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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-199587(P2018-199587A)
(43)【公開日】2018年12月20日
(54)【発明の名称】SiC/SiC複合材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/565 20060101AFI20181122BHJP
   C04B 35/628 20060101ALI20181122BHJP
   C04B 35/65 20060101ALI20181122BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20181122BHJP
   C01B 32/984 20170101ALI20181122BHJP
【FI】
   C04B35/565
   C04B35/628 680
   C04B35/628 860
   C04B35/65
   C04B35/80 600
   C01B32/984
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-103987(P2017-103987)
(22)【出願日】2017年5月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)革新的構造材料「高速基材製造プロセス技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 修一
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊
(72)【発明者】
【氏名】川口 章秀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英生
(72)【発明者】
【氏名】外薗 裕樹
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146MA14
4G146MA19
4G146MB05
4G146MB14
4G146MB18A
4G146MB19B
4G146MB28
4G146NA01
4G146NA02
4G146NA14
4G146NA21
4G146NB09
(57)【要約】
【課題】SiC/SiC複合材の利用範囲を拡大するため、低コストでSiC/SiC複合材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、金属元素を含有するSiC繊維の表面に電気泳動堆積法によりBNを被覆する界面層形成工程S1と、SiC繊維を用い基材を形成する基材形成工程S2と、基材に炭素源を含浸する炭素源含浸工程S3と、炭素源含浸工程後に溶融シリコンを含浸するとともに、炭素源と溶融シリコンとを反応させ、SiCマトリックスを形成するマトリックス形成工程S4と、を含む。金属含有SiC繊維は、金属を含有しているため、SiC繊維が半導体となり、導電性を有している。このため、電気泳動堆積法で界面層形成工程S1を行ったときに、金属含有SiC繊維に容易に電流を流すことができ、効率よく界面層を形成することができ、製造コストを抑制できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属元素を含有するSiC繊維の表面に電気泳動堆積法によりBNを被覆する界面層形成工程と、
前記SiC繊維を用い基材を形成する基材形成工程と、
前記基材に炭素源を含浸する炭素源含浸工程と、
前記炭素源含浸工程後に溶融シリコンを含浸するとともに、前記炭素源と前記溶融シリコンとを反応させ、SiCマトリックスを形成するマトリックス形成工程と、
を含むSiC/SiC複合材の製造方法。
【請求項2】
前記金属元素は、Zr、AlまたはTiの少なくともいずれか一つである請求項1に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
【請求項3】
前記金属元素であるZr、AlまたはTiの少なくともいずれか一つの含有量は、0.05〜2wt%である請求項2に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
