【解決手段】水素燃焼ボイラ1は、缶体10と、缶体10の内部に配置されるバーナ20と、バーナ20に燃料ガスとして水素ガスG1を供給する水素供給ラインL210と、水素供給ラインL210に配置される水封式逆火防止装置50と、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13の温度を調整する温度調整部90と、を備える。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る水素燃焼ボイラ1について、
図1及び
図2を参照して説明する。
まず、本実施形態の水素燃焼ボイラ1の概要について説明する。
【0017】
水素燃焼ボイラ1は、水素ガスG1が燃料ガスとして用いられるボイラである。水素燃焼ボイラ1は、貫流ボイラであり、水素ガスG1が水素供給ラインL210を流通して缶体10内のバーナ20に供給される。
【0018】
バーナ20で発生した火炎が水素供給ラインL210に逆流することを防止すべく、水素供給ラインL210には、逆火防止装置(フレームアレスタ)が配置される。逆火防止装置には、金網(メッシュ)式や、クリンプリボン(波形)式、水封式等の種類があり、本実施形態における水素燃焼ボイラ1では、水封式逆火防止装置50が採用される。
【0019】
次に、水素燃焼ボイラ1の構成について説明する。
水素燃焼ボイラ1は、
図1及び
図2に示すように、缶体10と、バーナ20と、給水予熱器30と、送風機40と、水封式逆火防止装置50と、温度調整部90と、センサ部100と、制御部60と、を備える。また、水素燃焼ボイラ1は、水素供給ラインL210と、給水ラインL220と、蒸気取出ラインL230と、空気供給ラインL240と、パージガスラインL250と、を備える。本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の総称である。
【0020】
缶体10は、複数の水管12と、上部ヘッダ(上部管寄せ)13と、下部ヘッダ(下部管寄せ)14と、からなる圧力容器を形成する。具体的には、缶体10は、上面視環状に配置される水管12の群と、水管12の群の上端部を繋ぐ環状の上部ヘッダ13と、水管12の群の下端部を繋ぐ環状の下部ヘッダ14と、からなる圧力容器を形成する。また、缶体10は、燃焼室15を有する。
【0021】
複数の水管12は、缶体10の上下方向に延びて配置される。
上部ヘッダ13は、例えば、環状の容器により形成される。上部ヘッダ13は、缶体10の上端部に配置される。上部ヘッダ13には、複数の水管12のそれぞれの上端部が連結される。上部ヘッダ13には、後述する蒸気取出ラインL230の一端が接続される。
【0022】
下部ヘッダ14は、例えば、環状の容器により構成される。下部ヘッダ14は、缶体10の下端部に配置される。下部ヘッダ14には、複数の水管12のそれぞれの下端部が連結される。下部ヘッダ14には、後述する給水ラインL220の他端が接続される。
燃焼室15は、複数の水管12に囲まれた空間により構成される。
【0023】
バーナ20は、缶体10の内部に配置される。具体的には、バーナ20は、缶体10の上端部の中央部に配置される。バーナ20には、水素ガスG1を供給する後述する水素供給ラインL210と、空気A1を供給する後述する空気供給ラインL240とが接続される。バーナ20は、水素ガスG1を噴射する燃料噴射ノズル(図示せず)と、空気A1を供給する空気供給ノズル(図示せず)を含んで構成される。
【0024】
以上の缶体10によれば、下部ヘッダ14から水管12の内部に水W12が供給される。燃料噴射ノズルは、水素ガスG1を缶体10の燃焼室15に向けて噴射する。また、空気供給ノズルは、空気A1を燃焼室15に供給する。水素ガスG1は、バーナ20の点火により、燃焼室15において燃焼する。水素ガスG1の燃焼により、複数の水管12の内部の水W12が加熱される。水管12の内部の水W12は、加熱により蒸発して蒸気(蒸気SM)になり、上部ヘッダ13に集められる。
【0025】
給水予熱器30は、缶体10において水W12を加熱し排気筒31から排出される燃焼ガス(排ガス)と、缶体10に供給される水W11との間で熱交換を行い、水W11を加熱する。
【0026】
送風機40は、バーナ20に空気A1を供給する装置である。送風機40の空気供給口には、送風機40で発生した空気A1をバーナ20へ供給する空気供給ラインL240が接続される。
