特開2018-199603(P2018-199603A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イビデン株式会社の特許一覧
特開2018-199603SiC/SiC複合材およびその製造方法
<>
  • 特開2018199603-SiC/SiC複合材およびその製造方法 図000003
  • 特開2018199603-SiC/SiC複合材およびその製造方法 図000004
  • 特開2018199603-SiC/SiC複合材およびその製造方法 図000005
  • 特開2018199603-SiC/SiC複合材およびその製造方法 図000006
  • 特開2018199603-SiC/SiC複合材およびその製造方法 図000007
  • 特開2018199603-SiC/SiC複合材およびその製造方法 図000008
  • 特開2018199603-SiC/SiC複合材およびその製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-199603(P2018-199603A)
(43)【公開日】2018年12月20日
(54)【発明の名称】SiC/SiC複合材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/573 20060101AFI20181122BHJP
   C04B 35/577 20060101ALI20181122BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20181122BHJP
   C04B 35/628 20060101ALI20181122BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20181122BHJP
【FI】
   C04B35/573
   C04B35/577
   C04B35/80 600
   C04B35/628 630
   C04B35/628 840
   C04B35/628 940
   C23C16/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-105960(P2017-105960)
(22)【出願日】2017年5月29日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成28年12月3日に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構のウェブサイトにて公開
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、航空エンジン耐熱部品 革新的プリフォーム成形・複合化技術の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英生
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030BA37
4K030CA05
4K030CA13
4K030FA10
(57)【要約】
【課題】マトリックスがシリコンまたは反応焼結SiCであって、SiC繊維のダメージの少ないSiC/SiC複合材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】SiC/SiC複合材の製造方法は、界面層形成工程と、骨材を得る保護層形成工程と、SiC繊維から所定形状の基材を形成する基材形成工程と、基材に炭素源を含浸する炭素源含浸工程と、炭素源含浸工程後に基材に溶融シリコンを含浸するとともに、炭素源由来の炭素と反応させSiCマトリックスを形成するマトリックス形成工程と、を含む。また、SiC/SiC複合材は、繊維状の骨材を集合させた基材と、SiC/SiC複合材であって、骨材は、SiC繊維と、SiC繊維の表面を覆う界面層と、界面層の外側に備えられた保護層とからなり、SiCマトリックスは、反応焼結SiCからなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC繊維の表面に、界面層を形成する界面層形成工程と、
前記界面層の外側にCVD−SiCからなる保護層を形成し骨材を得る保護層形成工程と、
前記界面層形成工程の前、前記界面層形成工程と前記保護層形成工程との間、前記保護層形成工程の後のいずれかの段階で前記SiC繊維から所定形状の基材を形成する基材形成工程と、
前記骨材からなる前記基材に炭素源を含浸する炭素源含浸工程と、
前記炭素源含浸工程後に、前記基材に溶融シリコンを含浸するとともに、前記炭素源由来の炭素と反応させSiCマトリックスを形成するマトリックス形成工程と、
を含むSiC/SiC複合材の製造方法。
【請求項2】
前記界面層は、熱分解炭素または、窒化ホウ素からなる請求項1に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
【請求項3】
前記保護層は、[111]方向に配向したCVD−SiCである請求項1または2に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
【請求項4】
繊維状の骨材を集合させた基材と、前記骨材の隙間を充填するSiCマトリックスとからなるSiC/SiC複合材であって、
前記骨材は、SiC繊維と、前記SiC繊維の表面を覆う界面層と、前記界面層の外側に備えられた保護層とからなり、
前記SiCマトリックスは、反応焼結SiCからなるSiC/SiC複合材。
【請求項5】
前記界面層は、熱分解炭素または、窒化ホウ素である請求項4に記載のSiC/SiC複合材。
【請求項6】
