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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-201069(P2018-201069A)
(43)【公開日】2018年12月20日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/52 20060101AFI20181122BHJP
   H03F 1/22 20060101ALI20181122BHJP
   H03F 3/187 20060101ALI20181122BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20181122BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20181122BHJP
   H03F 1/00 20060101ALI20181122BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20181122BHJP
【FI】
   H03F1/52 Z
   H03F1/22
   H03F3/187
   H01L27/04 H
   H03F1/00 B
   H03K17/16 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-103704(P2017-103704)
(22)【出願日】2017年5月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】栗山 保彦
【テーマコード(参考)】
5F038
5J055
5J500
【Fターム(参考)】
5F038BH04
5F038BH07
5F038BH13
5F038CD02
5F038CD13
5F038EZ06
5F038EZ20
5J055AX02
5J055AX26
5J055AX40
5J055CX01
5J055DX13
5J055DX22
5J055EY01
5J055EY05
5J055EY10
5J055EY12
5J055GX01
5J055GX06
5J500AA01
5J500AA13
5J500AC57
5J500AF11
5J500AH10
5J500AH19
5J500AH25
5J500AH29
5J500AH33
5J500AH39
5J500AK12
5J500AM04
5J500AM17
5J500AS13
5J500AT01
5J500LV07
(57)【要約】

【課題】ESD保護素子を付加しても高周波特性の劣化を抑制することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】本実施形態による半導体装置は、SOI基板上に設けられ、高周波信号を増幅して出力する。入力端子は、高周波信号を入力する。出力端子は、増幅された高周波信号を出力する。第1トランジスタは、入力端子からの高周波信号をゲートで受けて、該高周波信号を増幅する。第2トランジスタは、第1トランジスタのドレインと出力端子との間に設けられている。第1インダクタ素子は、第1トランジスタのソースと接地電位源との間に設けられている。第1キャパシタ素子は、第1トランジスタのゲートと入力端子との間に設けられている。ESD保護素子は、第1インダクタ素子および第1トランジスタの間の第1ノードと入力端子および第1キャパシタ素子の間の第2ノードとの間に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SOI(Silicon On Insulator)基板上に設けられ、高周波信号を増幅して出力する半導体装置であって、
前記高周波信号を入力する入力端子と、
増幅された前記高周波信号を出力する出力端子と、
前記入力端子からの前記高周波信号をゲートで受けて、該高周波信号を増幅する第1トランジスタと、
前記第1トランジスタのドレインと前記出力端子との間に設けられた第2トランジスタと、
前記第1トランジスタのソースと接地電位源との間に設けられた第1インダクタ素子と、
前記第1トランジスタのゲートと前記入力端子との間に設けられた第1キャパシタ素子と、
前記第1インダクタ素子および前記第1トランジスタの間の第1ノードと前記入力端子および前記第1キャパシタ素子の間の第2ノードとの間に設けられたESD(Electrostatic Discharge)保護素子と、を備えている半導体装置。
【請求項2】
前記ESD保護素子は、
前記第1ノードと前記第2ノードとの間において、前記第1ノードから前記第2ノードへ順方向に直列接続された複数の第1ダイオードと、
前記第1ノードと前記第2ノードとの間において、前記第2ノードから前記第1ノードへ順方向に直列接続された複数の第2ダイオードとを備えている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記出力端子と前記第2トランジスタのドレインとの間に接続された第2キャパシタ素子と、
電源回路と前記第2トランジスタのドレインとの間に接続された第2インダクタ素子と、
前記第2インダクタ素子に並列接続された第1抵抗素子と、
前記第1トランジスタのゲートと前記電源回路との間に接続された第2抵抗素子と、
前記第2トランジスタのゲートと前記電源回路との間に接続された第3抵抗素子とを備えている、請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記出力端子と前記第2トランジスタとの間に直列接続された第1および第2スイッチと、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとの間の第3ノードと前記接地電位源との間に直列接続されたm個(m≧1)の第3スイッチと、
前記出力端子と前記第2スイッチとの間の第4ノードと前記接地電位源との間に直列接続されたm+1個の第4スイッチとを備えている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記入力端子は、第1〜第p入力端子(p≧3)のp個設けられており、
前記出力端子は、第1〜第q出力端子(q<p)のq個設けられており、
前記第1および第2トランジスタ、前記第1インダクタ素子、前記第1キャパシタ素子および前記ESD保護素子を増幅回路とし、前記第1〜第3スイッチをスルースイッチ回路とし、前記第4スイッチをシャントスイッチ回路とすると、
前記第1〜第p入力端子のそれぞれに前記増幅回路が設けられ、
前記増幅回路と前記第1〜第q出力端子との間にそれぞれ前記スルースイッチが設けられており、
前記第1〜第q出力端子のそれぞれに前記シャントスイッチ回路が設けられている、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記入力端子に接続可能な第1および第2端子と、
