【解決手段】貯蔵室12を有するキャビネットと、貯蔵室12の空気を加湿する加湿手段30と、貯蔵室12内に配置された閉塞容器72,80と、閉塞容器72,80を区画する壁面の一部を構成する気体透過シート78,79と、貯蔵室12に設けられた酸素分離膜62と、酸素分離膜62を透過した貯蔵室12内の空気をキャビネットの外部へ排気する排気手段とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
以下、第一実施形態の貯蔵庫について図面に基づいて説明する。本実施形態の貯蔵庫は、内部に設けられた貯蔵室が所定温度に冷却される冷蔵庫1である。
【0011】
本実施形態に係る冷蔵庫1は、
図1に示すように、前面に開口する断熱箱体からなるキャビネット2を備える。キャビネット2は、鋼板製の外箱3と合成樹脂製の内箱4との間に形成された断熱空間5に真空断熱材や発泡断熱材等の断熱材を有して構成されている。キャビネット2は内箱4の内側に複数の貯蔵空間が設けられており、貯蔵空間が断熱仕切壁6によって上下に区画されている。
【0012】
断熱仕切壁6の上方の空間は、冷蔵温度帯(例えば、1〜4℃)に冷却される貯蔵室であり、内部がさらに仕切壁7によって上下に区画されている。仕切壁7の上方には冷蔵室10が設けられ、仕切壁7の下方には野菜室12が設けられている。
【0013】
冷蔵室10内部は、複数の棚板9によって上下に複数段に区画されている。仕切壁7と最下段の棚板9とで上下に仕切られた空間には、引出式のチルド容器を収納するチルド室8が設けられている。冷蔵室10の背面には、冷蔵室10内の温度を測定する冷蔵温度センサ25が設けられている。冷蔵室10の前面開口部には、ヒンジで枢支された回動式の冷蔵室扉11が設けられている。
【0014】
野菜室12の前面開口部は、引出し式の野菜室扉13により閉塞されている。野菜室扉13の庫内側には、貯蔵容器70を保持する左右一対の支持枠が固着されており、開扉動作とともに貯蔵容器70が庫外に引き出されるように構成されている。野菜室12の前面開口部の周縁部には、扉センサ29が設けられており、野菜室扉13が開放状態にあるか閉塞状態にあるかを検知する。
【0015】
図2に示すように、野菜室12内に設けられた貯蔵容器70は、野菜室12のほぼ全幅にわたって設けられた上面に開口する下段容器71と、下段容器71の上方に設けられた上段容器72とを備え、上下2段に重なり合う構造をなしている。
【0016】
下段容器71は、前方壁、後方壁、左右側壁によって囲まれた有底の箱状の容器であり、上方に開口する上面開口部から内部に貯蔵品を出し入れするようになっている。下段容器71は、野菜室扉13の裏面側に固着された左右一対の支持枠に保持され、野菜室扉13の開扉動作とともに庫外へ引き出されるように構成されている。
【0017】
下段容器71は、内底面から上方へ突出する前後仕切74が設けられている。この前後仕切74は、下段容器71の左右側壁の内面を連結するように設けられており、前後仕切74の前側に下段前容器81が形成され、後側に下段後容器80が形成されている。
【0018】
下段後容器80の後方壁80aには、開口部80bが形成され、当該開口部80bを塞ぐように気体透過シート78が設けられている。気体透過シート78は、下段後容器80を区画する壁面の一部分を構成し、後述する後側流路94に面して設けられている。
【0019】
下段後容器80は、後方壁80aの上端から前方へ延びる天井壁80dによって上面後端部が閉塞され、その前方に下段後容器80へ貯蔵品を出し入れするための上面開口部80cが形成されている。
【0020】
下段後容器80の上面開口部80cは、
図1及び
図2に示す野菜室扉13が閉扉され野菜室12内に貯蔵容器70を収納した状態で上段容器72によって覆われる。下段後容器80は、上面開口部80cを閉塞する上段容器72と、後方壁80aの開口部80bを閉塞する気体透過シート78とともに、野菜室12を循環する空気等の容器外部を流れる空気(風)の直接的な進入が抑制された閉塞容器を構成する。
【0021】
