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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-195424(P2018-195424A)
(43)【公開日】2018年12月6日
(54)【発明の名称】シール装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20181109BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20181109BHJP
【FI】
   H01M2/02 K
   H01M10/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-97268(P2017-97268)
(22)【出願日】2017年5月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】山口 祐介
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD13
5H011DD26
5H028AA07
5H028BB01
5H028BB05
5H028BB17
5H028CC02
(57)【要約】
【課題】熱によるワークへの悪影響をより確実に防止しつつ、パック製品のコンパクト化等を図ることが可能なシール装置を提供する。
【解決手段】シール装置は、ラミネートフィルム3でワークとしての電池素子2が密封されてなるパック製品としての電池の製造に用いられる。シール装置は、重ねられた状態のラミネートフィルム3を挟持可能な熱伝導部材40と、熱伝導部材40と接触することで、熱伝導部材40を加熱可能なヒータ部材とを備える。ヒータ部材によって加熱されていない状態の熱伝導部材40によりラミネートフィルム3を挟持し、その挟持状態を維持したまま、ヒータ部材を熱伝導部材40に接触させた状態において、熱伝導部材40を加熱する。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の熱溶着性樹脂層及び所定の金属層が積層されてなるラミネートフィルムで所定のワークが密封されてなるパック製品の製造に用いられ、重ねられた状態の前記ラミネートフィルムを加熱して前記熱溶着性樹脂層を溶融させた上で、溶融した前記熱溶着性樹脂層を冷却固化させることにより、前記ラミネートフィルムを溶着させるシール装置であって、
重ねられた状態の前記ラミネートフィルムを挟持可能な熱伝導部材と、
前記熱伝導部材と接触することで、前記熱伝導部材を加熱可能なヒータ部材とを備え、
前記ヒータ部材によって加熱されていない状態の前記熱伝導部材により前記ラミネートフィルムを挟持し、その挟持状態を維持したまま、前記ヒータ部材を前記熱伝導部材に接触させた状態において、前記熱伝導部材を加熱することを特徴とするシール装置。
【請求項2】
前記熱伝導部材のうち、前記ラミネートフィルムへの接触部位又は当該接触部位の近傍に位置する部位から前記ヒータ部材との接触部位又は当該接触部位の近傍に位置する部位にかけての部分が、超熱伝導体により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記熱伝導部材は、
前記超熱伝導体により構成された本体部と、
前記本体部に取着され、前記ラミネートフィルムとの接触部位を構成するカバー部とを備え、
前記カバー部によって、前記ラミネートフィルムに対し前記本体部が直接接触しないように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のシール装置。
【請求項4】
前記熱伝導部材と接触することで、前記熱伝導部材を冷却可能な冷却部材を備え、
前記ヒータ部材により前記熱伝導部材を加熱した後、前記挟持状態を維持したまま、前記冷却部材を前記熱伝導部材に接触させ、前記熱伝導部材を冷却することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項5】