前記第1および第2端子と前記出力端子との間に設けられ、前記第1および第2トランジスタ、前記第1インダクタ素子、前記第1キャパシタ素子および前記ESD保護素子を含む増幅回路と、
前記第1および第2端子と前記出力端子との間に前記増幅回路に対して並列に設けられたバイパス経路と、
前記第1端子と前記バイパス経路との間に接続された第5スイッチと、
前記第2端子と前記バイパス経路との間に接続された第6スイッチと、
前記バイパス経路と前記接地電位源との間に直列接続されたn個(n≧1)の第7スイッチと、
前記第1端子と前記接地電位源との間に直列接続されたn+1個の第8スイッチと、
前記第2端子と前記接地電位源との間に直列接続されたn+1個の第9スイッチとを備えている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記入力端子と前記第1または第2端子との間に設けられ、前記入力端子に外部インダクタ素子を介して接続可能な中間端子と、
前記中間端子と前記接地電位源との間に直列接続されたn+1個の第10スイッチとをさらに備えている、請求項6に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高周波低雑音増幅器(以下、単に、LNA(Low Noise Amplifier)とも言う)をSiGeバイポーラプロセス(以下、SiGeプロセスとも言う)からSOI(Silicon On Insulator)CMOSプロセス(以下、SOIプロセスとも言う)に置換する検討が進められている。SOIプロセスはSiGeプロセスよりも低コストであり、またSOIプロセスで形成したMOSトランジスタの寄生容量は小さいことから、高周波信号の電力損失が小さくなる。よって、SOIプロセスを用いれば、電気的特性を劣化させずに、高周波スイッチとLNAとを同一のSOI基板上に形成でき、ワンチップ化が可能となる。
【0003】
このようなLNAをESD(Electrostatic Discharge)から保護するために、ESD保護素子がLNAの入力端子に設けられている場合がある。しかし、ESD保護素子は、それ自体に寄生容量を有するため、入力端子における高周波信号の反射特性やNF(Noise Figure)特性が劣化してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015−517782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ESD保護素子を付加しても高周波特性の劣化を抑制することができる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による半導体装置は、SOI基板上に設けられ、高周波信号を増幅して出力する。入力端子は、高周波信号を入力する。出力端子は、増幅された高周波信号を出力する。第1トランジスタは、入力端子からの高周波信号をゲートで受けて、該高周波信号を増幅する。第2トランジスタは、第1トランジスタのドレインと出力端子との間に設けられている。第1インダクタ素子は、第1トランジスタのソースと接地電位源との間に設けられている。第1キャパシタ素子は、第1トランジスタのゲートと入力端子との間に設けられている。ESD保護素子は、第1インダクタ素子および第1トランジスタの間の第1ノードと入力端子および第1キャパシタ素子の間の第2ノードとの間に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態による高周波低雑音増幅器(LNA)の構成例を示す図。
図2】増幅動作におけるLNA1の高周波特性を示すグラフ。
図3】比較例によるLNAの構成を示す図。
図4】第2実施形態によるLNAの構成例を示す図。
図5】第3実施形態によるLNAの構成例を示す図。
図6】ゲインモードにおけるLNAの動作を示す図。
図7】バイパスモードにおけるLNAの動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による高周波低雑音増幅器(LNA)の構成例を示す図である。LNA1は、高周波信号を送受信する通信装置の受信回路に設けられており、高周波信号を増幅して出力する半導体装置である。LNA1は、SOI基板上にSOIプロセスを用いて形成され、1つの半導体チップとして構成されている。通信装置は、例えば、携帯電話、スマートフォン、無線タブレット、無線ルータなどの移動体通信端末、あるいは、無線基地局、無線アクセスポイント等でよい。
【0010】
半導体装置としてのLNA1は、入力端子LNAinと、出力端子LNAoutと、第1トランジスタFET1と、第2トランジスタFET2と、インダクタ素子Ls、Ldと、キャパシタ素子Cin、Cout、CB2と、抵抗素子Rd、RB1、RB2と、ESD保護素子10と、電源回路20とを備えている。
【0011】
入力端子LNAinは、高周波信号をLNA1の外部(例えば、アンテナ)から入力する。入力端子LNAinには、入力側のインピーダンス整合をとるために、外部インダクタ素子Lextが外付けされている。出力端子LNAoutは、LNA1の内部において増幅された高周波信号を通信装置内部へ出力する。
【0012】
第1トランジスタFET1(以下、単に、FET1という)は、第1ノードN1と第2トランジスタFET2との間に接続されており、インダクタ素子Lsを介してソース接地されている。FET1は、入力端子LNAinからの高周波信号をゲートで受けて、該高周波信号を増幅する。
【0013】
第2トランジスタFET2(以下、単に、FET2という)は、FET1のドレインと出力端子LNAoutとの間に設けられ、FET1のドレイン側にカスコード接続されている。FET2は、キャパシタ素子CB2を介してゲート接地されている。 すなわち、FET2はゲート接地FETとして機能し、FET1と共にカスコード増幅回路を形成している。
【0014】
このように、FET1およびFET2は、電源回路20と接地電圧源としてのグランドとの間に直列接続(カスコード接続)されており、FET1のゲートで受けた高周波信号を増幅して出力端子LNAoutから出力する。
【0015】
第1インダクタ素子Lsは、FET1のソースとグランドとの間に設けられている。第1インダクタ素子Lsは、ESD保護素子10の寄生容量成分とともにインピーダンス整合回路として機能する。
【0016】
第1キャパシタ素子Cinは、入力端子LNAinとFET1のゲートとの間に設けられており、入力端子LNAinからの直流電流成分をカットする。
【0017】
ESD保護素子10は、第1ノードN1と第2ノードN2との間に設けられている。第1ノードN1は、FET1のソースと第1インダクタ素子Lsとの間の接続ノードであり、第2ノードN2は、入力端子LNAinと第1キャパシタ素子Cinとの間の接続ノードである。ESD保護素子10は、入力端子LNAinから入力されるESDによってLNA1が破壊されないようにESDによる電力をグランドへ回避させる。
