【解決手段】Sostアンタゴニストは、ヒトSostタンパク質の少なくとも5つの連続した特定のアミノ酸配列の一つを選択的に認識する抗体又はFAB断片である。Sostアンタゴニストは、新規骨成長の固定を助けるマトリックスと共に共投与、又は順次投与されてもよい。治療量のSostアンタゴニストを、骨吸収抑制剤と共に哺乳動物患者へ投与することにより骨密度を増加させる方法として、哺乳動物体内に永続的に移植されるよう適応された移植可能部分を含み、且つSostアンタゴニストの外部被覆を有する、整形外科的及び歯周症学的装置も含む。なお、Wise又はLRPアンタゴニストも同様に必要とする哺乳動物患者へ投与することも含む方法。
マトリックスが、カルシウム塩、硫酸カルシウム、自己移植片、ヒドロキシアパタイト、脱ミネラル化骨、同種移植片またはリン酸三カルシウムを含有する足場材料からなる群より選択される材料を含む、請求項2記載の方法。
治療量のSost、WiseまたはLRPアンタゴニストを、BMP組み換えタンパク質と共に、それを必要とする哺乳動物患者へ局所的に投与する段階を含む、骨成長を促進する方法。
マトリックスが、カルシウム塩、硫酸カルシウム、自己移植片、ヒドロキシアパタイト、脱ミネラル化骨、同種移植片またはリン酸三カルシウムを含有する足場材料からなる群より選択される材料を含む、請求項5記載の方法。
Sost、WiseまたはLRPアンタゴニストが、配列番号:1〜23を含む群より選択される配列の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性を有するペプチドへ特異的に結合する抗体またはFAB断片を含み、抗体がSostの本来の機能に干渉し、それにより新規の局所的骨形成を提供する、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
Sost、WiseまたはLRPアンタゴニストが、ヒトSostタンパク質の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性を有するペプチドへ特異的に結合する抗体またはFAB断片を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
構造支持体の移植可能部分が、哺乳動物体内に永続的に移植されるよう適応され、移植された構造支持体が局所的骨成長によって体内に保持され、構造支持体がSostアンタゴニストの部分的外部被覆を少なくとも有する、構造支持体を含む、整形外科的または歯周症学的医療装置。
マトリックスが、カルシウム塩、硫酸カルシウム、自己移植片、ヒドロキシアパタイト、脱ミネラル化骨、同種移植片またはリン酸三カルシウムを含有する任意の足場材料からなる群より選択される材料を含む、請求項15記載の医療装置。
Sostアンタゴニストが、配列番号:1〜23のいずれか一つ由来の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性を有するペプチドへ特異的に結合する抗体またはFAB断片を含む、請求項13〜16のいずれか一項記載の医療装置。
Sostアンタゴニストが、ヒトSostタンパク質の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性を有するペプチドへ特異的に結合する抗体またはFAB断片を含む、請求項13〜16のいずれか一項記載の医療装置。
有効量のSost、WiseまたはLRPアンタゴニストを骨吸収抑制剤と共に含む治療剤を、それを必要とする哺乳動物患者へ投与する段階を含む、骨密度を増加させる方法。
骨吸収抑制剤が、デノスマブ、ビスフォスフォネート、SERM、カルシトニンもしくは類似体、ビタミンDもしくは類似体、または他のRankアンタゴニストである、請求項23記載の方法。
Sostアンタゴニストが、配列番号:1〜23由来の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性を有するペプチドへ特異的に結合する抗体またはFAB断片を含む、請求項23〜26のいずれか一項記載の方法。
骨吸収抑制剤が、デノスマブ、ビスフォスフォネート、SERM、カルシトニンもしくは類似体、ビタミンDもしくは類似体、または他のRankアンタゴニストである、請求項29記載の方法。
Sostアンタゴニストが、ヒトSostタンパク質由来の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性を有するペプチドへ特異的に結合する抗体またはFAB断片を含む、請求項23〜26のいずれか一項記載の方法。
骨吸収抑制剤が、デノスマブ、ビスフォスフォネート、SERM、カルシトニンもしくは類似体、ビタミンDもしくは類似体、または他のRankアンタゴニストである、請求項33記載の方法。
SostまたはWiseアゴニストが、ヒトSostまたはWiseタンパク質の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性のペプチドである、請求項35記載の方法。
SostまたはWiseアゴニストが、配列番号:1の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性である配列を含む、請求項36記載の方法。
治療量のSostまたはWiseアンタゴニストを、それを必要とする患者へ投与する段階を含む、腎損傷(もしくは糸球体腎炎(glomuleronephritis))をもたらす化学的損傷から哺乳動物の腎臓を保護する方法。
【背景技術】
【0002】
2.背景技術の簡単な説明
単純な加齢、骨変性、および骨粗鬆症、骨折治癒、癒合または関節固定、骨形成不全症等を含む哺乳動物における非常に広範な本質的に異なる障害の処置に関して、ならびにねじ、ロッド、脊椎固定術のためのチタンケージ、股関節、膝関節、足首関節、肩関節、義歯床およびロッド等のような様々な医療整形外科的および歯周症学的インプラントの成功裏の設置に関して、骨形成が見られることがよく理解されている。反対に、骨棘もしくは後縦靱帯骨化症のような骨起源の脊髄狭窄の進行を予防するかまたは減少させるため、関節もしくは椎間板関節形成術(joint or disc arthroplasy)を用いた自発的な癒合または関節固定を予防するため、汎発性特発性骨増殖症および強直性脊椎炎のような自発的脊椎固定を予防するかまたは処置するため、靭帯、腱もしくは関節嚢の骨化または石灰化を予防するため、異所的骨形成を処置し、代謝性骨疾患に起因する全身性骨化過剰症およびパジェット病を予防する、異所性骨化または骨肉腫処置におけるように、比較的稀な骨が過剰産生される障害が哺乳動物において発生することも理解される。これらの徴候および他の徴候に関して、可能な場合は、そのような過剰産生を減少させるまたは阻害することが望ましい。
【0003】
骨減少症、骨折、骨粗鬆症、関節炎、腫瘍転移、パジェット病および他の代謝性骨疾患のような、増加した骨吸収を少なくとも部分的に特徴とする状態を処置するために、カテプシンK阻害剤およびTGF-β結合タンパク質等を使用して骨石灰化を増加させることは、2004年11月25日公開の、Selwyn Aubrey Stochへの米国特許出願第20040235728号(特許文献1)、ならびにMary E. Brunkowらの米国特許第6,489,445号(特許文献2)、および2004年1月15日公開の米国特許出願公開第20040009535号(特許文献3)によって示されるように周知である。Brunkowの'535号および'445号公報において、TGF-β結合タンパク質は、TGF-β結合タンパク質スクレロスチンおよびTGF-βスーパーファミリーメンバー、とりわけ骨形態形成タンパク質間の相互作用に干渉するSostポリペプチド(全長のおよび短いペプチド)抗体を包含する。上に挙げた疾患の全ては、骨塩の全身喪失によるものであり、かつしたがって、抗体治療剤の投与は、骨塩密度の全身(体全体)増加のためのものである。
【0004】
Brunkowの‘445号および‘535号特許において、結合タンパク質は、好ましくは、BMP-5およびBMP-6のうちの少なくとも一つのヒト骨形態形成タンパク質(BMP)へ特異的に結合する。
【0005】
Brunkowらへの米国特許第6,395,511号(特許文献4)は、ヒトTGF-β結合タンパク質およびそれらをコードする核酸の新規のファミリーを教示する。タンパク質は、少なくとも、ヒト骨形態形成タンパク質-5およびヒト骨形態形成タンパク質-6へ結合する。
【0006】
硬結性骨化症は、進行性の硬化性骨形成不全症である。スクレロスチン(sclerostin)(Sost遺伝子)は、元来硬結性骨化症誘発遺伝子として同定された。スクレロスチンは、マウス胚の発生中の骨において強く発現されていた。スクレロスチンの斑点状の発現は、膜内形成(intramembranously forming)頭蓋骨および軟骨形成長骨の双方の表面上に局在した。スクレロスチンの生理学的役割については、解明されるべきことが残っている。しかしながら、Sost内の機能喪失変異は、骨格過成長を特徴とする稀な骨形成不全症を引き起こすことが知られている。
【0007】
2006年7月27日公開のIn-San Kimの米国特許出願第20060165799号(特許文献5)は、骨形成および骨強化を刺激するための、生体適合性硫酸カルシウムおよび粘性バイオポリマーを含む骨充填組成物を教示する。組成物は、周囲の組織へ拡散することなく、損傷された骨の欠如部分へ容易に投与されることが意図される。
【0008】
1999年発行のRonald S. Sapieszkoの米国特許第5939039号(特許文献6)において、自己硬化型セメント剤またはペースト剤を形成するために使用され得る、固有のリン酸カルシウム前駆体塩を得るためのプロセスが教示される。体内に設置された後、これらのリン酸カルシウムセメント剤(CPC)は、再吸収され、かつ骨へ再構築される(変換される)と考えられる。
【0009】
例えば、‘039号特許に従って調製されるリン酸カルシウム粒子は、リン酸カルシウムの使用として公知の任意の整形外科的または歯科的手法;骨充填欠損修復、腫瘍欠損充填、頭蓋顎顔面(craniomaxillofacial)空隙充填および再構成、抜歯部位充填の手法において使用され得る。
【0010】
