特開2018-197583(P2018-197583A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-197583(P2018-197583A)
(43)【公開日】2018年12月13日
(54)【発明の名称】車両用動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 29/04 20060101AFI20181116BHJP
   F16H 21/20 20060101ALI20181116BHJP
   F16H 31/00 20060101ALI20181116BHJP
   F16C 9/00 20060101ALI20181116BHJP
【FI】
   F16H29/04
   F16H21/20 A
   F16H31/00 E
   F16C9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-102341(P2017-102341)
(22)【出願日】2017年5月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彰彦
【テーマコード(参考)】
3J033
3J062
【Fターム(参考)】
3J033AA01
3J033AA05
3J033BA13
3J033GA08
3J062AA02
3J062AB33
3J062AC03
3J062AC04
3J062AC06
3J062BA25
3J062CB06
3J062CB44
3J062CG32
3J062CG42
3J062CG64
3J062CG82
(57)【要約】
【課題】 クランク式の無段変速機を備える車両用動力伝達装置において、出力軸の下流の動力伝達経路の捩れ共振をコンパクトな構造で抑制する。
【解決手段】 出力軸13は、支持フレーム11に支持されてワンウェイクラッチ23を支持する中空の外側出力軸13Aと、外側出力軸13Aの内部に嵌合して一端部が該外側出力軸13Aの一端部から突出する内側出力軸13Bとからなり、内側出力軸13Bの他端部は外側出力軸13Aの他端部に結合されるので、出力軸13の直径を縮小することなく、また出力軸13の全長を増加させることなく、外側出力軸13Aの長さおよび内側出力軸13Bの長さの和である出力軸13の実質的な全長を拡大して捩れ剛性を低下させることで、寸法の大型化を招くことなく出力軸13の下流の動力伝達経路の捩れ共振周波数を伝達ユニット14の入力回転数の常用回転数領域の外にずらして振動・騒音特性を改善することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源(E)に接続された入力軸(12)の回転を変速して出力軸(13)に伝達する複数の伝達ユニット(14)を軸方向に並置し、
前記伝達ユニット(14)の各々は、
前記入力軸(12)と一体に回転する偏心カム(17)と、
前記偏心カム(17)の外周に相対回転自在に嵌合するリングギヤ(19b)が形成された偏心部材(19)と、
前記入力軸(12)と同軸に配置されて変速アクチュエータ(30)により回転する変速軸(15)と、
前記変速軸(15)に設けられて前記リングギヤ(19b)に噛合するピニオン(18)と、
前記出力軸(13)に設けられたワンウェイクラッチ(23)と、
前記偏心部材(19)および前記ワンウェイクラッチ(23)のアウター部材(26)に接続されて往復運動するコネクティングロッド(21)と、
前記変速アクチュエータ(30)で前記変速軸(15)を前記入力軸(12)に対して相対回転させて前記偏心カム(17)に対する前記偏心部材(19)の位相を変化させることで、前記入力軸(12)の軸線(L)からの前記偏心部材(19)の偏心量(ε)を変化させて変速比を変更する車両用動力伝達装置であって、
前記出力軸(13)は、支持フレーム(11)に支持されて前記ワンウェイクラッチ(23)を支持する中空の外側出力軸(13A)と、前記外側出力軸(13A)の内部に嵌合して一端部が該外側出力軸(13A)の一端部から突出する内側出力軸(13B)とからなり、前記内側出力軸(13B)の他端部は前記外側出力軸(13A)の他端部に結合されることを特徴とする車両用動力伝達装置。