【0018】
ESD保護素子10は、第1ノードN1と第2ノードN2との間において、第1ノードN1から第2ノードN2へ順方向に直列接続された複数の第1ダイオードD1と、第2ノードN2から第1ノードN1へ順方向に直列接続された複数の第2ダイオードD2とを備えている。即ち、ESD保護素子10は、互いに逆方向に並列接続された複数のPN接合ダイオードD1、D2を備えている。
【0019】
ESDが負電圧である場合には、第1ダイオードD1がESDによる電流をグランドから流す。ESDが正電圧である場合には、第2ダイオードD2がESDによる電流をグランドへ流す。これにより、ESD保護素子10は、入力端子LNAinからのESDからLNA1を保護することができる。
【0020】
一方、入力端子LNAinに印加される電圧が直列接続された複数の第1ダイオードD1の順バイアス電圧VFまたは直列接続された複数の第2ダイオードD2の順方向電圧VFを超えない場合には、ESD保護素子10は第1ノードN1と第2ノードN2との間で電流をほとんど流さない。従って、LNA1で増幅すべき高周波信号が入力端子LNAinに入力されたときには、高周波信号はFET1のゲートへ印加され得る。
【0021】
このようにESD保護素子10の放電の閾値電圧を制御するには、第1ダイオードD1の個数および第2ダイオードD2の個数によって制御すればよい。即ち、ESD保護素子10の閾値電圧が高周波信号の振幅よりも高くかつ ESD保護素子10が無い時のLNA1の入力耐圧よりも低くなるように、第1および第2ダイオードD1、D2のそれぞれの個数を設定すればよい。
【0022】
また、ESD保護素子10が直流的に導通していない場合、第1および第2ダイオードD1、D2は寄生容量(接合容量)を有するので、ESD保護素子10は第1ノードN1と第2ノードN2との間のキャパシタ素子としても機能する。ESD保護素子10の寄生容量成分をCesd(例えば、50fF)とすると、寄生容量成分Cesdと第1インダクタ素子Lsとがインピーダンス整合回路として機能し得る。このように、ESD保護素子10は、ESD耐性を向上させるとともに、入力インピーダンスを整合させるためにも用いられる。
【0023】
外部インダクタ素子Lext、第1インダクタ素子Ls、第1キャパシタ素子Cin、ESD保護素子10は、入力インピーダンス整合のために用いられる受動素子であり、FET1、FET2の利得およびノイズを考慮して所望の入力インピーダンスになるように設定される。尚、ESD保護素子10を付加することによる高周波特性については図2を参照して説明する。
【0024】
第2キャパシタ素子Coutは、出力端子LNAoutとFET2のドレインとの間に接続されている。第2インダクタ素子Ldおよび第1抵抗素子Rdは、電源回路20とFET2との間に並列接続されている。第2キャパシタ素子Coutは、出力端子OUTからの直流電流成分をカットするために設けられている。また、第1抵抗素子Rd、第2インダクタ素子Ldおよび第2キャパシタ素子Coutは、出力インピーダンス整合回路としても機能する。さらに、第1抵抗素子Rdは、ゲインを調整し、安定化(発振の抑制)のために設けられており、例えば、第2インダクタ素子Ldのインピーダンスの絶対値の約10倍以上の抵抗を有する。
【0025】
第2抵抗素子RB1は、FET1のゲートと電源回路20との間に接続されている。第3抵抗素子RB2は、FET2のゲートと電源回路20との間に接続されている。抵抗素子RB1、RB2は、高周波信号が電源回路20へ進入しないように設けられている。尚、図示しないが、本実施形態において、FET1のゲートとそのソースとの間にさらにインピーダンス整合用のキャパシタ素子を設けてもよい。
【0026】
電源回路20は、イネーブル信号ENに基づいて、FET1、FET2のそれぞれのゲートに第1および第2バイアス電圧VB1、VB2を印加し、FET2のドレインに電源電圧VDD_LNAを印加する。バイアス電圧VB1、VB2および電源電圧VDD_LNAは、外部電圧Vddから生成される。例えば、電源回路20は、外部の制御装置(図示せず)からイネーブル信号ENを受けて、LNA1を駆動または停止させるために、バイアス電圧VB1をFET1のゲートに印加し、バイアス電圧VB2をFET2のゲートに印加する。例えば、制御装置は、ゲインモードにおいてイネーブル信号ENをハイレベルとし、電源回路20は、バイアス電圧VB1、VB2を所定電圧にする。これにより、LNA1は増幅動作を可能とする。一方、制御装置は、バイパスモードあるいは待機モードにおいてイネーブル信号ENをロウレベルとし、電源回路20は、バイアス電圧VB1、VB2をほぼゼロにする。これにより、LNA1は増幅動作を停止する。
【0027】
ゲインモードにおいて、高周波信号が入力端子LNAinから入力されると、高周波信号は、第1キャパシタ素子Cinを介してFET1のゲートに印加される。FET1およびFET2のゲートにはバイアス電圧VB1、VB2がそれぞれ印加されているので、FET1、FET2は、この高周波信号を増幅して第2キャパシタ素子Coutを介して出力端子OUTから出力する。
【0028】
図2(A)および図2(B)は、増幅動作におけるLNA1の高周波特性を示すグラフである。図2(A)は、S11の高周波特性を示す。図2(B)は、ノイズ指数(NF(Noise Figure))の高周波特性を示す。尚、本実施形態において、LNA1は、1.8GHz〜2.2GHzを使用帯域として設計されているものとする。
【0029】
S11は、入力端子LNAinにおける高周波信号の反射特性に関するSパラメータであり、S11が小さいほど、入力端子LNAinでの反射による損失(所謂、入力リターンロス)が少ないことを意味する。
【0030】
実線L1は、本実施形態によるLNA1の特性を示し、破線L0は、比較例のLNAの特性を示す。図3は、比較例によるLNAの構成を示す図である。比較例は、ESD保護素子が入力端子LNAinとグランドとの間に接続されている。比較例のその他の構成は、第1実施形態の構成と同様でよい。図示はしないが、このような比較例では、ESD保護素子10を付加することによって、S11およびNFが悪化することが分かっている。即ち、ESD保護素子10の無いLNAに比べて、比較例は、Sパラメータおよびノイズ指数において劣化することが分かっている。
【0031】
一方、図2(A)を参照すると、本実施形態によるLNA1は、S11において比較例よりも改善されていることが分かる。即ち、本実施形態における高周波信号の入力リターンロスは、比較例のそれより小さい。これは、ESD保護素子10が入力端子LNAinとFET1のソースとの間に接続され、ESD保護素子10の寄生容量成分が入力インピーダンスの整合に用いられているからである。
