特開2018-194093(P2018-194093A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2018-194093転がり軸受用組立治具及び転がり軸受の組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-194093(P2018-194093A)
(43)【公開日】2018年12月6日
(54)【発明の名称】転がり軸受用組立治具及び転がり軸受の組立方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/52 20060101AFI20181109BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20181109BHJP
   F16C 43/06 20060101ALI20181109BHJP
【FI】
   F16C33/52
   F16C19/26
   F16C43/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-98665(P2017-98665)
(22)【出願日】2017年5月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】國廣 賢治
【テーマコード(参考)】
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J117HA03
3J117HA04
3J701AA13
3J701AA24
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA38
3J701BA45
3J701DA16
3J701EA80
3J701FA44
3J701FA60
3J701GA60
(57)【要約】
【課題】ピン型保持器を溶接によって組み立てる時に、転動体の転動面や軌道面にスパッタが付着するのを防止して、寿命の長い転がり軸受を提供することを目的としている。
【解決手段】組立治具は、保持器リング20の径方向外方に同軸に配置される外方部材25と、保持器リング20の径方向内方に同軸に配置される内方部材30と、を備えている。外方部材25と保持器リング20の外周とが全周にわたって接触することにより、転動体13に向かうスパッタの浸入を防止する外周側密閉部が形成されるとともに、内方部材30と保持器リング20の内周とが全周にわたって接触することにより、転動体13に向かうスパッタの浸入を防止する内周側密閉部が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受の外輪の内周に複数の転動体が配置された状態で、前記転動体を貫通する複数のピンと、前記転動体の端面に沿って配置された環状の保持器リングとを溶接接合して、ピン型保持器を組み立てるときに使用される組立治具であって、
前記保持器リングの径方向外方に同軸に配置される外方部材と、前記保持器リングの径方向内方に同軸に配置される内方部材と、を備えており、
前記外方部材と前記保持器リングの外周とが全周にわたって接触することにより、外周側密閉部が形成されるとともに、
前記内方部材と前記保持器リングの内周とが全周にわたって接触することにより、内周側密閉部が形成されていることを特徴とする転がり軸受用組立治具。
【請求項2】
前記外方部材は、耐熱性を有する耐熱部材で製作されており、
前記外方部材が、前記外輪と前記保持器リングとで径方向に挟まれた環状のすきまに挿入されて前記保持器リングの外周と全周にわたって接触することによって、前記外周側密閉部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載する転がり軸受用組立治具。
【請求項3】
前記保持器リングを径方向に挟んで前記外輪の反対側に、前記保持器リングと同軸に配置された補助プレートを更に備えており、
前記内方部材は、耐熱性を有する耐熱部材で製作されており、
前記内方部材が、前記補助プレートと前記保持器リングとで径方向に挟まれた環状のすきまに挿入されて前記保持器リングの内周と全周にわたって接触することによって、前記内周側密閉部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載する転がり軸受用組立治具。
【請求項4】
転がり軸受の内輪の外周に複数の転動体が配置された状態で、前記転動体を貫通する複数のピンと、前記転動体の端面に沿って配置された環状の保持器リングとを溶接接合して、ピン型保持器を組み立てるときに使用される組立治具であって、
前記保持器リングの径方向外方に同軸に配置される外方部材と、前記保持器リングの径方向内方に同軸に配置される内方部材と、を備えており、
前記外方部材と前記保持器リングの外周とが全周にわたって接触することにより、外周側密閉部が形成されるとともに、
前記内方部材と前記保持器リングの内周とが全周にわたって接触することにより、内周側密閉部が形成されていることを特徴とする転がり軸受用組立治具。
【請求項5】
前記保持器リングを径方向に挟んで前記内輪の反対側に、前記保持器リングと同軸に配置された補助プレートを更に備えており、
前記外方部材は、耐熱性を有する耐熱部材で製作されており、
前記外方部材が、前記補助プレートと前記保持器リングとで径方向に挟まれた環状のすきまに挿入されて前記保持器リングの外周と全周にわたって接触することによって、前記外周側密閉部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載する転がり軸受用組立治具。
【請求項6】
前記内方部材は、耐熱性を有する耐熱部材で製作されており、
