【解決手段】メカニカルスプライスを用いた光ファイバ接続方法であって、一方の端部にダミーファイバが挿入されたメカニカルスプライスを用意する工程と、ダミーファイバが挿入された側とは逆側の端部から第1光ファイバを挿入し、第1光ファイバの端面をダミーファイバに突き当てる工程と、第1光ファイバをメカニカルスプライスに固定する工程と、第1光ファイバをメカニカルスプライスに固定した後、ダミーファイバをメカニカルスプライスから引き抜く工程と、ダミーファイバを引き抜いた側の端部から第2光ファイバを挿入し、第2光ファイバの端面を第1光ファイバの端面に突き当てる工程と、第2光ファイバをメカニカルスプライスに固定する工程とを有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
メカニカルスプライスを用いた光ファイバ接続方法であって、一方の端部にダミーファイバが挿入された前記メカニカルスプライスを用意する工程と、前記ダミーファイバが挿入された側とは逆側の端部から第1光ファイバを挿入し、前記第1光ファイバの端面を前記ダミーファイバに突き当てる工程と、前記第1光ファイバを前記メカニカルスプライスに固定する工程と、前記第1光ファイバを前記メカニカルスプライスに固定した後、前記ダミーファイバを前記メカニカルスプライスから引き抜く工程と、前記ダミーファイバを引き抜いた側の端部から第2光ファイバを挿入し、前記第2光ファイバの端面を前記第1光ファイバの端面に突き当てる工程と、前記第2光ファイバを前記メカニカルスプライスに固定する工程とを有する光ファイバ接続方法が明らかとなる。
このような光ファイバ接続方法によれば、光ファイバの接続を簡易に行うことができる。
【0013】
前記メカニカルスプライスは、調心溝の形成されたベース部材と、押さえ部材と、を有し、前記第1光ファイバを前記メカニカルスプライスに固定する工程では、前記第1光ファイバが挿入された部位の前記ベース部材と前記押さえ部材との隙間を第1隙間調整部によって調整し、前記第2光ファイバを前記メカニカルスプライスに固定する工程では、前記第2光ファイバが挿入された部位の前記ベース部材と前記押さえ部材との隙間を第2隙間調整部によって調整することが望ましい。これにより、第1光ファイバと第2光ファイバを、それぞれ、メカニカルスプライスに固定させることができる。
【0014】
前記第1隙間調整部及び前記第2隙間調整部は、それぞれ、くさび部を有しており、前記くさび部は、クランプ部材に挟みこまれた前記ベース部材と前記押さえ部材との間に挿入されており、前記第1光ファイバを前記メカニカルスプライスに固定する工程では、前記第1隙間調整部を移動させて前記くさび部を引き抜き、前記第2光ファイバを前記メカニカルスプライスに固定する工程では、前記第2隙間調整部を移動させて前記くさび部を引き抜くことが望ましい。これにより、メカニカルスプライスに各光ファイバを簡易に固定することができる。
【0015】
前記メカニカルスプライスを載置する治具に、前記メカニカルスプライスから外れた前記第1隙間調整部及び前記第2隙間調整部を保持する保持機構が設けられていることが望ましい。これにより、第1隙間調整部及び第2隙間調整部の脱落を防止することができ、便利である。
【0016】
前記ダミーファイバは樹脂製であってもよい。これにより、第1光ファイバが突き当たった際に破損しにくい。
【0017】
前記ダミーファイバと当該ダミーファイバを支持する本体部とが樹脂で一体成型されていることが望ましい。これにより、製造が容易であり、製造コストを削減できる。
【0018】
前記ダミーファイバは金属製であってもよい。これにより、強度を高めることができる。
【0019】
前記メカニカルスプライスを載置する治具に裸光ファイバ長を確認するための目印が設けられており、前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバを前記メカニカルスプライスに挿入する前に、各光ファイバの前記裸光ファイバ長を前記目印で確認することが望ましい。これにより、裸光ファイバ長の確認を簡易に行うことができ、便利である。
【0020】
前記目印は、光ファイバの直径に応じて複数設けられていることが望ましい。これにより、光ファイバの直径が異なる場合でも対応することができる。