【請求項2】
前記内側出力軸(13B)の外周面と前記外側出力軸(13A)の内周面との間に、前記内側出力軸(13B)の内部に形成された油路(13a)から前記ワンウェイクラッチ(23)に供給されるオイルを保持するオイル溜まり(α)を形成し、前記外側出力軸(13A)の一端部に配置されたシール部材(44)で前記オイル溜まり(α)の一端部をシールしたことを特徴とする、請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項3】
前記外側出力軸(13A)の一端部から突出する前記内側出力軸(13B)の外周に前後進切換機構(S)を配置し、前記前後進切換機構(S)を覆うミッションケース(42)に前記内側出力軸(13B)の一端部をベアリング(45)を介して支持したことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両用動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源に接続された入力軸の回転を変速して出力軸に伝達する無段変速機と、前記出力軸に接続されて車両の前進・後進を切り換える前後進切換機構とを備える車両用動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライブシャフトに設けたドライブプーリおよびドリブンシャフトに設けたドリブンプーリ間に無端ベルトを巻き掛けたベルト式無段変速機において、ドリブンシャフトに設けた発進クラッチのジャダー振動を低減すべく、ドリブンシャフトに接続されたセカンダリシャフトにトーショナルダイナミックダンパーを設け、このトーショナルダイナミックダンパーのダンパーウエイトの共振周波数を、発進用クラッチと車軸間の駆動系の固有振動数に略等しく設定したものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−240298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クランク式の無段変速機を備える車両用動力伝達装置では、複数の伝達ユニットのワンウェイクラッチが交互に係合および係合解除して出力軸のトルクが周期的に変動するため、入力軸への入力回転数が所定回転数に達すると、出力軸に接続された動力伝達経路が捩れ共振して振動および騒音が発生する問題がある。この捩れ共振は、出力軸に接続された動力伝達経路に制振マスを取り付けて共振周波数をエンジンの常用回転数領域からずらすことで解消可能であるが、必要な大きさの制振マスを取り付けるスペースを確保することはレイアウト上の制約から困難である。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、クランク式の無段変速機を備える車両用動力伝達装置において、出力軸の下流の動力伝達経路の捩れ共振をコンパクトな構造で抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、駆動源に接続された入力軸の回転を変速して出力軸に伝達する複数の伝達ユニットを軸方向に並置し、前記伝達ユニットの各々は、前記入力軸と一体に回転する偏心カムと、前記偏心カムの外周に相対回転自在に嵌合するリングギヤが形成された偏心部材と、前記入力軸と同軸に配置されて変速アクチュエータにより回転する変速軸と、前記変速軸に設けられて前記リングギヤに噛合するピニオンと、前記出力軸に設けられたワンウェイクラッチと、前記偏心部材および前記ワンウェイクラッチのアウター部材に接続されて往復運動するコネクティングロッドとを備え、前記変速アクチュエータで前記変速軸を前記入力軸に対して相対回転させて前記偏心カムに対する前記偏心部材の位相を変化させることで、前記入力軸の軸線からの前記偏心部材の偏心量を変化させて変速比を変更する車両用動力伝達装置であって、前記出力軸は、支持フレームに支持されて前記ワンウェイクラッチを支