前記保護層は、[111]方向に配向したCVD−SiCである請求項4または5に記載のSiC/SiC複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiC/SiC複合材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiC繊維/SiC複合材は、耐熱性、耐酸化性を有し、高強度の素材であるので、高温炉用部材、半導体製造装置など様々な分野で使用が期待されている。近年では、ジェットエンジン用部品などへの適用も検討されている。
【0003】
特許文献1は、繊維強化セラミックマトリックス複合材プリフォームを溶浸処理する方法であって、(a)プリフォームを溶融シリコン浴中に浸漬するステップと、(b)前記プリフォームを所定の時間前記浴内にそのまま置いておくステップと、(c)前記プリフォームを前記浴から引き出すステップと、(d)前記プリフォームを冷却するステップと、を含むことが記載されている。
【0004】
上記溶浸処理する方法において、繊維強化CMCプリフォームは、該プリフォームを溶融シリコン浴中に浸漬することによって溶浸される。1つの例示的な実施形態では、部品は、真空及び/又は不活性雰囲気炉内で黒鉛ホルダにより吊り下げられる。ホルダ及びCMCプリフォームは溶融シリコン浴中に下ろされ、溶融シリコン浴中で溶融シリコンが、CMCプリフォームの表面を濡らし、部品に浸透する。この浸漬処理はCMCプリフォームを溶浸するのに必要な時間を著しく短縮するので、溶融シリコンがプリフォームを浸食することになる可能性が減少することが記載されている。すなわち上記発明では、溶融シリコンへの浸漬時間を短縮することによって、繊維強化CMCプリフォームを構成するSiC繊維へのダメージを小さくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−206431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の発明は、SiC繊維の溶融シリコンへの浸漬時間を短縮し、溶融シリコンによるダメージを軽減しようとするものであって、溶融シリコンによる劣化が本質的に抑制されているわけではない。マトリックスがシリコンそのものである場合、溶融シリコンを反応に使用する反応焼結SiCである場合には、マトリックス形成の際に溶融シリコンがSiC繊維を劣化させてしまう問題がある。
【0007】
本発明では、マトリックスが反応焼結SiCであって、SiC繊維のダメージの少ないSiC/SiC複合材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、以下のものを含む。
(1)SiC繊維の表面に、界面層を形成する界面層形成工程と、前記界面層の外側にCVD−SiCからなる保護層を形成し骨材を得る保護層形成工程と、前記界面層形成工程の前、前記界面層形成工程と前記保護層形成工程との間、前記保護層形成工程の後のいずれかの段階で前記SiC繊維から所定形状の基材を形成する基材形成工程と、前記骨材からなる前記基材に炭素源を含浸する炭素源含浸工程と、前記炭素源含浸工程後に前記基材に溶融シリコンを含浸するとともに、前記炭素源由来の炭素と反応させSiCマトリックスを形成するマトリックス形成工程と、を含む。
【0009】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では、溶融シリコンを含浸するプロセスを有している。このようなプロセスにおいて溶融したシリコンは、炭素、SiCとの濡れ性が高いこと、炭素、SiCを溶解させる効果があるため、基材を構成する骨材にダメージを与える。本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では、溶融シリコンを含浸する段階の骨材は、CVD−SiCからなる保護層で覆われている。CVD−SiCからなる保護層は、気相成長法で形成されているので、SiC繊維と比べて結晶性が高く緻密な膜が得られ、溶融シリコンとの反応性が低く、骨材を保護する効果が高くなると考えられる。
【0010】
また、本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では溶融シリコンの浸透力を利用しているので骨材間の気孔を効率よく充填でき、気孔の少ないSiC/SiC複合材を得ることができる。本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では、溶融シリコンによる骨材のダメージが少ない上に気孔も少なくすることができるので、高強度で高熱伝導のSiC/SiC複合材を得ることができる。
【0011】
さらに本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、以下の態様であることが好ましい。
【0012】
(2)前記界面層は、熱分解炭素または、窒化ホウ素からなる。
【0013】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、界面層が、六方晶系の結晶構造の熱分解炭素または、窒化ホウ素であるので、c軸方向の結合力が弱く、劈開性を有し、SiC繊維とマトリックとの一体化を妨げる効果がある。このため、これらの界面層を有することにより、複合材としての性質を十分に発揮することができる。
【0014】
(3)前記保護層は、[111]方向に配向したCVD−SiCである。
【0015】
保護層が、[111]方向に配向したCVD−SiCであると、ランダムに配向したSiC繊維よりも溶融シリコンに溶解しにくい。また、[111]方向に配向したCVD−SiCの保護層は耐食性が得られやすい緻密な組織であるので高い耐食性を得ることができる。[111]方向に配向したCVD−SiCであるとは、X線回折装置において最も強い回折線が[111]方向の回折線であることを示していることである。
【0016】
前記課題を解決するための本発明のSiC/SiC複合材は、