【0021】
前記メカニカルスプライスを載置する治具に、前記ダミーファイバの設けられた本体部を保持する保持部が設けられていることが望ましい。これにより、ダミーファイバが移動しないようにすることができる。
【0022】
前記ダミーファイバの設けられた前記本体部を保持する保持部は、前記メカニカルスプライスを保持するメカニカルスプライス保持部とは別に設けられていてもよい。これにより、メカニカルスプライスの幅とダミーファイバの設けられた本体部の幅が異なる場合でも、それぞれ、保持することができる。
【0023】
また、光ファイバの端面同士を突き当てることによって光ファイバの接続を行うメカニカルスプライスと、前記メカニカルスプライスの一方の端部に予め挿入されたダミーファイバであって、前記メカニカルスプライスから引き抜き可能なダミーファイバと、前記ダミーファイバが挿入された側とは逆側の端部から挿入される第1光ファイバを前記メカニカルスプライスに固定する第1固定部と、前記一方の端部から挿入される第2光ファイバを前記メカニカルスプライスに固定する第2固定部と、を備えることを特徴とする光ファイバ接続工具が明らかとなる。
このような光ファイバ接続工具によれば、光ファイバの接続を簡易に行うことができる。
【0024】
===第1実施形態===
<基本構成>
図1は、第1実施形態の光ファイバ接続ユニット10の全体斜視図である。また、
図2は、光ファイバ接続ユニット10の分解図であり、
図3A及び
図3Bは、メカニカルスプライス20の説明図である。
【0025】
以下の説明では、
図1に示すように、光ファイバ接続ユニット10のメカニカルスプライス20の長手方向を「前後方向」とし、ファイバストッパ40が予め設けられた側を「前」とし、その逆側を「後」とする。また、一対の保持部32がメカニカルスプライス20を挟む方向を左右方向とし、後側から前側をみたときの右側を「右」とし、左側を「左」とする。また、前後方向及び左右方向に垂直な方向を「上下方向」とし、治具30の台座部31に対してメカニカルスプライス20が載置される側を「上」とし、逆側を「下」とする。
【0026】
光ファイバ接続ユニット10は、メカニカルスプライス20と、治具30と、ファイバストッパ40とを備えている。
【0027】
メカニカルスプライス20は、光ファイバ3同士を調心するとともに、端面同士を突き合わせた状態で光ファイバ3を挟み込んで固定する部材である。メカニカルスプライス20の前後方向の端部には光ファイバ3の挿入口20Aが形成されている。また、本実施形態では、メカニカルスプライス20の前側の端部に予めファイバストッパ40が取り付けられている(
図1参照)。
【0028】
図3A、
図3Bに示すように、メカニカルスプライス20は、ベース部材21と、押さえ部材22と、クランプ部材23とを有する。
【0029】
ベース部材21は、光ファイバ3を調心するための調心溝21Aの形成された部材である。調心溝21Aは、前後方向(光ファイバ3の長手方向)に沿って形成されている。調心溝21Aは、ここではV溝であるが、断面半円状や断面U字状の溝でも良い。
【0030】
押さえ部材22は、ベース部材21に対向して配置された部材(蓋部材)であり、ベース部材21に向かって光ファイバ3を押さえつけるための部材である。なお、
図2ではクランプ部材23に覆われて視認できないが、押さえ部材22は、中央部分に位置する第1押さえ部材22Aと、第1押さえ部材22Aの前後方向の両側に位置する一対の第2押さえ部材22Bとに分割されて構成されている。第1押さえ部材22Aは、光ファイバ3の被覆を除去した端部(後述する裸光ファイバ3A)をベース部材21に向かって押さえつける部材である。第2押さえ部材22Bは、被覆を有する光ファイバ3(後述する被覆部3B)をベース部材21に向かって押さえつける部材である。このように、押さえ部材22は実際には3つの部材(第1押さえ部材22A、及び、2つの第2押さえ部材22B)で構成されている。但し、押さえ部材22が1つの部材で構成されていても良い。
【0031】
クランプ部材23は、ベース部材21と押さえ部材22とを挟み込み、ベース部材21と押さえ部材22との間に光ファイバ3を挟み込ませるための弾性部材(ばね部材、クランプばね)である。
