特開2018-201346(P2018-201346A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-201346(P2018-201346A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】作業車協調システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20181130BHJP
   G05D 1/02 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   A01B69/00 303Z
   A01B69/00 301
   G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-106868(P2017-106868)
(22)【出願日】2017年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】新海 敦
(72)【発明者】
【氏名】阪口 和央
(72)【発明者】
【氏名】島本 出
(72)【発明者】
【氏名】玉谷 健二
(72)【発明者】
【氏名】鈴川 めぐみ
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB06
2B043AB20
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB03
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA11
2B043EB17
2B043EB30
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
2B043EC18
2B043EC19
2B043EC20
2B043ED01
2B043ED16
2B043EE01
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301FF08
5H301FF11
5H301GG07
5H301QQ01
(57)【要約】
【課題】圃場で作業走行するときだけでなく、自動走行制御を実行するのに先立って必要となる準備作業においても、作業負担を軽減できるようにすることが望まれていた。
【解決手段】親作業車と、親作業車と併走する子作業車とによって、圃場内において対地作業を行うように構成され、親作業車は、自車及び子作業車夫々の圃場内での目標走行経路を設定する目標経路設定部18と、目標走行経路に沿って走行するように走行状態を制御する走行制御部17と、子作業車との間で相手を識別可能に且つ作業走行用情報を送受信可能に無線接続される親側通信部21とを備え、子作業車は、親側通信部21との間で相手を識別可能に且つ作業走行用情報を送受信可能に無線接続される子側通信部31と、親側通信部21から送信される目標走行経路に沿って走行するように、走行状態を制御する走行制御部17とを備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親作業車と、前記親作業車と併走する子作業車とによって、圃場内において対地作業を行うように構成され、
前記親作業車は、
自車及び前記子作業車夫々の圃場内での目標走行経路を設定する目標経路設定部と、
前記目標走行経路に沿って走行するように走行状態を制御する走行制御部と、
前記子作業車との間で相手を識別可能に且つ作業走行用情報を送受信可能に無線接続される親側通信部とを備え、
前記子作業車は、
前記親側通信部との間で相手を識別可能に且つ作業走行用情報を送受信可能に無線接続される子側通信部と、
前記親側通信部から送信される前記目標走行経路に沿って走行するように、走行状態を制御する走行制御部とを備えている作業車協調システム。
【請求項2】
前記目標経路設定部は、圃場のマップデータと作業用パラメータとに基づいて、自車及び前記子作業車夫々の前記目標走行経路を設定するように構成され、
前記親側通信部は、前記作業走行用情報として、前記圃場のマップデータと前記目標走行経路とを前記子側通信部に送信する請求項1に記載の作業車協調システム。
【請求項3】
前記親作業車及び前記子作業車の夫々に種々の情報を表示可能な表示部が備えられ、
前記各表示部は、前記圃場と前記目標走行経路とをマップ上に表示する請求項2に記載の作業車協調システム。
【請求項4】
前記親作業車及び前記子作業車のうちのいずれか一方が有人操縦式であり、他方が無人操縦式である請求項1から3のいずれか1項に記載の作業車協調システム。
【請求項5】