(4)繊維状の骨材を集合させた基材と、前記骨材の隙間を充填するSiCマトリックスとからなるSiC/SiC複合材であって、前記骨材は、SiC繊維と、前記SiC繊維の表面を覆う界面層と、前記界面層の外側に備えられた保護層とからなり、前記SiCマトリックスは、反応焼結SiCからなる。
【0017】
反応焼結SiCは、未反応シリコンが残留する。このため、未反応シリコンが溶融するとSiC繊維を侵食し、SiC/SiC複合材の強度を低下させる。本発明のSiC/SiC複合材では、SiC繊維の外側に界面層とCVD−SiCの保護層を有している。CVD−SiCからなる保護層は、気相成長法で形成されているので、SiC繊維と比べて結晶性が高く緻密な膜が得られ、溶融シリコンとの反応性が低く、骨材を保護する効果が高くなると考えられる。
【0018】
また、本発明のSiC/SiC複合材では、マトリックスが溶融シリコンを含浸するプロセスを経て得られる反応焼結SiCであるので、気孔の少ないSiC/SiC複合材を得ることができる。本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では、未反応シリコンによる骨材のダメージが少ない上に気孔も少なくすることができるので、高強度で高熱伝導のSiC/SiC複合材を得ることができる。
【0019】
さらに本発明のSiC/SiC複合材は、以下の態様であることが好ましい。
【0020】
(5)前記界面層は、熱分解炭素または、窒化ホウ素である。
【0021】
本発明のSiC/SiC複合材は、界面層が、六方晶系の結晶構造の熱分解炭素または、窒化ホウ素であるので、c軸方向の結合力が弱く、劈開性を有し、SiC繊維とマトリックとの一体化を妨げる効果がある。このため、これらの界面層を有することにより、複合材としての性質を十分に発揮することができる。
【0022】
(6)前記保護層は、[111]方向に配向したCVD−SiCである。
【0023】
保護層が、[111]方向に配向したCVD−SiCであると、ランダムに配向したSiC繊維よりも溶融シリコンに溶解しにくい。また、[111]方向に配向したCVD−SiCの保護層は耐食性が得られやすい緻密な組織であるので高い耐食性を得ることができる。[111]方向に配向したCVD−SiCであるとは、X線回折装置において最も強い回折線が[111]方向の回折線であることを示していることである。
【発明の効果】
【0024】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では、溶融シリコンを含浸する段階の骨材は、CVD−SiCからなる保護層で覆われている。CVD−SiCからなる保護層は気相成長法で形成されているので、SiC繊維と比べて結晶性が高く緻密な膜が得られ、溶融シリコンとの反応性が低く、骨材を保護する効果が高くなる。また、溶融シリコンの浸透力を利用しているので骨材間の気孔を効率よく充填でき、気孔が少なくすることができるので、高強度で高熱伝導のSiC/SiC複合材を得ることができる。
本発明のSiC/SiC複合材では、SiC繊維の外側に界面層とCVD−SiCの保護層を有している。CVD−SiCからなる保護層は、気相成長法で形成されているので、SiC繊維と比べて結晶性が高く緻密な膜が得られ、溶融シリコンとの反応性が低く、骨材を保護する効果が高くなると考えられる。
【0025】
また、本発明のSiC/SiC複合材では、マトリックスが溶融シリコンを含浸するプロセスを経て得られた反応焼結SiCであるので、気孔の少ないSiC/SiC複合材を得ることができる。本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では、未反応シリコンによる骨材のダメージが少ない上に気孔も少なくすることができるので、高強度で高熱伝導のSiC/SiC複合材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明のSiC/SiC複合材の実施の形態の工程フローを示し、(a)は基材形成工程、界面層形成工程、保護層形成工程、炭素源含浸工程、マトリックス形成工程の順の工程であり、(b)は界面層形成工程、基材形成工程、保護層形成工程、炭素源含浸工程、マトリックス形成工程の順の工程であり、(c)は界面層形成工程、保護層形成工程、基材形成工程、炭素源含浸工程、マトリックス形成工程の順の工程である。
図2図1(a)の工程の詳細を説明する説明図である。
図3図1(b)の工程の詳細を説明する説明図である。
図4図1(c)の工程の詳細を説明する説明図である。
図5】本発明の実施例1および比較例1、2のSiC/SiC複合材に対応する炭素源含浸工程を省略した試料と溶融シリコンとの反応試験の結果を示す走査顕微鏡の写真であり、(a)比較例1に対応する試料の観察写真、(b)比較例2に対応する試料の観察写真、(c)実施例1に対応する試料の観察写真。
図6図5の反応試験において試料を黒鉛ルツボに装着した配置を示す写真である。
図7図5の反応試験における加熱条件である。
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、SiC繊維の表面に、界面層を形成する界面層形成工程と、前記界面層の外側にCVD−SiCからなる保護層を形成し骨材を得る保護層形成工程と、前記界面層形成工程の前、前記界面層形成工程と前記保護層形成工程との間、前記保護層形成工程の後のいずれかの段階で前記SiC繊維から所定形状の基材を形成する基材形成工程と、前記骨材からなる前記基材に炭素源を含浸する炭素源含浸工程と、前記炭素源含浸工程後に前記基材に溶融シリコンを含浸するとともに、前記炭素源由来の炭素と反応させSiCマトリックスを形成するマトリックス形成工程と、を含む。