前記内方部材が、前記内輪と前記保持器リングとで径方向に挟まれた環状のすきまに挿入されて前記保持器リングの内周と全周にわたって接触することによって、前記内周側密閉部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載する転がり軸受用組立治具。
【請求項7】
前記外方部材は、前記保持器リングと同軸に配置された金属製の環状の部材であり、その内周には、前記保持器リングから軸方向に離れるにしたがって縮径する外側傾斜面が形成されており、
前記外周側密閉部は、前記外側傾斜面と前記保持器リングの外周とが全周にわたって接触することにより形成されていることを特徴とする請求項1または請求項4に記載する転がり軸受用組立治具。
【請求項8】
前記内方部材は、前記保持器リングと同軸に配置された金属製の環状の部材であり、その外周には、前記保持器リングから軸方向に離れるにしたがって拡径する内側傾斜面が形成されており、
前記内周側密閉部は、前記内側傾斜面と前記保持器リングの内周とが全周にわたって接触することにより形成されていることを特徴とする請求項1または請求項4に記載する転がり軸受用組立治具。
【請求項9】
転がり軸受の外輪の内周または転がり軸受の内輪の外周に複数の転動体が配置された状態で、前記転動体を貫通する複数のピンと、前記転動体の端面に沿って配置された環状の保持器リングとを溶接接合して、ピン型保持器を組み立てるときに使用される転がり軸受用の組立方法であって、
請求項1から請求項8のうちいずれかに記載する転がり軸受用組立治具を使用し、
前記保持器リングの径方向外方に、前記外方部材を同軸に配置し、前記外方部材と前記保持器リングの外周とが全周にわたって接触することにより、外周側密閉部を形成するとともに、
前記保持器リングの径方向内方に、前記内方部材を同軸に配置し、前記内方部材と前記保持器リングの内周とが全周にわたって接触することにより、内周側密閉部を形成した状態で、前記ピンと前記保持器リングとを溶接接合することを特徴とする転がり軸受の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンを溶接したピン型保持器が組み込まれた転がり軸受を組み立てるときに使用される組立治具、及び、これを用いた転がり軸受の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大荷重や衝撃荷重が作用する製鉄設備などでは、転がり軸受の負荷容量を上げるために、ピン型保持器が使用されている(特許文献1)。ピン型保持器を使用することによって、転動体を互いに近接させて組み込むことができるので、かご型保持器等と比較して転動体の数を増加できるからである。
ピン型保持器は、転動体を軸方向に挟んで配置される一対の保持器リングと、両方の保持器リング間に架け渡される複数のピンとで構成されている。転動体である円筒ころには、軸方向に貫通する孔が設けられており、この孔にピンを挿通することによって円筒ころが保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−45602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピン型保持器を組み立てるときには、あらかじめピンを円筒ころに挿入した後、ピンの軸方向の一端が、一方の保持器リングとねじ結合によって固定されるとともに、ピンの軸方向の他端が、他方の保持器リングと溶接接合によって固定されている。
保持器と円筒ころとを組み合わせた後では、外輪の鍔を乗り越えて円筒ころを軌道面上に組み付けることができないので、あらかじめ外輪の軌道面に円筒ころを配置した状態で、ピンの端部を溶接する必要がある。
【0005】
この溶接作業においては、溶融した金属が飛散して、円筒ころの転動面や外輪の軌道面に付着するおそれがある。このように付着した溶融物をスパッタという。スパッタは、転動面等に強固に付着しており、洗浄等では容易に取り除くことができない。また、たがね等で強制的に取り除いた場合には、傷が残留するおそれがある。
転動面等にスパッタが残留した状態や、傷が生じた状態で円筒ころ軸受が使用されると、当該スパッタや傷を起点として早期にはく離する等の不具合を生じる恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、ピン型保持器を溶接によって組み立てる時に、転動体の転動面や軌道面にスパッタが付着するのを防止して、寿命の長い転がり軸受を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の実施形態は、転がり軸受の外輪の内周に複数の転動体が配置された状態で、前記転動体を貫通する複数のピンと、前記転動体の端面に沿って配置された環状の保持器リングとを溶接接合して、ピン型保持器を組み立てるときに使用される組立治具であって、前記保持器リングの径方向外方に同軸に配置される外方部材と、前記保持器リングの径方向内方に同軸に配置される内方部材と、を備えており、前記外方部材と前記保持器リングの外周とが全周にわたって接触することにより、外周側密閉部が形成されるとともに、前記内方部材と前記保持器リングの内周とが全周にわたって接触することにより、内周側密閉部が形成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明の第2の実施形態は、転がり軸受の内輪の外周に複数の転動体が配置された状態で、前記転動体を貫通する複数のピンと、前記転動体の端面に沿って配置された環状の保持器リングとを溶接接合して、ピン型保持器を組み立てるときに使用される組立治具であって、前記保持器リングの径方向外方に同軸に配置される外方部材と、前記保持器リングの径方向内方に同軸に配置される内方部材と、を備えており、前記外方部材と前記保持器リングの外周とが全周にわたって接触することにより、外周側密閉部が形成されるとともに、前記内方部材と前記保持器リングの内周とが全周にわたって接触することにより、内周側密閉部が形成されていることを特徴としている。