前記熱伝導部材のうち前記ラミネートフィルムと接触した状態であるときに前記ワーク側に配置される側面に対し、所定の断熱層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のワークをラミネートフィルムにより密封する際に用いられるシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱溶着性樹脂層及び金属層を備えたラミネートフィルムによって、所定のワークを密封してなるパック製品が知られている。パック製品としては、例えば、扁平の薄型電池などを挙げることができ、このような電池では、ワークとして電極シートやセパレータシートが積層されてなる電池素子が用いられる。
【0003】
パック製品を製造する際には、2枚のラミネートフィルム又は折り返されたラミネートフィルムの間にワークを配置した上で、重ねられた状態のラミネートフィルムの端縁部分が加熱される。そして、熱溶着性樹脂層を溶融させた後、溶融した熱溶着性樹脂層を固化させることで、ラミネートフィルム同士が溶着され、パック製品が得られる。
【0004】
ラミネートフィルムを溶着するにあたっては、シール装置が利用される。シール装置としては、ラミネートフィルムを加熱するための加熱ヒータを備えたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。このようなシール装置では、高温度に保持した加熱ヒータによって所定の加圧条件でラミネートフィルムを挟み込み、ラミネートフィルムの端縁部分を熱溶着させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−225929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、パック製品をコンパクト化させたり、限られたサイズの中で電池容量を増大化させたりする等の観点から、ワーク側面部(ワークのうち、ラミネートフィルムの溶着部分側に位置する部位)とラミネートフィルムとの間に形成される隙間を極力小さくすることが好ましい。隙間を小さくするためには、ラミネートフィルムの溶着部分をワーク側面部に対し接近させる必要がある。そこで、ワーク側面部に対し加熱ヒータをできる限り接近させて配置した上で、当該加熱ヒータを移動させて、ラミネートフィルムを挟み込む手法が考えられる。
【0007】
しかしながら、この手法では、ラミネートフィルムを挟み込むべく、加熱ヒータを移動させている際に、ラミネートフィルムのうち、溶着後にワーク側面部と隣接した状態になる部位に対し加熱ヒータが接触してしまうおそれがある。そのため、ワーク側に配置されることとなる、本来溶融の不要な熱溶着性樹脂層が溶融されたり、加熱ヒータの熱がワークに伝わったりして、ワークに悪影響を与えてしまうおそれがある。
【0008】
これに対し、例えば、熱溶着を行う前に、ワーク側面部に対し所定の治具をできる限り接近させて配置した上で、当該治具によってラミネートフィルムを挟み込み、ラミネートフィルムを理想的な形状に予め仮成形しておくことが考えられる。しかし、この手法では、治具による挟み込みが解除された際に、ラミネートフィルムがスプリングバックしてしまい、ラミネートフィルムの形状が理想的な形状から変化してしまう。そのため、結局のところ、ワーク側面部からある程度離れた位置でラミネートフィルムを溶着せざるを得ず、前記隙間を小さくすることが困難である。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱によるワークへの悪影響をより確実に防止しつつ、パック製品のコンパクト化等を図ることが可能なシール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0011】
手段1.所定の熱溶着性樹脂層及び所定の金属層が積層されてなるラミネートフィルムで所定のワークが密封されてなるパック製品の製造に用いられ、重ねられた状態の前記ラミネートフィルムを加熱して前記熱溶着性樹脂層を溶融させた上で、溶融した前記熱溶着性樹脂層を冷却固化させることにより、前記ラミネートフィルムを溶着させるシール装置であって、
重ねられた状態の前記ラミネートフィルムを挟持可能な熱伝導部材と、
前記熱伝導部材と接触することで、前記熱伝導部材を加熱可能なヒータ部材とを備え、
前記ヒータ部材によって加熱されていない状態の前記熱伝導部材により前記ラミネートフィルムを挟持し、その挟持状態を維持したまま、前記ヒータ部材を前記熱伝導部材に接触させた状態において、前記熱伝導部材を加熱することを特徴とするシール装置。
【0012】