【0028】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では、溶融シリコンを含浸するプロセスを有している。このようなプロセスにおいて溶融したシリコンは、炭素、SiCとの濡れ性が高いこと、炭素、SiCを溶解させる効果があるため、基材を構成する骨材にダメージを与える。本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では、溶融シリコンを含浸する段階の骨材は、CVD−SiCからなる保護層で覆われている。CVD−SiCからなる保護層は、気相成長法で形成されているので、SiC繊維と比べて結晶性が高く緻密な膜が得られ、溶融シリコンとの反応性が低く、骨材を保護する効果が高くなると考えられる。
【0029】
また、本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では溶融シリコンの浸透力を利用しているので骨材間の気孔を効率よく充填でき、気孔の少ないSiC/SiC複合材を得ることができる。本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では、溶融シリコンによる骨材のダメージが少ない上に気孔も少なくすることができるので、高強度で高熱伝導のSiC/SiC複合材を得ることができる。
【0030】
また、本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、前記界面層が、熱分解炭素または、窒化ホウ素からなる。
【0031】
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、界面層が、六方晶系の結晶構造の熱分解炭素または、窒化ホウ素であるので、c軸方向の結合力が弱く、劈開性を有し、SiC繊維とマトリックとの一体化を妨げる効果がある。このため、これらの界面層を有することにより、複合材としての性質を十分に発揮することができる。
【0032】
さらに、本発明のSiC/SiC複合材の製造方法は、前記保護層が、[111]方向に配向したCVD−SiCである。
【0033】
保護層が、[111]方向に配向したCVD−SiCであると、ランダムに配向したSiC繊維よりも溶融シリコンに溶解しにくい。また、[111]方向に配向したCVD−SiCの保護層は耐食性が得られやすい緻密な組織であるので高い耐食性を得ることができる。[111]方向に配向したCVD−SiCであるとは、X線回折装置において最も強い回折線が[111]方向の回折線であることを示していることである。
【0034】
本発明のSiC/SiC複合材は、繊維状の骨材を集合させた基材と、前記骨材の隙間を充填するSiCマトリックスとからなるSiC/SiC複合材であって、前記骨材は、SiC繊維と、前記SiC繊維の表面を覆う界面層と、前記界面層の外側に備えられた保護層とからなり、前記SiCマトリックスは、反応焼結SiCからなる。
【0035】
反応焼結SiCは、未反応シリコンが残留する。このため、未反応シリコンが溶融するとSiC繊維を侵食し、SiC/SiC複合材の強度を低下させる。本発明のSiC/SiC複合材では、SiC繊維の外側に界面層とCVD−SiCの保護層を有している。CVD−SiCからなる保護層は、気相成長法で形成されているので、SiC繊維と比べて結晶性が高く緻密な膜が得られ、溶融シリコンとの反応性が低く、骨材を保護する効果が高くなると考えられる。
【0036】
また、本発明のSiC/SiC複合材では、マトリックスが溶融シリコンを含浸するプロセスを経て得られた反応焼結SiCであるので、気孔の少ないSiC/SiC複合材を得ることができる。本発明のSiC/SiC複合材の製造方法では、未反応シリコンによる骨材のダメージが少ない上に気孔も少なくすることができるので、高強度で高熱伝導のSiC/SiC複合材を得ることができる。
【0037】
さらに本発明のSiC/SiC複合材は、前記界面層が、熱分解炭素または、窒化ホウ素である。
【0038】
本発明のSiC/SiC複合材は、界面層が、六方晶系の結晶構造の熱分解炭素または、窒化ホウ素であるので、c軸方向の結合力が弱く、劈開性を有し、SiC繊維とマトリックとの一体化を妨げる効果がある。このため、これらの界面層を有することにより、複合材としての性質を十分に発揮することができる。
【0039】
また本発明のSiC/SiC複合材は、前記保護層が、[111]方向に配向したCVD−SiCである。
【0040】
保護層が、[111]方向に配向したCVD−SiCであると、ランダムに配向したSiC繊維よりも溶融シリコンに溶解しにくい。また、[111]方向に配向したCVD−SiCの保護層は耐食性が得られやすい緻密な組織であるので高い耐食性を得ることができる。[111]方向に配向したCVD−SiCであるとは、X線回折装置において最も強い回折線が[111]方向の回折線であることを示していることである。
【0041】
本発明のSiC/SiC複合材は、さらにSiC繊維の表面に界面層を有している。どのような方法で界面層を形成してもよいが、例えば、CVI法、前駆体法などのほか、界面層となる物質の微粒子を含浸して、SiC繊維の表面に付着させてもよい。
【0042】
本発明のSiC/SiC複合材を構成するSiC繊維の太さは特に限定されない。例えば、3〜30μmであることが好ましい。SiC繊維の太さが3μm以上であると、SiCの結晶粒の大きさに比べて大きく結晶粒界が欠陥の元になりにくくすることができる。SiC繊維の太さが30μm以下であると、SiC繊維が曲げられたときに繊維表面に大きな力が加わりにくくすることができるので、SiC繊維を高強度にすることができる。
【0043】
SiC繊維は、1本で用いてもよいが、複数本を束ねて1本のストランドとして使用してもよい。複数本のSiC繊維を束ねて使用することにより、織布、ブレーディング体、フィラメントワインディング体などの形態でSiC/SiC複合材の基材を容易に形成することができる。
【0044】
