特開2018-194038(P2018-194038A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-194038配管の取付構造および配管の取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-194038(P2018-194038A)
(43)【公開日】2018年12月6日
(54)【発明の名称】配管の取付構造および配管の取付方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/12 20060101AFI20181109BHJP
【FI】
   F16L3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-95700(P2017-95700)
(22)【出願日】2017年5月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】小坂 俊一
(72)【発明者】
【氏名】飯島 清貴
【テーマコード(参考)】
3H023
【Fターム(参考)】
3H023AA02
3H023AB01
(57)【要約】
【課題】配管を取りつける際の作業性を良好にすると共に、取付後に配管を強固に固定することを可能とする配管の取付構造および配管の取付方法を提供する。
【解決手段】クランプ14の挿入口15に配管10を貫通させる。配管10の途中部分を蛇腹形状に成形することで突出変形部11が形成されている。また、クランプ14の挿入口15の内壁も蛇腹形状に形成されている。配管10の内部を高温高圧の状態とすると、突出変形部11が突出変形してクランプ14の挿入口15の内壁と嵌合し、配管10の軸方向に於ける移動が規制されるようになる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプを用いて配管を取りつける配管の取付構造であり、
前記配管の軸方向の少なくとも一部に、加熱および加圧により半径方向外側に向かって突出変形することが可能な突出変形部を有し、
前記クランプは、半径方向外側に向かって突出した前記突出変形部に嵌合可能な形状の挿入口を有し、
前記配管の前記突出変形部が突出変形していない場合は、前記突出変形部は半径方向内側に向かって窪む形状であり、前記クランプの前記挿入口に挿入された前記配管は移動可能であり、
前記配管の前記突出変形部が突出変形した場合は、半径方向外側に向かって突出する前記突出変形部が、前記クランプの前記挿入口に嵌合することを特徴とする配管の取付構造。
【請求項2】
前記配管の前記突出変形部は、前記配管の前記突出変形部以外の部分よりも、変形しやすい材料からなることを特徴とする請求項1に記載の配管の取付構造。
【請求項3】
前記配管の前記突出変形部は、前記配管の前記突出変形部以外の部分よりも、薄く形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配管の取付構造。
【請求項4】
前記配管は前記クランプを介して車両の車体に接続され、
前記配管の内部を高温流体が流通することで、前記配管が高温且つ高圧の状態とされることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の配管の取付構造。
【請求項5】
軸方向の少なくとも一部に、加熱および加圧により突出変形することが可能な突出変形部が形成された配管を、クランプの挿入口に取りつける取付方法であり、
前記クランプの前記挿入口に、前記軸方向に沿って移動可能な状態で、前記突出変形部が形成された部分の前記配管を挿入し、
前記配管の内部に加熱された流体を高圧で流通させることで前記突出変形部を半径方向外側に向かって突出変形させ、前記クランプの前記挿入口に、前記配管を嵌合させる、ことを具備することを特徴とする配管の取付方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の取付構造および配管の取付方法に関し、特に、クランプを用いて配管を取りつける配管の取付構造および配管の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の機械構造体では、その所定箇所に各種流体を行き渡らせるために配管が配設されている。これらの配管は、クランプなどの固定手段を用いて、所定箇所に固定されている。一般的な配管の固定方法では、クランプを用いて配管のストレート部分を車体側に固定していたため、車両が走行することで生じる振動に起因して、配管が所定の位置から移動してしまう課題があった。
【0003】
また、係る問題に対処するために、蛇腹形状を呈する配管を用いることも考えられ、以下の特許文献に蛇腹状の配管に関する発明が記載されている。
【0004】