下段後容器80の上面開口部80cを開放する場合、野菜室扉13を開扉し下段容器71を庫外へ引き出した後、上段容器72を下段容器71に対して後方へ摺動させて上面開口部80cを開放する。なお、下段前容器81の上面開口部は、野菜室扉13の開扉状態及び閉扉状態に関わらず上段容器72によって覆われることなく開放している。
【0022】
上段容器72は、前方壁、後方壁72a、左右側壁によって囲まれた有底の箱状の容器であり、上方に開口する上面開口部72cから内部に貯蔵品を出し入れするようになっている。上面開口部72cは蓋体76により開閉可能に閉塞されている。
【0023】
上段容器72は、冷蔵室10と野菜室12とを区画する仕切壁7の下方に所定間隔をあけて配置され、仕切壁7との間に前後方向に延びる上側流路91を形成する。上段容器72は、野菜室12の左右の内側壁面に設けられた内箱レールと下段容器71の左右側壁の上端を前後方向に摺動することで、下段容器71と独立して庫外へ引き出し可能に設けられている。
【0024】
上段容器72の後方壁72aには、開口部72bが形成され、当該開口部72bを塞ぐように気体透過シート79が設けられている。気体透過シート79は、上段容器72を区画する壁面の一部分を構成し、後述する流入空間Sに面して設けられている。
上段容器72は、上面開口部72cを閉塞する蓋体76と、後方壁72aの開口部72bを閉塞する気体透過シート79とともに、野菜室12を循環する空気等の容器外部を流れる空気(風)の直接的な進入が抑制された閉塞容器を構成する。
【0025】
なお、上段容器72の底面後部には、下段後容器80に開口する通気孔77が設けられ、上段容器72と下段後容器80とが通気孔77を介して連通し、上段容器72と下段後容器80とが一続きの閉塞容器を構成している。
【0026】
このような貯蔵容器70は、野菜室扉13が閉扉され野菜室12内に収納された状態において、上段容器72の後方壁72a、下段後容器80の天井壁80d、仕切壁7、エバカバー23、及び野菜室12の左右の内側壁面で区画された流入空間Sを形成する。
【0027】
気体透過シート78,79は、防水性及び透湿性を有するシート材、例えば、直径が0.5μm〜3μmの孔を多数有する多孔質シート材であり、水蒸気粒子や酸素分子を通過させるが、孔よりも大きな水の粒子を遮断する。また、多孔質状であることから、空気(風)の流通を制限する所定の風遮断性をも有している。一例を挙げると、ポリエステル長繊維不織布とポリエチレン多孔質フィルムをラミネートした透湿防水シートなどを気体透過シート78,79に用いることができる。
【0028】
断熱仕切壁6の下方の空間には、自動製氷機を備えた製氷室(不図示)と第1冷凍室16とが左右に併設され、その下方に仕切板22を介して第2冷凍室17が設けられている。
【0029】
製氷室、第1冷凍室16及び第2冷凍室17は、いずれも冷凍温度帯(例えば、−17℃以下)に冷却される。第2冷凍室17の背面には、第2冷凍室17内の温度を測定するための冷凍温度センサ26が設けられている。
【0030】
製氷室、第1冷凍室16、及び第2冷凍室17の開口部は、野菜室12と同様、引き出し式の扉18,19により閉塞されている。各扉18,19の裏面側に固着した左右一対の支持枠には貯蔵容器20,21が保持されており、開扉動作とともに該貯蔵容器20、21が庫外に引き出されるように構成されている。
【0031】
冷蔵室10及び野菜室12の後部には、エバカバー23で前後に仕切られた冷蔵冷却器室32と、冷蔵室10と冷蔵冷却器室32とを連結するダクト33と、冷蔵室10や野菜室12と冷蔵冷却器室32とを連結するリターンダクト44とが形成されている。
【0032】
冷蔵冷却器室32には、冷蔵冷却器30、冷蔵ファン31及びドレインパン27が収納されており、冷蔵冷却器30が冷却した冷蔵冷却器室32の空気を冷蔵ファン31によってダクト33を介して冷蔵室10へ供給する。
【0033】
ドレインパン27は、冷蔵冷却器30の下方に位置するように冷蔵室10及び野菜室12内を流れた空気を冷蔵冷却器30に戻すリターンダクト44内に配置され、除霜運転時に冷蔵冷却器30から生じる結露水(除霜水)を受ける。ドレインパン27に溜まった結露水は、排水ホース28を介してキャビネット2の背面下部に設けられた機械室38に配置された蒸発皿41へ排出する。