【0009】
本発明の第3の実施形態は、転がり軸受の外輪の内周または転がり軸受の内輪の外周に複数の転動体が配置された状態で、前記転動体を貫通する複数のピンと、前記転動体の端面に沿って配置された環状の保持器リングとを溶接接合して、ピン型保持器を組み立てるときに使用される転がり軸受用の組立方法であって、請求項1から請求項8のうちいずれかに記載する転がり軸受用組立治具を使用し、前記保持器リングの径方向外方に、前記外方部材を同軸に配置し、前記外方部材と前記保持器リングの外周とが全周にわたって接触することにより、外周側密閉部を形成するとともに、前記保持器リングの径方向内方に、前記内方部材を同軸に配置し、前記内方部材と前記保持器リングの内周とが全周にわたって接触することにより、内周側密閉部を形成した状態で、前記ピンと前記保持器リングとを溶接接合することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ピン型保持器を溶接によって組み立てる時に、転動体の転動面や軌道面にスパッタが付着するのを防止できるので、寿命の長い転がり軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】円筒ころ軸受の軸方向断面図である。
図2】第1実施形態の組立治具の組立て方法を説明するための断面図である。
図3】第2実施形態の組立治具の組立て方法を説明するための断面図である。
図4】第3実施形態の組立治具の組立て方法を説明するための断面図である。
図5】複列円すいころ軸受の軸方向断面図である。
図6】第4実施形態の組立治具の組立て方法を説明するための断面図である。
図7】第5実施形態の組立治具の組立て方法を説明するための断面図である。
図8】第6実施形態の組立治具の組立て方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
本発明にかかる組立治具の一実施形態(以下「第1実施形態」)を、図を用いて詳細に説明する。
図1は、第1実施形態の組立治具を用いて組み立てられる円筒ころ軸受10の軸方向断面図である。円筒ころ軸受10は、例えば、風力発電装置のような大型設備の主軸を回転自在に支持する用途に使用される。その直径寸法は、概ね1.3メートル程度で、幅方向の寸法は、概ね300ミリメートル程度である。
【0013】
円筒ころ軸受10は、外輪11と、内輪12と、転動体である複数の円筒ころ13と、保持器14とを備えている。内輪12は、外輪11の内側で回転自在である。
以下の説明では、回転軸線mの方向を軸方向といい、回転軸線mと直交する方向を径方向、回転軸線mの回りを周回する方向を周方向という。
【0014】
外輪11の内周側には、外側軌道面15が形成されている。外側軌道面15は円筒形状で、円筒ころ13が周方向に転動する面である。その軸方向両外側に、径方向内方に突出する鍔16が設けられている。各鍔16の軸方向内側の側面は、円筒ころ13が周方向に転動するときの案内面となっている。
【0015】
内輪12の外周側には、内側軌道面17が形成されている。内側軌道面17は円筒形状で、円筒ころ13が周方向に転動する面である。
【0016】
円筒ころ13は、円筒形状で、その両端には互いに平行である一対の端面が形成されている。円筒ころ13には、その軸線方向に貫通する貫通孔18が設けられている。
【0017】
保持器14は、一対の保持器リング19,20と、周方向に所定の間隔で配置され、両方の保持器リング19,20間に架け渡された複数のピン23とで構成されている。
保持器リング19,20は、環状で、円筒ころ13を挟んで軸方向の両側に、外輪11と同軸に配置されている。
ピン23は、円筒ころ13の貫通孔18に挿通されるとともに、一方の保持器リング19とねじ結合されており、他方の保持器リング20と溶接接合によって固定されている。ピン23の外径寸法は、貫通孔18の内径寸法より小さく、円筒ころ13は、ピン23の回りで回転自在である。
【0018】
保持器リング20では、その径方向外方及び内方に、それぞれ板厚方向に軸線を有する円筒形状の外周面21及び内周面22が形成されている。外周面21の直径寸法d1は、外輪11の鍔16の内径寸法d2より10〜20mm程度小さく形成されている。内周面22の直径寸法d3は、内輪12の外径寸法d4より20〜30mm程度大きく形成されている。
【0019】
こうして、複数の円筒ころ13が、外側軌道面15と内側軌道面17との間に組み込まれて、内輪12が回転自在に支持されている。
【0020】
次に、図2によって、第1実施形態の組立治具について説明する。図2は、第1実施形態の組立治具を用いて円筒ころ軸受10を組み立てる方法を説明するための断面図であり、図の上下方向を鉛直方向として記載している。
【0021】
組立治具は、補助プレート34と、外周側耐熱リング38(耐熱部材)と、内周側耐熱リング39(耐熱部材)とを備えている。
【0022】
補助プレート34は、環状の平板であり、保持器リング20に対して径方向内方(保持器リング20を径方向に挟んで外輪11の反対側)に設置される。その板厚は保持器リング20の板厚とほぼ同等である。外周は、段付きの円筒面となっており、大径の第1外周面35と小径の第2外周面36が形成されている。
第1外周面35の外周は、保持器リング20の内周よりわずかに小径で、円筒ころ13の内接径d6より大径である。円筒ころ13の内接径とは、外輪11の外側軌道面15に沿って周方向に配置された複数の円筒ころ13に内接する円の直径である。
【0023】
外周側耐熱リング38(外方部材)及び内周側耐熱リング39(内方部材)は、それぞれシリカ繊維からなり、1000℃程度の熱に耐えられる耐熱シート(耐熱部材)で製作されている。当該耐熱シートとしては、例えば、株式会社大阪製作所製 商品名「プロテックシート」が好適に使用されるが、これに限定されるものではなく、日本工業規格 JIS A1323の規格に適合する材料を適宜選択することによって、同等の効果を得ることができる。