2006年9月7日公開のCarl Alexander DePaulaへの米国特許出願第20060198863号(特許文献7)は、骨欠損の充填のための成形可能なセラミック組成物に関連する。組成物は、クエン酸バッファーを含有するヒドロゲル担体と混合された、約40ミクロン〜500ミクロンの粒子サイズを有するセラミックβリン酸三カルシウム粒子を含む。組成物は、7.0〜7.8のpHを有し、かつ担体のヒドロゲル構成成分は、組成物の約1.0〜5.0%の範囲に及ぶ。
【0011】
WiseおよびSOSTは、密接に関連するファミリーメンバーであると理解されている(Ellis et al, JBMR 2006 Nov; 21(11): 1738-49(非特許文献1))。当業者は、Wiseヌル変異体マウスが、骨表現型を示すことを認識している(Keynote presentation at the 2005 American Society of Bone Mineral Research meeting in Nashville, TN. State of the Art lectures, an embryonic source of skeletal tissue. Patterning Craniofacial Development; by Robb Krumlauf, Ph. D., Stowers Institute for Medical Research, Kansas City, Missouri, USA(非特許文献2))。
【0012】
2005年11月17日公開のVigneryへの米国特許出願第2005025604号(特許文献8)は、骨芽細胞活性の増加を機械的に誘導し、かつ任意で骨吸収抑制剤の全身的血中濃度を上昇させることを含む、骨同化剤の全身的血中濃度を上昇させることによって、骨形成の誘導を示す。
【0013】
最後に、Yanagita, Modulator of bone morphogenic protein activity in the progression of kidney diseases,
Kidney Int., Vol. 70, No. 6 (2006) 989-93(非特許文献3)は、Usag-1(「Wise」としても公知)がBMB阻害によるシスプラチン傷害から腎臓を保護することを示している。Yanagita, Uterine sensitization-associated gene-1 (USAG-1), a novel antagonist expressed in the kidney, accelerates tubular injury, J. Clin. Invest., Vol. 116, No. 1 (2005) 70-9(非特許文献4)、Yanagita, BMP antagonists: their roles in development and involvement in pathophysiology,
Cytokine Growth Factor Rev., Vol 16, No. 3 (2005) 309-17(非特許文献5)、およびYanagita, USAG-1: a bone morphogenic protein antagonist abundantly expressed in the kidney,
Biochem. Biophys. Res. Commun., Vol. 316, No. 2 (2004) 490-500(非特許文献6)
も参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術の当業者によって一般に理解される意味を有する。以下の参考文献は、本発明において使用される、多数の用語の一般的な定義を当業者に提供する:Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988); The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991);およびHale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書において使用される以下の用語は、他に特定されない限りそれらに帰する意味を有する。
【0030】
本明細書において開示されるように、SOSTもしくはWISE(Usag-1/ectodin/sostdc1)の、それらの天然の受容体への特異的な結合に拮抗するタンパク質、とりわけ抗体、突然変異タンパク質、核酸アプタマー、およびペプチドは、本発明の「結合剤」ならびに「SOSTアンタゴニストもしくはアゴニスト」または「WISEアンタゴニストもしくはアゴニスト」として役割を果たし得る。
【0031】
当業者は、そのようなアゴニストおよびアンタゴニストを投与するための適切な「治療有効量」、ならびにそのような投与に関する方法およびスケジュールを決定することが可能である。
【0032】
「特異的に(もしくは選択的に)結合する」という句、または抗体相互作用に言及する際の「に特異的に(もしくは選択的に)免疫反応性である」という句は、生理学的条件下で、少なくともバックグラウンドの二倍、およびより典型的にはバックグラウンドの10超倍〜100倍の分子結合である、二つの分子間の結合反応に言及する。一つまたは複数の検出可能なタンパク質の結合剤を使用する際に、特異的結合は、タンパク質および他の生物製剤の不均一集団におけるタンパク質の存在を決定するものである。したがって、指定された免疫アッセイ条件下において、特定の抗体が特定のタンパク質配列へ結合し、それによりその存在が同定される。
【0033】
そのような条件下での抗体への特異的結合には、特定のタンパク質に関する特異性に関して選択される抗体が必要とされる。例えば、特定のタンパク質、多型変種、アリル、相同分子種、および保存的に改変された変種、もしくはスプライシング変種、またはそれらの一部に対して産生される抗体は、SOST、WISEもしくはLRP、好ましくはLRP5もしくはLRP6タンパク質と特異的に免疫反応性であり、かつ他のタンパク質とは特異的に免疫反応性でないポリクローナル抗体のみを得るよう選択され得る。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を差し引くことによって達成されてもよい。様々な免疫アッセイ形式が、特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために使用されてもよい。例えば、固相ELISA免疫アッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応性がある抗体を選択するために、ルーチンに使用される(例えば、特異的免疫反応性を決定するために使用され得る免疫アッセイ形式および条件に関して、Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988)を参照のこと)。二つの分子が特異的に相互作用するか否かを決定するための方法は、本明細書において開示され、かつ結合親和性および特異性を決定する方法は、当技術分野において周知である(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A laboratory manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988); Friefelder, “Physical Biochemistry: Applications to biochemistry and molecular biology” (W.H. Freeman and Co. 1976)を参照のこと)。
【0034】
さらには、SostまたはWiseは、例えば、リガンド結合部位へ結合し、それによりリガンド結合に干渉することによって;受容体のリガンド結合部位以外の部位へ結合するが、受容体へのリガンド結合を立体的に干渉することによって;受容体に結合し、かつリガンドの結合に干渉する立体配置的または他の変化を受容体中に引き起こすことによって、または他のメカニズムによることを含む様々なメカニズムによって、受容体とそのリガンドの特異的結合に干渉し得る。同様に、薬剤は、受容体との特異的な相互作用に干渉するようにリガンドへ結合し得るか、または別の方法で相互作用し得る。本明細書において開示される方法の目的のためには、干渉が生じるメカニズムの理解は必要とされず、かついかなる作用のメカニズムも提唱されない。抗Wiseもしくは抗Sost抗体、もしくはその抗原結合断片のようなWiseまたはSost結合剤は、少なくとも約10
5 M
-1、10
6 M
-1もしくはより大きい、好ましくは10
7 M
-1もしくはより大きい、より好ましくは10
8 M
-1もしくはより大きい、かつ最も好ましくは10
9 M
-1もしくはより大きい特異的結合活性(K
a)を有することを特徴とする。抗体の結合親和性は、例えば、Scatchard解析(Scatchard, Ann. NY Acad. Sci. 51: 660-72, 1949)によって、当業者によって容易に決定され得る。
【0035】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、天然の抗体ならびに、例えば一本鎖抗体、キメラの二機能性およびヒト化抗体、ならびにその抗原結合断片(例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、FvおよびrIgG)を含む非天然の抗体を包含する。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, IL)も参照のこと。例えば、Kuby, J., Immunology, 3rd Ed., W.H. Freeman &Co., New York (1998)も参照のこと。そのような非天然の抗体は、固相ペプチド合成を使用して構築することが可能であり、組み換え的に産生することが可能であり、または例えば、参照により本明細書に組み入れられるHuse et al., Science 246: 1275-1281 (1989)によって記載されるような、可変重鎖および可変軽鎖からなるコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって得ることが可能である。例えば、キメラの、ヒト化された、CDR移植された、一本鎖および二機能性抗体を作製するこれらおよび他の方法は、当業者に周知である(各々が参照により本明細書に組み入れられる、Winter and Harris, Immunol. Today 14:243-246 (1993); Ward et al., Nature 341: 544-546 (1989); Harlow and Lane, 前記、1988; Hilyard et al., Protein Engineering: A practical approach (IRL Press 1992); Borrabeck, Antibody Engineering, 2d ed. (Oxford University Press 1995))。