【0034】
ドレインパン27に溜まった結露水を機械室38へ排出する排水ホース28は、キャビネット2の背面壁に設けられた冷蔵冷却器室32と機械室38とを連通する挿通孔2aに挿通され、冷蔵冷却器室32から機械室38へ引き出されている。
【0035】
キャビネット2に設けられた挿通孔2aは、挿通する排水ホース28より口径が大きくなっている。そのため、挿通孔2aに排水ホース28を挿入した状態で、挿通孔2aと排水ホース28との間には、冷蔵冷却器室32から機械室38まで一続きに繋がった隙間が形成されている。つまり、挿通孔2aと排水ホース28との間に形成された隙間が、野菜室12と機械室38とを連通する通気孔2cとして機能する。
【0036】
製氷室、第1冷凍室16、及び第2冷凍室17の後部には、エバカバー24で前後に仕切られた冷凍冷却器室36と、製氷室、第1冷凍室16、及び第2冷凍室17と冷凍冷却器室36とを連結するダクト37とが形成されている。冷凍冷却器室36には、冷凍冷却器34及び冷凍ファン35が収納されており、冷凍冷却器34が冷却した冷凍冷却器室36の空気を冷凍ファン35によってダクト37を介して製氷室、第1冷凍室16、及び第2冷凍室17へ供給する。
【0037】
冷蔵冷却器30及び冷凍冷却器34は、機械室38に収納された圧縮機39や凝縮器(不図示)とともに冷凍サイクルを構成する。冷凍サイクルでは、圧縮機39から吐出された冷媒が切替弁47(
図3参照)によって冷蔵冷却器30及び冷凍冷却器34の一方に供給されることで所定温度に冷蔵冷却器30及び冷凍冷却器34が冷却される。
【0038】
冷蔵冷却器30は、冷蔵冷却器室32の空気を冷却して、例えば、−10〜−20℃の冷気を生成する。その際、冷蔵冷却器30は、冷蔵温度帯の冷蔵室10及び野菜室12を循環した空気と熱交換するため、冷蔵冷却器30に付着する霜が融解して水分を多く含んだ空気(加湿冷気)を生成する。
【0039】
図1及び
図2において加湿冷気の流れを矢印で示すように、生成した加湿冷気は、冷蔵ファン31の回転によって、ダクト33を介して吹出口33aから冷蔵室10へ供給され、冷蔵室10を冷却及び加湿する。
【0040】
冷蔵室10を流れた加湿冷気の一部は、仕切壁7の後部に設けられた吸込口42からリターンダクト44に流れ込み冷蔵冷却器室32へ戻り、残りの空気は仕切壁7に設けられた連通路7aを通って野菜室12へ流れ込む。
【0041】
連通路7aは、野菜室12の後方上部に区画された流入空間Sに開口するように仕切壁7の後端部に設けられ、冷蔵冷却器30で加湿冷却された空気が、冷蔵室10を流れた後、連通路7aを通って流入空間Sへ流れ込む。
【0042】
流入空間Sは、野菜室12の内壁と貯蔵容器70との間に形成された循環流路90に接続されており、流入空間Sに流れ込んだ加湿冷気の一部が循環流路90へ流れ込む。
【0043】
循環流路90は、上記した上側流路91、野菜室扉13と下段容器71の前方壁の間に形成された上下方向に延びる前側流路92、断熱仕切壁6と下段容器71底面の間に形成された前後方向に延びる下側流路93、及びキャビネット2の背面壁と下段後容器80の後方壁80aとの間に形成された上下方向に延びる後側流路94が順次接続されてなる。
【0044】
このような循環流路90は、上側流路91の後端部が流入空間Sに接続され、後側流路94の上端部が野菜室12の背面上部に設けられたリターンダクト44の吸込口43に接続されている。循環流路90に流れ込んだ加湿冷気は、上側流路91、前側流路92、下側流路93、及び後側流路94を順次流れた後、リターンダクト44を通って冷蔵冷却器室32へ戻る。冷蔵冷却器室32に戻った冷気は冷蔵冷却器30と熱交換して再び加湿及び冷却される。
【0045】
冷凍冷却器34は、冷凍冷却器室36の空気を冷却して、例えば、−20〜−30℃の冷気を生成する。生成した冷気は、冷凍ファン35の回転によってダクト37を介して製氷室、第1冷凍室16及び第2冷凍室17に供給されこれらの貯蔵室を冷却する。製氷室及び第1冷凍室16を冷却した空気は、不図示の透孔を通って第2冷凍室17へ流れ込み、第2冷凍室17に供給された冷気と合流し、その後、第2冷凍室17の背面に設けられた吸込口45からリターンダクト46を通って冷凍冷却器室36に戻り、冷凍冷却器34と熱交換して再び冷却される。
