(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-198101(P2018-198101A)
(43)【公開日】2018年12月13日
(54)【発明の名称】磁気ヘッドおよびこれを備えるディスク装置
(51)【国際特許分類】
G11B 5/39 20060101AFI20181116BHJP
G11B 5/31 20060101ALI20181116BHJP
G11B 5/02 20060101ALI20181116BHJP
【FI】
G11B5/39
G11B5/31 Q
G11B5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-101910(P2017-101910)
(22)【出願日】2017年5月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
【テーマコード(参考)】
5D033
5D034
5D091
【Fターム(参考)】
5D033AA05
5D033BA07
5D033BA80
5D033BB43
5D033BB51
5D034AA05
5D034BA03
5D034BB08
5D034BB12
5D034BB20
5D034CA00
5D091AA10
5D091CC12
5D091DD20
5D091GG33
(57)【要約】
【課題】再生信号品質の劣化を抑制し、高記録密度化が可能な磁気ヘッドおよびこれを備えたディスク装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、磁気ヘッドは、磁気抵抗効果素子55と、ダウントラック方向において、磁気抵抗効果素子のトレーリング側およびリーディング側に設けられた第1磁気シールド56および第2磁気シールド57と、トラック幅方向において、磁気抵抗効果素子の両側にそれぞれ設けられたサイドシールド80a、80bと、を備えている。少なくとも一方のサイドシールドは、トレーリング側部分とリーディング側部分とで異なる透磁率を有している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗効果素子と、
ダウントラック方向において、前記磁気抵抗効果素子のトレーリング側およびリーディング側に設けられた第1磁気シールドおよび第2磁気シールドと、
トラック幅方向において、前記磁気抵抗効果素子の両側にそれぞれ設けられたサイドシールドと、を備え、
前記サイドシールドの少なくとも一方は、トレーリング側部分とリーディング側部分とで異なる透磁率を有している磁気ヘッド。
【請求項2】
前記磁気抵抗効果素子は、前記第2磁気シールドに隣接して設けられ磁化方向が固定された第1磁性体層と、前記第1磁性体層のトレーリング側に設けられ、磁化方向が変化可能な第2磁性体層と、を含んでいる請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
上記サイドシールドのトレーリング側部分は第1透磁率を有し、前記リーディング側部分は、前記第1透磁率よりも高い第2透磁率を有している請求項2に記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
前記サイドシールドの各々は、前記第1磁気シールド側に設けられた第1サイドシールド層と、前記第2磁気シールド側に設けられた第2サイドシールド層とを含み、
前記第1サイドシールド層の第1透磁率と、第2サイドシールド層の第2透磁率とが相違している請求項2に記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
前記第2透磁率は、前記第1透磁率よりも高い請求項4に記載の磁気ヘッド。
【請求項6】
前記磁気抵抗効果素子、第1サイドシールド層、および前記第2サイドシールド層が露出したディスク対向面を有し、
前記ディスク対向面からの前記第2サイドシールド層の高さは、前記ディスク対向面からの前記第1サイドシールド層の高さよりも高く形成されている請求項5に記載の磁気ヘッド。
【請求項7】
前記第1サイドシールド層および第2サイドシールド層は、前記第2磁性体層および第1磁性体層にそれぞれ対向して配置されている請求項4から6のいずれか1項に記載の磁気ヘッド。
【請求項8】
ディスク状の記録媒体と、
前記記録媒体に対して情報の再生を行う請求項1から7のいずれか1項に記載の磁気ヘッドと、
を備えるディスク装置。
【請求項9】
