前記油脂(A)の15℃におけるSFCが20%以上であり、25℃におけるSFCが0%以上10%以下であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のホイップクリーム用油脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<ホイップクリーム用油脂組成物>
本発明のホイップクリーム用油脂組成物は、下記特徴(a)〜(d)を有する油脂(A)を含有する。
油脂(A)
(a)構成脂肪酸としてラウリン酸を30質量%以上含む。
(b)構成脂肪酸として炭素数18以上の不飽和脂肪酸を10質量%〜45質量%含む。
(c)トリグリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素数の合計が36である第1のトリグリセリドを4質量%〜18質量%含む。
(d)トリグリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素数の合計が42である第2のトリグリセリドを13質量%〜25質量%含む。
上記特徴(a)〜(d)を有する油脂(A)を含有する本発明のホイップクリーム用油脂組成物は、冷水分散性に優れた効果を示す。
【0024】
また、油脂(A)の特徴(a)に関し、油脂(A)は以下の特徴を有することがより好ましい。
構成脂肪酸として、ラウリン酸を30質量%〜50質量%、より好ましくは、35質量%〜45質量%含む。
【0025】
また、油脂(A)の特徴(b)に関し、油脂(A)は以下の特徴を有することがより好ましい。
構成脂肪酸として、炭素数18以上の不飽和脂肪酸を15質量%〜40質量%、より好ましくは15質量%〜35質量%、さらに好ましくは20質量%〜30質量%含む。
【0026】
また、油脂(A)は以下の特徴を有することがさらに好ましい。
構成脂肪酸として、炭素数16以上の飽和脂肪酸を5質量%〜15質量%、より好ましくは、10質量%〜15質量%含む。
【0027】
なお、油脂(A)の構成脂肪酸は、例えば、基準油脂分析試験法(2.4.1.2−2013(メチルエステル化法)および2.4.2.3−2013(キャピラリーガスクロマトグラフ法))を用いて分析することができる。
【0028】
また、油脂(A)の特徴(c)(d)に関し、油脂(A)は以下のトリグリセリド組成であることがより好ましい。
トリグリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素数の合計が36である第1のトリグリセリド(C36)が、好ましくは9質量%〜18質量%、さらに好ましくは11質量%〜17質量%
トリグリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素数の合計が42である第2のトリグリセリド(C42)が、好ましくは14質量%〜24質量%、さらに好ましくは16質量%〜22質量%
特徴(c)(d)に関し、以上の特徴を有する油脂(A)を含有する本発明のホイップクリーム用油脂組成物は、冷水分散性により優れた効果を示す。
【0029】
また、油脂(A)は以下のトリグリセリド組成を有することがより好ましい。
トリグリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素数の合計が34のトリグリセリド(C34)が、好ましくは1.5質量%〜11質量%、より好ましくは2質量%〜9質量%、さらに好ましくは3質量%〜7質量%
トリグリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素数の合計が38のトリグリセリド(C38)が、好ましくは5質量%〜17質量%、より好ましくは11質量%〜16質量%、さらに好ましくは12質量%〜15質量%
トリグリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素数の合計が40のトリグリセリド(C40)が、好ましくは6質量%〜12質量%、さらに好ましくは8質量%〜11質量%
トリグリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素数の合計が44のトリグリセリド(C44)が、好ましくは8質量%〜16質量%、さらに好ましくは9.5質量%〜14質量%
トリグリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素数の合計が46のトリグリセリド(C46)が、好ましくは3質量%〜12質量%、さらに好ましくは5質量%〜10質量%
トリグリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素数の合計が48のトリグリセリド(C48)が、好ましくは2質量%〜19質量%、より好ましくは4質量%〜15質量%、さらに好ましくは6質量%〜12質量%
以上のトリグリセリド組成を有する油脂(A)を含有する本発明のホイップクリーム用油脂組成物は、冷水分散性により優れた効果を示す。
【0030】
なお、油脂(A)のトリグリセリド組成は、例えば、基準油脂分析試験法(2.4.6.1−2013(ガスクロマトグラフ法))に従い、分析することができる。
【0031】
また、油脂(A)は、15℃におけるSFC(固体脂含量)(%、以下同じ)が48以下であり、25℃におけるSFCが10以下であることがより好ましい。
【0032】