【請求項4】
前記界面層形成工程は、平均粒子径20〜1000nmのBN粒子を用いる請求項1から3のいずれか1項に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
【請求項5】
前記電気泳動堆積法は、前記金属元素を含有するSiC繊維側を陽極、前記電気泳動堆積法で用いられるBNを含有する液体の液性を塩基性とする請求項1から4のいずれか1項に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
【請求項6】
前記炭素源含浸工程は、前記基材に炭素系粉末を含有するスラリーにより含浸する請求項1から5のいずれか1項に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
【請求項7】
前記炭素源含浸工程は、炭素前駆体を含浸した後、前記炭素前駆体を硬化および炭素化する請求項1から6のいずれか1項に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiC/SiC複合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiC/SiC複合材は、高い耐熱性と、耐酸化性を有しているので、様々な分野で利用が検討されている。ガスタービン、ジェットエンジンのブレード、シュラウドなどの耐熱部品、原子炉用部品、高温炉における装置部品など、過酷な用途での使用が期待されている。
【0003】
特許文献1には、1500℃以上の高温の使用環境においても、耐熱性、耐酸化性を有し、損傷許容性、強度等にすぐれたSiC/SiC材料として、化学組成がSi:50〜65wt%,C:25〜40wt%,O:0.01〜13wt%からなり、繊維径が8〜20μmの炭化ケイ素繊維の表面に化学蒸着によりBNを厚さ0.01〜2μm被覆し、該炭化ケイ素繊維のトウ、フェルト、織物等の集合体に、ポリカルボシランに有機溶剤を配合した組成物を塗布含浸し、プリプレグを作製して、該プリプレグを積層、加圧成形して、200〜300℃で硬化した後、アルゴン,無酸素雰囲気又は真空中で1000〜1400℃で焼成し、焼結体を得、さらに緻密化処理工程として、ポリカルボシランに有機溶剤を配合した組成物を含浸し1000〜1400℃で焼成する工程を繰り返すことにより得られるマトリックスの気孔率が20%以下のSiC繊維強化SiC複合材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−49570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記記載された発明は、炭化ケイ素繊維の表面に化学蒸着によりBNを被覆し、炭化ケイ素繊維のトウ、フェルト、織物等の集合体に、ポリカルボシランに有機溶剤を配合した組成物を塗布含浸し、プリプレグを作製して、該プリプレグを積層、加圧成形して、200〜300℃で硬化した後、アルゴン,無酸素雰囲気又は真空中で1000〜1400℃で焼成し、焼結体を得、さらに緻密化処理工程として、ポリカルボシランに有機溶剤を配合した組成物を含浸し1000〜1400℃で焼成する工程を繰り返すことにより得られるマトリックスの気孔率が20%以下となるよう多くの工程を経て製造されている。すなわち、BNの化学蒸着に続いて、ポリカルボシランの含浸、焼成を繰り返す多くのプロセスで構成される製造方法である。このため、SiC/SiC複合材の製造原価は高価になり利用範囲は、製造コストに見合うだけの限られた範囲に限定され、利用が拡大しにくかった。
【0006】
本発明では、SiC/SiC複合材の利用範囲を拡大するため、低コストでSiC/SiC複合材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、以下のものを含む。
(1)本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、金属元素を含有するSiC繊維の表面に電気泳動堆積法によりBNを被覆する界面層形成工程と、前記SiC繊維を用い基材を形成する基材形成工程と、前記基材に炭素源を含浸する炭素源含浸工程と、前記炭素源含浸工程後に溶融シリコンを含浸するとともに、前記炭素源と前記溶融シリコンとを反応させ、SiCマトリックスを形成するマトリックス形成工程と、を含む。