【0032】
図2(B)を参照すると、本実施形態によるLNA1は、NFにおいて比較例とほとんど変わらない。従って、本実施形態によるLNA1は、ノイズを増大させること無く、入力リターンロスを小さくすることができる。尚、図示しないが、出力端子LNAoutにおける信号の反射特性に関するSパラメータ(S22)は、本実施形態と比較例とでほとんど変わらなかった。このように、本実施形態によれば、ESD保護素子10が付加されても、Sパラメータおよびノイズ指数等の高周波特性の劣化を抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態によるLNA1は、SOI基板上にSOIプロセスを用いて形成されている。SOIプロセスはSiGeプロセスよりも低コストであり、またSOIプロセスで形成したMOSトランジスタの寄生容量は小さいことから、高周波信号の電力損失が小さくなる。よって、本実施形態によれば、電気的特性を劣化させずに、高周波スイッチとLNAとを同一のSOI基板上に形成でき、1つの半導体チップとして構成することができる。
【0034】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態によるLNAの構成例を示す図である。第1実施形態では、1個のLNAが1つの半導体チップ上に設けられている。これに対し、第2実施形態では、複数の入力に対応して複数のLNA_1〜LNA_(p)が1つの半導体チップ上に設けられている。複数のLNA_1〜LNA_(p)のいずれかを出力端子LNAout1またはLNAout2に接続するために、スルースイッチ回路群TSWが複数のLNA_1〜LNA_(p)と出力端子LNAout1、LNAout2との間に設けられている。また、出力端子LNAout1、LNAout2のそれぞれには、シャントスイッチ回路群SSWが設けられている。スルースイッチ回路群TSWおよびシャントスイッチ回路群SSWは、SOI基板上に設けられ、1つの半導体チップとして構成されている。尚、pは3以上の整数である。
【0035】
入力端子がp個(LNAin1〜LNAin(p))であり、出力端子がq個(LNAout1〜LNAout(q))とすれば、第2実施形態によるスルースイッチ回路群TSWは、p−Pole q−Thowのスイッチとなる。このような複数入力および複数出力を有するLNAは、無線通信を高速化するキャリアアグリゲーションを実現するために必要となる。スルースイッチ回路群TSWを切り替えることで、任意の入力端子(LNAin1〜LNAin(p)のいずれか)から入力した高周波信号を増幅し、任意の出力端子(LNAout1またはLNAout2)から出力することができる。
【0036】
LNA_1〜LNA_(p)は、それぞれ第1実施形態のLNA1と同様の構成を有する。従って、LNA_1〜LNA_(p)の内部構成の詳細な説明は省略する。ただし、出力端子LNAout1、LNAout2とLNA_1〜LNA_(p)との間には、スルースイッチTSWが介在している。
【0037】
第1〜第p入力端子LNAin1〜LNAin(p)は、LNA_1〜LNA_(p)に対応してp個設けられている。第1〜第q出力端子LNAout1〜LNAout(q)は、q個(q<p)設けられている。本実施形態では、出力端子は、2個(LNAout1、LNAout2)設けられている。即ち、q=2としている。
【0038】
スルースイッチ回路群TSWは、LNA_1に対応するスルースイッチ回路TSW11、TSW12と、LNA_2に対応するスルースイッチ回路TSW21、TSW22と、LNA_3に対応するスルースイッチ回路TSW31、TSW32と、・・・LNA_pに対応するスルースイッチ回路TSW(p)1、TSW(p)2とを備えている。TSW(k)1、TSW(k)2は、出力端子LNAout1、LNAout2に対応して設けられている。尚、1≦k≦pである。即ち、出力端子LNAout1、LNAout2に対応するスルースイッチ回路TSW(k)1、TSW(k)2のペアが、LNA_1〜LNA_(p)のそれぞれに対応して設けられている。
【0039】
スルースイッチ回路TSW11〜TSW(p)2の内部構成は基本的に同一であるので、スルースイッチ回路TSW11の内部構成を説明し、その他のスルースイッチ回路の内部構成の説明は省略する。
【0040】
スルースイッチ回路TSW11は、第1〜第3スイッチSW1〜SW3を備えている。第1および第2スイッチSW1、SW2は、出力端子LNAout1とLNA_1のFET2との間に直列接続されている。尚、第1スイッチSW1とFET2との間には、キャパシタ素子Coutが介在している。
【0041】
第3スイッチSW3は、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2との間の第3ノードN3とグランドとの間に接続されている。第2実施形態において、第3スイッチSW3は、1個だけ設けられている。しかし、複数の第3スイッチSW3_1〜SW3_mを第3ノードN3とグランドとの間に直列接続してもよい。尚、mは1以上の整数である。mは、シャントスイッチ回路を構成する第4スイッチSW4の個数と関連するが、その関連性は後で説明する。
【0042】
スルースイッチ回路TSW12の内部構成は、スルースイッチ回路TSW11のそれと同様である。ただし、スルースイッチ回路TSW12は、LNA_1と出力端子LNAout2との間に接続されている。
【0043】
同様に、スルースイッチ回路TSW(k)1、TSW(k)2の内部構成は、スルースイッチ回路TSW11のそれと同様である。ただし、スルースイッチ回路TSW(k)1は、LNA_(k)と出力端子LNAout1との間に接続され、スルースイッチ回路TSW(k)2は、LNA_(k)と出力端子LNAout2との間に接続されている。
【0044】
高周波信号が第1〜第3スイッチSW1〜SW3のゲート側へ進入しないように、第1〜第3スイッチSW1〜SW3のゲートには抵抗素子Rtが接続されている。また、第1〜第3スイッチSW1〜SW3のゲート−ボディ間には、ダイオードDtが接続されている。第1〜第3スイッチSW1〜SW3のゲートは、図示しない外部コントローラに接続されており、その外部コントローラによってオン/オフ制御される。
【0045】
シャントスイッチ回路群SSWは、シャントスイッチ回路SSW1、SSW2を備えている。シャントスイッチ回路SSW1、SSW2は、それぞれ出力端子LNAout1、LNAout2に対応して設けられている。
【0046】
シャントスイッチ回路SSW1、SSW2の内部構成は基本的に同一であるので、シャントスイッチ回路SSW1の内部構成を説明し、他のシャントスイッチ回路SSW2の内部構成の説明は省略する。
【0047】
