虚像70の奥行き方向Zの表示距離95を調整可能なヘッドアップディスプレイ装置において、運転者の左右方向Xを軸として水平方向に対して傾いて配置される平面状のベース虚像110上に地物虚像120,130を描画した地図虚像100を表示し、第1の指示虚像201を、地図虚像100上の特定の位置Tに接近するように鉛直方向Zの上側から下側に向けて徐々に表示位置を制御し、地図虚像100上の特定の位置202の周辺に、第1の指示虚像201の接近に伴い拡大する第2の指示虚像202を表示する。
車両に搭載され、運転者の前方に、地図虚像(100)と、前記地図虚像(100)上の所定の指示位置(T)を指示する第1の指示虚像(201)と、を含む立体的な虚像(70)を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記虚像(70)を表示可能な表示光(50)を被投影部に向けて投射する投射部(40)と、
地図データを取得する地図データ取得部(20)と、
前記地図データを用いて、少なくとも前記運転者の左右方向を軸として水平方向に対して傾いて配置される平面状のベース虚像(110)上に地物虚像(120,130)を描画した前記地図虚像(100)を生成する地図虚像制御部(31)と、
前記第1の指示虚像(201)の表示を制御する指示虚像制御部(32)と、を備え、
前記指示虚像制御部(32)は、前記第1の指示虚像(201)が前記指示位置(T)に徐々に接近するように少なくとも鉛直方向の上側から下側に向けて表示位置を制御し、前記第1の指示虚像(201)が前記指示位置(T)に近付くと、前記地図虚像(100)上の前記指示位置(T)の周辺に第2の指示虚像(202)を表示し、前記第1の指示虚像(201)が前記指示位置(T)に近付くにつれて、前記第2の指示虚像(202)を拡大させる、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
前記指示虚像制御部(32)は、前記指示位置(T)に接近させる際、前記第1の指示虚像(201)を鉛直方向の上側から下側に向けて徐々に表示位置を制御しつつ、奥行き方向の近傍側から遠方側に向けて徐々に表示位置を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、HUD装置で表示する虚像は、実景を背景として表示されるため、車内に配置されたディスプレイに表示される画像と比べて、背景に対する画像のコントラストが低くなりやすい。そのため、車内に設けられたナビゲーションシステム同様に、HUD装置でも、地図画像上の特定の位置(指示位置)を強調するために、地図画像上の指示位置を強調する指示画像を虚像で表示した場合、指示画像及び指示画像で指示された地図画像上の指示位置が認識しづらいといった問題があった。
【0005】
本発明の1つの目的は、虚像で表示された地図画像上の特定の位置を認識しやすい表示をすることができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明のヘッドアップディスプレイ装置は、虚像の奥行き方向の表示距離を調整可能なヘッドアップディスプレイ装置において、運転者の左右方向を軸として水平方向に対して傾いて配置される平面状のベース虚像上に地物虚像を描画した地図虚像を表示し、第1の指示虚像を、地図虚像上の特定の位置に接近するように鉛直方向の上側から下側に向けて徐々に表示位置を制御し、地図虚像上の特定の位置の周辺に、第1の指示虚像の接近に伴い拡大する第2の指示虚像を表示することで、地図画像上の特定の位置を認識しやすくする、ことをその要旨とする。
【0007】
本発明の第1の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置は、
車両に搭載され、運転者の前方に、地図虚像(100)と、前記地図虚像(100)上の所定の指示位置(T)を指示する第1の指示虚像(201)と、を含む立体的な虚像(70)を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記虚像(70)を表示可能な表示光(50)を被投影部に向けて投射する投射部(40)と、
地図データを取得する地図データ取得部(20)と、