図2に示すように、クランプ部材23には2つの切り込み23Aが形成されており、これにより、クランプ部材23は、実質的に3つのバネ要素から構成されている。2つの切り込み23Aは、第1押さえ部材22Aと第2押さえ部材22Bの境界部に形成されており、クランプ部材23の3つのバネ要素は、第1押さえ部材22A及び一対の第2押さえ部材22Bのそれぞれに対応している。但し、クランプ部材23に切り込み23Aが設けられていなくても良い。
【0032】
図3Aに示すように、ベース部材21と押さえ部材22とがクランプ部材23によって挟み込まれた状態で、ベース部材21と押さえ部材22との間にくさび部331が挿入されており、くさび部331によってベース部材21と押さえ部材22との隙間27が広げられている。また、
図3Aに示すように、くさび部331によってベース部材21と押さえ部材22との隙間27が広げられた状態で、調心溝21Aに沿ってベース部材21と押さえ部材22との間に光ファイバ3が挿入されることになる。光ファイバ3の端面同士を突き合わせた後、くさび部331が引き抜かれると、クランプ部材23の弾性力によってベース部材21と押さえ部材22との隙間27が狭められて、調心溝21Aと押さえ部材22との間に光ファイバ3が挟み込まれて固定されることになる。
【0033】
くさび部331が挿入される部位では、ベース部材21及び押さえ部材22が凹状に形成されており、これにより、くさび挿入部25が形成されている。メカニカルスプライス20には、4つのくさび挿入部25が形成されている。4つのくさび挿入部25は、前後方向に並んで配置されている(
図6Aの第1くさび部25A及び第2くさび部25B参照)4つのくさび挿入部25のうちの中央部の2つは、第1押さえ部材22Aに対応して形成された第1くさび挿入部25Aである。第1くさび挿入部25Aの第1くさび部331Aが引き抜かれると、ベース部材21と第1押さえ部材22Aとの間に光ファイバ3(光ファイバ3の裸光ファイバ3A)が挟み込まれて固定されることになる。4つのくさび挿入部25のうちの両端部に位置するものは、第2押さえ部材22Bに対応して形成された第2くさび挿入部25Bである。第2くさび挿入部25Bの第2くさび部331Bが引き抜かれると、ベース部材21と第2押さえ部材22Bとの間に光ファイバ3(光ファイバ3の被覆部3B)が挟み込まれて固定されることになる。
【0034】
治具30は、メカニカルスプライス20を保持するための部材である。治具30は、メカニカルスプライス20の台座部31と、保持部32と、くさび部材33と、くさび保持部34とを備えている。
【0035】
台座部31は、光ファイバ3の接続作業をする際にメカニカルスプライス20を載置する部位(台)である。また、台座部31の下面には光ファイバ3の裸光ファイバ3Aの長さを検査(確認)するためのゲージ部311(目印に相当)が設けられている。
【0036】
図4Aは、ゲージ部311の説明図である。本実施形態では、ゲージ部311として、第1ゲージ311Aと第2ゲージ311Bが設けられている。
【0037】
第1ゲージ311Aは、直径250μmの光ファイバ3から口出しされた裸光ファイバ3Aの長さを検査(確認)するための目印である。本実施形態の第1ゲージ311Aは、台座部31の後端からL1〜L2の範囲の凹部である。一方、第2ゲージ311Bは、直径900μmの光ファイバ3から口出しされた裸光ファイバの長さを検査するための目印である。本実施形態の第2ゲージ311Bは、台座部の後端からL3〜L4の範囲の凹部である。
【0038】
図4Bは、第1ゲージ311Aの使用時の説明図である。
直径250μmの光ファイバ3の端部の被覆除去を行って露出した直径125μmの裸光ファイバ3Aの長さをLとする。
図4Bに示すように、裸光ファイバ3Aの後端を台座部31の後端に合わせ、裸光ファイバ3Aの先端が第1ゲージ311Aの凹部に位置していれば、L1<L<L2であることになる。つまり、裸光ファイバ3Aの先端がこの範囲になるように裸光ファイバ3Aを口出しすればよい。第2ゲージ311Bの使用方法についても同様である。すなわち、裸光ファイバ3Aの後端を台座部31の後端に合わせ、裸光ファイバ3Aの先端が第2ゲージ311Bの凹部に位置していれば、L3<L<L4であることになる。つまり、裸光ファイバ3Aの先端がこの範囲になるように裸光ファイバ3Aを口出しすればよい。なお、本実施形態のゲージ部311は台座部31の下面に設けられているがこれには限られず、例えば、台座部31の側面や上面に設けられていてもよい。