持する中空の外側出力軸と、前記外側出力軸の内部に嵌合して一端部が該外側出力軸の一端部から突出する内側出力軸とからなり、前記内側出力軸の他端部は前記外側出力軸の他端部に結合されることを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記内側出力軸の外周面と前記外側出力軸の内周面との間に、前記内側出力軸の内部に形成された油路から前記ワンウェイクラッチに供給されるオイルを保持するオイル溜まりを形成し、前記外側出力軸の一端部に配置されたシール部材で前記オイル溜まりの一端部をシールしたことを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記外側出力軸の一端部から突出する前記内側出力軸の外周に前後進切換機構を配置し、前記前後進切換機構を覆うミッションケースに前記内側出力軸の一端部をベアリングを介して支持したことを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
【0009】
尚、実施の形態の偏心ディスク19は本発明の偏心部材に対応し、実施の形態のボールベアリング45は本発明のベアリングに対応し、実施の形態のエンジンEは本発明の駆動源に対応する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、伝達ユニットは、入力軸に設けた偏心カムに支持されて該入力軸と共に回転する偏心部材と、出力軸に設けられたワンウェイクラッチのアウター部材とをコネクティングロッドで接続して構成されるので、入力軸が回転してコネクティングロッドが往復運動すると、ワンウェイクラッチが間欠的に係合することで出力軸が間欠的に回転して駆動力が伝達される。その際に、変速アクチュエータで変速軸を入力軸に対して相対回転させ、ピニオンでリングギヤを回転させて偏心カムに対する偏心部材の位相を変化させることで、入力軸の軸線からの偏心部材の偏心量を変化させて変速比を変更することができる。
【0011】
出力軸は、支持フレームに支持されてワンウェイクラッチを支持する中空の外側出力軸と、外側出力軸の内部に嵌合して一端部が該外側出力軸の一端部から突出する内側出力軸とからなり、内側出力軸の他端部は外側出力軸の他端部に結合されるので、出力軸の直径を縮小することなく、また出力軸の全長を増加させることなく、外側出力軸の長さおよび内側出力軸の長さの和である出力軸の実質的な全長を拡大して捩れ剛性を低下させることで、寸法の大型化を招くことなく出力軸の下流の動力伝達経路の捩れ共振周波数を伝達ユニットの入力回転数の常用回転数領域の外にずらして振動・騒音特性を改善することができる。
【0012】
また請求項2の構成によれば、内側出力軸の外周面と外側出力軸の内周面との間に、内側出力軸の内部に形成された油路からワンウェイクラッチに供給されるオイルを保持するオイル溜まりを形成し、外側出力軸の一端部に配置されたシール部材でオイル溜まりの一端部をシールしたので、オイル溜まりに保持されたオイルが外側出力軸の一端部から漏れたり、外側出力軸の一端部からオイル溜まりにダストが侵入したりするのをシール部材で阻止することできる。
【0013】
また請求項3の構成によれば、外側出力軸の一端部から突出する内側出力軸の外周に前後進切換機構を配置し、前後進切換機構を覆うミッションケースに内側出力軸の一端部をベアリングを介して支持したので、内側出力軸の他端部を外側出力軸の他端部に支持し、かつ内側出力軸の一端部をベアリングを介してミッションケースに支持することで、内側出力軸を両端部で強固に支持して振動の発生を一層効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車両用動力伝達装置のスケルトン図である。
図2図1の2部詳細図である。
図3図2の3−3線断面図である。
図4】偏心ディスクの単品図である。
図5】偏心ディスクの偏心量と変速比との関係を示す図である。
図6図2の6部拡大図である。