【0027】
水封式逆火防止装置50は、バーナ20で発生した火炎が後述する水素供給ラインL210に逆流することを防止する装置である。
温度調整部90は、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13の温度を調整する装置である。
センサ部100は、水封式逆火防止装置50に封入された水W13の状態を検出する装置である。
制御部60は、温度調整部90を制御する制御装置である。制御部60については水封式逆火防止装置50、温度調整部90、及びセンサ部100と併せて後述する。
【0028】
水素供給ラインL210は、一端がバーナ20に接続され、他端が水素ガス供給源(図示せず)に接続される。水素供給ラインL210は、燃料ガスとして水素ガスG1をバーナ20に供給する。また、水素供給ラインL210の水封式逆火防止装置50よりも上流側には、水素供給ラインL210を開閉する燃料供給弁V1が配置される。
【0029】
給水ラインL220は、給水予熱器30を介して、水W11を缶体10に供給するラインである。給水ラインL220の上流側の端部は、水の供給源(図示せず)に接続される。給水ラインL220の下流側の端部は、缶体10の下部ヘッダ14に接続される。また、給水ラインL220は、給水予熱器30の下流側で分岐する。分岐した給水ライン(以下、分岐ラインL221という)の下流側は、後述する水封式逆火防止装置50に接続される。分岐ラインL221には、分岐ラインL221を開閉する電動弁V5が配置される。
【0030】
蒸気取出ラインL230は、缶体10により生成された蒸気SMを缶体10から取出して、気水分離機(図示せず)等を介して、蒸気使用設備(図示せず)に送出するラインである。蒸気取出ラインL230の上流側の端部は、缶体10の上部ヘッダ13に接続される。蒸気取出ラインL230の下流側は、気水分離機(図示せず)等を介して蒸気使用設備(図示せず)に接続される。
【0031】
空気供給ラインL240は、バーナ20に燃焼用の空気A1を供給するラインである。空気供給ラインL240の上流側は、送風機40の空気供給口に接続される。また、空気供給ラインL240の下流側の端部は、バーナ20に接続される。
【0032】
パージガスラインL250は、水素供給ラインL210に接続される。パージガスラインL250は、不活性ガスG2を供給する。パージガスラインL250の下流側は、接続部J1において、水素供給ラインL210に接続される。パージガスラインL250の上流側は、不活性ガスの供給源(図示せず)に接続される。また、パージガスラインL250には、パージガスラインL250を開閉する不活性ガス供給弁V2が配置される。
【0033】
次に、水封式逆火防止装置50について説明する。
水封式逆火防止装置50は、
図2に示すように、水W13を内部に封入する容器である。水封式逆火防止装置50は、水素供給ラインL210の途中に配置される。具体的には、水封式逆火防止装置50は、水素供給ラインL210におけるパージガスラインL250との接続部J1よりも下流側(二次側)に配置される。そして、水封式逆火防止装置50は、水素供給ラインL210を上流側(以下、第1水素供給ラインL211という)と、下流側(以下、第2水素供給ラインL212という)とに二分割した間に配置される。即ち、水封式逆火防止装置50には、第1水素供給ラインL211の下流側の端部と、第2水素供給ラインL212の上流側の端部とが接続される。
【0034】
水封式逆火防止装置50には、第1水素供給ラインL211の下流側の端部が水W13に沈むように配置される。また、水封式逆火防止装置50には、第2水素供給ラインL212の上流側の端部が水封式逆火防止装置50に封入された水W13の水位よりも上方に配置される。
【0035】
また、水封式逆火防止装置50は、給水ラインL220に配置される。具体的には、水封式逆火防止装置50は、分岐ラインL221の下流側(二次側)の端部に配置される。水封式逆火防止装置50には、分岐ラインL221の下流側の端部が、第1水素供給ラインL211の下流側の端部よりも上方かつ第2水素供給ラインL212の上流側の端部よりも下方に配置される。
【0036】