【0039】
保持部32は、メカニカルスプライス20及びファイバストッパ40を保持する部位である。保持部32は、台座部31の前側の端部、及び、後側の端部にそれぞれ設けられている。各保持部32は、左右方向に間隔を空けて設けられた一対の側壁で構成されている。この保持部32の一対の側壁の内壁間隔(保持部32の幅)をW1とする。
【0040】
保持部32の一対の側壁の間にメカニカルスプライス20が嵌合することによって、保持部32にメカニカルスプライス20が保持されることになる。このため、メカニカルスプライス20の左右方向の幅をW2としたとき、保持部32の幅W1はメカニカルスプライス20の幅W2よりも小さい(W1<W2)。このように、保持部32は、メカニカルスプライス20を保持する機能を有している。
【0041】
また、保持部32の一対の側壁の間にファイバストッパ40の操作部42が嵌合することによって、保持部32にファイバストッパ40が保持されることになる。このため、ファイバストッパ40の操作部42の側壁の幅をW3としたとき、保持部32の幅W1はファイバストッパ40の幅W3よりも小さい(W1<W3)。このように、保持部32は、ファイバストッパ40を保持する機能を有している。
【0042】
本実施形態では、保持部32の一対の側壁がメカニカルスプライス20とファイバストッパ40の両方を挟持するために、ファイバストッパ40の操作部42の側壁の幅W3は、メカニカルスプライス20の左右方向の幅W2とほぼ同じに構成されている。なお、保持部32は、嵌合(挟持)以外の方法でメカニカルスプライス20及びファイバストッパ40を保持しても良い。
【0043】
くさび部材33(隙間調整部に相当)は、くさび部331と、操作部332と、脱落防止部333とを有している。本実施形態の治具30には、
図2に示すように、前後方向に2つのくさび部材33が並んで設けられている。以下の説明において、2つのくさび部材33のうちの後側のものを第1くさび部材33S(第1隙間調整部,第1固定部に相当)ともいい、前側のものを第2くさび部材33T(第2隙間調整部,第2固定部に相当)ともいう。なお、第1くさび部材33Sと第2くさび部材33Tは、治具30の前後方向の中央に関して対称に配置されているだけであり、同一の構成である。
【0044】
くさび部331は、くさび部材33本体から上方に突出するように設けられた凸状の部位である。当該くさび部331は、メカニカルスプライス20を台座部31に載置した際にメカニカルスプライス20のくさび挿入部25に挿入される。
図2に示すように、くさび部材33には2つのくさび部331(第1くさび部331A、第2くさび部331B)が設けられている。第1くさび部331Aは、メカニカルスプライス20の中央部分の第1くさび挿入部25Aに挿入され、第2くさび部331Bは、メカニカルスプライス20の端部側の第2くさび挿入部25Bに挿入される(
図6参照)。
【0045】
操作部332は、メカニカルスプライス20からくさび部331の取り外しを操作する部位である。
図1の状態において、操作部332の頂部はメカニカルスプライス20よりも上に突出しており、この突出した箇所(操作部332の頂部)を指で下に押すことによって、メカニカルスプライス20から、くさび部331が外れることになる。なお、操作部332の側部には厚さ方向(左右方向)に貫通し、上下方向に長い開口が形成されている。
【0046】
脱落防止部333は、メカニカルスプライス20から外れたくさび部材33が脱落しないようにするための部位であり、くさび部材33を下側に移動させたときにくさび保持部34と当接する部位(本実施形態では、操作部332の開口より上側の部位の下面)である。
【0047】
くさび保持部34(保持機構に相当)は、台座部31に設けられており、メカニカルスプライス20からくさび部材33が外れた際に、くさび部材33の脱落防止部333を引っ掛けて、くさび部材33を保持する部位である。例えば、
図2では、第2くさび部材33Tが台座部31から脱落した状態を示しているが、実際には脱落防止部333がくさび保持部34に引っ掛かる、これにより第2くさび部材33Tは、脱落せずに図の破線の状態で保持される。第1くさび部材33Sの場合も同様である。
