特開2018-197020(P2018-197020A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2018-197020前照灯の光軸制御システム及び光軸制御方法、並びに車両、光軸制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-197020(P2018-197020A)
(43)【公開日】2018年12月13日
(54)【発明の名称】前照灯の光軸制御システム及び光軸制御方法、並びに車両、光軸制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/115 20060101AFI20181116BHJP
【FI】
   B60Q1/115
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-101671(P2017-101671)
(22)【出願日】2017年5月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】中谷 昭広
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA21
3K339BA22
3K339BA25
3K339CA01
3K339DA01
3K339DA04
3K339DA05
3K339DA06
3K339GB01
3K339HA03
3K339HA06
3K339HA13
3K339HA19
3K339KA22
3K339KA23
3K339LA02
3K339LA11
3K339MA01
3K339MA07
3K339MB01
3K339MB04
3K339MB05
3K339MC05
3K339MC24
3K339MC41
3K339MC43
3K339MC44
3K339MC48
3K339MC52
3K339MC54
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】車両が走行する道路の勾配変化に対して光軸調整を適切に行うことを可能とした前照灯の光軸制御システムを提供する。
【解決手段】車両が走行する道路上の位置を示す位置情報S1と、車両の進行方向における道路の勾配を示す勾配情報S2とを取得する情報取得部20と、情報取得部20が取得した位置情報S1及び勾配情報S2に基づいて光軸を調整する光軸調整部30とを備え、光軸調整部30は、道路の勾配変化が開始される位置の手前から道路の勾配が変化する方向への光軸の移動を開始し、道路の勾配変化が終了する位置の手前から道路の勾配が変化する方向とは反対方向に光軸を戻しながら、道路の勾配変化が終了する位置に合わせて光軸を調整すると共に、光軸調整が完了する前に、次の勾配変化が開始される位置が存在する場合において、次の勾配変化が開始される位置の手前から次の光軸調整を開始する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前照灯から車両の前方に向けて照射される光の光軸を前記車両の上下方向において可変に制御する前照灯の光軸制御システムであって、
前記車両が走行する道路上の位置を示す位置情報と、前記車両の進行方向における道路の勾配を示す勾配情報とを取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した位置情報及び勾配情報に基づいて前記光軸を調整する光軸調整部とを備え、
前記光軸調整部は、前記道路の勾配変化が開始される位置の手前から前記道路の勾配が変化する方向への光軸移動を開始し、前記道路の勾配変化が終了する位置の手前から前記道路の勾配が変化する方向とは反対方向に光軸を戻しながら、前記道路の勾配変化が終了する位置に合わせて前記光軸を調整すると共に、
前記光軸調整が完了する前に、次の勾配変化が開始される位置が存在する場合において、前記次の勾配変化が開始される位置の手前から次の光軸調整を開始することを特徴とする前照灯の光軸制御システム。
【請求項2】
前記光軸調整部は、前記道路の勾配変化が開始される位置と終了する位置との間における前記勾配の変化率に基づいて、前記光軸の移動量を算出することを特徴とする請求項1に記載の前照灯の光軸制御システム。
【請求項3】
前記車両が走行する道路の勾配を検出する勾配検出部を備え、
