特開2018-1940(P2018-1940A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-1940(P2018-1940A)
(43)【公開日】2018年1月11日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20171208BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20171208BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20171208BHJP
【FI】
   B60C11/13 C
   B60C11/01 B
   B60C11/03 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-130572(P2016-130572)
(22)【出願日】2016年6月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 剛史
(57)【要約】
【課題】排土性やトラクション性の低下を抑えながら、耐偏摩耗性を向上する。
【解決手段】複数のショルダーブロック26がタイヤ周方向Cに配設されたショルダーブロック列22Bにおいて、タイヤ周方向Cに隣接するショルダーブロック26間の横溝20Bは、主溝18Bに近い側に位置して主溝よりも浅い深さH1を持つ第1浅溝部52と、タイヤ接地端Eに近い側に位置して主溝よりも浅い深さH3を持つ第3浅溝部56と、第1浅溝部と第3浅溝部の間に位置して第1浅溝部及び第3浅溝部よりも浅い深さH2を持つ第2浅溝部54とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる主溝とタイヤ接地端との間において横溝により区画された複数のショルダーブロックがタイヤ周方向に配設されたショルダーブロック列を、トレッド部のタイヤ幅方向端部に備える空気入りタイヤにおいて、
タイヤ周方向に隣接するショルダーブロック間の横溝が、前記主溝に近い側に位置して前記主溝よりも浅い深さを持つ第1浅溝部と、前記タイヤ接地端に近い側に位置して前記主溝よりも浅い深さを持つ第3浅溝部と、前記第1浅溝部と前記第3浅溝部の間に位置して前記第1浅溝部及び前記第3浅溝部よりも浅い深さを持つ第2浅溝部とを有する、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第2浅溝部のタイヤ幅方向における中心位置が、前記横溝のタイヤ幅方向における中心位置よりもタイヤ接地端側に位置する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1浅溝部の深さと前記第3浅溝部の深さは、前記主溝の深さの40〜70%であり、前記第2浅溝部の深さは、前記主溝の深さの30〜60%である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1浅溝部、前記第2浅溝部及び前記第3浅溝部の各溝底には、タイヤ周方向に対して傾斜して延びるリッジを複数並設してなるセレーションが設けられた、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第2浅溝部のセレーションを構成するリッジが、前記第1浅溝部及び前記第3浅溝部のセレーションを構成するリッジとは、逆向きに傾斜している、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤにおいては、タイヤ周方向に延びる主溝と、主溝に交差する横溝とにより、トレッド部にブロック列が設けられた、いわゆるブロックパターンのタイヤが知られている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
かかるブロックパターンのタイヤにおいて、ブロックの剛性を高めて耐偏摩耗性を向上するために、タイヤ周方向に隣接するブロック間の横溝にブリッジを設けて、前後のブロック間を繋ぐことが提案されている(特許文献4参照)。しかしながら、ブリッジを設けると、その部分で横溝が浅くなるため、その分、溝容積が小さくなり、排土性やトラクション性の低下の要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−085110号公報