また、油脂(A)は、15℃におけるSFCが20以上であり、25℃におけるSFCが0以上であることがより好ましい。
15℃におけるSFCが下限以上である油脂(A)を含有したホイップクリーム用油脂組成物を用いて製造したホイップクリームは起泡性により優れる。
【0033】
また、油脂(A)の5℃のSFCは好ましくは55〜68であり、さらに好ましくは57〜66であり;10℃のSFCは好ましくは44〜56であり、さらに好ましくは47〜54であり;15℃のSFCは好ましくは30〜43であり、さらに好ましくは33〜40であり;20℃のSFCは好ましくは11〜24であり、さらに好ましくは14〜21であり;25℃のSFCは好ましくは0〜9であり、さらに好ましくは0〜6であり;30℃のSFCは好ましくは0である。
【0034】
なお、油脂(A)のSFCは、例えば、基準油脂分析試験法(2.2.9−2013 固体含有量(NMR法))に従い、分析することができる。
【0035】
油脂(A)の融点は、23℃〜27℃であることが好ましく、23.5℃〜26.5℃であることがさらに好ましく、24℃〜26.5℃であることがより好ましい。
【0036】
なお、油脂(A)の融点は、例えば、基準油脂分析試験法(2.2.4.2−1996 融点 上昇融点)に従い、分析することができる。
【0037】
前記油脂(A)はエステル交換油であることが好ましく、特にパーム核分別油の低融点部のエステル交換油であることがより好ましい。
ここで、パーム核分別油の低融点部のエステル交換油は、パーム核分別油の低融点部をエステル交換して得られる油脂である。
【0038】
パーム核分別油の低融点部とは、パーム核油を常法により高融点部と低融点部に2分割して得られた低融点部である(分別収率は50%〜70%)。前記低融点部の融点は、22℃〜26℃であることが好ましく、22.5℃〜25.5℃であることがさらに好ましく、23℃〜25℃であることがより好ましい。
【0039】
エステル交換は、当該技術分野で公知の方法で行うことができる。本発明では、ランダムエステル交換反応方法により得られたエステル交換油を用いることが好ましい。
ランダムエステル交換は、例えば、ナトリウムメチラート、水酸化ナトリウム等を触媒としてエステル交換を行う化学的な方法、非選択的リパーゼ等を触媒としてエステル交換を行う酵素的な方法に従って行うことができる。本発明では、特に、化学的な方法でランダムエステル交換反応を行うことにより得られたエステル交換油を用いることが、より好ましい。
【0040】
本発明の油脂組成物における前記油脂(A)の含有量は特に制限されないが、油脂組成物を構成する油脂において最も大きい割合を占めることが好ましく、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上である。
本発明の油脂組成物における前記油脂(A)の含有量は100質量%であってもよいが、好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0041】
本発明の油脂組成物は、ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物、これから調製されるホイップクリームに求められる基本的性質を損なわない限り、前記油脂(A)以外の油脂を含んでいてもよい。前記油脂(A)以外の油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、ハイオレイックナタネ油、米油、ハイオレイックひまわり油、並びにこれらを硬化、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。
【0042】
本発明の油脂組成物は前記油脂(A)以外のラウリン系油脂をさらに含有することが好ましい。前記ラウリン系油脂としては、ヤシ油、パーム核油の他、これらを原料として得られる油脂であれば、特に制限なく用いることができ、ヤシ油、パーム核油の分別油;ヤシ油、パーム核油、これらの分別油の硬化油;ヤシ油、パーム核油、これらの分別油を主要原料(50質量%以上)として得られるエステル交換油であってもよい。また、これらのうち2種以上の油脂を用いてもよい。
前記ラウリン系油脂としては、さらにホイップクリームの保形性を高める観点からは、ヤシ油の硬化油及びパーム核油の硬化油から選ばれる油脂を用いることが好ましく、パーム核油の硬化油を用いることがさらに好ましい。
また、前記ラウリン系油脂としては、口どけの良さを重視する観点からは、ヤシ油、パーム核油、ヤシ油の硬化油から選ばれる油脂を用いることが好ましい。
【0043】
本発明の油脂組成物における油脂(A)と、前記ラウリン系油脂との質量比は、好ましくは19:1〜1:1、より好ましくは9:1〜2:1、さらに好ましくは6:1〜3:1である。
このような範囲で組み合わせることで、ホイップクリームの凍結解凍による硬度変化を調整することができる。
【0044】
本発明の油脂組成物の組成として、例えば、以下が好ましく例示される。
油脂(A)を50質量%〜95質量%含み、好ましくは70質量%〜90質量%含み、さらに好ましくは75質量%〜85質量%含み;
油脂(A)以外のラウリン系油脂を5質量%〜50質量%含み、好ましくは10質量%〜30質量%含み、さらに好ましくは15質量%〜25質量%含む。
【0045】