【0008】
金属含有SiC繊維は、耐熱性を有するとともに金属を含有しているため、電子または正孔のキャリアとなり、SiC繊維が半導体となり、導電性を有している。このため、電気泳動堆積法で界面層形成工程を行ったときに、金属含有SiC繊維に容易に電流を流すことができ、効率よく界面層を形成することができる。
【0009】
また、一般にSiC繊維では、高温にさらされると、SiC繊維中に含まれる原料由来の酸素がSiO、COとなって脱離し、SiCの強度を低下させる。これを解消するため、酸素の含有量を少なくした低酸素SiC繊維のほか、酸素との結合力の強い金属を含有させた金属含有SiCなどがある。低酸素SiC繊維では、非常に高い耐熱性を有する代わりに製造段階で電子線照射による架橋工程が必要となるため、製造コストが高くなる。これに対し、金属含有SiC繊維は、電子線照射を必要とせず、原材料中に所定の金属源を添加するのみであるので、特別な工程を必要としない。
【0010】
本発明では、金属含有SiC繊維を用いることにより、SiC/SiC複合材の製造コストを抑制できる。本発明のSiC/SiC複合材は、金属元素を含有するSiC繊維の表面に電気泳動堆積法によりBNを被覆している。電気泳動堆積法は、気相含浸成長法と比較して成長速度が速く、加熱の必要がないので、気相含浸成長法と比較しコストの安いプロセスである。さらに、CVD法による加熱プロセスを有していないことは、SiC繊維へのダメージを低減する効果もある。
【0011】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、基材形成工程を有している。基材形成工程では、金属含有SiC繊維を用いて目的の形状の基材を得る。基材形成工程はどのような形態でもよく特に限定されないが、例えば、クロスを形成する製織、フィラメントワインディング体を形成するフィラメントワインディング、抄造体を形成する抄造、ブレーディング体を形成するブレーディングなど特に限定されない。基材形成工程では、基材の形状を整えるため、切削加工を行っても良い。
【0012】
また、界面層形成工程と、基材形成工程の順序は特に限定されない。電気泳動堆積法では、細かな隙間であっても粒子を供給することができるので、SiC繊維を用いて基材の形状を形成した後でもSiC繊維の表面の細部にまでBNの粒子を供給することができる。
【0013】
また、本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では、前記基材に炭素源を含浸する炭素源含浸工程と、前記炭素源含浸工程後に溶融シリコンを含浸するとともに、前記炭素源と前記溶融シリコンとを反応させSiCマトリックスを形成するマトリックス形成工程を有している。炭素源含浸工程は、特に限定されない。例えば、炭素系粉末を含むスラリーの含浸、炭素前駆体を含浸したのち炭素化することによる炭素源の含浸などの方法が利用できる。さらに炭素前駆体に炭素系粒子を混入させて炭素化収率を高めることもできる。炭素化の方法は、特に限定されないが、炭素前駆体を溶解させる溶媒を乾燥させた後、炭素前駆体を硬化しさらに熱を加え炭素前駆体を炭素化するなど適宜利用することができる。
【0014】
次に炭素源が含浸された基材に溶融シリコンを含浸させ、内部に含浸された炭素源とシリコンとを反応させ、SiCのマトリックスを形成する。溶融シリコンは、液状である上に、SiC、炭素との濡れ性がよいため、速やかに細かな気孔にも浸透するので、長時間高温にさらすことなく含浸された炭素源と反応させることができる。
【0015】
また、金属含有SiC繊維は、酸素が金属と結びついているので高い耐熱性を有し、溶融シリコン(融点1410℃)の熱による影響を受けにくくすることができる。
【0016】
このような製造方法によれば、緻密なマトリックスを少ない工程で形成することができるので、簡単なプロセスでSiC/SiC複合材を得ることができる。
【0017】
(2)前記金属元素は、Zr、AlまたはTiの少なくともいずれか一つである。
【0018】