上記手段1によれば、ラミネートフィルムを溶着するにあたって、まず、ヒータ部材によって加熱されていない状態の熱伝導部材により、ラミネートフィルムが挟持される。従って、ラミネートフィルムを挟持すべく、熱伝導部材を移動させている際に、熱溶着性樹脂層が溶融したり、ヒータ部材の熱がワークに伝わったりするといった事態は生じない。それ故、熱によるワークへの悪影響をより確実に防止することができる。
【0013】
また、熱によるワークへの悪影響を考慮せずに挟持できることから、ラミネートフィルムにおける熱伝導部材で挟持される部位をワーク側面部に対し極力接近させることができる。そして、挟持状態が維持されたまま、熱伝導部材が加熱され、ラミネートフィルムが溶着される。従って、溶着後におけるラミネートフィルム及びワーク側面部間の隙間を非常に小さなものとすることができる。その結果、パック製品のコンパクト化などを効果的に図ることができる。
【0014】
手段2.前記熱伝導部材のうち、前記ラミネートフィルムへの接触部位又は当該接触部位の近傍に位置する部位から前記ヒータ部材との接触部位又は当該接触部位の近傍に位置する部位にかけての部分が、超熱伝導体により構成されていることを特徴とする手段1に記載のシール装置。
【0015】
尚、「超熱伝導体」としては、緻密なグラファイトや、グラファイト及び所定の金属(例えば、銅やアルミニウムなど)等が複合されてなる材料、アルミニウム合金に対しフィラーとしてカーボンナノチューブ等を配向して添加した材料などを挙げることができる。超熱伝導体は、一般的な熱伝導性に優れる金属(例えば、銅や銀など)よりも熱伝導性に優れるものである。
【0016】
上記手段2によれば、熱伝導部材のうち、ラミネートフィルムへの接触部位又はその近傍部位からヒータ部材との接触部位又はその近傍部位にかけての部分は、超熱伝導体により構成されている。従って、熱伝導部材とラミネートフィルムとの接触部位に対し、ヒータ部材からの熱を非常に速やかに伝えることができ、ラミネートフィルムを短時間で加熱することができる。その結果、ヒータ部材によって加熱されていない状態の熱伝導部材によりラミネートフィルムを挟持するという工程が存在したとしても、パック製品の製造に要する時間を十分に短縮することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0017】
手段3.前記熱伝導部材は、
前記超熱伝導体により構成された本体部と、
前記本体部に取着され、前記ラミネートフィルムとの接触部位を構成するカバー部とを備え、
前記カバー部によって、前記ラミネートフィルムに対し前記本体部が直接接触しないように構成されていることを特徴とする手段2に記載のシール装置。
【0018】
尚、「カバー部」は、例えば、比較的薄肉の金属板やセラミックス板などにより構成することができる。
【0019】
超熱伝導体がラミネートフィルムに対し直接接触するように構成した場合、超熱伝導体におけるラミネートフィルムとの接触部位に破損が生じやすくなってしまったり、超熱伝導体から生じた異物がラミネートフィルムに付着しやすくなってしまったりするおそれがある。
【0020】
この点、上記手段3によれば、ラミネートフィルムを溶着する際には、カバー部によって超熱伝導体とラミネートフィルムとが直接接触することはない。従って、超熱伝導体における破損やラミネートフィルムに対する異物の付着をより確実に防止することができる。これにより、装置の長寿命化を図ることができるとともに、製造されたパック製品の品質向上を図ることができる。
【0021】
手段4.前記熱伝導部材と接触することで、前記熱伝導部材を冷却可能な冷却部材を備え、
前記ヒータ部材により前記熱伝導部材を加熱した後、前記挟持状態を維持したまま、前記冷却部材を前記熱伝導部材に接触させ、前記熱伝導部材を冷却することを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のシール装置。
【0022】
熱溶着性樹脂層を溶融した後、熱伝導部材によるラミネートフィルムの挟持をすぐに解除してしまうと、熱溶着性樹脂層の固化が不十分であるため、溶着部分においてラミネートフィルムの剥がれやしわが生じてしまうおそれがある。そこで、このような不具合を防止すべく、熱溶着性樹脂層の溶融後、熱溶着性樹脂層が固化するまでの間、ラミネートフィルムをしばらく挟持し続けることが考えられるが、この場合には、パック製品の製造に要する時間が増大してしまうおそれがある。
【0023】