シャントスイッチ回路SSW1は、m+1個の第4スイッチSW4を備えている。m+1個の第4スイッチSW4は、出力端子LNAout1とグランドとの間に直列接続されている。第2実施形態では、m=1であるので、2個の第4スイッチSW4が出力端子LNAout1とグランドとの間に直列接続されている。
【0048】
上述の通り、シャントスイッチ回路SSW2の内部構成は、シャントスイッチ回路SSW1のそれと同様であるが、シャントスイッチ回路SSW2は、出力端子LNAout2とグランドとの間に接続されている。
【0049】
高周波信号が第4スイッチSW4のゲート側へ進入しないように、第4スイッチSW4のゲートには抵抗素子Rsが接続されている。また、第4スイッチSW4のゲート−ボディ間には、ダイオードDsが接続されている。第4スイッチSW4のゲートは、図示しない外部コントローラに接続されており、その外部コントローラによってオン/オフ制御される。
【0050】
ここで、mと第4スイッチSW4の個数との関連性を説明する。第4スイッチSW4の個数は、第3スイッチSW3の個数mから1だけ多い数(m+1)である。これは、出力端子LNAout1またはLNAout2からグランドまでに並列接続されるスイッチの個数をシャントスイッチ回路およびスルースイッチ回路において等しくするためである。例えば、出力端子LNAout1からグランドまでの間に、スルースイッチ回路TSW11においては、2つのスイッチSW2、SW3が直列接続されている。出力端子LNAout1からグランドまでの間に、シャントスイッチ回路SSW1においても、2つのスイッチSW4が直列接続されている。従って、第4スイッチSW4の個数は、第3スイッチSW3の個数mに第2スイッチSW2の個数1を足した数(m+1)となる。これにより、それぞれ同数のスイッチ(SW2、SW3)とスイッチ(2つのSW4)とが出力端子LNAout1とグランドとの間に、互いに並列に接続される。
【0051】
また、第2〜第4スイッチSW1〜SW4は、ゲート幅以外の特性(閾値電圧、ゲート長、ゲート絶縁膜の厚み等)においてほぼ等しいMOSFETである。これは、出力端子LNAout1またはLNAout2にESDによる高電圧が印加されたときに、スルースイッチ回路の2つのスイッチSW2、SW3およびシャントスイッチ回路の2つのスイッチSW4がほぼ同時に導通(オン)するようにするためである。尚、第1スイッチSW1も第2〜第4スイッチSW2〜SW4とゲート幅以外の特性(閾値電圧、ゲート長、ゲート絶縁膜の厚み等)においてほぼ等しくてよい。
【0052】
このように、出力端子LNAout1またはLNAout2からグランドまでのスイッチの個数およびスイッチの特性を、シャントスイッチ回路SSW1、SSW2およびスルースイッチ回路TSW11〜TSW(p)2において等しくすることによって、シャントスイッチ回路SSW1、SSW2およびスルースイッチ回路TSW11〜TSW(p)2の両方がESD保護回路としても機能する。
【0053】
例えば、シャントスイッチ回路SSW1、SSW2およびスルースイッチ回路TSW11〜TSW(p)2がオフ状態であるときに、出力端子LNAout1にESDによる高電圧が印加された場合、スルースイッチ回路TSW11、TSW21、・・・TSW(p)1のそれぞれの2つのスイッチ(SW2、SW3)と、シャントスイッチ回路SSW1の2つのスイッチ(SW4)とが同時に導通する。
【0054】
これにより、ESDによる電流は、破線矢印Aで示すように、シャントスイッチ回路SSW1を通過する経路Ph1と、スルースイッチ回路TSW11、TSW21・・・TSW(p)1を通過する経路Ps1〜Ps(p)とを介してグランドへ流れる。このように、ESDによる電流は、経路Ph1とそれに並列接続されるPs1〜Ps(p)とに流れる。その結果、ESD保護素子として機能するスイッチのゲート幅を実質的に大きくすることができ、ESDによる電流を流し易くする。
【0055】
例えば、第1〜第3スイッチSW1〜SW3のゲート幅をそれぞれ約0.1mmとし、第4スイッチSW4のゲート幅を約0.6mmとする。また、p=4とする。この場合、ESD保護素子として機能するスイッチSW2〜SW4の実質的なゲート幅は、約1.0mm(0.1mm×4+0.6mm)となる。これは、ESD保護素子として約1.0mmのゲート幅を有するスイッチが設けられていることと等価である。これにより、ヒューマンボディモデルにおいて2kV以上のESD耐性を得ることができる。このように、シャントスイッチ回路SSW1およびスルースイッチ回路TSW11〜TSW(p)1がESD保護素子として機能することによって、ESD保護素子を別途設けること無く、ESD耐性を向上させることができる。
【0056】
尚、出力端子LNAout2にESDによる高電圧が印加された場合には、出力端子LNAout2からグランドまでの間にあるスルースイッチ回路TSW12、TSW22、・・・TSW(p)2のそれぞれの2つのスイッチ(SW2、SW3)と、シャントスイッチ回路SSW2の2つのスイッチSW4とが同時に導通する。これにより、出力端子LNAout2においても、ESD保護素子を別途設けること無く、ESD耐性を向上させることができる。
【0057】
もし、ESD保護素子を出力端子LNAout1、LNAout2に別途設けた場合、通常の増幅動作において、ESD保護素子の寄生容量がLNAの高周波特性を劣化させる。
【0058】
これに対し、第2実施形態によるLNAは、スルースイッチ回路群TSWおよびシャントスイッチ回路群SSWがESD保護素子としての機能を兼ねている。従って、スルースイッチ回路群TSWおよびシャントスイッチ回路群SSWとは別にESD保護素子を設けることなく、ESD耐性を向上させることができる。
【0059】
次に、通常の増幅動作におけるスルースイッチ回路群TSWおよびシャントスイッチ回路群SSWの動作を説明する。
【0060】
例えば、LNA_1で増幅された高周波信号を出力端子LNAout1から出力するためには、スルースイッチ回路TSW11の第1および第2スイッチSW1、SW2がオンし、スルースイッチ回路TSW11の第3スイッチSW3およびシャントスイッチ回路SSW1の2つの第4スイッチSW4はオフする。これにより、高周波信号は、出力端子LNAout1から出力され得る。尚、このように、第1および第2スイッチSW1、SW2がオンし、第3スイッチSW3がオフしている状態を、“スルースイッチ回路のオン状態”ともいう。また、2つの第4スイッチSW4がオフしている状態を、“シャントスイッチ回路のオフ状態”ともいう。
【0061】