水封式逆火防止装置50には、水位の異常上昇を防止するためのオーバーフローラインL280が接続される。オーバーフローラインL280は、水封式逆火防止装置50の底面Bから所定の高さの位置に接続される。また、オーバーフローラインL280には、水位の異常上昇の検知で開放される放水弁V6が配置される。また、水封式逆火防止装置50の上端部には、水封式逆火防止装置50の内圧の異常上昇を防止するための放出ラインL290が接続される。放出ラインL290には、安全開放弁、又は安全開放弁及び破裂板(いずれも図示せず)が配置される。
【0037】
以上の水封式逆火防止装置50によれば、電動弁V5が開放されることで、分岐ラインL221から水封式逆火防止装置50に水W11が導入される。電動弁V5の開度により、分岐ラインL221から水封式逆火防止装置50への水W11の導入量が調整される。導入された水W11は、水封式逆火防止装置50に封入される。そして、オーバーフローラインL280の接続部分の高さを超える水W13は、放水弁V6が開放されることでオーバーフローラインL280から外部に排出される。
【0038】
第1水素供給ラインL211の下流側の端部から水封式逆火防止装置50に導入された水素ガスG1は、
図2に示すように、水封式逆火防止装置50に封入された水W13に排出される。排出された水素ガスG1は、気泡となって水封式逆火防止装置50に封入された水W13を通って上昇する。このとき、水素ガスG1は、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13を通ることにより、水W13により加湿される。
【0039】
水封式逆火防止装置50に封入されている水W13により加湿された水素ガスG1は、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13の水面Fから出て、第2水素供給ラインL212の上流側の端部から第2水素供給ラインL212に導入され、バーナ20に供給される。
【0040】
次に、温度調整部90について説明する。
温度調整部90は、
図2に示すように、ヒータ70と、逆火防止装置給水ラインL260と、給水弁V3と、排水ラインL270と、排水弁V4と、を備える。
【0041】
ヒータ70は、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13を加温する装置である。ヒータ70は、水封式逆火防止装置50の下端部に配置される。ヒータ70の起動及び停止は、後述する制御部60により制御される。
【0042】
逆火防止装置給水ラインL260は、水封式逆火防止装置50に水W21を供給するラインである。逆火防止装置給水ラインL260は、給水ラインL220(分岐ラインL221)とは別に、水封式逆火防止装置50に水W21を供給する。具体的には、逆火防止装置給水ラインL260は、給水予熱器30により加熱されていない水W21を水封式逆火防止装置50に供給する。これにより、逆火防止装置給水ラインL260は、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13よりも低い温度の水W21を水封式逆火防止装置50に供給する。
【0043】
給水弁V3は、逆火防止装置給水ラインL260に配置される。給水弁V3の開閉は、後述する制御部60により制御される。給水弁V3は、開閉により逆火防止装置給水ラインL260からの水W21の供給及び停止を切り換える。
【0044】
排水ラインL270は、水封式逆火防止装置50から水W22を排出するラインである。排水ラインL270は、水封式逆火防止装置50の下端部に接続される。
【0045】
排水弁V4は、排水ラインL270に配置される。排水弁V4の開閉は、後述する制御部60により制御される。排水弁V4は、開閉により、水封式逆火防止装置50からの水W21の排出及び停止を切り換える。
【0046】
以上の温度調整部90によれば、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13の温度を調整することにより、水素ガスG1の加湿量を調整する。水素ガスG1の加湿量は、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13の温度がより高い場合に、多くなる。一方、水素ガスG1の加湿量は、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13の温度が低い場合に、少なくなる。