各耐熱リング38,39は、上記の耐熱シートを丸めて、断面が略円形の紐状に形成されている。また、各耐熱リング38,39は、繊維素材で形成されているため、力を加えることによって、その断面形状は比較的容易に変形することができる。
【0024】
次に、図2によって、第1実施形態の組立治具を用いて、円筒ころ軸受10を組み立てる組立方法を説明する。
円筒ころ軸受10は、内輪12を取り外した状態で、その回転軸線mを鉛直方向に向けた状態で固定される。複数の円筒ころ13は、その軸線を鉛直方向に向けて、外側軌道面15に沿って周方向に配置されるとともに、一対の保持器リング19,20が、円筒ころ13の軸方向両側に、外輪11と同軸に配置される。
ピン23が、鉛直方向上側から、保持器リング20の挿通孔24及び円筒ころ13の貫通孔18に挿入され、保持器リング19のねじ孔に螺合される。このとき、ピン23の上端は、円筒ころ13の端面から突出しており、保持器リング20の挿通孔24に嵌め合わされている。
【0025】
次に、補助プレート34が、第1外周面35の側を鉛直方向下方にして、保持器リング20と同軸に組み合わせられる。第1外周面35が円筒ころ13の内接径d6より大径であるので、補助プレート34は、円筒ころ13と軸方向に接触して、円筒ころ軸受10の上に載置される。
【0026】
次に、外周側耐熱リング38が、保持器リング20と鍔16との間に形成された環状ののすきまs1に組み付けられるとともに、内周側耐熱リング39が、保持器リング20と補助プレート34の第2外周面36との間に形成された環状のすきまs2に組み付けられる。
【0027】
外周側耐熱リング38の全長は、保持器リング20の外周の周長と同等である。このため、すきまs1に組み付けられたときには、外周側耐熱リング38は、両端が閉じたリング状となっている。また、外周側耐熱リング38の断面の直径寸法は、すきまs1の径方向寸法よりわずかに大きい。このため、外周側耐熱リング38が、保持器リング20の外周に全周にわたって押し付けられる。
こうして、外周側耐熱リング38と保持器リング20の外周とが全周にわたって接触することによって、スパッタなどの異物が、保持器リング20の外周に沿って円筒ころ13に向かって浸入するのを防止する第1密閉部(外周側密閉部)が形成されている。
更に、外周側耐熱リング38が、鍔16の内周と全周にわたって接触することにより、外周側耐熱リング38の外側を通って円筒ころ13に向けてスパッタなどの異物が浸入するのを防止できるので、更に確実に異物の浸入を防止できる。
【0028】
同様に、内周側耐熱リング39の断面の直径寸法が、すきまs2の径方向寸法よりわずかに大きく、その全長が、保持器リング20の内周の周長と同等である。これにより、内周側耐熱リング39が、保持器リング20の内周に全周にわたって押し付けられる。こうして、内周側耐熱リング39と保持器リング20の内周とが全周にわたって接触することによって、スパッタなどの異物が、保持器リング20の内周に沿って円筒ころ13に向かって浸入するのを防止する第2密閉部(内周側密閉部)が形成されている。
更に、内周側耐熱リング39が、補助プレート34の外周と全周にわたって接触することにより、内周側耐熱リング39の内側を通って円筒ころ13に向けてスパッタなどの異物が浸入するのを防止できるので、更に確実に異物の浸入を防止できる。
【0029】
この状態で、各ピン23の端部と保持器リング20とが、アーク溶接によって順次溶接接合される。
溶接接合時には、溶融した金属等(スパッタ)が飛散する。第1実施形態では、上記のように、保持器リング20の外周及び内周に異物の浸入を防止する第1密閉部及び第2密閉部が形成されているので、スパッタが、円筒ころ13の転動面や外輪11の軌道面に浸入することがない。
【0030】
また、各耐熱リング38,39が、シリカ繊維からなる耐熱シートで製作されているので、溶接時に保持器リング20の温度が高くなったとしても、その密閉性能が低下することがない。
【0031】
なお、補助プレート34の内周は、円筒ころ13の内接径d6より小径である。このため、溶接している箇所の近傍の円筒ころ13は、溶接部からみて補助プレート34の陰に位置することとなる。このため、スパッタが、補助プレート34の内周を通って、円筒ころ13の転動面や外輪11の軌道面に飛散することがない。
また、補助プレート34は、孔を設けて環状にすることによって軽量化できるので、円筒ころ軸受10の組立作業を容易にすることができる。しかし、孔を設けない単なる円板であってもよい。
【0032】
こうして、第1実施形態の組立治具を用いることによって、ピン23と保持器リング20とを溶接してピン型保持器を組み立てる時に、円筒ころ13の転動面や外輪11の外側軌道面15にスパッタが付着するのを防止できる。
同様にして、周方向に順次、各ピン23と保持器リング20とが溶接接合された後、外周側耐熱リング38及び内周側耐熱リング39と、補助プレート34を取り外し、その後、内輪12を円筒ころ13の内周に組み合わせることによって、円筒ころ軸受10を組み立てることができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、図3によって、第2実施形態の組立治具について説明する。図3は、第2実施形態の組立治具を用いて円筒ころ軸受10を組み立てる方法を説明するための断面図であり、図の上下方向を鉛直方向として記載している。
【0034】
第2実施形態の組立治具は、第1カバープレート25(外方部材)と第2カバープレート30(内方部材)とを備えている。
【0035】
第1カバープレート25は、炭素鋼などの金属製で、環状の円板部29と、その内周端から全周にわたって回転軸線mの向きに突出した筒状部26とが一体に形成されている。