前記記録媒体は、軟磁性層と、前記軟磁性層の上に設けられ、記録媒体面に対して垂直な磁気異方性を有する磁気記録層と、を備えている請求項8に記載のディスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、磁気ヘッドおよびこれを備えるディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク装置として、磁気ディスクドライブは、ケース内に配設されたディスク状の記録媒体、すなわち、磁気ディスクと、磁気ディスクに対して情報のリード/ライトを行う磁気ヘッドと、を備えている。磁気ヘッドは、例えば、記録ヘッドおよび再生ヘッド(再生素子)を含んでいる。
記録ヘッドの主磁極の形状に起因して、主磁極のエッジ近傍での磁界分布は、ダウントラック方向に垂直とならず、湾曲している。すなわち、磁気記録時、記録ヘッドから発生する磁界強度、傾度がトラックエッジ部にかけて劣化するため、磁気ディスク上の記録磁化パターンの転移形状は湾曲した形状となる。
【0003】
このような湾曲した転移形状の記録磁化パターンを再生ヘッドで再生した場合、再生ヘッドの再生感度の分布と、磁気ディスク上の磁化パターンの形状とが異なるため、再生信号の品質劣化が生じる。再生時の品質劣化は、磁化パターンの高線密度、高トラックピッチ化により、一層大きな影響を受ける。湾曲部にかからないように再生ヘッドの再生素子のサイズを縮小する方法が考えられるが、製造プロセス、出力劣化の観点からも再生素子のサイズ縮小には限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−238342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の実施形態の課題は、再生信号品質の劣化を抑制し、高記録密度化が可能な磁気ヘッドおよびこれを備えたディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、磁気ヘッドは、磁気抵抗効果素子と、ダウントラック方向において、前記磁気抵抗効果素子のトレーリング側およびリーディング側に設けられた第1磁気シールドおよび第2磁気シールドと、トラック幅方向において、前記磁気抵抗効果素子の両側にそれぞれ設けられたサイドシールドと、を備え、前記サイドシールドの少なくとも一方は、トレーリング側部分とリーディング側部分とで異なる透磁率を有している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係るハードディスクドライブ(HDD)を概略的に示すブロック図。
【
図2】
図2は、前記HDDにおける磁気ヘッド、サスペンション、磁気ディスクを示す側面図。
【
図3】
図3は、前記磁気ヘッドのヘッド部を拡大して示す断面図。
【
図4】
図4は、前記磁気ヘッドのヘッド部をABS側から見た平面図。
【
図5】
図5は、前記磁気ヘッドの再生ヘッドを拡大して示す断面図。
【
図6】
図6は、磁気ディスク上の記録パターンを一例を示す図。
【
図7】
図7は、実施形態に係る再生ヘッドの再生感度分布と、比較例に係る再生ヘッドの再生感度分布とを示す図。
【
図8】
図8は、実施形態に係る再生ヘッドの再生信号のSN比と、比較例に係る再生ヘッドの再生信号のSN比とを比較して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照しながら、実施形態に係るディスク装置ついて説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
(実施形態)
ディスク装置として、実施形態に係るハードディスクドライブ(HDD)について詳細に説明する。
図1は、実施形態に係るHDDを概略的に示すブロック図、
図2は、浮上状態の磁気ヘッドおよび磁気ディスクを示す側面図である。
図1に示すように、HDD10は、矩形状の筐体11と、筐体11内に配設された記録媒体としての磁気ディスク12と、磁気ディスク12を支持および回転するスピンドルモータ21と、磁気ディスク12に対してデータの書込み(ライト)、読出し(リード)を行う複数の磁気ヘッド16と、を備えている。また、HDD10は、磁気ヘッド16を磁気ディスク12上の任意のトラック上に移動するとともに位置決めするヘッドアクチュエータ18を備えている。ヘッドアクチュエータ18は、磁気ヘッド16を移動可能に支持するキャリッジアッセンブリ20と、このキャリッジアッセンブリ20を回動させるボイスコイルモータ(VCM)22とを含んでいる。
【0010】
