特開2018-198123(P2018-198123A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-198123(P2018-198123A)
(43)【公開日】2018年12月13日
(54)【発明の名称】燃料電池システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04228 20160101AFI20181116BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20181116BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20181116BHJP
【FI】
   H01M8/04 Y
   H01M8/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-101567(P2017-101567)
(22)【出願日】2017年5月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】岡村 雄士
(72)【発明者】
【氏名】高久 晃一
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AC09
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB34
5H127BB37
5H127CC01
5H127DA17
5H127DB13
5H127DB74
5H127DB93
5H127DC56
5H127DC59
5H127DC81
5H127EE19
5H127FF10
(57)【要約】
【課題】燃料電池システムに含まれる気液分離器に設けられるドレイン弁が凍結することを回避する。
【解決手段】燃料電池システム10を構成する制御部(ECU48)は、気液分離器32に設けられたドレイン弁36を開状態として該気液分離器32内から水分を排出した後、ドレイン弁36に開閉指令を発する。このため、ドレイン弁36が開閉する。これに伴いドレイン弁36が振動することにより、該ドレイン弁36に付着していた水分が除去される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード電極から排出された燃料排ガスに含まれる水分を分離する気液分離器と、前記水分を前記気液分離器から排出するためのドレイン弁とが設けられた燃料排ガス排出流路を有する燃料電池システムの制御方法であって、
前記ドレイン弁を開放して前記水分を前記気液分離器から排出する排出ステップと、
前記ドレイン弁を振動させることで該ドレイン弁に付着した前記水分を脱落させる振動ステップと、
前記ドレイン弁を閉止する閉止ステップと、
を有することを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の制御方法において、前記排出ステップ、前記振動ステップ及び前記閉止ステップを、燃料電池の運転停止期間であり且つ凍結が予測される条件が成立したときに行うことを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の制御方法において、前記振動ステップで前記ドレイン弁を通電によって開閉し、且つ該ドレイン弁の弁部材を水平方向に沿って変位させることを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
【請求項4】
請求項3記載の制御方法において、前記振動ステップで前記ドレイン弁の開閉を複数回行うことを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の制御方法において、前記アノード電極に燃料ガスを供給しながら前記排出ステップを行うことを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
【請求項6】