スルースイッチ回路TSW11以外のスルースイッチ回路TSW12〜TSW(p)2においては、第1および第2スイッチSW1、SW2はオフしており、第3スイッチSW3はオンしている。ここで、スルースイッチ回路TSW11〜TSW(p)2は、所謂、T型スイッチであり、直列接続された2つのスイッチSW1、SW2と、これらの間のノードN3とグランドとの間に接続されたスイッチSW3とで構成されている。従って、第1および第2スイッチSW1、SW2をオフし、かつ、第3スイッチSW3をオンすることによって、ノードN3は、入力端子側(LNA側)および出力端子側とも電気的に切断され、かつ、グランドにシャントされる。これにより、LNAと出力端子とのアイソレーション特性が向上する。尚、このように、第1および第2スイッチSW1、SW2がオフし、かつ、第3スイッチSW3がオンした状態を、“スルースイッチ回路のオフ状態”という。また、2つの第4スイッチSW4がオンしている状態を、“シャントスイッチ回路のオン状態”ともいう。
【0062】
LNA_1で増幅された高周波信号を出力端子LNAout1から出力するためには、スルースイッチ回路TSW11をオン状態にし、他のスルースイッチ回路TSW12〜TSW(p)2をオフ状態にする。また、シャントスイッチ回路SSW1をオフ状態とし、シャントスイッチ回路SSW2をオン状態とする。これにより、LNA_1からの高周波信号は、出力端子LNAout1から低損失で出力され、かつ、LNAout2への漏洩を抑制することができる。
【0063】
LNA_1で増幅された高周波信号を出力端子LNAout2から出力するためには、スルースイッチ回路TSW12をオン状態にし、他のスルースイッチ回路TSW11、TSW21〜TSW(p)2をオフ状態にする。また、シャントスイッチ回路SSW2をオフ状態とし、シャントスイッチ回路SSW1をオン状態とする。これにより、LNA_1からの高周波信号は、出力端子LNAout2から低損失で出力され、かつ、LNAout1への漏洩を抑制することができる。
【0064】
同様に、LNA_(k)(1≦k≦p)で増幅された高周波信号を出力端子LNAout1(またはLNAout2)から出力するためには、それに対応するスルースイッチ回路TSW(k)1(またはTSW(k)2)をオン状態にし、他のスルースイッチ回路をオフ状態にする。また、シャントスイッチ回路SSW1(またはSSW2)はオフ状態とし、シャントスイッチ回路SSW2(またはSSW1)はオン状態とする。これにより、LNA_(k)からの高周波信号は、出力端子LNAout1(またはLNAout2)から低損失で出力され、かつ、LNAout2(またはLNAout1)への漏洩を抑制することができる。
【0065】
以上のように、第2実施形態によるLNAでは、スルースイッチ回路群TSWおよびシャントスイッチ回路群SSWが、高周波信号のスイッチング機能の他に、ESD保護素子としての機能を兼ねている。従って、スルースイッチ回路群TSWおよびシャントスイッチ回路群SSWと別に、ESD保護素子を設けることなく、ESD耐性を向上させることができる。ESD保護素子が無いので、対地寄生容量が低減し、LNAのゲインロスおよびリターンロスを抑制することができる。
【0066】
また、スルースイッチ回路TSW11〜TSW(p)2がT型スイッチであることによって、オフ状態におけるアイソレーション特性を向上させることができる。
【0067】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態によるLNAの構成例を示す図である。第3実施形態では、入力端子側にスイッチ回路が設けられている。また、第3実施形態では、LNA_1、LNA_2を介さないバイパス経路BP1、BP2が設けられている。LNA_1、LNA_2の内部構成は、第1実施形態によるLNA1のそれと同様でよい。
【0068】
端子IN1、IN2と出力端子LNAout1、LNAout2との間の構成は、端子IN3、IN4と出力端子LNAout1、LNAout2との間の構成と同様である。従って、ここでは、端子IN1、IN2に対応する構成を説明し、端子IN3、IN4に対応する構成の説明を省略する。
【0069】
端子IN1、IN2は、LNA_1およびバイパス経路BP1を共有している。従って、端子IN1、IN2は、互いに近い周波数の高周波信号を入力する。また、端子IN3、IN4は、LNA_2およびバイパス経路BP2を共有している。従って、端子IN3、IN4は、互いに近い周波数の高周波信号を入力する。端子IN1、IN2と端子IN3、IN4とは、比較的遠い周波数の高周波信号を入力してよい。
【0070】
尚、外部インダクタ素子Lext1、Lext2以外の図5に示す構成は、SOI基板上に設けられており、1つの半導体チップとして構成されている。外部インダクタ素子Lext1、Lext2は、半導体チップに対して外付けされている。
【0071】
第1および第2端子IN1、IN2は、入力スイッチ回路SWin1および外部インダクタ素子Lext1を介して、入力端子LNAin1およびバイパス経路BP1に接続されている。入力スイッチ回路SWin1の切替えによって、第1および第2端子IN1、IN2は、入力端子LNAin1またはバイパス経路BP1に任意に接続可能となっている。
【0072】
バイパス経路BP1は、第1および第2端子IN1、IN2と出力端子LNAout1、LNAout2との間にLNA_1に対して並列に設けられている。端子IN1、IN2に入力される高周波信号の振幅が増幅不要な程度に大きい場合、高周波信号は、LNA_1で増幅されること無く、バイパス経路BP1を介して出力端子LNAout1またはLNAout2から出力される(バイパスモード)。一方、高周波信号の振幅が増幅を必要とする場合には、高周波信号は、LNA_1に入力される(ゲインモード)。
【0073】
入力スイッチ回路SWin1は、第5スイッチSW5と、第6スイッチSW6と、第8〜第12スイッチSW8〜SW12とを備えている。
【0074】
第5スイッチSW5は、第1端子IN1とバイパス経路BP1との間に接続されている。第5スイッチSW5は、バイパスモードにおいて、第1端子IN1とバイパス経路BP1とを接続するときにオンになる。
【0075】
第6スイッチSW6は、第2端子IN2とバイパス経路BP1との間に接続されている。第6スイッチSW6は、バイパスモードにおいて、第2端子IN2とバイパス経路BP1とを接続するときにオンになる。
【0076】
n+1個の第8スイッチSW8が第1端子IN1とグランドとの間に直列接続されている。nは1以上の整数である。第3実施形態では、n=1である。従って、2つの第8スイッチSW8が第1端子IN1とグランドとの間に直列接続されている。第8スイッチSW8は、第1端子IN1を用いないときにオンになり、第1端子IN1をグランドへシャントする。
【0077】
n+1個の第9スイッチSW9が第2端子IN2とグランドとの間に直列接続されている。第3実施形態ではn=1であるので、2つの第9スイッチSW9が第2端子IN2とグランドとの間に直列接続されている。第9スイッチSW9は、第2端子IN2を用いないときにオンになり、第2端子IN2をグランドへシャントする。
【0078】