HDD10は、ヘッドアンプIC30と、メインコントローラ40と、ドライバIC48と、を備えている。ヘッドアンプIC30は、例えば、キャリッジアッセンブリ20に設けられ、磁気ヘッド16に電気的に接続されている。メインコントローラ40およびドライバIC48は、例えば、筐体11の背面側に設けられた図示しない制御回路基板に構成されている。メインコントローラ40は、R/Wチャネル42と、ハードディスクコントローラ(HDC)44と、マイクロプロセッサ(MPU)46と、を備えている。メインコントローラ40は、ヘッドアンプIC30を介して磁気ヘッド16に電気的に接続されている。また、メインコントローラ40は、ドライバIC48を介して、VCM22及びスピンドルモータ21に電気的に接続されている。HDC44は、ホストコンピュータ45に接続可能である。
【0011】
図1および
図2に示すように、磁気ディスク12は、垂直磁気記録媒体として構成されている。磁気ディスク12は、例えば、直径約2.5インチ(6.35cm)の円板状に形成され非磁性体からなる基板101を有している。基板101の各表面には、下地層として軟磁気特性を示す材料からなる軟磁性層102と、その上層部に、磁気ディスク12の表面に対して垂直方向に磁気異方性を有する垂直磁気記録層103と、保護膜104とが順次積層されている。磁気ディスク12は、スピンドルモータ21のハブに互いに同軸的に嵌合されている。磁気ディスク12は、スピンドルモータ21により所定の速度で矢印B方向に回転される。
キャリッジアッセンブリ20は、筐体11に回動自在に固定された軸受部24と、軸受部24から延出した複数のサスペンション26と、を有している。
図2に示すように、磁気ヘッド16は、各サスペンション26の延出端に支持されている。磁気ヘッド16は、キャリッジアッセンブリ20に設けられた配線部材28を介して、ヘッドアンプIC30に電気的に接続されている。
【0012】
図2に示すように、磁気ヘッド16は浮上型のヘッドとして構成され、ほぼ直方体状に形成されたスライダ15と、スライダ15の流出端(トレーリング)側の端部に形成されたヘッド部17とを有している。スライダ15は、例えば、アルミナとチタンカーバイドの焼結体(アルチック)で形成され、ヘッド部17は複数層の薄膜により形成されている。
スライダ15は、磁気ディスク12の表面に対向する矩形状のディスク対向面(媒体対向面、空気支持面(ABS))13を有している。スライダ15は、磁気ディスク12の回転によってディスク表面とABS13との間に生じる空気流Cにより、磁気ディスク12の表面から所定量浮上した状態に維持される。空気流Cの方向は、磁気ディスク12の回転方向Bと一致している。スライダ15は、空気流Cの流入側に位置するリーディング端15aおよび空気流Cの流出側に位置するトレーリング端15bを有している。磁気ディスク12の回転に伴い、磁気ヘッド16は、磁気ディスク12に対して矢印A方向(ヘッド走行方向)、すなわち、ディスクの回転方向Bと反対の方向、に走行する。
【0013】
図3は、ヘッド部17を拡大して示す断面図、
図4は、ABS側から見た磁気ヘッドのヘッド部を拡大して示す平面図である。磁気ヘッド16のヘッド部17は、スライダ15のトレーリング端15bに薄膜プロセスで形成された再生ヘッド(リードヘッド)54および記録ヘッド58を有し、分離型の磁気ヘッドとして形成されている。再生ヘッド54および記録ヘッド58は、スライダ15のABS13に露出する部分を除いて、非磁性の保護絶縁膜53により覆われている。保護絶縁膜53は、ヘッド部14の外形を構成している。
【0014】
記録ヘッド58は、再生ヘッド54に対して、スライダ15のトレーリング端15b側に設けられている。記録ヘッド58は、ABS13に対して垂直方向の記録磁界を発生させる高透磁率材料からなる主磁極60、この主磁極60にライトギャップWGを置いて対向するライトシールド62、主磁極60の上部をライトシールド62に物理的に接合する接合部63、および、主磁極60とライトシールド62で構成される磁気コアに巻き付けられた記録コイル64等を備えている。主磁極60は、高透磁率、高飽和磁束密度を有する軟磁性材料から形成され、その先端60aはABS13に露出している。ライトシールド62は、軟磁性材料で形成され、その先端部62aは、ABS13に露出している。主磁極60およびライトシールド62は、スライダ15の長軸(中心軸C)上に、かつ、ヘッド走行方向Aに並んで配置されている。
図4に示すように、主磁極60の先端部60aの幅(トラック幅方向TWに沿った幅)W1は、磁気ディスク12におけるトラックの幅Tに対し同等以下に設定されている。
【0015】
図3および
