【解決手段】構造物と、当該構造物が設置される設置面との間に配置される調整部材10であって、袋体11と、前記袋体11に収容された、水硬化材13及び膨張材15の混合物と、を備えている。
前記袋体には、前記構造物を前記設置面に固定するための固定部材が挿入される少なくとも1つの貫通孔が形成されている、請求項1から3のいずれかに記載の調整部材。
前記不織布は、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、レーヨン繊維、ポリアクリル繊維、ポリスルホン繊維、ポリビニルアルコール繊維、デンプン繊維及びセルロース繊維から選択された少なくとも1つである、請求項5に記載の調整部材。
前記膨張材は、アクリル酸系高分子、イソブチレン系高分子、マレイン酸系高分子及びポリビニルアルコール系高分子及び水膨張ゴムから選択された少なくとも1つを含有している、請求項1から9のいずれかに記載の調整部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2の不陸調整マットは、その弾性により支持板と斜面との間の隙間を埋めるものであるが、この弾性によって強度が十分ではないという問題がある。そのため、例えば、支持板がずれ、構造物を斜面に堅固に固定できないおそれがある。また、特許文献3では、グラウト材を収容している搬送車を、型枠を形成した場所まで運ぶ必要がある。さらに、搬送車から注入ホースを介してグラウト材を型枠に圧送する必要もある。そのため、例えば、型枠が形成された場所の地形によっては、搬送車を運び難く、また注入ホースによるグラウトの圧送も困難になるという問題がある。なお、以上のような問題は、不陸がある面のみならず、平坦な面に調整部材を設置する場合にも起こり得る問題である。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、強度を有するとともに、施工が容易な調整部材及びこれを用いた構造物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、構造物と、当該構造物が設置される設置面との間に配置される調整部材であって、袋体と、前記袋体に収容された、水硬化材及び膨張材の混合物と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、袋体内に予め水硬化材が収容されているため、例えば、設置面にこの調整部材を配置した後に、袋体内に水を供給すれば、水硬化材が袋体内で硬化し、調整部材に強度を与えることができる。したがって、例えば、硬化前のセメント、モルタル及びグラウト等の材料を収容した搬送車から、これらを、注入ホース等を用いて圧送して袋体内に導入する必要がない。そのため、調整部材と水とを準備し、袋体内に水を供給すれば、調整部材に強度を与えることができ、構造物と設置面との間に配置することができる。
【0009】
また、袋体内には、水硬化材と膨張材との混合物が収容されている。そのため、袋体内に水を供給した場合、水硬化材が、袋体内で偏ることがなく均一に分散された状態で硬化する。このとき、水硬化材がその荷重によって偏った状態で硬化した場合には、袋体内で硬化した水硬化材に局所的な荷重の偏りにより割れが生じる。しかしながら、本発明においては、水硬化材が均一に分散された状態で硬化するため、水硬化材の荷重の偏りがなく、水硬化材の割れを抑制することができる。また、膨張材も、水硬化材と混合されることで分散されており、水が供給されることで分散された状態で膨潤した状態となる。このとき、分散状態で膨潤した膨張材からの水分が水硬化材の硬化に寄与することによっても、水硬化材が均一な状態で硬化する。さらに、水の供給によって膨潤した膨張材が、水硬化材のクッション材となり、水硬化材を弾性的に支持することによっても水硬化材の割れを抑制することができる。なお、均一とは、完全な均一だけではなく、偏りがある程度抑制された状態である概ね均一も含む。なお、膨張材とは、それ自身が膨張する材料のほか、水硬化材などの他の材料が膨張するのを促進する材料も意味し、そのような材料を含有することができる。但し、以下では、特に断りのない限り、膨張材自身が膨張する材料としての説明を主として行うこととする。
【0010】
上記調整部材において、前記膨張材は、給水により膨張する材料を含有することができる。
【0011】
上記角調整部材において、前記袋体は、当該袋体の内部に水を注入するための少なくとも1つの注水口を備えることができる。このように注水口から水を供給する場合には、袋体内に所定量の水を効率よく供給できる。
【0012】
上記各調整部材において、前記袋体には、前記構造物を前記設置面に固定するための固定部材が挿入される少なくとも1つの貫通孔を形成することができる。