【0046】
また、野菜室12には、エバカバー23で区画された冷蔵冷却器室32の下方に酸素分離モジュール60が設けられている。酸素分離モジュール60は、箱形のケース61に設けられた酸素分離膜62を備え、酸素分離膜62が循環流路90を構成する後側流路94に面して設けられている。
【0047】
酸素分離膜62は、野菜室12とケース61内部とを前後に仕切り、酸素分離膜62の両側に圧力差が生じると高圧側の空気中の酸素が膜内部を拡散移動して低圧側の表面から離脱することで、低圧側の酸素濃度を低下させる。
【0048】
ケース61の内部は、キャビネット2の背面下部に設けられた機械室38に配置された排気ポンプ63と排気ホース64によって接続され、排気ポンプ63の動作によってケース61内部の空気を吸引して、機械室38からキャビネット2の外部へ排気する。
【0049】
なお、排気ポンプ63は防音材で覆われて機械室38に設けられることが好ましい。これにより排気ポンプ63の動作音による騒音を抑えることができる。
【0050】
酸素分離膜62を透過した酸素を機械室38へ排気する排気ホース64は、キャビネット2の背面壁に設けられた野菜室12と機械室38とを連通する挿通孔2bに挿通され、野菜室12に設けられた酸素分離モジュール60から機械室38へ引き出されている。なお、
図1に例示するように、排水ホース28を挿通する挿通孔2aと排気ホース64を挿通する挿通孔2bとが途中で合わさって1つの挿通孔になってもよい。
【0051】
キャビネット2の背面上部には、冷蔵庫1の動作全般を制御する制御部50が設けられている。制御部50は、
図3に示すように冷蔵温度センサ25、冷凍温度センサ26、扉センサ29などの各種センサ等から入力される信号や、EEPROM等の不揮発性記録媒体からなるメモリ51に記憶された制御プログラムに基づいて、冷蔵ファン31、冷凍ファン35、圧縮機39、切替弁47、排気ポンプ63などの各種電気部品を制御することで、各室を所定温度に冷却したり、野菜室12に設けた上段容器72及び下段後容器80の内部の酸素濃度を低減する。
【0052】
具体的には、冷蔵温度帯の冷蔵室10及び野菜室12を冷却する場合には、制御部50が、冷凍サイクルに設けられた切替弁47を切り替えて冷蔵冷却器30に冷媒が流れるようにするとともに、冷蔵ファン31を運転させる冷蔵冷却運転を実行する。
【0053】
これにより、冷蔵冷却器30で加湿冷却された冷蔵冷却器室32の空気が、ダクト33を介して冷蔵室10及び野菜室12に送風され、冷蔵室10の背面に設けられた冷蔵温度センサ25の検出温度が所定温度範囲に収まるように冷蔵室10及び野菜室12を冷却する。
【0054】
その際、気体透過シート78,79は空気(風)の流通を制限するものの、ある程度の空気の流通を許容するため、冷蔵室10から流入空間Sに流れ込んだ加湿冷気の一部は、気体透過シート79を通って上段容器72の内部へ流れ込み、残りの大部分の加湿冷気は、気体透過シート79によって遮断され、上段容器72内へ流れ込むことなく流入空間Sに滞留し、流入空間Sに入りきらない加湿冷気が循環流路90へ流れ込む。
気体透過シート79を通って上段容器72の内部へ流れ込んだ加湿冷気は、上段容器72とこれに連通する下段後容器80の内部に緩やかな空気の流れを生じさせ、これらの容器72,80内を加湿及び冷却した後、下段後容器80に設けられた気体透過シート78を通って排出される。
【0055】
また、流入空間Sに滞留する加湿冷気は、野菜室12等の貯蔵室内部の空気に比べて水蒸気粒子を多数含んでいるため、加湿冷気に含まれる水蒸気粒子が透湿性を有する気体透過シート79を通じて流入空間Sから上段容器72内へ進入する。上段容器72内へ進入した水蒸気粒子は、上段容器72内に拡散するとともに通気孔77を通って下段後容器80内にも拡散し、上段容器72及び下段後容器80の内部を加湿する。
【0056】