この点、上記手段4によれば、ラミネートフィルムを加熱した後、冷却部材によって、ラミネートフィルムを挟持した状態のままの熱伝導部材が冷却される。従って、溶融した熱溶着性樹脂層を急冷し、熱溶着性樹脂層を素早く固化させることができる。これにより、溶着部分においてラミネートフィルムの剥がれやしわが生じてしまうことをより確実に防止できる。また、熱溶着性樹脂層の急速固化によって、パック製品の製造に要する時間の更なる短縮化を図ることができる。特に上記手段2の構成を具備し、熱伝導部材に対するヒータ部材や冷却部材の接触部位が共通する場合には、冷却部材によって熱伝導部材をより効果的に急冷することができるため、ラミネートフィルムのより一層急速な溶着を図ることができる。
【0024】
手段5.前記熱伝導部材のうち前記ラミネートフィルムと接触した状態であるときに前記ワーク側に配置される側面に対し、所定の断熱層が取着されていることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載のシール装置。
【0025】
尚、「断熱層」は、例えば、耐熱性に優れる発泡性の樹脂(例えば、フッ素樹脂など)や断熱セラミックス等によって形成することができる。
【0026】
上記手段5によれば、熱伝導部材におけるワーク側に配置される側面に対し、断熱層が設けられている。これにより、熱伝導部材からワークに対する熱伝導を効果的に抑えることができる。その結果、ワークに対し熱による悪影響が及ぶことをより確実に防止でき、製造されたパック製品の品質向上を一層図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】電池の斜視図である。
図2】電池素子を密封する前における電池の分解斜視図である。
図3図1のJ−J線拡大断面模式図である。
図4】シール装置の構成を示すブロック図である。
図5】熱伝導部材などの構成を示す斜視図である。
図6】熱伝導部材などの構成を示す一部破断斜視図である。
図7】非加熱挟持工程における一過程を示す断面模式図である。
図8】非加熱挟持工程における一過程を示す断面模式図である。
図9】加熱工程の一過程を示す断面模式図である。
図10】加熱工程後を示す断面模式図である。
図11】冷却工程を示す断面模式図である。
図12】挟持解除工程を示す断面模式図である。
図13】別の実施形態における断熱層などを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1及び図2に示すように、パック製品としての携帯電話用のリチウムイオン電池1(以下、単に「電池1」と称す)は、ワークとしての電池素子2と当該電池素子2を密封するラミネートフィルム3とを備えている。尚、図1では、ラミネートフィルム3を実際よりも厚肉で示している。また、図2は、電池素子2を密封する前の状態である。図2では、ラミネートフィルム3並びに次述する電極シート2A,2C及びセパレータシート2B等を実際よりも厚肉とするとともに、各シート2A〜2Cをそれぞれ離間させ、かつ、各シート2A〜2Cの枚数を実際の枚数よりも少なくした状態で示している。
【0029】
電池素子2は、負電極シート2A、セパレータシート2B、正電極シート2C及びセパレータシート2Bがこの順序で繰り返し積み上げられることにより構成されている。
【0030】
負電極シート2A及び正電極シート2Cは、金属箔よりなる極箔本体の表裏両面に活物質が塗布されることにより構成されている。但し、極箔本体の一端縁部には、活物質は塗布されていない。負電極シート2Aは、例えば、銅からなる極箔本体に負極活物質(例えば、ケイ素等を含有する粒子)が塗布されてなる。正電極シート2Cは、例えば、アルミニウムからなる極箔本体に正極活物質(例えば、コバルト酸リチウム粒子等)が塗布されてなる。
【0031】
また、各負電極シート2Aの一端縁部からはそれぞれ負極リード4Aが延出するとともに、正電極シート2Cの一端縁部からはそれぞれ正極リード4Cが延出している。そして、各負極リード4Aは、負極端子5Aに接続され、各正極リード4Cは、正極端子5Cに接続されている。そして、負極端子5A及び正極端子5Cが、電池素子2を密封するラミネートフィルム3から外部に露出した状態となっている。
【0032】
ラミネートフィルム3は、電池1の外装を構成するものであり、折り返された上で、重ねられた端縁部分同士が溶着されることで、電池素子2を密封状態で収容している。本実施形態では、ラミネートフィルム3のうち、折り返し部分を除いた端縁部分が溶着される。
【0033】