前記光軸調整部は、前記勾配検出部が検出した勾配検出情報に基づいて、前記光軸の移動量を補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の前照灯の光軸制御システム。
【請求項4】
前記車両の前後方向の傾きを検出する車両傾き検出部を備え、
前記光軸調整部は、前記車両傾き検出部が検出した車両傾き検出情報に基づいて、前記光軸の移動量を補正することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の前照灯の光軸制御システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の前照灯の光軸制御システムを備える車両。
【請求項6】
前照灯から車両の前方に向けて照射される光の光軸を前記車両の上下方向において可変に制御する前照灯の光軸制御方法であって、
前記車両が走行する道路上の位置を示す位置情報と、前記車両の進行方向における道路の勾配を示す勾配情報とを取得する情報取得ステップと、
前記情報取得ステップにおいて取得した位置情報及び勾配情報に基づいて前記光軸を調整する光軸調整ステップとを含み、
前記光軸調整ステップにおいて、前記道路の勾配変化が開始される位置の手前から前記道路の勾配が変化する方向への光軸移動を開始し、前記道路の勾配変化が終了する位置の手前から前記道路の勾配が変化する方向とは反対方向に光軸を戻しながら、前記道路の勾配変化が終了する位置に合わせて前記光軸を調整すると共に、
前記光軸調整が完了する前に、次の勾配変化が開始される位置が存在する場合において、前記次の勾配変化が開始される位置の手前から次の光軸調整を開始することを特徴とする前照灯の光軸制御方法。
【請求項7】
前記光軸調整ステップにおいて、前記道路の勾配変化が開始される位置と終了する位置との間における前記勾配の変化率に基づいて、前記光軸の移動量を算出することを特徴とする請求項6に記載の前照灯の光軸制御方法。
【請求項8】
前記光軸調整ステップにおいて、前記車両が走行する道路の勾配を勾配検出部により検出しながら、当該勾配検出部が検出した勾配検出情報に基づいて、前記光軸の移動量を補正することを特徴とする請求項6又は7に記載の前照灯の光軸制御方法。
【請求項9】
前記光軸調整ステップにおいて、前記車両の前後方向の傾きを車両傾き検出部により検出し、当該車両傾き検出部が検出した車両傾き検出情報に基づいて、前記光軸の移動量を補正することを特徴とする請求項6〜8の何れか一項に記載の前照灯の光軸制御方法。
【請求項10】
請求項6〜9の何れか一項に記載の前照灯の光軸制御方法を実行する光軸制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前照灯の光軸制御システム及び光軸制御方法、並びに車両、光軸制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前照灯から車両の前方に向けて照射される光の光軸を車両の上下方向において可変に制御する光軸調整(オートレベリング)機能が量産車において搭載されている。車両の上下方向における光軸調整としては、車両が走行する道路の勾配に対して、(1)前方の車両にグレアを与えない範囲での光軸調整と、(2)その範囲において運転者に前方の視認性を最大限確保するための光軸調整とがある。
【0003】
その中でも特に、ダイナミック制御と呼ばれる光軸制御方法では、車両の前後方向の傾きをリアルタイムに検知し、前照灯の光軸を(1)又は(2)の方向に調整する機能を実現している。
【0004】
一方、このダイナミック制御では、車両の前後方向の傾きを検知した後、前照灯から車両の前方に向けて照射される光の光軸を調整するため、車両の姿勢変化に伴う光軸の変化をある程度無くすことが可能である。
【0005】
しかしながら、従来の光軸制御方法では、道路の勾配変化に対して、運転者が実際に見たい領域と光が照射される領域との間に差異が生じてしまうことがあった。例えば、車両が平地から上り坂又は下り坂へと進入する際に、運転者としては上り坂又は下り坂に進入する手前で上り坂又は下り坂の先を確認したい心理が働くのに対し、実際の車両は上り坂又は下り坂に進入するまで平地に向けて光を照射する状況となっている。
【0006】
