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特開2018-200693ワークの処理方法及びワークの処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-200693(P2018-200693A)
(43)【公開日】2018年12月20日
(54)【発明の名称】ワークの処理方法及びワークの処理装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/404 20060101AFI20181122BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20181122BHJP
   B23Q 3/154 20060101ALI20181122BHJP
   B23C 3/00 20060101ALI20181122BHJP
【FI】
   G05B19/404 H
   B23Q17/20 A
   B23Q3/154 B
   B23C3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-102709(P2018-102709)
(22)【出願日】2018年5月29日
(31)【優先権主張番号】特願2017-105724(P2017-105724)
(32)【優先日】2017年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】新藤 良太
【テーマコード(参考)】
3C016
3C022
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C016GB05
3C022AA02
3C022AA09
3C022AA10
3C029BB01
3C269AB07
3C269BB03
3C269EF10
3C269JJ18
3C269MN16
3C269RB03
(57)【要約】
【課題】ワークに対する平面加工を効率的かつ高精度に行うことができるようにする。
【解決手段】チャックテーブル12の上面に載置された非変形状態のワーク100の表面101の複数個所の位置を測定する。ワーク100をチャックテーブル12の上面に沿うように変形させて、その変形状態で表面101の位置を測定する。その後、前後の測定データを比較して、非変形状態における測定によって検出された表面101の形状とは反転した形状の仮想面をスプライン補間によって設定する。そして、ワーク100をチャックテーブル12の上面に沿うように変形させた状態において、仮想面に従う面形状が前記ワークの測定された側面に出現するように、表面101を切削する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルの支持面に載置された自然状態のワークにおけるひとつの面の位置を測定するとともに、その測定と相前後して、前記ワークを前記テーブルの支持面に沿うように変形させて、その変形状態で前記面の位置を測定し、その後、両測定データを比較して、前記自然状態における測定によって検出された前記面の形状に対して反転した形状の仮想面を演算によって設定するワークの処理方法。
【請求項2】
前記面の位置の測定に際しては、同面の複数箇所の位置を測定し、前後の測定データの比較によって演算された前記複数箇所の仮想の位置データを演算するとともに、その仮想の位置データを数学的に補間して、前記仮想面を設定する請求項1に記載のワークの処理方法。
【請求項3】
前記ワークを前記テーブルの支持面に沿うように変形させた状態において、前記仮想面に従う形状が前記ワークの測定された面に出現するように、前記ワークの面を切削する請求項2に記載のワークの処理方法。
【請求項4】
前記仮想面に従う形状が出現された面を基準として、その面の反対側の他の面をワークの非変形状態において切削する請求項3に記載のワークの処理方法。
【請求項5】
前記面及び他の面を平行をなすように切削する請求項4に記載のワークの処理方法。
【請求項6】
前記切削を回転砥石によって行う請求項5に記載のワークの処理方法。
【請求項7】
前記テーブルとして磁気吸着機能を有するものを用い、前記ワークを磁気吸着によってテーブルの支持面に沿わせる請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のワークの処理方法。
【請求項8】
ワークを吸着状態及び非吸着状態で支持可能にしたテーブルと、
前記テーブル上の前記ワークのひとつの面の位置を測定する測定手段と、