図4に示すように、再生ヘッド54は、記録ヘッド58のリーディング側、すなわち、流入側に設けられている。再生ヘッド54は、磁気抵抗効果素子55と、ダウントラック方向DTにおいて、磁気抵抗効果素子55のトレーリング側(流出側)およびリーディング側(流入側)に、磁気抵抗効果素子55を挟むように配置された第1磁気シールド膜56および第2磁気シールド膜57と、サイドシールド80a、80bと、を備えている。磁気抵抗効果素子55、第1および第2磁気シールド膜56、57、およびサイドシールド80a、80bは、ABS13に対してほぼ垂直に延在している。磁気抵抗効果素子55、第1および第2磁気シールド膜56、57、およびサイドシールド80a、80bの下端は、ABS13に露出している。
【0016】
図5は、再生ヘッドの先端部を拡大して示す断面図である。
図4および
図5に示すように、磁気抵抗効果素子55は、磁化方向が固定された第1磁性体層(ピン層)70と、ピン層70上に配置された絶縁層71と、絶縁層71上に設けられ、外部磁界に応じて磁化方向が変化する第2磁性体層(フリー層)72と、を有している。ピン層70は、第2磁気シールド膜57に対向して設けられている。フリー層72は、ピン層70と第1磁気シールド膜56との間で、絶縁層71上に設けられている。フリー層72上に非磁性層74、非磁性キャップ層75が順に積層され、更に、非磁性キャップ層75は非磁性層76を介して第1磁気シールド膜56に当接している。磁気抵抗効果素子55のトラック幅方向TWの幅W2は、磁気ディスク12のトラック幅Tに対し同等以下に設定されている。
【0017】
サイドシールド80a、80bは、トラック幅方向TWにおいて、磁気抵抗効果素子55の両側にそれぞれ配置されている。サイドシールド80a、80bと磁気抵抗効果素子55および第2磁気シールド膜57との間に、絶縁層84がそれぞれ設けられている。サイドシールド80a、80bのリーディング側(流入側)は、絶縁層84を介して第2磁気シールド膜57に当接している。サイドシールド80a、80bのトレーリング側(流出側)は、非磁性層76を介して第1磁気シールド膜56に当接している。サイドシールド80a、80bの少なくとも一方は、サイドシールドのリーディング側とトレーリング側とで透磁率が相違している。
【0018】
本実施形態では、サイドシールド80aは、トレーリング側(流出側、記録ヘッド側)に位置する第1サイドシールド層81aと、リーディング側(流入側)に配置された第2サイドシールド層82aとを有している。ダウントラック方向DTにおいて、第1サイドシールド層81aと第2サイドシールド層82aとの境界は、磁気抵抗効果素子55のフリー層72とピン層70との境界にほぼ整列している。これにより、第1サイドシールド層81aは、フリー層72および非磁性キャップ層75に対向し、第2サイドシールド層82aは、ピン層70に対向している。第1サイドシールド層81aの透磁率μ1と第2サイドシールド層82aの透磁率μ2とが互いに相違している。ここでは、透磁率μ1よりも透磁率μ2を高く(μ1<μ2)している。
【0019】
同様に、サイドシールド80bは、トレーリング側(流出側、記録ヘッド側)に位置する第1サイドシールド層81bと、リーディング側(流入側)に配置された第2サイドシールド層82bとを有している。ダウントラック方向DTにおいて、第1サイドシールド層81bと第2サイドシールド層82bとの境界は、フリー層72とピン層70との境界にほぼ整列している。これにより、第1サイドシールド層81bは、フリー層72および非磁性キャップ層75に対向し、第2サイドシールド層82bは、ピン層70に対向している。第1サイドシールド層81bの透磁率μ1と第2サイドシールド層82bの透磁率μ2とが互いに相違している。ここでは、透磁率μ1よりも透磁率μ2を高く(μ1<μ2)している。
【0020】
本実施形態によれば、第1サイドシールド層81a、81bと、第2サイドシールド層82a、82bとは、透磁率μ1と透磁率μ2の関係がμ1<μ2となるように、互いに異なる磁性材料で形成されている。第1サイドシールド層81a、81bと、第2サイドシールド層82a、82bとは、例えば、NiFe、CoFe、CoZrTa、CoZrNb等を用い、例えば、FeNiのNi含有量を変える、Mb,Cu、Cr等を添加する、あるいは、異なる材料を用いることで、透磁率μ1<透磁率μ2としている。
【0021】
また、第1サイドシールド層81a、81bと、第2サイドシールド層82a、82bとは、同一の磁性材料で形成してもよい。本実施形態では、