Zr、AlまたはTiの少なくともいずれか一つ金属元素を含有すると、酸素と強く結びつくことができるので、SiC繊維に含まれる酸素の脱離による劣化を防止することができ、高い耐熱性を発揮することができる。また、Alには、焼結助剤としての役割もありSiC繊維の耐熱性を高くすることができる。さらにAl、Tiは13族元素であり14族元素に添加されることによって正孔を形成しP型半導体となる。
【0019】
(3)前記金属元素であるZr、AlまたはTiの少なくともいずれか一つの含有量は、0.05〜2.0wt%である
【0020】
前記金属元素を含有するSiC繊維は、Zr、AlまたはTiの少なくともいずれか一つの含有量が0.05wt%以上であると、SiC繊維中に含まれる酸素と十分に結合し、CO、SiOなどの分解ガスの発生による劣化を防止することができる。さらに、2.0wt%以下であると、SiC繊維中でこれらの元素は製造する過程で一旦固溶することができるので、細かな組織のSiC繊維を得ることができ、欠陥の発生を抑制することができる。
【0021】
(4)前記界面層形成工程は、平均粒子径20〜1000nmのBN粒子を用いる。
【0022】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では、平均粒子径20〜1000nmのBN粒子を用い、SiC繊維の直径よりも十分に細かいので、SiC繊維の表面を隙間なく覆うことが可能となる。
【0023】
(5)前記電気泳動堆積法は、前記金属元素を含有するSiC繊維側を陽極、前記電気泳動堆積法で用いられるBNを含有する液体の液性を塩基性とする。
【0024】
BNの微粒子は、塩基性の条件化で安定に分散することができ、金属元素を含有するSiC繊維を陽極にすることによって、効率よくBN粒子を堆積させることができる。望ましい界面層形成工程における液性はpH9〜10である。pHが9〜10の範囲であれば、BN粒子の液中での凝集を抑制することができる。
【0025】
(6)前記炭素源含浸工程は、前記基材に炭素系粉末を含有するスラリーにより含浸する。
【0026】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、炭素系粉末を含有するスラリーを基材に含浸することによってマトリックスのSiCの炭素源を供給することができる。スラリーを構成する液は特に限定されないが、例えば水、有機溶媒などどのようなものでも利用することができる。
【0027】
(7)前記炭素源含浸工程は、炭素前駆体を含浸した後、前記炭素前駆体を硬化および炭素化する。
【0028】
炭素前駆体を含浸した後、前記炭素前駆体を硬化および炭素化することによっても、マトリックスのSiCの炭素源を供給することができる。炭素源である炭素前駆体は特に限定されないが、例えばフェノール樹脂、フラン樹脂、アミド樹脂、コプナ樹脂など特に限定されない。また、炭素前駆体に炭素系粉末を含有することにより、炭素化収率を高めることができる。
【発明の効果】
【0029】
電気泳動堆積法で界面層形成工程を行ったときに、金属含有SiC繊維に容易に電流を流すことができ、効率よく界面層を形成することができる。また、金属含有SiC繊維は、電子線照射を必要とせず、原材料中に所定の金属源を添加するのみであるので、特別な工程を必要としないため、SiC/SiC複合材の製造コストを抑制できる。また、金属含有SiC繊維は、酸素が金属と結びついているので高い耐熱性を有し、溶融シリコンの熱による影響を受けにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の製造方法の界面層形成工程における電気泳動堆積法を説明するための模式図。
図2】本発明の実施の形態のSiC/SiC複合材の製造方法の製造プロセスを示すフロー図で、(a)は、実施例1、(b)は、実施例2。
図3】実施例1のプロセスを示し、(a)はフロー図、(b)はフロー図に対応する模式図。
図4】実施例2のプロセスを示し、(a)はフロー図、(b)はフロー図に対応する模式図。
図5】本発明の実施例および比較例で使用したSiC繊維の分析値、特性値、仕様を示す表。
【0031】
(発明の詳細な説明)