【0013】
このように、袋体の貫通孔に固定部材を挿入し、固定部材を設置面に固定すれば、構造物とともに調整部材も設置面に固定できる。これにより、所定位置に配置された調整部材のずれを抑制できる。
【0014】
上記各調整部材においては、前記袋体を不織布により形成することができる。
【0015】
このように袋体が不織布から形成されている場合、例えば繊維が縦横に織り込まれた袋体に比べて多孔質構造であるため、伸縮性を有する。よって、袋体内で水硬化材及び膨張材が水を吸って嵩が増加しても、袋体が伸びることで袋体の破れを抑制できる。
【0016】
上記各調整部材において、前記不織布は、例えば、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、レーヨン繊維、ポリアクリル繊維、ポリスルホン繊維、ポリビニルアルコール繊維、デンプン繊維及びセルロース繊維から選択された少なくとも1つとすることができる。
【0017】
上記各調整部材において、前記不織布は、例えば、親水性不織布とすることができる。
【0018】
このように袋体が親水性不織布である場合、伸縮性を有するだけでなく、親水剤によって吸水性が向上する。膨張材は、袋体内に注入された水によって膨潤し、嵩が増加する。この嵩の増加に伴って親水性不織布も伸びるため、袋体の破れを抑制できる。また、例えば、親水性不織布は、吸水性を有するため、水硬化材及び膨張材が吸収できなかった余分の水を吸収できる。
【0019】
また、親水性不織布からなる袋体を水に浸漬することで、袋体が水を吸収し、袋体内に水を供給することもできる。これにより、袋体内の水硬化材及び膨張材に水を供給し、水硬化材の硬化及び膨張材による吸水が可能である。よって、袋体に注水口を設ける必要がないか、また、注水口を備える袋体であっても注水口を用いずに袋体内に水を供給可能である。
【0020】
上記各調整部材において、前記水硬化材は、例えば、セメント系物質とすることができる。
【0021】
このように水硬化材がセメント系物質である場合、水の供給によって、例えば水和及び重合等することで容易に硬化するので、取扱が簡便になる。
【0022】
上記各調整部材において、前記膨張材は、例えば、吸水性高分子又はベントナイトを含有することができる。
【0023】
上記各調整部材において、前記膨張材は、例えば、アクリル酸系高分子、イソブチレン系高分子、マレイン酸系高分子及びポリビニルアルコール系高分子及び水膨張ゴムから選択された少なくとも1つを含有することができる。
【0024】
本発明に係る第1の構造物の施工方法は、構造物と、当該構造物が設置される設置面との間に、上述したいずれかの調整部材を配置するステップと、前記構造物を、固定部材により前記設置面に対して固定するステップと、前記調整部材に水を供給するステップと、を備えている。
【0025】
この施工方法によれば、設置面と構造物との間に調整部材を配置し、構造物を固定した後に、調整部材に水を供給する。このような水の供給による水硬化材の硬化及び膨張材の膨張によって、設置面と調整部材との間の隙間を埋めることができる。その結果、調整部材を介して、構造物を設置面に対して隙間なく配置できるとともに、水硬化材の硬化により強度を有する調整部材を介して設置面に構造物を堅固に支持することができる。
【0026】
本発明に係る第2の構造物の施工方法は、構造物を設置するための設置面に、上述したいずれかの調整部材を配置するステップと、前記調整部材に水を供給するステップと、水を供給した前記調整部材上に、前記構造物を設置し、当該構造物を固定部材により前記設置面に対して固定するステップと、を備えている。
【0027】
この施工方法のように、設置面に設置した調整部材に水を供給した後で、調整部材上に構造物を設置して支持板を固定することもできる。この場合、例えば、調整部材の膨張の程度を見ながら支持板を設置できる。
【0028】
本発明に係る第3の構造物の施工方法は、上述したいずれかの調整部材に水を供給するステップと、構造物を設置するための設置面に、水を供給した前記調整部材を配置するステップと、水を供給した前記調整部材上に構造物を設置し、前記構造物を固定部材により前記設置面に対して固定するステップと、を備えている。
【0029】