その測定手段を動作させて、前記ワークのひとつの面を前記テーブルに対する前記ワークの非吸着状態で測定させるとともに、吸着状態で測定させ、その非吸着状態及び吸着状態の測定データを比較して、前記非吸着状態における面の形状とは反転した形状の仮想面を設定する制御手段と
を備えたワークの処理装置。
【請求項9】
前記ワークの面を切削する切削手段を備え、前記制御手段は、前記ワークの吸着状態において、そのワークの面に前記仮想面が出現するように前記切削手段の動作を制御する請求項8に記載のワークの処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、湾曲している板状のワークに対して平坦面等の任意形状の面を加工できるように処理するためのワークの処理方法及びその処理方法を実施するためのワークの処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、全体として剣山状を呈するように多数のピンを集合配置したワークホルダが開示されている。これらのピンは、空気圧を利用して上昇するように構成されている。そして、ピン群上にワークが載置され、この載置状態においては、ワークの外側面の凹凸に従ってピンの位置が上下される。その結果、外側面に凹凸のあるワークであっても、その凹凸の影響を受けることなく、ワークをピン群上に適切な位置及び姿勢で載置できる。このため、ワークに対してその凹凸形状の影響を受けることなく、平面加工することが可能になるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−1462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記特許文献1の装置においては、ワークの重量やワークに対する加工荷重を空気圧が作用するピンによって受けるようになっているため、ワークの支持剛性を高くすることには限度がある。従って、ワークを平面加工する際に、ワークに対して大きな切削負荷を作用させることができない。このため、ワークに対する切り込みを少しずつしか実行することができず、効率的な平面加工を実行し得ない。しかも、切削負荷によってピンが移動してしまうおそれを常に内在しており、このような場合には、つまり、ピンが移動してしまった場合には、ワークが適切位置から移動したり、変形したりして、切削精度が大きく低下する結果となる。
【0005】
本発明の目的は、ワークに対する平面加工を効率的かつ高精度に行うことが可能になるワークの処理方法及び処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明のワークの処理方法においては、テーブルの支持面に載置された自然状態のワークにおけるひとつの面の位置を測定するとともに、その測定と相前後して、前記ワークを前記テーブルの支持面に沿うように変形させて、その変形状態で前記面の位置を測定し、その後、両測定データを比較して、前記自然状態における測定によって検出された前記面の形状に対して反転した形状の仮想面を演算によって設定することを特徴とする。ここで、面の位置とは、面の形状を表す。
【0007】
本発明の板材の処理装置においては、ワークを吸着状態で支持可能にしたテーブルと、前記テーブル上の前記ワークのひとつの面の位置を測定する測定手段と、その測定手段を動作させて、前記ワークのひとつの面を前記テーブルに対する前記ワークの非吸着状態及び吸着状態で測定させるとともに、その両測定データを比較して、前記非吸着状態における面の形状とは反転した形状の仮想面を演算する制御手段とを備えたものである。
【0008】
従って、本発明によれば、ひとつの面に対して反転した形状の仮想面を設定できる。このため、ワークをテーブル面に沿って平面状にした状態で、仮想面が形成されるように同ワークを切削し、ワークの形状を自然状態に復元させればよい。よって、ワークを剣山状の治具に載置して加工する必要がなく、ワークが加工負荷によって移動したり、変形したりすることを回避できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ワークの面を効率的かつ高精度に平面加工することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1,第2実施形態に用いられる切削盤の正面図。
図2】第1,第2実施形態に用いられる切削盤の電気的構成を示すブロック図。
図3】(a)は第1,第2実施形態の処理対象のワークの平面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく側面図。
図4】(a)〜(d)は、第1,第2実施形態におけるワークに対する処理過程を示す斜視図。
図5】(a)〜(f)は、第1,第2実施形態におけるワークに対する処理過程を示す側面図。