図7】無段変速機の入力軸回転数と出力軸トルクとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図7に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1に示すように、車両用動力伝達装置は、エンジンEの駆動力を入力軸12から出力軸13に無段変速して伝達するクランク式の無段変速機Tと、出力軸13およびディファレンシャルギヤD間に配置されて車両の前進・後進を切り換える前後進切換機構Sとを備える。出力軸13は同軸に嵌合する外側出力軸13Aおよび内側出力軸13Bの二重構造であり、外側出力軸13Aが無段変速機Tの出力部材を構成し、外側出力軸13Aの一方の軸端からエンジンE側に突出する内側出力軸13Bの外周に前後進切換機構Sが支持される。
【0017】
以下、図2図5に基づいてクランク式の無段変速機Tの構造を説明する。
【0018】
図2および図3に示すように、無段変速機Tの支持フレーム11に入力軸12および出力軸13が相互に平行に支持されており、エンジンEに接続された入力軸12の回転が8個の伝達ユニット14…、出力軸13、前後進切換機構SおよびディファレンシャルギヤDを介して図示せぬ駆動輪W,Wに伝達される。
【0019】
8個の伝達ユニット14…の構造は実質的に同一構造であるため、以下、一つの伝達ユニット14を代表として構造を説明する。
【0020】
中空に形成された入力軸12の内部に軸線Lを共有する変速軸15が配置されており、この変速軸15の外周に10個のニードルベアリング16…を介して軸線L方向に9分割された偏心カム17…が回転自在に支持される。8個の伝達ユニット14…の合計9個の偏心カム17…は図示せぬ複数本のボルトで一体に結合されており、それら9個の偏心カム17…の内周部分が実質的に入力軸12を構成する。
【0021】
隣接する一対の偏心カム17,17は、入力軸12の軸線Lに対して距離dだけ偏心した中心O1を有する一対の円形のカム部17a,17aと、カム部17a,17aの径方向内側に形成された断面三日月状のガイド部17bとを備える。入力軸12と軸線Lを共有する変速軸15の外周には8個のピニオン18…が一体に形成されており、各ピニオン18は偏心カム17,17の断面三日月状のガイド部17bの切欠き部17cに収納される。各伝達ユニット14の偏心カム17,17のカム部17a,17aの位相は相互に45゜ずつずれている。
【0022】
図3および図4に示すように、偏心カム17,17のカム部17a,17aの外周面には、円板状の偏心ディスク19の軸線L方向両端面に形成された一対の偏心凹部19a,19aが、一対のニードルベアリング20,20を介して回転自在に支持される。偏心ディスク19の中心O2に対して偏心凹部19a,19aの中心O1(つまり偏心カム17,17のカム部17a,17aの中心O1)は距離dだけずれている。すなわち、入力軸12の軸線Lおよび偏心カム17,17のカム部17a,17aの中心O1間の距離dと、偏心カム17,17のカム部17a,17aの中心O1および偏心ディスク19の中心O2間の距離dとは同一である。
【0023】
偏心ディスク19の一対の偏心凹部19a,19aの底部間を連通させるように形成されたリングギヤ19bの歯先が、偏心カム17,17のガイド部17bの外周面に摺動可能に当接する。そして入力軸12の切欠き部12a(図3参照)から露出する変速軸15のピニオン18が、偏心ディスク19のリングギヤ19bに噛合する。偏心ディスク19の外周には、その偏心方向と逆方向に突出するカウンタウエイト19cが設けられる。そして偏心ディスク19の外周にはコネクティングロッド21の大端部21aがボールベアリング22を介して支持される。
【0024】
図2および図3に示すように、出力軸13の外周に設けられたワンウェイクラッチ23は、コネクティングロッド21の小端部21bにピン24を介して連結されたリング状の揺動リンク25と、揺動リンク25の内周に固定されたリング状のアウター部材26と、アウター部材26の内部に配置されて出力軸13に固定されたリング状のインナー部材27と、アウター部材26の内周面とインナー部材27の外周面との間に形成された楔状の空間に配置されて複数個のスプリング28…で付勢された複数個のローラ29…とを備える。