請求項5記載の制御方法において、燃料ガス供給流路、前記アノード電極及び前記燃料排ガス排出流路内の燃料ガスの圧力が予め設定された所定値以上となったときに前記ドレイン弁を開状態とし、前記気液分離器から前記水分を排出することを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質を挟んで対向するアノード電極とカソード電極を有する燃料電池を含んで構成される燃料電池システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、燃料電池は、電解質(例えば、固体高分子膜)を挟んで対向するアノード電極とカソード電極を有し、アノード電極に水素等の燃料ガス、カソード電極に圧縮空気等の酸化剤ガスが供給されることで発電する。燃料ガス及び酸化剤ガスは、少なくとも一部が消費されるが、未反応分が燃料排ガス、酸化剤排ガスとしてアノード電極、カソード電極から、燃料排ガス排出流路、酸化剤排ガス排出流路にそれぞれ排出される。このように、燃料電池に対して反応ガスの供給機器、排出機器等が付設されることで、燃料電池システムが構成される。
【0003】
燃料排ガス排出流路には、燃料排ガスに含まれる水分を分離するための気液分離器が設けられる。燃料電池が定常運転されている期間中は、例えば、気液分離器内に所定量の水が貯留されたときにドレイン弁(排気排水弁)が開き、これにより気液分離器内の排水がなされる。
【0004】
燃料電池の運転を停止した後に燃料電池システム内に水分が残留していると、冬季等、燃料電池の使用環境によっては水分が凍結する可能性がある。そこで、特許文献1において、燃料電池の運転停止後、燃料排ガス排出流路に設けたドレイン弁(排気排水弁)が0℃であり且つ外気温が氷点下以下に低下すると判断されたとき、ドレイン弁を開くことが提案されている。この技術は、ドレイン弁を介して燃料ガスを排出することで該ドレイン弁に付着した水分をブローし、これによりパージ弁の凍結防止を試みるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−77959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるようにブローを行うのみでは、気液分離器内の水分を排出することは可能であるが、水素の流通路以外の箇所、例えば、ドレイン弁の表面等に付着した水分を除去することは困難である。このような箇所に残留した水分が凍結するような事態が生じると、ドレイン弁の開閉が困難となる。
【0007】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、ドレイン弁が凍結する懸念を払拭し得る燃料電池システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、アノード電極から排出された燃料排ガスに含まれる水分を分離する気液分離器と、前記水分を前記気液分離器から排出するためのドレイン弁とが設けられた燃料排ガス排出流路を有する燃料電池システムの制御方法であって、
前記ドレイン弁を開放して前記水分を前記気液分離器から排出する排出ステップと、
前記ドレイン弁を振動させることで該ドレイン弁に付着した前記水分を脱落させる振動ステップと、
前記ドレイン弁を閉止する閉止ステップと、
を有することを特徴とする。
【0009】
このように、本発明では、気液分離器内の水分を、ドレイン弁を介して排出した後に該ドレイン弁を振動させるようにしている。このため、ドレイン弁の表面等、燃料ガスの流通路以外の箇所に水分が付着しているような場合であっても、該水分が機械的振動によってドレイン弁から脱落する。すなわち、ドレイン弁から水分を除去することができる。このため、外気温が氷点下以下である場合等、凍結の可能性がある環境下であっても、ドレイン弁が凍結する懸念が払拭される。
【0010】
そして、ドレイン弁が凍結することが防止されることにより、該ドレイン弁が所定の開閉動作を営む。このため、燃料電池システムを定常運転することが可能となる。
【0011】
燃料電池が発電している運転期間は、燃料電池システムが所定の温度となっているために凍結の懸念は特にない。従って、ドレイン弁の振動は、燃料電池が停止して該燃料電池が低温であり、且つ凍結が予測される条件が成立したときに行うことが好ましい。これにより、燃料電池の停止期間中にドレイン弁が凍結することを回避することができる。従って、燃料電池の運転を再開したときにドレイン弁を即座に開閉させることが可能である。
【0012】
ドレイン弁は通電によって開閉するものであるとよい。この場合、通電・通電停止によってドレイン弁を開閉させることで、該ドレイン弁を容易に振動させることができる。そして、ドレイン弁の弁部材を水平方向に沿って変位させることが好ましい。この場合、ドレイン弁から脱落した水分が、重力の作用下に下方に移動することが容易である。従って、ドレイン弁から水分を除去することが一層容易となる。