【0036】
「抗体」という用語は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の双方を包含する。該用語はまた、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)およびヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体)のような、遺伝学的に操作された形態も包含する。該用語はまた、組み換え一本鎖Fv断片(scFv)にも言及する。該用語抗体はまた、二価のまたは二重特異性分子、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディも包含する。二価および二重特異性分子は、例えばKostelny et al., (1992) J Immunol 148; 1547, Pack and Pluckthun (1992) Biochemistry 31: 1579, Hollinger et al., 1993、前記、Gruber et al. (1994) J Immunol: 5368, Zhu et al. (1997) Protein Sci 6: 781, Hu et al. (1996) Cancer Res. 56: 3055, Adams et al. (1993) Cancer Res. 53: 4026, およびMcCartney, et al. (1995) Protein Eng. 8: 301において記載されている。
【0037】
「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む免疫グロブリン分子である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性および結合能を有するマウス、ラットまたはラビットのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を包含する。いくつかの例においては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体中にも、移入されるCDRまたはフレームワーク配列中のいずれにも見出されない残基も含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てのまたは実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつ全てのまたは実質的に全てのフレームワーク(FR)領域が、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも一つ、かつ典型的に二つの可変ドメインの実質的に全てを含むと考えられる。ヒト化抗体はまた、典型的にヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を、最適に含むと考えられる(Jones et al., Nature 321: 522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332: 323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593-596 (1992))。ヒト化は、以下のWinterおよび共同研究者らの方法(Jones et al., Nature 321: 522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332: 323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239; 1534-1536 (1988))に従い、げっ歯類CDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することによって、本質的に遂行され得る。したがって、そのようなヒト化抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に小さい部分が、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されたキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。
【0038】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーに言及する。該用語は、一つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然のアミノ酸の人工的な化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに修飾残基を含む天然のアミノ酸ポリマー、および非天然のアミノ酸ポリマーに適用される。
【0039】
アミノ酸配列に関して、コードされる配列中の単一アミノ酸もしくは少ないパーセンテージのアミノ酸を変更する、付加するもしくは欠失する、核酸、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加は、変更が化学的に類似のアミノ酸を用いたアミノ酸の置換をもたらす「保存的に改変された変種」であることを、当業者は認識すると考えられる。機能的に類似の、天然のおよび非天然のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野において周知である。そのような保存的に改変された変種は、本発明の多型変種、種間相同体、およびアリルに加えて存在し、かつそれらを排除しない。典型的な互いに保存的な置換は、1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)である(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照のこと)。
【0040】
二つまたはそれ以上のペプチドに関して、「相同の」とは、以下に記載されるデフォルトパラメーターを用いてBLASTもしくはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用して、または手作業のアラインメントおよび目視検査によって測定される(例えば、NCBIウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/等参照)、特定のパーセンテージの同一であるアミノ酸残基(すなわち、比較ウインドウまたは指定された領域に渡り比較されかつ最大一致に向けてアラインメントされる際の、特定の領域に渡る、約60%の同一性、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはより高い同一性)を有する、二つもしくはそれ以上の配列または部分配列に言及する。該定義はまた、欠失および/または付加、ならびに置換を有するもの、ならびに例えば、多型もしくはアリル変種のような天然の、および人工変種を有する配列も包含する。以下に記載されるように、好ましいアルゴリズムは、ギャップ等を計上し得る。好ましくは、同一性は、少なくとも約25アミノ酸長の領域に渡り、またはより好ましくは50〜100アミノ酸長の領域に渡って存在する。
【0041】
配列比較に関して、典型的に、一つの配列が、試験配列が比較される参照配列として働く。配列比較アルゴリズムを使用する際に、試験および参照配列がコンピューターへ入力され、必要に応じて部分配列座標が指定され、かつ配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。好ましくは、デフォルトプログラムパラメーターが使用され得るか、または代替のパラメーターが指定され得る。続いて、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づき、参照配列と比較して試験配列に関する配列同一性パーセントを算出する。
【0042】
本明細書で使用される「比較ウインドウ」は、二つの配列が最適にアラインメントされた後に、配列が同一数の連続部位の参照配列に対して比較される可能性がある、典型的に20〜600、通常は約50〜約200、より通常は、約100から約150からなる群より選択される、隣接部位数の、一つのセグメントに対する参照を包含する。比較のための配列アラインメントの方法は、当技術分野において周知である。比較のための配列の最適アラインメントは、例えばSmith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2: 482 (1981)の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85: 2444 (1988)の類似性検索方法によって、これらのアルゴリズムのコンピューター化インプリメンテーション(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI中のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFAST)によって、または手作業のアラインメントおよび目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1995補足))によって遂行され得る。
【0043】