【特許文献2】特開2008−222090号公報
【特許文献3】特開平11−059135号公報
【特許文献4】特開2012−076739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、排土性やトラクション性の低下を抑えながら、耐偏摩耗性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、トレッド部のタイヤ幅方向端部にショルダーブロック列を備えたものである。ショルダーブロック列は、タイヤ周方向に延びる主溝とタイヤ接地端との間において、横溝により区画された複数のショルダーブロックがタイヤ周方向に配設されたものである。該空気入りタイヤにおいて、タイヤ周方向に隣接するショルダーブロック間の横溝は、前記主溝に近い側に位置して前記主溝よりも浅い深さを持つ第1浅溝部と、前記タイヤ接地端に近い側に位置して前記主溝よりも浅い深さを持つ第3浅溝部と、前記第1浅溝部と前記第3浅溝部の間に位置して前記第1浅溝部及び前記第3浅溝部よりも浅い深さを持つ第2浅溝部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、排土性やトラクション性の低下を抑えながら、耐偏摩耗性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る空気入りタイヤの斜視図
図2】同実施形態のトレッド部の一部拡大斜視図
図3】同実施形態のトレッドパターンを示す展開図
図4】同実施形態のトレッド部の要部拡大平面図
図5図4のV−V線断面図
図6図4のVI−VI線断面図
図7図4のVII−VII線断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
実施形態に係る空気入りタイヤ10は、図1に示すように、左右一対のビード部12及びサイドウォール部14と、左右のサイドウォール部14の径方向外方端部同士を連結するように両サイドウォール部間に設けられたトレッド部16とを備えて構成されており、トレッドパターン以外については一般的なタイヤ構造を採用することができる。
【0011】
図1〜3に示すように、トレッド部16のトレッドゴム表面には、タイヤ周方向Cに延びる複数の主溝18と、主溝18に交差する複数の横溝20とにより、タイヤ幅方向Wに複数のブロック列22が設けられている。
【0012】
この例では、主溝18は、タイヤ幅方向Wに間隔をおいて3本形成されている。タイヤ赤道CL上に位置するセンター主溝18Aと、その両側に配された一対のショルダー主溝18B,18Bである。3本の主溝18は、いずれも屈曲しながらタイヤ周方向Cに延びるジグザグ状の溝である。なお、主溝18は、一般に5mm以上の溝幅(開口幅)を持つ周方向溝である。
【0013】
トレッド部16には主溝18によって複数の陸部が区画形成され、各陸部は、複数の横溝20がタイヤ周方向Cに間隔をおいて設けられることで、ブロック列22として形成されている。詳細には、センター主溝18Aとショルダー主溝18Bとに挟まれた左右一対のセンター陸部は、横溝20Aにより区画された複数のセンターブロック24をタイヤ周方向Cに配設してなるセンターブロック列22Aとして形成されている。センターブロック列22Aは、トレッド部16において、タイヤ幅方向Wの中央部に位置するブロック列である。また、ショルダー主溝18Bとタイヤ接地端Eとに挟まれた左右一対のショルダー陸部は、横溝20Bにより区画された複数のショルダーブロック26をタイヤ周方向Cに配設してなるショルダーブロック列22Bとして形成されている。ショルダーブロック列22Bは、トレッド部16において、タイヤ幅方向両端部に位置するブロック列である。
【0014】
横溝20A,20Bは、主溝18A,18Bに対して交差する方向に延びて上記各陸部を横断する溝である。横溝20A,20Bは、タイヤ幅方向Wに延びる溝であれば、必ずしもタイヤ幅方向Wに平行でなくてもよい。この例では、横溝20A,20Bは、傾斜しつつタイヤ幅方向Wに延びる溝である。
【0015】