図6】各実施形態の動作を示すフローチャート。
図7】(a)は第2実施形態の処理対象のワークの平面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく側面図。
図8】第3〜第5実施形態に用いられる切削盤の正面図。
図9】第3〜第5実施形態に用いられる切削盤の電気的構成を示すブロック図。
図10】第3実施形態の処理対象のワークの平面図。
図11】(a)は第4実施形態の処理対象のワークの平面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく側面図。
図12】第5実施形態の処理対象のワークの平面図。
図13】(a)は第5実施形態の処理対象のワークの平面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1図6の図面に基づいて説明する。
図1に示すように、平面研削盤のフレーム11の上面には、移動台10が図1のX軸方向に移動可能に支持されている。その移動台10にはマグネットチャックよりなり、上面をワーク支持面としたチャックテーブル12が搭載されている。このチャックテーブル12は、ワーク100を磁力による吸着状態及び磁力を用いない非吸着状態において支持可能である。すなわち、このチャックテーブル12の上面にワーク100が載置され、チャックテーブル12の図2に示すマグネット28が通電によって励磁されることにより、チャックテーブル12が磁力を帯び、ワーク100がチャックテーブル12の上面に磁気吸着される。チャックテーブル12には、ワーク100を所定位置で位置決めするための位置決め部材(図示しない)が設けられている。
【0012】
フレーム11の上面にはコラム13が図1のZ軸方向に移動可能に支持されている。コラム13の前面には昇降体14が図1のY軸方向に移動可能に、すなわち昇降可能に支持され、この昇降体14には、切削手段を構成する回転砥石15が回転可能に支持されている。この回転砥石15により、チャックテーブル12上のワーク100の上面が切削される。ここで、切削は、研削や研磨を含むものとする。
【0013】
昇降体14にはタッチプローブ16を有する測定手段としての位置センサ17が下方の計測位置と上方の待機位置とに配置可能に設置されている。
図2に示す制御手段としての制御装置21には、前記移動台10、すなわちチャックテーブル12をX軸方向に往復動させるためのモータ22,コラム13をZ軸方向に往復動させるためのモータ23,昇降体14をY軸方向に昇降させるためのモータ24がそれぞれ接続されている。制御装置21には、回転砥石15を回転させるためのモータ(図示しない)が接続されている。また、制御装置21には前記チャックテーブル12を帯磁させるためのマグネット28のコイルが接続され、さらに、制御装置21には前記位置センサ17と、各種のデータを手動入力するキーボード31とが接続されている。
【0014】
前記制御装置21は、中央処理装置26と記憶部27とを備えている。記憶部27には各種の一時的なデータが記憶されるとともに、本実施形態の平面研削盤を動作させるためのプログラムのデータが記憶されている。中央処理装置26は、前記プログラムによる本実施形態の平面研削盤の各種の動作を制御する。
【0015】
次に、図3(a)〜(c),図4(a)〜(d)及び図5(a)〜(f)と、図6とに従って本実施形態の作用を説明する。図6に示すフローチャートは、前記記憶部27に記憶されたプログラムに従う動作を示すものであって、この動作は、中央処理装置26の制御をもとに進行する。
【0016】
本実施形態は、図4(a)〜(d)及び図5(a)〜(f)に示すように、自然状態において湾曲したワーク100に平面である平坦面を形成して、図3(b)及び同図(c)に示すように、自然状態において湾曲していないプレート200(図5(f)参照)を形成するようにしたものである。なお、本実施形態において平坦面とは、湾曲することなく直線状をなすとともに、平滑な面を指す。さらに、各図面においては、理解を容易にするためにワーク100の厚さを誇張して描いている。
【0017】
はじめに、図4(a)及び図5(a)に示すように、非帯磁状態のチャックテーブル12上に湾曲形状のワーク100を自然状態で載置するとともに、そのワーク100をチャックテーブル12上の前記位置決め部材によって同チャックテーブル12上の所定位置において位置決めする。この場合、前記図4(a)及び図5(a)に示すように、ワーク100の凸状に膨らんだ部分が上向きに設置されるようにして、ワーク100がチャックテーブル12上において妄動することなく安定して設置されるようにする。本実施形態においては、図4(a)及び図5(a)の膨らんだ上面を表(おもて)面101とし、図5(a)〜(e)に示すように、その反対側の面を裏面102とする。なお、表面101及び裏面102によって定義した表裏は便宜的に指定したものであって、表裏の定義は入れ換えてもよい。