この施工方法のように、調整部材に水を供給した後で、調整部材を設置面に設置し、さらに調整部材上に構造物を設置して支持板を固定することもできる。この場合、例えば、設置面に水を運搬するのが困難な場合であっても、調整部材に水を供給した後で、設置面に調整部材を運ぶことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、強度を有するとともに、容易に利用することができる調整部材及びこれを用いた構造物の施工方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の調整部材及び構造物の施工方法の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。調整部材は、後述するように、斜面に構造物を施工する際に、構造物と斜面との間に配置するものであり、主として斜面の凹凸を吸収するためのものである。以下では、まず、調整部材について説明し、その後、構造物の施工方法について説明する。
【0033】
<1.調整部材>
図1は、調整部材の外観を示す外観図((a)正面図、(b)は側面図)である。本実施形態に係る調整部材10は、例えば長方形状の袋体11に、水硬化材13及び膨張材15の混合物を収容することで形成されている。
【0034】
<1−1.袋体>
袋体11は、例えば、正面視において直方体状に形成されており、側面視において所定の幅を有している。より詳細には、例えば、袋体11は、一対の矩形状の本体シート11aと、これら本体シート11aの長手方向の側辺同士を連結する一対の側面シート11bと、により形成される。例えば、一対の本体シート11aを構成する1枚の織物が2つ折りにされ、その側縁に、一対の側面シート11bの端部11cが縫製され、さらに側面シート11bの上端部11d及び下端部11eが本体シート11aに縫製される。これにより、内部空間を有する袋体11が形成される。そして、この内部空間に、水硬化材13及び膨張材15の混合物が収容される。但し、この混合物は、袋体11の縫製が完了するまでのいずれかの時点で、袋体11内に収容されればよい。
【0035】
袋体11を構成する材料は、袋体11内に水を供給した場合であっても、水硬化材13及び膨張材15を収容しておくことが可能であれば、特に限定されない。例えば、綿織物、毛織物、麻織物、絹織物、合成繊維織物等から選択された少なくとも一つの織物により形成することができる。
【0036】
また、袋体11は、長繊維、短繊維又はこれらの混合からなる不織布によって形成することもできる。不織布は、例えばこれに限定されないが、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、レーヨン繊維、ポリアクリル繊維、ポリスルホン繊維、ポリビニルアルコール繊維、デンプン繊維及びセルロース繊維から選択された少なくとも一つから形成することができる。その他、不織布は、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、ナイロン繊維及びポリプロピレン繊維から選択された少なくとも一つの繊維などの多様な素材から形成することができる。
【0037】
また、上記不織布は、熱可塑性樹脂からも形成可能である。熱可塑性樹脂としては、例えばこれに限定されないが、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、合成ゴム、共重合ポリアミド樹脂、共重合ポリエステル樹脂等から選択された少なくとも一つが挙げられる。熱可塑性樹脂の場合、例えば袋体11の端部に熱を加えることで袋体11を封止できる。
【0038】
不織布は、例えばこれに限定されないが、上述したポリオレフィン繊維及びポリエステル繊維などの繊維を公知の方法で結合して形成される。例えば、不織布は、バインダー処理により形成できる。バインダー処理では、例えば、ポリオレフィン繊維及びポリエステル繊維などの所定の繊維に、結合用のバインダー樹脂を含む溶液を噴霧することで形成される。また、不織布は、所定の繊維をバインダー樹脂を含む溶液に含浸させる、あるいは所定の繊維にバインダー樹脂を含む溶液をコーティングすることで形成される。バインダー樹脂としては、所定の繊維を結合して不織布として形成できればよく、例えばこれに限定されないが、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、天然ゴム、アクリルゴムなどの合成ゴム、熱可塑性エラストマー等から選択された少なくとも一つが挙げられる。
【0039】
その他、不織布は、例えば、湿式法、乾式法、スパンボンド法、メルトブロー法または直交積層結等により形成可能である。また、不織布は、例えば、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、ステッチボンド法、スチームジェット法等によっても形成可能である。
【0040】