センターブロック24は、図2及び図3に示すように、左右の主溝18A,18Bに面する(即ち、主溝に接して主溝の溝壁面の一部を構成する)左右一対の縦側面部28,28と、前後の横溝20A,20Aに面する前後一対の横側面部30,30とを備える。この例では、センターブロック24は、平面視で略六角形状(凸六角形状)をなしている。詳細には、一対の縦側面部28,28が、タイヤ周方向Cに対して傾斜した互いに平行な一対の第1縦側面部32,32と、第1縦側面部32よりも長さが短くかつ第1縦側面部32よりもタイヤ周方向Cに対して大きく傾斜した互いに平行な一対の第2縦側面部34,34とからなる。第2縦側面部34は、第1縦側面部32と鈍角に交わるように形成されている。一対の横側面部30,30は、タイヤ幅方向Wに対して傾斜した互いに平行な側面部である。
【0016】
ショルダーブロック26は、ショルダー主溝18Bに面する縦側面部36と、タイヤ接地端Eに面する(即ち、接地端壁面の一部を構成する)縦側面部38と、前後の横溝20B,20Bに面する前後一対の横側面部40,40とを備える。この例では、ショルダーブロック26は、平面視で略五角形状(凸五角形状)をなしている。詳細には、縦側面部36が、タイヤ周方向Cに対して傾斜した第3縦側面部42と、第3縦側面部42よりも長さが短くかつ第3縦側面部42よりもタイヤ周方向Cに対して大きく傾斜した第4縦側面部44とからなる。第4縦側面部44は、第3縦側面部42と鈍角に交わるように形成されている。一対の横側面部40,40は、タイヤ幅方向Wに対して傾斜した互いに平行な側面部である。
【0017】
以上のようなセンターブロック24及びショルダーブロック26の形状を持つため、主溝18及び横溝20は次のように設けられている。図3に示すように、主溝18は、タイヤ周方向Cに対して角度αで一方側に傾斜した第1溝部46と、タイヤ周方向Cに対して角度βで他方側に傾斜した第2溝部48とを、鈍角状の屈曲部を介して、タイヤ周方向Cに交互に繰り返してなるジグザグ形状を有する。第2溝部48は、第1溝部46よりも短く、タイヤ周方向Cに対する傾斜角度βが第1溝部46の傾斜角度αよりも大きく設定されている。そして、隣り合う主溝18A,18B間で、屈曲部の頂部同士が向かい合うように配置され、その頂部同士を横溝20Aで連結することにより、センターブロック列22Aが形成されている。また、ショルダー主溝18Bのタイヤ幅方向外側に向いた各屈曲部の頂部からタイヤ接地端Eまで横溝20Bを設けることで、ショルダーブロック列22Bが形成されている。
【0018】
図2及び図4に示すように、タイヤ周方向Cに隣接するショルダーブロック26,26間の各横溝20Bには、対向する横側面部40,40間を繋ぐブリッジ50が設けられ、これにより、横溝20Bには、ブリッジ50が設けられた位置において、ショルダー主溝18Bに対して深さの浅い浅溝部が溝幅全体で形成されている(図6及び図7参照)。詳細には、横溝20Bには、ショルダー主溝18Bに近い側に位置する第1浅溝部52と、タイヤ接地端Eに近い側に位置する第3浅溝部56と、第1浅溝部52と第3浅溝部56の間に位置する第2浅溝部54とが設けられており、横溝20Bの長さ方向において溝深さが複数段に形成されている。
【0019】
図4〜6に示すように、第1浅溝部52は、ショルダー主溝18Bの深さよりも浅い深さH1を持つ横溝部分であり、ショルダー主溝18Bの溝底と同じ高さにある横溝20Bの溝底ベース面58から、溝底を隆起させることで形成されている。より詳細には、溝底ベース面58から傾斜面57を介して形成されている。第1浅溝部52は、ショルダー主溝18Bに隣接する浅溝部であり、即ち、ブリッジ50により形成される浅溝部のうちショルダー主溝18B側の浅溝部である。
【0020】
第3浅溝部56は、ショルダー主溝18Bの深さよりも浅い深さH3を持つ横溝部分である。この例では、第3浅溝部56の深さH3を第1浅溝部52の深さH1と同じ深さに設定しているが、異なる深さに設定してもよい。第3浅溝部56は、タイヤ接地端Eに隣接する浅溝部であり、即ち、ブリッジ50により形成される浅溝部のうちタイヤ接地端E側の浅溝部である。第3浅溝部56のタイヤ幅方向外側には、溝深さが漸次深くなるように傾斜した傾斜面59が設けられており、横溝20Bは、該傾斜面59を介して接地端壁面に開口している。
【0021】