1本のストランドを構成するSiC繊維の本数は特に限定されない。例えば1本が100〜10000本のSiCで構成されているストランドを利用することができる。ストランドを構成するSiC繊維の数が100本以上であると、効率よく基材を形成することができる。また、ストランドを構成するSiC繊維の数が10000本以下であると、ストランド間にできる空隙を小さくすることができるので、気孔の少ない基材を得ることができる。
【0045】
本発明のSiC/SiC複合材の基材は、どのような形態でもよく、特に限定されない。例えば、SiC繊維のストランドを用いた場合には、織布、フィラメントワインディング体、ブレーディング体などを形成することができ、SiC繊維を短く切断し単線で用いる場合には、不織布、抄造体、マットなどを形成することができる。
【0046】
本発明のSiC/SiC複合材に用いる炭素源としては、固体、液状のどちらでも利用することができる。固体の炭素源としては、特に限定されないがカーボンブラック、カーボンナノチューブ、コークス粉、黒鉛粉などが利用できる。炭素源として固体を利用する場合には、平均粒子径が10nm〜5μmであることが好ましい。平均粒子径が10nm以上であると、静電気によって粒子間に発生する反発力の影響を小さくし、動嵩密度を大きくすることができるので、効率よく炭素源を骨材の隙間に供給することができる。また、平均粒子径が5μm以下であると、SiC繊維の隙間に侵入しやすくことができるので、効率よく骨材の隙間に炭素源を供給することができる。固体の炭素源を用いる場合には、液体中に分散させスラリーとすることにより、容易にSiC繊維の隙間に炭素源を供給することができる。
【0047】
液状の炭素源としては、特に限定されないが、フェノール樹脂、フラン樹脂、ピッチ、タールなどが利用できる。炭素源が高分子の場合、溶媒に希釈する、高温で軟化させるなどの方法で液化し流動性を確保して使用する。また、炭素源にSiC粉を添加してもよい。SiC粉が入っていると、必要とする溶融シリコンを少なくすることができるので含浸量を減らし残留シリコンを少なくすることができる。
【0048】
また、液状の炭素源と、固体の炭素源を混合して炭素源としてもよい。液体の炭素源が入っているので流動性がよく、さらに固体の炭素源が入っているので炭化収率を高くすることができる。コプナ樹脂は、液状の樹脂に黒鉛粉が混入されているので、固体と液状の炭素源の混合物である。
【0049】
液状の炭素源を使用した場合には、硬化させた後、炭素化する。硬化および炭素化の条件は使用する炭素前駆体の特性に応じて適宜設定することができる。液状の炭素源に溶媒が含まれる場合には、例えば50〜120℃の温度で乾燥し、溶媒を乾燥させる。熱硬化性樹脂の場合、例えば80〜200℃の温度に保持して、樹脂の重合を進行させる。水などの副生成物があると、発泡し樹脂が流出してしまうので、発泡しないよう温度上昇を遅くすることが好ましい。
【0050】
本発明のSiC/SiC複合材に用いるSiC繊維は、あらかじめ界面層形成工程の前に、SiC繊維の表面を洗浄する開繊工程を有することが好ましい。SiC繊維は、通常複数本束ねて1本のストランドとして用いられる。複数本のSiC繊維を束ねるため、樹脂などのサイジング剤が塗布されている。サイジング剤には、潤滑作用があるため、相互の摩擦による断線を防止する効果もある。
【0051】
サイジング剤は、繊維を束ねるバインダーとしての役割を担っている。サイジング剤はSiC繊維どうしを互いに接合しているため、サイジング剤が残っている限りSiC繊維間に十分な炭素源を供給することができない。また、サイジング剤は、十分な炭化収率が得られないことが多く、焼成しても十分炭素が残留せず、炭素源の少ない領域を形成してしまう。特に水溶性のサイジング剤を用いる場合には、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコールなどの酸素を多く含有する有機物などが用いられ、十分な炭化収率が得られない。本発明のSiC/SiC複合材によれば、あらかじめSiC繊維を洗浄しサイジング剤を取り除いているので、SiC繊維が開繊され効率よく炭素源をSiC繊維間に供給することができる。
【0052】
開繊工程は、どのような方法で行ってもよい。溶媒での溶解、薬品による分解、熱による分解など時に限定されない。例えば、溶媒で溶解する場合には、適宜親溶媒を選択して洗浄する。溶媒としては、水のほか、アセトン、アルコール類、エーテル類、エステル類などの溶媒などが利用できる。薬品で分解する場合には、例えば酸化剤を用いて分解させてもよい。酸化剤としては、クロム酸混液、次亜塩素酸、過酸化水素などが利用できる。また、SiC繊維は、耐酸化性に優れているので、火炎にさらす、炉に入れるなどの方法でサイジング剤を熱分解させてもよい。この場合、雰囲気は、大気中でもよいし、不活性ガス雰囲気中でもよい。
【0053】
界面層の厚さは、0.1〜5μmであることが望ましい。保護層は気相反応で製膜され浸透力が強い上にSiC繊維と保護層はともにSiCからなるのでSiC繊維と保護層とが一体化しやすい。界面層の厚さを0.1μm以上とすることにより、SiC繊維と保護層とを十分に隔離することができ、一体化を防止することができる。また、界面層の厚さは 5μm以下であることが好ましい。SiC/SiC複合材は、骨材とマトリックスとで構成され、骨材はSiC繊維と界面層と保護層とで構成されている。保護層はマトリックスと同じSiCよりなるので、実質的にマトリックスとして機能するようになる。すなわち、最終的に繊維として形態を有しているのは、SiC繊維と界面層である。このため界面層が厚すぎると、強度を担うべきSiC繊維の比率が減ってしまい、強度低下の原因となる。このような理由から、界面層の厚さを5μm以下とすることにより高い強度のSiC/SiC複合材を得ることができる。
【0054】