袋体11が不織布から形成されている場合、例えば繊維が縦横に織り込まれた袋体11に比べて多孔質構造であるため、伸縮性を有する。したがって、袋体内で水硬化材13及び膨張材15が水を吸って嵩が増加しても、袋体11が伸びることで袋体11の破れを抑制できる。また、不織布が多孔質構造であるため、袋体11を水に浸漬して水を吸収させ、袋体11内に水を供給することもできる。これにより、袋体11に注水口を設ける必要がないか、また、注水口を備える袋体11であっても注水口を用いずに袋体11内に水を供給可能である。
【0041】
袋体11は、不織布に親水剤を含有させた親水性不織布を用いて形成することもできる。親水性不織布としては、たとえば、上述した不織布に親水剤を含有させたものが挙げることができる。親水性不織布は、伸縮性を有するだけでなく、親水剤によって吸水性が向上している。膨張材15は、袋体11内に注入された水によって膨潤し、嵩が増加する。この嵩の増加に伴って親水性不織布も伸びるため、袋体11の破れを抑制できる。また、例えば、親水性不織布は、吸水性を有するため、水硬化材13及び吸水膨張材15が吸収できなかった余分の水を吸収できる。
【0042】
また、親水性不織布からなる袋体11を水に浸漬することで、袋体11が水を吸収し、袋体11内に水を供給することもできる。これにより、袋体11内の水硬化材13及び膨張材15に水を供給し、水硬化材13を硬化させ及び膨張材15を膨張させることができる。したがって、袋体11に注水口を設ける必要がないか、また、注水口を備える袋体11であっても注水口を用いずに袋体11内に水を供給可能である。
【0043】
<1−2.混合物>
次に、混合物を構成する水硬化材13と膨張材15について説明する。水硬化材13は、水の供給によって例えば水和及び重合等することで硬化する物質であれば特に限定されないが、例えば、石膏、石灰、マグネシアセメント、ポルトランドセメント、アルミナセメント、石灰スラグセメント及びシリカセメント等から選択された少なくとも一つのセメント系物質で構成することができる。セメント系物質は、水の供給によって例えば水和及び重合等することで容易に硬化するので、取扱が簡便である。また、モルタル系物質で構成することもできる。水硬化材13は、袋体11内で膨張材15と混合しやすいように、例えば粒状や粘土状であると好ましい。
【0044】
また、水硬化材13には、水硬化材13の硬化を促進する硬化促進剤を含ませることができる。硬化促進剤としては、水硬化材13の水和及び重合等を促進することで、硬化を促進する物質が挙げられる。硬化促進剤としては、例えばこれに限定されないが、無機系化合物と有機系化合物とが挙げられ、次の中から選択される少なくとも1つの物質であってもよい。無機系化合物としては、例えば、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アルミニウム等の塩化物、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩及び炭酸塩等を挙げることができる。また、有機系化合物の一例として、アミン類、有機酸のカルシウム塩等を挙げることができる。その他、水硬化材13には、シリカ、アルミナ、鉄分等を含ませることができる。
【0045】
膨張材15は、水の供給によって膨張する物質であれば特に限定されないが、例えば、吸水性高分子を含有している。吸水性高分子は、例えば自重の100倍から1000倍の水を吸収し、大量の水をゲル状態で保持することで膨張する。供給する水の量を調整することで、吸水性高分子の膨張の程度を調整できる。吸水性高分子としては、これに限定されないが例えば、アクリル酸系高分子、イソブチレン系高分子、マレイン酸系高分子及びポリビニルアルコール系高分子等から選択された少なくとも一つが挙げられる。その他、膨張材15としては、水膨張ゴム及びベントナイト等が挙げられる。膨張材15は、袋体11内で水硬化材13と混合しやすいように、例えば粒状や粘土状であると好ましい。
【0046】
袋体11内に収容される水硬化材13及び膨張材15の量は、袋体11内で水硬化材13及び膨張材15が水を吸収して膨張した場合でも袋体11が破けない程度であれば特に限定されない。また、水硬化材13と膨張材15との割合は、水硬化材13の硬化により調整部材10に所定の強度を与えることができ、膨張材15を所望の大きさに膨張できる程度であれば特に限定されない。また、膨張材15の水硬化材13に対する割合は、膨張により水硬化材13に所定の弾性を与えることができる程度であれば特に限定されない。
【0047】
<2.構造物の施工方法>
柵構造物20及びその施工方法について説明する。
図2は、設置面に固定された柵構造物を示す模式図である。
図3は、不陸のある設置面と柵構造物の支持板との間の隙間を、調整部材が埋めている様子を示す断面図である。
図4は、
図3とは異なる断面図であり、支持板を固定する固定部材の周囲の構成を示す断面図である。
【0048】
