特開2018-193634(P2018-193634A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-193634(P2018-193634A)
(43)【公開日】2018年12月6日
(54)【発明の名称】不織布ワイパー、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/26 20120101AFI20181109BHJP
   A47L 13/16 20060101ALI20181109BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20181109BHJP
   D04H 5/03 20120101ALI20181109BHJP
【FI】
   D04H1/26
   A47L13/16 A
   D04H1/4374
   D04H5/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-97519(P2017-97519)
(22)【出願日】2017年5月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】村田 剛
【テーマコード(参考)】
3B074
4L047
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AA08
3B074AB01
3B074AC03
4L047AA08
4L047AA21
4L047AB02
4L047AB04
4L047AB06
4L047BA04
4L047CA02
4L047CA19
4L047CB01
4L047CB07
4L047CB10
4L047CC16
(57)【要約】
【課題】手軽に使えて、風合いが良く、強度とのバランスに優れ、更には製造コストの面でも優れる不織布ワイパーを提供する。
【解決手段】パルプ繊維ウエブと合成繊維ウエブとを水流交絡処理して得られる不織布ワイパーであって、前記パルプ繊維ウエブに含まれるパルプ繊維の平均繊維長が1.0〜5.0mmであり、当該不織布ワイパーの坪量が20〜42g/mであり、構成比がパルプ繊維ウエブ70〜50質量%、前記合成繊維ウエブ30〜50質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維ウエブと合成繊維ウエブとを水流交絡処理して得られる不織布ワイパーであって、前記パルプ繊維ウエブに含まれるパルプ繊維の平均繊維長が1.0〜5.0mmであり、当該不織布ワイパーの坪量が20〜42g/mであり、構成比がパルプ繊維ウエブ70〜50質量%、前記合成繊維ウエブ30〜50質量%である、ことを特徴とする不織布ワイパー。
【請求項2】
前記パルプ繊維ウエブは、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルースおよびダグラスファーからなる群から選択された針葉樹晒クラフトパルプの繊維から成る、ことを特徴とする請求項1に記載の不織布ワイパー。
【請求項3】
JIS L 1096に規定の織物及び編物の生地試験方法に記載のテーバ形法に準拠したテーバ試験機で摩擦輪H−18を用い、湿潤状態の不織布を試験したときのテーバ値が15回以上である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の不織布ワイパー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の不織布ワイパーを製造する方法であって、
パルプ繊維ウエブと合成繊維ウエブとの水流交絡処理を水圧1〜20MPaのウオータジェットを用いて実行する、ことを特徴とする不織布ワイパーの製造方法。
【請求項5】
前記水流交絡処理は多段で実行され、前段部の水圧を2〜10MPaで斬増し、後段部の水圧を10〜18MPaにしてあると共に、
前記ウオータジェットのノズル径が0.16mm以下で、ノズル間隔が1.0mm以下である、ことを特徴とする請求項4に記載の不織布ワイパーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ繊維ウエブと合成繊維ウエブとを水流交絡処理して得られる複合型の不織布ワイパー、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプ繊維ウエブと合成繊維ウエブとを一体化した複合型の不織布ワイパーは、パルプによる天然繊維ウエブと合成繊維系ウエブとを積層した後に、これらを水流交絡処理することにより得られる。この様な不織布ワイパーは強度と吸水性とを両立させている優れた不織布製品となるので、汚れを拭取るワイパーとして様々な用途で使用されている。