流入空間Sから循環流路90へ流れ込んだ加湿冷気は、上側流路91、前側流路92、下側流路93、及び後側流路94を順次流れながら野菜室12内を加湿及び冷却することで、貯蔵容器70の外側から間接的にその内部を冷却する。また、後側流路94を流れる加湿冷気が有する水蒸気粒子は、気体透過シート79を通じて流入空間Sから下段後容器80内へ進入して、下段後容器80や上段容器72の内部を加湿する。
【0057】
製氷室、第1冷凍室16、及び第2冷凍室17を冷却する場合には、制御部50が、冷凍サイクルに設けられた切替弁47を切り替えて冷媒が冷凍冷却器34に流れるようにするとともに、冷凍ファン35を運転させる冷凍冷却運転を実行する。これにより、冷凍冷却器34で冷却された空気は製氷室、第1冷凍室16、及び第2冷凍室17に送風され、第2冷凍室17の背面に設けられた冷凍温度センサ26の検出温度が所定温度範囲に収まるように製氷室、第1冷凍室16、及び第2冷凍室17を冷却する。
【0058】
また、上段容器72及び下段後容器80の内部の酸素濃度を低減する減酸素運転を実行するには、機械室38に設けられた排気ポンプ63を動作させる。これにより、酸素分離モジュール60は、ケース61内部が酸素分離膜62の野菜室12側の空間より低圧になるため、野菜室12の酸素が酸素分離膜62を透過して排気ホース64を介してキャビネット2の外部へ排気され、野菜室12の酸素濃度が低下する。
【0059】
気体透過シート78,79は、例えば、0.5μm〜3μmの孔が多数設けられており、酸素分子はこれらの孔を通過することができるため、排気ポンプ63の動作によって貯蔵容器70の外側の酸素濃度が低下すると、上段容器72及び下段後容器80の内部の酸素分子が気体透過シート78,79を通過して貯蔵容器70の外側へ流出し、その結果、下段後容器80及び上段容器72の内部の酸素濃度が低下する。
【0060】
本実施形態では、気体透過シート78,79を設けた下段後容器80及び上段容器72を野菜室12に配置し、冷蔵冷却運転時に冷蔵冷却器30が加湿及び冷却した加湿冷気を野菜室12に供給する。そのため、減酸素運転時に排気ポンプ63によって酸素とともに水蒸気粒子が庫外へ排出されても、冷蔵冷却運転時に生成した加湿冷気に含まれる水蒸気粒子が、気体透過シート78,79を通って上段容器72及び下段後容器80の内部に供給され、上段容器72及び下段後容器80の内部を加湿して乾燥を抑えることができる。
【0061】
気体透過シート78,79は、上段容器72及び下段後容器80の外部を流れる空気が直接的に上段容器72及び下段後容器80へ進入するのを抑制することができるため、冷蔵冷却運転時に野菜室12内を流れる空気が、上段容器72及び下段後容器80内に収容された貯蔵品に直接当たる風量を抑えることから当該貯蔵品の乾燥を抑えることができる。
【0062】
つまり、冷蔵冷却運転時に冷蔵冷却器30によって加湿冷却され冷蔵室10及び野菜室12に存在する庫内空気に比べて低温多湿になった空気を野菜室12に供給することで、気体透過シート78,79を介して上段容器72及び下段後容器80の内部へ水蒸気粒子を供給しつつ、冷蔵冷却器30によって加湿冷却されたものの飽和水蒸気量に達しているとは限らない空気が野菜などの貯蔵品に直接当たって水分を奪うのを抑えることができる。
【0063】
また、野菜室12やこの室と連通する冷蔵室10を閉塞する扉11,13が開扉され野菜室12内に酸素濃度の高い庫外空気が流入しても、下段後容器80及び上段容器72内部への庫外空気の流入が抑制される。そのため、下段後容器80及び上段容器72内部の酸素濃度の急激な上昇が抑えられ、減酸素運転の実行時間(排気ポンプ63の動作時間)を短縮することができ、野菜室12の乾燥ひいては下段後容器80及び上段容器72の乾燥を抑えることができる。
【0064】
また、本実施形態では、冷蔵冷却器30で生成された加湿冷気が流れ込む流入空間Sに面して気体透過シート79が設けられているため、加湿冷気に含まれる水蒸気粒子が上段容器72の内部へ供給されやすくなる。
【0065】
本実施形態では、酸素分離モジュール60のケース61内の空気を排気する排気ポンプ63がキャビネット2外側の機械室38に設けているため、庫内容積の減少を抑えることができるとともに、排気ポンプ63の排熱によって庫内温度が上昇することがない。
【0066】
