【0083】
通常、樹脂酸等のその他の有機成分は1〜10重量%程度である。
【0084】
<酸処理と限外ろ過処理との組み合わせ>
本発明の方法においては、アルカリ処理抽出物に対して上記酸処理および上記限外ろ過処理を行ってもよい。すなわち、アルカリ処理抽出物に対してまず限外ろ過処理を行ってUF処理液を得、UF処理液に対して酸処理を行ってもよい。酸処理を行ったUF処理液の固形分濃度は、15〜45重量%が好ましい。
【0085】
酸処理と限外ろ過処理との両方を行う場合の、各処理における好ましい条件は、上記<酸処理>または<限外ろ過処理>の項で説明した条件と同様である。
【0086】
<その他の任意の処理>
本発明の処理方法は、アルカリ処理抽出物に対して酸処理を行うことを含んでいればよく、本発明の目的および効果を阻害しない限り、その他の任意の処理を含んでいてもよい。
【0087】
例えば、アルカリ処理抽出物に対して酸処理および/または限外ろ過処理を行って得られる処理液に対して、さらに従来公知の処理を行ってもよい。かかる処理としては、例えば、生物膜式活性汚泥法、メタン生成菌を利用したUASBなどの処理法、嫌気処理法、または膜分離式活性汚泥法などの生物処理、凝集剤などの添加処理が挙げられる。
【0088】
本発明の燃焼組成物としては、本発明の効果を阻害しない範囲で上記固形物の他、他の成分を含有することができる。
【実施例】
【0089】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
<実施例1>
リグノセルロース原料(ラジアータパイン)を亜硫酸蒸解法に基づき亜硫酸処理し、中間組成物を得た。亜硫酸処理の条件は、SO
2濃度4g/100mLの亜硫酸マグネシウムの溶液を用いて、温度140℃、pH2、処理時間3時間とした。次に、中間組成物を洗浄および脱水し、パルプ(亜硫酸処理物)を得た。続いて、パルプをNaOH5重量%(対パルプ固形分)に懸濁させてからアルカリ処理し、その後ろ過してアルカリ処理パルプ(アルカリ処理物)とアルカリ処理排液とを分離してアルカリ処理抽出物(排液)を得た。得られたアルカリ処理抽出物排液の固形分濃度は、5重量%であった。アルカリ処理は、NaOH5重量%(対パルプ固形分)を接触させ、100℃にて2時間処理する条件で行った。
【0091】
得られたアルカリ処理抽出物を固形分15%となるように調整した水溶液800gを30℃にした。pH2.3となるまで硫酸70重量%水溶液を添加し、固形分は20%となった。続いて液温度を68℃にし5分間保持した後に、生じた沈殿物をろ別した後、気流乾燥し平均粒子径200μmの沈殿物を得た。得られた沈殿物をボールミルで粉砕し、ふるい分けして平均粒子径80μmの粉末状固形物1を得た。
【0092】
固形物の組成は、沈殿物の全固形分を100重量%として、以下のとおりである。
還元性糖2重量%、リグニンスルホン酸およびその塩41重量%、糖変性物31重量%、無機塩5重量%、その他の有機成分(樹脂酸など)21重量%
各成分の含有率は、前述した方法により求めた。以下の実施例に記載された各成分の含有率も同様の方法により求めた。
【0093】
<実施例2>
実施例1と同様の方法で、アルカリ処理抽出物を固形分20%となるように調整した水溶液800gを30℃にした。pH2.3となるまで硫酸70重量%水溶液を添加し、固形分は25%となった。続いて液温度を60℃にし5分間保持した後に、生じた沈殿物をろ別した後、気流乾燥し、平均粒子径300μmの沈殿物を得た。得られた沈殿物をボールミルで粉砕後ふるい分けして平均粒子径100μmの粉末状固形物2を得た。
【0094】