特許文献1には、内ゴム層と外ゴム層とから成り、蛇腹の谷部がホースに於けるストレート形状部の内径よりも小径で、蛇腹の山部がストレート形状部の外径を超えない流体輸送蛇腹ホースが記載されている。
【0005】
特許文献2には、ワイヤーハーネスをクランプするクランプ装置が記載されている。このクランプ装置では、コルゲートチューブの溝と嵌合する突起がクランプ装置の内側側面に形成されていることで、コルゲートチューブの回転を許容しつつ、コルゲートチューブを軸方向に対して固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−292299号公報
【特許文献2】特開2003−56754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、クランプを用いた配管の取付構造には、取付作業を行う際の作業容易性と、取付後の取付強度が要求される。ここで、作業性を向上させるために、クランプによる配管の締結を緩く設定すると、使用状況下にて接続構造に振動が作用した際に、配管を充分に固定することができない課題が発生してしまう。一方、使用状況下に於ける配管の移動を防止するために、クランプを用いて強固に配管を固定すると、例えば、配管やそれに接続された各種部材を車体に取りつける艤装工程にて、必要に応じて配管を移動させることができず、艤装時の作業性が低下してしまう課題が生じる。
【0008】
上記した特許文献1に記載された、流体輸送蛇腹ホースをクランプに挿通することのみでは、ホースをクランプで適宜固定することができないので、上記した課題を解決することは難しい。また特許文献2には、配管を軸方向に対して固定する発明が記載されているが、このように配管を軸方向において固定すると、取付作業を行う際の作業容易性が低下してしまう課題が発生してしまう。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、配管を取りつける際の作業性を良好にすると共に、取付後に配管を強固に固定することを可能とする配管の取付構造および配管の取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、クランプを用いて配管を取りつける配管の取付構造であり、前記配管の軸方向の少なくとも一部に、加熱および加圧により半径方向外側に向かって突出変形することが可能な突出変形部を有し、前記クランプは、半径方向外側に向かって突出した前記突出変形部に嵌合可能な形状の挿入口を有し、前記配管の前記突出変形部が突出変形していない場合は、前記突出変形部は半径方向内側に向かって窪む形状であり、前記クランプの前記挿入口に挿入された前記配管は移動可能であり、前記配管の前記突出変形部が突出変形した場合は、半径方向外側に向かって突出する前記突出変形部が、前記クランプの前記挿入口に嵌合することを特徴とする。
【0011】
更に本発明の配管の取付構造では、前記配管の前記突出変形部は、前記配管の前記突出変形部以外の部分よりも、変形しやすい材料からなることを特徴とする。
【0012】
更に本発明の配管の取付構造では、前記配管の前記突出変形部は、前記配管の前記突出変形部以外の部分よりも、薄く形成されることを特徴とする。
【0013】
更に本発明の配管の取付構造では、前記配管は前記クランプを介して車両の車体に接続され、前記配管の内部を高温流体が流通することで、前記配管が高温且つ高圧の状態とされることを特徴とする。
【0014】
本発明は、軸方向の少なくとも一部に、加熱および加圧により突出変形することが可能な突出変形部が形成された配管を、クランプの挿入口に取りつける取付方法であり、前記クランプの前記挿入口に、前記軸方向に沿って移動可能な状態で、前記突出変形部が形成された部分の前記配管を挿入し、前記配管の内部に加熱された流体を高圧で流通させることで前記突出変形部を半径方向外側に向かって突出変形させ、前記クランプの前記挿入口に、前記配管を嵌合させる、ことを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、クランプを用いて配管を取りつける配管の取付構造であり、前記配管の軸方向の少なくとも一部に、加熱および加圧により半径方向外側に向かって突出変形することが可能な突出変形部を有し、前記クランプは、半径方向外側に向かって突出した前記突出変形部に嵌合可能な形状の挿入口を有し、前記配管の前記突出変形部が突出変形していない場合は、前記突出変形部は半径方向内側に向かって窪む形状であり、前記クランプの前記挿入口に挿入された前記配管は移動可能であり、前記配管の前記突出変形部が突出変形した場合は、半径方向外側に向かって突出する前記突出変形部が、前記クランプの前記挿入口に嵌合することを特徴とする。従って、加熱および加圧により突出変形することが可能な突出変形部を配管に形成することで、配管を加熱および加圧していない状況下では、クランプにより配管が固定されない。よって、例えば車両本体に対して各部品を取りつける艤装工程では、配管の突出変形部が突出変形していないので、配管の移動がクランプで阻害されず、配管が車両への部品の取付を阻害することが無い。また、例えば、高温流体が高温高圧状態で配管を流通すると、突出変形部が突出変形する。これにより、突出変形した配管がクランプの挿入口に嵌合し、クランプを介して配管を車体に固定することができる。よって、例えば車両が走行することで振動がクランプおよび配管に作用したとしても、クランプに配管が嵌合しているので、その振動に起因して配管が不必要に移動してしまうことを抑止することができる。