本実施形態では、酸素分離膜62を透過した酸素を機械室38へ排気する排気ホース64が、キャビネット2の背面壁に設けられた野菜室12と機械室38とを連通する挿通孔2bに挿通され機械室38へ引き出されているため、冷蔵庫庫内の美観を損ねることなく、また、野菜室扉13の開扉時に排気ホース64が邪魔にならず開扉動作を妨げることがない。
【0067】
本実施形態では、野菜室12の内壁と貯蔵容器70との間に形成され、冷蔵冷却器30で加湿冷却された空気が循環する循環流路90に面して酸素分離モジュール60の酸素分離膜62が設けられているため、酸素分離膜62の野菜室12側に野菜室12の空気が供給されやすくなり、酸素を効率よく排出することができる。
【0068】
本実施形態では、キャビネット2に設けられた挿通孔2aと排水ホース28との間に形成された通気孔2cを介してキャビネット2の外部と連通しており、野菜室12の酸素が酸素分離膜62を透過してキャビネット2の外部へ排出されても、通気孔2cより庫外の空気が進入して野菜室12内の圧力が低下しない。そのため、本実施形態の冷蔵庫1では、野菜室12を気密かつ耐圧構造に設ける必要がなく、実効的な庫内容積が減少したり、扉13が開扉しにくくなったりすることがない。
【0069】
(第2実施形態)
第2実施形態について、
図4に基づいて第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0070】
第1実施形態では、酸素分離モジュール60に設けられた酸素分離膜62を循環流路90に面して設け、排気ポンプ63の動作によって野菜室12に設けられた貯蔵容器70の外側の酸素濃度を低下させることで、気体透過シート78,79を介して上段容器72及び下段後容器80の内部の酸素濃度を低下させる場合について説明したが、本実施形態では、酸素分離モジュール160が連結ダクト165を介して下段後容器80に連結されており、上段容器72及び下段後容器80の内部の酸素を酸素分離膜162を透過させて外部へ排出し、これらの容器72、80の内部の酸素濃度を低下させる。
【0071】
具体的には、下段後容器80は、後方壁80aに設けられた開口部80bに気体透過シートが設けられておらず、例えば、天井壁80dに設けられた開口部を塞ぐように気体透過シート178が設けられている。
【0072】
酸素分離モジュール160は、冷蔵冷却器室32の下方に設けられたケース161の前面に下段後容器80の後方壁80aへ向けて前方へ延びる連結ダクト165が接続されている。連結ダクト165とケース161の内部は、ケース161に設けられた酸素分離膜162によって前後に仕切られている。
【0073】
連結ダクト165の前端部は、
図4に示すような貯蔵容器70が野菜室12内に収納された野菜室扉13の閉扉状態において、ゴム又はシリコーン等のゴム状弾性体からなるシール材166を介して開口部80bを囲繞するように下段後容器80の後方壁80aに当接する。これにより、連結ダクト165が下段後容器80と連結され、上段容器72と下段後容器80と連結ダクト165によって一続きの閉塞した空間が形成される。
【0074】
本実施形態では、冷蔵冷却運転の実行により、冷蔵冷却器30で生成された加湿冷気が、ダクト33及び冷蔵室10を介して流入空間Sに流れ込む。
【0075】
流入空間Sに流れ込んだ加湿冷気の一部は、気体透過シート79、178を通って上段容器72及び下段後容器80の内部に流れ込み容器72,80の内部を加湿及び冷却し、残りの大部分の加湿冷気は、流入空間Sに滞留し、流入空間Sに入りきらない加湿冷気が循環流路90へ流れ込み、外側から間接的に容器72,80の内部を冷却する。また、流入空間Sに滞留する加湿冷気に含まれる水蒸気粒子が、透湿性を有する気体透過シート79、178を通じて流入空間Sから上段容器72及び下段後容器80内へ進入し、容器72,80の内部を加湿する。
【0076】
また、本実施形態では、排気ポンプ63を動作させて減酸素運転を実行すると、ケース161内部が、酸素分離膜162の前側の空間、つまり、上段容器72と下段後容器80と連結ダクト165からなる空間より低圧になるため、上段容器72及び下段後容器80の酸素が酸素分離膜162を透過して排気ホース64を介してキャビネット2の外部へ排気され、容器72、80の酸素濃度が低下する。
