特開2018-199588(P2018-199588A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特開2018199588-SiC/SiC複合材の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-199588(P2018-199588A)
(43)【公開日】2018年12月20日
(54)【発明の名称】SiC/SiC複合材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/569 20060101AFI20181122BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20181122BHJP
【FI】
   C04B35/569
   C04B35/80 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-103988(P2017-103988)
(22)【出願日】2017年5月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)革新的構造材料「高速基材製造プロセス技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 修一
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊
(72)【発明者】
【氏名】川口 章秀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英生
(72)【発明者】
【氏名】外薗 裕樹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】容易に内部まで界面層を形成できるSiC/SiC複合材の製造方法の提供。
【解決手段】基材に鱗片状潤滑材の粒子を含むスラリーを含浸し含浸体を得る含浸工程S2と、含浸体からスラリーの溶媒を乾燥させる乾燥工程S3と、含浸体を屈曲し、鱗片状潤滑材の粒子をSiC繊維の表面に引き延ばしながら転写し、当該表面に界面層を形成する界面層形成工程S4と、界面層の形成された基材の内部にSiCマトリックスを形成するマトリックス形成工程S5と、を含むSiC/SiC複合材の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のSiC繊維を束ねたストランドからなる基材と、SiCマトリックスとからなるSiC/SiC複合材の製造方法であって、
前記基材に鱗片状潤滑材の粒子を含むスラリーを含浸し含浸体を得る含浸工程と、
前記含浸体から前記スラリーの溶媒を乾燥させる乾燥工程と、
前記含浸体を屈曲し、前記鱗片状潤滑材の粒子を前記SiC繊維の表面に引き延ばしながら転写し、当該表面に界面層を形成する界面層形成工程と、
前記界面層の形成された基材の内部にSiCマトリックスを形成するマトリックス形成工程と、
を含むSiC/SiC複合材の製造方法。
【請求項2】
前記鱗片状潤滑材は、炭素または窒化ホウ素から選択される少なくとも一つの粒子からなる請求項1に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
【請求項3】
前記スラリーは、さらにバインダー樹脂を含有する請求項1または2に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
【請求項4】
前記マトリックス形成工程は、CVI法、PIP法またはMI法である請求項1から3のいずれか1項に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
【請求項5】
前記含浸工程の前に、前記ストランドを洗浄する洗浄工程をさらに有する請求項1から4のいずれか1項に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiC/SiC複合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiC/SiC複合材は、高い耐熱性と、耐酸化性を有しているので、様々な分野で利用が検討されている。ガスタービン、ジェットエンジンのブレード、シュラウドなどの耐熱部品、原子炉用部品、高温炉における装置部品など、過酷な用途での使用が期待されている。
【0003】