ラミネートフィルム3は、図3図3は、図1のJ−J線拡大断面模式図であり、電池素子2などを簡略化した状態で示している)に示すように、所定の金属(例えば、アルミニウムなど)からなる薄肉の金属層3Aと、所定の熱溶着性樹脂からなる熱溶着性樹脂層3Bとが積層されてなる。熱溶着性樹脂層3Bを構成する樹脂は、熱溶着が可能なものであればよく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、これらの酸変性物、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル等、エチレン−酢酸ビニル共重合体などを使用可能である。勿論、金属層3Aの両面を熱溶着性樹脂層3Bで挟むようにしてラミネートフィルム3を構成することとしてもよい。
【0034】
次いで、ラミネートフィルム3で電池素子2を密封する際に用いられるシール装置10について説明する。シール装置10は、図4に示すように、ヒータ部材20と、冷却部材30と、熱伝導部材40とを備えている。
【0035】
ヒータ部材20は、図9及び図10に示すように、溶着対象となるラミネートフィルム3の上方及び下方にそれぞれ1つずつ配置されるようになっており、図示しない駆動手段によってX−Y方向(水平方向)及びZ方向(鉛直方向)に沿って移動可能とされている。ヒータ部材20は、図示しないヒータを内蔵しており、当該ヒータにより発熱可能となっている。ヒータ部材20は、X−Y方向に移動することで、熱伝導部材40の上下に位置する動作準備位置と、当該動作準備位置から外れた退避位置との間で移動可能となっている。また、ヒータ部材20は、動作準備位置に配置された状態でZ方向に移動することにより、熱伝導部材40と接触し、熱伝導部材40を加熱可能となっている。
【0036】
冷却部材30は、図11及び図12に示すように、ヒータ部材20と同様、溶着対象となるラミネートフィルム3の上方及び下方にそれぞれ1つずつ配置されるようになっている。冷却部材30は、図示しない駆動手段によってX−Y方向(水平方向)及びZ方向(鉛直方向)に沿って移動可能に構成されている。冷却部材30は、Z方向に移動することにより、熱伝導部材40と接触して熱伝導部材40を冷却する。尚、冷却部材30がZ方向に移動する際には、ヒータ部材20が退避位置に配置され、冷却部材30の移動を阻害しないようになっている。また、冷却部材30は、ヒータ部材20が動作準備位置に配置されるときに、これらヒータ部材20の移動予定経路から外れた位置に配置されるようになっており、ヒータ部材20の移動を阻害しないようになっている。
【0037】
尚、ヒータ部材20及び冷却部材30を、それぞれの配置位置が入れ替わるように移動可能としてもよい。また、ヒータ部材20及び冷却部材30を並べた状態で設け、溶着対象のラミネートフィルム3と熱伝導部材40とがヒータ部材20及び冷却部材30に対し順次搬送されるように構成してもよい。
【0038】
熱伝導部材40は、図7及び図8に示すように、溶着対象となるラミネートフィルム3の上方及び下方にそれぞれ1つずつ配置されるようになっている。熱伝導部材40は、ラミネートフィルム3を溶着する際にラミネートフィルム3を挟持する部材である。熱伝導部材40は、図示しない駆動手段によってX−Y方向(水平方向)及びZ方向(鉛直方向)に沿って移動可能に構成されており、X−Y方向に移動することで、ラミネートフィルム3の被挟持部位、すなわち、ラミネートフィルム3の溶着部位を変更可能とされている。尚、熱伝導部材40の位置変更に合わせて、ヒータ部材20及び冷却部材30の配置位置も適宜変更される。
【0039】
熱伝導部材40は、図5及び図6図6は、後述する保護部51を一部破断した斜視図である)に示すように、本体部41と、カバー部42とを備えている。
【0040】
本体部41は、主として、ヒータ部材20及び冷却部材30と、カバー部42との間で熱伝導を行うものである。本体部41は、超熱伝導体によって形成されている。超熱伝導体としては、緻密なグラファイトや、グラファイト及び所定の金属(例えば、銅やアルミニウムなど)等が複合されてなる材料、アルミニウム合金に対しフィラーとしてカーボンナノチューブ等を配向して添加した材料などを挙げることができる。本実施形態では、超熱伝導体として、グラファイト及び所定の金属が複合されてなる材料が用いられている。
【0041】
また、本体部41は、平板部41A及び柱状部41Bを備えている。平板部41Aは、細長い平板状をなしており、ラミネートフィルム3の溶着部位に対応する形状をなしている。