【0013】
また、ドレイン弁の開閉を複数回行うことが好ましい。この場合、ドレイン弁が複数回にわたって振動するので、該ドレイン弁に付着した水分が一層脱落し易くなるからである。
【0014】
なお、運転停止状態にある燃料電池システムの気液分離器内から水分を排出するには、例えば、アノード電極に燃料ガスを供給すればよい。
【0015】
この場合、燃料ガス供給流路、アノード電極及び燃料排ガス排出流路内の燃料ガスの圧力が予め設定された所定値以上となったときにドレイン弁を開状態とすることが好ましい。燃料ガスの圧力が大きくなっているので、気液分離器内から水分を排出することが容易となるからである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、燃料電池システムを構成する気液分離器内の水分を、開状態のドレイン弁を介して排出し、その後に該ドレイン弁を振動させるようにしている。この振動により、ドレイン弁の表面等に付着した水分が脱落する。これにより、ドレイン弁に付着した水分を除去することができる。従って、外気温が氷点下以下である場合等、凍結が予測される環境下であっても、ドレイン弁が凍結する懸念が払拭される。
【0017】
このようにして凍結することが防止されたドレイン弁は、燃料電池システムの運転時に要求される所定の開閉動作を行う。このため、燃料電池システムを定常運転することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る燃料電池システムの制御方法が実施される燃料電池システムの要部概略構成図である。
図2図1の燃料電池システムを構成する気液分離器に設けられるドレイン弁の要部概略側方断面図である。
図3図2のドレイン弁が開状態にあるときの要部拡大側方断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る燃料電池システムの制御方法の概略フローである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る燃料電池システムの制御方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
はじめに、燃料電池システムにつき図1を参照して概略説明する。燃料電池システム10は、図示しない燃料電池が複数個積層されることで構成された燃料電池スタック12を有する。個々の燃料電池は、例えば、固体高分子膜からなる電解質と、該電解質を挟んで対向するアノード電極及びカソード電極を有する電解質・電極構造体が一対のセパレータで挟持されることで構成される。なお、この構成は周知であり、従って、図示及び詳細な説明は省略する。
【0021】
燃料電池システム10は、さらに、燃料電池スタック12に付設されてアノード電極に燃料ガスを供給するための水素供給流路14(燃料ガス供給流路)と、アノード電極から燃料排ガスを排出するための水素排出流路16(燃料排ガス排出流路)とを有する。この中、水素供給流路14には、燃料ガスとしての高圧水素を貯留した水素タンク18が接続される。
【0022】
水素供給流路14は二叉に分岐しており、このため、水素供給流路14は、第1分岐路20、第2分岐路22を含む。これら第1分岐路20、第2分岐路22には、それぞれ、第1インジェクタ24、第2インジェクタ26が設けられる。第1分岐路20、第2分岐路22は、第1インジェクタ24、第2インジェクタ26の下流側で合流して合流路28となり、該合流路28にエジェクタ30が設けられる。
【0023】
一方の水素排出流路16には、圧力センサ31が設けられるとともに気液分離器32が接続される。この気液分離器32から出発する循環流路34は、前記エジェクタ30に接続される。また、気液分離器32の底部には、ドレイン弁36を介して水分を排出する排水流路38が設けられる。
【0024】
燃料電池システム10は、さらに、カソード電極に酸化剤ガスとしての圧縮空気を供給するための空気供給流路40(酸化剤ガス供給流路)と、カソード電極から排圧縮空気を排出するための空気排出流路42(酸化剤排ガス排出流路)とを有する。この中の空気供給流路40には、大気を圧縮して供給するエアポンプ44(コンプレッサ)が設けられる。
【0025】
燃料電池スタック12には、さらに、該燃料電池スタック12に冷却媒体を供給・排出するための冷却媒体供給流路45、冷却媒体排出流路46と、外気温を測定する第1温度センサ47aと、冷却媒体の温度を測定する第2温度センサ47bと、全体の制御を行う制御部(ECU)48とが付設される。以上により、燃料電池システム10が構成される。なお、図1中では冷却媒体を「冷媒」と表している。