特許文献1には、1500℃以上の高温の使用環境においても、耐熱性、耐酸化性を有し、損傷許容性、強度等にすぐれたSiC/SiC材料として、化学組成がSi:50〜65wt%、C:25〜40wt%、O:0.01〜13wt%からなり、繊維径が8〜20μmの炭化ケイ素繊維の表面に化学蒸着によりBNを厚さ0.01〜2μm被覆し、該炭化ケイ素繊維のトウ、フェルト、織物等の集合体に、ポリカルボシランに有機溶剤を配合した組成物を塗布含浸し、プリプレグを作製して、該プリプレグを積層、加圧成形して、200〜300℃で硬化した後、アルゴン、無酸素雰囲気又は真空中で1000〜1400℃で焼成し、焼結体を得、さらに緻密化処理工程として、ポリカルボシランに有機溶剤を配合した組成物を含浸し1000〜1400℃で焼成する工程を繰り返すことにより得られるマトリックスの気孔率が20%以下のSiC繊維強化SiC複合材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−49570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記記載された発明は、炭化ケイ素繊維の表面に化学気相蒸着によりBNを被覆し、炭化ケイ素繊維のトウ、フェルト、織物等の集合体に、ポリカルボシランに有機溶剤を配合した組成物を塗布含浸し、プリプレグを作製して、該プリプレグを積層、加圧成形して、200〜300℃で硬化した後、アルゴン、無酸素雰囲気又は真空中で1000〜1400℃で焼成し、焼結体を得、さらに緻密化処理工程として、ポリカルボシランに有機溶剤を配合した組成物を含浸し1000〜1400℃で焼成する工程を繰り返すことにより得られるマトリックスの気孔率が20%以下となるよう多くの工程を経て製造されている。
【0006】
すなわち、BNの化学気相蒸着に続いて、ポリカルボシランの含浸、焼成を繰り返す多くのプロセスで構成される製造方法である。BNを化学気相蒸着で形成しているので、基材の内部では界面層を十分に形成しにくく骨材とマトリクスとが一体化し、複合材としての性質が発揮しにくくなる。内部まで界面層を形成できるように気相成長させると、製膜が遅くなってしまう。
【0007】
本発明では、前記課題を解決するために、容易に内部まで界面層を形成できるSiC/SiC複合材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、以下のものを含む。
(1)複数のSiC繊維を束ねたストランドからなる基材と、SiCマトリックスとからなるSiC/SiC複合材の製造方法であって、前記基材に鱗片状潤滑材の粒子を含むスラリーを含浸し含浸体を得る含浸工程と、前記含浸体から前記スラリーの溶媒を乾燥させる乾燥工程と、前記含浸体を屈曲し、前記鱗片状潤滑材の粒子を前記SiC繊維の表面に引き延ばしながら転写し、当該表面に界面層を形成する界面層形成工程と、前記界面層の形成された基材の内部にSiCマトリックスを形成するマトリックス形成工程と、を含む。
【0009】
本発明の、SiC/SiC複合材の製造方法によれば、基材に鱗片状潤滑材の粒子を含むスラリーを含浸し含浸体を得る含浸工程と、前記含浸体から前記スラリーの溶媒を乾燥させる乾燥工程と、前記含浸体を屈曲し、前記鱗片状潤滑材の粒子を前記SiC繊維の表面に引き延ばしながら転写し、当該表面に界面層を形成する界面層形成工程を有しているので、SiC繊維の隙間に鱗片状潤滑材の粒子が含浸された後にスラリーの溶媒を乾燥し、含浸体を屈曲し、SiC繊維の表面に鱗片状潤滑材の粒子を転写することでSiC繊維の表面に鱗片状潤滑材の薄い界面層を形成することができる。
【0010】
また、転写においては、粒子が引き延ばされながら繊維表面に転写される。繊維同士が擦れ合うことで粒子が引き延ばされ、薄い界面層ができると共に、束になった繊維の内側にあるものまで転写可能となる。
【0011】
また、鱗片状潤滑材は、c軸方向が弱い結合で結びついた六方晶からなるので、含浸体を屈曲させると摩擦力によって結晶が剥離し、薄い被膜を得ることができる。
【0012】
含浸体を屈曲させるとは、平面であったものを円筒状に丸める、波板状に曲げるなど特に限定されず、一旦屈曲されたものをまたもとの形状に戻してもよい。この操作により、SiC繊維間に含浸された鱗片状潤滑材の結晶が剥離し表面が削れ、SiC繊維に付着することで界面層を形成することができる。
【0013】
また、本発明では、界面層は鱗片状潤滑材の粒子の集合体であり、気相成長されていないので、界面層がクラックの起点となりにくく、まげても折れにくい。このため、鱗片状潤滑材を含浸した後にストランドを整形加工することが容易である。また鱗片状潤滑材は容易に細かくなっていくので基材内部に行き渡りやすく、簡単な方法で基材の内部でも骨材とマトリックスの一体化を防止することができる。
【0014】
また、本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、次の態様であることが望ましい。
【0015】
(2)前記鱗片状潤滑材は、炭素または窒化ホウ素から選択される少なくとも一つの粒子からなる。
【0016】
当該鱗片状潤滑材は自己潤滑性を有しているので、含浸体を屈曲させることにより、SiC繊維の表面に界面層を行き渡らせることができる。炭素または窒化ホウ素は熱分解しにくく、分解しても腐食性のガスを生成しないので本発明のSiC/SiC複合材の製造方法に好適に利用できる。