【0003】
上記の複合型の不織布ワイパーについては、例えば特許文献1に基本的な製造工程が開示されている。この特許文献1には、パルプ繊維ウエブとして長い天然繊維、短い天然繊維、またそれらのリサイクル繊維のいずれも採用可能であること、そして合成繊維についても連続フィラメント不織布を形成できるポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を適宜に採用可能であることが記載されている。
更に、不織布ワイパーの坪量については20〜200g/mとすることが可能であることについても記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2533260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1にあっては、複合型の不織布ワイパーを構成するパルプ繊維ウエブと合成繊維ウエブ、そして製造する不織布の坪量のいずれについても、適宜に選択して、所望の不織布が作製可能であるかの様に記載がされている。
ところが、実際、市場でユーザに提供されている不織布ワイパーは坪量50g/mを超えるものである。そして、特許文献1中にて開示している多数の実験例(実施例)による不織布についても、その坪量は約80〜90g/mである。このように実際に製造されて市場に供給されている不織布ワイパーは坪量が50g/m以上であって、100g/m超えて例えば坪量が125g/mであるというのが実情である。このように坪量が異なる不織布ワイパーが存在し、そして、その用途に適している坪量のものが使用されているということになる。
【0006】
しかし、従来において提供されていた不織布ワイパーは、その剛性が比較的高いものであった。そのため、軽微な汚れを簡単、手軽に拭取りたいときに、ワイパーの剛性が高くて使いづらいという場合もあった。
【0007】
そこで、本発明者は、柔らかで使い勝手が良く、手軽に使え、強度とのバランスに優れた不織布ワイパーを指向して、先ず坪量を下げて前述した複合型の不織布ワイパーを製造することを試みた。
しかしながら、複合型の不織布ワイパーについて、単に、坪量を下げると、製造工程での水流交絡処理時にパルプ繊維の地合い形成が困難となり繊維ムラが発生した。また、パルプ繊維の歩留りが低くなり、製造コスト面で劣る製品となってしまった。
【0008】
よって、本発明の目的は、手軽に使えて、風合いが良く、強度とのバランスに優れ、更には製造コストの面でも優れる不織布ワイパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、パルプ繊維ウエブと合成繊維ウエブとを水流交絡処理して得られる不織布ワイパーであって、前記パルプ繊維ウエブに含まれるパルプ繊維の平均繊維長が1.0〜5.0mmであり、当該不織布ワイパーの坪量が20〜42g/mであり、構成比がパルプ繊維ウエブ70〜50質量%、前記合成繊維ウエブ30〜50質量%である、ことを特徴とする不織布ワイパーにより達成できる。
【0010】
そして、前記パルプ繊維ウエブは、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルースおよびダグラスファーからなる群から選択された針葉樹晒クラフトパルプの繊維を用いて形成するのが好ましい。
【0011】
また、ワイパー使用中の交絡繊維の脱落の程度を確認できる、JIS L 1096に規定の織物及び編物の生地試験方法に記載のテーバ形法に準拠したテーバ試験機で摩擦輪H−18を用い、湿潤状態の不織布を試験したときのテーバ値が15回以上である不織布ワイパーとするのが好ましい。
【0012】
上記目的は、上記に記載している不織布ワイパーを製造する方向であって、
パルプ繊維ウエブと合成繊維ウエブとの水流交絡処理を水圧1〜20MPaのウオータジェットを用いて実行することを特徴とする不織布ワイパーの製造方法ことによっても達成される。