【0042】
柱状部41Bは、円柱状をなしており、平板部41Aにおけるカバー部42とは反対側に位置する面の中心から突出している。柱状部41Bは、ヒータ部材20や冷却部材30と接触することで、ヒータ部材20や冷却部材30との間で熱交換を行う部位である。本実施形態では、柱状部41Bの先端面に対しヒータ部材20や冷却部材30が接触するようになっている。尚、柱状部41Bを複数設けてもよい。
【0043】
また、柱状部41Bにおけるグラファイトの配向方向は、柱状部41Bの軸方向と平行又はほぼ平行な方向とされており、平板部41Aにおけるグラファイトの配向方向は、柱状部41Bの軸方向と直交又はほぼ直交する方向とされている。本実施形態の超熱伝導体は、特にグラファイトの配向方向に沿って熱が効率よく伝導されるようになっている。従って、ヒータ部材20や冷却部材30と平板部41Aとの間における、柱状部41Bを介した速やかな熱伝導が可能となっている。さらに、平板部41Aでは、その幅方向及びその長さ方向に沿った速やかな熱伝導が可能となっており、柱状部41Bから受けた熱を平板部41Aの全体に迅速に広げたり、平板部41Aの熱を柱状部41Bへと速やかに引いたりすることが可能である。
【0044】
カバー部42は、ラミネートフィルム3を挟持する際にラミネートフィルム3と接触する部位であり、本体部41の破損や摩耗を防止するために設けられている。カバー部42は、熱や摩耗に対する耐久性に優れ、かつ、良好な熱伝導性を有する材料(例えば、ステンレスやアルミニウム等の所定の金属やセラミックスなど)により形成された薄肉板(膜)であり、平板部41Aにおける柱状部41Bとは反対側に位置する面を覆っている。カバー部42は、例えば拡散接合によって、本体部41へと接合されている。尚、図5等では、カバー部42を実際よりも厚肉で示しているが、実際のカバー部42は薄肉(例えば、1.0mm未満であり、本実施形態では0.1mm以下)であり、速やかな温度変化が可能となっている。
【0045】
加えて、上記のように構成された熱伝導部材40に対し、所定の保護部51が取着されている。保護部51は、熱や摩耗に対する耐久性が優れる材料(例えば、ステンレスやアルミニウム等の所定の金属など)により形成されている。保護部51は、柱状部41Bの高さと同一の厚さを有し、かつ、平面形状が平板部41Aに対応する形状とされた直方体状をなしている。
【0046】
また、保護部51は、柱状部41Bを通すための貫通孔51Aを備えている。そして、保護部51は、貫通孔51Aに対し柱状部41Bが挿通され、かつ、平板部41Aに積層された状態で、熱伝導部材40に取着されている。尚、柱状部41Bの先端面、つまり、ヒータ部材20や冷却部材30と接触する部位は、保護部51の表面に露出した状態となっており、本実施形態では、柱状部41Bの先端面と保護部51の表面とが面一となっている。保護部51によって、ヒータ部材20などと接触する柱状部41Bの破損防止が図られている。
【0047】
次いで、シール装置10を用いたラミネートフィルム3の溶着工程について説明する。ラミネートフィルム3の溶着工程は、非加熱挟持工程と、加熱工程と、冷却工程と、挟持解除工程とを含む。尚、本実施形態では、ラミネートフィルム3の溶着工程に先立って、折り返されたラミネートフィルム3の間に電池素子2が予め配置された状態となっている。
【0048】
非加熱挟持工程では、ヒータ部材20によって加熱されていない状態の熱伝導部材40により、重ねられた状態のラミネートフィルム3の端縁部分を挟持する。より詳しくは、図7に示すように、一対の熱伝導部材40を、電池素子2の側面部2Sに対しできる限り接近させた状態で、ラミネートフィルム3を挟むようにして配置する。例えば、一対の熱伝導部材40を、側面部2Sから1枚〜数枚分のラミネートフィルム3の厚さだけ離した位置に配置する。尚、図7等では、電池素子2を簡略化した状態とし、また、ラミネートフィルム3を実際よりも厚肉とした状態で示している。
【0049】
次いで、図8に示すように、一対の熱伝導部材40を両者が接近する方向(Z方向)に移動させ、両熱伝導部材40によってラミネートフィルム3を挟み込む。このとき、熱伝導部材40は未だ加熱されていない(常温である)ので、熱伝導部材40によって、ラミネートフィルム3における側面部2Sに対し非常に近接した部位を挟持することができる(このように挟持したとしても電池素子2に悪影響が及ばない)。