【0017】
(3)前記スラリーは、さらにバインダー樹脂を含有する。
【0018】
前記含浸工程で使用するスラリーはバインダー樹脂を含有しているので、SiC繊維に強固に付着し、マトリックス形成工程までの間に脱落することを防止できる。バインダー樹脂は、マトリックス形成工程で基材を加熱する際に熱分解し、除去もしくは炭化する。
【0019】
(4)前記マトリックス形成工程は、CVI法、PIP法またはMI法である。
【0020】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法のマトリックス形成方法は、特に限定されないが、CVI法、PIP法、MI法を利用することができる。
【0021】
CVIChemical Vapor Infiltration)法では、界面層が形成されたSiC繊維の隙間にSiCを気相含浸することによってマトリックスを形成する。PIP(Polymer Infiltration and Pyrolysis)法では、基材にSiC前駆体を含浸し、硬化、焼成することによってSiCマトリックスを形成することができる。MI(Melt Infiltration)法では、基材に炭素源を含浸したのち、溶融シリコンを含浸し、炭素源と溶融シリコンとを反応させ、反応焼結SiCを得ることができる。MI法において炭素源としては、炭素の粒子のほか炭素前駆体などが利用できる。炭素の粒子を利用する場合には、溶媒に分散させ、スラリーとして炭素源を含浸することができる。また、炭素前駆体を利用する場合には、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ピッチなどが利用できる。これらの炭素前駆体を含浸したのち、硬化、焼成することによって基材に炭素源を含浸させることができる。
【0022】
(5)前記含浸工程の前に、前記ストランドを洗浄する洗浄工程をさらに有する。
【0023】
複数のSiC繊維を束ねたストランドは、SiC繊維がバラバラにならないようサイジング剤が塗布されていたり、SiC繊維の表面に汚れが付着していたりすることがある。SiC繊維は硬いセラミックであるので表面で鱗片状潤滑材が擦られると、鱗片状潤滑材の方が効率よく削られて、表面に薄い界面層を形成することができる。しかしながら、サイジング剤や、汚れが表面に付着していると、鱗片状潤滑材が削られにくい上に付着力も低下する。また、サイジング剤が付着していると、バインダーとなってSiC繊維どうしを密着させてしまうので、そもそもSiC繊維の隙間に鱗片状潤滑材を導入することが困難となる。
【0024】
このため、前記含浸工程の前に、ストランドを洗浄する洗浄工程を有しているので、SiC繊維の表面に鱗片状潤滑材を導入しやすくできる上に、界面層を効率よく形成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法によれば、SiC繊維の隙間に鱗片状潤滑材の粒子が含浸された後に溶媒を乾燥し、含浸体を屈曲し、SiC繊維の表面に鱗片状潤滑材を転写することでSiC繊維の表面に鱗片状潤滑材の薄い界面層を形成することができるため、容易に内部まで界面層を形成できる。また、界面層は鱗片状潤滑材の粒子の集合体であり、気相成長されていないので、界面層がクラックの起点となりにくく、まげても折れにくい。このため、鱗片状潤滑材を含浸した後にストランドを整形加工することが容易である。また鱗片状潤滑材は容易に細かくなっていくので基材内部にも行き渡りやすく、簡単な方法で基材の内部でも骨材とマトリックスの一体化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明のSiC/SiC複合材の製造方法の製造プロセスを示すフローチャート図で、(a)は実施例1、(b)は実施例2である。
図2】本発明の実施例1を示し、(a)はフローチャート図、(b)は各フローにおける模式図である。
図3】本発明の実施例2を示し、(a)はフローチャート図、(b)は各フローにおける模式図である。
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、複数のSiC繊維を束ねたストランドからなる基材と、SiCマトリックスとからなるSiC/SiC複合材の製造方法であって、前記基材に鱗片状潤滑材の粒子を含むスラリーを含浸し含浸体を得る含浸工程と、前記含浸体から前記スラリーの溶媒を乾燥させる乾燥工程と、前記含浸体を屈曲し、前記鱗片状潤滑材の粒子を前記SiC繊維の表面に引き延ばしながら転写し、当該表面に界面層を形成する界面層形成工程と、前記界面層の形成された基材の内部にSiCマトリックスを形成するマトリックス形成工程と、を含む。
【0028】