【0048】
ファイバストッパ40は、ダミーファイバ部41と操作部42(本体部に相当)とを備えている。
【0049】
ダミーファイバ部41は、光ファイバ3の裸光ファイバ3Aと同形状の部材であり、樹脂で形成されている。これにより、光ファイバ3(本実施形態では第1光ファイバ11)が突き当たった際に破損しにくい。また、ダミーファイバ部41は、メカニカルスプライス20の長手方向(前後方向)の長さの半分の長さに形成されている。そして、ダミーファイバ部41は、予め、前側の挿入口20Aからメカニカルスプライス20内に挿入されている。よって、この状態において、ダミーファイバ部41の先端(後側端)はメカニカルスプライス20の中央に位置している(
図6A参照)。
【0050】
操作部42は、メカニカルスプライス20へのダミーファイバ部41の挿入や、メカニカルスプライス20からのダミーファイバ部41の引き抜きを操作する部位である。操作部42には、ダミーファイバ部41の端部(前側端)が固定されており、操作部42は、ダミーファイバ部41を支持している。前述したように操作部42の側壁の幅W3は、保持部32の間隔W1よりも大きい(W3>W1)。これにより、ファイバストッパ40が治具30に保持される。また、ダミーファイバ部41に光ファイバ3(裸光ファイバ3A)が当たったときに、ダミーファイバ部41がズレにくい。
【0051】
本実施形態では、ダミーファイバ部41と操作部42は、樹脂により一体成形されている。このように樹脂で一体形成することで、製造が容易であり、また、製造コストを削減することができる。但し、これには限られず、例えば、ダミーファイバ部41が金属ワイヤでもよい。この場合、樹脂と比べて強度を高めることができる(丈夫である)。
【0052】
<光ファイバ接続方法>
図5は、光ファイバ接続方法のフロー図である。また、
図6A〜
図6Fは、光ファイバの接続工程を示す断面図である。なお、以下の説明において、メカニカルスプライス20に最初に挿入する光ファイバ3のことを第1光ファイバ11(第1裸光ファイバ11A、第1被覆部11B)ともいい、次に挿入する光ファイバ3のことを第2光ファイバ12(第2裸光ファイバ12A、第2被覆部12B)ともいう。
【0053】
まず、作業者は、本実施形態(
図1)の光ファイバ接続ユニット10を準備する(
図5:S01)。本実施形態の光ファイバ接続ユニット10のメカニカルスプライス20には、長手方向の一方側(前側)の端部にダミーファイバ部41が予め挿入されている。
【0054】
また、作業者は、光ファイバ3の端部を前処理する(
図5:S02)。すなわち、光ファイバ3(第1光ファイバ11及び第2光ファイバ12)の端部の被覆を除去して、裸光ファイバ3A(第1裸光ファイバ11A及び第2裸光ファイバ12A)を口出しする。また、裸光ファイバ3Aの長さLが所定長になるように、裸光ファイバ3Aの端部をカットする。
【0055】
前処理の後、作業者は、
図4Bに示すように裸光ファイバ3Aの長さLを確認する(
図5:S03)。例えば、直径250μmの光ファイバ3から125μmの裸光ファイバ3Aを口出ししている場合には、第1ゲージ311Aを用いて、裸光ファイバ3Aの長さLがL1<L<L2の範囲であることを確認する。また、例えば、直径900μmの光ファイバ3から125μmの裸光ファイバ3Aを口出ししている場合には、第2ゲージ311Bを用いて、裸光ファイバ3Aの長さLがL3<L<L4の範囲であることを確認する。本実施形態では、治具30にゲージ部311が設けられているので、裸光ファイバ3Aの長さを簡易に確認することができる。
【0056】
次に、作業者は、
図6Aに示すように、ダミーファイバ部41が挿入された側とは逆側(すなわち後側)の端部の挿入口20Aから第1光ファイバ11を挿入し、
図6Bに示すように、第1光ファイバ11の端面(すなわち第1裸光ファイバ11Aの端面)をダミーファイバ部41に突き当てる(
図5:S04)。第1光ファイバ11の端面がダミーファイバ部41に突き当たると、挿入中の第1光ファイバ11が撓むことになる(