【0050】
次に、加熱工程において、図9に示すように、熱伝導部材40によってラミネートフィルム3を挟持したまま、前記動作準備位置に位置する、予め加熱された状態の一対のヒータ部材20を熱伝導部材40に対し接近移動させる。そして、ヒータ部材20を柱状部41Bの先端面に接触させるとともに、予め設定された所定時間だけ接触状態を維持する。これにより、熱伝導部材40を加熱し、ラミネートフィルム3の熱溶着性樹脂層3Bを溶融させる。
【0051】
所定時間の経過後、図10に示すように、ヒータ部材20を前記動作準備位置に戻すことで、熱伝導部材40からヒータ部材20を離間させ、熱伝導部材40の加熱を停止する。その後、ヒータ部材20を前記退避位置に移動させる。一方、熱伝導部材40は、ラミネートフィルム3を挟持した状態のままで維持する。
【0052】
次いで、冷却工程において、図11に示すように、冷却部材30を熱伝導部材40に対し接近移動させ、冷却部材30を柱状部41Bの先端面に接触させる。そして、熱伝導部材40(柱状部41B)に対し冷却部材30を予め設定された所定時間だけ接触させ続けることで、熱伝導部材40を冷却し、熱溶着性樹脂層3Bを急速に固化させる。
【0053】
次に、挟持解除工程において、図12に示すように、冷却部材30を元の配置位置へと移動させるとともに、熱伝導部材40をラミネートフィルム3から離間する方向に移動させ、ラミネートフィルム3の挟持を解除する。これにより、ラミネートフィルム3の溶着が完了する。尚、冷却部材30は、熱伝導部材40によるラミネートフィルム3の挟持解除よりも先に移動させてもよいし、熱伝導部材40とともに移動させてもよい。
【0054】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ラミネートフィルム3を溶着するにあたって、まず、ヒータ部材20によって加熱されていない状態の熱伝導部材40により、ラミネートフィルム3が挟持される。従って、ラミネートフィルム3を挟持すべく、熱伝導部材40を移動させている際に、熱溶着性樹脂層3Bが溶融したり、ヒータ部材20の熱が電池素子2に伝わったりするといった事態は生じない。それ故、熱による電池素子2への悪影響をより確実に防止することができる。
【0055】
また、熱による電池素子2への悪影響を考慮せずに挟持できることから、ラミネートフィルム3における熱伝導部材40で挟持される部位、つまり、ラミネートフィルム3の溶着部位を側面部2Sに対し極力接近させることができる。従って、溶着後におけるラミネートフィルム3及び側面部2S間の隙間を非常に小さなものとすることができる。その結果、電池1のコンパクト化などを効果的に図ることができる。
【0056】
さらに、熱伝導部材40のうち、ラミネートフィルム3への接触部位の近傍部位(本実施形態では、接触部位から0.1mm以下だけ離れた部位)からヒータ部材20との接触部位にかけての部分は、本体部41で構成されており、本体部41は、超熱伝導体により構成されている。従って、熱伝導部材40とラミネートフィルム3との接触部位に対し、ヒータ部材20からの熱を非常に速やかに伝えることができ、ラミネートフィルム3を短時間で加熱することができる。その結果、加熱されていない状態の熱伝導部材40によりラミネートフィルム3を挟持するという工程が存在したとしても、電池1の製造に要する時間を十分に短縮することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0057】
加えて、ラミネートフィルム3を溶着する際には、カバー部42によって本体部41(超熱伝導体)とラミネートフィルム3とが直接接触することはない。従って、本体部41(超熱伝導体)における破損やラミネートフィルム3に対する異物の付着をより確実に防止することができる。これにより、装置の長寿命化を図ることができるとともに、製造された電池1の品質向上を図ることができる。
【0058】
さらに、ラミネートフィルム3を加熱した後、冷却部材30によって、ラミネートフィルム3を挟持した状態のままの熱伝導部材40が冷却される。従って、溶融した熱溶着性樹脂層3Bを急冷し、熱溶着性樹脂層3Bを素早く固化させることができる。これにより、溶着部分においてラミネートフィルム3の剥がれやしわが生じてしまうことをより確実に防止できる。また、熱溶着性樹脂層3Bの急速固化によって、電池1の製造に要する時間の更なる短縮化を図ることができる。
【0059】