筒状部26の先端側の内周には、第1傾斜面41(外側傾斜面)が形成されている。第1傾斜面41は、筒状部26の先端から円板部29に向かうにしたがって保持器リング20に向けて傾斜している。すなわち、第1カバープレート25が保持器リング20と同軸に組み付けられたときには、第1傾斜面41は、保持器リング20から軸方向に離れるにしたがって縮径している。
【0036】
第2カバープレート30は、炭素鋼などの金属製で、環状である。
外周面31には、第2傾斜面42(内側傾斜面)が形成されている。第2傾斜面42は、円筒ころ13の側から軸方向に離れるにしたがって保持器リング20に向けて傾斜している。すなわち、第2カバープレート30が保持器リング20と同軸に組み付けられたときには、第2傾斜面42は、保持器リング20から軸方向に離れるにしたがって拡径している。
【0037】
次に、第2実施形態の組立治具を用いて、円筒ころ軸受10を組み立てる組立方法を説明する。第1実施形態と共通する組立方法については説明を省略する。
円筒ころ軸受10は、内輪12を取り外した状態で、その回転軸線mを鉛直方向に向けて、第1実施形態と同様に設置されている。
【0038】
この状態で、第1カバープレート25が、保持器リング20と同軸に組み付けられる。
第1傾斜面41の直径寸法は、小径側では保持器リング20の外径寸法より小径であり、大径側では保持器リング20の外径寸法より大径である。いいかえれば、保持器リング20から軸方向に離れるにしたがって縮径している。これによって、第1傾斜面41が、保持器リング20の外周の端部に接触する。
第1傾斜面41は円錐面であり、保持器リング20の外周面21は円筒面である。このため、第1傾斜面41と外周面21とが同軸に組み合わされることによって、第1傾斜面41と保持器リング20の外周とが互いに全周で接触する。こうして、保持器リング20の径方向外方に、異物の浸入を防止する第3密閉部(外周側密閉部)が形成されている。第3密閉部を形成することによって、スパッタなどの異物が、保持器リング20の外周を通って円筒ころに向けて浸入するのを防止できる。
【0039】
同様にして、第2カバープレート30が、保持器リング20と同軸に組み付けられる。このとき、第2傾斜面42と保持器リング20の内周とが、互いに全周で接触する。こうして、保持器リング20の径方向内方に、異物の浸入を防止する第4密閉部(内周側密閉部)が形成されている。
【0040】
この状態で、各ピン23の端部と保持器リング20とが、アーク溶接によって順次溶接接合される。
溶接接合時には、溶融した金属等(スパッタ)が飛散する。第2実施形態では、上記のように、保持器リング20の外周及び内周に、異物の浸入を防止する第3密閉部及び第4密閉部が形成されているので、スパッタが、円筒ころ13の転動面や外輪11の軌道面に浸入することがない。
【0041】
また、第2実施形態の組立治具では、第1及び第2カバープレート25,30が、それぞれ金属製であるため、第3及び第4密閉部の耐熱性が高く、スパッタが飛散することによってほとんど損傷を受けない。このため、スパッタが円筒ころ13に向けて浸入するのをするのを、長期にわたって確実に防止できる。
【0042】
また、第2実施形態では、第1傾斜面41及び第2傾斜面42が、それぞれ第1カバープレート25及び第2カバープレート30の自重によって、保持器リング20に軸方向に押し付けられている。
これにより、仮に、保持器リング20の直径寸法が製造のばらつきによって増減したとしても、各カバープレート25,30の軸方向の位置が、適宜変位することによって、各傾斜面41,42と保持器リング20とが全周で接触し得る。
また、保持器リング20は、溶接時に温度が上昇し、溶接後には冷却される。このため、熱膨張によって保持器リング20の直径寸法が増減する。この場合であっても、各カバープレート25,30の軸方向の位置が、適宜変位することによって、各傾斜面41,42と保持器リング20とが全周で接触し得る。
こうして、第3密閉部及び第4密閉部では、スパッタが、円筒ころ13の転動面や外輪11の軌道面に浸入するのを、確実に防ぐことができる。
【0043】
なお、第1カバープレート25では、円板部29と外輪11とが接触しないように、常にすきまs5が形成されている。仮に、円板部29と外輪11とが当接した場合には、第1カバープレートがそれ以上鉛直方向下方に変位できず、第3密閉部において、第1傾斜面41と保持器リング20との間にすきまが生じてしまう場合があるからである。
すきまs5を設けることによって、第1カバープレート25の鉛直方向の動きが阻害されず、第1傾斜面41と保持器リング20とが確実に接触するので、スパッタが、円筒ころ13の転動面や外輪11の軌道面に浸入するのを、確実に防止できる。
【0044】
なお、第1カバープレート25の外周は、外輪11の外径より大径である。このため、外輪11の外周は、溶接部から見て第1カバープレート25の陰に位置することとなる。このため、スパッタが、外輪11の外周面に飛散することがない。また、第2カバープレート30の内周は、円筒ころ13の内接径d6より小径である。このため、溶接している箇所の近傍の円筒ころ13は、溶接部から見て第2カバープレート30の陰に位置することとなる。このため、スパッタが、第2カバープレート30の内周を通って、円筒ころ13の転動面や外輪11の軌道面に飛散することがない。
【0045】
こうして、第2実施形態の組立治具を用いることによって、ピン23と保持器リング20とを溶接してピン型保持器を組み立てる時に、円筒ころ13の転動面や外輪11の軌道面にスパッタが付着するのを防止できる。
同様にして、周方向に順次、各ピン23と保持器リング20とが溶接接合された後、第1及び第2カバープレート25,30を取り外し、内輪12を組み合わせることによって、円筒ころ軸受10を組み立てることができる。
【0046】
(第3実施形態)