保護層の厚さは、0.1〜5μmであることが好ましい。保護層は溶融シリコンと接触したときにSiC繊維を溶解しないよう保護する役割を有している。保護層は、溶融シリコンに対して溶解しにくいCVD−SiCよりなるが、溶融シリコンにより溶解しないわけではないので一定の厚みが必要である。保護層の厚さが0.1μm以上であると、製造段階の溶融シリコンあるいは、反応焼結SiCの中の残留シリコンに対して十分に耐食性を確保することができる。また保護層は、緻密な材料であるので弾性率が高く、屈曲に対して弱い。保護層を厚くすると、製造段階で骨材を変形させたとき、製品段階でSiC/SiC複合材を変形させたときに、保護層にクラックが入り、溶融シリコン、残留シリコンが界面層、SiC繊維に接触しやすくなる。この場合、界面層が熱分解炭素である場合には、界面層が速やかにSiC化して、SiC繊維とマトリックスとが一体化してしまう。このため、保護層の厚さを5μm以下として保護層にクラックが入りにくくすることにより、SiC繊維とマトリックスとの一体化を防止し、SiC繊維の引抜効果による複合材としての性質を維持し、高い強度を得ることができる。
【0055】
(発明を実施するための形態)
<実施の形態1>
図1(a)に基づいて本発明の実施の形態1について説明する。SiC/SiC複合材の形成過程は、図2を参照。
【0056】
本実施の形態1は、基材形成工程S1、界面層形成工程S2、保護層形成工程S3、炭素源含浸工程S4、マトリックス形成工程S5の工程フローに従って製造する。すなわち、基材の形状を形成してからSiC繊維の表面に界面層、保護層を形成することが後に説明する実施の形態2、実施の形態3との相違点である。
【0057】
(A)基材形成工程:S1
最初にSiC繊維を用いて基材の形状を形成する。本実施の形態では織布を用いた基材について説明する。織布はSiC繊維を複数本束ねたストランドを例えば平織にして基材が得られている。平織の基材は、SiC繊維メーカーから供給されているものをそのまま使用してもよい。本実施の形態においては、この段階の基材はSiC繊維からなり、SiC繊維の表面には界面層、保護層は形成されていない。
【0058】
(B)界面層形成工程:S2
基材形成工程S1で得られた基材を構成するSiC繊維の表面に、界面層を形成する。本実施の形態では、CVD炉に織布をいれ、それぞれのSiC繊維に熱分解炭素の被膜を形成する気相成長法によって界面層を形成する。本実施の形態では、SiC繊維が素線ではなく最終的なSiC/SiC複合材の形状である基材になっているので、内部まで界面層を形成するために、減圧CVD法あるいは低温で気相成長を行うことが好ましい。減圧CVD法で気相成長させると、原料ガスが雰囲気中で加熱されにくいので、SiC繊維に接触するまで熱分解を起こしにくく、内部のSiC繊維にまで界面層を形成することができる。また、低温で気相成長を行うことにより、基材の表面ではすぐに分解反応を起こさず、基材内部にまで浸透し、基材内部でも界面層を形成しやすくすることができる。界面層形成工程では、例えばメタン、エタン、プロパンなどの炭化水素ガスを使用することがこのましい。
【0059】
(C)保護層形成工程:S3
本実施形態では、気相成長法により、保護層を形成している。本実施の形態では、界面層でも気相成長法であるので、同じCVD炉を用いて連続して形成することができる。原料ガスには、例えばメチルトリクロロシラン(MTS)を使用する。これには限定されず、例えば炭化水素とシラン系ガスなどそれぞれ炭素、シリコンを含有する混合ガスであってもよい。保護層形成工程S3では、界面層を形成する原料ガスから保護層を形成する原料ガスに切り替えることにより、得ることができる。
【0060】
(D)炭素源含浸工程:S4
本実施の形態では、炭素源を含浸するために、炭素前駆体であるフェノール樹脂を含浸する。フェノール樹脂は、液状であるためSiC繊維の隙間に容易に浸透することができ、細かな隙間にも炭素源を供給することができる。また、続いてフェノール樹脂を硬化し、さらに不活性ガス中で焼成し、炭素化する。硬化、焼成とも熱を加えるプロセスであり、1つの炉で連続して行うことができる。フェノール樹脂の硬化においては、反応生成物として水が生じる。水は膨張して発泡の原因となるので、硬化途中のフェノール樹脂の中を水が拡散できるよう昇温速度を遅くする。同様に焼成段階においては、フェノール樹脂が硬化しているので、発泡しにくくなり硬化の段階よりも昇温速度を速くして加熱することができる。
【0061】
以上の説明したように、炭素源含浸工程S4で炭素前駆体を含浸する場合には、炭素前駆体を含浸した後に硬化、焼成を行うことによって骨材の隙間に炭素源を含浸することができる。
【0062】
(E)マトリックス形成工程:S5
次に基材を溶融シリコンに漬け、残された骨材の空隙に溶融シリコンを含浸する。溶融シリコンの含浸の方法は特に限定されないが、本実施の形態では、基材の上に固形のシリコンを置き、真空下の炉の中で加熱することにより含浸する。シリコンが溶融しさえすればよく加熱温度は特に限定されない。シリコンの融点は1410℃であるので、これ以上の温度まで加熱する。また、雰囲気については特に限定されないが、カーボンなどの治具、ルツボを使用する場合には、酸化を防止するため、真空下、不活性雰囲気で加熱することが望ましい。マトリックス形成工程S5で含浸された溶融シリコンは、先に含浸された炭素源由来の炭素と反応して、反応焼結SiCを形成する。このとき、保護層は、緻密なCVD−SiCからなるので、炭素源よりも反応しにくく、炭素源が優先的に溶融シリコンと反応し、保護層をほとんど劣化させること無く反応焼結SiCからなるマトリックスを形成することができる。
【0063】
<実施の形態2>
図1(b)に基づいて本発明の実施の形態2について説明する。SiC/SiC複合材の形成過程は、図3を参照。
【0064】
本実施の形態2は、界面層形成工程S2、基材形成工程S1、保護層形成工程S3、炭素源含浸工程S4、マトリックス形成工程S5の工程フローに従って製造する。すなわち、SiC繊維の表面に界面層を形成してから、基材の形状、保護層を形成することが実施の形態1、実施の形態3との相違点である。