【0077】
本実施形態でも、第1実施形態と同様、減酸素運転時に排気ポンプ63によって酸素とともに水蒸気粒子が上段容器72及び下段後容器80から庫外へ排出されても、冷蔵冷却運転時に生成した加湿冷気に含まれる水蒸気粒子が、気体透過シート78,79を通って上段容器72及び下段後容器80の内部に供給されるため、上段容器72及び下段後容器80の内部を加湿して乾燥を抑えることができる。
【0078】
(変更例1)
上記した第1実施形態及び第2実施形態の冷蔵庫1では、任意のタイミングで排気ポンプ63を動作させて野菜室12や冷蔵室10の酸素濃度を低減することができるが、例えば、冷蔵冷却器30に冷媒が流れるように切替弁47を切り替えつつ冷蔵ファン31を運転させる冷蔵冷却運転の実行中に排気ポンプ63を動作させて減酸素運転を実行することが好ましい。
【0079】
減酸素運転を実行すると、野菜室12の酸素が酸素分離膜62を透過してキャビネット2の外部へ排出され、それに伴って通気孔2cより庫外の空気が野菜室12内に進入するが、冷蔵冷却運転中に減酸素運転を実行することで、野菜室12や冷蔵室10の庫内温度上昇を抑えることができる。
【0080】
なお、減酸素運転の実行時間は冷蔵冷却運転の実行時間より短いことが好ましい。これにより、排気ポンプ63によって水蒸気粒子が庫外へ排出されるのを抑えつつ、冷蔵冷却器30によって加湿冷却された空気が野菜室12に供給されやすくなり、下段後容器80及び上段容器72の乾燥を抑えることができる。
【0081】
(変更例2)
上記した第1実施形態の冷蔵庫1では、酸素分離モジュール60に設けられた酸素分離膜62を、キャビネット2の背面壁と下段後容器80の後方壁80aとの間に形成された後側流路94に配置したが、例えば、
図5に示すように、下段後容器80の後方壁80aと酸素分離膜62との間に仕切板95を設け、後側流路94を流れる空気が酸素分離膜62の近傍を通ってリターンダクト44の吸込口43へ吸い込まれるようにしてもよい。このような仕切板95を設けることで、より一層、野菜室12から酸素を効率よく排出することができる。
【0082】
(変更例3)
上記した第1実施形態及び第2実施形態の冷蔵庫1では、酸素分離モジュール60のケース61内の空気を排気する排気ポンプ63をキャビネット2外側の機械室38に設けたが、例えば、野菜室12や冷蔵室10などの貯蔵室内に設けてもよい。このように貯蔵室内に排気ポンプ63を設けることで、排気ポンプ63の動作温度が低下して排気ポンプ63を長寿命化することができる。
【0083】
(変更例4)
上記した第1実施形態及び第2実施形態の冷蔵庫1では、酸素分離モジュール60が、酸素分離膜62の両側の圧力差によって野菜室12の酸素を膜内部に拡散移動させてキャビネット2外部へ排気する場合について説明したが、酸素分離モジュール60が、圧縮空気を酸素富化ガスと窒素富化ガスに分離する中空糸膜を備え、野菜室12の空気を圧縮して中空糸膜の内側へ供給し、分離された酸素富化ガスをキャビネット2外部へ排気するように構成してもよい。
【0084】
(変更例5)
上記した第1実施形態及び第2実施形態では、貯蔵室が冷蔵冷却器30によって加湿されるとともに所定温度に冷却される冷蔵庫1について説明したが、貯蔵室を冷却することなく加湿する加湿機能を備えた恒温庫等の貯蔵庫であってもよい。
【0085】
(変更例6)
上記した第1実施形態及び第2実施形態では、気体透過シート78,79が空気(風)の流通を制限するものの、ある程度の空気の流通を許容する場合について説明したが、空気透過シート78、79は、蒸気粒子や酸素分子を通過させるが風を通さないシート材であってもよい。
【0086】
このようなシート材の場合でも、流入空間Sに滞留する加湿冷気に含まれる水蒸気粒子が、透湿性を有する気体透過シート79を通じて流入空間Sから上段容器72内へ進入し、上段容器72及び下段後容器80の内部を拡散するため、これらの容器内を加湿することができる。
【0087】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。