前記地図データを用いて、少なくとも前記運転者の左右方向を軸として水平方向に対して傾いて配置される平面状のベース虚像(110)上に地物虚像(120,130)を描画した前記地図虚像(100)を生成する地図虚像制御部(31)と、
前記第1の指示虚像(201)の表示を制御する指示虚像制御部(32)と、を備え、
前記指示虚像制御部(32)は、前記第1の指示虚像(201)が前記指示位置(T)に徐々に接近するように少なくとも鉛直方向の上側から下側に向けて表示位置を制御し、前記第1の指示虚像(201)が前記指示位置(T)に近付くと、前記地図虚像(100)上の前記指示位置(T)の周辺に第2の指示虚像(202)を表示し、前記第1の指示虚像(201)が前記指示位置(T)に近付くにつれて、前記第2の指示虚像(202)を拡大させる、ものである。
【0008】
このように構成されたヘッドアップディスプレイ装置によれば、第1の指示虚像の移動に伴い視認者の視覚的注意を地図虚像に向けることができ、さらに、第1の指示虚像の接近に伴う第2の指示虚像の拡大により地図上の特定位置を認識しやすく表示することができる。また、第1の指示虚像を鉛直方向の上側から下側に向けて表示位置を徐々に変化させる態様とすることで、視認者は、第1の指示虚像が移動中であっても、概ね地図上のどの辺りを指示するか推定しやすくなり、視覚的注意が散漫になりにくく、結果として視認者の視覚的注意を地図上の特定位置に向かせやすくすることができる。
【0009】
また、第1の態様に従属する第2の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置のように、前記指示虚像制御部(32)は、前記指示位置(T)に接近させる際、前記第1の指示虚像(201)を鉛直方向の上側から下側に向けて徐々に表示位置を制御しつつ、奥行き方向の近傍側から遠方側に向けて徐々に表示位置を制御してもよい。
【0010】
この態様によれば、第1の指示虚像の奥行き方向の表示位置も徐々に地図虚像の特定位置に近づくので、目の焦点を合わせながら第1の指示虚像を視線で追うことで、立体的に表現された地図虚像上の特定の位置(指示位置)にも目の焦点が合っていくため、地図虚像上の特定の位置を認識させやすくすることができる。
【0011】
また、第2の態様に従属する第3の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置のように、前記指示虚像制御部(32)は、前記指示位置(T)に接近させる際、奥行き方向の近傍側から遠方側に向けて徐々に表示位置を減速させながら制御してもよい。
【0012】
この態様によれば、第1の指示虚像が指示位置に接近する第1の指示虚像の移動の後半では、第1の指示虚像の奥行き方向の単位時間における移動量が少なくなるため、第1の指示虚像を視認する視認者の目の焦点の移動量も少なくすることができる。すなわち、第1の指示虚像が指示位置に近付く第1の指示虚像の移動の後半では、第1の指示虚像や指示位置への目の焦点の移動が少なくて済むため、指示位置を視認者に認識させやすくすることができる。
【0013】
また、第1乃至3の態様に従属する第4の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置のように、前記指示虚像制御部(32)は、前記第1の指示虚像(201)が所定の位置(A1)に到達するまで、前記第2の指示虚像(202)を表示させないようにしてもよい。
【0014】
この態様によれば、第1の指示虚像が地図虚像上の特定の位置に近付いてから第2の指示虚像が表示される。言い換えると、第1指示画像を追う視認者の視線が地図虚像上の特定の位置に近付いてから第2の指示虚像が表示されるため、第2の指示虚像に視覚的注意を向けやすくなり、延いては、地図虚像上の特定の位置を認識させやすくすることができる。
【0015】
また、第1乃至4の態様に従属する第5の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置のように、前記指示虚像制御部(32)は、前記指示位置(T)に接近させる際、前記第1の指示虚像(201)を徐々に縮小させながら表示位置を制御してもよい。
【0016】