図4図5及び図7に示すように、第2浅溝部54は、第1浅溝部52及び第3浅溝部56よりも浅い深さH2を持つ横溝部分であり、即ち、H2<H1かつH2<H3である。第2浅溝部54は、第1浅溝部52と第3浅溝部56に挟まれた浅溝部であり、第1浅溝部52及び第3浅溝部56に対して溝底を段状に隆起させることで形成されている。
【0022】
なお、各浅溝部52,54,56の深さH1,H2,H3は、図6及び図7に示すように、後述するセレーションを除いた溝底から接地面までの高さである。
【0023】
図5に示すように、第2浅溝部54のタイヤ幅方向Wにおける中心位置M1は、横溝20Bのタイヤ幅方向Wにおける中心位置M0よりもタイヤ接地端E側に位置している。即ち、第2浅溝部54はタイヤ接地端E側にオフセットされている。ここで、横溝20Bの中心位置M0は、タイヤ幅方向Wに延在する横溝20Bの長さL0の中点に相当する位置である。横溝20Bの長さL0は、図4に示すように、ショルダーブロック26の主たる縦側面部である第3縦側面部42の稜線を延長した延長線P1を横溝20Bとショルダー主溝18Bとの境界線として、横溝20Bの溝中心線P2上における該境界線とタイヤ接地端E間の距離である。
【0024】
各浅溝部52,54,56の長さ(溝中心線P2に沿う長さ)は、例として、次のように設定してもよい。第1浅溝部52の長さL1及び第2浅溝部54の長さL2は、横溝20Bの長さL0の10〜40%であることが好ましく、より好ましくは15〜30%である。第3浅溝部56の長さL3は、横溝20Bの長さL0の5〜20%であることが好ましく、より好ましくは5〜15%である。また、第1浅溝部52の長さL1は、第3浅溝部56の長さL3以上であること(即ち、L1≧L3)が好ましく、より好ましくはL1がL3よりも大きいことである(即ち、L1>L3)。第2浅溝部54の長さL2は、第3浅溝部56の長さL3よりも大きいことが好ましい(即ち、L2>L3)。ここで、各浅溝部52,54,56の長さL1,L2,L3は、図5に示すように、両側の傾斜面を除いた実質的に平坦なブリッジ上面部分の長さである(但し、後述するセレーションによる凹凸は「平坦」であるとみなす。)。
【0025】
第1浅溝部52、第2浅溝部54及び第3浅溝部56の各溝底(即ち、ブリッジ上面)には、タイヤ周方向Cに対して傾斜して延びるリッジ60を等間隔に複数並設してなるセレーション62A,62B,62Cが設けられている。セレーション62A,62B,62Cの間隔(即ち、リッジ60の配設間隔)Gは、0.5〜2.5mmであることが好ましい(図5参照)。また、セレーション62A,62B,62Cの深さ(即ち、リッジ60の高さ)Dは、0.5〜2.0mmであることが好ましい。また、タイヤ周方向Cに対するリッジ60の傾斜角度は、セレーション62A,62B,62Cによる効果を高める観点から、30°〜60°であることが好ましい。
【0026】
図4に示すように、隣り合う浅溝部52,54,56のセレーション62A,62B,62Cにおいて、リッジ60の傾斜角度は逆向きに設定されている。すなわち、第2浅溝部54のセレーション62Bを構成するリッジ60は、第1浅溝部52のセレーション62A及び第3浅溝部56のセレーション62Cをそれぞれ構成するリッジ60とは、タイヤ周方向Cに関して逆向きに傾斜している。
【0027】
図2及び図4に示すように、タイヤ周方向Cに隣接するセンターブロック24,24間の各横溝20Aにも、対向する横側面部30,30間を繋ぐブリッジ64が設けられ、これにより、横溝20Aには主溝18に対して深さの浅い浅溝部66が形成されている。センターブロック列22Aにおける浅溝部66は、一段で形成されており、横溝20Aの長さ方向において中央部を含む50%以上の範囲で形成されている。また、浅溝部66の溝底(即ち、ブリッジ上面)には、第1〜第3浅溝部52,54,56と同様、タイヤ周方向Cに対して傾斜して延びるリッジを複数並設してなるセレーション68が設けられている。
【0028】
なお、図2及び図3において、符号70は、トラクション要素を増やすためにブロック24,26の側面部において凹状に切り欠き形成されたノッチであり、センターブロック24の第1縦側面部32、ショルダーブロック26の第3縦側面部42及び縦側面部38における各中央部に設けられている。また、符号72は、主溝18を挟んで対向するノッチ70,70間に設けられて両者の間を繋ぐ補強凸部であり、主溝18の溝底から突出形成されている。符号74は、主溝18の溝底に設けられた石噛み防止用の突起であり、主溝18の長さ方向に間隔をおいて複数配置されている。符号76は、トラクション性を向上するために各ブロック24,26に設けられた切れ込み、即ちサイプであり、各ブロック24,26にそれぞれ複数設けられている。