前記親作業車は、無線接続によって、複数の作業車のうちのいずれか1つの作業車を前記子作業車として設定する子機設定部を備えている請求項1から4のいずれか1項に記載の作業車協調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親作業車と、前記親作業車と併走する子作業車とによって、圃場内において対地作業を行うように構成されている作業車協調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の作業車協調システムにおいて、従来では、先行する親作業車が運転者の手動操作により設定経路に沿って走行するように操縦操作が行われ、追従する子作業車は、親作業車が走行した移動経路に基づいて設定された目標設定経路に沿って走行するように自動走行制御されるものがあった(例えば、特許文献1参照)。この構成では、運転者は親作業車だけを運転操作すればよく、子作業車は親作業車に追従しながら自動走行するので、一人で複数台分の作業を同時に行うことができ、作業効率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−188351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来構成では、親作業車については運転者が全ての操縦操作を手動で行う必要があり、それだけ作業負担が掛かる不利な面があった。
【0005】
運転者の作業負担を軽減させるために、子作業車だけでなく親作業車についても予め設定された設定経路に沿って自動走行するように制御する構成が考えられる。この場合、親作業車及び子作業車の夫々に、走行経路を設定するための目標経路設定部を備え、各別に走行目標とすべき走行経路を設定する必要がある。そして、親作業車及び子作業車の夫々において、例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)等の位置計測手段を用いて自車の位置を計測しながら、目標走行経路に沿って走行するように制御する構成である。
【0006】
このような構成であれば、圃場内において作業走行する際において運転者の作業負担を軽減することができるが、自動走行制御のための準備作業として、親作業車及び子作業車に備えられる目標経路設定部の夫々において、各別に走行経路を設定する作業が必要であり、自動走行制御を実行するのに先立って必要となる準備作業に手間がかかる不利がある。
【0007】
そこで、親作業車及びそれと併走する子作業車によって圃場内において作業を行うように構成されているものにおいて、圃場で作業走行するときだけでなく、自動走行制御を実行するのに先立って必要となる準備作業においても、作業負担を軽減できるようにすることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業車協調システムの特徴構成は、
親作業車と、前記親作業車と併走する子作業車とによって、圃場内において対地作業を行うように構成され、
前記親作業車は、
自車及び前記子作業車夫々の圃場内での目標走行経路を設定する目標経路設定部と、
前記目標走行経路に沿って走行するように走行状態を制御する走行制御部と、
前記子作業車との間で相手を識別可能に且つ作業走行用情報を送受信可能に無線接続される親側通信部とを備え、
前記子作業車は、
前記親側通信部との間で相手を識別可能に且つ作業走行用情報を送受信可能に無線接続される子側通信部と、
前記親側通信部から送信される前記目標走行経路に沿って走行するように、走行状態を制御する走行制御部とを備えている点にある。
【0009】
本発明によれば、親作業車及びそれと併走する子作業車は夫々、走行制御部を備えており、圃場内において予め設定された目標走行経路に沿って走行するように走行状態が制御される。その結果、子作業車だけでなく親作業車も自動走行させることが可能であり、圃場内での作業における運転者の操縦負担を軽減することが可能となる。
【0010】
親作業車に備えられる目標経路設定部は、自車の目標走行経路だけでなく子作業車の目標走行経路も設定する。設定された目標走行経路の情報は親側通信部から子側通信部に送信される。親作業車の走行制御部は、自車に備えられる目標経路設定部により設定された目標走行経路に沿って走行するように親作業車の走行状態を制御する。子作業車の走行制御部は、親作業車から送信された目標走行経路に沿って走行するように子作業車の走行状態を制御する。
【0011】
子作業車では目標走行経路の設定作業が不要であり、親作業車及び子作業車の夫々において各別に目標走行経路の設定作業を行う等の煩わしさがなく、自動走行制御のための準備作業においても作業負担を軽減することができる。
【0012】
従って、圃場で作業走行するときだけでなく、自動走行制御を実行するのに先立って必要となる準備作業においても、作業負担を軽減することが可能となった。