そこで、このような課題を解決するため、道路の勾配変化を示す情報を入手し、その情報に基づいて、道路の勾配が変化するよりも前に光軸を調整する方法が提案されている(例えば、下記特許文献1,2を参照。)。また、カメラで車両の前方を撮像しながら、道路の勾配変化を適切に検知する方法が提案されている(例えば、下記特許文献3,4を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−151046号公報
【特許文献2】特開2013−43640号公報
【特許文献3】特開2015−44426号公報
【特許文献4】特開2015−205546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の方法による光軸制御では、道路の勾配変化が終了した時点に合わせて光軸調整を行っている。このため、上述した道路の勾配変化に対して、運転者が実際に見たい領域と光が照射される領域との間に生じる差異を解消することは困難である。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、車両が走行する道路の勾配変化に対して光軸調整を適切に行うことを可能とした前照灯の光軸制御システム及び光軸制御方法、並びに車両、光軸制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 前照灯から車両の前方に向けて照射される光の光軸を前記車両の上下方向において可変に制御する前照灯の光軸制御システムであって、
前記車両が走行する道路上の位置を示す位置情報と、前記車両の進行方向における道路の勾配を示す勾配情報とを取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した位置情報及び勾配情報に基づいて前記光軸を調整する光軸調整部とを備え、
前記光軸調整部は、前記道路の勾配変化が開始される位置の手前から前記道路の勾配が変化する方向への光軸移動を開始し、前記道路の勾配変化が終了する位置の手前から前記道路の勾配が変化する方向とは反対方向に光軸を戻しながら、前記道路の勾配変化が終了する位置に合わせて前記光軸を調整すると共に、
前記光軸調整が完了する前に、次の勾配変化が開始される位置が存在する場合において、前記次の勾配変化が開始される位置の手前から次の光軸調整を開始することを特徴とする前照灯の光軸制御システム。
〔2〕 前記光軸調整部は、前記道路の勾配変化が開始される位置と終了する位置との間における前記勾配の変化率に基づいて、前記光軸の移動量を算出することを特徴とする前記〔1〕に記載の前照灯の光軸制御システム。
〔3〕 前記車両が走行する道路の勾配を検出する勾配検出部を備え、
前記光軸調整部は、前記勾配検出部が検出した勾配検出情報に基づいて、前記光軸の移動量を補正することを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の前照灯の光軸制御システム。
〔4〕 前記車両の前後方向の傾きを検出する車両傾き検出部を備え、
前記光軸調整部は、前記車両傾き検出部が検出した車両傾き検出情報に基づいて、前記光軸の移動量を補正することを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕の何れか一項に記載の前照灯の光軸制御システム。
〔5〕 前記〔1〕〜〔4〕の何れか一項に記載の前照灯の光軸制御システムを備える車両。
〔6〕 前照灯から車両の前方に向けて照射される光の光軸を前記車両の上下方向において可変に制御する前照灯の光軸制御方法であって、
前記車両が走行する道路上の位置を示す位置情報と、前記車両の進行方向における道路の勾配を示す勾配情報とを取得する情報取得ステップと、
前記情報取得ステップにおいて取得した位置情報及び勾配情報に基づいて前記光軸を調整する光軸調整ステップとを含み、
前記光軸調整ステップにおいて、前記道路の勾配変化が開始される位置の手前から前記道路の勾配が変化する方向への光軸移動を開始し、前記道路の勾配変化が終了する位置の手前から前記道路の勾配が変化する方向とは反対方向に光軸を戻しながら、前記道路の勾配変化が終了する位置に合わせて前記光軸を調整すると共に、
前記光軸調整が完了する前に、次の勾配変化が開始される位置が存在する場合において、前記次の勾配変化が開始される位置の手前から次の光軸調整を開始することを特徴とする前照灯の光軸制御方法。