図2に示すように、この柵構造物20は、例えば、山の斜面等の設置面Gに設置され、土砂崩れ予防柵及び雪崩予防柵等として用いられる。柵構造物20は、柵構造物20を設置面Gに対して固定する一対の支持部21と、これら支持部から上方に起立し、土砂及び雪等を堰止める柵部25とを備えている。
【0049】
各支持部21は、斜面方向に延びる板状の支持板22と、この支持板22を設置面Gに固定するための棒状の固定部材23と、を備えている。固定部材23は、棒状の挿入部23bと、その端部に設けられた固定部23aとを備えており、支持板22の上端部付近、つまり斜面の上方側に形成された貫通孔22aから挿入部23bが地中深くに打ち込まれる。そして、固定部23aは、支持板22の上面(地上側)において、貫通孔22aに係合している。このようにして、固定部材23は、支持板22を設置面Gに固定している。
【0050】
柵部25は、各支持板から上方に延びる支柱26と、両支柱26の間に掛け渡された複数の梁材27と、を備えている。さらに、両支柱の26の間には、2本のステーロッド28が設けられている。すなわち、一方のステーロッド28は、一方の支柱26の上端部付近と他方の支柱26の下端部付近と固定するように延びており、他方のステーロッド28は、一方の支柱26の下端部付近と他方の支柱26の上端部付近と固定するように延びている。これにより、2本のステーロッド28は、両支柱26の間で交差している。
【0051】
上述の柵構造物20は設置面Gに配置されるが、設置面Gは例えば山の斜面等であるため、必ずしも平坦ではなく、凹凸が存在する。したがって、設置面Gと支持板22との間に隙間が生じる。そこで、本実施形態においては、
図3及び
図4に示すように、設置面Gと支持板22との間の隙間に、調整部材10を配置する。
【0052】
次に、調整部材10を用いた柵構造物の施工方法を説明する。
図5は、調整部材を用いた柵構造物の施工方法のフローを示すフローチャートの一例である。
図6〜
図8は柵構造物の施工方法のフローを説明する説明図である。
【0053】
まず、
図6に示すように、設置面Gのうち、柵構造物20を支持する支持板22を配置する場所に、調整部材10を配置する。そして、
図7に示すように、調整部材10上に支持板22を配置する(ステップS10)。調整部材10は、例えば、設置面Gに凹凸があり、設置面Gに直接に支持板22を配置すると、設置面Gと支持板22との間に隙間が生じる位置に配置される。あるいは、調整部材10は、設置面Gの強度が不足しており、支持板22を設置面Gに強固に固定することができない位置に配置されてもよい。
【0054】
次に、調整部材10を介して、支持板22を固定部材23により設置面Gに対して固定する(ステップS11)。例えば、まず、
図8に示すように、設置面Gにおいて、支持板22を設置する位置に、挿入部23bを挿入するための挿入孔24を形成する。そして、支持板22及び挿入孔24とを位置合わせし、支持板22を貫通する貫通孔22aに固定部材23が挿入される。そして、固定部23aは支持板22上で固定され、挿入部23bは設置面G内の挿入孔24に挿入され、固定される。なお、支柱26、梁材27、及びステーロッド28は、支持板22を設置面Gに固定する前に支持板22に取り付けられていてもよいし、支持板22を固定した後に支持板22上に取り付けてもよい。なお、挿入部23bの挿入孔24への固定の方法は、特には限定されない。
【0055】
次に、調整部材10に水を供給する(ステップS12)。調整部材10への水の供給は、調整部材10の外表面から水をかけて、調整部材10内に水を浸透させてもよい。あるいは、調整部材10に設けられた所定の注水口から、調整部材10内に水を供給してもよい。これにより、
図3及び
図4に示すように、水の供給による水硬化材13の硬化及び膨張材15の膨張し、設置面Gと調整部材10との間の隙間を埋めることができる。したがって、調整部材10を介して、支持板22を設置面Gに対して隙間なく配置できるとともに、水硬化材13の硬化により強度を有する調整部材10を介して設置面Gに支持板22を堅固に支持できる。
【0056】
<3.特徴>
本実施形態によれば、袋体11内に予め水硬化材が収容されているため、上記のように設置面Gに調整部材10を配置した後に、袋体11内に水を供給すれば、水硬化材13が硬化し、膨張材15が膨張することで、設置面Gと支持板22との間の隙間が埋められるとともに、水硬化材13の硬化により調整部材10が強固に支持板22を支持する。したがって、支持板22上の柵構造物20を設置面Gに対して安定に固定することができる。また、例えば、硬化前のセメント、モルタル及びグラウト等の材料を収容した搬送車から、これらを、注入ホース等を用いて圧送して袋体内に導入する必要がない。そのため、調整部材10と水とを準備し、袋体11内に水を供給すれば、調整部材10に強度を与えることができ、柵構造物20を凹凸のある設置面G上に強固に設置することができる。