【0013】
本発明においては、前記目標経路設定部は、圃場のマップデータと作業用パラメータとに基づいて、自車及び前記子作業車夫々の前記目標走行経路を設定するように構成され、
前記親側通信部は、前記作業走行用情報として、前記圃場のマップデータと前記目標走行経路とを前記子側通信部に送信すると好適である。
【0014】
本構成によれば、目標経路設定部は、圃場のマップデータと、例えば親作業車及び子作業車夫々の作業幅や旋回走行性能等の作業用パラメータとを用いることで、対象となる圃場内において効率よく作業を行えるように各作業車夫々の目標走行経路を設定することが可能である。
【0015】
圃場のマップデータと目標走行経路とが子側通信部に送信され、親作業車及び子作業車はそれらの情報を互いに共有することができる。その結果、親作業車及び子作業車は、圃場で走行しているとき、圃場のマップデータと対応付けて走行状態を管理することができ、目標走行経路から大きく外れるおそれを少なくすることが可能になる等の利点がある。
【0016】
本発明においては、前記親作業車及び前記子作業車の夫々に種々の情報を表示可能な表示部が備えられ、
前記各表示部は、前記圃場と前記目標走行経路とをマップ上に表示すると好適である。
【0017】
本構成によれば、親作業車及び子作業車の夫々において、表示部に、圃場と、その圃場内において走行すべき目標走行経路とがマップ上に表示される。作業管理者は、表示部に表示されている表示内容を目視することにより、対象となる圃場に適した内容で走行制御が行われていることを容易に確認できる。
【0018】
本発明においては、前記親作業車及び前記子作業車のうちのいずれか一方が有人操縦式であり、他方が無人操縦式であると好適である。
【0019】
本構成によれば、目標走行経路を設定する準備作業段階においては、親作業車側で設定操作を行う必要があるが、圃場内で作業走行するときには、親作業車と子作業車のいずれか一方に作業管理者が搭乗して有人操縦式として機能する。作業管理者は、例えば、設定された目標走行経路に沿って走行するように手動操作したり、自動走行制御を実行しながら、走行状態を監視するとともに、手動にて修正操作を行う等の対応を取ることができる。
【0020】
本発明においては、前記親作業車は、無線接続によって、複数の作業車のうちのいずれか1つの作業車を前記子作業車として設定する子機設定部を備えていると好適である。
【0021】
本構成によれば、親作業車に備えられる子機設定部が、複数の作業車の中からいずれか1つを子作業車として設定する。例えば、複数の作業車に、無線接続された状態で識別が可能な識別情報が予め付与しておき、子機設定部が、無線接続によってそのうちのいずれかを指定して子作業車として設定することができる。
【0022】
従って、圃場の中に複数の作業車が存在するような場合であっても、そのうちのいずれかと組み合わせて作業車協調システムを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】作業車の側面図である。
図2】走行経路を示す圃場の平面図である。
図3】協調走行する作業車の平面図である。
図4】制御ブロック図である。
図5】制御動作のフローチャートである。
図6】制御動作のフローチャートである。
図7】複数の圃場の画像表示内容である。
図8】選択した圃場と基準局の位置とを示す画像表示内容である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明に係る作業車の位置計測装置の実施形態を、作業車として走行車体の後部に対地作業装置である耕耘装置を備えた作業車(トラクタ)に適用した場合について説明する。具体的には、この実施形態では、2台の作業車が併走することによって圃場内において対地作業を能率よく行えるようにした作業車協調システムに適用した場合について説明する。
【0025】
図2,3に示すように、親作業車1と、親作業車1と併走する子作業車2とによって、圃場内において対地作業を行うように構成されている。圃場での作業では、一般に、圃場の中央側に位置する中央作業地CLと、その中央作業地CLの周囲で畦に沿って規定される枕地HLとに区分けされる。中央作業地CLでは、親作業車1及び子作業車2の夫々が、予め設定された目標走行経路に沿って走行して、往復走行によって対地作業が行われる。詳細については、後述するが、親作業車1が先行して走行し、その横側を親作業車1の作業跡に対して子作業車2の作業跡が所定量重複して子作業車2が走行するように走行制御が行われる。
【0026】
〔全体構成〕