そして、前記水流交絡処理は多段で実行され、前段部の水圧を2〜10MPaで斬増し、後段部の水圧を10〜18MPaにしてあると共に、前記ウオータジェットのノズル径が0.16mm以下で、ノズル間隔が1.0mm以下であるように設定してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、不織布に求められる吸水性等の本来の機能を保持しつつ、手軽に使えて、風合いが良く、強度とのバランスに優れ、更には製造コストの面でも優れる不織布ワイパーを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る不織布ワイパーについて説明する。
本発明に係る不織布ワイパーは、パルプ繊維ウエブと合成繊維ウエブとによる複合型のワイパーであり、従来公知の製造法と同様に、合成繊維ウエブの上にパルプ繊維ウエブを配置して、上方から所定圧の水流(ウオータジェット流)を噴射して水流交絡処理される。これによりパルプ繊維ウエブの繊維が合成繊維ウエブ側に入り込んで繊維同士が絡み合う状態(交絡)が形成されて、一体的に積層された不織布が得られる。
【0015】
ここで、本発明に係る複合型の不織布は、従来における不織布ワイパーと比較して、低坪量の20〜42g/mである。従来、市場で提供されている不織布ワイパーは約50〜130g/mであるので、従来の最も軽い不織布ワイパーと比較しても、本発明の不織布ワイパーは80%以下であって、薄く、軽量に設計されている。
【0016】
通常よりも坪量が小さく、厚さが薄い不織布ワイパーを製造する場合、パルプ繊維ウエブを構成している繊維が短いと、水流交絡処理時に高圧のウオータジェット流を受けるとパルプ繊維が流し出され易いことを、本発明者は確認した。そして、このようにパルプ繊維が流出する不織布では、地合いの形成が困難となり、繊維ムラが発生した製品になるというだけでなく、製造の歩留りの点でも問題となることも確認するに至った。
そして、これらの問題に対処する構成が、下記に説明する相対的に長いパルプ繊維により形成したパルプ繊維ウエブを用いることと、そしてパルプ繊維ウエブの構成比を所定範囲に設定することが好ましいことを確認して、本発明の不織布ワイパー到達したものである。
【0017】
本発明に係る不織布ワイパーでは、まず上記問題に対して、相対的に長いパルプ繊維を含むパルプ繊維ウエブを採用することにより対処している。
例えば、パルプ平均繊維長1.0〜5.0mmであるパルプを用いて、パルプ繊維ウエブを形成するのが好ましい。具体的には、パルプ繊維ウエブをラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルースおよびダグラスファーからなる群から選択された針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の繊維を用いて形成するのが好ましい。いずれか1つのパルプ繊維によるパルプ繊維ウエブとしてもよいし、2つ以上を混合して形成したパルプ繊維ウエブとしてもよい。従来よりも相対的に長い繊維長のパルプ繊維を採用することで、繊維の脱落を防止しつつ、均一な地合い形成を実現できるようになる。
【0018】
そして、上記合成繊維ウエブを構成する合成繊維としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等から選択することができ、ポリプロピレンを用いるのが好ましい。これを公知のスパンボンドの製造工程によってウエブに形成すればよい。
そして、本発明の不織布ワイパーでは、70〜50質量%をパルプ繊維で構成し、残りの30〜50質量%を合成繊維ウエブで構成してある。
【0019】
以上の構成で、合成繊維ウエブ上にパルプ繊維ウエブを積層して、水流交絡処理を実行すると、パルプ繊維の抜け落ちを抑制しつつウエブ間の結合を促進して一体化した不織布を製造でき、その際にパルプ繊維の抜け落ちを抑制しているので歩留り良く製造することができる。
ここで、得られる不織布ワイパーは薄手で風合いが良いので使い勝手がよく、軽微な汚れを、手軽に拭取るのに便利なワイパーとなる。
【0020】
なお、本発明に係る上記不織布ワイパーを製造する際の水流交絡処理では、従来よりも穏やかな水圧のウオータジェットで水噴射処理をするのが望ましく、例えば、1〜20MPaの水圧を用いて交絡処理をするのがよい。
ここで、前記水流交絡処理に用いるウオータジェットのノズル径は好ましくは0.16mm以下、より好ましくは0.12mm以下とし、またノズル間隔は好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.5mm以下とするのがよい。