配列同一性および配列類似性パーセントを決定するために適切なアルゴリズムの好ましい例は、Altschul et al., Nuc. Acids Res. 25: 3389-3402 (1977)およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990)に記載される、BLASTならびにBLAST2.0アルゴリズムを包含する。BLASTならびにBLAST2.0は、本発明の核酸およびタンパク質に関する配列同一性パーセントを決定するために、本明細書において記載されるパラメーターを用いて使用される。BLAST解析を遂行するためのソフトウェアは、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって、公的に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同一の長さのワードとアラインメントされる際に、いくつかの正の値の閾値スコアTと一致するまたは適合するかのいずれかである、照会配列中の長さWの短いワードを同定することによって、高いスコアの配列対(HSP)を最初に同定する段階を包含する。Tは隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al.,前記)。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すために、検索を開始するための種として役割を果たす。ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加され得る限り、各配列に沿って両方向に伸張される。累積スコアは、例えば、核酸配列に関しては、パラメーターM(一致する残基対に対するリワードスコア;常に0を超える)およびN(不一致残基に対するペナルティスコア;常に0未満)を使用して算出される。アミノ酸配列に関しては、累積スコアを算出するために、スコアマトリックスが使用される。累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ下降した場合;累積スコアが、一つもしくは複数の負のスコア残基アラインメントの蓄積により、ゼロもしくはそれ未満になる場合;またはいずれかの配列の末端に到達した場合に、各方向へのワードヒットの伸張が停止される。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXによって、アラインメントの感度ならびに速度が決定される。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、3のワード長、および10の期待値(E)、および50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915 (1989)を参照のこと)アラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、ならびに両鎖の比較をデフォルトとして使用する。
【0044】
BLASTアルゴリズムはまた、二つの配列間の類似性の統計的解析も遂行する(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90: 5873-5787 (1993)を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の一つの尺度は、二つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が、偶然に生じると考えられる確率の指標を提供する最小合計確率(smallest sum probability)(P(N))である。例えば、参照配列に対する試験ペプチドの比較において、最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、かつ最も好ましくは約0.001未満である場合に、ペプチドは参照配列と類似していると見なされる。ログ値は、例えば、5、10、20、30、40、40、70、90、110、150、170等の大きな負の数である可能性がある。
[本発明1001]
治療量のSost、WiseまたはLRPアンタゴニストを、それを必要とする哺乳動物患者へ局所的に投与する段階を含む、局所的に骨成長を促進する方法。
[本発明1002]
新規骨成長の固定を助ける生体適合性マトリックスまたは足場材料を、哺乳動物患者へ投与する段階をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
マトリックスが、カルシウム塩、硫酸カルシウム、自己移植片、ヒドロキシアパタイト、脱ミネラル化骨、同種移植片またはリン酸三カルシウムを含有する足場材料からなる群より選択される材料を含む、本発明1002の方法。
[本発明1004]
治療量のSost、WiseまたはLRPアンタゴニストを、BMP組み換えタンパク質と共に、それを必要とする哺乳動物患者へ局所的に投与する段階を含む、骨成長を促進する方法。
[本発明1005]
新規骨成長の固定を助ける生体適合性マトリックスまたは足場材料を、哺乳動物患者へ投与する段階をさらに含む、本発明1004の方法。
[本発明1006]
マトリックスが、カルシウム塩、硫酸カルシウム、自己移植片、ヒドロキシアパタイト、脱ミネラル化骨、同種移植片またはリン酸三カルシウムを含有する足場材料からなる群より選択される材料を含む、本発明1005の方法。
[本発明1007]
Sost、WiseまたはLRPアンタゴニストが、配列番号:1〜23を含む群より選択される配列の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性を有するペプチドへ特異的に結合する抗体またはFAB断片を含み、抗体がSostの本来の機能に干渉し、それにより新規の局所的骨形成を提供する、本発明1001〜1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
抗体またはFAB断片がモノクローナル抗体である、本発明1007の方法。
[本発明1009]
抗体がヒト化抗体またはFAB断片である、本発明1008の方法。
[本発明1010]
Sost、WiseまたはLRPアンタゴニストが、ヒトSostタンパク質の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性を有するペプチドへ特異的に結合する抗体またはFAB断片を含む、本発明1001〜1006のいずれかの方法。
[本発明1011]
抗体またはFAB断片がモノクローナル抗体である、本発明1010の方法。
[本発明1012]
抗体がヒト化抗体またはFAB断片である、本発明1011の方法。
[本発明1013]
構造支持体の移植可能部分が、哺乳動物体内に永続的に移植されるよう適応され、移植された構造支持体が局所的骨成長によって体内に保持され、構造支持体がSostアンタゴニストの部分的外部被覆を少なくとも有する、構造支持体を含む、整形外科的または歯周症学的医療装置。
[本発明1014]
外部被覆が構造支持体の移植可能部分を完全に被覆する、本発明1013の医療装置。
[本発明1015]
構造支持体の前記部分が、新規骨成長の固定を助けるマトリックスをさらに含む、本発明1014の医療装置。
[本発明1016]
マトリックスが、カルシウム塩、硫酸カルシウム、自己移植片、ヒドロキシアパタイト、脱ミネラル化骨、同種移植片またはリン酸三カルシウムを含有する任意の足場材料からなる群より選択される材料を含む、本発明1015の医療装置。
[本発明1017]
Sostアンタゴニストが、配列番号:1〜23のいずれか一つ由来の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性を有するペプチドへ特異的に結合する抗体またはFAB断片を含む、本発明1013〜1016のいずれかの医療装置。
[本発明1018]
抗体またはFAB断片がモノクローナル抗体である、本発明1017の医療装置。
[本発明1019]
抗体がヒト化抗体またはFAB断片である、本発明1018の医療装置。
[本発明1020]
Sostアンタゴニストが、ヒトSostタンパク質の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性を有するペプチドへ特異的に結合する抗体またはFAB断片を含む、本発明1013〜1016のいずれかの医療装置。
[本発明1021]
抗体またはFAB断片がモノクローナル抗体である、本発明1020の医療装置。
[本発明1022]
抗体がヒト化抗体またはFAB断片である、本発明1021の医療装置。
[本発明1023]
有効量のSost、WiseまたはLRPアンタゴニストを骨吸収抑制剤と共に含む治療剤を、それを必要とする哺乳動物患者へ投与する段階を含む、骨密度を増加させる方法。
[本発明1024]
骨密度が全身的に増加する、本発明1023の方法。
[本発明1025]
骨密度が治療剤の局所的適用によって増加する、本発明1002の方法。
[本発明1026]
骨吸収抑制剤が、デノスマブ、ビスフォスフォネート、SERM、カルシトニンもしくは類似体、ビタミンDもしくは類似体、または他のRankアンタゴニストである、本発明1023の方法。
[本発明1027]
Sostアンタゴニストが、配列番号:1〜23由来の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性を有するペプチドへ特異的に結合する抗体またはFAB断片を含む、本発明1023〜1026のいずれかの方法。
[本発明1028]
抗体またはFAB断片がモノクローナル抗体である、本発明1027の方法。
[本発明1029]
抗体がヒト化抗体またはFAB断片である、本発明1028の方法。
[本発明1030]
骨吸収抑制剤が、デノスマブ、ビスフォスフォネート、SERM、カルシトニンもしくは類似体、ビタミンDもしくは類似体、または他のRankアンタゴニストである、本発明1029の方法。
[本発明1031]
Sostアンタゴニストが、ヒトSostタンパク質由来の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性を有するペプチドへ特異的に結合する抗体またはFAB断片を含む、本発明1023〜1026のいずれかの方法。
[本発明1032]
抗体またはFAB断片がモノクローナル抗体である、本発明1031の方法。
[本発明1033]
抗体がヒト化抗体またはFAB断片である、本発明1032の方法。
[本発明1034]
骨吸収抑制剤が、デノスマブ、ビスフォスフォネート、SERM、カルシトニンもしくは類似体、ビタミンDもしくは類似体、または他のRankアンタゴニストである、本発明1033の方法。
[本発明1035]
治療量のSostまたはWiseアゴニストを、それを必要とする哺乳動物患者へ、全身的または局所的のいずれかで投与する段階を含む、骨を減少させる方法。