固形物の組成は、沈殿物の全固形分を100重量%として、以下のとおりである。還元性糖2重量%、リグニンスルホン酸およびその塩43重量%、糖変性物29重量%、無機塩5重量%、その他の有機成分(樹脂酸など)21重量%
【0095】
<実施例3>
実施例1と同様の方法で、アルカリ処理抽出物を固形分35%となるように調整した水溶液800gを50℃にした。pH3.8となるまで硫酸70重量%水溶液を添加し、固形分は38%となった。続いて液温度を65℃にし5分間保持した後に、生じた沈殿物をろ別した後、気流乾燥し、平均粒子径350μmの沈殿物を得た。得られた沈殿物をボールミルで粉砕後ふるい分けして平均粒子径110μmの粉末状固形物3を得た。
【0096】
固形物の組成は、沈殿物の全固形分を100重量%として、以下のとおりである。還元性糖2重量%、リグニンスルホン酸およびその塩45重量%、糖変性物27重量%、無機塩5重量%、その他の有機成分(樹脂酸など)21重量%
【0097】
<実施例4>
実施例1と同様にして得られたアルカリ処理抽出物をUF処理した。UF処理では、アルカリ処理排液の濃度を未調整の状態で、分画分子量20,000の限外ろ過膜(旭化成ケミカルズ社製)を用い、アルカリ処理抽出物の容量が1/5となるまでUF膜内で濃縮した(5倍v/v濃縮)。温度条件は、35℃であった。生じた透過液を集めて、実施例4のUF透過液(UF処理液)を得た。またUF処理で濃縮した液を集め、UF濃縮液を得た。
【0098】
UF濃縮液の組成は、UF濃縮液の全固形分を100重量%として、以下のとおりである。
還元性糖3重量%、リグニンスルホン酸およびその塩23重量%、糖変性物48重量%、無機塩17重量%、その他の有機成分(樹脂酸など)9重量%
【0099】
得られたUF濃縮液を固形分20%に調整した水溶液800gを30℃にした。pH2.3となるまで硫酸70重量%水溶液を添加し、固形分は25%となった。続いて液温度を80℃にし20分間保持した後に、生じた沈殿物をろ別した後、気流乾燥し、平均粒子径200μmの沈殿物を得た。得られた沈殿物をボールミルで粉砕後ふるい分けして平均粒子径100μmの粉末状固形物4を得た。
【0100】
固形物の組成は、沈殿物の全固形分を100重量%として、以下のとおりである。還元性糖1重量%、リグニンスルホン酸およびその塩43重量%、糖変性物36重量%、無機塩5重量%、その他の有機成分(樹脂酸など)15重量%
【0101】
<比較例1>
実施例1と同様の方法で、アルカリ処理抽出物を固形分43%となるように調整した水溶液800gを60℃にした。pH3となるまで硫酸70重量%水溶液を添加し、固形分は48%となった。続いて液温度を90℃にし5分間保持した後に、生じた沈殿物をろ別し乾燥させ沈殿固形物1を得た。固形物は塊状となり、粉砕は困難であった。
【0102】
<比較例2>
実施例1と同様の方法で、アルカリ処理抽出物を固形分20%となるように調整した水溶液800gを60℃にした。pH2.3となるまで硫酸70重量%水溶液を添加し、固形分は25%となった。続いて液温度を60℃にし5分間保持した後に、生じた沈殿物をろ別し乾燥させ沈殿固形物2を得た。固形物は塊状となり、粉砕は困難であった。
【0103】
<参考例>
市販の石炭(エンシャム炭、オーストラリア産)を用いた。
【0104】
<評価>
各実施例で得られた乾燥固形物1〜4、沈殿固形物1〜2をボンブ熱量計を用いて、低位発熱量を測定した。表1に結果を示す。
【0105】
【表1】
【0106】
実施例1〜4は比較例と比較し得られた固形物が塊状ではなく、粉末状の固形物が得られることが分かる。また実施例の低位発熱量は石炭並みであり、燃料として十分利用できることが分かる。