一般的に、視認していた画像が縮小すると、視覚的注意は視認していた画像を中心により狭い範囲に集中されやすい。したがって、第4の態様によれば、第1の指示虚像が指示位置に接近するのに伴い縮小することで、視認者の視覚的注意は視認していた第1の指示虚像を中心に集中するため、第1の指示虚像に接近した地図虚像上の指示位置を認識しやすくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に説明する実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられ、当業者は、本発明が以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0019】
図1は、本発明に係るヘッドアップディスプレイ(以下では、HUDとも呼ぶ)装置10の実施形態に対応する構成と、このHUD装置10が表示する虚像70を説明する図である。なお、
図1では、車両1の前後方向をZ方向(前方向がZ正方向)とし、車両1の左右方向(車両1の幅方向)に沿う方向をX方向(左方向がX正方向)とし、上下方向をY方向(上方向がY正方向)とする。
【0020】
図1において、本実施形態のHUD装置10は、通信インターフェース5に通信可能に連結されている。通信インターフェース5は、例えば、USBポート、シリアルポート、パラレルポート、OBDII、及び/又は他の任意の適切な有線通信ポートなどの有線通信機能を含むことができる。車両1からのデータケーブルは、HUD装置10に情報を伝達するために、通信インターフェース5を介して、HUD装置10の情報取得部20に連結される。なお、他の実施形態では、通信インターフェース5は、例えば、Bluetooth(登録商標)通信プロトコル、IEEE802.11プロトコル、IEEE802.16プロトコル、共有無線アクセスプロトコル、ワイヤレスUSBプロトコル、及び/又は他の任意の適切な無線電信技術を用いた無線通信インターフェースを含むことができる。
【0021】
[HUD装置10の構成]
HUD装置10は、通信インターフェース5から各種情報を取得する入力インターフェースである情報取得部20と、表示制御部30と、表示光50を投射する投射部40と、を有する。例えば、通信インターフェース5には、地図データベース6と、車両1の位置情報を取得する位置情報取得部7と、経路案内するナビゲーションシステム8と、スマートフォン等の携帯端末9と、車両1に設けられた車両ECU、車載カメラ、センサ、他の車載機器、他車両、路上の通信インフラ、などが情報を授受可能に接続され、HUD装置10は、通信インターフェース5に接続された情報取得部20から各種情報を入力し、表示する虚像70に反映する。なお、情報取得部20は、本発明の地図データを外部から取得可能な地図データ取得部としての機能を有していてもよい。
【0022】
本実施形態のHUD装置10は、車両1の内部に設けられ、一部の光を透過し、一部の光を反射する被投影部2に向けて、表示光50を投射する。この被投影部2は、車両1のフロントウインドシールドの一部で構成されてもよく、コンバイナなどの専用部品であってもよい。視認者(例えば、車両1の運転者)の視点3を置くと想定される領域に、被投影部2に反射された表示光50によりアイボックス4を形成する。運転者は、視点3をこのアイボックス4内に配置することでHUD装置10が表示する虚像70の全体を視認することができ、視点3がアイボックス4から外れると虚像70の一部が視認できなくなる(視認しづらくなる)。本実施形態のHUD装置10は、表示領域90内で、X方向、Y方向、Z方向に虚像70が表示される位置を調整することができる。すなわち、HUD装置10は、特にアイボックス4から虚像70が結像されるまでの間のZ軸方向の距離である表示距離95を調整することができる。
【0023】
地図データベース6は、地図情報を備えたデータベースである。地図データベース6は、例えば、車両1に搭載されたHDD(Hard Disk Drive)内に記憶される。地図情報には、例えば、道路や建物等の地物の位置情報、形状情報等が含まれる。なお、地図データベース6は、通信インターフェース5と通信可能な情報処理センター等の施設のコンピュータに記憶されてもよい。
【0024】