[本発明1036]
SostまたはWiseアゴニストが、ヒトSostまたはWiseタンパク質の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性のペプチドである、本発明1035の方法。
[本発明1037]
SostまたはWiseアゴニストが、配列番号:1の少なくとも5つの連続したアミノ酸に対して、少なくとも75%の同一性である配列を含む、本発明1036の方法。
[本発明1038]
骨が局所的に、かつ全身的ではなく、減少する、本発明1035〜1037のいずれかの方法。
[本発明1039]
骨が全身的に減少する、本発明1035〜1037のいずれかの方法。
[本発明1040]
治療量のSostまたはWiseアンタゴニストを、それを必要とする患者へ投与する段階を含む、腎損傷(もしくは糸球体腎炎(glomuleronephritis))をもたらす化学的損傷から哺乳動物の腎臓を保護する方法。
【0045】
発明の詳細な説明
本発明は、Sostタンパク質に拮抗する物質を使用して、哺乳動物における局所的骨沈着を促進するための方法に向けられる。適切なアンタゴニストは、抗体を遮断することによって提供されてもよい。抗体は、配列番号:1〜23または75%を超える同一性である相同体に従って、任意のSostアゴニストタンパク質へ特異的に結合するものを包含し、かつより好ましくは、抗体はモノクローナルおよび/またはヒト化抗体である。アンタゴニストが、LRP5またはLRP6を介して作用することが同様に望ましい。骨形成を増加させるもしくは促進させることが望ましい場合は、アンタゴニストは骨吸収抑制剤と共投与、または連続的に投与されてもよい。例えば、骨吸収抑制剤は、ビスフォスフォネート(すなわち、フォサマックス(fosamax)、アクトネル(actonel))、PTHまたは類似体(すなわち、フォルテオ(Forteo))、カルシトニンまたは類似体(すなわち、ミアカルシック(Miacalcic))、ビタミンDまたは類似体、SERMまたは類似体(すなわち、エビスタ(Evista))であってもよい。
【0046】
これらの遮断性Sost認識抗体は、従来的技術により、当業者によって容易に作製されることが可能である。好ましくは、これらの抗体は、FAB断片またはモノクローナル抗体であると考えられ、かつより好ましくはFAB断片またはモノクローナル抗体はヒト化されると考えられる。適切なヒト化モノクローナル抗体は、例えばAmgenによって作製されている。Stowers Instituteもまた、4G10、4B9および6E6と称される適切な遮断抗体を提供する。別の適切な遮断抗体は、Abcamから市販されている1A12である。
【0047】
本発明は、配列番号:1〜23の任意のものを認識するペプチドを哺乳動物へ投与することによって、SostまたはWiseタンパク質を刺激する物質を使用して、哺乳動物中の骨を減少させるための方法へ向けられる。全身的(体全体)低骨量疾患を処置するためのペプチドは、出願人らの米国特許出願第11/508,701号、および出願人らの米国特許出願公開第20040023356号において教示される。第11/508,701号および第11/613,658号の双方の出願、ならびに第20040023356号公報の全事項は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0048】
本発明は、SostまたはWiseアンタゴニストを哺乳動物へ投与することによって、例えば糸球体腎炎のような腎障害を引き起こす任意の化学的損傷から、哺乳動物の腎臓を保護するための方法に向けられる。そのような事項は、参照により組み入れられる、第11/508,701号および第11/613,658号出願、ならびに第20040023356号公報において開示される。
【0049】
本発明の他の局面は、医療インプラントへと向けられる。そのような医療装置およびインプラントは、それらの事項が参照により本明細書に組み入れられる、2006年8月10日公開のDavid Rueger, et alへの米国特許出願公開第20060177475号、ならびに発行された米国特許および公開された出願第6190880号、第20020169122号、第20020187104号、第20060252724号、第20070172479号、第5,344,654号、第5,324,819号、第5,468,845号、第6,949,251号、第6,426,332号および第5,656,593号において教示される、例えば、整形外科的装置、ならびに軟骨内骨および骨軟骨欠損を修復するために同装置を使用する方法を包含する。
【0050】
これらの医療装置は、例えば、その事項が参照により本明細書に組み入れられる、2006年8月10日公開のJoseph Vaccarino III, et alへの米国特許出願公開第20060178752号において教示されるような、機械的に係合する骨および/または軟骨へ、好ましくは適応される移植可能部分を有する構造支持体を一般に提供する。これらの骨インプラントは、望ましくは、少なくともその一部に活性剤を含む。その事項が参照により本明細書に組み入れられる、2006年8月24日に公開されたJohn Dennis Bobyn et alへの米国特許出願公開第20060188542号によって示されるように、活性剤は、好ましくは、持続放出または少なくとも二段階放出方式において、インプラントに近接する骨へ局所的に送達可能であるように調剤される。後者において、第一段階は、活性剤の第一の量を迅速に放出し、かつ第二およびその後に続く段階は、活性剤の第二の量を徐々に放出し、それにより活性剤によって刺激される骨形成が調節される。
【0051】
骨インプラントのような医療装置は、より迅速で、かつより完全なインサイチュー骨形成を促進するSostアンタゴニストを有する移植可能部分を特徴とする。医療装置の移植可能部分は、Sostアンタゴニストを用いて、少なくとも部分的にもしくは全体的に覆われるか、または充填されることが望ましい場合がある。永続的な骨の保持を増加させるために、中に骨が形成され得るマトリックス材料から、医療装置の移植可能部分を産生することが有益であると考えられている。これは、歯および人工骨移植切片等のような材料に関して望ましいと考えられる。あるいは、移植可能な切片が耐荷重性であり、かつ例えばステンレス鋼から形成される際に、これらの移植可能切片は、Sostアンタゴニスト被覆を用いて形成されることが望ましい。その場合に、新規の骨成長の形成を助ける、別個のマトリックス材料を提供することも望ましい。
【0052】
適切なマトリックスは、その事項が参照により本明細書に組み入れられる、2006年8月24日公開のTakashi Saitoの米国特許出願公開第20060188544号において教示されるような、例えば、ホスホホリンおよび/またはコラーゲンを含むもののような、スポンジ様構造体を有する複合生体材料を含むものを包含する。そのような被覆物は、例えば、2006年9月14日に公開のZongtao Zhang et alへの米国特許出願公開第20060204542号において教示される単一および多層の被覆物、ならびに米国特許第6,949,251号、第5,298,852号、第5,939,039号および第7,189,263号中のものを包含し、かつその事項が参照により本明細書に組み入れられる、それらにおいて教示される方法を含む、従来型の方法によって作製されることが可能である。
【0053】
Usag-1(Wise)は、腎臓保護におけるその役割に関して、Wnt経路を介して機能している可能性がある。この理由および他の理由のため、例えば糸球体腎炎のような腎臓損傷から腎臓を保護するために、それを必要とする哺乳動物患者へ、治療量のWiseアンタゴニストが投与されてもよい。とりわけ、毒素もしくは薬物治療のような、疾患もしくは化学物質に由来する外部損傷から哺乳動物の腎臓を保護するために、そのようなWiseまたはSost遮断抗体を投与することが特に好ましい。
【0054】
本発明はまた、SOSTおよび/またはWISEのその天然の受容体への結合に拮抗する薬剤(「SOSTアンタゴニスト」)も企図する。SOSTアンタゴニストは、ペプチドの構造を模倣する有機分子であるペプチド模倣薬;またはビニル性ペプトイドのようなペプトイドを包含する。
【0055】
本発明はまた、SOSTおよび/またはWISEのその天然の受容体への結合を刺激する薬剤(「SOSTアゴニスト」)も企図する。SOSTもしくはWiseアゴニストは、ペプチドの構造を模倣する有機分子であるペプチド模倣薬;またはビニル性ペプトイドのようなペプトイドを包含する。
【0056】
本発明はまた、上に記載されるような阻害性ペプチドおよび低分子阻害剤も企図するが、本発明の好ましい態様は、好ましくは、SOST抗体、WISE抗体またはLRP抗体であるSOSTアンタゴニストを包含する。本発明の抗体は、好ましくはキメラであり、より好ましくはヒト化抗体、理想的には、好ましくはマウスタンパク質、最も好ましくはマウスSOSTに対して産生されたモノクローナル抗体である。
【0057】
抗SOST抗体を含む、SOST、WISEまたはLRPアンタゴニスト抗体は、マウスSOSTのような実質的に精製された全長タンパク質等を免疫原として使用して産生されてもよいが、ヒト、マウスもしくは他の哺乳動物起源のSOST、WISEまたはLRPタンパク質であってもよい。免疫原は天然源から調製されてもよく、もしくは組み換え的に産生されてもよく、または合成ペプチド等のシステインノットドメインの一部を含み得るタンパク質のペプチド部分であってもよい。非免疫原性ペプチドは、ハプテンをウシ血清アルブミン(BSA)もしくはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)のような担体分子へ結合させることによって、または融合タンパク質としてペプチド部分を発現することによって、免疫原性を有するようにされてもよい。ハプテンを担体分子へ結合させるための様々な他の担体分子および方法は、当技術分野において周知であり、かつ例えば、Harlow and Lane(前記、1988)によって記載される。
【0058】
本発明の方法を遂行するためにとりわけ有用な抗体は、LRP分子、WISEまたは最も好ましくはSOSTへ特異的に結合するモノクローナル抗体である。そのような抗体は、それらが他のタンパク質へ結合するより、少なくとも一桁分より大きい親和性でSOSTへ結合するため、とりわけ有用である。ヒト化抗体を含むキメラ抗体を創出するための方法は、以下に、より詳細に議論される。