【0016】
更に本発明の配管の取付構造では、前記配管の前記突出変形部は、前記配管の前記突出変形部以外の部分よりも、変形しやすい材料からなることを特徴とする。従って、配管が高温高圧の状態と成った際に突出変形部を容易に外側に向かって突出させることで配管の位置を確実に固定し、更に、配管の突出変形部以外の部分の強度を確保することができる。
【0017】
更に本発明の配管の取付構造では、前記配管の前記突出変形部は、前記配管の前記突出変形部以外の部分よりも、薄く形成されることを特徴とする。従って、突出変形部の厚さを比較的に薄くすることで、突出変形部の柔軟性を高めることができ、配管の内部が高温高圧状態と成った際に、突出変形部を外側に向かって容易に凸状態とすることができる。
【0018】
更に本発明の配管の取付構造では、前記配管は前記クランプを介して車両の車体に接続され、前記配管の内部を高温流体が流通することで、前記配管が高温且つ高圧の状態とされることを特徴とする。従って、車両を製造する艤装工程では、クランプで配管は固定されていないことから、配管やそれに接続された部材をスムーズに車体に備え付けることができる。一方、製造された車両が走行すると、高温高圧の流体が配管の内部を流通することで、配管がクランプの挿入口に嵌合し、車両走行時に配管が不用意に移動することを抑止することができる。
【0019】
本発明は、軸方向の少なくとも一部に、加熱および加圧により突出変形することが可能な突出変形部が形成された配管を、クランプの挿入口に取りつける取付方法であり、前記クランプの前記挿入口に、前記軸方向に沿って移動可能な状態で、前記突出変形部が形成された部分の前記配管を挿入し、前記配管の内部に加熱された流体を高圧で流通させることで前記突出変形部を半径方向外側に向かって突出変形させ、前記クランプの前記挿入口に、前記配管を嵌合させる、ことを具備することを特徴とする。従って、配管を加熱および加圧していない状況下では、配管の突出変形部が突出変形していないので、配管の移動がクランプで阻害されず、配管が車両への部品の取付を阻害することが無い。また、例えば、高温流体が高温高圧状態で配管を流通すると、突出変形部が突出変形するので、例えば車両が走行することで振動がクランプに作用したとしても、クランプに配管が嵌合しており、その振動に起因して配管が不必要に移動してしまうことを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る配管の取付構造を示す図であり、(A)は突出変形部が突出膨張していない配管の側面図であり、(B)は突出変形部が突出膨張している配管の側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る配管の取付構造に用いられる配管を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る配管の取付構造および取付方法を示す図であり、(A)は配管を固定する前の取付構造の側面図であり、(B)はその断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る配管の取付構造および取付方法を示す図であり、(A)は配管を固定した後の取付構造の側面図であり、(B)はその断面図である。
図5】本発明の他の施形態に係る配管の取付構造および取付方法を示す図であり、(A)は配管を固定する前の取付構造の側面図であり、(B)は配管を固定した状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る配管の取付構造および配管の取付方法を、図面に基づき詳細に説明する。以下の説明では、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0022】
図1を参照して、本実施形態で取りつけられる配管10の構成を説明する。図1(A)は突出変形部11が突出変形していない配管10を示す側面図であり、図1(B)は突出変形部11が突出変形した配管10を示す側面図である。
【0023】