【0047】
水封式逆火防止装置50に封入された水W13を加温する場合、ヒータ70が起動される。ヒータ70の起動により、水封式逆火防止装置50に封入された水W13の温度が上昇する。そして、ヒータ70が停止されることにより、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13の加温が終了する。
【0048】
一方、水封式逆火防止装置50に封入された水W13を冷却する場合、給水弁V3が開放されることにより、逆火防止装置給水ラインL260は、水封式逆火防止装置50に水W21を供給する。逆火防止装置給水ラインL260からの給水により、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13の温度が低下する。また、排水弁V4が適宜開放されることにより、排水ラインL270は、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13を排出する(水W22)。そして、給水弁V3及び排水弁V4が閉止されることにより、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13の冷却が終了する。
【0049】
次に、センサ部100について説明する。
センサ部100は、水封式逆火防止装置50に封入された水W13の状態を測定する。センサ部100は、温度センサ101と、水位センサ102と、を備える。
【0050】
温度センサ101は、水封式逆火防止装置50の内部における下部に配置される。具体的には、温度センサ101は、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13に沈められて配置される。温度センサ101は、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13の温度を測定する。
【0051】
水位センサ102は、水封式逆火防止装置50の内部に配置される。水位センサ102は、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13の水位(水封式逆火防止装置50の底面Bから水面Fまでの深さ)を測定する。
【0052】
次に、制御部60について説明する。
制御部60は、ヒータ70、給水弁V3、排水弁V4を電気的に制御する制御装置である。制御部60は、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13を加温する場合に、ヒータ70を起動する。また、制御部60は、加温を終了する場合に、ヒータ70を停止する。これにより、制御部60は、ヒータ70の動作を制御する。
【0053】
一方、制御部60は、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13を冷却する場合に、給水弁V3を開放する。制御部60は、排水弁V4を適宜開放及び閉止することにより、給水弁V3の開放に基づいて増加する水W13の水位を調整する。また、制御部60は、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13の冷却を停止する場合に、給水弁V3及び排水弁V4を閉止する。これにより、制御部60は、逆火防止装置給水ラインL260から水封式逆火防止装置50に供給される水W21を制御する。また、制御部60は、水素供給ラインL210に配置される燃料供給弁V1の開閉と、パージガスラインL250に配置される不活性ガス供給弁V2の開閉と、送風機40の起動及び停止と、電動弁V5の開閉と、放水弁V6の開閉と、を制御する。
【0054】
また、制御部60は、水封式逆火防止装置50に封入された水W13の異常を報知する。具体的には、制御部60は、水W13の状態の異常を検知した場合に、異常を報知する。例えば、制御部60は、温度センサ101によって測定された水W13の温度が所定の範囲から外れた場合に、異常を報知する。また、例えば、水位センサ102によって測定された水W13の水位が所定の範囲から外れた場合に、異常を報知する。
【0055】
次に、水素燃焼ボイラ1の動作を説明する。