〔7〕 前記光軸調整ステップにおいて、前記道路の勾配変化が開始される位置と終了する位置との間における前記勾配の変化率に基づいて、前記光軸の移動量を算出することを特徴とする前記〔6〕に記載の前照灯の光軸制御方法。
〔8〕 前記光軸調整ステップにおいて、前記車両が走行する道路の勾配を勾配検出部により検出しながら、当該勾配検出部が検出した勾配検出情報に基づいて、前記光軸の移動量を補正することを特徴とする前記〔6〕又は〔7〕に記載の前照灯の光軸制御方法。
〔9〕 前記光軸調整ステップにおいて、前記車両の前後方向の傾きを車両傾き検出部により検出し、当該車両傾き検出部が検出した車両傾き検出情報に基づいて、前記光軸の移動量を補正することを特徴とする前記〔6〕〜〔8〕の何れか一項に記載の前照灯の光軸制御方法。
〔10〕 前記〔6〕〜〔9〕の何れか一項に記載の前照灯の光軸制御方法を実行する光軸制御プログラム。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、車両が走行する道路の勾配変化に対して光軸調整を適切に行うことを可能とした前照灯の光軸制御システム及び光軸制御方法、並びに車両、光軸制御プログラムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る車両が備える光軸制御システムの構成を示す模式図である。
図2図1に示す車両が備える光軸制御システムの構成を示すブロック図である。
図3図1に示す光軸制御システムにおいて実行される光軸制御方法を説明するためのフローチャートである。
図4図1に示す光軸制御システムによる光軸調整を説明するための模式図である。
図5図4に示す平地から上り勾配へと勾配が変化する区間での光軸調整を説明するための模式図である。
図6図4に示す上り勾配から平地へと勾配が変化する区間での光軸調整を説明するための模式図である。
図7】勾配変化が連続する場合の光軸調整を説明するための模式図である。
図8図7に示す勾配変化が連続する場合において実行される光軸制御方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
先ず、本発明の一の実施形態として、例えば図1及び図2に示す車両1が備える光軸制御システム10について説明する。なお、図1は、車両1が備える光軸制御システム10の構成を示す模式図である。図2は、車両1が備える光軸制御システム10の構成を示すブロック図である。
【0014】
本実施形態の車両1が備える光軸制御システム10は、図1及び図2に示すように、前照灯2から車両1の前方に向けて照射される光Lの光軸Xを車両1の上下方向において可変に制御するものである。
【0015】
具体的に、この光軸制御システム10は、車両1が走行する道路R上の位置を示す位置情報S1と、車両1の進行方向における道路Rの勾配を示す勾配情報S2とを取得する情報取得部20と、情報取得部20が取得した位置情報S1及び勾配情報S2に基づいて光軸Xを調整する光軸調整部30とを備えている。
【0016】
情報取得部20は、例えば、車両1の現在位置を示す位置情報S1を全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)受信機により受信(取得)する。また、カーナビゲーションシステムに記録されている3D地図データ等の勾配情報データベースや、インターネット上に公開されている勾配情報データベース等と、車両1の現在位置とを照合することによって、車両1の進行方向における道路Rの勾配情報S2を取得する。さらに、先行する車両との車両間通信によって、上述した位置情報S1や勾配情報S2を取得することも可能である。
【0017】
光軸調整部30は、前照灯2に設けられた光軸調整機構31と、光軸調整機構31の駆動を制御する制御部32とを有している。また、情報取得部20は、制御部32と電気的に接続されることによって、上述した位置情報S1及び勾配情報S2を制御部32へと供給する。
【0018】
光軸調整機構31は、前照灯2から車両1の前方に向けて照射される光Lの光軸Xを調整するものである。光軸調整機構31としては、例えば、モータなどのアクチュエータによって、光Lの光軸Xを上下方向に移動させるものや、複数の発光素子の点灯を切り替えることによって、光Lの光軸Xを上下方向に移動させるもの、DMD(Digital Mirror Device)などの可変ミラーを用いて、光Lの光軸Xを上下方向に移動させるものなどを用いることができる。