図6Bの破線参照)。このため、作業者は、挿入した第1光ファイバ11が若干撓むまで、第1光ファイバ11を挿入する。これにより、突き当てた部位を直接視認できなくても、作業者は、第1光ファイバ11の端面とダミーファイバ部41とを突き当てることができる。このとき、治具30の保持部32がファイバストッパ40を保持しているため、第1光ファイバ11がダミーファイバ部41に突き当たっても、ダミーファイバ部41はズレないで済む。
【0057】
そして、この突き合わせ状態を維持したまま、第1光ファイバ11をメカニカルスプライス20に固定する(
図5:S05)。本実施形態では、作業者は、第1くさび部材33S(第1隙間調整部)の操作部332を指で下側に押す。操作部332を下側に押すことで、第1くさび部材33Sが下に移動し、
図6Cに示すように、第1くさび部材33Sのくさび部331がメカニカルスプライス20から外れる。これにより、ベース部材21と押さえ部材22との隙間27が狭まり、第1光ファイバ11はベース部材21(調心溝21A)と押さえ部材22との間に固定される。より具体的には、第1裸光ファイバ11Aはベース部材21と、中央より後側の第1押さえ部材22Aとの間に挟まれて固定され、第1被覆部11Bはベース部材21と、中央より後側の第2押さえ部材22Bとの間に挟まれて固定される。なお、この際、第1くさび部材33Sの脱落防止部333が治具30のくさび保持部34に引っ掛かる。これにより、第1くさび部材33Sの脱落を防止することができ、便利である。
【0058】
第1光ファイバ11をメカニカルスプライス20に固定した後、作業者は、
図6Dに示すように、ファイバストッパ40の操作部42を手前に引いて、ダミーファイバ部41をメカニカルスプライス20から引き抜く(
図5:S06)。
【0059】
次に、作業者は、
図6Eに示すように、ダミーファイバ部41を引き抜いた側(ここでは前側)の端部の挿入口20Aから第2光ファイバ12を挿入し、第2光ファイバ12の端面を第1光ファイバ11の端面に突き当てる(
図5:S07)。第2光ファイバ12の端面(すなわち第2裸光ファイバ12Aの端面)が第1光ファイバ11の端面に突き当たると、挿入中の第2光ファイバ12が撓むことになる(
図6Eの破線参照)。このため、作業者は、挿入した第2光ファイバ12が若干撓むまで、第2光ファイバ12を挿入する。これにより、突き当てた部位を直接視認できなくても、作業者は、第2光ファイバ12を第1光ファイバ11に突き当てることができる。
【0060】
そして、この突き合わせ状態を維持したまま、第2光ファイバ12をメカニカルスプライス20に固定する(
図5:S08)。本実施形態では、作業者は、第2くさび部材33T(第2隙間調整部)の操作部332を指で下側に押す。操作部332を下側に押すことで、第2くさび部材33Tが下に移動し、
図6Fに示すように、第2くさび部材33Tのくさび部331がメカニカルスプライス20から外れる。これにより、ベース部材21と押さえ部材22との隙間27が狭まり、第2光ファイバ12はベース部材21(調心溝21A)と押さえ部材22との間に固定される。より具体的には、第2裸光ファイバ12Aはベース部材21と、中央より前側の第1押さえ部材22Aとの間に挟まれて固定され、第2被覆部12Bはベース部材21と、中央より前側の第2押さえ部材22Bとの間に挟まれて固定される。なお、第1くさび部材33Sを外したときと同様に、第2くさび部材33Tの脱落防止部333が治具30のくさび保持部34に引っ掛かる。これにより、第2くさび部材33Tの脱落を防止することができ、便利である。
【0061】
最後に、作業者は、治具30からメカニカルスプライス20を外す。
【0062】
以上説明したように、本実施形態では、一方(前側)の端部にダミーファイバ部41が挿入されたメカニカルスプライス20を用意する工程と、逆側(後側)の端部から第1光ファイバ11を挿入し、第1光ファイバ11の端面をダミーファイバ部41に突き当てる工程と、第1光ファイバ11をメカニカルスプライス20に固定する工程と、ダミーファイバ部41をメカニカルスプライス20から引き抜く工程と、前側の端部から第2光ファイバ12を挿入し、第2光ファイバ12の端面を第1光ファイバ11の端面に突き当てる工程と、第2光ファイバ12をメカニカルスプライス20に固定する工程を有している。これにより、特定の工具(被覆除去工具等)やファイバホルダを用いることなく、メカニカルスプライス20の特定位置で光ファイバ3同士(第1光ファイバ11、第2光ファイバ12)が突き当たるようにすることができる、よって、光ファイバ3の接続を簡易に行うことができる。