まず、制御部60が燃料供給弁V1を制御することにより、燃料供給弁V1が開放される。水素ガスG1は、水素供給源(図示せず)から第1水素供給ラインL211(水素供給ラインL210)に供給される。水素ガスG1は、水封式逆火防止装置50及び第2水素供給ラインL212(水素供給ラインL210)を通り、バーナ20へ供給される。また、制御部60が送風機40を制御することにより、送風機40が起動される。空気A1は、送風機40の空気供給口から空気供給ラインL240に供給される。空気A1は、バーナ20へ供給される。
【0056】
缶体10に供給される水W11は、供給源(図示せず)から給水ラインL220に供給される。水W11は、給水予熱器30において燃焼ガスにより予熱された後、水封式逆火防止装置50を通り、下部ヘッダ14に供給される。また、制御部60が電動弁V5を制御することにより、電動弁V5の開度が制御される。予熱された水W11のうち、分岐ラインL221に導入された水W11は、電動弁V5の開度に基づいて流量(導入量)が調整されて、水封式逆火防止装置50に供給される。なお、制御部60は、水位センサ102によって測定された水W13の水位に異常上昇を検知した場合に、放水弁V6を開放する。
【0057】
バーナ20は、水素ガスG1に点火する。水素ガスG1は、燃焼室15において燃焼される。水素ガスG1の燃焼により、熱が生成される。水管12の内部の水W12は、生成された熱により加熱される。また、空気A1を用いた水素ガスG1の燃焼により、加熱された燃焼ガスが発生する。
【0058】
燃焼ガスは、給水予熱器30を通り、給水ラインL220を通る水W11を予熱(水W11と熱交換)する。水W11を予熱した燃焼ガスは、排気筒31から排気される。また、水管12の内部の水W12は、加熱されて蒸気SMになり、上部ヘッダ13を介して蒸気取出ラインL230に供給される。
【0059】
バーナ20から第2水素供給ラインL212(水素供給ラインL210)に逆火が発生した場合、逆火は、第2水素供給ラインL212の下流側の端部から第2水素供給ラインL212を通って水封式逆火防止装置50に達する。水封式逆火防止装置50に達した逆火は、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13によって消火される。従って、逆火は、水封式逆火防止装置50によって阻止され、第1水素供給ラインL211(第1水素供給ラインL211の下流側の端部)には伝播しない。
【0060】
水素燃焼ボイラ1が停止される場合、制御部60は、燃料供給弁V1を閉止する。燃料供給弁V1の閉止により、バーナ20への水素ガスG1の供給が停止される。燃料供給弁V1が閉止された後、制御部60は、不活性ガス供給弁V2を開放する。不活性ガス供給弁V2の開放により、不活性ガスG2は、不活性ガス供給源(図示せず)からパージガスラインL250に供給される。
【0061】
供給された不活性ガスG2は、パージガスラインL250と第1水素供給ラインL211(水素供給ラインL210)との接続部J1から第1水素供給ラインL211(水素供給ラインL210)に供給される。第1水素供給ラインL211に供給された不活性ガスG2は、水封式逆火防止装置50及び第2水素供給ラインL212を通り、バーナ20から噴出する。また、不活性ガスG2の一部は、接続部J1から燃料供給弁V1に向けて供給される。燃料供給弁V1に向けて供給された不活性ガスG2は、燃料供給弁V1において折り返して、水封式逆火防止装置50及び第2水素供給ラインL212を通り、バーナ20から噴出する。
【0062】
これにより、燃料供給弁V1よりも二次側の水素供給ラインL210が不活性ガスによりパージされ、燃料供給弁V1よりも二次側の水素供給ラインL210に残留する水素ガスG1は、バーナ20から噴出する。バーナ20から噴出した水素ガスG1は、燃焼室15及び給水予熱器30を通り、排気筒31から排出される。制御部60は、所定時間後(不活性ガスG2によるパージが十分に行われた時間の後)に、不活性ガス供給弁V2を閉止する。制御部60は、不活性ガス供給弁V2を閉止した後、送風機40を停止して、バーナ20への空気A1の供給を停止する。
【0063】
一方、水素燃焼ボイラ1が起動される場合、水素供給ラインL210に残留する不活性ガスG2は、燃料供給弁V1の開放に伴う水素ガスG1の供給により、水素供給ラインL210から押し出される。即ち、水素供給ラインL210に残留する不活性ガスG2は、バーナ20から噴出する。バーナ20から噴出した不活性ガスG2は、燃焼室15及び給水予熱器30を通り、排気筒31から排出される。