【0019】
また、前照灯2の光源については、特に限定されるものではなく、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)やレーザーダイオード(LD:Laser Diode)などの発光素子や、ハロゲンランプ、HID(High-Intensity Discharge)ランプ、プロジェクターランプなどを用いることができる。
【0020】
制御部32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等を含むメモリとを備えたコンピュータである。制御部32は、ROMに格納されている制御プログラムをRAMに展開して実行し、CPUによる処理(演算)結果に応じて、光軸調整機構31の駆動を制御する。
【0021】
また、光軸制御システム10は、車両1が走行する道路Rの勾配を検出する勾配検出部40を備えている。勾配検出部40としては、例えば、車両1の前方における路面状況を監視する可視光カメラや、レーザー光を用いて道路の勾配変化を検出するLiDAR(Light Detection and Ranging)などを用いることができる。勾配検出部40は、制御部32と電気的に接続されており、この勾配検出部40が検出した勾配検出情報S3を制御部32へと供給する。
【0022】
また、光軸制御システム10は、車両1の前後方向の傾きを検出する車両傾き検出部50を備えている。車両傾き検出部50としては、例えば、傾斜センサーや、加速度(G)センサー、角速度(ジャイロ)センサーなどの車両1の前後方向の傾きが検出可能なセンサーであればよい。車両傾き検出部50は、制御部32と電気的に接続されており、この車両傾き検出部50が検出した車両傾き検出情報S4を制御部32へと供給する。
【0023】
さらに、光軸制御システム10は、例えば、車両1の操舵角(切れ角)や速度(車速)などの走行する車両1の走行状態を示す車両走行情報S5を車両1の各部に設けられたセンサー(図示せず。)等から制御部32へと供給する構成となっている。
【0024】
本実施形態の光軸制御システム10では、本発明を適用した光軸制御方法を実行する制御プログラム(以下、光軸制御プログラムという。)に従って、制御部32が光軸調整機構31の駆動を制御しながら、前照灯2から車両1の前方に向けて照射される光Lの光軸Xを車両1の上下方向において可変に制御する。
【0025】
具体的に、本発明の一実施形態に係る光軸制御方法について、図3図6を参照しながら説明する。なお、図3は、光軸制御システム10において実行される光軸制御方法を説明するためのフローチャートである。図4は、光軸制御システム10による光軸調整を説明するための模式図である。図5は、図4に示す平地E1から上り勾配E3へと勾配が変化する区間E2での光軸調整を説明するための模式図である。図6は、図4に示す上り勾配E3から平地E1へと勾配が変化する区間E4での光軸調整を説明するための模式図である。
【0026】
本実施形態の光軸制御方法は、図3に示すように、位置情報S1を取得するステップS101と、勾配情報S2を取得するステップS102とを含む情報取得ステップS100と、位置情報S1及び勾配情報S2に基づいて光軸の移動量を算出するステップS201と、算出結果に基づいて光軸を移動させるステップS202とを含む光軸調整ステップS200とをこの順で実行する。
【0027】
具体的には、先ず、ステップS101においては、上述した情報取得部20が車両1の現在位置を示す位置情報S1を取得し、この位置情報S1を制御部32へと供給する。
【0028】
次に、ステップS102において、上述した情報取得部20が勾配情報データベースと車両1の現在位置とを照合することによって、車両1の進行方向における道路Rの勾配情報S2を取得し、この勾配情報S2を制御部32へと供給する。
【0029】
次に、ステップS201において、上述した情報取得部20から供給された位置情報S1及び勾配情報S2によって、制御部32が光軸Xの移動量を算出する。
【0030】
また、ステップS201では、車両1が走行する道路Rの勾配を勾配検出部40により検出しながら、この勾配検出部40が検出した勾配検出情報S3に基づいて、光軸Xの移動量を補正する。この場合、勾配情報S2と共に、勾配検出情報S3を得ることで、車両1が走行する道路Rの勾配をより正確に把握することが可能である。
