特開2018-193677(P2018-193677A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-193677(P2018-193677A)
(43)【公開日】2018年12月6日
(54)【発明の名称】接着剤剥離装置
(51)【国際特許分類】
   E04F 21/00 20060101AFI20181109BHJP
【FI】
   E04F21/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-95503(P2017-95503)
(22)【出願日】2017年5月12日
(71)【出願人】
【識別番号】510277512
【氏名又は名称】株式会社テクト
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】高木 一昌
(72)【発明者】
【氏名】高木 栄造
(72)【発明者】
【氏名】前橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】古谷 則之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸典
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 一弥
(57)【要約】
【課題】騒音を発生せずに容易に硬化した接着剤を剥がすことができる、接着剤剥離装置を提供する。
【解決手段】横長の本体2と、本体2の長さ方向の一方の端部付近の前面に設ける固定刃ユニット3と、本体2の長さ方向の他方の端部付近から固定刃ユニット3付近にかけて、本体2の前面に配設するレール材4と、レール材4上を摺動する移動刃ユニット5と、移動刃ユニット5をレール材4に沿って摺動させるための摺動ユニット6と、を有し、固定刃ユニット3の前面には、一辺に固定貫入刃311を形成した板状の固定刃31を本体2の前面に沿って設け、移動刃ユニット5の前面には固定刃31と対向する、一辺に移動貫入刃511を形成した板状の移動刃51を本体2の前面に沿って設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横長の本体と、
前記本体の、長さ方向の一方の端部付近の前面に設ける固定刃ユニットと、
前記本体の長さ方向の他方の端部付近から前記固定刃ユニット付近にかけて、前記本体の前面に配設するレール材と、
前記レール材上を摺動する移動刃ユニットと、
前記移動刃ユニットを前記レール材に沿って摺動させるための摺動ユニットと、を有し、
前記固定刃ユニットの前面には、一辺に貫入刃を形成した板状の固定刃を前記本体の前面に沿って設け、
前記移動刃ユニットの前面には前記固定刃と対向する、一辺に貫入刃を形成した板状の移動刃を前記本体の前面に沿って設ける、接着剤剥離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の接着剤剥離装置において、
前記摺動ユニットを駆動して前記移動刃ユニットを摺動し、前記移動刃を前記固定刃に最も近づけた際に、前記移動刃と前記固定刃との間に間隙を有することを特徴とする、接着剤剥離装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の接着剤剥離装置において、
前記固定刃と前記移動刃とは、前記貫入刃が前記本体の前面から離れるように前記本体の前面に対して所定の角度をなすことを特徴とする、接着剤剥離装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の接着剤剥離装置において、
前記摺動ユニットが油圧シリンダであることを特徴とする、接着剤剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニューアル工事等において、壁面パネルを解体したときに躯体壁面に残存する接着剤を剥離するための、接着剤剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
壁面パネルを躯体壁面に取り付ける直張工法の一つとして、GL工法が知られている。
GL工法は、団子状の石膏系の接着剤(GLボンド)を躯体壁面に点付けし、その上から石膏ボードからなる壁面パネルを押し付けることにより、内装壁を構築するものである(図8)。
【0003】
耐震補強工事やリニューアル工事において、GL工法により構築された内装壁を解体する場合には、石膏ボードからなる壁面パネルは容易に解体することができるが、躯体壁面には点付けした接着剤が残ってしまう。
この接着剤は硬化しており、撤去するためにはハンマドリルで斫り落とす、又は、ディスクグラインダで削り取る必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この硬化した接着剤の撤去には、以下のような問題がある。