また、本発明の油脂組成物において、前述した油脂(A)、前記ラウリン系油脂以外の油脂の含有量は、好ましくは20質量%未満であり、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
油脂(A)、前述したラウリン系油脂以外の油脂の含有量が上限以下である本発明の油脂組成物を含有するホイップクリームは、乳脂肪の乳風味を際立たせる効果を有する。
【0046】
また、本発明の油脂組成物において、非エステル交換油かつ非硬化油である油脂の含有量は好ましくは30質量%未満であり、さらに好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。非エステル交換油かつ非硬化油である油脂の含有量が上限以下である本発明の油脂組成物を含有するホイップクリームは、造花性に優れる。
非エステル交換油かつ非硬化油である油脂としては、例えば、パーム核油、パーム中融点部、パーム核高融点部、ヤシ油を挙げることができる。
【0047】
本発明の油脂組成物の組成として、例えば、以下が好ましく例示される。
油脂(A)を70質量%〜100質量%含み、好ましくは75質量%〜100質量%含み、さらに好ましくは80質量%〜100質量%含み;
非エステル交換油かつ非硬化油である油脂を0質量%〜30質量%含み、好ましくは0質量%〜25質量%含み、さらに好ましくは0質量%〜20質量%含む。
【0048】
また、本発明の油脂組成物において、融点45℃以上の高融点油脂の合計含有量は、好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは実質的に含まない。
【0049】
また、本発明の油脂組成物において、トランス脂肪酸は、実質的に含まないことが好ましい。
【0050】
本発明の油脂組成物の融点は、好ましくは29℃以下であり、より好ましくは29℃以下であり、さらに好ましくは27℃以下である。また、油脂組成物の融点は、好ましくは24℃以上、より好ましくは25℃以上である。
【0051】
また、本発明の油脂組成物の5℃のSFCは好ましくは55〜70であり、より好ましくは60〜68であり、さらに好ましくは62〜66であり;10℃のSFCは好ましくは45〜60であり、より好ましくは47〜58であり、さらに好ましくは49〜54であり;15℃のSFCは好ましくは25〜48であり、より好ましくは30〜45であり、さらに好ましくは35〜42であり;20℃のSFCは好ましくは13〜28であり、より好ましくは14〜25であり、さらに好ましくは15〜22であり;25℃のSFCは好ましくは0〜10であり、さらに好ましくは1〜8であり;30℃のSFCは好ましくは0である。
【0052】
<ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物>
本発明のホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物は、水相と油相からなり、上述した本発明の油脂組成物(植物性油脂)を油相に含む。水相と油相の質量比は適宜設定することができるが、好ましくは80:20〜50:50、より好ましくは70:30〜55:45である。
前記油相は、油脂として本発明の油脂組成物(植物性油脂)に加えて乳脂肪をさらに含む形態とすることが好ましい。乳脂肪としてバターオイル、バター、生クリーム、牛乳等を由来とする乳脂肪が挙げられる。特に、生クリームを由来とする乳脂肪を用いるのが好ましい。
乳脂肪と植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)の混合比は、質量比で乳脂肪:植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)が0:100〜70:30、より好ましくは20:80〜50:50、さらに好ましくは30:70〜40:60の範囲内とすることが好ましい。
【0053】
本発明の水中油型乳化油脂組成物は、一般的な製造方法により製造できるが、以下、代表的な方法を詳述する。
まず、使用する乳化剤が親油性である場合は原料となる油脂の一部または全部に、乳化剤を添加し溶解ないし分散させて油相部を調製する。このような親油性の乳化剤としては、例えばレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド等従来公知の乳化剤のうち低HLBの乳化剤が例示でき、本発明においてはこれらのいずれを適宜組み合わせて使用してもよい。
また、バターオイル、バターを由来とする乳脂肪を用いる場合には、これらを必要に応じて加熱融解して油相部を調製する。乳脂肪を含む油相部と、上述した植物性油脂からなる本発明のホイップクリーム用油脂組成物を含む油相部は、混合した後、水相部に添加してもよく、また各々添加してもよい。また、生クリーム、牛乳を用いる場合には、予め水相部と混合してから本発明のホイップクリーム用油脂組成物を含む油相部を混合しても良い。
【0054】
ここで、水相部は、水に対し、カゼインナトリウム、脱脂粉乳、糖類や必要に応じて、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸ナトリウム、トリポリりん酸ナトリウム、第二りん酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ヘキサメタりん酸ナトリウム、増粘多糖類、香料などを添加し調製することができる。
【0055】