本発明の、SiC/SiC複合材の製造方法によれば、基材に鱗片状潤滑材の粒子を含むスラリーを含浸し含浸体を得る含浸工程と、含浸体からスラリーの溶媒を乾燥させる乾燥工程と、含浸体を屈曲し、鱗片状潤滑材の粒子をSiC繊維の表面に引き延ばしながら転写し、当該表面に界面層を形成する界面層形成工程を有しているので、SiC繊維の隙間に鱗片状潤滑材の粒子が含浸された後にスラリーの溶媒を乾燥し、含浸体を屈曲し、SiC繊維の表面に鱗片状潤滑材を転写することでSiC繊維の表面に鱗片状潤滑材の薄い界面層を形成することができる。
【0029】
また、転写においては、粒子が引き延ばされながら繊維表面に転写される。繊維同士が擦れ合うことで粒子が引き延ばされ薄い界面層ができると共に、束になった繊維のうち、内側にあるものまで転写可能となる。
【0030】
また、鱗片状潤滑材は、c軸方向が弱い結合で結びついた六方晶からなるので、含浸体を屈曲させると摩擦力によって結晶が剥離し表面が削れ、薄い被膜を得ることができる。鱗片状潤滑材とは層状結晶構造物質からなり例えば、h−BN、炭素、二硫化モリブデン、二硫化タングステンなどが挙げられる。
【0031】
含浸体を屈曲させるとは、平面であったものを円筒状に丸める、波板状に曲げるなど特に限定されず、一旦屈曲されたものをまたもとの形状に戻してもよい。この操作により、SiC繊維間に含浸された鱗片状潤滑材の表面が削れ、SiC繊維に付着することで界面層を形成することができる。
【0032】
また、本発明では、界面層は鱗片状潤滑材の粒子の集合体であり、気相成長されていないので、界面層がクラックの起点となりにくくまげても折れにくい。このため、鱗片状潤滑材を含浸した後にストランドを整形加工することが容易である。また鱗片状潤滑材は容易に細かくなっていくので基材内部にも行き渡りやすく、簡単な方法で基材の内部でも骨材とマトリックスの一体化を防止することができる。
【0033】
また、本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、次の態様であることが望ましい。
【0034】
鱗片状潤滑材は、炭素または窒化ホウ素から選択される少なくとも一つの粒子からなる。
【0035】
当該鱗片状潤滑材は自己潤滑性を有しているので、含浸体を屈曲させることにより、SiC繊維の表面に界面層を行き渡らせることができる。炭素または窒化ホウ素は熱分解しにくく、分解しても腐食性のガスを生成しないので本発明のSiC/SiC複合材の製造方法に好適に利用できる。
【0036】
スラリーは、さらにバインダー樹脂を含有する。
【0037】
含浸工程で使用するスラリーはバインダー樹脂を含有しているので、SiC繊維に強固に付着し、マトリックス形成工程までの間に脱落することを防止できる。バインダー樹脂は、マトリックス形成工程で基材を加熱する際に熱分解し、除去もしくは炭化する。
バインダー樹脂としては特に限定されないが、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、でん粉、ピッチ、イソブチレン・マレイン酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、ウレタン樹脂、ラテックスなどが利用できる。
【0038】
マトリックス形成工程は、CVI法、PIP法またはMI法である。
【0039】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法のマトリックス形成方法は、特に限定されないが、CVI法、PIP法、MI法を利用することができる。
【0040】
CVI(Chemical Vapor Infiltration)法、いわゆる気相含浸法では、界面層が形成されたSiC繊維の隙間にSiCを気相含浸することによってマトリックスを形成する。PIP(Polymer Infiltration and Pyrolysis)法、いわゆるポリマー含浸熱分解法では、基材にSiC前駆体を含浸し、硬化、焼成することによってSiCマトリックスを形成することができる。MI(Melt Infiltration)法、いわゆる溶融含浸法では、基材に炭素源を含浸したのち、溶融シリコンを含浸し、炭素源と溶融シリコンとを反応させ、反応焼結SiCを得ることができる。MI法において炭素源としては、炭素の粒子のほか炭素前駆体などが利用できる。炭素の粒子を利用する場合には、溶媒に分散させ、スラリーとして炭素源を含浸することができる。また、炭素前駆体を利用する場合には、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ピッチなどが利用できる。これらの炭素前駆体を含浸したのち、硬化、焼成することによって基材に炭素源を含浸させることができる。
【0041】
含浸工程の前に、ストランドを洗浄する洗浄工程をさらに有する。
【0042】