【0026】
ECU48は、第1温度センサ47aによって測定された外気温が所定の閾値以下であるか否かを判定するとともに、第2温度センサ47bによって測定された冷却媒体温度が所定の閾値以下であるか否かを判定する。後述するように、外気温及び冷却媒体温度の双方が所定の閾値以下であると判定されたとき、凍結の可能性があるとして所定の制御がなされる。
【0027】
図2は、前記ドレイン弁36の要部概略側方断面図である。この場合、ドレイン弁36は、ECU48からのハーネス(図示せず)が接続される接続端子50をモールドしたハウジング52と、前記ハウジング52内に収容されたソレノイド部54と、プランジャ56と、弁本体58とを有するブリード弁である。
【0028】
ハウジング52には挿入孔60が形成されるとともに、該挿入孔60を外方から囲繞するようにして電磁コイル62が設けられる。挿入孔60には、固定コア66とプランジャ56が挿入される。固定コア66とプランジャ56との間には、リターンスプリング68が介在する。リターンスプリング68の大部分は、プランジャ56に形成されたスプリング穴70に収容される。
【0029】
プランジャ56は、電磁コイル62に対して通電・通電停止がなされることに伴って変位する可動コアからなる。該プランジャ56の先端には、弁部材であるダイヤフラム76を構成する中心厚肉部78が着座する。ダイヤフラム76は、さらに、中心厚肉部78の直径方向外方に連なる周辺薄肉部82を有する。周辺薄肉部82は、外周縁部に向かう途中でキャップ部材84に向かうようにテーパー状に傾斜しており、その外周縁部は、キャップ部材84と弁本体58に挟持される。
【0030】
弁本体58は、例えば、略円盤形状をなし、その中心に入口ポート86が形成されるとともに、該入口ポート86を囲繞するように、環状の出口ポート88が形成される。図2に示すように、ダイヤフラム76の中心厚肉部78が入口ポート86の近傍に着座しているときには、ドレイン弁36が閉状態となる。これとは逆に、拡大図である図3に示すように、中心厚肉部78が入口ポート86から離間しているときには、ドレイン弁36は開状態である。
【0031】
次に、本実施の形態に係る燃料電池システム10の制御方法につき説明する。なお、以下においては、燃料電池システム10を、燃料電池電気自動車等の燃料電池車両(図示せず)に搭載して制御を行う場合を例示する。
【0032】
燃料電池スタック12を運転する場合には、水素タンク18から水素供給流路14に燃料ガスとしての水素が供給される。水素は、第1分岐路20の第1インジェクタ24、又は第2分岐路22の第2インジェクタ26のいずれかを通過した後、さらに合流路28のエジェクタ30を経由して、燃料電池スタック12を構成する各燃料電池のアノード電極に供給される。
【0033】
その一方で、エアポンプ44を介して、空気供給流路40に酸化剤ガスである圧縮空気が送られる。圧縮空気は、後述する排圧縮空気によって加湿された後、燃料電池スタック12を構成する各燃料電池のカソード電極に供給される。
【0034】
以上のように反応ガスが供給されることにより、各燃料電池のアノード電極、カソード電極で電極反応がそれぞれ生起される。これにより、発電が行われる。なお、燃料電池スタック12には冷却媒体流路が形成されており、該冷却媒体流路に、前記冷却媒体供給流路を介して供給された冷却媒体が流通される。
【0035】
カソード電極に供給されて一部が消費された圧縮空気は、排圧縮空気として空気排出流路42に排出される。排圧縮空気は、カソード電極での電極反応によって生成した水分を含む湿潤ガスである。この排圧縮空気は、図示しない加湿器において、カソード電極に新たに供給される酸化剤ガスを加湿する。その後、所定の圧力に設定されて燃料電池システム10の外部に排出される。
【0036】
一方、アノード電極に供給されて一部が消費された水素は、排水素(燃料排ガス)として水素排出流路16に排出される。排水素は、水素排出流路16を流通する過程で気液分離器32に導入され、気相と水分とに分離される。水分が分離された気相(排水素)は、その後、循環流路34を介してエジェクタ30に吸引され、新たに供給された水素とともにアノード電極に再供給される。
【0037】