位置情報取得部7は、現時点の車両1の位置を表す位置情報である現在地を取得する。位置情報取得部7は、複数のGNSS衛星からの信号を受信し、それらの信号に基づいて現在地を取得する。
【0025】
[虚像70の説明]
図1の左図を用いて、本実施形態のHUD装置10が表示する虚像70の例を説明する。
図1に示す虚像70は、例えば、奥行き感を表現しない2D虚像の第1の虚像71と、奥行き感を表現する3D虚像の第2の虚像72,第3の虚像73と、を有する。第1の虚像71の一例は、
図1の表示距離96のXY平面に平面的に結像され、運転者に遠近感を感じさせない2D虚像である。このような第1の虚像71の一例によれば、概ね目の焦点を調整することなく表示全体を明確に認識することができる。3D虚像の一例である第2の虚像72は、
図1の表示距離98のXY平面上に一端があり、表示距離98より運転者から離れた表示距離99のXY平面上に他端があり、平面的に結像され、運転者に奥行き感を感じさせる。このような第2の虚像72は、運転者の目の焦点の調整により表示全体が明確に認識されるため、立体的な印象を与えることができる。また、3D虚像の別例である第3の虚像73は、
図1の表示距離97のXY平面上に一端があり、表示距離97より運転者から離れた表示距離98のXY平面上に他端があり、体積を有するような立体的なオブジェクトとして結像され、運転者に立体感を感じさせる。
【0026】
表示制御部30は、地図虚像制御部31と、指示虚像制御部32と、駆動部33と、を有する。表示制御部30は、情報取得部20から取得した情報に基づいて、表示データを生成し、この表示データに基づいて投射部40を駆動することで虚像70を表示する。本実施形態における表示制御部30では、地図虚像制御部31が後述する地図虚像100の表示データを生成し、指示虚像制御部32が後述する指示虚像200の表示データを生成し、駆動部33が表示データに基づき投射部40を駆動する。
【0027】
地図虚像制御部31は、位置情報取得部7により特定された現時点で車両1が所在する現在位置に基づいて地図データベース6を参照し、その現在位置が含まれる地図データを情報取得部(地図データ取得部)20から取得し、描画を行うことで、その周辺の地図画像を生成する。地図虚像制御部31は、生成した地図画像を表示データとして投射部40に出力する。なお、地図虚像制御部31は、地図画像を、情報取得部20を介して、ナビゲーションシステム8や携帯端末9から取得し、取得した地図画像を適切なデータ形式に変換した後、表示データとして投射部40に出力してもよい。
【0028】
指示虚像制御部32は、地図虚像制御部31が生成する地図虚像100上の特定の位置(後述する指示位置T)を指示する第1の指示虚像201と、第2の指示虚像202とを制御するものである。指示虚像制御部32は、図示しない操作部による運転者の操作に基づき適宜設定された興味対象場所(POI:Point of Interest)に関する情報(POI情報)を、情報取得部20を介して取得し、このPOI情報に基づく地図虚像100上の地点を指示位置Tに指定し、指示位置Tを指示する第1の指示虚像201と、第2の指示虚像202とを制御する表示データを生成し、投射部40に出力する。
【0029】
駆動部33は、地図虚像制御部31及び指示虚像制御部32が生成した表示データに基づき、投射部40を駆動する。前記表示データは、地図虚像100及び指示虚像200を、3次元の表示領域90に表示させるべく、3次元の表示位置データを含む。
【0030】
[投射部40の構成例]
次に、
図2を参照する。
図2は、
図1の投射部40の構成例を示す図である。本実施形態の投射部40は、立体画像表示部41と、リレー光学部42と、から構成され、立体画像表示部41が第1の3D実像43を形成し、リレー光学部42が第1の3D実像43を拡大して第2の3D実像44を結像し、この第2の3D実像44の表示光50を外部の被投影部2に向けて投射する。
【0031】
図2の立体画像表示部41は、3次元に形成される第1の3D実像43を生成するものであり、画像投射部45と、振動スクリーン46と、を有する。
【0032】