図4によって、第3実施形態の組立治具について説明する。図4は、第3実施形態の組立治具を用いて円筒ころ軸受10を組み立てる方法を説明するための断面図であり、図の上下方向を鉛直方向として記載している。
【0047】
第3実施形態の組立治具は、第2実施形態の組立治具に対して、補助プレート34と、外方部材としての外周側耐熱リング38及び内方部材としての内周側耐熱リング39が、更に組み付けられている点が異なる。各構成については、第1実施形態及び第2実施形態と共通するので説明を省略する。
【0048】
第3実施形態の組立治具を用いて円筒ころ軸受10を組み立てる組立方法について簡単に説明する。
【0049】
第3実施形態では、第2実施形態と同様に、内輪12を取り外した状態で、円筒ころ軸受10が回転軸線mを鉛直方向に向けて設置されている。
この状態で、補助プレート34が、円筒ころ13の端面の上に載置される。
【0050】
次に、外周側耐熱リング38及び内周側耐熱リング39が、それぞれすきまs1及びすきまs2に組み付けられる。その後、第2実施形態と同様にして、第1カバープレート25と第2カバープレート30が、保持器リング20と同軸に組み付けられる。
なお、第2カバープレート30と補助プレート34とが接触しないように、常にすきまs6が形成されている。これによって、第2カバープレート30の鉛直方向の動きが阻害されることがなく、第2傾斜面42と保持器リング20とが、確実に接触する。
【0051】
こうして、第3実施形態では、外周側耐熱リング38及び第1傾斜面41が、保持器リング20の外周と全周にわたって接触している。これにより、保持器リング20の径方向外方において、外周側耐熱リング38と保持器リング20の外周との接触部、及び、第1傾斜面41と保持器リング20の外周との接触部に、それぞれ外周側密閉部が形成されている。また、内周側耐熱リング39及び第2傾斜面42が、保持器リング20の内周と全周にわたって接触している。これにより、保持器リング20の径方向内方において、内周側耐熱リング39と保持器リング20の内周との接触部、及び、第2傾斜面42と保持器リング20の内周との接触部に、それぞれ内周側密閉部が形成されている。
【0052】
第3実施形態の組立治具では、各耐熱リング38,39と溶接部との間に、それぞれ第1及び第2カバープレート25,30が設けられているので、スパッタが、各耐熱リング38,39に直接飛散しない。このため、各耐熱リング38,39の耐久性を向上することができる。
一方、溶接時の熱影響等によって、保持器リング20が変形して、真円形状でなくなった場合には、保持器リング20と第1傾斜面41、または、保持器リング20と第2傾斜面42が互いに密着しない場合がある。このとき、スパッタが、各傾斜面と保持器リング20との接触部を通過して、円筒ころ13に向けて浸入する恐れがある。この場合には、接触部を通過したスパッタの浸入が、外周側耐熱リング38と保持器リング20によって形成された外周側密閉部、及び、内周側耐熱リング39と保持器リング20によって形成された内周側密閉部によって遮断されるので、スパッタが円筒ころ13に向けて浸入するのを確実に防止することができる。
【0053】
この状態で、保持器リング20に挿入されている各ピン23の端部と保持器リング20とが、アーク溶接によって順次溶接接合される。
【0054】
こうして、第3実施形態の組立治具を用いることによって、保持器リング20が変形した場合であっても、スパッタの浸入を確実に防止できる。また、第1、第2カバープレート25,30が、それぞれ金属製であるため、第3及び第4密閉部の耐熱性が高い。このため、長期にわたって組立治具を使用できる。
なお、第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、第1カバープレート25の外周が、外輪11の外径より大径であり、補助プレート34の内周が、円筒ころ13の内接径d6より小径である。このため、スパッタが、外輪11の外周面、円筒ころ13の転動面、外輪11の軌道面等に飛散することがない。
【0055】
(第4実施形態)
以上の説明では、本発明の実施形態を、円筒ころ軸受を組み立てる場合を例にして説明したが、円すいころ軸受などの他の形式の転がり軸受を組み立てる場合にも適用することができる。以下に簡単に説明する。
【0056】
図5は、本発明にかかる組立治具を使用して組立てられる複列円すいころ軸受50(以下、単に円すいころ軸受)の軸方向断面図である。円すいころ軸受50の外径寸法は、概ね1.5メートル程度である。
円すいころ軸受50は、一対の外輪51と、内輪52と、転動体である複数の円すいころ53と、二組の保持器58とを備えている。
【0057】
外輪51の内周側には円錐面の外側軌道面54が形成されている。内輪52の外周側には円錐面の内側軌道面55が二列形成されている。各内側軌道面55の軸方向両端には、それぞれ径方向外方に延在する大鍔56と小鍔57が形成されている。円すいころ53は、円錐台の形状で、外側軌道面54と内側軌道面55の間に組み込まれ、回転軸線mに対して傾いた状態で組み込まれている。
【0058】
保持器58は、各列に一組ずつ組み込まれており、互いに同一形状である。
保持器58は、ピン型保持器であって、一対の環状の保持器リング61,62と、両方の保持器リング61,62間に架け渡される複数のピン66とで構成されている。ピン66は、軸方向の両外側に配置された保持器リング61と溶接接合されている。
【0059】
次に、図6によって、第4実施形態の組立治具を用いた円すいころ軸受50の組立方法について説明する。図6は、組立方法を説明するための断面図であり、図の上下方向を鉛直方向として記載している。
【0060】
第4実施形態の組立治具は、補助プレート67と、外周側耐熱リング71(外方部材)と、内周側耐熱リング72(内方部材)とを備えている。第1実施形態の組立治具に対して、補助プレート67が、保持器リング61に対して径方向外方(保持器リング61を径方向に挟んで内輪52の反対側)に設置されている点が異なる。外周側耐熱リング71及び内周側耐熱リング72は、いずれも、第1実施形態の組立治具と同様の耐熱部材で製造されている。