n+1個の第10スイッチSW10が中間端子SWout1とグランドとの間に直列接続されている。第3実施形態ではn=1であるので、2つの第10スイッチSW10が中間端子SWout1とグランドとの間に直列接続されている。第10スイッチSW10は、バイパスモードにおいてLNA_1を用いないときにオンになり、中間端子SWout1および入力端子LNAin1をグランドへシャントする。
【0079】
第11スイッチSW11は、第1端子IN1と中間端子SWout1との間に接続されている。第11スイッチSW11は、ゲインモードにおいて、第1端子IN1とLNA_1とを接続するときにオンになる。
【0080】
第12スイッチSW12は、第2端子IN2と中間端子SWout1との間に接続されている。第12スイッチSW12は、ゲインモードにおいて、第2端子IN2とLNA_1とを接続するときにオンになる。
【0081】
このような構成により、入力スイッチ回路SWin1は、第1および第2端子IN1、IN2をバイパス経路BP1または中間端子SWOUT1(LNA_1)に任意に接続することができる。入力スイッチ回路SWin1の動作については、図6および図7を参照して後で説明する。
【0082】
第7スイッチSW7および第15スイッチSW15は、バイパス経路BP1に設けられている。第7スイッチSW7はバイパス経路BP1とグランドとの間に接続されている。第7スイッチSW7は、ゲインモードにおいて、バイパス経路BP1をグランドにシャントするときにオンになる。第7スイッチSW7は、直列接続されたn個(n≧1)のスイッチであってもよい。
【0083】
第15スイッチSW15は、バイパス経路BP1中に設けられており、第5および第6スイッチSW5、SW6とスルースイッチ回路TSW1、TSW2との間に接続されている。第15スイッチSW15は、バイパスモードにおいて、端子IN1またはIN2を出力端子LNAout1またはLNAout2に接続するときにオンになる。
【0084】
第13スイッチSW13および第14スイッチSW14は、LNA_1の出力とスルースイッチ回路TSW1、TSW2との間に設けられている。第13スイッチSW13はLNA_1とスルースイッチ回路TSW1、TSW2との間に接続されている。第13スイッチSW13は、ゲインモードにおいて、LNA_1を出力端子LNAout1またはLNAout2に接続するときにオンになる。
第14スイッチSW14は、LNA_1の出力とグランドとの間に設けられている。第14スイッチSW14は、バイパスモードにおいて、LNA_1の出力をグランドにシャントするときにオンになる。
【0085】
スルースイッチ回路TSW1は、出力端子LNAout1とバイパス経路BP1およびLNA_1との間に接続されている。スルースイッチ回路TSW2は、出力端子LNAout2とバイパス経路BP1およびLNA_1との間に接続されている。スルースイッチ回路TSW1は、出力端子LNAout1を、バイパス経路BP1またはLNA_1に任意に接続することができる。スルースイッチ回路TSW2は、出力端子LNAout2を、バイパス経路BP1またはLNA_1に任意に接続することができる。スルースイッチ回路TSW1、TSW2の内部構成は、第2実施形態のスルースイッチ回路TSW11のそれと同様でよい。
【0086】
シャントスイッチ回路SSW1は、出力端子LNAout1とグランドとの間に接続されている。シャントスイッチ回路SSW1は、出力端子LNAout1を用いない場合にオン状態になる。シャントスイッチ回路SSW2は、出力端子LNAout2とグランドとの間に接続されている。シャントスイッチ回路SSW2は、出力端子LNAout2を用いない場合にオン状態になる。シャントスイッチ回路SSW1、SSW2の内部構成は、第2実施形態のシャントスイッチ回路SSW1のそれと同様でよい。
【0087】
中間端子SWout1は、入力端子LNAin1と端子IN1、IN2との間に設けられている。中間端子SWout1は、入力端子LNAin1に外部インダクタ素子Lext1を介して接続可能となっている。外部インダクタ素子Lext1が接続されることによって、端子IN1、IN2は、LNA_1に外部インダクタ素子Lext1を介して接続可能となる。
【0088】
ここで、第8スイッチSW8の個数は、第7スイッチSW7の個数nから1だけ多い数(n+1)である。これは、端子IN1またはIN2からグランドまでに並列接続されるスイッチの個数をスイッチSW8とスイッチSW5、SW7とにおいて等しくするためである。例えば、端子IN1からグランドまでの間に、2つのスイッチSW8が直列接続されている。また、端子IN1からグランドまでの間に、2つのスイッチSW5、SW7が直列接続されている。従って、第8スイッチSW8の個数は、第7スイッチSW7の個数nに第5スイッチSW5の個数1を足した数(n+1)となる。これにより、それぞれ同数のスイッチ(2つのSW8)およびスイッチ(SW5、SW7)が第1端子IN1とグランドとの間に、互いに並列に接続される。
【0089】
また、第5〜第9スイッチSW5〜SW9は、ゲート幅以外の特性(閾値電圧、ゲート長、ゲート絶縁膜の厚み等)においてほぼ等しいMOSFETである。これは、端子IN1、IN2にESDによる高電圧が印加されたときに、2つのスイッチSW5、SW7および2つのスイッチSW8がほぼ同時に導通(オン)するようにするためである。
【0090】
このように、端子IN1、IN2からグランドまでのスイッチの個数およびスイッチの特性を、スイッチSW5、SW7とスイッチSW8とにおいて等しくすることによって、スイッチSW5、SW7とスイッチSW8との両方がESD保護回路としても機能する。
【0091】
例えば、スイッチSW5〜SW15がオフ状態であるときに、第1端子IN1にESDによる高電圧が印加された場合、2つのスイッチSW5、SW8と、2つのスイッチSW7とが同時に導通する。
【0092】
これにより、ESDによる電流は、破線矢印Aで示すように、2つのスイッチSW5、SW8を通過する経路P1と、2つのスイッチSW7を通過する経路P2とを介してグランドへ流れる。このように、ESDによる電流は、経路P1とそれに並列接続されるP2とに流れる。その結果、ESD保護素子として機能するスイッチのゲート幅を実質的に大きくすることができ、ESDによる電流を流し易くする。
【0093】
このように、2つのスイッチSW5、SW8と2つのスイッチSW7とがESD保護素子として機能することによって、ESD保護素子を別途設けること無く、ESD耐性を向上させることができる。
【0094】
尚、端子IN2にESDによる高電圧が印加された場合には、端子IN2からグランドまでの間にある2つのスイッチSW6、SW7と2つの第9スイッチSW9とが同時に導通する。これにより、端子IN2においても、ESD保護素子を別途設けること無く、ESD耐性を向上させることができる。
【0095】