【0031】
また、ステップS201では、車両1の前後方向の傾きを車両傾き検出部50により検出し、この車両傾き検出部50が検出した車両傾き検出情報S4に基づいて、光軸Xの移動量を補正する。この場合、上述した勾配情報S2や勾配検出情報S3と、車両傾き検出情報S4とを照合することで、実際の道路Rの勾配と車両1と傾きとの間に大きな乖離が生じていたとしても、その分を補正することが可能である。
【0032】
さらに、ステップS201では、車両1の操舵角(切れ角)や速度(車速)などの走行する車両1の走行状態を示す車両走行情報S5に基づいて、光軸Xの移動量を補正する。これにより、車両1の走行状態に応じた補正を行うことが可能である。
【0033】
次に、ステップS202において、道路Rの勾配変化が開始される位置(以下、勾配変化開始点という。)P1の手前から道路Rの勾配が変化する方向への光軸Xの移動を開始し、道路Rの勾配変化が終了する位置(以下、勾配変化終了点という。)P2の手前から道路Rの勾配が変化する方向とは反対方向に光軸Xを戻しながら、道路Rの勾配変化が終了する位置に合わせて光軸を調整する。
【0034】
ここで、例えば図4に示すように、車両1が平地E1から勾配変化区間E3を経て角度一定の上り勾配E2へと移動し、上り勾配E2から勾配変化区間E4を経て平地E1へと移動し、平地E1から勾配変化区間E5を経て角度一定の下り勾配E6へと移動し、下り勾配E6から勾配変化区間E7を経て平地E1へと移動する場合を例に挙げて、光軸Xを調整する具体的な光軸制御方法について説明する。
【0035】
先ず、図4に示す車両1が平地E1から勾配変化区間E3を経て上り勾配E2へと移動する場合は、図5に拡大して示すように、勾配変化区間E3における勾配変化開始点P1に距離mだけ近づいた時点で、平地E1に合わせた光軸X(図5中のX1)の位置から上方向への光軸X(図5中のX2)の移動を開始する。このときの光軸Xの移動量は、上述したステップS201における算出結果に基づいて設定される。そして、勾配変化区間E3における勾配変化終了点P2に距離nだけ近づいた時点で、光軸X(図5中のX3)を下方向に戻しながら、下り勾配E3に合わせた光軸X(図5中のX4)の位置まで移動した時点で、この勾配変化区間E2での光軸調整を完了する。
【0036】
これにより、車両1が平地E1から上り勾配E3へと進入する際に、上り勾配E3の手前から上り勾配E3に向けて光Lが照射されるため、この上り勾配E3に向けて運転者の視界を確保することが可能である。一方、上り勾配E3に進入した後は、前方の車両などにグレアなどを与えることなく、この上り勾配E3に合わせた運転者の視界を確保することが可能である。
【0037】
次に、図4に示す車両1が上り勾配E2から勾配変化区間E4を経て平地E1へと移動する場合は、図6に拡大して示すように、勾配変化区間E4における勾配変化開始点P1に距離mだけ近づいた時点で、上り勾配E3に合わせた光軸X(図6中のX4)の位置から下方向への光軸X(図6中のX5)の移動を開始する。このときの光軸Xの移動量は、上述したステップS201における算出結果に基づいて設定される。そして、勾配変化区間E4における勾配変化終了点P2に距離nだけ近づいた時点で、光軸X(図6中のX6)を上方向に戻しながら、平地E1に合わせた光軸X(図6中のX7)の位置まで移動した時点で、この勾配変化区間E4での光軸調整を完了する。
【0038】
これにより、車両1が上り勾配E3から平地E1へと進入する際に、平地E1の手前から平地E1に向けて光Lが照射されるため、この平地E1に向けて運転者の視界を確保することが可能である。一方、平地E1に進入した後は、運転者の視界が狭くなるのを防ぎつつ、この平地E1に合わせた運転者の視界を確保することが可能である。
【0039】
次に、図4に示す車両1が平地E1から勾配変化区間E5を経て下り勾配E6へと移動する場合は、上記図6に示す場合と同様に、勾配変化区間E5における勾配変化開始点P1に距離mだけ近づいた時点で、下り勾配E6に合わせた光軸Xの位置から下方向への光軸Xの移動を開始する。このときの光軸Xの移動量は、上述したステップS201における算出結果に基づいて設定される。そして、勾配変化区間E5における勾配変化終了点P2に距離nだけ近づいた時点で、光軸Xを上方向に戻しながら、下り勾配E6に合わせた光軸Xの位置まで移動した時点で、この勾配変化区間E5での光軸調整を完了する。