複数のSiC繊維を束ねたストランドは、SiC繊維がバラバラにならないようサイジング剤が塗布されていたり、SiC繊維の表面に汚れが付着していたりすることがある。SiC繊維は硬いセラミックであるので表面で鱗片状潤滑材が擦られると、鱗片状潤滑材の方が効率よく削られて、表面に界面層を形成することができる。しかしながら、サイジング剤や、汚れが表面に付着していると、鱗片状潤滑材が削られにくい上に付着力も低下する。また、サイジング剤が付着していると、バインダーとなってSiC繊維どうしを密着させてしまうので、そもそもSiC繊維の隙間に鱗片状潤滑材を導入することが困難となる。
【0043】
このため、含浸工程の前に、ストランドを洗浄する洗浄工程を有していると、SiC繊維の表面に鱗片状潤滑材を導入しやすくできる上に、界面層を効率よく形成することができる。
【0044】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法において、使用するSiC繊維は特に限定されない。非晶質のSiC繊維でも結晶質のSiC繊維でも利用することができる。非晶質のSiC繊維としては、Ti、Zrを混入させたSiC繊維(宇部興産株式会社製チラノZMIグレード(登録商標))、電子線照射により架橋し、酸素含有量を低減したSiC繊維(NGSアドバンストカーボン株式会社製ハイニカロン(登録商標))など、利用することができる。結晶質のSiC繊維としては、Alを含有し、焼結助剤として作用させ、SiC繊維の結晶化度を高めたものがある(宇部興産株式会社製チラノSA(登録商標)など)。
【0045】
SiC繊維の繊維径は、特に限定されないが、5〜20μmであることが好ましい。SiC繊維の繊維径が5μm以上であると、鱗片状潤滑材よりも十分に大きくすることができるのでSiC繊維の表面に付着させやすくすることができる。SiC繊維の繊維径が20μm以下であると、SiC繊維を曲げても表面に加わる張力を小さくすることができるので、SiC繊維を折れ難くすることができる。
【0046】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法で使用する鱗片状潤滑材は、平均粒子径が、10nm〜4μmであることが好ましい。鱗片状潤滑材の平均粒子径が10nm以上であると、鱗片状潤滑材のc軸方向の積層を十分に確保することができるので、後の界面層形成工程でSiC繊維の表面に界面層を効率よく形成することができる。また、鱗片状潤滑材の平均粒子径が4μm以下であると、SiC繊維の隙間に導入しやすいうえに、溶媒中で沈降しにくいので、後の界面層形成工程で効率よく界面層を形成することができる。
【0047】
本発明の鱗片状潤滑材の平均粒子径はレーザー回折式粒度測定器で測定することができる。
【0048】
また、洗浄工程では、基材を変形させ、SiC繊維どうしに摩擦力を作用させることが好ましい。基材を変形させ摩擦力を作用させると、SiC繊維の表面の洗浄が促進される上に、SiC繊維に隙間が形成され、鱗片状潤滑材を導入しやすくすることができる。
洗浄工程で行う基材を変形させる操作は、洗浄しながらでもよいし、洗浄が終わってからでもよい。
【0049】
また、含浸工程では、基材を変形させ、SiC繊維どうしに摩擦力を作用させることが好ましい。基材を変形させ摩擦力を作用させると、SiC繊維に隙間が形成され、鱗片状潤滑材を導入しやすくすることができる。
【0050】
含浸工程で行う基材を変形させる操作は、含浸しながら行うことが好ましい。含浸しながら変形させることで、SiC繊維の隙間を大きく開けることができ、鱗片状潤滑材を内部に導入しやすくできる上に、一旦内部に取り込まれた鱗片状潤滑材が粉砕され、より細部に導入しやすくすることができる。
【0051】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法において、鱗片状潤滑材は、六方晶の結晶形態であることが好ましい。六方晶の結晶形態であれば、c軸方向に劈開性があり、容易に薄い界面層を形成することができる。
【0052】
炭素からなる鱗片状潤滑材であれば、黒鉛、熱分解炭素などが好適に利用できる。黒鉛であれば、天然黒鉛、人造黒鉛などが利用できる。天然黒鉛であれば、黒鉛化度が高く結晶化が進行しているので効率よく界面層を形成できる。また、人造黒鉛であれば、精製された原料を用い、高温で黒鉛化処理されているので純度が高く、不純物含有量の少ない界面層を得ることができる。また、熱分解炭素は、気体から製造されるので、もともと結晶の配向性が高い。中でも、特に配向性の高い熱分解炭素としてHOPG(Highly Oriented Pyrolytic Graphite)なども利用することができる。
【0053】
(発明を実施するための形態)
<実施例1>
以下、本発明のSiC/SiC複合材の製造方法の実施例1について、図1(a)および図2を用いて説明する。
【0054】
基材としてSiC繊維(宇部興産株式会社製チラノZMA)を束ねたストランドの平織クロスを用い、SiC/SiC複合材を製造するプロセスを順に説明する。