【0059】
1.組み換え抗体の産生
同定されたタンパク質またはペプチドから、モノクローナルおよびポリクローナルの双方の抗体を産生するための方法は、当技術分野において周知である。本発明のSOSTアンタゴニストとして機能する可能性がある組み換えキメラの、かつヒト化抗体を調製するために、非ヒト抗体をコードする核酸を最初に単離せねばならない。これは典型的に、調製されたSostもしくはWise、またはそれらに由来する抗原性ペプチドを用いて、例えばマウスのような動物を免疫することによって行われる。典型的に、マウス当たりおよそ50μgのタンパク質抗体を用いて、マウスを腹腔内に二回免疫する。そのようなポリペプチドを発現する任意の宿主システムにおいて、免疫組織学または免疫細胞学によって、かつ発現されたポリペプチドを用いたELISAによって、免疫されたマウス由来の血清を抗体活性に関して試験し得る。免疫組織学に関しては、ビオチンコンジュゲートされた抗マウス免疫グロブリン、続いてアビジン-ペルオキシダーゼおよび発色性ペルオキシダーゼ基質を使用して、本発明の活性型抗体を同定し得る。そのような試薬の調製物は、例えば、Zymad Corp., San Francisco, Calif.から市販されている。本発明に従って、血清が検出可能な活性型抗体を含むマウスを3日後に犠牲にすることが可能であり、かつそれらの脾臓を融合およびハイブリドーマ産生のために除去する。例えば、ウェスタンブロット解析のような、当業者に一般的なアッセイを使用して、そのようなハイブリドーマの陽性の上清を同定し得る。
【0060】
続いて、例えば、重鎖および軽鎖遺伝子のPCR増幅のための鋳型として、ハイブリドーマmRNAまたは脾臓mRNAを使用して、所望の抗体鎖をコードする核酸を単離し得る[Huse, et al., Science 246: 1276 (1989)]。抗体および細胞内抗体の双方を産生するための核酸は、この技術を使用したマウスモノクローナルハイブリドーマに由来し得る[Richardson J. H., et al., Proc. Natl. Acad Sci USA 92: 3137-3141 (1995); Biocca S., et al., Biochem and Biophys Res Comm, 197: 422-427 (1993) Mhashilkar, A. M., et al., EMBO J 14: 1542-1551 (1995)]。これらのハイブリドーマによって、抗体の構築に関してよく特徴づけられた試薬の、信頼性のある供給源が提供され、かつそれらのエピトープ反応性および親和性が特徴付けられた後には、とりわけ有益である。単離された細胞からの核酸の単離法は、Clackson, T., et al., Nature 352: 624-628 (1991)(脾臓)およびPortolano, S., et al.,前記;Barbas, C. F., et al.,前記;Marks, J. D., et al.,前記;Barbas, C. F., et al., Proc Natl Acad Sci USA 88: 7978-7982 (1991)(ヒト抹消血リンパ球)においてさらに議論される。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれの、少なくとも一部を最適に含む[Jones et al., Nature 321: 522-525 (1986); Riechmann et al., Nature, 332: 323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2: 593-596 (1992)]。
【0061】
キメラのおよびヒト化の双方の組み換え抗体を産生するために、多数の方法が記載されている。キメラ抗体を形成するために、タンパク質ジスルフィド結合を介して結合される、制御された抗体ドメインの再編成が利用されてもよい(Konieczny et al., Haematologia, 14(1): 95-99, 1981)。組み換えDNA技術はまた、マウス抗体の可変軽鎖および重鎖ドメイン、ならびにヒト抗体軽鎖および重鎖定常ドメインをコードするDNA配列間の遺伝子融合を構築するためにも使用され得る(Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81(21): 6851-6855, 1984)。
【0062】
マウスモノクローナル抗体の抗原結合部分すなわち相補性決定領域(CDR)をコードするDNA配列を、分子手段によって、ヒト抗体の重鎖および軽鎖のフレームワークをコードするDNA配列中へ移植してもよい(Jones et al., Nature, 321 (6069): 522-525, 1986; Riechmann et al., Nature, 332 (6162): 323-327, 1988)。発現された組み換え産物は、「再構築された(reshaped)」またはヒト化抗体と称され、かつヒト抗体の軽鎖もしくは重鎖のフレームワークおよびマウスモノクローナル抗体の抗原認識部分であるCDRを含む。
【0063】
ヒト化抗体を産生するための他の方法は、各々全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,693,762号;第5,693,761号;第5,585,089号;第5,639,641号;第5,565,332号;第5,733,743号;第5,750,078号;第5,502,167号;第5,705,154号;第5,770,403号;第5,698,417号;第5,693,493号;第5,558,864号;第4,935,496号;第4,816,567号;および第5,530,101号において記載される。
【0064】
一本鎖抗体の産生に関して記載された技術(参照により組み入れられる、米国特許第4,946,778号)が、SostまたはWiseに対する一本鎖ヒト化抗体を産生するために適応され得る。
【0065】
2.組み換え抗体の精製
抗体プールまたは血清の親和性精製によって、より均一な試薬が実務者へ提供される。親和性カラムを形成する抗体親和性マトリックスを使用して、抗体顆粒形成阻害剤を濃縮するための方法は、当技術分野において周知であり、かつ市販され入手可能である(AntibodyShop, c/o Statens Serum Institut, Artillerivej 5, Bldg. P2, DK-2300 Copenhagen S)。簡単には、抗体親和性マトリックスを、親和性支持体へ付着させる(例えば、CNBR Sepharose (R), Pharmacia Biotech参照)。続いて、抗体を含む混合物を、抗体が結合する親和性マトリックス上に通過させる。当業者に一般的な技術によって、結合した抗体を解離し、濃縮された抗体プールを得る。続いて、いくつかは例として本明細書において記載されるさらなる免疫学的研究に、濃縮された抗体プールを使用することが可能である。
【0066】
別のアプローチにおいては、大型ライブラリーを産生するために、組み換えバクテリオファージが使用される。「ファージ法」(Scott and Smith, Science 249: 386-390, 1990; Cwirla, et al, Proc. Natl. Acad. Sci., 87: 6378-6382, 1990; Devlin et al., Science, 49: 404-406, 1990)を使用して、非常に大型のライブラリーが構築され得る(106〜108の化学物質)。第二のアプローチは、Geysen法(Geysen et al., Molecular Immunology 23: 709-715, 1986; Geysen et al. J. Immunologic Method 102: 259-274, 1987;およびFodor et al.(Science 251: 767-773, 1991)の方法)を例とする化学的方法を主に使用する。Furka et al.(14th International Congress of Biochemistry, Volume #5, Abstract FR:013, 1988; Furka, Int. J. Peptide Protein Res. 37: 487-493, 1991)、Houghton(1986年12月発行の米国特許第4,631,211号)およびRutter et al.(1991年4月23日発行の米国特許第5,010,175号)は、アゴニストまたはアンタゴニストとして試験され得る、ペプチドの混合物を産生する方法を記載する。
【0067】
3. Sostアンタゴニストの同定
本発明は、診断的および治療的SOSTアンタゴニストを同定するための方法を提供する。細胞ベースのおよびインビトロ技術を含む、そのようなアンタゴニストを同定するためのいくつかの例示的方法が、本明細書において記載される。SOSTアンタゴニストを同定する一般的方法は、制御された条件下で、骨沈着に対するアンタゴニスト候補の効果を評価することを含む。好ましくは、生存動物で、マイクロCT技術を使用して骨沈着を決定する。好ましい動物は、げっ歯類を含み、より好ましい動物は霊長類である。大腿骨および脊椎骨は、そのような研究にとってとりわけ有用な対象である。
【0068】
簡単には、事前決定された用量のSOSTアンタゴニスト候補を用いて、試験動物を処置する。対照溶液、好ましくは非刺激性バッファー溶液または他の担体を用いて、対照動物を処置する。
【0069】
軟骨内の骨形成に関する骨形成因子の成功裏の移植には、インビボ適用部位でタンパク質を維持することが可能な、適切な担体材料とタンパク質の結合を必要とする。担体は、細胞浸透を許容するのに十分、生体適合性であり、インビボ生分解性であり、かつ多孔質であるべきである。
【0070】
その断片を含む本発明のタンパク質はまた、Sost、WiseもしくはLRPのエピトープに特異的に結合することが可能な、モノクローナル、またはポリクローナル抗体を産生するためにも使用される可能性がある。これらの抗体は、例えば、SostもしくはWiseアンタゴニストまたはアゴニスト精製プロトコールにおいて、使用される可能性がある。
【0071】