【0064】
以上説明した一実施形態の水素燃焼ボイラ1によれば、以下のような効果を奏する。
(1)水素燃焼ボイラ1を、バーナ20と、バーナ20に水素ガスG1を供給する水素供給ラインL210と、水素供給ラインL210に配置される水封式逆火防止装置50と、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13の温度を調整する温度調整部90と、を含んで構成した。これにより、水封式逆火防止装置50を通過する水素ガスG1を加湿できるとともに、封入されている水W13の温度を調整することで水素ガスG1の加湿量を調整できる。よって、水素ガスG1の加湿量を調整することで、バーナ20における水素ガスG1の燃焼温度を低下させてNOxの発生量を低減できる。その結果、水封式逆火防止装置50により逆火を防止できるとともに、NOx発生量を低減でき、また潜熱回収量を増加させられる。
【0065】
(2)給水ラインL220を、分岐ラインL221を含んで構成し、水封式逆火防止装置50を分岐ラインL221に配置した。これにより、水封式逆火防止装置50に給水する給水系統を、缶体10に給水する給水ラインL220と共通化することにより、給水ラインL220からの安定した給水を実現できる。
【0066】
(3)水素燃焼ボイラ1を、給水予熱器30を含んで構成し、水封式逆火防止装置50を、給水ラインL220における給水予熱器30よりも下流側(分岐ラインL221)に配置した。これにより、給水予熱器30において加熱された水を水封式逆火防止装置50に供給できるので、水素ガスG1の加湿量を増やすことができ、NOx量の低減効果を向上させられる。
【0067】
(4)温度調整部90を、水封式逆火防止装置50に封入されている水W13を加温するヒータ70と、逆火防止装置給水ラインL260と、給水弁V3と、を含んで構成し、制御部60に、封入されている水W13の温度を上げる場合にヒータ70を動作させ、封入されている水W13を冷却する場合に給水弁V3を開放して逆火防止装置給水ラインL260から水W21を水封式逆火防止装置50に供給させた。これにより、水封式逆火防止装置50に封入される水W13の温度を広い温度範囲で調整できるので、水素ガスG1への加湿量を好適に制御できる。
【0068】
(5)水素燃焼ボイラ1を、水素供給ラインL210に接続され、不活性ガスG2を供給するパージガスラインL250を含んで構成し、水封式逆火防止装置50を、水素供給ラインL210におけるパージガスラインL250との接続部J1よりも二次側に配置した。これにより、バーナ20から水素供給ラインL210に逆火現象が発生したとしても、水封式逆火防止装置50において消火される。よって、逆火現象に起因したパージガスラインL250の損傷を防止することができる。
【0069】
(6)水素燃焼ボイラ1を、水封式逆火防止装置50に封入された水W13の状態を検出するセンサ部100を含んで構成し、制御部60に、センサ部100によって検出された水W13の状態の異常が検知された場合に異常を報知させた。これにより、水封式逆火防止装置50に異常が発生した場合に早期に異常を知らせることができるので、水素燃焼ボイラ1の安全性を向上させられる。
【0070】
以上、本発明の水素燃焼ボイラの好ましい一実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0071】
例えば、上記実施形態において、水封式逆火防止装置50をバーナ20から所定距離離間した位置に、缶体10とは別体として配置したが、これに制限されない。例えば、水封式逆火防止装置を、バーナに近接して配置してもよく、また、水封式逆火防止装置を、缶体の一構成として構成してもよい。これにより、バーナで発生した逆火をよりバーナに近い場所で消火することができる。
また、バーナに近接して乾式の逆火防止装置を設け、更に上流に水封式逆火防止装置を設けてもよい。この場合も、水封式逆火防止装置は、缶体と別体として配置されてもよく、缶体と一体構成とされてもよい。
【0072】
また、上記実施形態において、制御部60は、水W13の状態の異常が検知された場合に、異常を報知するとした。制御部60は、例えば、発光部(図示せず)やスピーカ(図示せず)を用いて、光や音により異常を報知してよい。