図1(A)を参照して、配管10は、その内部を気体や液体などの流体が流通する長尺の管路である。一例として、配管10は、乗用車等の車両の内部に配設され、車両の冷却に用いられるクーラント等の高温流体がその内部を高温高圧の状態で流通する。配管10を流通するクーラントの温度は例えば50℃以上であり、その際の配管10の内部圧力は例えば0.1MPa以上となる。配管10の軸方向の長さは数十cmないし数m程度であり、配管10の外径は数cm程度であり、配管10の厚みは数mm程度である。配管10の材料としては、ポリアミド等の熱可塑性樹脂、または、ポリエステル等の熱硬化性樹脂を採用することができる。また、後述するように、配管10の突出変形部11が形成される部分と、そのほかの部分とで、異なる樹脂材料を採用するようにしても良い。
【0024】
配管10の、軸方向に沿う一部分に突出変形部11が形成されている。突出変形部11は、配管10の一部を蛇腹状に変形させた部位であり、換言すると配管10の一部を軸方向に沿ってジグザグ状に形成した部位である。配管10の内部が低温低圧の状態では、突出変形部11は半径方向内側に向かって窪む凹形状を呈している。蛇腹形状を呈する突出変形部11の半径方向内側端部と、突出変形部11の半径方向外側端部との距離L11は、後述するクランプ14との嵌合を可能とする程度とされている。また、凹状の蛇腹形状を呈する突出変形部11の最大外形L12は、突出変形部11が形成されていないストレート形状の配管10の外形L10よりも短くされている。このようにすることで、配管10が備えられる車両の車体に配管10を設置する際に、突出変形部11が車体側の部材に引っかかってしまうことを抑止することができる。
【0025】
図1(B)に、配管10の内部が高温高圧の状態となることで突出変形部11が半径方向外側に向かって突出変形した状態(反転した状態)を示している。この状態では、突出変形部11の半径方向外側端部は、突出変形部11が形成されていない配管10のストレート部分の半径方向外側端部よりも、半径方向外側に配置されている。また、突出変形部11の半径方向外側端部が、半径方向外側に突出する長さは、上記と同様にL11とされている。
【0026】
図2に、本実施形態に係る配管10を軸方向に沿って切断した場合の断面図を示す。この図を参照して、突出変形部11の厚さL20は、突出変形部11が形成されていないストレート部分の厚さL21よりも薄くなるように形成されている。一例として、配管10のストレート部分の厚さL21が2mmであれば、突出変形部11の厚さL20は1mmである。このように、突出変形部11の厚さL20を比較的に薄くすることで、突出変形部11の柔軟性を高めることができ、配管10の内部が高温高圧状態と成った際に、突出変形部11を外側に向かって容易に凸状態とすることができる。更に、配管10のストレート部分が厚いことで、配管10全体としての強度を大きくすることできる。
【0027】
ここで、突出変形部11の樹脂材料として、配管10のストレート部分を構成する樹脂材料よりも、柔軟性に優れる樹脂材料を採用するようにしても良い。例えば、配管10のストレート部分を比較的硬い合成樹脂(ポリアミド66、ポリフェニレンサルファイド等)から構成し、突出変形部11を比較的柔らかい合成樹脂(ポリアミド11、ポリアミド12、ポリエチレン、ポリプロピレン等)から構成する。配管10のストレート部分を比較的硬いポリアミド66から構成することで、配管10の全体としての強度を高めることができる。また、突出変形部11を比較的柔らかいポリアミド11またはポリアミド12から構成することで、配管10の内部が高温高圧となった際に、突出変形部11を容易に反転させて半径方向外側に突出させることができる。また、配管10のストレート部分を突出変形部11よりも硬い合成樹脂から構成する場合に於いて、図2に示したように、突出変形部11をストレート部分よりも薄く形成することもできる。
【0028】
図3を参照して、配管10の取付構造12および取付方法を説明する。図3(A)は取付構造12を示す側面図であり、図3(B)は図3(A)のB−B断面における断面図である。ここでは、突出変形部11が外側に向かって突出変形していない状態を示している。
【0029】
図3(A)および図3(B)を参照して、本実施形態の配管の取付構造12では、クランプ14を介して配管10を車体13に取りつけている。ここでは、クランプ14の上端部が車体13に固定されている。
【0030】
クランプ14は、中央に挿入口15が形成された金属片等から成る。ここでは、クランプ14の挿入口15を配管10が貫通しており、配管10の突出変形部11の一部は、クランプ14の挿入口15の内部に収納されている。また、配管10の突出変形部11の軸方向に沿う長さL10は、クランプ14の挿入口15の長さL11よりも長い。このようにすることで、軸方向に於いて配管10の突出変形部11が若干ずれて配置されたとしても、クランプ14の挿入口15に突出変形部11を配置させることができる。
【0031】