【0018】
そして、位置センサ17を下方の計測位置に移動させる。
この状態において、図6に示すフローチャートのステップ(以下、このステップをSという)1において、図3(a)及び図4(a)に示すように、ワーク100の上側に位置する表面101の複数箇所の測定ポイントPに対して位置センサ17のタッチプローブ16を順次接触させる。この測定ポイントPの位置はあらかじめ定められているが、この測定ポイントPの位置は、作業者が入力しても、プログラムによって定められてもよい。そして、前記接触に基づいて、各測定ポイントPの位置におけるチャックテーブル12の上面からの高さ位置を測定させる。そして、その測定ポイントPの高さ位置データは制御装置21の記憶部27に記憶される。この場合、後述の表面101の形状認識のために、タッチプローブ16による測定ポイントPは、多いほど好ましく、また、規則的に、例えば縦横に等間隔をおいて分布していることが好ましい。
【0019】
次いで、S2において、マグネット28に通電されて、チャックテーブル12が帯磁される。このため、ワーク100が磁力によってチャックテーブル12の上面に吸着される。この吸着状態においては、図4(b)及び図5(b)に示すように、ワーク100がチャックテーブル12の上面に対して隙間なく密着されて変形され、従って、ワーク100は湾曲が解消された状態になり、この状態が維持される。
【0020】
そして、図4(b)に示すように、S3において、前記S1と同様に、タッチプローブ16によって、ワーク100の表面101の前記測定ポイントPにおいてチャックテーブル12の上面からの高さ位置が順次測定されて、記憶部27に記憶される。
【0021】
次いで、S4において、前記S2において測定された測定ポイントPの高さ位置データと、S3において測定された測定ポイントPの高さ位置データとが比較されて、それらの高さ位置の差が算出される。そして、S3において測定された扁平状態の高さ位置データの値から前記差の値が減算され、その減算された値、すなわちチャックテーブル12の上面からの仮想高さデータが仮想位置データとして記憶部27に設定される。例えば、S1において測定された特定測定ポイントPの高さが10ミリメートルで、S3において測定された同じ測定ポイントPの高さが8ミリメートルの場合は、その差2ミリメートルが8ミリメートルから減算され、その減算値である6ミリメートルのデータが測定ポイントPの仮想高さデータとして設定される。
【0022】
そして、S5において、この各仮想高さデータの値がX軸方向及びZ軸方向において数学的補間であるスプライン補間によって補間されて、仮想面111が演算されて、そのデータが記憶部27に設定記憶される。この仮想面111は、図5(a),(c)から明らかなように、図5(a)に実線で示すワーク100の自然状態における湾曲されたワーク100の表面101の形状に対して反転した逆の平面形状を表す。なお、図5(a)や図5(c)などの図面においては、理解を容易にするための仮想面111の曲率を大きくして描いている。また、図4及び図5においては、仮想面111をひとつの曲面としたが、仮想面111が複数の曲面の場合もある。
【0023】
そして、S6において、図4(b)及び図5(b)に示す湾曲していない扁平状態のワーク100の表面101において、図4(c)及び図5(c)に示すように、前記仮想面111が出現するように回転砥石15によって同表面101の切削が実行される。すなわち、図4(b)及び図5(b)に示す湾曲していない扁平状態のワーク100の表面101に対して、スプライン補間によって演算された仮想面111のデータに従って、回転砥石15とワーク100とがX軸,Y軸,Z軸の方向に相対移動されながら、同表面101の切削が実行される。従って、回転砥石15及びワーク100の少なくとも一方が他方に対してX軸,Y軸,Z軸の方向に移動されればよい。
【0024】
このようにすれば、図4(c)及び図5(c)に示すように、扁平状態のワーク100の表面101に仮想面111を表す形状の面が出現する。
そして、S7において、マグネット28に対する通電を遮断し、チャックテーブル12を非帯磁状態にして、ワーク100の磁気吸着を解除すれば、ワーク100が自身の弾性によって自然状態の形状に復元される。この場合、表面101が反転した湾曲形状に切削されているため、図4(d)及び図5(d)に示すように、自然状態では表面101の湾曲形状はなくなり、表面101はチャックテーブル12の上面と平行な平坦面形状となる。