【0057】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0058】
<4−1>
上記実施形態では、袋体11は、全体が概ね封止されて形成されている。しかし、袋体11には、袋体11内に水を注水するための、少なくとも1つの注水口30が設けられていてもよい。注水口30が設けられることで、注水口30を介して袋体11内に所定量の水を効率よく注水可能である。
図9は、注水口を有する袋体を示す模式図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
図10は、注水口を有する他の袋体を示す模式図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。注水口30は、袋体11の例えば一面に開口を設けることで形成されている。袋体11に形成する注水口30の位置は特に限定されないが、
図9に示すように、例えば、一対の本体シート11aの一方に注水口30が設けることができる。また、
図10に示すように、注水口30を、袋体11の一対の側面シート11bに設けることもできるが、側面シート11bの一方に設けることもできる。設置面Gと支持板22との間に本体シート11aが接触するように調整部材10を配置すると、設置面Gと支持板22との間から側面シート11bが露出する。この場合、側面シート11bに注水口30が設けておけば、この注水口30から袋体11内に水を注入しやすい。なお、注水口30は、袋体11内に注水可能であればよく、その位置、大きさ、形状及び数等は特に限定されない。
【0059】
また、注水口30から注入した水が袋体11内からこぼれないように、注水口30には注水口30を覆う封止弁31を設けることが好ましい。封止弁31は、例えば平らなゴム状部材に切れ込みが設けられて形成されており、注水前の状態では、切れ込みが互いに密着して、袋体11を封止している。そして、注水ホース等が注水口30に挿入される場合には、封止弁31が袋体11の内部に入り込むとともに、注水ホースの周囲を取り囲み、水がこぼれるのを防止する。また、注水ホース等が注水口30から抜き取られた場合には、封止弁31の切れ込みが再び密着して袋体11を封止し、袋体11から水がこぼれるのを防止する。なお、封止弁31は、袋体11から水がこぼれるのを防止できればよく、前述の形態に限定されない。例えば、封止弁31は、注水口30を開閉可能な栓から形成されていてもよい。
【0060】
また、複数の調整部材10を準備したとき、隣接する袋体11の注水口30同士が接続可能であってもよい。これにより、複数の調整部材10を接続して一体化することができるため、調整部材の大きさを所望の大きさに変更することができる。また、例えば、複数の調整部材のうちの一の注水口30から袋体11内に注水することで、複数の調整部材10の全体に水を注水することができる。
【0061】
<4−2>
上記実施形態の袋体11には、固定部材23が挿入される貫通孔40を形成することもできる。
図11は、貫通孔が形成された調整部材を示す模式図である。同図に示すように、この貫通孔40は、例えば袋体11の一対の本体シート11aを貫通するように形成されている。袋体11の貫通孔40に固定部材23を挿入し、これ設置面Gに固定すれば、柵構造物20とともに調整部材10も設置面Gに固定できる。これにより、調整部材10が、支持板22と設置面Gとの間でずれるのを防止することができる。なお、貫通孔40の位置、大きさ、形状及び数等は特に限定されない。
【0062】
調整部材10には、貫通孔40に加えて、注水口30がさらに設けられていてもよい。
図12、
図13は、貫通孔及び注水口を備える調整部材の模式図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
図12に示すように、調整部材10には、例えば袋体11の一対の本体シート11aを貫通する貫通孔40と、一対の本体シート11aの一面に注水口30とが形成されている。また、
図13に示すように、調整部材10には、例えば例えば袋体11の一対の本体シート11aを貫通する貫通孔40と、一対の側面シート11bに注水口30とが形成されている。
【0063】
<4−3>
上記実施形態では、調整部材10は、全体が1つの内部空間を有している。しかし、袋体11の内部空間は、複数の区画に仕切られていてもよい。