【0065】
(A)界面層形成工程:S2
本実施の形態では、基材を形成する前の段階でSiC繊維の表面に界面層を形成している。SiC繊維は一般に複数本が束ねられて1本のストランドを構成しているので、エアブローなどの方法により開繊し、個々のSiC繊維の表面が露出するようにして、界面層を形成する。界面層の形成は、例えば窒化ホウ素の微粒子が分散したスラリー中にSiC繊維をディップしたのち乾燥し、表面に界面層を形成する。なお、この方法以外にSiC繊維を紡糸した直後のストランドを形成する前に界面層を形成することにより開繊することなく界面層を形成することもできる。
【0066】
(B)基材形成工程:S1
得られたストランドを用いて、フィラメントワインディング体の基材を形成する。カーボンで形成されたマンドレルに得られた界面層を有するSiC繊維を巻回し、所定の形状の基材を得ることができる。マンドレルへの巻回は、特に限定されないがマンドレルの軸と直行するフープ巻き層、傾斜するヘリカル巻き層を複数層重ねて得ることができる。以上のようにして目的の形状の基材を得ることができる。
【0067】
(C)保護層形成工程:S3
次に得られた基材に保護層を形成する。保護層は、CVD−SiCよりなるので実施の形態1と同様にCVD炉に基材をいれ、気相成長法によりそれぞれのSiC繊維の表面に保護層を形成することができる。なお、本実施の形態では、マンドレルごとCVD炉に入れて保護層を形成することにより、形状を崩すことなく保護層を形成することができる。
【0068】
(D)炭素源含浸工程:S4
保護層の形成された基材を後述する実施の形態1と同様に炭素前駆体であるフェノール樹脂を含浸する。炭素前駆体を含浸した後、硬化、焼成を行うことにより、基材に炭素源を含浸することができる。また、次のマトリックス形成工程S5では、溶融シリコンを含浸するので、マンドレルと基材が固着しないようこの段階でマンドレルを外しておく。炭素前駆体を用いて炭素を含浸した場合には、含浸された炭素源が骨材の形状を保持する役目を有しているので変形しにくくなっている。
【0069】
(E)マトリックス形成工程:S5
さらに、炭素源が含浸された基材に溶融シリコンを含浸し、既に含浸されている炭素源と反応させ、反応焼結SiCよりなるマトリックスを得ることができる。
【0070】
<実施の形態3>
図1(c)に基づいて本発明の実施の形態3について説明する。SiC/SiC複合材の形成過程は、図4を参照。
【0071】
本実施の形態3は、界面層形成工程S2、保護層形成工程S3、基材形成工程S1、炭素源含浸工程S4、マトリックス形成工程S5の工程フローに従って製造する。すなわち、SiC繊維の表面に界面層、保護層を形成してから、基材の形状を形成することが実施の形態1、実施の形態2との相違点である。
【0072】
(A)界面層形成工程:S2
実施の形態2と同様にSiC繊維の表面に窒化ホウ素の界面層を形成する。具体的には窒化ホウ素の微粒子が分散したスラリー中にSiC繊維をディップしたのち乾燥し、表面に界面層を形成する。SiC繊維を紡糸した直後のストランドを形成する前に界面層を形成することにより開繊することなく界面層を形成することもできる。
【0073】
(B)保護層形成工程:S3
次に界面層の形成されたSiC繊維の表面にさらにCVD−SiCからなる保護層を形成する。具体的には、複数本がまとめられ束になったSiC繊維のストランドを、保護層が形成しやすいよう開繊し幅を広げ、そのままロールに巻きなおす。次にこのロールをCVD炉に入れRoll to Rollで繊維の表面に保護層を形成することができる。Roll to Rollで表面に保護層を形成するので、2つのロール間の短い区間で保護層が形成できるようCold wall法でCVDを行うと、効率よくSiCの保護層を得ることができる。SiC繊維の導電性が高ければ2つのロール間に電流を流し、ジュール発熱させることによって容易に保護層を形成することができる。また、製膜前の側のロールを発熱させて、SiC繊維に熱を与えることもできる。また、SiC繊維に光を当て、輻射熱で加熱することもできる。
【0074】
(C)基材形成工程:S1
次に界面層、保護層の形成されたSiC繊維を用いて所定の基材を得る。本実施の形態では、得られたSiC繊維を用いてブレーディング体を作成し、基材とすることができる。ブレーディング体は、SiC繊維を複数束ねたストランドを用い、左右それぞれの方向に螺旋を描きながら交差させ編みこんでいくものであって、筒状の基材を得ることができる。
【0075】
(D)炭素源含浸工程:S4
得られたブレーディング体の基材に、カーボンの芯材を挿入し、炭素前駆体と黒鉛粉の混合物である炭素源を含浸する。ブレーディング体は、容易に変形するので、形状が固定されるまでカーボンの芯材をいれる。本実施の形態の炭素源含浸工程S4では、炭素前駆体を炭素源として使用しているので、接着剤として機能し、形状を固定させることができる。また、炭素前駆体に黒鉛粉を混合しているので、炭素前駆体のみの場合よりも炭素化の歩留まりが高く、後のマトリックス形成工程S5で溶融シリコンと十分に反応するだけの炭素源を供給することができ、効率よく反応焼結SiCからなるマトリックスを得ることができる。
【0076】
炭素源含浸工程S4では、炭素源である炭素前駆体を含浸したのち、炭素前駆体を硬化させ、さらに焼成により炭素に熱分解し、後のマトリックス形成工程S5で溶融シリコンと反応する炭素源を骨材間に導入する。基材の形状は固定されているので、この段階の後で、芯材とSiC/SiC複合材が固着しないように芯材を取り外しておくことが好ましい。
【0077】
(E)マトリックス形成工程:S5
さらに、炭素源が含浸された基材に溶融シリコンを含浸し、既に含浸されている炭素源と反応させ、反応焼結SiCよりなるマトリックスを得ることができる。
【実施例】
【0078】