(1)ハンマドリルでの斫り落としやディスクグラインダでの削り取り時には、打撃音や振動が発生する。
(2)打撃音や振動が発生する作業は、特に耐震補強工事やリニューアル工事においては作業時間が限られるため、施工期間が長期化する。
(3)ハンマドリルでの斫り落としやディスクグラインダでの削り取り時に躯体壁面方向に力が作用し、躯体壁面を破損してしまうおそれがある。
(4)硬化した接着剤の斫り落としや削り取り作業は重労働であり、作業員の負担が大きい。
【0005】
本発明は、騒音を発生せずに容易に硬化した接着剤を剥がすことができる、接着剤剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、横長の本体と、前記本体の、長さ方向の一方の端部付近の前面に設ける固定刃ユニットと、前記本体の長さ方向の他方の端部付近から前記固定刃ユニット付近にかけて、前記本体の前面に配設するレール材と、前記レール材上を摺動する移動刃ユニットと、前記移動刃ユニットを前記レール材に沿って摺動させるための摺動ユニットと、を有し、前記固定刃ユニットの前面には、一辺に貫入刃を形成した板状の固定刃を前記本体の前面に沿って設け、前記移動刃ユニットの前面には前記固定刃と対向する、一辺に貫入刃を形成した板状の移動刃を前記本体の前面に沿って設ける、接着剤剥離装置を提供する。
本願の第2発明は、第1発明の接着剤剥離装置において、前記摺動ユニットを駆動して前記移動刃ユニットを摺動し、前記移動刃を前記固定刃に最も近づけた際に、前記移動刃と前記固定刃との間に間隙を有することを特徴とする、接着剤剥離装置を提供する。
本願の第3発明は、第1発明又は第2発明の接着剤剥離装置において、前記固定刃と前記移動刃とは、前記貫入刃が前記本体の前面から離れるように前記本体の前面に対して所定の角度をなすことを特徴とする、接着剤剥離装置を提供する。
本願の第4発明は、第1発明乃至第3発明の接着剤剥離装置において、前記摺動ユニットが油圧シリンダであることを特徴とする、接着剤剥離装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)移動刃を摺動ユニットによって摺動し、固定刃と移動刃によって接着剤を挟み込んで剥離するため、打撃音や振動が発生することがない。
(2)打撃音や振動が発生せず、耐震補強工事やリニューアル工事においても作業時間が限られず、短工期にて施工することができる。
(3)移動刃は壁面に沿って平行に摺動するため、躯体壁面方向に力が作用することがなく、躯体壁面を破損してしまうおそれがない。
(4)移動刃を摺動ユニットによって摺動するため、作業員の負担がなく、誰でも行うことができる。
(5)移動刃と固定刃との間に間隙を設けることにより、誤って接着剤以外のものを挟み込む事故を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】接着剤剥離装置の説明図
図2】固定刃および移動刃の説明図
図3】固定刃と移動刃を開いた状態の説明図
図4】固定刃と移動刃を閉じた状態の説明図
図5】剥離工程の説明図(1)
図6】剥離工程の説明図(2)
図7】剥離工程の説明図(3)
図8】GL工法により構築した内装壁の説明図
【実施例1】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
<1>接着剤剥離装置
本発明の接着剤剥離装置1は、本体2と、本体2の一方の端部付近の表面に固定する固定刃ユニット3、本体2の表面に沿って配置するレール材4、レール材4上を摺動する移動刃ユニット5、および、移動刃ユニット5を摺動させる摺動ユニット6からなる(図1)。
【0011】
<2>本体
本体2は例えばアルミフレームを複数本組み合わせた、横長の部材である。
本体2の前面には、一方の端部付近に固定刃ユニット3を固定するとともに、固定刃ユニット3から他方の端部にかけてレール材4を配設する。
また、本体2には、固定刃ユニット3およびレール材4と干渉しないように、レール材4上を摺動する移動刃5を摺動させるための摺動ユニット6を設ける。
本体2の背面には取っ手7を設ける。
【0012】
<3>固定刃ユニット
固定刃ユニット3は、本体2に沿って配置する板状の固定刃31と、固定刃31を本体2の前面から所定の間隔で保持する固定刃ベース32と、からなる。
固定刃31は一辺に、切刃を本体2側として鋭角に突出する固定貫入刃311を形成し、固定貫入刃311の切刃を本体2側として移動刃ユニット5の方向に向けて配置する。
固定貫入刃311は、超硬チップ311aを用いて形成してもよい(図2)。
【0013】
<4>レール材
レール材4は、本体2の前面に沿ってスライドブロック41を摺動するためのリニアガイドである。
レール材4は本体2の前面の横方向に、一本又は複数本配設する。