クランプ14の挿入口15は、配管10の突出変形部11が突出変形していない際には、配管10の軸方向への移動を許容する形状および大きさとなっている。具体的には、挿入口15の内壁は、半径方向外側に突出する山部と、半径方向内側に向かって窪む谷部とを有する。挿入口15の谷部に於ける内径L30(挿入口15の最小内径)は、膨張変形していない突出変形部11の山部の外径(図1(A)に示したL12)よりも長くされている。更に、挿入口15の谷部に於ける内径L30は、配管10のストレート部の外径(図1(A)に示すL10)よりも長くされている。このようにすることで、例えば車両製造の艤装工程に於いて、配管10をクランプ14の挿入口15に挿入した後に、配管10を軸方向に沿って移動させることが可能となり、艤装工程に於ける作業性を向上させることができる。
【0032】
図4を参照して、配管10の内部を高温高圧の状態とすることで、突出変形部11を突出変形させた状態を説明する。図4(A)はこの状態の配管の取付構造12を示す側面図であり、図4(B)は図4(A)のB−B線に於ける断面図である。
【0033】
図4(A)および図4(B)を参照して、例えば、製造された車両が走行することで、エンジンを冷却するクーラントが配管10の内部を流通すると、配管10の内部は高温高圧の状態となる。例えば、配管10の内部温度が50度以上となり、且つ、内部圧力が例えば0.1MPa以上と成る。このようになると、配管10の軟性が増すので、内部圧力により突出変形部11が半径方向外側に向かって突出変形する。
【0034】
クランプ14の挿入口15の内壁形状および内径は、突出変形した突出変形部11の外壁形状および外径と略同一とされている。その結果、半径方向外側に向かって突出変形した配管10の突出変形部11は、クランプ14の挿入口15に内側から嵌合する。即ち、蛇腹形状を呈する配管10の突出変形部11の山部および谷部が、クランプ14の挿入口15の山部および谷部と嵌合する。従って、配管10の軸方向への移動がクランプ14で規制されるようになる。また、突出変形した際の突出変形部11の外面が、クランプ14の挿入口15に密着することで、突出変形部11と挿入口15との摩擦抵抗を強め、回転方向に於いて配管10を固定することができる。
【0035】
配管10の材料として熱硬化性樹脂が採用された場合は、上記のように一旦変形したら、配管10の内部温度および内部圧力が低下しても、配管10の形状は元に戻らず、配管10はクランプ14に嵌合した状態が保持される。一方、配管10の材料として熱可塑性樹脂が採用された場合は、配管10の内部温度および内部圧力が低下すると、配管10の形状は元に戻り、即ち、図2(B)に示した状態に戻り、配管10とクランプ14との嵌合は解除される。
【0036】
ここで、本形態の配管の取付構造12を車両に適用すると、車両のエンジンを冷却するためのクーラントが配管10を流通することで、配管10の内部が高温高圧の状態となり、配管10の突出変形部11が突出変形する。よって、車両が走行することで、取付構造12に振動が加わったとしても、配管10はクランプ14を介して強固に車体13に取りつけられていることから、配管10の回転方向および軸方向への移動は抑止されている。
【0037】
図5を参照して、他の形態の配管の取付構造を説明する。この図に示す取付構造は図2等を参照して説明したものと基本的には同様であり、突出変形部11の形状が異なる。図5(A)は配管を嵌合する前の配管の取付構造12を示す側面図であり、図5(B)は配管10を加熱加圧することで嵌合した状態の配管の取付構造12を示す側面図である。
【0038】
図5(A)を参照して、ここでは、配管10の途中部分を半径方向内側に窪ませることで略円環状の突出変形部16を形成している。配管10をクランプ14の挿入口15に挿入すると、突出変形部16は、軸方向に於いて挿入口15の外側直近に配置されている。即ち、軸方向に於いて、突出変形部16同士が離間する距離L40は、クランプ14の挿入口15の幅L11よりも長い。
【0039】
図5(B)を参照して、配管10の内部を高温高圧の状態とすることで、突出変形部16を半径方向外側に向かって変形させると、突出変形部16の外形が、クランプ14の挿入口15の内径よりも大きくなる。よって、突出した突出変形部16がクランプ14の挿入口15に引っかかることで、配管10の軸方向に於ける移動が規制される。かかる構成によっても、車両が走行した際に発生する振動に起因して配管10が不必要に移動してしまうことを防止することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態を示したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0041】
10 配管
11 突出変形部
12 取付構造
13 車体
14 クランプ
15 挿入口
16 突出変形部
図1
図2
図3
図4
図5