【0061】
円すいころ軸受50は、外輪51を取り外した状態で、その回転軸線mを鉛直方向に向けた状態で固定されている。鉛直方向上方から、補助プレート67が、保持器リング61と同軸に組み合わせられる。補助プレート67には、径方向の内周に、小径の第1内周面68と大径の第2内周面69とが形成されている。
第1内周面68の内周は、円すいころ53の小端面59の外接径d7より小さいので、補助プレート67は、円すいころ53と軸方向で接触した状態で、円すいころ軸受50の上に載置される。円すいころ53の小端面の外接径とは、円すいころ軸受50に組み込まれた複数の円すいころ53の小端面59を形成する円に外接する円の直径である。
【0062】
外周側耐熱リング71は、補助プレート67と保持器リング61との間に形成された環状のすきまs3に組み付けられ、内周側耐熱リング72は、保持器リング61と内輪52の小鍔57との間に形成された環状のすきまs4に組み付けられる。
こうして、第1実施形態と同様にして、外周側耐熱リング71が、保持器リング61の外周に全周にわたって押し付けられる。こうして、外周側耐熱リング71と保持器リング61の外周とが全周にわたって接触することによって、スパッタなどの異物が、保持器リング61の外周に沿って円すいころ53に向かって浸入するのを防止する第5密閉部(外周側密閉部)が形成されている。更に、外周側耐熱リング71が、補助プレート67の内周と全周にわたって接触することにより、外周側耐熱リング71の外側を通って円すいころ53に向けてスパッタなどの異物が浸入するのを防止できるので、更に確実に異物の浸入を防止できる。
同様に、内周側耐熱リング72は、保持器リング61の内周に全周にわたって押し付けられる。こうして、内周側耐熱リング72と保持器リング61の内周とが全周にわたって接触することによって、スパッタなどの異物が、保持器リング61の内周に沿って円すいころ53に向かって浸入するのを防止する第6密閉部(内周側密閉部)が形成されている。更に、内周側耐熱リング72が、小鍔57の外周と全周にわたって接触することにより、内周側耐熱リング72の内側を通って円すいころ53に向けてスパッタなどの異物が浸入するのを防止できるので、更に確実に異物の浸入を防止できる。
【0063】
なお、補助プレート67の外周は、少なくとも円すいころ53の小端面59の外接径d7より大径である。このため、溶接している箇所の近傍の円すいころ53は、溶接部からみて補助プレート67の陰に位置することとなる。このため、スパッタが、補助プレート67の外周を通って、円すいころ53の転動面や内輪52の軌道面に飛散することがない。
【0064】
こうして、第4実施形態の組立治具では、スパッタが、円すいころ53の転動面や内輪52の軌道面に付着するのを防止できる。
【0065】
(第5実施形態)
次に、図7によって、第5実施形態の組立治具を用いた円すいころ軸受50の組立方法について説明する。図7は、組立方法を説明するための断面図であり、図の上下方向を鉛直方向として記載している。
【0066】
第5実施形態の組立治具は、第3カバープレート74(外方部材)と第4カバープレート78(内方部材)とサブプレート82を備えている。第2実施形態の組立治具に対して、各カバープレート74,78が内輪52の径方向外方に組み付けられており、保持器リング61の内周側では、第4カバープレート78と組み合わせて、サブプレート82が組み込まれている点が異なる。
【0067】
第3カバープレート74では、内周に、第3傾斜面75(外側傾斜面)が一体に形成されている。第3傾斜面75は、円すいころ53から軸方向に離れるにしたがって保持器リング61に向けて傾斜している。すなわち、第3カバープレート74が保持器リング61と同軸に組み付けられたときには、第3傾斜面75は、保持器リング61から軸方向に離れるにしたがって縮径している。
第4カバープレート78は、環状の円板部79と、その外周端から全周にわたって回転軸線mの向きに突出した筒状部80とが一体に形成されている。筒状部80の外周に、第4傾斜面81(内側傾斜面)が一体に形成されている。第4傾斜面81は、筒状部80の先端から円板部79に向かうにしたがって保持器リング61に向けて傾斜している。すなわち、第4カバープレート78が保持器リング61と同軸に組み付けられたときには、第4傾斜面81は、保持器リング61から軸方向に離れるにしたがって拡径している。
【0068】
サブプレート82は、環状の平板で、内輪52の鉛直方向上側の面に固定されている。外周端には、軸方向に突出し、内輪52と同軸に固定するための凸部が形成されている。サブプレート82が第4カバープレート78と別体であるので、一体で形成した場合と比較して、第4カバープレート78の大きさを低減することができる。
【0069】
第5実施形態の組立治具を用いて、円すいころ軸受50を組み立てる組立方法を説明する。
円すいころ軸受50は、外輪51を取り外した状態で、その回転軸線mを鉛直方向に向けた状態で固定されている。まず、サブプレート82が、内輪52に固定される。
次に、第3カバープレート74と第4カバープレート78が、保持器リング61と同軸に組み付けられる。このとき、第3傾斜面75が、保持器リング61の外周と全周にわたって接触して第7密閉部(外周側密閉部)が形成されるとともに、第4傾斜面81が、保持器リング61の内周の端部と全周にわたって接触して第8密閉部(内周側密閉部)が形成されている。
こうして、保持器リング61の径方向外方及び内方に、溶接部から円すいころ53に向かうスパッタの浸入を防止する第7及び第8密閉部が形成されているので、スパッタが、円すいころ53の転動面や内輪52の軌道面に浸入することがない。
【0070】