【0025】
次いで、S8において、図5(e)に示すように、ワーク100が人手などによって表裏反転され、裏返されて、ワーク100の裏面102が上になった状態でチャックテーブル12の上面に設置される。そして、ワーク100がチャックテーブル12上において前記位置決め部材によって位置決めされた状態で、S9において、チャックテーブル12が帯磁される。この帯磁により、ワーク100がチャックテーブル12に吸着されて、ワーク100の裏面102が上向きになった状態で平坦に切削された表面101がチャックテーブル12の上面に沿って密接されて、固定される。
【0026】
この状態において、S10において、ワーク100が所要の厚さのプレート200となるように、ワーク100の裏面102が平坦に切削される。従って、この状態において、図5(f)に示すように、全体が均一な厚さのプレート200が形成される。その後、S11において、チャックテーブル12を非帯磁状態にすることにより、プレート200をチャックテーブル12上から取り出すことができる。
【0027】
このようにすれば、湾曲していない平坦な、つまり平滑かつ平板状で、所要厚さのプレート200を得ることができる。
従って、本実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
【0028】
(1)テーブル12の上面に載置された自然状態において湾曲した板状のワーク100における表面101の位置が測定されるとともに、ワーク100を前記テーブル12の上面に沿うように吸着によって変形させて、その変形状態で表面101の位置が測定される。そして、前後の前記両測定データを比較して、自然状態における測定によって検出された表面101の形状とは逆の反転形状の仮想面111が演算によって設定される。従って、その仮想面111が出現するように表面101を切削すれば、湾曲形状を消滅させた平坦面を得ることができる。
【0029】
このため、前述した特許文献1とは異なり、ワーク100の切削に際して剣山状の治具上にワーク100を設置する必要はない。このため、ワーク100に対して大きな加工負荷を作用させても、ワーク100が移動したり、変形したりするおそれを少なくできて、ワーク100を効率的かつ高精度に切削することができる。
【0030】
(2)表面101の測定に際しては、同表面101の複数箇所の測定ポイントPを測定し、自然状態及び変形状態の測定データの比較によって測定ポイントの高さ位置が演算される。そして演算された前記複数箇所の測定ポイントの高さ位置のデータをスプライン補間することにより、前記仮想面111が設定される。従って、なだらかに連続する仮想面111を得ることができる。その結果、仮想面111が出現するようにワーク100を切削することにより平滑な平坦面を得ることができる。
【0031】
(3)仮想面111に従う形状が出現された表面101を基準として、その表面101の反対側の裏面102をワーク100の非変形状態において切削するため、ワーク100を例えば歪が除去された均一な厚さのプレート200として高精度に加工することができる。
【0032】
(4)表面101及び裏面102の切削を回転砥石15によって行うため、それらの表面101及び裏面102を高精度な平坦面に切削できる。
(5)テーブル12として磁気吸着機能を有するものを用い、ワーク100を磁気吸着によってテーブル12の上面に沿わせるようにしているため、テーブル12の上面に対するワーク100の吸着を所要位置において容易に行うことができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図7(a)〜(c)の図面に基づいて第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0034】
第2実施形態においては、図7(a)に示すように、第1実施形態において切削加工されたワーク100の表面101または裏面102に任意形状の曲率を有する平面を形成できるようにしたものである。そのために、第2実施形態においては、作業者が、図2に示すキーボード31により、複数の測定ポイントPの位置と、各測定ポイントPの位置における高さのデータを任意に設定できるようにしたものである。なお、測定ポイントの位置は、プログラムによって設定されてもよい。
【0035】
従って、複数の測定ポイントPの位置と、高さ位置のデータに基づいて曲面を表すスプライン補間が縦横方向において実行される。このため、図7(b)及び同図(c)に示すように、任意の曲率の平面である表面101または裏面102が形成される。なお、測定ポイントPの密度を高くすれば、任意の曲率に対してより近い曲率の平面を得ることができる。従って、曲率が大きいところには、図7(a)に示すように、測定ポイントPの密度を部分的に高くすることが好ましい。