【0063】
また、メカニカルスプライス20は、調心溝21Aの形成されたベース部材21と、押さえ部材22と、を有しており、第1光ファイバ11をメカニカルスプライス20に固定する工程では、第1光ファイバ11が挿入された部位のベース部材21と前記押さえ部材22との隙間27を第1くさび部材33Sによって調整し、第2光ファイバ12をメカニカルスプライス20に固定する工程では、第2光ファイバ12が挿入された部位のベース部材21と押さえ部材22との隙間27を第2くさび部材33Tによって調整している。これにより、第1光ファイバ11と第2光ファイバ12を、それぞれ、メカニカルスプライス20に固定させることができる。
【0064】
また、第1くさび部材33S及び第2くさび部材33Tは、それぞれ、くさび部331(第1くさび部331A、第2くさび部331B)を有しており、くさび部は、クランプ部材23に挟みこまれたベース部材21と押さえ部材22との間に挿入されており、各光ファイバをメカニカルスプライス20に固定する際には、第1くさび部材33S、及び、第2くさび部材33Tを下側に移動させてくさび部331を引き抜いている。これにより、メカニカルスプライス20に各光ファイバを簡易に固定することができる。
【0065】
また、メカニカルスプライス20を載置する治具30に、メカニカルスプライス20から外れた各くさび部材(第1くさび部材33S及び第2くさび部材33T)を保持するくさび保持部34が設けられている。これより、各くさび部材の脱落を防止することができ、便利である。
【0066】
また、ダミーファイバ部41は樹脂製である。これにより、光ファイバ3(本実施形態では第1光ファイバ11)が突き当たった際に破損しにくい。
【0067】
また、ダミーファイバ部41と、操作部42とが樹脂で一体成型されている。これにより、製造が容易であり、製造コストを削減できる。
【0068】
また、ダミーファイバ部41は金属製であってもよい。これにより、強度を高めることができる。
【0069】
また、メカニカルスプライス20を載置する治具30に裸光ファイバ3Aの長さを確認するためのゲージ部311が設けられており、第1光ファイバ11及び第2光ファイバ12をメカニカルスプライス20に挿入する前に、それぞれの裸光ファイバ(第1裸光ファイバ11A及び第2裸光ファイバ12A)の長さをゲージ部311で確認している。これにより、長さの確認を簡易に行うことができ、便利である。
【0070】
また、ゲージ部311は、光ファイバ3の直径に応じて複数(本実施形態では、第1ゲージ311Aと第2ゲージ311Bの2つ)設けられている。これにより、直径が異なる場合でも対応することができる。
【0071】
また、メカニカルスプライス20を載置する治具30に、ダミーファイバ部41の設けられた操作部42を保持する保持部32が設けられている。これにより、ダミーファイバ部41がズレない(移動しない)ようにすることができる。
【0072】
===第2実施形態===
図7Aは、第2実施形態の光ファイバ接続ユニット10の側面図である。
図7Bは、第2実施形態の光ファイバ接続ユニット10の分解図である。
【0073】
第1実施形態では、治具30の保持部32が、メカニカルスプライス20とファイバストッパ40の両方を挟持していた。この場合、メカニカルスプライス20の幅W2とファイバストッパ40の幅W3が異なると、どちらか一方の部材の保持が緩くなるおそれがある。
【0074】
第2実施形態では、保持部32が、「メカニカルスプライス保持部321」と「ファイバストッパ保持部322」を別々に有している。保持部32以外の構成は第1実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0075】
メカニカルスプライス保持部321は、メカニカルスプライス20を保持する部位である。メカニカルスプライス保持部321は、左右方向に間隔を空けて設けられた一対の側壁で構成されている。メカニカルスプライス保持部321の一対の側壁の内壁間隔(メカニカルスプライス保持部321の幅)をW11としたとき、メカニカルスプライス保持部321の幅W1は、メカニカルスプライス20の幅W2よりも小さい(W11<W2)。これにより、メカニカルスプライス保持部321の一対の側壁の間にメカニカルスプライス20が嵌合することによって、メカニカルスプライス保持部321にメカニカルスプライス20が保持されることになる。