なお、第4カバープレート78では、円板部79とサブプレート82とが接触しないように常にすきまs7が形成されている。このため、第4カバープレート78の鉛直方向の動きが阻害されず、第4傾斜面81と保持器リング61とが、確実に接触できる。
【0071】
また、サブプレート82の内周は、内輪52の内径より小径である。このため、内輪52の内周は、溶接部から見てサブプレート82の陰に位置することとなる。このため、スパッタが、内輪52の内周面に飛散することがない。また、第3カバープレート74の外周は、少なくとも円すいころ53の小端面59の外接径d7より大径である。このため、溶接している箇所の近傍の円すいころ53は、溶接部から見て第3カバープレート74の陰に位置することとなる。このため、スパッタが、第3カバープレート74の外周を通って、円すいころ53の転動面や内輪52の軌道面に飛散することがない。
【0072】
こうして、第5実施形態の組立治具では、スパッタが、円すいころ53の転動面や内輪52の軌道面に付着するのを防止できるとともに、第7及び第8密閉部の耐熱性が高く、長期にわたってスパッタの浸入を防止できる。
【0073】
(第6実施形態)
次に、図8によって、第6実施形態の組立治具を用いた円すいころ軸受50の組立方法について説明する。図8は、組立方法を説明するための断面図であり、図の上下方向を鉛直方向として記載している。
【0074】
第6実施形態の組立治具は、第5実施形態の組立治具に対して、補助プレート67と、外方部材としての外周側耐熱リング71及び内方部材としての内周側耐熱リング72が更に組み込まれている点が異なる。各構成については、第4実施形態及び第5実施形態と共通するので説明を省略する。
【0075】
第6実施形態の組立治具を用いて円すいころ軸受50を組み立てる組立方法について簡単に説明する。
【0076】
第6実施形態では、第4実施形態と同様に円すいころ軸受50が設置されており、補助プレート67が、円すいころ53と接触して、円すいころ軸受50の上に載置される。
【0077】
次に、外周側耐熱リング71及び内周側耐熱リング72が、それぞれすきまs3及びすきまs4に組み付けられる。
次に、内輪52の鉛直方向上方にサブプレート82が固定される。その後、第5実施形態と同様にして、第3カバープレート74と第4カバープレート78が、保持器リング61と同軸に組み付けられる。
【0078】
第6実施形態の組立治具では、各耐熱リング71,72が、各カバープレート74,78によって保護されており、スパッタが直接各耐熱リング71,72に向けて飛散しない。このため、各耐熱リング71,72の耐久性を向上することができる。
また、溶接時の熱影響等によって保持器リング61が変形することによって、各傾斜面75,81と保持器リング61との接触部にすきまが生じ、スパッタが、当該すきまを通過して浸入した場合であっても、外周側耐熱リング71と保持器リング61によって形成された外周側密閉部、及び、内周側耐熱リング72と保持器リング61によって形成された内周側密閉部によって、円すいころに向けたスパッタの浸入を防止することができる。
【0079】
なお、第6実施形態においても、第5実施形態と同様に、補助プレート67の外周は、少なくとも円すいころ53の小端面59の外接径d7より大径であり、サブプレート82の内周は、内輪52の内径より小径である。このため、スパッタが、内輪52の内周面、円すいころ53の転動面、内輪52の軌道面等に飛散することがない。
【0080】
こうして、第6実施形態では、外周側耐熱リング71及び第3傾斜面75が、保持器リング61の外周と全周にわたって接触している。これにより、保持器リング61の径方向外方において、外周側耐熱リング71と保持器リング61の外周との接触部、及び、第3傾斜面75と保持器リング61の外周との接触部に、それぞれ外周側密閉部が形成されている。また、内周側耐熱リング72及び第4傾斜面81が、保持器リング61の内周と全周にわたって接触している。これにより、保持器リング61の径方向内方において、内周側耐熱リング72と保持器リング61の内周との接触部、及び、第4傾斜面81と保持器リング61の内周との接触部に、それぞれ内周側密閉部が形成されている。
第6実施形態の組立治具を用いることによって、各耐熱リング71,72を保護しつつ、スパッタの浸入を確実に防止できる。
【0081】
以上説明したように、本発明にかかる組立治具を用いることによって、ピンと保持器リングとを溶接してピン型保持器を組み立てる時に、転動体の転動面や軌道輪に形成された軌道面にスパッタが付着するのを防止できる。これにより、寿命の長い転がり軸受を提供することができる。
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変更が可能である。各実施形態で示した構成を組み合わせて実施してもよい。例えば、保持器リング61の外周側に、第1実施形態における外周側耐熱リング71を使用し、保持器リング61の内周側に、第2実施形態における第2カバープレートを使用する等、任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0082】
10:円筒ころ軸受、11:外輪、12:内輪、13:円筒ころ、14:保持器、20:保持器リング、23:ピン、25:第1カバープレート、30:第2カバープレート、34:補助プレート、38:外周側耐熱リング、39:内周側耐熱リング、41:第1傾斜面、42:第2傾斜面、
50:複列円すいころ軸受、51:外輪、52:内輪、53:円すいころ、58:保持器、61:保持器リング、66:ピン、67:補助プレート、71:外周側耐熱リング、72:内周側耐熱リング、74:第3カバープレート、75:第3傾斜面、78:第4カバープレート、81:第4傾斜面、82:サブプレート、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8