【0036】
従って、第2実施形態においては、以下の効果がある。
(6)歪みが除去されたワーク100の表面101または102に対して任意の曲率の表面101または裏面102を高精度に加工できる。
【0037】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を図8図10の図面に基づいて第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0038】
第3実施形態においては、図8に示すように、マグネットチャックを有するテーブル32がその中心においてY軸方向の軸線を中心にして図9に示すモータ33により回転されるものである。従って、ワーク100は、テーブル32の回転によってY軸方向の一軸線を中心に回転される。また、本実施形態においては、図9に示すように、テーブル32をX軸方向に移動させるモータ22に代えて、テーブル32を回転させるモータ33が設けられる。さらに、本実施形態においては、コラム13がX軸方向に移動されるものであり、同コラムをY軸方向に移動させるモータ23に代えて、X軸方向に移動させるモータ34が設けられる。
【0039】
図10に示すように、ワーク100上の測定ポイントPは、ワーク100の中心103を中心とした複数の同心円104上に設定される。従って、この第3実施形態においては、テーブル32が回転をともないながら、図6のプログラムとほぼ同様なスプライン補間をともなうプログラムが実行される。ただし、第3実施形態においては、スプライン補間はワーク100の中心103を通る半径方向において実行される。また、S1及びS3の測定ポイントPの測定処理において、テーブル32の回転中あるいは停止中のいずれかのときに同心円104上の位置の測定ポイントPに高さが測定される。そして、図6のS4及びS5において、測定ポイントPの高さの差が演算されて、スプライン補間により、湾曲形状と逆の仮想平面形状が設定される。
【0040】
次いで、S6において、逆の平面形状が得られるように、ワーク100が回転されるとともに、回転砥石15がX軸方向及びY軸方向に移動されて、ワーク100の表面101が切削される。また、ワーク100の表裏反転後、S10において、ワーク100の裏面102が切削される。このようにすれば、湾曲形状が消滅されて、歪が除去されたプレートを得ることができる。
【0041】
なお、この第3実施形態においては、回転砥石15がX軸方向に移動されるようにしたが、これに代えて、Z軸方向の軸線上に位置する回転砥石15が同じくZ軸方向に移動されるようにしてもよい。この場合、回転砥石15はワーク100の半径線上を移動される。要するに、Z軸方向の軸線上において回転砥石15が回転している状態で、ワーク100の半径線上を回転砥石15が相対移動すればよい。従って、回転砥石15が固定位置にあって、テーブル32がX軸方向及びZ軸方向に移動されるようにしてもよい。
【0042】
従って、第3実施形態においては、以下の効果がある。
(7)回転されるテーブル32を用いてワーク100を切削する切削方法において、前記第1実施形態と同様なプレート200を得ることができる。
【0043】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を図11(a)〜(c)の図面に基づいて説明する。
この第4実施形態は、図11(a)に示すように、第3実施形態において切削加工されたワーク100の表面101または裏面102に任意形状の曲率を有する平面を形成できるようにしたものである。そのために、第4実施形態においては、本実施形態は、第3実施形態の構成において、図9に示すキーボード31により、複数の測定ポイントPにおける高さのデータを作業者が任意に設定できるようにしたものである。測定ポイントの位置は、プログラムによって設定されてもよい。
【0044】
従って、複数の測定ポイントPの位置と、高さ位置のデータに基づいて曲面を表すスプライン補間がワーク100の中心103を通る半径方向において実行される。このため、図11(b)及び同図(c)に示すように、任意の曲率をなす点対称平面である表面101または裏面102が形成される。この場合、前述のように、測定ポイントPの密度を高くすれば、任意の曲率に対してより近い曲率を得ることができる。従って、曲率が大きいところには、測定ポイントPの密度を部分的に高くすることが好ましい。
【0045】
従って、第4実施形態においては、以下の効果がある。