ドレイン弁36は、通常、入口ポート86の近傍にダイヤフラム76の中心厚肉部78が着座しているために閉状態であり(図2参照)、気液分離器32内に貯留された水分が所定量となったときに開く。このときには、ECU48から接続端子50に電流が供給され、電磁コイル62に通電がなされる。これに伴って電磁コイル62の周辺に発生した磁力により、可動コアであるプランジャ56が、スプリング穴70に収容されたリターンスプリング68を押圧しながら、固定コア66に接近する方向に変位する。この際、リターンスプリング68が収縮する。
【0038】
その結果、図3に示すように、中心厚肉部78が入口ポート86から離間する。すなわち、ドレイン弁36が開状態となり、入口ポート86から水分が流入する。流入した水分は、弁本体58の直径方向外方に拡散し、該入口ポート86を環状に囲繞する出口ポート88から導出され、排水流路38に至る。
【0039】
燃料電池車両の運転を停止するべく燃料電池スタック12の発電を停止する場合には、アノード電極への水素の供給が停止されるとともに、カソード電極への圧縮空気の供給が停止される。さらに、電磁コイル62への通電が停止されるとともに磁力が消失する。これに伴い、リターンスプリング68が、プランジャ56による押圧から開放される。従って、リターンスプリング68がその弾性復元力によって伸長する。その結果として、プランジャ56がリターンスプリング68に弾発付勢されて固定コア66から離間する方向に変位することで、ドレイン弁36が閉状態となる。
【0040】
本実施の形態に係る燃料電池システム10の制御方法は、概略フローである図4に示すように、この運転停止期間に行われる(ステップS1)。すなわち、制御部であるECU48は、燃料電池スタック12が停止状態であるときにも、定期的に第1温度センサ47a及び第2温度センサ47bから温度情報を取得し(ステップS2)、外気温及び冷却媒体温度が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS3、S4)。各温度のいずれか一方が閾値を上回っているときには、ECU48がドレイン弁36に対して開閉指令を発することはなく、ステップS1に戻る。
【0041】
これに対し、外気温及び冷却媒体温度の双方が所定の閾値以下であると判定された場合、ECU48は、第1インジェクタ24又は第2インジェクタ26のいずれかを作動させる(ステップS5)。これにより燃料電池スタック12のアノード電極に水素が供給されるので、水素供給流路14、アノード電極及び水素排出流路16(以下、これらを一括して「アノード系」とも表記する)の圧力が上昇する。なお、この場合、水素は気液分離器32内で堰止され、上記のように循環供給されることはない。
【0042】
ECU48は、水素排出流路16に設けられた圧力センサ31によって検出されたアノード系内の水素の圧力が、予め設定された所定値以上となったと判定したとき、ドレイン弁36を開状態とする(ステップS6)。すなわち、上記と同様に電磁コイル62に通電がなされるとともに、プランジャ56が固定コア66に接近する方向に変位する。これにより、中心厚肉部78が入口ポート86から離間する。
【0043】
このため、アノード系に充填された水素が入口ポート86から流入し、出口ポート88から導出(排気)される。この排気により、気液分離器32内に残留していた水分が排出される。すなわち、排出ステップが行われる。
【0044】
水素の排気は、アノード系内の圧力が所定値以下となるまで継続される(ステップS7)。なお、所定値は、例えば、気液分離器32内の水分が略ゼロとなるときの圧力値に設定される。この圧力値は、予め測定しておけばよい。
【0045】
そして、ECU48によってアノード系内の圧力が所定値以下となったと判定されると、ステップS8に進む。すなわち、若干の時間が経過した後、ECU48の指令下に、電磁コイル62への通電が停止される。これによりプランジャ56が固定コア66から離間する方向に変位し、ダイヤフラム76の中心厚肉部78が入口ポート86の近傍に着座して該入口ポート86を閉塞する。これにより、ドレイン弁36が閉状態となる。
【0046】
以上のようにして気液分離器32内の水分を排出した後のドレイン弁36では、図3に示すように、ダイヤフラム76の周辺薄肉部82と出口ポート88との開口近傍との間や、中心厚肉部78と入口ポート86との開口近傍との間等の微小なクリアランスに水分Wが残留することがある。そこで、この水分Wを除去するべく、振動ステップであるステップS9が実施される。
【0047】