親作業車1と子作業車2とは、後述するような制御構成が一部異なるが、その他の構成は同じである。図1に示すように、向き変更可能な左右一対の前輪3aと、向き固定の左右一対の後輪3bとを備えて、直進走行並びに旋回走行が可能に4輪式の走行車体4が構成されている。走行車体4の中央部に操縦部5が形成されている。操縦部5はキャビン6によって覆われている。走行車体4の後部には、リンク機構7を介して昇降用油圧シリンダ(図示せず)によって駆動昇降自在に対地作業装置としての耕耘装置9が連結されている。操縦部5の前部にステアリングホイール11や図示しない各種操作レバー等が備えられる。操縦部5の後部には運転者が着座する運転座席12が備えられている。
【0027】
走行車体4の前部のボンネット13内にエンジン14が搭載され、エンジン14の動力が図示しない伝動機構を介して前後輪3a,3bに伝達されて走行駆動される。エンジン14の動力は、伝動機構を介して耕耘装置9に伝達されて耕耘装置9が駆動される。伝動機構は、図示はしないが、電子制御式に構成された変速装置、前後進切換装置、及び、ブレーキ等を備え、車速を変更自在で且つ車体進行方向を変更可能に構成されている。又、走行車体4は前輪3aの操向角を変更操作自在に構成されている。図示はしないが、走行車体4には、耕耘装置9に対する伝動系に動力伝達を入切自在な作業クラッチ、車速を検出する車速センサ、前輪の操向角を検出する操向角センサ、車体の近くに存在する障害物を検知する障害物検知センサ等の各種センサも備えられている。
【0028】
〔親作業車の制御構成〕
図4に示すように、親作業車1には、上記したような伝動機構、前輪3aの操向状態、耕耘装置9の作業状態等を制御する制御装置としての親機コントローラ15が備えられている。親機コントローラ15は、GPSの測位情報に基づいて自車の位置を求める自車位置算出部16と、自車位置算出部16の算出結果に基づいて車体が設定経路に沿って走行するように車体の走行状態を制御する走行制御部17と、圃場内での目標走行経路を設定する目標経路設定部18と、基準局19の位置を管理する基準局管理部20と、種々の情報を通信可能な親側の通信部21(親側通信部)とを備えている。自車位置算出部16、走行制御部17、目標経路設定部18、基準局管理部20の夫々は、ハードウエアとの連携動作を行うこともあるが、実質的にはコンピュータプログラムによって実現する。通信部21は、電波等により無線情報を送信するための装置等からなり、子作業車2との間で相手を識別可能に且つ作業走行用情報を送受信可能に無線接続される。
【0029】
自車位置算出部16は、周知技術であるRTK―GPS(リアルタイムキネマティック方式GPS)を用いて、地上側に設置された基準局19から送信される送信情報、及び、複数のGPS衛星22からの電波の受信情報に基づいて、自車の位置を求める位置算出処理を実行するように構成されている。親作業車1のキャビン6の上部にGPS衛星22からの電波を受信するGPSアンテナ23と、GPSアンテナ23で受信した情報を処理して制御装置に送信するGPSデータ処理部24とが備えられている。このGPSデータ処理部24には、地上側に位置固定状態で設置された基準局19から送信される送信情報を受信する受信部25が備えられている。
【0030】
図1に示すように、基準局19は、親作業車1と同様なGPSアンテナ26と、GPSデータ処理部27と、GPSデータ処理部27にて求めた自己の位置データを外部に無線送信する送信部28とを備えている。親作業車1におけるGPSデータ処理部24に備えられた受信部25が、基準局19の送信部28から送信される情報を受信するように構成されている。
【0031】
基準局19は、作業すべき圃場が複数存在する場合には各圃場に対して各別に設置される。この基準局19は、RTK―GPSによって当該圃場内での作業車の位置を計測する際に、測位精度を向上させるために、常に予め正確な位置が判明している箇所に設置する必要がある。
【0032】
基準局19は、持ち運び可能であり地面上の任意の箇所に設置することができるように構成されている。このように構成することで、複数の圃場において基準局19を共用することにより低コスト化を図ることが可能である。基準局19は、運搬車等により積載して移動可能であり、GPS衛星22からの電波を受信し易くするために、例えば、圃場に比べて高い位置にあり、安定した姿勢で載置支持可能な箇所に設置される。
【0033】
このように持ち運び可能で地面上の任意の箇所に設置することが可能な基準局19であれば、作業者が前回の設置位置と異なる位置に誤って設置するおそれがある。そこで、基準局19の位置を管理する基準局管理部20が備えられている。
【0034】
基準局管理部20は、作業対象となる圃場のマップデータと当該圃場に対応する基準局19の位置データとを対応付けて管理するように構成されている。圃場のマップデータとしては、予め設定されている地図データを外部の装置から読み込み設定してもよく、あるいは、対象となる圃場において、作業車を周縁部に沿って走行させながらGPSを用いて位置を計測してマップデータを作成するようにしてもよい。