【0025】
そして入力軸12のエンジンEと反対側の軸端には、入力軸12に対して変速軸15を相対回転させることで、偏心ディスク19の偏心量εを増減して無段変速機Tの変速比を変更する変速アクチュエータ30が設けられる。
【0026】
図2に示すように、8個の伝達ユニット14…を支持する支持フレーム11は、軸線L方向中央に位置する中央フレーム31と、軸線L方向両側に位置する一対の側方フレーム32,33とからなり、中央フレーム31とエンジンE側に位置する一方の側方フレーム32との間に4個の伝達ユニット14…が配置され、中央フレーム31と反エンジンE側に位置する他方の側方フレーム33との間に4個の伝達ユニット14…が配置される。
【0027】
中央フレーム31は鉄製の板状部材であり、その長手方向両側の入力軸12側および出力軸13側に形成された2個のベアリング支持孔31a,31bを備える。
【0028】
エンジンE側に位置する側方フレーム32は基本的にアルミニウム合金で籠状に形成された鋳造部材であり、中央部に鉄製の板状部材であるベアリングホルダ38が鋳込みにより埋設される。ベアリングホルダ38の入力軸12側および出力軸13側には、それぞれベアリング支持孔38a,38bが形成される。
【0029】
反エンジンE側に位置する側方フレーム33も基本的にアルミニウム合金で籠状に形成された鋳造部材であり、その中央に鉄製の板状部材であるベアリングホルダ39が鋳込みにより埋設される。反エンジンE側に位置する側方フレーム33およびベアリングホルダ39の構造は、上述したエンジンE側に位置する側方フレーム32側およびベアリングホルダ38に対して面対称な構造であるため、その重複する説明は省略する。
【0030】
入力軸12の軸線L方向中央部に固定された偏心カム17は、中央フレーム31のベアリング支持孔31aに中央部支持ベアリング34を介して支持されるとともに、入力軸12の軸線L方向両端部は、一対の側方フレーム32,33のベアリングホルダ38,39のベアリング支持孔38a,39aにそれぞれ軸端部支持ベアリング36,36を介して支持される。同様に、出力軸13の軸線L方向中央部は、中央フレーム31のベアリング支持孔31bに中央部支持ベアリング35を介して支持されるとともに、出力軸13の軸線L方向両端部は、一対の側方フレーム32,33のベアリングホルダ38,39のベアリング支持孔38b,39bにそれぞれ軸端部支持ベアリング37,37を介して支持される。
【0031】
そして中央フレーム31および一対の側方フレーム32,33をボルト40…で一体に締結してサブアセンブリが組み立てられ、このサブアセンブリが中央フレーム31を貫通するボルト41…でミッションケース42の内部に締結される。
【0032】
次に、無段変速機Tの一つの伝達ユニット14の作用を説明する。
【0033】
図3および図5(A)〜図5(D)から明らかなように、入力軸12の軸線Lに対して偏心ディスク19の中心O2が偏心しているとき、エンジンEによって入力軸12が回転するとコネクティングロッド21の大端部21aが軸線Lまわりに偏心回転することで、コネクティングロッド21が往復運動する。
【0034】
その結果、コネクティングロッド21が往復運動する過程で図中左側に引かれると、揺動リンク25と共にアウター部材26が図3において反時計方向に揺動し、スプリング28…に付勢されたローラ29…がアウター部材26およびインナー部材27間の楔状の空間に噛み込み、アウター部材26およびインナー部材27がローラ29…を介して結合されることで、ワンウェイクラッチ23が係合してコネクティングロッド21の動きが出力軸13に伝達される。逆にコネクティングロッド21が往復運動する過程で図中右側に押されると、揺動リンク25と共にアウター部材26が図3において時計方向に揺動し、ローラ29…がスプリング28…を圧縮しながらアウター部材26およびインナー部材27間の楔状の空間から押し出され、アウター部材26およびインナー部材27が相互にスリップすることで、ワンウェイクラッチ23が係合解除してコネクティングロッド21の動きが出力軸13に伝達されなくなる。