SostもしくはWiseアンタゴニストまたはアゴニストは、適切な送達または支持システム(マトリックス)と組み合わせて、臨床適用において有用である。本明細書において開示されるように、哺乳動物体内において軟骨内骨形成を確実にかつ再現性良く誘導するために、マトリックスを、SostもしくはWiseアンタゴニストまたはアゴニストと組み合わせてもよい。マトリックスは、多孔質材料の粒子から作製される。孔は、マトリックス中への前駆細胞移動、ならびに以降の分化および増殖を許容する寸法でなければならない。粒子サイズは、70μm〜850μm、好ましくは70μm〜420μm、最も好ましくは150μm〜420μmの範囲内であるべきである。骨欠損を覆う形態中へ粒子状材料を密接に充填することによって、またはそうでなければ、「一時的な足場材料」および移動性前駆細胞の動員のための基質として、ならびに以降のそれらの固定および増殖のための基盤としての役割を果たすために、生体適合性であり、かつ好ましくはインビボ生分解性である材料を所望のように構築することによって、マトリックスが作製されてもよい。有用なマトリックス材料は、例えば、コラーゲン;それらの誘導体を含む、グリコール酸、乳酸、およびブチル酸のホモポリマーまたはコポリマー;ならびにヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムおよび他のリン酸カルシウムのようなセラミックスを含む。これらのマトリックス材料の組み合わせも、有用である可能性がある。
【0072】
SOSTアンタゴニスト候補が担体中で送達される際に、理想的には、対照溶液はSOSTアンタゴニスト候補を欠如する担体である。好ましくは事前決定された投与スケジュールに従い、SOSTアンタゴニスト候補の複数回投与を試験動物へ適用してもよい。投与スケジュールは、数日間の期間に渡ってもよく、より好ましくは数週間の期間に渡ってもよい。
【0073】
投与スケジュールが完了した後、存在する骨沈着のレベルを決定するために、試験および対照動物の双方を検査する。これは、任意の適切な方法によって達成されてもよいが、好ましくは、生存動物に対してX線装置を使用して遂行する。動物中の骨のマイクロCT検査のための方法は、当技術分野において周知である。SOSTアンタゴニストとしての使用のために適切なSOSTアンタゴニスト候補は、対照動物と比較する際に、試験動物における有意な骨沈着に留意することによって同定される。理想的には、試験動物の試験骨における骨沈着は、対照動物の同一骨中に存在するよりも、少なくとも10%、より好ましくは20%、最も好ましくは30%もしくは40%またはそれ以上の骨沈着であるべきである。必要な際には、各動物に存在する骨沈着の容量を決定することによって、骨沈着のレベルを算出してもよい。骨沈着の3次元画像を構築し、かつ、例えば、組織形態計測を採用して画像からの容量を算出することによって、算出を遂行してもよい。
【0074】
例示的な態様において、例えば、本明細書に記載されるモノクローナル抗体のような、SOSTアンタゴニスト候補のインサイチュー局所注射を試験動物中へ行い、SOSTアンタゴニスト候補を欠如する等容量の対照溶液を受ける対照動物を伴ってもよい。同一の投与を、四週の間、一週間に一回行うべきである。適切な投与は、試験される特定のSOSTアンタゴニスト候補の性質に依存すると考えられる。例として、投与の際には、静脈内、皮下または筋肉内のいずれかの全身注射が使用されてもよいことに留意されたい。SOSTアンタゴニスト候補またはSOSTアンタゴニストもしくはアゴニストの全身注射に関して、投与用量は好ましくは約5 mg/kg、より好ましくは、約15 mg/kg、有利には約50 mg/kg、より有利には約100 mg/kg、満足には約200 mg/kgであるべきである。噴霧化吸入、点眼、または経口摂取によって遂行される投与は、全身注射を使用して到達されるものと類似の、SOSTアンタゴニスト候補の血液レベルを生じるのに十分な量で行われるべきである。これらのレベルを達成するために、噴霧化吸入、点眼、または経口摂取によって送達されねばならないSOSTアンタゴニスト候補の量は、阻害剤の性質に依存し、かつルーチンの実験によって決定され得る。本明細書に記載されるモノクローナル抗体SOSTアンタゴニスト候補の全身注射に関しては、15 mg/kg用量の送達の一週間後に、治療レベルの抗体を血液中に検出する可能性がある。
【0075】
選択された分子の三次元原子構造の可視化、および該分子と相互作用すると考えられる新規化合物の理論的設計を可能にする、コンピューター、または分子設計として公知の工程を使用して、SOSTアンタゴニストを同定してもよい。三次元構築は、典型的には、選択された分子のX線結晶学的解析またはNMR画像法由来のデータに依存する。分子動力学には、力場データが必要とされる。コンピューターグラフィックスシステムによって、新規化合物が標的分子へどのように結合すると考えられるかの予測が可能になり、かつ完全な結合特異性へ向けての化合物および標的分子の構造の実験的操作が可能になる。一方または双方において小さい変化が成される際に、分子-化合物の相互作用がどうなるかの予測は、分子設計プログラムとユーザーの間の、使用しやすく、メニュー方式のインターフェースと通常連結された分子力学ソフトウェア、および計算集約型コンピューターを、通常必要とすると考えられる。
【0076】
上記に一般に記載される分子モデリングシステムの例は、CHARMmおよびQUANTAプログラム、Polygen Corporation, Waltham, Mass.からなる。CHARMmは、エネルギー最小化および分子動力学機能を遂行する。QUANTAは、分子構造の構築、グラフィクスモデリングおよび解析を遂行する。QUANTAは、互いの分子挙動の相互作用構築、改変、可視化および解析を可能にする。
【0077】
Rotivinen, et al., Acta Pharmaceutica Fennica 97, 159-166(1988);Ripka, New Scientist 54-57 (1988年6月16日); McKinaly and Rossmann, Annu. Rev. Pharmacol. Toxiciol. 29, 111-122 (1989); Perry and Davies, OSAR: Ouantitative Structure-Activity Relationships in Drug Design pp. 189-193 (Alan R. Liss, Inc. 1989); Lewis and Dean, Proc. R. Soc. Lond. 236, 25-140および141-162 (1989);ならびに核酸構成成分に関するモデル受容体に関して、Askew, et al., J. Am. Chem. Soc. 111, 1082-1090 (1989)のような多数の論文が、特定のタンパク質と相互作用的な薬物のコンピューターモデリングを概説する。Askew et al.は、水素結合および芳香族スタッキング力の双方が同時に作用することを許容する、新規分子形態を構築した。Askew et al.は、任意の二個のカルボキシル官能基間に、U型(二軸性)関係が存在するKemp三酸(Kemp et al., J. Org. Chem. 46: 5140-5143 (1981))を使用した。三酸のイミド酸クロライドへの変換によって、アミドまたはエステル結合を介して、実質的に任意の利用可能な芳香族表面へ付着され得るアシル化剤が提供される。もたらされる構造体は、イミド官能基における原子、水素結合およびアデニン誘導体に相補的な微環境を提供するために、垂直方向から収束したスタッキング力と、ほぼ平行であり得る芳香族平面を特徴としていた。
【0078】
化学物質をスクリーニングし、かつ画像描画する他のコンピュータープログラムは、BioDesign, Inc., Pasadena, Calif., Allelix, Inc, Mississauga, Ontario, Canada,およびHypercube, Inc., Cambridge, Ontarioのような会社から入手可能である。これらは、特定のたんぱく質に特異的な薬物への適用のために主に設計されているが、領域が同定されれば、それらはRNAの領域に対して特異的な薬物の設計へ適用され得る。
【0079】
4. 化合物ライブラリーのスクリーニング
既存のSOSTアンタゴニストから、または分子モデリング技術から同定されたものであっても、それらの治療的有益性を増強するために、一般にSOSTアンタゴニストをさらに修飾せねばならない。これは、SOSTアンタゴニストに関連する化合物の、またはおおよその中核構造を基盤に、無作為に合成された化合物の、大型ライブラリーを生成することによって典型的に成される。SOSTアンタゴニスト候補の、大型でかつ/または多種多様なライブラリーを効率的にスクリーニングするために、上に記載されるアッセイを使用してスクリーニングされるべき候補化合物の数を少なくとも減少させる、高速大量処理のスクリーニング方法が必要である。高速大量処理のスクリーニング方法は、多数の潜在的な治療化合物(潜在的調節物またはリガンド化合物)を含む、コンビナトリアルの化学物質またはペプチドライブラリーを提供する段階を含む。続いて、骨沈着を促進することが可能なライブラリーメンバー(特定の化学物質種もしくはサブクラス)を同定するために、そのような「コンビナトリアル化学物質ライブラリー」または「候補ライブラリー」を、以下に記載されるような一つもしくは複数のアッセイにおいてスクリーニングする。したがって、同定された化合物は、従来型「リード化合物(lead compound)」として役割を果たすことが可能である、またはそれ自身が潜在的もしくは事実上の治療剤として使用されることが可能である。
【0080】
したがって、本発明は、SOSTアンタゴニスト候補の高速大量処理のための方法を提供する。これらの方法の初期段階は、SOSTアンタゴニストであるという高い可能性を有するコンビナトリアルライブラリーメンバーの、効率的でかつ迅速な同定を可能にする。これらの初期段階では、SOSTアンタゴニストはまた、LRPまたはSOST結合剤でもあるという観察結果を利用する。結合候補と称される、ライブラリーメンバーのSOST、WISEまたはLRPタンパク質へ特異的に結合する能力を決定する任意の方法が、この初期の高速大量処理のスクリーニングに関して適切である。例えば、当業者に公知の、競合的かつ非競合的ELISA型アッセイを利用してもよい。
【0081】