また、中間端子SWout1にESDによる高電圧が印加された場合には、中間端子SWout1からグランドまでの間にある2つの第10スイッチSW10とが導通する。これにより、中間端子SWout1においても、ESD保護素子を別途設けること無く、ESD耐性を向上させることができる。
【0096】
次に、ゲインモードおよびバイパスモードの動作を説明する。
図6は、ゲインモードにおけるLNAの動作を示す図である。図7は、バイパスモードにおけるLNAの動作を示す図である。図6および図7において、スイッチSW5〜SW15、TSW1〜TSW4、SSW1、SSW2は簡略化して示されている。尚、以下、端子IN1、IN2に対応するスイッチSW5〜SW15と端子IN3、IN4に対応するスイッチSW5〜SW15とを区別するために、端子IN1、IN2に対応するスイッチはSW5_1〜SW15_1とし、端子IN3、IN4に対応するスイッチはSW5_2〜SW15_2と表示する。
【0097】
(ゲインモード)
図6では、端子IN2に入力された高周波信号が、LNA_1で増幅されて出力端子LNAout1から出力される。また、端子IN4に入力された高周波信号が、LNA_2で増幅されて出力端子LNAout2から出力される。
【0098】
端子IN2からの高周波信号をLNA_1へ入力し、増幅された高周波信号を出力端子LNAout1へ伝達するために、スイッチSW12_1、SW13_1、TSW1がオンになる。端子IN2または出力端子LNAout1とグランドとをアイソレーションさせるために、スイッチSW9_1、SW10_1、SW14_1、SSW1がオフとなっている。また、高周波信号が端子IN1、出力端子LNAout2およびバイパス経路BP1へ進入しないように、スイッチSW5_1、SW6_1、SW11_1、SW15_1、TSW2がオフとなり、スイッチSW7_1、SW8_1がオンとなる。
【0099】
端子IN4からの高周波信号をLNA_2へ入力し、増幅された高周波信号を出力端子LNAout2へ伝達するために、スイッチSW12_2、SW13_2、TSW4がオンになる。端子IN4または出力端子LNAout2とグランドとをアイソレーションさせるために、スイッチSW9_2、SW10_2、SW14_2、SSW2がオフとなっている。また、高周波信号が端子IN3、出力端子LNAout1およびバイパス経路BP2へ進入しないように、スイッチSW5_2、SW6_2、SW11_2、SW15_2、TSW3がオフとなり、スイッチSW7_2、SW8_2がオンとなる。
【0100】
このように、ゲインモードでは、端子IN2に入力された高周波信号は、LNA_1で増幅されて出力端子LNAout1から出力され得る。また、端子IN4に入力された高周波信号は、LNA_2で増幅されて出力端子LNAout2から出力され得る。
【0101】
図示しないが、上記スイッチを切り替えることによって、端子IN2に入力された高周波信号を、LNA_1で増幅して出力端子LNAout2から出力することもできる。端子IN4に入力された高周波信号を、LNA_2で増幅して出力端子LNAout1から出力こともできる。
【0102】
さらに、上記スイッチを切り替えることによって、端子IN1に入力された高周波信号を、LNA_1で増幅して出力端子LNAout1またはLNAout2から出力することもできる。端子IN3に入力された高周波信号を、LNA_2で増幅して出力端子LNAout1またはLNAout2から出力することもできる。
【0103】
(バイパスモード)
図7では、端子IN2に入力された高周波信号が、バイパス経路BP1を介して出力端子LNAout2から出力される。また、端子IN4に入力された高周波信号が、バイパス経路BP2を介して出力端子LNAout1から出力される。
【0104】
端子IN2からの高周波信号を、バイパス経路BP1を介して出力端子LNAout2へ伝達するために、スイッチSW6_1、SW15_1、TSW2がオンになる。端子IN2またはバイパス経路BP1とグランドとをアイソレーションさせるために、スイッチSW9_1、SW7_1、SSW2がオフとなっている。また、高周波信号が端子IN1、出力端子LNAout1およびLNA_1へ進入しないように、スイッチSW5_1、SW11_1、SW12_1、SW13_1、TSW1がオフとなり、スイッチSW8_1、SW10_1、SW14_1がオンとなる。
【0105】
端子IN4からの高周波信号を、バイパス経路BP2を介して出力端子LNAout1へ伝達するために、スイッチSW6_2、SW15_2、TSW3がオンになる。端子IN4またはバイパス経路BP2とグランドとをアイソレーションさせるために、スイッチSW9_2、SW7_2、SSW1がオフとなっている。また、高周波信号が端子IN3、出力端子LNAout2およびLNA_2へ進入しないように、スイッチSW5_2、SW11_2、SW12_2、SW13_2、TSW4がオフとなり、スイッチSW8_2、SW10_2、SW14_2がオンとなる。
【0106】
このように、バイパスモードでは、端子IN2に入力された高周波信号は、増幅されずにバイパス経路BP1を介して出力端子LNAout2から出力され得る。また、端子IN4に入力された高周波信号は、増幅されずにバイパス経路BP2を介して出力端子LNAout2から出力され得る。
【0107】
図示しないが、上記スイッチを切り替えることによって、端子IN2に入力された高周波信号を、バイパス経路BP1を介して出力端子LNAout1から出力することもできる。端子IN4に入力された高周波信号を、バイパス経路BP2を介して出力端子LNAout2から出力こともできる。
【0108】
さらに、上記スイッチを切り替えることによって、端子IN1に入力された高周波信号を、バイパス経路BP1を介して出力端子LNAout1またはLNAout2から出力することもできる。端子IN3に入力された高周波信号を、バイパス経路BP2を介して出力端子LNAout1またはLNAout2から出力することもできる。
【0109】
以上のように、第3実施形態によるLNAは、入力スイッチ回路SWin1、SWin2、スイッチSW7がESD保護素子としての機能を兼ね備える。従って、ESD保護素子を別途設けることなく、ESD耐性を向上させることができる。第3実施形態は、さらに、第1および第2実施形態の効果も得ることができる。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0111】
1 LNA、LNAin 入力端子、LNAout 出力端子、FET1 第1トランジスタ、FET2 第2トランジスタ、Ls、Ld インダクタ素子、Cin、Cout、CB2 キャパシタ素子、Rd、RB1、RB2 抵抗素子、10 ESD保護素子、20 電源回路
図1
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図3
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図7