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、金属元素を含有するSiC繊維の表面に電気泳動堆積法によりBNを被覆する界面層形成工程と、SiC繊維を用い基材を形成する基材形成工程と、基材に炭素源を含浸する炭素源含浸工程と、炭素源含浸工程後に溶融シリコンを含浸するとともに、炭素源と溶融シリコンとを反応させ、SiCマトリックスを形成するマトリックス形成工程と、を含む。
【0032】
金属含有SiC繊維は、金属を含有しているため、耐熱性を有するとともに電子または正孔のキャリアとなり、SiC繊維が半導体となり、導電性を有している。このため、電気泳動堆積法で界面層形成工程を行ったときに、金属含有SiC繊維に容易に電流を流すことができ、効率よく界面層を形成することができる。
【0033】
また、一般にSiC繊維では、高温にさらされると、SiC繊維中に含まれる原料由来の酸素がSiO、COとなって脱離し、SiCの強度を低下させる。これを解消するため、酸素の含有量を少なくした低酸素SiC繊維のほか、酸素との結合力の強い金属を含有させた金属含有SiCなどがある。低酸素SiC繊維では、非常に高い耐熱性を有する代わりに製造段階で電子線照射により架橋工程が必要となるため、製造コストが高くなる。これに対し、金属含有SiC繊維は、電子線照射を必要とせず、原材料中に所定の金属源を添加するのみであるので、特別な工程を必要としない。
【0034】
本発明では、金属含有SiC繊維を用いることにより、SiC/SiC複合材の製造コストを抑制できる。本発明のSiC/SiC複合材は、金属元素を含有するSiC繊維の表面に電気泳動堆積法によりBNを被覆している。電気泳動堆積法は、気相含浸成長法と比較して成長速度が速く、加熱の必要がないので、気相含浸成長法と比較しコストの安いプロセスである。さらに、CVD法による加熱プロセスを有していないことは、SiC繊維へのダメージを低減する効果もある。
【0035】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、基材形成工程を有している。基材形成工程では、金属含有SiC繊維を用いて目的の形状の基材を得る。基材形成工程はどのような形態でもよく特に限定されないが、例えば、クロスを形成する製織、フィラメントワインディング体を形成するフィラメントワインディング、抄造体を形成する抄造、ブレーディング体を形成するブレーディングなど特に限定されない。基材形成工程では、基材の形状を整えるため、切削加工を行っても良い。
【0036】
また、界面層形成工程と、基材形成工程の順序は特に限定されない。電気泳動堆積法では、細かな隙間であっても粒子を供給することができるので、SiC繊維を用いて基材の形状を形成した後でもSiC繊維の表面の細部にまでBNの粒子を供給することができる。
【0037】
また、本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では、基材に炭素源を含浸する炭素源含浸工程と、炭素源含浸工程後に溶融シリコンを含浸するとともに、炭素源と溶融シリコンとを反応させSiCマトリックスを形成するマトリックス形成工程を有している。炭素源含浸工程は、特に限定されない。例えば、炭素系粉末を含むスラリーの含浸、炭素前駆体を含浸したのち炭素化することによる炭素源の含浸などの方法が利用できる。さらに炭素前駆体に炭素系粒子を混入させて炭素化収率を高めることもできる。炭素化の方法は、特に限定されないが、炭素前駆体を溶解させる溶媒を乾燥させた後、炭素前駆体を硬化しさらに熱を加え炭素前駆体を炭素化するなど適宜利用することができる。
【0038】
次に炭素源が含浸された基材に溶融シリコンを含浸させ、内部に含浸された炭素源とシリコンとを反応させ、SiCのマトリックスを形成する。溶融シリコンは、液状である上に、SiC、炭素との濡れ性がよいため、速やかに細かな気孔にも浸透するので、長時間高温にさらすことなく含浸された炭素源と反応させることができる。
【0039】
また、金属含有SiC繊維は、酸素が金属と結びついているので高い耐熱性を有し、溶融シリコン(融点1410℃)の熱による影響を受けにくくすることができる。
【0040】
このような製造方法によれば、緻密なマトリックスを少ない工程で形成することができるので、簡単なプロセスでSiC/SiC複合材を得ることができる。
【0041】
金属元素は、Zr、AlまたはTiの少なくともいずれか一つである。
【0042】