(8)回転されるテーブル32を用いる方法において、歪みが除去されたワーク100の表面101または裏面102に対して任意の点対称の曲率の平面を高精度に加工できる。
【0046】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態を図12及び図13の図面に基づいて説明する。
第5実施形態においては、図13(a)〜(c)に示すように、第3実施形態において切削加工されたワーク100の表面101または裏面102に点対称以外の形状の任意の曲率形状の平面を形成できるようにしたものである。そのために、この第5実施形態においては、作業者が図2に示すキーボード31により、ワーク100上における複数の測定ポイントPの位置と、各測定ポイントPの位置における高さを任意に設定できるようにしたものである。
【0047】
従って、任意に設定された測定ポイントPの位置と、高さ位置のデータに基づいて任意曲率を表すスプライン補間が実行される。
図12に示すように、測定ポイントPの位置は、ワーク100の回転中心103からの距離と、回転中心103に対する角度位置によって表されるが、所要の曲率に応じて、測定ポイントPの位置は、適宜に分散配置される。測定ポイントPの角度位置は、例えば、回転中心を通るX軸方向線を基準にして、つまり、このX軸方向線上の位置を0度として設定される。
【0048】
そして、測定ポイントPの位置と高さに基づいて、スプライン補間が実行される。このため、図13(b)及び同図(c)に示すように、点対称以外の任意の曲率の表面101または裏面102が形成される。なお、スプライン補間は、ワーク100の半径方向において実行されても、ワーク100の中心を中心とした周方向において実行されても、いずれでもよい。
【0049】
従って、第5実施形態においては、以下の効果がある。
(8)歪みが除去されたワーク100の表面101または裏面102に対して点対称以外の任意の曲率の平面を高精度に加工できる。
【0050】
(変更例)
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化してもよい。
【0051】
・前記実施形態では、ワーク100の表面101の測定を複数の測定ポイントPにおいて実行したが、位置センサ17のプローブ16を表面101に対する接触状態を維持しながら、表面101上を連続的に移動させて、表面101の全体を面として測定すること。このようにすれば、スプライン補間を不要にすることが可能になり、しかも、表面101の形状を正確に測定できる。
【0052】
・表面101の測定に際して、ワーク100側を移動させたり、ワーク100及びプローブ16の双方を移動させたりすること。
・ワーク100の表面101及び裏面102の切削を回転砥石15以外の刃物、例えば、フライスやエンドミルを用いて行うこと。
【0053】
・チャックテーブル12としてマグネットチャック方式に代えて、ワーク100をエア吸引によってテーブル上面に吸着するように構成すること。
・ワーク100の表面101の切削を仮想面111の設定とは異なる工程で行うこと。例えば、回転砥石15を有しない装置において、仮想面111を設定し、その仮想面111のデータを平面研削盤に転送して、そのデータに従って平面研削盤を作動させて、その平面研削盤によってワーク100を切削すること。
【0054】
・ワーク100の裏面102の切削を仮想面111の設定とは異なる工程あるいは表面101の切削とは異なる工程で行うこと。例えば、前記のように、回転砥石15を有しない装置において、仮想面111を設定し、そのデータを平面研削盤に転送して、そのデータに従って平面研削盤を作動させたり、表面101の切削と裏面102の切削とを異なる切削盤において行ったりすること。
【0055】
・裏面102を表面101とは異なる角度となるように切削すること。つまり、裏面102と表面101とを平行にすることなく、それらの面を相互に傾斜させること。
・表面101の自然状態における測定と、扁平状態に変形させた状態における測定との順序を前後入れ換えること。
【0056】
・仮想測定ポイント間の数学的補間をスプライン補間以外の補間方法で行うこと。例えば、ベジュ補間、キーフレーム補間の方法を採用すること。
・表面101及び裏面102の位置の測定をタッチプローブによる接触タイプではない他のタイプのセンサ、例えばレーザビームを利用したセンサを用いること。
【符号の説明】
【0057】
12…チャックテーブル、15…回転砥石、17…位置センサ、21…制御装置、26…中央処理装置、27…記憶部、32…テーブル、100…ワーク、111…仮想面。
図1
図2
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図13