【0040】
これにより、車両1が平地E1から下り勾配E6へと進入する際に、下り勾配E6の手前から下り勾配E6に向けて光Lが照射されるため、この下り勾配E6に向けて運転者の視界を確保することが可能である。一方、下り勾配E6に進入した後は、運転者の視界が狭くなるのを防ぎつつ、この下り勾配E6に合わせた運転者の視界を確保することが可能である。
【0041】
次に、図4に示す車両1が下り勾配E6から勾配変化区間E7を経て平地E1へと移動する場合は、上記図5に示す場合と同様に、勾配変化区間E7における勾配変化開始点P1に距離mだけ近づいた時点で、平地E1に合わせた光軸Xの位置から上方向への光軸Xの移動を開始する。このときの光軸Xの移動量は、上述したステップS201における算出結果に基づいて設定される。そして、勾配変化区間E7における勾配変化終了点P2に距離nだけ近づいた時点で、光軸Xを下方向に戻しながら、平地E1に合わせた光軸Xの位置まで移動した時点で、この勾配変化区間E7での光軸調整を完了する。
【0042】
これにより、車両1が下り勾配E6から平地E1へと進入する際に、平地E1の手前から平地E1に向けて光Lが照射されるため、この平地E1に向けて運転者の視界を確保することが可能である。一方、平地E1に進入した後は、前方の車両などにグレアなどを与えることなく、この平地E1に合わせた運転者の視界を確保することが可能である。
【0043】
ところで、実際の道路Rでは、勾配の方向が連続して変化する場合がある。その場合、上述した光軸調整が完了する前に、次の光軸調整を開始することが好ましい。具体的に、勾配変化が連続する場合の光軸制御方法について、図7及び図8を参照しながら説明する。なお、図7は、勾配変化が連続する場合の光軸調整を説明するための模式図である。図8は、図7に示す勾配変化が連続する場合において実行される光軸制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0044】
例えば図7に示すように、車両1が上り勾配E3から勾配変化区間E4を経て平地E1へと移動することなく、勾配変化区間E2を経て上り勾配E3へと移動する場合は、前の勾配変化区間E4での光軸調整を完了する前に、次の勾配変化区間E2での光軸調整を開始する。
【0045】
この場合、図8に示すように、上記情報取得ステップS100の後に、光軸調整ステップS200として、先ず、ステップS203において、前の光軸調整が完了する前に、次の光軸調整を開始する位置が存在するか否かを判別する。
【0046】
ステップS203では、図7に示す先の勾配変化区間E4における勾配変化終了点P12に距離n1だけ近づいた時点T1と、次の勾配変化区間E2における勾配変化開始点P21に距離m2だけ近づいた時点T2とを比較し、時点T1よりも時点T2が後に存在する場合には、ステップS211に進む。一方、時点T1よりも時点T2が先に存在する場合には、ステップS221に進む。
【0047】
ステップS211では、前の勾配変化区間E4での光軸調整が完了した後に、次の勾配変化区間E2での光軸調整が開始されると判断し、前の勾配変化区間E4での光軸調整における光軸Xの移動量と、次の勾配変化区間E2での光軸調整における光軸Xの移動量とを算出する。その後、ステップS202において、先の勾配変化区間E4での光軸調整を完了した後に、次の勾配変化区間E2での光軸調整を開始する制御を行う。
【0048】
一方、ステップS221では、前の勾配変化区間E4での光軸調整が完了する前に、次の勾配変化区間E2での光軸調整が開始されると判断し、前の光軸調整における光軸Xの移動量と、次の光軸調整における光軸Xの移動量とを算出する。その後、ステップS202において、先の勾配変化区間E4での光軸調整を完了する前に、次の勾配変化区間E2での光軸調整を開始する制御を行う。
【0049】
具体的には、図7に示すように、車両1が上り勾配E3から先の勾配変化区間E4における勾配変化開始点P11に距離m1だけ近づいた時点で、上り勾配E3に合わせた光軸Xの位置から下方向への光軸Xの移動を開始する。このときの光軸Xの移動量は、上述したステップS221における算出結果に基づいて設定される。