【0035】
このようにして、入力軸12が1回転する間に、入力軸12の回転が所定時間だけ出力軸13に伝達されるため、入力軸12が連続回転すると出力軸13は間欠回転する。8個の伝達ユニット14…の偏心ディスク19…の偏心量εは全て同一であるが、偏心方向の位相が相互に45°ずつずれているため、8個の伝達ユニット14…が入力軸12の回転を交互に出力軸13に伝達することで、出力軸13は連続的に回転する。
【0036】
このとき、偏心ディスク19の偏心量εが大きいほど、コネクティングロッド21の往復ストロークが大きくなって出力軸13の1回の回転角が増加し、無段変速機Tの変速比が小さくなる。逆に、偏心ディスク19の偏心量εが小さいほど、コネクティングロッド21の往復ストロークが小さくなって出力軸13の1回の回転角が減少し、無段変速機Tの変速比が大きくなる。そして偏心ディスク19の偏心量εがゼロになると、入力軸12が回転してもコネクティングロッド21が移動を停止するために出力軸13は回転せず、無段変速機Tの変速比が最大(無限大)になる。
【0037】
入力軸12に対して変速軸15が相対回転しないとき、つまり入力軸12および変速軸15が同一速度で回転するとき、無段変速機Tの変速比は一定に維持される。変速アクチュエータ30により入力軸12に対して変速軸15を相対回転させると、各伝達ユニット14のピニオン18にリングギヤ19bを噛合させた偏心ディスク19の偏心凹部19a,19aが、入力軸12と一体の偏心カム17,17のカム17a,17aに案内されて回転し、入力軸12の軸線Lに対する偏心ディスク19の中心O2の偏心量εが変化する。
【0038】
図5(A)は変速比が最小の状態(変速比:TD)を示すもので、このとき入力軸12の軸線Lに対する偏心ディスク19の中心O2の偏心量εは、入力軸12の軸線Lから偏心カム17,17の中心O1までの距離dと、偏心カム17,17の中心O1から偏心ディスク19の中心O2までの距離dとの和である2dに等しい最大値になる。入力軸12に対して変速軸15が相対回転すると、入力軸12と一体の偏心カム17,17に対して偏心ディスク19が相対回転することで、図5(B)および図5(C)に示すように、入力軸12の軸線Lに対する偏心ディスク19の中心O2の偏心量εは最大値の2dから次第に減少して変速比が増加する。入力軸12に対して変速軸15が更に相対回転すると、入力軸12と一体の偏心カム17,17に対して偏心ディスク19が更に相対回転することで、図5(D)に示すように、ついには入力軸12の軸線Lに偏心ディスク19の中心O2が重なり合って偏心量εがゼロになり、変速比が最大(無限大)の状態(変速比:UD)になって出力軸13に対する動力伝達が遮断される。
【0039】
次に、図1に基づいて前後進切換機構Sの構造および作用を説明する。
【0040】
前後進切換機構Sは、内側出力軸13Bの外周に配置された遊星歯車機構51を備える、遊星歯車機構51は、内側出力軸13Bに固設されたサンギヤ52と、内側出力軸13Bに相対回転自在に支持されたキャリヤ53と、キャリヤ53の外周に相対回転自在に支持されたリングギヤ54と、キャリヤ53に回転自在に支持されてサンギヤ52およびリングギヤ54に噛合する複数のピニオン55…とを備える。リングギヤ54の外周にはファイナルドライブギヤ56が一体に設けられており、ファイナルドライブギヤ56はディファレンシャルギヤDのケーシングに設けたファイナルドリブンギヤ57に噛合する。
【0041】
キャリヤ53に設けられた第1ドグ58と、内側出力軸13Bに設けられた第2ドグ59と、ミッションケース42に設けられた第3ドグ60とが軸方向に並置されており、図示せぬアクチュエータで作動するシフトスリーブ61が図示するニュートラル位置にあるとき、第1ドグ58、第2ドグ59および第3ドグ60は相互に切り離され、シフトスリーブ61がニュートラル位置からドライブ位置に右動すると、第1ドグ58および第2ドグ59が結合されて第3ドグ60が切り離され、シフトスリーブ61がニュートラル位置からリバース位置に左動すると、第1ドグ58および第3ドグ60が結合されて第2ドグ59が切り離される。