併せて、本実施形態では、超熱伝導体からなる本体部41によって、熱伝導部材40(特にカバー部42)から冷却部材30へと効果的に熱を引くことができ、熱伝導部材40をより急速に冷却することができる。これにより、電池1の製造に要する時間をより一層短縮することができる。
【0060】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0061】
(a)図13に示すように、熱伝導部材40のうちラミネートフィルム3と接触した状態であるときに電池素子2側に配置される側面に対し、所定の断熱層52を取着することとしてもよい。この場合には、熱伝導部材40から電池素子2に対する熱伝導を効果的に抑えることができる。その結果、電池素子2に対し熱による悪影響が及ぶことをより確実に防止でき、製造された電池1の品質向上を一層図ることができる。尚、断熱層52は、例えば、耐熱性に優れる発泡性の樹脂(例えば、フッ素樹脂など)や断熱セラミックス等によって形成することができる。
【0062】
(b)上記実施形態では、加熱工程において、予め加熱されたヒータ部材20を熱伝導部材40へと接触させているが、熱伝導部材40に対しヒータ部材20を接触した後、ヒータ部材20を加熱することとしてもよい。
【0063】
(c)上記実施形態では、本体部41(柱状部41B)がヒータ部材20や冷却部材30へと直接接触するように構成されているが、柱状部41Bの先端面を覆う薄肉(例えば、1.0mm未満)の金属板やセラミックス板等からなるカバーを設け、当該カバーを介して本体部41とヒータ部材20等とが間接的に接触するように構成してもよい。この場合には、本体部41(柱状部41B)の破損や摩耗防止を図ることができ、装置の長寿命化を一層図ることができる。尚、熱伝導部材40におけるラミネートフィルム3と接触する部位において温度を迅速に変化可能とするために、熱伝導部材40のうち、ラミネートフィルム3との接触部位の近傍に位置する部位からヒータ部材20等との接触部位の近傍に位置する部位にかけての部分を、超熱伝導体により構成することが好ましい。
【0064】
また、カバー部42を省略し、本体部41(超熱伝導体)がラミネートフィルム3及びヒータ部材20等へと直接接触するように構成してもよい。この場合には、熱伝導部材40のうち、ラミネートフィルム3との接触部位からヒータ部材20等との接触部位にかけての部分を超熱伝導体により構成することで、熱伝導部材40におけるラミネートフィルム3と接触する部位の温度変化が非常に速やかに行われることとなり、生産性を一層向上させることができる。
【0065】
さらに、柱状部41Bの先端面を覆うカバーを設ける一方、カバー部42を省略してもよい。この場合、熱伝導部材40におけるラミネートフィルム3と接触する部位の速やかな温度変化を実現すべく、熱伝導部材40のうち、ラミネートフィルム3との接触部位からヒータ部材20等との接触部位の近傍に位置する部位にかけての部分を超熱伝導体によって構成することが好ましい。
【0066】
(d)上記実施形態では、1枚のラミネートフィルム3を折り返した上で、ラミネートフィルム3における折り返し部分を除いた端縁部分が溶着されるように構成されている。これに対し、2枚のラミネートフィルムによって電池素子2を挟み込んだ上で、両ラミネートフィルム3の端縁部分の全周を溶着するように構成してもよい。
【0067】
(e)上記実施形態において、ラミネートフィルム3は平坦なシートとされているが、ラミネートフィルムとして、電池素子2を収容するための凹部が、例えば深絞り加工などによって予め形成されたものを用いてもよい。
【0068】
(f)上記実施形態では、ワークとしてリチウムイオン電池の電池素子2を挙げているが、ラミネートフィルム3によって密封されるものである限り、ワークの種別、形状等については特に限定されるものではない。例えば、ワークは、リチウムイオン電池以外の電池素子であってもよいし、食品や電子部品などであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…電池(パック製品)、2…電池素子(ワーク)、2S…側面部、3…ラミネートフィルム、3A…金属層、3B…熱溶着性樹脂層、10…シール装置、20…ヒータ部材、30…冷却部材、40…熱伝導部材、41…本体部、42…カバー部、52…断熱層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13