図5に示すように、第1サイドシールド層81a、81bの高さ(ABS13に垂直な方向の高さ)をSTH1と、第2サイドシールド層82a、82bの高さをSTH2とした場合、第1サイドシールド層81a、81bと、第2サイドシールド層82a、82bとは、STH1<STH2となるように形成されている。第1サイドシールド層81a、81bの高さSTH1は、フリー層72の高さ以下に設定されている。
【0022】
次に、以上のように構成された磁気ヘッドの作用について説明する。
図6は、磁気ディスク12上に記録された記録磁化パターンの一例を模式的に示す図である。記録ヘッド58から発生する磁界の強度、傾度がトラックエッジ部にかけて低下するため、図に示すように、磁気ディスク12上の記録磁化パターンの転移形状は、トラックエッジ部が湾曲した形状となる。
図7は、実施形態に係る再生ヘッド54の再生感度分布と、比較例に係る再生ヘッドの再生感度分布とを示している。本実施形態では、フリー層の物理幅は40nm、膜厚は5nmとした。サイドシールドは、トレーリング側に配置されるサイドシールド層81a、81bとリーディング側に配置されるサイドシールド層82a、82bのそれぞれの透磁率μ1、μ2の関係がμ1<μ2となるように形成している。なお、比較例に係る再生ヘッドは、サイドシールドの透磁率がリーディング側とトレーリング側とで一定に設定されているものとしている。
【0023】
図7は、再生ヘッドの再生感度分布を計算し、各トラック幅位置において、再生ヘッドの再生感度が最大となるヘッド走行方向Aの位置をそれぞれプロットしたものである。黒丸は、比較例に係る再生ヘッドのプロファイルを示し、白丸は、本実施形態に係る再生ヘッドのプロファイルを示している。比較例、実施形態ともに、再生ヘッドのフリー層は、ヘッド走行位置16nmに位置している。
黒丸で示すように、比較例に係る再生ヘッドでは、再生感度が最大となる位置は、フリー層の位置に沿ってトラック幅方向に直線的に延在している。これに対して、白丸で示すように、本実施形態の再生ヘッドによれば、トラックセンター近傍ではフリー層の位置に沿って再生ヘッドの再生感度が最大となっているが、トラックセンターから離れるに従い、再生ヘッドの再生感度が最大となるヘッド走行方向位置は、リーディング側(流入側)にシフトしている。このように、本実施形態の再生ヘッドによれば、再生感度の分布をトラックエッジ部でリーディング側に湾曲させることができ、
図6に示したような磁気ディスク12上の記録磁化パターンの形状に近づけることができる。従って、本実施形態に係る再生ヘッドによれば、記録磁化パターンが湾曲している場合でも、磁気磁化パターンを高精度にリードすることが可能となる。
【0024】
図8は、単一記録磁化パターンを読み込んだ場合の、実施形態に係る再生ヘッドの再生信号のSN比と、比較例に係る再生ヘッドの再生信号のSN比とを比較して示している。この図から、比較例に対して、本実施形態の再生ヘッドでは、再生信号のSN比が1.5dB程度、改善し、再生時の信号品質が改善していることが分かる。
【0025】
以上のように構成されたHDDおよび磁気ヘッドによれば、再生ヘッドのサイドシールドをトレーリング側とリーディング側とで透磁率が異なる構成とすることにより、再生感度の分布を湾曲した磁化転移形状に近づけることが可能となる。これにより、再生時の信号品質の劣化を抑制し、信号品位の向上および高密度記録化が可能な磁気ヘッドおよびこれを備えたディスク装置を得ることができる。
【0026】
本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、再生ヘッドのサイドシールドは、2層に限らず、3層以上のサイドシールド層を用いることが可能である。また、サイドシールドを一層とし、トレーリング側からリーディング側に向かって、体積を増加させる構成としてもよい。更に、両方のサイドシールドの透磁率を変化させる構成に限らず、片方のサイドシールドのみを透磁率がトレーリング側とリーディング側とで異なる構成としてもよく、この場合でも、信号品位の向上を図ることが可能である。ディスク装置を構成する要素の材料、形状、大きさ等は、上述した実施形態に限定されることなく、必要に応じて種々変更可能である。
【符号の説明】
【0027】
10…磁気ディスク装置、11…筐体、12…磁気ディスク、13…ABS、
14…スピンドルモータ、15…スライダ、16…磁気ヘッド、17…ヘッド部、
18…ヘッドアクチュエータ、30…ヘッドアンプIC、40…メインコントローラ、
54…再生ヘッド、55…磁気抵抗効果素子、56…第1磁気シールド膜、
57…第2磁気シールド膜、58…記録ヘッド、70…第1磁性体層(ピン層)、
72…第2磁性体層(フリー層)、80a、80b…サイドシールド、
81a、81b…第1サイドシールド層、81b、82b…第2サイドシールド層