【0042】
シフトスリーブ61がニュートラル位置にあるとき、内側出力軸13Bが空転してニュートラルレンジが確立する。シフトスリーブ61がドライブ位置にあるとき、内側出力軸13Bおよびキャリヤ53が結合され、遊星歯車機構51はロック状態になって内側出力軸13Bと一体に回転するため、内側出力軸13Bの回転がリングギヤ54からファイナルドライブギヤ56およびファイナルドリブンギヤ57を介してディファレンシャルギヤDに伝達され、車両は前進走行する。シフトスリーブ61がリバース位置にあるとき、キャリヤ53がミッションケース42に拘束されるため、内側出力軸13Bの回転がサンギヤ52からキャリヤ53を介して逆回転となってリングギヤ54に伝達され、更にリングギヤ54からファイナルドライブギヤ56およびファイナルドリブンギヤ57を介してディファレンシャルギヤDに伝達され、車両は後進走行する。
【0043】
図6に示すように、出力軸13の外側部分を構成する円筒状の外側出力軸13Aは、中央フレーム31に中央部支持ベアリング35を介して支持されるとともに、一対の側方フレーム32,33にそれぞれ軸端部支持ベアリング37,37を介して支持される。出力軸13の内側部分を構成する円柱状の内側出力軸13Bは、外側出力軸13Aの内部にオイル溜まりαを介して嵌合し、その左端(前後進切換機構S側と反対側の端部)が外側出力軸13Aの左端にスプライン結合43により結合される。外側出力軸13Aの右端(前後進切換機構S側の端部)から右方向に突出する内側出力軸13Bの中間部外周面と、その外側を覆う外側出力軸13Aの右端内周面との間にブッシュよりなるシール部材44が配置される。そして外側出力軸13Aの右端はボールベアリング45を介してミッションケース42に支持される。
【0044】
内側出力軸13Bの内部には軸方向に延びる油路13aが形成されており、油路13aの左端は閉塞され、油路13aの右端は開放する。内側出力軸13Bの右端に臨むミッションケース42にはオイル供給部材46が設けられており、図示せぬオイルポンプからミッションケース42内の油路を通して供給されたオイルは、オイル供給部材46を介して内側出力軸13Bの油路13aに供給される。外側出力軸13Aから突出する内側出力軸13Bの右側部分には油路13aから径方向外側に貫通する複数の油孔13b…が形成され、外側出力軸13Aの内部に嵌合する内側出力軸13Bの左側部分には油路13aから径方向外側に貫通してオイル溜まりαに連通する複数の油孔13c…が形成される。また外側出力軸13Aには、オイル溜まりαから径方向外側に貫通する複数の油孔13d…が形成される。
【0045】
出力軸13は上記構成を備えるので、オイル供給部材46から内側出力軸13Bの内部の油路13aに供給されたオイルの一部は、内側出力軸13Bを径方向に貫通する油孔13b…を通過して径方向外側に飛散し、その外周に配置された前後進切換機構Sを潤滑する。また内側出力軸13Bの油路13aに供給されたオイルの他の一部は、内側出力軸13Bを径方向に貫通する油孔13c…を通過してオイル溜まりαに供給され、そこから更に外側出力軸13Aを径方向に貫通する油孔1dc…を通過して径方向外側に飛散し、その外周に配置されたワンウェイクラッチ23…を潤滑する。
【0046】
このとき、外側出力軸13Aの右端に設けられたシール部材44でオイル溜まりαの右端をシールしたので、オイル溜まりαに保持されたオイルが外側出力軸13Aの右端から漏れたり、外側出力軸13Aの右端からオイル溜まりαにダストが侵入したりするのを阻止することできる。
【0047】
また外側出力軸13Aは中央部および左右両端部が3個のボールベアリング35,37,37を介して支持フレーム11に強固に支持されており、内側出力軸13Bは左端が外側出力軸13Aの左端にスプライン結合43されるとともに、右端がボールベアリング45を介してミッションケース42に支持されているので、内側出力軸13Bの両端部を強固に支持して振動の発生を効果的に防止することができる。