【0014】
<5>移動刃ユニット
移動刃ユニット5は、本体2に沿って配置する板状の移動刃51と、移動刃51を本体2の前面から所定の間隔で保持する移動刃ベース52と、からなる。
移動刃ベース52はスライドブロック41に固定することにより、移動刃ユニット5はレール材4上を摺動する。
移動刃51は一辺に、切刃を本体2側として鋭角に突出する移動貫入刃511を形成し、固定刃ユニット3の方向に向けて配置する。
移動貫入刃511は、超硬チップ511aを用いて形成してもよい(図2)。
【0015】
<6>摺動ユニット
摺動ユニット6は、シリンダ61とロッド62と、を有する油圧シリンダである。また、油圧シリンダの他にも、エアシリンダや電動シリンダ、ボールねじ、リニアモータ等、移動刃ユニット5を直線運動するものであればよい。
摺動ユニット6は、シリンダ61を本体2の前面に固定し、ロッド62の先端を移動刃ユニット5の移動刃ベース52に固定する。
シリンダ61は本体2に固定されているため、ロッド62を伸縮することにより、ロッド62の先端に取り付けた移動刃ユニット5はレール材4上を摺動する。レール材4とスライドブロック41はリニアガイドのため、摺動時に騒音が発生しない。
【0016】
<7>固定刃と移動刃の組み合わせ
固定刃31と移動刃51は、固定貫入刃311と移動貫入刃511を対向し、本体2の前面から等距離に配置する(図3、4)。
固定刃31と移動刃51はいずれも板状であり、固定貫入刃311と移動貫入刃511が本体2の前面から離れるように本体2方向に開く八の字状に、本体2の前面に対して傾斜させて配置する。
移動刃ユニット5はレール材4上を摺動するため、移動刃51は本体2に沿って移動する。
そして、移動刃ユニット5を摺動して移動刃51を固定刃31に近づけたることで、固定刃31と移動刃51とで接着剤を挟んで剥離する。
移動刃ユニット5を摺動して移動刃51を固定刃31に最も近づけたときの移動刃51と固定刃31との間隔はレール材4や摺動ユニット6の配置によって調整することができる。この間隔が小さければ接着剤を剥離する性能は高いが、図4のように間隔を大きくして間隙Cをつくれば、固定刃31と移動刃51との間に誤って接着剤以外のものを挟み込む事故を防ぐことができる。
【0017】
<8>剥離方法
次に、接着剤剥離装置1を用いた、接着剤の剥離方法について説明する。
【0018】
<8.1>接着剤剥離装置の配置
GL工法により構築された内装壁を解体すると、躯体壁面Wの表面には硬化した接着剤(GLボンド)Bが残る。
接着剤剥離装置1は、摺動ユニット6を伸長して固定刃31と移動刃51を少なくとも接着剤Bの幅よりも開いた状態にし、固定刃31と移動刃51で接着剤Bを挟むように躯体壁面Wに合わせる(図5)。
【0019】
<8.2>接着剤の剥離
固定刃31と移動刃51を躯体壁面Wに合わせたら、摺動ユニット6を動作し移動刃ユニット5をレール材4に沿って摺動する。
固定貫入刃311と移動貫入刃511の間隔が接着剤Bの躯体壁面Wへの接着面の幅より小さくなると、摺動ユニット6の収縮力により、固定刃31と移動刃51で接着剤Bを挟み込んで、固定貫入刃311と移動貫入刃511が接着剤Bと躯体壁面Wとの間、又は接着剤B内に貫入する(図6)。
固定刃31と移動刃51は躯体壁面Wに対して閉じる方向の八の字状のため、躯体壁面Wに沿って接着剤Bを挟み込むことができる。
そして、さらに摺動ユニット6を収縮させていくと、硬化して一体となっている接着剤Bは、固定貫入刃311と移動貫入刃511との間に間隙Cがあっても一体の状態で躯体壁面Wから剥離する(図7)。
移動刃51は躯体壁面Wに沿って平行に摺動するため、躯体壁面Wに力が作用することがなく、躯体壁面を破損してしまうおそれがない。
【0020】
移動刃ユニット5の移動刃51はリニアガイドにより摺動するため、打撃音などの騒音や振動が発生しない。このため、耐震補強工事やリニューアル工事においても作業時間が限られず、短工期にて施工することができる。
また、移動刃51を摺動ユニット6によって摺動するだけで接着剤Bを剥離することができるため、作業員の負担がなく、誰でも行うことができる。
【0021】
上述した実施例においては接着剤BとしてGLボンドを例示したが、本発明はGLボンドに限らず、モルタルや無筋コンクリート等、躯体面に点付けされているものを剥離することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 接着剤剥離装置
2 本体
3 固定刃ユニット
31 固定刃
311 固定貫入刃
32 固定刃ベース
4 レール材
41 スライドブロック
5 移動刃ユニット
51 移動刃
511 移動貫入刃
52 移動刃ベース
6 摺動ユニット
61 シリンダ
62 ロッド
7 取っ手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8