【0050】
そして、次の勾配変化区間E2における勾配変化開始点P12に距離m2だけ近づいた時点で、上方向への光軸Xの移動を開始する。このときの光軸Xの移動量は、上述したステップS221における算出結果に基づいて設定される。
【0051】
そして、次の勾配変化区間E2における勾配変化終了P22に距離n2だけ近づいた時点で、光軸Xを下方向に戻しながら、上り勾配E3に合わせた光軸Xの位置まで移動した時点で、この勾配変化区間E2での光軸調整を完了する。
【0052】
これにより、勾配の方向が連続して変化する場合において、運転者が感じる違和感を低減しながら、この勾配の方向が連続して変化する場合での運転者の視界を確保することが可能である。
【0053】
なお、本実施形態では、次の勾配変化区間E2における勾配変化開始点P12に距離m2だけ近づいた時点で、上方向への光軸Xの移動を開始しているが、勾配の方向が連続して変化する区間の長さや車両1の車速等を考慮して、場合によっては光軸の移動量を通常よりも少なくしたり、光軸Xの移動を停止したり、更に光軸Xの移動速度を調整したりすることが可能である。これにより、運転者が感じる違和感を低減し、なお且つ、運転者の視界を確保することが可能である。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、道路Rの勾配が変化している間の運転者の視線移動に合わせて、勾配が変化する先に前照灯2から照射される光Lの光軸Xを合わせることが可能である。
【0055】
すなわち、本実施形態では、勾配を先読みし、視線を動かすタイミングと同じかそれよりも少しだけ前に光軸Xの移動を開始することで、勾配変化による運転者の視線移動に合わせた自然な形での光軸調整を行うことが可能である。また、前方の車両などにグレアなどを与えることなく、運転者の視界を確保することが可能である。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記光軸制御システム10では、上述した勾配検出部40が検出した勾配検出情報S3や、車両傾き検出部50が検出した車両傾き検出情報S4、車両1の走行状態を示す車両走行情報S5を制御部32に供給することによって、光軸Xの移動量を補正する構成となっているが、このような構成に必ずしも限定されるものではなく、これら勾配検出情報S3、車両傾き検出情報S4、車両走行情報S5を適宜省略しながら、光軸Xの移動量を設定してもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、車両1が走行する道路Rの勾配変化に対して光軸調整を行う場合について説明したが、このような光軸調整機能と、従来のオートレベリング機能とを組み合わせることも可能である。
【0058】
この場合も、オートレベリング機能による光軸制御を考慮に入れて、適切な光軸Xの移動量を求めることが可能である。また、実際の走行でダイナミックレベリング機能を使用している場合、車両の傾きによる光軸調整が頻繁に行われるため、場合によっては運転者の意図しない方向に光軸が調整される可能性がある。その場合は、本実施形態による光軸調整と、オートレベリングによる光軸調整との間で優先順位をつけて、光軸調整を行えばよい。
【0059】
さらに、勾配変化に対応した光軸調整では、前方に車両が存在する場合、前方の車両にグレアを与える可能性がある。この場合、前方の車両を検知するセンサーやカメラ、レーダーなどを備えることによって、前方の車両の存在を考慮しながら、光軸調整を行うことが可能である。また、先行する車両が存在する場合は、例えば光軸を上げる限界角度を先行する車両のテールランプの高さに設定するといった光軸調整を行えばよい。
【符号の説明】
【0060】
1…車両 2…前照灯 10…光軸制御システム 20…情報取得部 30…光軸調整部 31…光軸調整機構 32…制御部 40…勾配検出部 50…車両傾き検出部 S1…位置情報 S2…勾配情報 S3…勾配検出情報 S4…車両傾き検出情報 S5…車両走行情報 E1…平地 E2,E4,E5,E7…勾配変化区間 E3…上り勾配 E6…下り勾配 P1,P11,P21…勾配変化開始点 P2,P12,P22…勾配変化終了点 X…光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8