【0048】
ところで、無段変速機Tの出力軸13は、間欠的に係合する8個のワンウェイクラッチ23…から交互に荷重を受けるため、捩れ振動が発生する可能性がある。エンジンEの常用回転数領域(アイドリング回転数以上の回転数領域)で出力軸13の下流側の動力伝達経路が捩れ共振を起こすと車体の振動・騒音特性が低下するため、その捩れ共振周波数をエンジンEの常用回転数領域から外して捩れ共振の発生を防止することが必要である。
【0049】
出力軸13の下流側の動力伝達経路の捩れ共振周波数ωn は、出力軸13の捩れ剛性をKとし、出力軸13の下流側の動力伝達経路の慣性モーメントをIとしたときに
ωn =(K/I)1/2
で与えられるため、捩れ共振周波数ωn を低い側にずらして捩れ共振の発生を防止するには、出力軸13の捩れ剛性Kを低下させれば良い。出力軸13の捩れ剛性Kは、トルクをT、捩れ角をθ、横弾性係数をG、極断面二次モーメントをIp、直径をd、長さをLsとしたとき、
K=T/θ=G・Ip/Ls=G・(πd4 /32)/Ls
で与えられるため、出力軸13の長さLsを増加させるとともに、出力軸13の直径dを減少させることで捩れ剛性Kを低下させれば、捩れ共振周波数ωn を低い側にずらすことができる。
【0050】
しかしながら、出力軸13の長さLsを増加させることは、無段変速機Tを大型化させる原因となり、また出力軸13の直径dを減少させることは強度低下の原因となるために現実的ではない。
【0051】
そこで本実施の形態では、出力軸13の直径dを減少させることなく、かつ出力軸13の全長Lsを増加させることなく、出力軸13の実質的な長さLs′を増加させて捩れ剛性Kを低下させている。
【0052】
図6において、外側出力軸13Aおよび内側出力軸13Bを含む出力軸13の長さはLsであるが、本実施の形態では長さLs1の中空の外側出力軸13Aの左端と、その内部に嵌合する長さLs2の内側出力軸13Bの左端とをスプライン結合43したことにより、その全長Lsを変化させることなく、実質的な長さLs′を、Ls′=Ls1+Ls2>Lsとして捩れ剛性Kを低下させ、出力軸13の下流側の動力伝達経路の捩れ共振周波数ωn を低い側にずらすことができる。
【0053】
図7は、横軸を無段変速機Tの入力回転数とし、縦軸を出力軸13のトルク変動成分としたグラフである。図7(A)は比較例であり、外側出力軸13Aの内部に内側出力軸13Bを嵌合させることなく、外側出力軸13Aおよび内側出力軸13Bを直列に結合したものに相当する。この場合、出力軸13の実質的な全長はLsとなり、エンジンEの常用回転数領域で出力軸13の下流側の動力伝達経路が捩れ共振して振動・騒音特性が悪化していることが分かる。
【0054】
一方、図7(B)は実施の形態であり、長さLs1の外側出力軸13Aと長さLs2の内側出力軸13Bを内外に嵌合させて結合したので、その実質的な全長Ls′が、Ls′=Ls1+Ls2>Lsに増加し、捩れ共振周波数ωn を低い側にずらしてエンジンEの常用回転数領域で捩れ共振の発生を防止することで、無段変速機Tの大型化を招くことなく振動・騒音特性を向上させることができる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0056】
例えば、本発明の駆動源は実施の形態のエンジンEに限定されず、電動モータ等の他の駆動源であっても良い。
【符号の説明】
【0057】
11 支持フレーム
12 入力軸
13 出力軸
13a 油路
13A 外側出力軸
13B 内側出力軸
14 伝達ユニット
15 変速軸
17 偏心カム
18 ピニオン
19 偏心ディスク(偏心部材)
19b リングギヤ
21 コネクティングロッド
23 ワンウェイクラッチ
26 アウター部材
30 変速アクチュエータ
42 ミッションケース
44 シール部材
45 ボールベアリング(ベアリング)
E エンジン(駆動源)
L 入力軸の軸線
S 前後進切換機構
α オイル溜まり
ε 偏心部材の偏心量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7