Zr、AlまたはTiの少なくともいずれか一つ金属元素を含有すると、酸素と強く結びつくことができるので、SiC繊維に含まれる酸素の脱離による劣化を防止することができ、高い耐熱性を発揮することができる。また、Alには、焼結助剤としての役割もありSiC繊維の耐熱性を高くすることができる。さらにAl、Tiは13族元素であるので14族元素に添加されることによって正孔を形成し、P型半導体となる。
【0043】
金属元素であるZr、AlまたはTiの少なくともいずれか一つの含有量は、0.05〜2.0wt%である
【0044】
金属元素を含有するSiC繊維は、Zr、AlまたはTiの少なくともいずれか一つの含有量が0.05wt%以上であると、SiC繊維中に含まれる酸素と十分に結合し、CO、SiOなどの分解ガスの発生による劣化を防止することができる。さらに、2.0wt%以下であると、SiC繊維中でこれらの元素は固溶することができるので、相分離による欠陥の発生を抑制することができる。なお、Zr、AlまたはTiの少なくともいずれか一つの含有量について複数の元素が含まれる場合、その含有量の和で判断する。
【0045】
界面層形成工程は、平均粒子径20〜1000nmのBN粒子を用いる。
【0046】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では、平均粒子径20〜1000nmのBN粒子を用いるので、SiC繊維の直径よりも十分に細かいので、SiC繊維の表面を隙間なく覆うことが可能となる。
【0047】
電気泳動堆積法は、金属元素を含有するSiC繊維側を陽極、電気泳動堆積法で用いられるBNを含有する液体の液性を塩基性とする。
【0048】
BNの微粒子は、塩基性の条件化で安定に分散することができ、金属元素を含有するSiC繊維を陽極にすることによって、効率よくBN粒子を堆積させることができる。望ましい界面層形成工程における液性はpH9〜10の水溶液である。pHが9〜10の範囲であれば、BN粒子の液中での凝集を抑制することができる。
【0049】
炭素源含浸工程は、基材に炭素系粉末を含有するスラリーにより含浸する。
【0050】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、炭素系粉末を含有するスラリーを基材に含浸することによってマトリックスのSiCの炭素源を供給することができる。スラリーを構成する液は特に限定されないが、例えば水、有機溶媒などどのようなものでも利用することができる。
【0051】
炭素源含浸工程は、炭素前駆体を含浸した後、炭素前駆体を硬化および炭素化する。
【0052】
炭素前駆体を含浸した後、炭素前駆体を硬化および炭素化することによっても、マトリックスのSiCの炭素源を供給することができる。炭素前駆体は特に限定されないが、例えばフェノール樹脂、フラン樹脂、アミド樹脂、コプナ樹脂など特に限定されない。また、炭素前駆体に炭素系粉末を含有することにより、炭素化収率を高めることができる。
【0053】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法において、金属元素を含有するSiC繊維とは特に限定されない。例えば、Zrを含有したSi−Zr−C−O繊維、Tiを含有したSi−Ti−C−O繊維、Alを含有したSi−Al−C−O繊維などが利用できる。
【0054】
これらの金属元素を含有するSiC繊維は、酸素を金属元素と結合させることによって、安定化させているので、安価なSiC繊維でありながら、高い耐熱性を得ることができる。中でもSi−Zr−C−O繊維は、使用限界温度が1500℃であるので、本発明のSiC/SiC複合材の製造プロセスにおいて1500℃までの処理温度を適用することができる。なお溶融シリコンを含浸するマトリックス形成工程は、シリコンの融点(1410℃)以上で行う必要がある。金属含有SiC繊維がSi−Al−C−O繊維であれば、溶融シリコンで処理するマトリックス形成工程においても劣化させることなく処理することができるので、低コストで利用しやすいSiC/SiC複合材を得ることができる。
【0055】