図14は、仕切られた複数の区画を有する調整部材を示す模式図である。同図に示すように、調整部材10は、例えば、第1区画12a及び第2区画12bの2つの区画に仕切られている。そして、各第1及び第2区画12a、12bそれぞれには、水硬化材13及び膨張材15の混合物が収容されている。また、各第1及び第2区画12a、12bそれぞれには、袋体11内に注水可能な注水口30を設けることもできる。これにより、例えば、設置面Gの凹凸の起伏が激しい場所に対応した区画にのみ、注水口30を介して袋体11内に注水可能である。区画の数及び各区画の大きさは、調整部材10の大きさ及び調整部材10が配置される場所等に応じて、適宜設定可能である。また、区画を設ける調整部材10としては、例えば
図1、
図9〜
図13等の多様な形態の調整部材10のいずれであってもよい。
【0064】
<4−4>
上記実施形態では、
図5において構造物の施工方法の一例を示した。しかし、構造物の施工方法はこれに限定されない。例えば、
図15、
図16に示す構造物の施工方法であってもよい。
図15、
図16は、調整部材を用いた柵構造物の施工方法の別のフローを示すフローチャートの一例である。
【0065】
図15では、まず、設置面Gに調整部材10を配置する(ステップS20)。次に、調整部材10に水を供給する(ステップS21)。次に、水を供給した調整部材10上に柵構造物20を支持する支持板22を設置し、支持板22を固定部材23により設置面Gに対して固定する(ステップS22)。この施工方法の場合、例えば、調整部材10の膨張の程度を見ながら支持板22を設置できる。
【0066】
図16では、まず、調整部材10に水を供給する(ステップS30)。次に、調整部材10を設置面Gに配置する(ステップS31)。次に、水を供給した調整部材10上に柵構造物20を支持する支持板22を設置し、支持板22を固定部材23により設置面Gに対して固定する(ステップS32)。この施工方法の場合、例えば、設置面Gに水を運搬するのが困難な場合であっても、調整部材10に水を供給した後で、設置面Gに調整部材10を運ぶことができる。
【0067】
なお、調整部材10への水の供給は、調整部材10の外表面から水をかけて、調整部材10内に水を浸透させてもよい。あるいは、調整部材10に設けられた所定の注水口30から、調整部材10内に水を供給してもよい。
【0068】
<4−5>
上記実施形態では、水硬化材13を硬化し、膨張材15を膨張させるのに水を用いている。しかし、水には、水以外の各種溶剤等が含まれてもよい。例えば、水硬化材13は、水により硬化するだけでなく、水以外の各種溶剤等により硬化することもできる。同様に、膨張材15は、水により膨張するだけでなく、水以外の各種溶剤等により膨張させることもできる。例えば、膨張材15として、それ自身が膨張する材料のみならず、水硬化材13の膨張を促進する材料として、例えば、アルミニウム粉末を含有することもできる。これにより、水の供給によってアルミニウム粉末から水素が発生し、セメント系物質やモルタル系物質等の水硬化材13を膨張させることができる。但し、これらの材料は袋体11により拘束された空間で膨張する為、水硬化材13に必要とされる強度が損なわれるまで過大に膨張することがない。従って、支持板22と接地面Gとの間の隙間が埋め尽くされるように調整部材10が膨張し、柵構造物20の的確な支持状態が確保される。さらに、セメント系やモルタル系物質は硬化すると収縮する性質を有するが、アルミニウム粉末を含有させておくことにより、水硬化材13の収縮による支持板22と接地面Gとの間の隙間の再生も防ぎ、調整部材10は隙間を埋める役目を一層確実に果たすことができる。また、上述した水硬化材13以外に、アルミニウム粉末等の材料により、膨張する他の材料を混合物に含有することもできる。
【0069】
<4−6>
上記実施形態では、調整部材10は、不陸のある設置面Gと支持板22との間に配置され、それらの間の隙間を埋める部材として利用することを説明した。しかしながら、調整部材10の用途はこれに限定されず、水を供給して膨張及び硬化させて利用できるいずれの用途にも使用できる。例えば、調整部材10は、土嚢及び建築現場等の基礎部分等にも利用可能である。また、上記実施形態では、柵構造物20を安定に固定するために調整部材10が用いたが、調整部材10は、柵構造物20以外のあらゆる構造物を設置面Gに安定に支持するために利用可能である。また、設置面Gも傾斜面以外の面であってもよい。
【0070】
<4−7>
上記実施形態では、袋体11の外形は長方形状であるが、袋体11の外形はこれに限定されず、正方形状、円形状及び楕円形状など様々な形態を採ることができる。また、上記実施形態では、袋体11は、一対の本体シート11aと、一対の側面シート11bとで構成されているが、例えば、袋体11は、側面シート11bがなく、一対の本体シート11aのみを有していてもよく、種々の態様が可能である。