【0029】
以上よりなる本実施形態によれば、横溝20A,20Bに浅溝部52,54,56,66を設けたことにより、ブロック24,26の剛性を高め、ブロック24,26の動きを抑制することができるので、偏摩耗を抑えることができる。特に、ショルダーブロック26は、前後力だけでなく横力の影響も受けるが、上記のような深さの異なる第1〜第3浅溝部52,54,56を設けたことにより、剛性を効果的に高めて、耐偏摩耗性を向上することができる。しかも、複数段としたことで、剛性を高めつつ溝容積を確保することができるので、排土性とトラクション性の低下を抑えることができる。また、摩耗したときにも、段階的に浅溝部52,54,56が露出することになるので、この点でもトラクション性の低下を抑えることができる。
【0030】
ここで、第1浅溝部52の深さH1と第3浅溝部56の深さH3は、ショルダー主溝18Bの深さの40〜70%であることが好ましく、より好ましくは50〜65%である。第1及び第3浅溝部52,56の深さH1,H3が、主溝深さの40%以上であることにより、十分な溝容積を確保して排土性の低下を抑えることができる。また、70%以下であることにより、ショルダーブロック26の十分な剛性を確保して耐偏摩耗性を高めることができる。
【0031】
また、第2浅溝部54の深さH2は、ショルダー主溝18Bの深さの30〜60%であることが好ましく、より好ましくは40〜55%である。第2浅溝部54の深さH2が、主溝深さの30%以上であることにより、十分な溝容積を確保して排土性の低下を抑えることができる。また、60%以下であることにより、ショルダーブロック26の十分な剛性を確保して耐偏摩耗性を高めることができる。
【0032】
本実施形態によれば、横力の影響を受けやすく耐偏摩耗性の厳しいショルダーブロック26間の横溝20B内に、タイヤ接地端E側へオフセットさせた第2浅溝部54を設けたことにより、横力の影響による偏摩耗を効果的に抑制することができる。しかも、大きく溝容積を落とすことが無いため、トラクション性や排土性を確保することができる。
【0033】
本実施形態によれば、各浅溝部52,54,56の溝底に、タイヤ周方向Cに対して傾斜したセレーション62A,62B,62Cを設けたことにより、摩耗の進行に伴い露出したセレーション62A,62B,62Cによって極端なトラクション性の低下を抑えることができる。また、これらのセレーション62A,62B,62Cが段階的に露出することにより、セレーション62A,62B,62Cによるトラクション効果を段階的に発揮することができる。
【0034】
また、隣り合う浅溝部52,54,56のセレーション62A,62B,62Cが逆向きの傾斜で形成されているので、視覚的効果にも優れる。
【0035】
なお、上記実施形態では、ショルダーブロック列22Bに存在する全ての横溝20Bについて第1〜第3浅溝部52,54,56を形成するブリッジ50を設けたが、必ずしも全ての横溝20Bに設けなくてもよい。また、タイヤ幅方向両端部のショルダー陸部において、上記ブリッジ50を持つ構成を採用したが、いずれか一方のショルダー陸部のみで採用してもよい。また、トレッドパターンは上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、主溝18を3本としたが、主溝の本数は特に限定されず、例えば4本や5本でもよい。好ましくは3本又は4本である。また、主溝18をジグザグ状溝としたが、ストレート状溝でもよく、また、ジグザグ状溝とストレート状溝を組み合わせたトレッドパターンに適用してもよい。更に、少なくとも1つのショルダーブロック列を有していれば、他の陸部は、ブロック列でなくてもよく、即ちリブ状の陸部であってもよい。
【0036】
本実施形態に係る空気入りタイヤとしては、乗用車用タイヤ、トラック、バス、ライトトラック(例えば、SUV車やピックアップトラック)などの重荷重用タイヤなど、各種車両用のタイヤが挙げられ、また、サマータイヤ、ウインタータイヤ、オールシーズンタイヤなどの用途も特に限定されない。好ましくは、重荷重用タイヤである。