更に、ウオータジェットを多段に配置して水流交絡処理するようにしてもよい。この場合に、例えば、前段部のウオータジェットを1〜4段に構成して、その水圧を2〜10MPaで斬増してゆき、続く下流の後段部のウオータジェットでは水圧を10〜18MPaとする交絡処理を行うと、繊維の抜け落ちをより確実に抑制しつつ、強固な結合を有する不織布ワイパーを製造できる。
【0021】
(実施例)
以下、更に本発明に係る不織布ワイパーの実施例について説明する。実施例1はサザンパインのパルプ繊維を用いて形成したパルプ繊維ウエブと、ポリプロピレン製スパンボンドによる合成繊維ウエブとにより複合型の不織布ワイパーを形成した。
実施例1の不織布ワイパーはパルプ繊維ウエブの平均繊維長は2.5mmであり、不織布ワイパーとしての坪量30.0g/mであって、パルプ繊維ウエブの坪量は20.0g/mで構成比66.7質量%、合成繊維ウエブの坪量は10.0g/mで構成比33.3質量%であった。
なお、坪量はJIS P8124に記載の方法に準拠して測定した。また繊維長は、カヤニ繊維長測定装置(KAJJANI 社、FS-100)を用い測定した。長さの平均繊維長(mm)を求めた。
【0022】
実施例2の不織布ワイパーについても、実施例1と同じ種類のパルプ繊維を用いて形成して、パルプ繊維ウエブの平均繊維長は2.5mmである。不織布ワイパーの坪量20.5g/mであって、パルプ繊維ウエブの坪量は12.5g/mで構成比61.0質量%、合成繊維ウエブの坪量は8.0g/mで構成比39.0質量%であった。
【0023】
上記実施例1、2に対し、準備した比較例も複合型の不織布ワイパーであり、オークのパルプ繊維を用いて形成してあり、パルプ繊維ウエブの平均繊維長は0.7mmであり、不織布ワイパーの坪量31.0g/mであって、パルプ繊維ウエブの坪量は21.0g/mで構成比67.7質量%、合成繊維ウエブの坪量は10.0g/mで構成比32.3質量%であった。
【0024】
上記各不織布ワイパーについて、厚み(mm)、引張試験に基づく強度、繊維歩留りの状況、地合い、そしてテーバ値(回)、吸水性を求めて総合判断した。
試験方法は以下の通りである。
・厚み: ピーコック紙厚計にて、37.85g/cm加重下で測定した。
・強度: JISP8113に基づく乾燥時の引張強さとして測定した。
・繊維歩留り: パルプ繊維ウエブと合成繊維ウエブの供給量の合計と仕上がりとの差(繊維の歩留り)を測定した。歩留り○:85%以上 △:85〜70% ×:70%以下
・地合い: モニタ10名による官能評価を行った。7名以上が良いとした場合を優れる○、4〜6名が良いとした場合を普通△、そして良いとしたものが3名以下の場合を悪い×とした。
・湿潤テーバ値:JIS L 1096に規定されたテーバ試験機を用いて、回転する水平円盤に水で湿潤させた試料を取り付けて、砥粒結合体で成形された一対の摩擦輪(H−18)を規定荷重(4.9N)のもとに加えて、耐摩耗性を調べた。これによりワイパー使用中の交絡繊維の脱落の程度を確認することができる。判定は、摩耗によるシートの穴が13mmとなるまでの円盤の回転数で判定した。15回以上の場合を合格○とし、15回未満を不合格×とした。
・吸水性:JIS S 3104に規定された吸水速度試験に準拠し、滴下水量を0.5mLに変更し、水滴が試験片の表面に達したときから、試験片の鏡面反射が消えるまでの時間(秒)を測定し、評価した。ここでは、4.0秒以下の場合に十分な吸水性を備えているとして○、4.0秒を超える場合は×とした。
・総合判断:全て○の場合を優、×を含む場合を不可とした。
実施例1、2および比較例1の結果を纏めたものが下記の(表1)である。
【0025】
【表1】
【0026】
本発明による実施例1、2の不織布ワイパーは、従来の一般的な不織布ワイパーと比較して、低い坪量でも所定の吸水性を備えており、風合い、強度に優れた不織布ワイパーとして提供できる。また、必要な耐摩耗性も備えているため、ワイパーとして使用している時に繊維が脱落して汚染することも防止できる。
また、製造時にパルプ繊維の歩留りも確保されているので、製造コストを抑制して複合型の不織布ワイパーを製造することができる。
【0027】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができることは言うまでもない。