画像投射部45は、表示制御部30から入力される表示データに基づいてその表示データに含まれる映像を表す映像光(図示しない)を出射するプロジェクタであり、表示データに含まれる表示位置データに応じて、前記映像を表示するタイミングを調整し、振動スクリーン46の振動位置に同期して投影する前記映像を高速に切り替える。言い換えると、画像投射部45は、前記表示位置データに基づき、振動スクリーン46の振動位置に適した前記映像を振動スクリーン46に投影する。
【0033】
振動スクリーン46は、例えば、画像投射部45の映像を一定の角度範囲に拡散させるポリカーボネート製の拡散フィルムであり、画像投射部45からの前記映像光を受けて実像を結像し、画像投射部45が出射する前記映像光の光軸に沿って往復運動する。振動スクリーン46は、連続的または断続的に振動位置を示す信号を画像投射部45に送信することが可能である。画像投射部45は、前記振動位置を示す信号を基準に、表示データに含まれる表示位置データに応じた位置に虚像70が視認されるように、前記映像を表示するタイミングを調整してもよい。
【0034】
本実施形態では、表示制御部30は、スクリーン振動方向における振動スクリーン46の振幅を一定に保ちつつ、虚像70の奥行き方向Zの長さを調整する。すなわち、表示制御部30は、振動スクリーン46がその振幅のうち第1の範囲に位置している期間においては表示光50を出射せず、振動スクリーン46がその振幅のうち第2の範囲に位置している期間においては表示光50を出射する。第1の範囲及び第2の範囲の位置及び比率が調整されることで虚像70の奥行き方向Zにおける位置及び長さが調整される。具体的には、振動スクリーン46は、60[Hz]以上の周波数で振動し、この周期1/60[sec]内で、画像投射部45が複数フレームの異なる映像を投射することで各振動位置に複数フレームの異なる映像(実像)を結像する。すなわち、本実施形態では、複数フレームの実像が振動スクリーン46の振動方向で重なることで第1の3D実像43が生成される。なお、表示制御部30は、振動スクリーン46の振幅を変化させることで、虚像70の奥行き方向Zの長さを調整してもよい。
【0035】
図2のリレー光学部42は、立体画像表示部41が生成した第1の3D実像43の光を受け、この第1の3D実像43を拡大した第2の3D実像44を中間で結像した後、この第2の3D実像44の光である表示光50を被投影部2に向けて投射するものである。リレー光学部42は、例えば、立体画像表示部41が生成した第1の3D実像43の光を受光するレンズ群からなる第1のリレー光学部47と、第1のリレー光学部47を通った光を反射し、第1のリレー光学部47の光学的パワーと協働して第1の3D実像43を拡大した第2の3D実像44を結像させる第2のリレー光学部48と、第2の3D実像44の光である表示光50を被投影部2に向けて反射する第3のリレー光学部49と、から構成される。
【0036】
第1のリレー光学部47は、第1の3D実像43における振動スクリーン46の各振動位置に結像した各映像を、異なる倍率で拡大する機能を有し、
図2では模式的に1枚のレンズに図示されているが、実際には図示しない複数の薄膜レンズを合成した合成レンズから構成される。
【0037】
第2のリレー光学部48は、例えば、正の光学的パワーを有する凹状の反射面を有するミラーで構成され、第1のリレー光学部47から第1の3D実像43の光を入射し、この入射した光を第3のリレー光学部49に向けて反射し、第1のリレー光学部47の光学的パワーと協働して第1の3D実像43を拡大した第2の3D実像44を、第2のリレー光学部48と第3のリレー光学部49との間で結像させる。なお、第2のリレー光学部48が担う光学的作用を、第1のリレー光学部47に持たせることで、第2のリレー光学部48は、省略されてもよい。
【0038】
第3のリレー光学部49は、第2の3D実像44の表示光50を被投影部2に向けて反射させる凹状の反射面を有するミラーであり、被投影部2の曲面形状による像の歪みを補正する機能と、第2の3D実像44を拡大する機能と、を有する。
【0039】
以上が、3Dの虚像70を視認させる投射部40の実施形態の構成であったが、これに限定されない。以下に、投射部40の変形例を示す。
【0040】
[投射部40の変形例]