【0035】
図4に示すように、基準局管理部20は、圃場に対応させて予め設定された基準局19の位置情報を記憶する記憶装置29を備えている。記憶装置29は、走行車体4に備えられたキースイッチ(図示せず)が切り操作されて、親機コントローラ15への電源供給が遮断されても、記憶内容を保持可能な不揮発性メモリにて構成されている。
【0036】
圃場と基準局19の位置とをマップ上に表示する表示装置としてのタッチパネル式の液晶表示器30が備えられている。液晶表示器30は、運転座席12に着座している運転者が目視可能なように操縦部5に備えられ、文字や画像等の種々の情報を表示可能に構成されている。
【0037】
基準局管理部20は、複数の圃場毎に各別に、圃場のマップデータと基準局の位置データとを管理するように構成され、且つ、液晶表示器30が、複数の圃場とそのうちの選択された圃場に対応する基準局の位置とを地図情報として表示するように構成されている。
【0038】
説明を加えると、図7に示すように、作業すべき圃場(A〜F)が複数存在する場合、上述したように、基準局19は各圃場に対して各別に設置される。夫々の基準局19はいずれのものも常に予め正確な位置が判明している箇所に設置する必要がある。基準局管理部20は、複数の圃場毎に各別に、圃場のマップデータと基準局19の位置データとを対応付けて管理するようになっている。例えば、複数の圃場のうちの1つの圃場(A)に親作業車1及び子作業車2が位置しているとき、図8に示すように、液晶表示器30にて、複数の圃場(A〜F)とそのうちの選択された圃場A(作業車が現在位置している圃場)のマップデータと、それに対応する基準局19の位置とを、地図情報として相対位置を目視にて判別可能に表示する。
【0039】
さらに、液晶表示器30は、圃場と、設定されている基準局19の位置と、基準局19の現在位置とをマップ上に表示する。図8に示すように、前回の作業において、基準局19の位置が設定されて記憶装置29にて記憶されている場合、その予め設定されて記憶されている設定位置(a)と、今回、新たに設置された基準局19の現在位置(b)とを、同一画面上に地図情報として表示する。尚、このとき、基準局19の位置情報は、GPSの単独測位による位置計測結果であるから測位精度はそれほど高くないが、記憶されている位置(a)と、新たに設置された基準局19の現在位置(b)とが大きく離間しているか否かを判断することができる。
【0040】
従って、基準局管理部20と液晶表示器30とにより、作業対象となる圃場のマップデータと当該圃場に対応する基準局19の位置データとを対応付けて管理する位置情報管理部100が構成されている。
【0041】
目標経路設定部18は、圃場のマップデータと作業用パラメータに基づいて、自車及び子作業車2夫々の目標走行経路を設定するように構成されている。作業用パラメータとしては、例えば、耕耘装置9の作業幅、走行車体4の最小旋回半径、親作業車1と子作業車2の重複作業幅の設定値等の種々のデータが用いられる。
【0042】
図2に示すように、親作業車1が先行して走行し、その横側を親作業車1の作業跡に対して子作業車2の作業跡が所定量重複して子作業車2が走行するように、目標走行経路が設定される。走行経路は、直線状の往路走行、転回(Uターン)走行、往路走行に対して一定間隔をあけて平行で且つ直線状の復路走行、転回(Uターン)走行の夫々を繰り返す形態となっている。枕地HLは、中央作業地CLの作業走行における転回領域となる。尚、図示はしていないが、枕地HLでは、その長手方向に沿う直線状の走行により対地作業が行われる。尚、親作業車1が先行して走行し、子作業車2が追従して走行する形態に限らず、子作業車2が先行して走行し、親作業車1が追従して走行する形態であってもよい。
【0043】
親作業車1に備えられる親機コントローラ15の目標経路設定部18が、自車の目標走行経路Tpだけでなく、子作業車2(他車)の目標走行経路Tcも設定する。図3に示すように、子作業車2の目標走行経路Tcは親作業車1の目標走行経路Tpに対して横にずれた状態で設定される。
【0044】
親側の通信部21は、作業走行用情報として、作業対象となる圃場のマップデータと、目標経路設定部18によって設定された、自車及び子作業車2夫々の目標走行経路Tc、Tpを子作業車2、具体的には後述する子側の通信部31(子側通信部)に送信する。
【0045】