本発明のSiC/SiC複合材について、実施例1、比較例1、2に基づいて説明する。本実施例および比較例では、SiC繊維と溶融シリコンとの反応を確認しやすくするため炭素源を含浸していない試料について主に説明しているが、実際には炭素源を含浸したのち溶融シリコンを含浸することにより、SiC/SiC複合材を得ることができる。
すなわち、以下の説明では、炭素源含浸工程を省略し、より厳しい条件で溶融シリコンとの反応を確認した。
【0079】
<実施例1>
実施例1のSiC/SiC複合材は、表面に熱分解炭素の界面層、CVD−SiCの保護層を有するSiC繊維の骨材と、骨材の隙間に備えられた反応焼結SiCとからなる。SiC繊維は、NGSアドバンストファイバー株式会社製のHi−Nicalon TypeSであり、8枚朱子織りの織布となっている。SiC繊維の太さは12μmであり、500本のSiC繊維を束ねることにより、1本のストランドを構成している。SiC繊維は、酸素含有量は0.8wt%、Si含有量が68wt%、炭素含有量は28wt%の非晶質のSiC繊維であり、SiC繊維の密度は3.1g/cmであった。
【0080】
以下本実施例のSiC/SiC複合材の製造方法について説明する。
【0081】
基材の材料としてNGSアドバンストファーバー株式会社製の8枚朱子織りSiC繊維の織布を使用する。最初にSiC繊維織物を長さ150mm、幅30mmに切断した後、60℃の熱水に15分間浸漬した。その処理を5回繰り返した後、120℃の熱風で1時間乾燥することでSiC繊維表面に付着するサイジング剤の除去を行った。熱分解炭素からなる界面層形成工程では、メタンを原料ガスに用いてSiC繊維の表面に界面層を製膜する。続いて、原料ガスをメチルトリクロロシランに切り替え、界面層の上にCVD−SiCよりなる保護層を形成した。CVD炉から取り出された基材の上にシリコンを載せ、真空炉の中に配置し、1450℃まで加熱することにより、基材に溶融シリコンを含浸し実施例1に対応する試料が得られた。加熱条件は、真空雰囲気で1450℃まで昇温、1時間保持することで溶融シリコンをSiC繊維織物内部に含浸した後、冷却した。
実際には、溶融シリコンを含浸する前に、炭素源を基材に含浸することにより、反応焼結SiCのマトリックスが得られ、SiC/SiC複合材を得ることができる。
【0082】
次に界面層と保護層の形成された骨材と、溶融シリコンとの反応を確認するため、炭素源含浸工程S4を行わない試料(実施例1に対応する試料)の断面の観察を行った(図5(c)参照)。
試料はエポキシ樹脂で固化後、CP加工(イオンミリング)により断面観察用の断面を得た。
【0083】
<比較例1>
比較例1は、保護層を形成しないこと以外は、実施例1と同様にSiC/SiC複合材を製造し、保護層のないSiC/SiC複合材である。
【0084】
比較例1のSiC/SiC複合材の溶融シリコンとの反応性を確認するため、実施例1と同様に炭素源含浸工程S4のない試料(比較例1に対応する試料)を作成し、断面の観察を行った(図5(a)参照)。本比較例では、熱分解炭素からなる界面層と溶融シリコンとが接触することになる。
【0085】
<比較例2>
比較例2は、界面層を形成せず、SiC繊維をの表面にCVD−SiCからなる保護層を形成した以外は、実施例1と同様にSiC/SiC複合材を製造し、保護層のないSiC/SiC複合材である。
【0086】
比較例2のSiC/SiC複合材の溶融シリコンとの反応性を確認するため、実施例1と同様に炭素源含浸工程S4のない試料(比較例2に対応する試料)を作成し、断面の観察を行った(図5(b)参照)。本比較例では、保護層と溶融シリコンとが接触することになる。
【0087】
溶融シリコンと各実施例比較例のSiC/SiC複合材と溶融シリコンとの反応性を比較するため、炭素源含浸工程を省略して作成したより過酷な各実施例、比較例に対応する断面観察用の試料を走査顕微鏡(SEM)で観察した(図5参照)。
熱分解炭素(pyC)からなる界面層のみを形成した試料(比較例1に対応する試料)は、界面層は消滅しSiC繊維は溶融金属シリコンとの高温接触により形状変化を伴う劣化が観察された(図5(a))。
このため保護層を形成しない比較例1のSiC/SiC複合材では、SiC繊維が溶融シリコンと反応することにより劣化し、有効性は無いと判断した。
【0088】
CVD−SiCからなる保護層のみを形成し界面層を形成しなかった試料(比較例2に対応する試料)は、溶融金属シリコンとの高温接触することにより明確な界面がなくなり一体化して、複合材としての特徴がなくなっている(図5(b))。このため炭素源含浸工程を行った実際のSiC/SiC複合材でも完全に一体化し複合材としての特徴がなくなると考えられる。
界面層を形成しない比較例2のSiC/SiC複合材では、複合材としての特徴を失い有効性は無いと判断した。
【0089】
熱分解炭素からなる界面層とCVD−SiCからなる保護層を形成した試料(実施例1に対応する試料)は、溶融金属シリコンと繊維の高温接触による繊維劣化は、観察されなかった。また、SiC繊維とマトリックスとの間に界面層が明確に残り、SiC繊維とマトリックスとはそれぞれ複合材としての役割を果たすことができる状態になっている。この結果からMI法によりSiC/SiC複合材を製造するため、界面層とCVD−SiCからなる保護層により被覆されたSiC繊維を骨材に用いることが有効であることが確認された。
【0090】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のSiC/SiC複合材は、高強度で高熱伝導であるため、耐熱性の高いことを要求する温炉用部材、半導体製造装置、ジェットエンジン用部品などの分野に適合可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 黒鉛ルツボ
2 SiC繊維織物
3 金属シリコン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7