立体的な虚像70を視認させる他の実施形態では、投射部40は、パララックスバリア方式やレンチキュラレンズ方式などを含む視差分割方式、ライトフィールド方式やホログラム方式を含む空間再生方式、特開2016−212318に開示されているように透過率を調整可能な調光層を有する複数のスクリーンを厚み方向に重ねて配置し、複数のスクリーンに向けてプロジェクタが投射像を高速で切り替えながら投影し、投射像の高速切り替えに応じて、複数のスクリーンがそれぞれ調光率を適宜調整することで3Dの実像を内部に表示する透過率調整スクリーン方式、特開2004−168230に開示されているように複数の液晶表示素子を厚み方向に重ねることで3Dの実像を内部に表示する方式などを採用してもよい。以上が、本実施形態のHUD装置10の構成である。
【0041】
以下、本発明の実施形態を
図3〜
図5を用いて具体的に説明する。
まず、
図3を参照する。
図3は、車両1の運転者が前方(Z軸正方向)を向いた際に視認する本実施形態のHUD装置10が表示する地図虚像100及び指示虚像200の表示例を示す図である。HUD装置10が表示する地図虚像100は、
図3(a)に示す立体的に表現される3D地図虚像101と、
図3(b)に示す平面的に表現される2D地図虚像102と、に分類される。3D地図虚像101は、平面状のベース虚像110と、該ベース虚像110上に立体的に描画される3D地物虚像120と、で構成される。また、2D地図虚像102は、平面状のベース虚像110と、該ベース虚像110上に平面的に描画される2D地物虚像130と、で構成される。HUD装置10は、3D地図虚像101及び2D地図虚像102の何れか一方のみ表示するものであってもよく、または3D地図虚像101と2D地図虚像102の双方を表示するものであってもよい。なお、
図3〜
図5では、車両1の左右方向Xと平行な方向をdx軸とし、ベース虚像110の面と平行であり、dx軸と垂直な方向をdy軸とする。
【0042】
次に、
図4を参照する。
図4は、3次元空間における地図虚像100と指示虚像200との位置関係を示す図であり、上図が表示領域90に表示されるベース虚像110の斜視図であり、下図が表示領域90に表示されるベース虚像110をX軸から見た図である。地図虚像100のベース虚像110は、表示距離97のXY平面上に一辺があり、表示距離97より運転者から離れた表示距離99のXY平面上に対辺がある矩形の平面であり、遠方側が近傍側より鉛直方向Yの上側に位置するように、車両1の左右方向Xを軸に水平方向(XZ平面)に対して傾いて配置される。具体的に例えば、ベース虚像110は、水平方向(XZ平面)に対して角度111だけ傾いている。角度111は、例えば、30〜90度(degree)である。このように配置されたベース虚像110を基準に3D地物虚像120や2D地物虚像130を表示することで、運転者に奥行き感を感じさせることができ、地図虚像100が表す地図の空間的な認識をしやすくすることができる。
【0043】
指示虚像200は、地図虚像100上の特定の位置(指示位置T)を指示するものであり、地図虚像100の指示位置Tの鉛直方向Yの上側に表示される第1の指示虚像201と、地図虚像100の指示位置Tの周辺に表示される第2の指示虚像202と、を有する。
【0044】
第1の指示虚像201は、ピン形状やアロー形状からなる指向性を有する画像で描画され、指示位置Tから離れた位置に表示された後、表示制御部30の指示虚像制御部32の制御のもと、徐々に指示位置Tに接近していき、指示位置Tの近傍で停止する。指示位置Tが、
図4に示すように、表示距離98のXY平面とベース虚像110とが交わる線上にある場合、第1の指示虚像201は、指示位置Tの鉛直方向Yの上側に表示され、徐々に指示位置Tに近付くように、移動方向Aに沿って鉛直方向Yの下側に向けて徐々に移動する。第1の指示虚像201が、指示位置Tに近付くと、指示位置Tを中心にした円形状の第2の指示虚像202が表示され、第2の指示虚像202は、第1の指示虚像201の接近に伴って大きさが徐々に拡大する。
【0045】
図5は、第1の指示虚像201の移動の態様と第2の指示虚像202の拡大の態様を示した図である。表示制御部30は、地図虚像100を表示した後、まず始めに、
図5(a)に示すように、第1の指示虚像201を、指示位置Tの鉛直方向Yの上側の特定の位置A1に表示し、その後、表示位置を位置A2、A3の順に鉛直方向Yの下側に向けて移動させる。表示制御部30は、第1の指示虚像201が位置A1の下側に位置する位置A2に到達すると、