走行車体4には、伝動機構を操作するための走行操作部32と、前輪3aの操向角を変更自在なステアリング操作部33とが備えられる。図示はしないが、走行操作部32は、変速装置、前後進切換装置、及び、ブレーキ等を操作可能な複数のアクチュエータを備えており、車速、車体進行方向等を変更操作可能に構成されている。ステアリング操作部33は、前輪3aの操向角等を操作可能な電動モータ等のアクチュエータを備えており、走行車体4の進行方向を直進、左旋回、右旋回の夫々に変更操作可能で且つ旋回時の前輪3aの操向角を任意に変更可能に構成されている。走行車体4には、作業クラッチや昇降シリンダ等を駆動操作する作業操作部(図示せず)も備えられている。
【0046】
走行制御部17は、目標経路設定部18により設定された目標走行経路Tpに沿って走行車体4が走行するように、走行操作部32とステアリング操作部33とを駆動制御する。
走行制御部17は、親作業車1が目標走行経路Tpの開始点にまで移動したのちに、開始が指令されると、親作業車1が設定された目標走行経路Tpに沿って移動するように、走行操作部32とステアリング操作部33を制御する。また、直進走行経路では耕耘作業を行い、旋回走行時には耕耘作業を行わないように、作業操作部を制御する。
【0047】
〔子作業車の制御構成〕
子作業車2には、親作業車1と同じように、GPSアンテナ23、GPSデータ処理部24、液晶表示器30、走行操作部32、ステアリング操作部33等を備えている。そして、親機コントローラ15と略同じ構成の子機コントローラ34が備えられている。
【0048】
子機コントローラ34は、親機コントローラ15と同様な、自車位置算出部16と、走行制御部17と、基準局管理部20と、子側の通信部31とを備えており、自車位置算出部16、走行制御部17、基準局管理部20の夫々は、ハードウエアとの連携動作を行うこともあるが、実質的にはコンピュータプログラムによって実現する。子側の通信部31は、電波等により無線情報を送信するための装置等からなり、親側の通信部21との間で相手を識別可能に且つ作業走行用情報を送受信可能に無線接続される。子機コントローラ34は、目標走行経路を設定する機能を備えていない。子機コントローラ34は、親機コントローラ15に備えられた目標経路設定部18にて設定された目標走行経路Tcに沿って走行するように走行状態を制御するように構成されている。
【0049】
〔制御内容〕
次に、図5,6のフローチャートを用いて、この実施形態における制御動作について説明する。
【0050】
RTK−GPSを作動させるために、作業対象となる圃場の近くに位置する基準局19を設定する(ステップ♯1、♯101)。この基準局19の設定は、親作業車1及び子作業車2の夫々において各別に行う。
【0051】
基準局19の設定は、図6に示すように行われる。基準局19の設定が開始されると、作業すべき圃場が複数存在する場合、図7に示すように複数の圃場が液晶表示器30に地図情報として表示される(ステップ♯11)。タッチパネル式の液晶表示器30を操作して、複数の圃場のうちの今回の作業の対象となる圃場を選択する(ステップ♯12)。圃場が選択されると、図8に示すように、選択された圃場のマップデータと、それに対応する基準局19の位置とを、地図情報として相対位置を目視にて判別可能に表示する。このとき、当該圃場について予め基準局19の位置が設定されている場合には、圃場のマップデータと、設定されている基準局19の位置(a)と、新たに設置された基準局19の位置(b)とを画面上に表示する(ステップ♯13,14)。
【0052】
予め設定されている基準局19の設定位置と、新たに設置された基準局19の現在位置とが、設定距離以上離れている場合には、図示はしていないが、警告表示により作業者に警告する(ステップ♯15,16)。作業者は、基準局19を予め設定されている位置に合わせるように再設置させるようにしてもよく、あるいは、今回新たに設置した位置に更新設定するようにしてもよい。設定位置と現在位置とが設定距離以上離れているが、新たな設置位置に更新設定する場合等においては、図示はしていないが、タッチパネル式の液晶表示器30の操作部を操作することにより指令することができる(ステップ♯17)。当該圃場について予め基準局19の位置が設定されていない場合も同様に設定することができる(ステップ♯18)。設定位置と現在位置とが設定距離以上離れていても、更新設定しない場合には、ステップ11に戻る。
【0053】
親作業車1では、基準局19の設定が終了すると、次に、目標走行経路設定処理が行われる(ステップ♯2)。上述したように、このとき、自車(親作業車1)の目標走行経路Tpだけでなく、子作業車2の目標走行経路Tcも設定する。具体的には、図2に示すように、子作業車2の目標走行経路Tcは親作業車1の目標走行経路Tpに対して設定量だけ横にずれた状態で設定される。目標走行経路Tp、Tcは、親作業車1と、親作業車1と併走する子作業車2とによって、圃場内において対地作業を行うものであればよく、図2に示すような経路に限定されるものではない。