【0076】
ファイバストッパ保持部322はファイバストッパ40を保持する部位である。ファイバストッパ保持部322は、左右方向に間隔を空けて設けられた一対の側壁で構成されている。ファイバストッパ保持部322の一対の側壁の内壁間隔(ファイバストッパ保持部322の幅)をW12としたとき、ファイバストッパ保持部322の幅W12は、ファイバストッパ40の操作部42の側壁の幅W3よりも小さい(W12<W3)。これにより、ファイバストッパ保持部322の一対の側壁の間にファイバストッパ40の操作部42が嵌合することによって、ファイバストッパ保持部322にファイバストッパ40が保持されることになる。
【0077】
第2実施形態によれば、メカニカルスプライス20の幅W2とファイバストッパ40の幅W3が異なっていても、メカニカルスプライス20とファイバストッパ40をそれぞれ保持することができる。
【0078】
なお、この第2実施形態では、治具30にファイバストッパ保持部322を設けてファイバストッパ40の操作部42を保持していたが、これには限られない。例えば、
図6Aの状態において、第2くさび部材33Tを下に移動させて(第2くさび部材33Tの第1くさび部331A、第2くさび部331Bをメカニカルスプライス20から引き抜いて)ダミーファイバ部41をメカニカルスプライス20に固定しておいてもよい(すなわちダミーファイバ部41を保持してもよい)。そして、第1光ファイバ11をダミーファイバ部41と突き合わせて、第1光ファイバ11を固定した後、第2くさび部材33Tを上に移動させて(ベース部材21と押さえ部材22との隙間27を広げて)、ダミーファイバ部41を引き抜いてもよい。
【0079】
但し、第1光ファイバ11をダミーファイバ部41に突き当てたときに、第1光ファイバ11がダミーファイバ部41を押す力は微小であるため、ファイバストッパ40は必ずしも保持していなくてもよい。
【0080】
===第3実施形態===
図8A及び
図8Bは、第3実施形態の光ファイバ接続ユニット10に用いられるメカニカルスプライス20の説明図である。なお、前述の実施形態と同一構成の部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0081】
第3実施形態のメカニカルスプライス20は、ベース部材21´と押さえ部材22´とクランプ部材23´を備えている。ベース部材21´と押さえ部材22´は、ヒンジ部26を介して一体的に形成されている。また、ベース部材21´と押さえ部材22´には前述の実施形態のような凹状の部位(くさび挿入部25)は設けられていない。
【0082】
第3実施形態ではクランプ部材23´が隙間調整部に相当する。なお、第3実施形態のクランプ部材23´は、メカニカルスプライス20の中央より後側の部位に取り付けられる後側の部材(第1隙間調整部,第1固定部に相当)と、中央より前側の部位に取り付けられる前側の部材(第2隙間調整部,第2固定部に相当)とに分かれて設けられている。ここでは、前側と後側のうちの一方のみについて説明するが、他方についても同様である。
【0083】
図8Aに示すように、ベース部材21´の調心溝21Aに光ファイバ3が挿入された状態で、ヒンジ部26の逆側(ここでは下側)からクランプ部材23´を取り付け、ベース部材21´と押さえ部材22´をクランプ部材23´で挟み込む。これにより、
図8Bに示すように、ベース部材21´と押さえ部材22´との隙間27が狭められて、調心溝21Aと押さえ部材22との間に光ファイバ3が固定される。但し、これには限られず、例えば、ヒンジ部26の側(上側)からクランプ部材23´を取り付けて調心溝21A´と押さえ部材22´との間に光ファイバ3を固定するようにしてもよい。また、ヒンジ部26が無くてもよい(ベース部材21´と押さえ部材22´とが一体に形成されていなくてもよい)。
【0084】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。