図5(b)に示すように、ベース虚像110上の指示位置Tを中心にした円形状の第2の指示虚像202を表示させる。表示制御部30は、第1の指示虚像201を位置A2より下側に移動させるに従い、
図5(c)に示すように、指示位置Tを中心として第2の指示虚像202を徐々に拡大させ、第1の指示虚像201が指示位置Tの位置A4より鉛直方向Yの上側に位置する特定の位置A3に到達すると移動を停止させ、この第1の指示虚像201の停止に伴い、
図5(d)に示すように、第2の指示虚像202の拡大も停止させる。すなわち、位置A3に表示された第1の指示虚像201は、位置A4に位置する指示位置Tの鉛直方向Yの直上に浮遊しているように運転者に視認される。なお、拡大を停止させた後の第2の指示虚像202の幅(dx軸方向の長さ)は、同時に表示される第1の指示虚像201の幅と同等である。
【0046】
[変形例]
なお、本発明は、以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、実施形態及び図面に変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形例の一例を記す。
【0047】
図6A,
図6B,
図6Cは、本発明のHUD装置10が表示する第1の指示虚像201の表示位置の遷移態様の変形例を示す図である。なお、
図6A,
図6B,
図6Cそれぞれに示す変形例は、第1の指示虚像201の表示位置が符号201a→201b→201c→201dの順に変化する点と、第1の指示虚像201が位置A1〜位置A3まで鉛直方向Yの下側に移動しつつ、表示距離96〜98まで奥行き方向Zの奥側(運転者から見て遠方側)に移動する点で共通する。
【0048】
図6Aに示すように、表示制御部30は、第1の指示虚像201の移動の始点の位置201aから終点の位置201dまで結ばれた直線の移動方向Aに沿って第1の指示虚像201を移動させてもよい。すなわち、表示制御部30は、第1の指示虚像201の鉛直方向Yの単位時間当たりの移動量(移動速度)と奥行き方向Zの単位時間当たりの移動量(移動速度)との割合を一定にしてもよい。
【0049】
また、
図6Bに示すように、表示制御部30は、始めに第1の指示虚像201を拡大表示しておき(
図6Bの符号201a参照)、徐々に縮小させながら終点の位置201dまで移動方向Aに沿って移動させてもよい。
【0050】
また、
図6Cに示すように、表示制御部30は、第1の指示虚像201の移動の始点の位置201aから終点の位置201dまで結ばれた曲線の移動方向Aに沿って第1の指示虚像201を移動させてもよい。すなわち、表示制御部30は、第1の指示虚像201の鉛直方向Yの単位時間当たりの移動量(移動速度)と奥行き方向Zの単位時間当たりの移動量(移動速度)との割合を徐々に変化させてもよい。例えば、表示制御部30は、第1の指示虚像201の鉛直方向Yの移動速度を一定に保ちつつ、奥行き方向Zの移動速度を徐々に減速させていってもよい。これにより、表示制御部30は、第1の指示虚像201の鉛直方向Yの単位時間当たりの移動量(移動速度)を基準とした奥行き方向Zの単位時間当たりの移動量(移動速度)の割合を、徐々に小さくなるように変化させてもよい。これにより、第1の指示虚像201が指示位置Tに接近する移動の後半では、第1の指示虚像201の奥行き方向Zの移動量が少なくなるため、第1の指示虚像201を視認する運転者の目の焦点の移動量も少なくすることができる。すなわち、第1の指示虚像201が指示位置Tに近付いた際、第1の指示虚像201や指示位置Tへの目の焦点の移動が少なくなるため、指示位置Tを運転者に認識させやすくすることができる。
【0051】
なお、第1の指示虚像201の鉛直方向Yの移動速度を徐々に加速していき、奥行き方向Zの移動速度を徐々に減速させていってもよい。
【0052】
なお、指示虚像制御部32は、情報取得部20から取得したPOI情報の種類に応じて、第1の指示虚像201又は/及び第2の指示虚像202の形状や太さ、色などの表示態様を変化させてもよい。また、指示虚像制御部32は、POI情報の種類に応じた第1の指示虚像201又は/及び第2の指示虚像202の表示態様を、運転者の操作に応じて変更できるように構成されてもよい。