【0054】
目標走行経路Tp,Tcが設定されると、親作業車1及び子作業車2夫々について設定された目標走行経路Tp,Tcのデータを通信部21から子側の通信部31に向けて無線通信にて送信する(ステップ♯3)。子側の通信部31は、親側の通信部21から送信されるデータを受信する(ステップ♯102)。
【0055】
目標走行経路Tp、Tcが設定された後は、親作業車1及び子作業車2の夫々において、走行制御に移行して、親作業車1について設定された目標走行経路Tp,Tcに沿って走行するように、走行状態を制御する(ステップ♯4,103)。すなわち、走行車体4が目標走行経路Tp,Tcに沿って走行するように、走行操作部32の作動を制御する。中央作業地CLにて直進で走行するときは耕耘装置9による耕耘作業を実行し、枕地HLにて旋回走行して転回するときは、耕耘作業を停止して耕耘装置9を上昇させるように、作業クラッチと昇降シリンダの作動を制御する。
【0056】
ステップ♯1にて、基準局19が設定されていなければ、ステップ2に進むことができないので、ステップ4の走行制御に移行することがない。従って、本実施形態では、位置情報管理部100に基準局19の位置情報が設定されていなければ、自車位置算出部16は位置算出処理を実行しない構成となっている。
【0057】
図示はしていないが、親作業車1の親機コントローラ15は、目標走行経路Tpに沿って自動走行するように走行制御部17により走行操作部32を制御する自動モードと、このような自動制御を実行せず、手動操縦にて車体を走行させることが可能な手動モードとに切り換え可能に構成されている。
【0058】
親機コントローラ15を手動モードに切り換えた状態で、操縦部5に作業者が搭乗して、手動で操縦操作を行うことができる。このように親作業車1が有人操縦式に構成される場合であっても、子作業車2は無人操縦式であり、親作業車1に追従して走行するように、目標設定経路に沿って自動で走行制御が行われる。 尚、親機コントローラ15を自動モードに切り換えた状態で作業者が搭乗して走行状態を監視したり、手動にて修正操作を行うことも可能である。
【0059】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、子機コントローラ34が目標走行経路を設定する機能を備えていない構成としたが、子機コントローラ34を親機コントローラと同一の構成のものを共用する構成とし、目標走行経路を設定する機能を利用しないようにしてもよい。これにより、親作業車と子作業車とは同じ構成であり、同一構成の作業を共用することができる。
【0060】
(2)上記実施形態では、親側通信部が、圃場のマップデータと目標走行経路とを子側通信部に送信するようにしたが、目標走行経路だけを送信するようにしてもよい。
【0061】
(3)上記実施形態では、表示部として液晶表示器30を備える構成としたが、有機EL形表示装置、蛍光表示管等、他の型式の表示器でもよい。
【0062】
(4)上記実施形態では、親作業車及び子作業車の夫々に表示部(液晶表示器30)が備えられる構成としたが、親作業車にのみ表示部を備え、子作業車には表示部を備えない構成としてもよい。
【0063】
(5)上記実施形態では、親作業車と子作業車とが予め決められた組み合わせで設定されていたが、この構成に代えて、親作業車が、無線接続によって、複数の作業車のうちのいずれか1つの作業車を子作業車として設定する子機設定部(図示せず)を備える構成としてもよい。例えば、複数の作業車は、無線接続状態で識別可能な識別情報が予め備えられており、親作業車の子機設定部が、無線接続によって、いずれかの作業車を特定して子作業車として設定する構成である。
【0064】
(6)上記実施形態では、子作業車が1台である場合を示したが、子作業車が2台以上であってもよい。但し、この場合、親作業車が無線接続によって異なる子作業車を識別可能に構成しておく必要がある。
【0065】
(7)上記実施形態では、表示部(液晶表示器30)が作業車の操縦部5に固定された車載側の表示装置である例を示したが、このような構成に限らず、作業者が持ち運び可能な携帯型の端末機に備えられた表示装置を用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、例えば、トラクタ、田植機、コンバイン等、圃場で作業する作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 親作業車
2 子作業車
17 走行制御部
18 目標経路設定部
21 親側通信部
31 子側通信部
Tc,Tp 目標走行経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8