Si−Zr−C−O繊維、Si−Ti−C−O繊維、Si−Al−C−O繊維としては、例えば、チラノ繊維(宇部興産株式会社の登録商標)が利用できる。Si−Zr−C−O繊維としてはチラノZM、チラノZMI、チラノZEグレードなどが利用できる。これらのSi−Zr−C−O繊維においてZrの含有量は約1.0質量%である。Si−Ti−C−O繊維としてはチラノLoxM、チラノLoxE、チラノSグレードなどが利用できる。これらのSi−Ti−C−O繊維においてTiの含有量は約2wt%である。
【0056】
Si−Al−C−O繊維としてはチラノSAグレードなどが利用できる。Alの含有量は2.0質量%以下である。金属含有SiC繊維には、Al、Ti、Zrなどが添加物として混入される。このような元素が添加されると、電子または正孔のキャリアとなるため、SiC繊維が半導体として作用する。このため、SiC繊維に電流を流しやすくなり、電気泳動堆積法によってBNの界面層を形成しやすくなる。望ましい金属元素を含有するSiC繊維の電気伝導率は0.25/Ωm以上である。電気伝導率が0.25/Ωm以上であると、SiC繊維全体に電流を均一に供給することができるので、膜厚バラツキを抑制することができる。なお、電気伝導率は、SiC繊維を束ねたストランドの両端を金属製の端子で固定し、得られた抵抗値とストランドの断面積、端子間距離から、算出することができる。
【0057】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法に用いるBN粒子は、例えばh−BN粒子である六方晶系の結晶である(常圧相)。窒化ホウ素には、様々な結晶系があり、この他に立方晶系のc−BN(高圧相:閃亜鉛鉱型)、w−BN(ウルツ鉱型)、t−BN(乱層構造型)などがある。特許文献1のような気相成長含浸法で窒化ホウ素の界面層を形成すると、t−BNとなりやすく、目的のBN(h−BN)を効率よく得ることができない。
【0058】
本発明では、気相成長含浸法でなくあらかじめBN粒子を別途作成し、それを用いて界面層を形成しているので、純度の高いBNの界面層を得ることができる。
【0059】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法に用いるBN粒子は、例えば、窒化ホウ素ナノレベル分散スラリーAP−100S、AP−170S(株式会社MARUKA製)などが利用できる。これらの窒化ホウ素ナノレベル分散スラリーは、pHを9〜10に保持することによってBN粒子のゼーター電位とのバランスをとり分散状態が保持されている。AP−100Sは平均粒子径が100nm、比表面積が50m/g、AP−170Sは平均粒子径が50nm、比表面積が170m/gである。
【0060】
図1は、電気泳動堆積法を説明するための模式図であり、スラリーのBN粒子の分散状態を維持できるように、水酸化物イオンの量を調整してpHを9〜10に保持したまま金属含有SiC繊維を陽極として電気泳動堆積法を行うことにより、分散状態を維持したままSiC繊維の表面にBN(例えばh−BN)の界面層をムラなく形成することができる。
【0061】
本発明の基材は、どのような方法で形成してもよく特に限定されない。例えば、クロスを形成する製織、フィラメントワインディング体を形成するフィラメントワインディング、抄造体を形成する抄造、ブレーディング体を形成するブレーディングなど特に限定されない。また、界面層形成工程と、基材形成工程の順序は特に限定されない。金属含有SiC繊維が互いに離れた抄造体の場合には、どちらの順序でもよく特に限定されない。金属含有SiC繊維が互いに近接し隙間の少ないクロス、フィラメントワインディング体、ブレーディング体の形態では、基材を形成する前にBNの被覆を形成することが好ましい。
【0062】
クロス、フィラメントワインディング体、ブレーディング体など、規則的なパターンを形成する基材では、金属元素を含有するSiC繊維を束(ストランド)にして使用した方が効率がよく、例えば500〜5000本程度を1本のストランドにまとめて用いることが好ましい。
【0063】
(発明を実施するための形態)
<実施例1>
本発明のSiC/SiC複合材について、図2(a)に示されたフロー図に基づいて実施例1を説明する。また、図3(b)にフロー図に対応する模式図を示している。
【0064】
実施例1では、図2(a)のプロセスに従ってSiC/SiC複合材が製造される。即ち、界面層形成工程S1、基材形成工程S2、炭素源含浸工程S3、マトリックス形成工程S4の順で製造される。炭素源含浸工程S3では、炭素の微粉末を含有するスラリーを含浸したのち、溶媒を揮発させてSiC繊維の隙間にSiCマトリックスの炭素源を供給する。