【0055】
<洗浄工程:S1>
実施例1では、SiC繊維を束ねたストランドは、サイジング剤により1本に束ねられている。サイジング剤がSiC繊維どうしを密着しているため、それらを分離するため、織布を60℃の熱水に浸漬する。熱水に浸漬しながら織布を変形させ、SiC繊維同士を引き離すとともに、サイジング剤を熱水に溶解させ、SiC繊維の表面を露出させる。
【0056】
次に、サイジング剤が除去されたSiC繊維の織布を乾燥機に入れ、乾燥させる。この操作により、SiC繊維の表面が洗浄され、界面層を形成しやすくすることができる。
【0057】
<含浸工程:S2>
次に、洗浄の済んだ織布を、鱗片状潤滑材として窒化ホウ素の粒子の分散したスラリーに浸漬し、窒化ホウ素の粒子をSiC繊維間に導入する。懸濁液の中で、SiCの織布を屈曲させ、SiC繊維の隙間に窒化ホウ素の粒子を行き渡らせる。なお、懸濁液は窒化ホウ素(h−BN)を、固形分0.03%となるよう分散している。使用したBNは、株式会社マルカ製、AP−170Sであった。なお一次粒子径は0.05μm、比表面積は170m/gであった。
【0058】
<乾燥工程:S3>
次に、スラリーの溶媒を乾燥させ、鱗片状潤滑材をSiC繊維の隙間に固定する。乾燥は、120℃の乾燥機で重量減少がなくなるまで十分に乾燥させるようにする。
【0059】
<界面層形成工程:S4>
SiC繊維の表面に付着した鱗片状潤滑材をSiC繊維の表面に転写する。織布を繰り返し表裏に屈曲することで、SiC繊維の表面に付着した鱗片状潤滑材が擦れ、SiC繊維の表面に付着し、薄い界面層を形成させる。このように屈曲させるので、織布の表面だけでなく、内部のSiC繊維にも界面層を形成することができる。
【0060】
界面層形成工程S4では、織布を曲げ目的の形状の基材が得られている。本実施例では、筒状であるので、SiCの織布を丸め、5層積層させ基材を得る。SiCの織布は、1層ごとに含浸されているので基材内部まで鱗片状潤滑材を行き渡らせることができる。
【0061】
<マトリックス形成工程:S5>
得られた筒状の基材をCVI炉に入れ、SiC繊維の隙間にSiCを気相成長させる。CVI(CVD)炉に入れ、気相成長させるために加熱する過程で、バインダー樹脂は熱分解し、炭素化する。このため、SiC繊維の周囲には、窒化ホウ素と炭素の混ざった薄い被膜が形成され、界面層となっている。また、SiCの繊維間には、界面層の上に気相成長したSiCが形成されている。
【0062】
実施例1では、界面層の形成を低温のプロセスで行うことができるので、プロセス全体を簡略化できる。このため、低コストでSiC/SiC複合材を得ることができる。また、鱗片状潤滑材は粉末であるので絵織布に鱗片状潤滑材を含浸させた後、屈曲させても繊維が折れにくく、内部まで界面層を有するSiC/SiC複合材を容易に得ることができる。
【0063】
<実施例2>
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法の実施例2について、図1(b)および図3を用いて説明する。
【0064】
実施例2では、サイジング剤の含まれていないSiC繊維の織布を用いているので、洗浄工程S1は行わない。また、マトリックス形成工程S5は、CVI法に代えてMI法を行う。すなわち、洗浄工程S1がないこと以外は乾燥工程S3まで同一であり、マトリックス形成工程S5について説明する。
【0065】
<マトリックス形成工程:S5>
表面に界面層の形成されたSiC繊維からなる織布が積層された基材に、炭素前駆体を含浸する。炭素前駆体は、フェノール樹脂を用い、基材に含浸した後、加熱して硬化させる。炭素前駆体は、さらに焼成することにより炭素化し、SiCマトリックスの炭素源となる。こうして、炭素源の含浸された基材に溶融シリコンを含浸させると、炭素源と反応し、反応焼結SiCのSiCマトリックスを得ることができる。
【0066】
実施例2では、界面層の形成を低温のプロセスで行うことができるので、プロセス全体を簡略化できる。このため、低コストでSiC/SiC複合材を得ることができる。また、鱗片状潤滑材は粉末であるので織布に鱗片状潤滑材を含浸させた後、屈曲させても界面層にクラックの起点ができにくく繊維が折れにくく、内部まで界面層を有するSiC/SiC複合材を容易に得ることができる。
【0067】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、屈曲させても繊維が折れにくく、内部まで界面層を有することにより高い耐熱性と耐酸化性を要求するガスタービン、ジェットエンジンのブレード、シュラウドなどの耐熱部品、原子炉用部品、高温炉における装置部品などの分野に適合可能である。
【符号の説明】
【0069】
S1 洗浄工程
S2 含浸工程
S3 乾燥工程
S4 界面層形成工程
S5 マトリックス形成工程
図1
図2
図3