例えば、少なくとも約10
5 M
-1、10
6 M
-1またはより大きい、好ましくは10
7 M
-1またはより大きい、より好ましくは10
8 M
-1またはより大きい、および最も好ましくは10
9 M
-1またはより大きいSOST、WISEまたはLRPタンパク質に関するK
aを伴う許容される特異性を伴い、SOST、WISEまたはLRPタンパク質へ結合することが見出された結合候補は、SOSTアンタゴニスト候補であり、かつ上に記載されるように、骨沈着を促進する能力を決定するためにさらにスクリーニングされる。
【0082】
5. 治療的適用
本発明の方法を使用して処置される個体は、任意の哺乳動物であってよく、例えば骨における局所的増加が、骨折治癒、癒合(関節固定術)、整形外科的再構成、および歯周症学的修復のために使用されてもよい。骨の全身的増加は、すなわち骨粗鬆症である低骨量の処置のためのものであると考えられる。骨減少は、望ましくない異所的骨形成、縦靱帯骨化症、頸管狭窄の間の骨化症、または骨肉腫を処置するために使用されると考えられる。そのような個体は、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、またはヤギ、とりわけ商業的に重要な動物もしくは家畜動物、より具体的にはヒトを包含する。
【0083】
治療的な使用において、SOSTアンタゴニストは、一般に、アンタゴニストおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物の形態であると考えられる。薬学的に許容される担体は、当技術分野において周知であり、かつ生理食塩水または他のバッファーまたは溶媒、またはグリコール、グリセロール、オリーブオイルもしくは注射可能な有機エステル等の油のようなビヒクルなどの水溶性溶液を包含する。薬学的に許容される担体の選択は、例えば、SOSTアンタゴニストが、抗体、ペプチドまたは非ペプチドであるかといった、SOSTアンタゴニストの化学的性質に部分的に依存すると考えられる。
【0084】
薬学的に許容される担体は、例えばSOSTアンタゴニストを安定化する、もしくはその吸収を増加させるよう作用する生理学的に許容される化合物、または望ましい他の賦形剤を包含してもよい。生理学的に許容される化合物は、例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストランのような炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンのような抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、または他の安定剤もしくは賦形剤を包含する。当業者は、例えばSOSTアンタゴニストの投与経路およびその特定の生理化学的特性に依存して、生理学的に許容される化合物を含む、薬学的に許容される担体の選択を認識すると考えられる。
【0085】
一般に、そのような担体は、利用される用量および濃度でレシピエントにとって非毒性であるべきである。通常は、そのような組成物の調製は、治療剤を、バッファー、アスコルビン酸のような抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、グルコース、マルトース、スクロースまたはデキストリンを含む炭水化物、EDTAのようなキレート剤、グルタチオンならびに他の安定剤および賦形剤と組み合わせることが必要である。中性緩衝食塩水または非特異的血清アルブミンと混合された食塩水は、適切な希釈剤の例である。
【0086】
本発明の薬学的組成物を、様々な異なる経路による投与のために調製してもよい。一般に、担体の種類は投与様式に基づいて選択される。薬学的組成物を、例えば、局所的、経口的、経鼻的、くも膜下、直腸内、膣内、舌下、あるいは皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、空洞内(intracavernous)、道内(intrameatal)、もしくは尿管内注射または注入を含む、非経口的投与を含む、任意の適切な投与様式に向けて製剤化してもよい。薬学的組成物(例えば、経口投与または注射による送達)は、液体の形態であってもよい(例えば、エリキシル剤、シロップ剤、溶液、乳剤または懸濁剤)。液体の薬学的組成物は、例えば、注射用の水のような無菌希釈剤、食塩水溶液、好ましくは生理食塩水、リンガー溶液、等張性塩化ナトリウム、溶媒もしくは懸濁媒として役割を果たす可能性がある固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒;抗細菌剤;抗酸化剤;キレート剤;アセテート、クエン酸もしくはリン酸のようなバッファー、および塩化ナトリウムもしくはデキストロースのような、張性の調整に関する薬剤のうち一つまたは複数を包含してもよい。非経口的調製物を、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスもしくはプラスチックで作製された複数投与バイアル中に封入し得る。生理食塩水の使用が好ましく、かつ注射可能な薬学的組成物は、好ましくは無菌的である。
【0087】
本発明の方法は、例えば、抗生物質、殺真菌剤、および抗炎症剤のような他の医用薬物を含むカクテル中でのSOSTアンタゴニストの適用を包含する。あるいは、該方法は、処置レジメを最適化するために、SOSTアンタゴニストおよび一つまたは複数の付加的医用薬物による、疾患を患う個体への連続投与を含んでもよい。そのような最適化されたレジメにおいて、顆粒化阻害剤を含む医用薬物は、任意の順序でかつ任意の組み合わせで適用されてもよい。
【0088】
本発明のSOST、WISEもしくはLRPアンタゴニストまたはアゴニストはまた、単回投与後の持続性の処置のために、徐放製剤中に含まれてもよい。一つの態様において、製剤をマイクロスフェアの形態に調製する。処置が必要な際には、生分解性の制御された放出材料と共に、任意で、付加的医用薬物と共に、マイクロスフェアをSOSTアンタゴニストの均質マトリックスとして調製してもよい。好ましくは、浸透および/もしくは注射のために適切なサイズにマイクロスフェアを調製し、かつ全身にまたは処置部位に直接注射する。
【0089】
本発明の製剤はまた、胸膜、腹膜、頭蓋、縦隔、心膜、滑液嚢または滑液嚢性、硬膜外、くも膜下、眼球内、関節内、椎間板内、髄内、脊髄周囲(perispinal)等を含むが、これらに限定されない全ての体空間/腔における投与に関しても適切である。
【0090】
いくつかの徐放性の態様は、生分解性でありかつ/またはゆっくり溶解する重合物質を包含する。そのような重合物質は、ポリビニルピロリドン、低および中程度分子量ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチル澱粉、メタクリル酸ジビニルベンゼンカリウムコポリマー、ポリビニルアルコール、澱粉、澱粉誘導体、微結晶性セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、およびセルロース誘導体、βシクロデキストリン、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)、グルカン、スクレログルカン、マンナン、キサンタン、アルギン酸およびその誘導体、デキストリン誘導体、モノステアリン酸グリセリン、半合成グリセリド、パルミトステアリン酸グリセリン、ベヘン酸グリセリン、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、タルク、安息香酸ナトリウム、ホウ酸、ならびにコロイド状シリカを含む。
【0091】
本発明の徐放剤はまた、澱粉、あらかじめゲル化した澱粉、リン酸カルシウム、マンニトール、ラクトース、サッカロース、グルコース、ソルビトール、微結晶性セルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、澱粉溶液、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガカントゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、コロイド状シリカ、モノステアリン酸グリセリン、水素化ヒマシ油、ワックス剤、ならびに一置換、二置換および三置換体のグリセリドのような補助剤も含む。徐放剤はまた、一般に、国際公開公報第94/06416号において記載されるように調製されてもよい。
【0092】
個体へ投与されるSOST、WISEもしくはLRPアンタゴニストまたはアゴニストの量は、疾患および/または傷害の程度に部分的に依存すると考えられる。診断的または治療的手法のために投与するにあたっての、薬剤の有効量を決定するための方法は、当技術分野において周知であり、かつフェーズI、フェーズIIおよびフェーズIII治験を含む。一般に薬剤アンタゴニストは、全身的に投与される際には、約0.01〜200 mg/kg体重の用量で、および創傷部位へ直接的に投与される際には、およそ0.1〜100μMの濃度で投与される。SOSTアンタゴニストもしくはアゴニストの全量を、比較的短期間に渡って、ボーラスもしくは注入のいずれかによって単回投与として被験体へ投与し得るか、または分割処置プロトコールを使用して投与され得、より長期間に渡って複数回投与を行う。傷害の領域へ有効量を提供するために必要な特定のSOSTアンタゴニストの濃度は、被験体の年齢、および一般的健康状態、ならびに投与経路、投与される処置数、およびSOSTアンタゴニストが抗体、ペプチドまたは非ペプチド分子のいずれであるかを含むSOSTアンタゴニストの性質を含む多数の因子に依存することを、当業者は認識すると考えられる。これらの因子を考慮して、治療の目的のために骨沈着を効率的に促進するための有効量を得るように、当業者は特定の用量を調整すると考えられる。
【0093】
本明細書において引用される全ての刊行物および特許出願は、各々個々の刊行物または特許出願が、具体的にかつ別個に参照により組み入れられることが示されるよう、参照により本明細書に組み入れられる。
【0094】
上述の発明は、明確性および理解のために例証および例を介していくらか詳細に記載されているが、本発明の教示を考慮して、それに対する特定の変更および改変が、添付の特許請求の範囲の精神および範囲を逸脱することなく成される可能性があることは、当業者にとって容易に明確であると考えられる。