すなわち、ステップS9では、ECU48がドレイン弁36に対して開閉指令を発する。この開閉指令に基づき、電磁コイル62に対する短時間での通電・通電停止、換言すれば、ドレイン弁36の開閉が繰り返される。要するに、プランジャ56が高速で往復動作するとともに、ダイヤフラム76の中心厚肉部78が入口ポート86に対して着座と離間を繰り返す。このような現象が起こる結果、ドレイン弁36が振動する。この振動により、前記クリアランスに残留した水分Wが該クリアランスから押し出される。すなわち、該水分Wを除去することができる。
【0048】
ここで、燃料電池車両は上記したように運転停止状態にあり、このため、気液分離器32が、その長手方向が鉛直方向に沿った起立姿勢となっている。そして、該気液分離器32の底部に設けられたドレイン弁36では、弁部材であるダイヤフラム76が水平方向に沿って変位を繰り返す。要するに、この場合、ドレイン弁36の開閉方向は水平方向である。従って、前記クリアランスから除去された水分Wは、重力の作用下に容易に下方に移動する。このため、ドレイン弁36から水分Wを除去することが一層容易である。
【0049】
ドレイン弁36の開閉の繰り返し回数は、例えば、10回に設定される。そして、最終回の開閉を行っている期間中に、ECU48は、作動させた第1インジェクタ24又は第2インジェクタ26を停止させる。
【0050】
所定回数の開閉の繰り返しが終了した後、電磁コイル62への通電が継続されてドレイン弁36が開状態を維持する。この間、ECU48は、前記圧力センサ31によって検出されたアノード系内の水素の圧力が予め設定された所定値以下であるか否かを判定している(ステップS10)。そして、所定値以下となったと判定したとき、閉止ステップであるステップS11に進んで、電磁コイル62への通電を停止することでドレイン弁36を閉状態とする。以上により、制御が終了する。
【0051】
この制御は、燃料電池車両の運転停止期間中に定期的に繰り返される。燃料電池車両の運転停止期間が長時間である場合、気液分離器32から排出される水分がほとんどないので、制御開始から終了までの時間が短くなる。
【0052】
以上の制御が行われる結果、燃料電池車両の周囲が、凍結する可能性がある環境となったとしても、ドレイン弁36から水分が除去されているため、該ドレイン弁36が凍結することが回避される。特に、ダイヤフラム76と弁本体58との間から水分が除去されているので、ダイヤフラム76が弁本体58に貼着する、いわゆる貼り付きを防止することができる。これにより、凍結の可能性がある環境下であっても、ドレイン弁36が所定の開閉動作を営むことができる。
【0053】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0054】
例えば、本発明に係る制御方法を実施する燃料電池システム10は、車載型のものに特に限定されず、定置型のものであってもよい。
【0055】
また、第1温度センサ47a、第2温度センサ47bに代替し、その他の温度検出手段を採用するようにしてもよい。その一方で、圧力センサ31の設置箇所は、水素排出流路16に限定されるものではなく、アノード系内の圧力を検出することが可能な位置であればよく、例えば、水素供給流路14であってもよい。
【0056】
さらに、この実施の形態では、ダイヤフラム76を弁部材とする電磁弁をドレイン弁36として採用しているが、ドレイン弁36は、これ以外の弁であってもよい。加えて、通電以外の他の手法によってドレイン弁36を振動させるようにしてもよい。振動の回数も、10回に特に制限されるものではない。
【0057】
さらにまた、燃料電池システムは、上記のように構成されるものに特に限定されるものではなく、様々な構成を採用し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
10…燃料電池システム 12…燃料電池スタック
14…水素供給流路 16…水素排出流路
18…水素タンク 20、22…分岐路
24、26…インジェクタ 28…合流路
30…エジェクタ 31…圧力センサ
32…気液分離器 34…循環流路
36…ドレイン弁 38…排水流路
40…空気供給流路 42…空気排出流路
45…冷却媒体供給流路 46…冷却媒体排出流路
47a、47b…温度センサ 48…制御部(ECU)
50…接続端子 54…ソレノイド部
56…プランジャ 58…弁本体
62…電磁コイル 66…固定コア
68…リターンスプリング 76…ダイヤフラム
78…中心厚肉部 82…周辺薄肉部
86…入口ポート 88…出口ポート
W…水分
図1
図2
図3
図4