【0037】
本明細書における上記各寸法は、空気入りタイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態でのものである。正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」である。正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の「最大値」、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」である。
【実施例】
【0038】
上記の効果を確認するために、実施例1,2および比較例1,2の重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ:11R22.5)を22.5×7.50のリムに装着し、内圧700kPaを充填して、定積載量10tの車輌に装着し、排土性、トラクション性、耐偏摩耗性について評価を行った。
【0039】
実施例2のタイヤは、図1〜7に示す実施形態の特徴を備えたものである。実施例2において、主溝の溝幅=11.5mm、主溝の深さ=16.5mmとし、第1〜3浅溝部52,54,56(表1中「三段」と表示した。)について、H1=H3=9.9mm、H2=7.9mm、L1=8.5mm、L2=8.0mm、L3=4.5mm、L0=35.2mm、G=1.0mm、D=0.6mmとし、第2浅溝部の中心位置M1を横溝の中心位置M0に対してタイヤ接地端E側に2.0mmオフセットさせた。実施例1のタイヤは、第2浅溝部の中心位置M1を横溝の中心位置M0に一致させ、その他は実施例2のタイヤと同じ構成を持つものである。比較例1のタイヤは、ショルダーブロック26間の横溝20Bに、第1〜3浅溝部52,54,56を設ける代わりに、深さが8.9mmで長さが21.0mmである一段の浅溝部を設け(表1中「一段」と表示した。)、その他は実施例2と同じ構成を持つものである。比較例2のタイヤは、ショルダーブロック26間の横溝20Bに、浅溝部を設けず、その他は実施例2と同じ構成を持つものである。
【0040】
各評価方法は以下の通りである。
【0041】
・排土性(マッド性):泥濘地を停止状態から20m進んだ時点の到着時間を測定し、到着時間の逆数について比較例1の値を100として指数化した。指数が大きい程、到着時間が短く、排土性が良いことを示す。
【0042】
・トラクション性:水深1.0mmの路面上を停止状態から20m進んだ時点の到達時間を測定し、到達時間の逆数について比較例1の値を100として指数化した。指数が大きい程、到達時間が短く、トラクション性が良いことを示す。
【0043】
・耐偏摩耗性:20,000km走行後の偏摩耗状態(ヒールアンドトウ摩耗量)を測定し、ヒールアンドトウ摩耗量の逆数について比較例1の値を100として指数化した。指数が大きい程、偏摩耗の発生が少なく、耐偏摩耗性に優れることを示す。
【0044】
【表1】
【0045】
結果は、表1に示す通りであり、比較例1では、比較例2に対し、浅溝部を設けたことで、耐偏摩耗性は向上したが、排土性とトラクション性が大きく損なわれた。これに対し、ショルダーブロック列の横溝に三段の浅溝部を設けた実施例1,2であると、比較例2に対し、排土性とトラクション性の低下を抑えながら、耐偏摩耗性を顕著に改善することができた。特に、実施例2では、第2浅溝部をタイヤ接地端側にオフセットさせたことにより、実施例1に対して、排土性とトラクション性を損なうことなく、耐偏摩耗性を更に改善することができた。
【0046】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
10…空気入りタイヤ、16…トレッド部、18B…ショルダー主溝、20B…横溝、22B…ショルダーブロック列、26…ショルダーブロック、52…第1浅溝部、54…第2浅溝部、56…第3浅溝部、60…リッジ、62A,62B,62C…セレーション、H1…第1浅溝部の深さ、H2…第2浅溝部の深さ、H3…第3浅溝部の深さ、M0…横溝の中心位置、M1…第2浅溝部の中心位置、C…タイヤ周方向、W…タイヤ幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7