【0065】
<界面層形成工程:S1>
SiC繊維として、宇部興産株式会社製チラノSA(登録商標)を用いた。SiC繊維のスペックは、図5に示す表の通りである。チラノSAは金属元素としてAlを含有し電気伝導率が0.25/Ωmである。
【0066】
次にSiC繊維をBNを分散させた液に浸漬させ、電極を陰極、SiC繊維を陽極として直流電流を流した。電極とSiC繊維間に加えた電圧は4.1V、液のpHは、9以上、液中のBNの濃度は0.03wt%、液の成分は、水及び分散剤(クラレ製アルカリ水溶性ポリマー「イソバン#04」)であった。使用したBNは、株式会社マルカ製、AP−170Sであった。なお一次粒子径は、0.05μm、比表面積は170m/gであった。
【0067】
電気泳動堆積法では、3mAで60分間処理することにより、SiC繊維の表面に300nmの薄いBNの界面層が形成された。
【0068】
<基材形成工程:S2>
次に表面に界面層の形成されたSiC繊維を用いて基材を形成した。基材の形状は40mm×100mmのSiCクロス1枚品であり、SiC繊維を束ねられたストランドを平織り状に配列することにより目的の形状を得た。
【0069】
<炭素源含浸工程:S3>
得られた基材にカーボン粉のスラリーを含浸することにより、基材を構成するSiC繊維の隙間に炭素源を充填した。充填された炭素源は、後に含浸される溶融シリコンと反応して、SiCのマトリックスとなる。
【0070】
<マトリックス形成工程:S4>
炭素源が含浸された基材を溶融シリコンに浸漬し、シリコンを含浸した。シリコンは、炭素と反応しやすいので速やかに吸収され、基材内部にあらかじめ含浸されていた炭素源と反応し、SiCとなった。
【0071】
実施例1によれば、金属を含有することにより耐熱性を高めたSiC繊維を、電気泳動堆積法により界面層を形成し、炭素源含浸工程、シリコン含浸を経てSiC/SiC複合材が得られている。このため、工程が少なく、高温プロセスが少ないので、低コストのSiC/SiC複合材を提供することができる。また、金属を含浸したSiC繊維に、耐熱温度を超えないプロセスのみでSiC/SiC複合材が得られているので、高強度のSiC/SiC複合材を得ることができる。
【0072】
<実施例2>
また、SiC/SiC複合材について、図2(b)に示されたフロー図に基づいて実施例2を説明する。また、図4(b)にフロー図に対応する模式図を示している。
【0073】
実施例2では、図2(b)のプロセスに従ってSiC/SiC複合材が製造されている。即ち、基材形成工程S2、界面層形成工程S1、炭素源含浸工程S3、マトリックス形成工程S4の順で製造される。炭素源含浸工程S3では、炭素の微粉末を含有する樹脂溶液を含浸したのち、溶媒を揮発させ、樹脂を硬化させてSiC繊維の隙間にSiCマトリックスの炭素源を供給する。なお、実施例1とは、界面層形成工程S1、基材形成工程S2の順が逆である。
【0074】
<比較例1>
比較例1では、SiC繊維として、金属元素を含有しないNGSアドバンストカーボン社製Hi-Nicalon Type-S(登録商標)を用いた以外は、実施例1と同様にSiC/SiC複合材を製造した。
<界面層形成工程:S1>
SiC繊維として、NGSアドバンストカーボン社製Hi-Nicalon Type-Sを用いた。SiC繊維のスペックは、図5のとおりである。Hi-Nicalon Type-Sの電気伝導率が0.032/Ωmである。
実施例1と同様に電気泳動堆積法でBN粒子をSiC繊維に付着させようとしたが、SiC繊維の電気伝導率が不足しSiC繊維にBN粒子を十分に付着させることはできなかった。
このため、BNの界面層を有するSiC/SiC複合材を得ることはできなかった。
【0075】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、航空機のエンジン部品などの耐熱性、高強度が求められ、低コストなSiC/SiC複合材を要望する分野に適合可能である。
【符号の説明】
【0077】
S1 界面層形成工程
S2 基材形成工程
S3 炭素源含浸工程
S4 マトリックス形成工程
図1
図2
図3
図4
図5