そして、油相部と水相部を50℃から85℃に加温し、混合して予備乳化を行い、予備乳化後、ホモゲナイザーにて均質化し、バッチ式殺菌法、または間接加熱方式あるいは直接加熱方式によるUHT滅菌処理法にて滅菌し、冷却しエージングすることにより、ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物を製造することができる。ここで、殺菌工程は、均質化工程の前に行ってもよい。また、均質化工程を複数回行う場合、各回の均質化圧力は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0056】
<ホイップクリーム>
本発明の水中油型乳化油脂組成物は、常法によりホイップすることでホイップクリームとすることができる。
【0057】
また、ホイップ済みクリームを三角袋に詰めた状態若しくはホイップ済みクリームを三角袋から絞り成形した状態で、常法で−20℃以下に冷却することにより、冷凍ホイップクリームとすることができる。
本発明の油脂組成物又は水中油型乳化油脂組成物は、冷凍ホイップクリームに用いることが好ましい。
【0058】
そして、前記冷凍ホイップクリームは、冷蔵庫内に移して解凍する等の常法により解凍することで、飲食品に用いることができる。具体的には、前記冷凍ホイップクリームは、パンケーキ、パフェなどのデザートにトッピングする形態、若しくはコーヒー、抹茶、紅茶、ココアなどの飲料に載せる形態として用いることができる。なかでも、前記冷凍ホイップクリームを冷たい飲料に載せる形態とすることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を用いて、より詳細に本発明について説明する。本実施例において、%(パーセント)による表記は、特に断らない限り質量を基準としたものである。
【0060】
実施例に用いた油脂は以下の通りである。
・パーム核分別油の低融点部のエステル交換油(エステル交換油A1)(本発明における油脂(A)に相当)
パーム核油を分別により液状画分(分別収率70%)と結晶画分(分別収率30%)に分画し、液状画分をパーム核油の低融点部として得た。これを0.12%のナトリウムメチラートを触媒とし、90℃で30分間、ランダムエステル交換反応を行い、脱色、脱臭をすることにより得た(融点25℃)。
【0061】
・エステル交換油A2(本発明における油脂(A)に相当)
パーム核油90%、ハイオレイックひまわり油10%の混合油を0.12%のナトリウムメチラートを触媒とし、90℃で30分間、ランダムエステル交換反応を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点26℃)。
【0062】
比較例に用いた油脂は以下の通りである。
・パーム核分別油の低融点部(A1非エステル交換油)
パーム核油を分別により液状画分(分別収率70%)と結晶画分(分別収率30%)に分画し、液状画分を脱色、脱臭することにより得た(融点24℃)。
・エステル交換油B1
ヤシ油を0.12%のナトリウムメチラートを触媒とし、90℃で30分間、ランダムエステル交換反応を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点27℃)。
・エステル交換油B2
パーム核低融点部45%、パーム低融点部(パーム油を分別により液状画分と結晶画分に分画した際の液状画分。ヨウ素価57)25%、ハイオレイックひまわり油30%の混合油を0.12%のナトリウムメチラートを触媒とし、90℃で30分間、ランダムエステル交換反応を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点23℃)。
【0063】
得られたエステル交換油A1、エステル交換油A2、パーム核低融点部(A1非エステル交換油)、エステル交換油B1、エステル交換油B2の成分組成及び物性を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
また、実施例、比較例に用いた油脂は以下の通りである。
・パーム核高融点部
パーム核分別油の高融点部(パーム核油の結晶画分(分別収率30%))を脱色、脱臭することにより得た(融点31℃)
・ヤシ油
ヤシ油を脱色、脱臭することにより得た(融点25℃)。
・パーム核油
パーム核油を脱色、脱臭することにより得た(融点27℃)。
・パーム核極度硬化油
パーム核油の極度硬化処理を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点40℃)。
・パーム核部分硬化油
パーム核油の部分硬化処理を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点36℃)。
・ヤシ極度硬化油
ヤシ油の極度硬化処理を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点32℃)。
・エステル交換油C
ヤシ油50%、ハイエルシン酸菜種極度硬化油(ハイエルシン菜種油に極度硬化処理を行って得た油脂)50%の混合油を0.12%のナトリウムメチラートを触媒とし、90℃で30分間、ランダムエステル交換反応を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点48℃)。
・パーム中融点部
パーム分別油の中融点部を脱色、脱臭することにより得た(融点27℃)。
【0066】
本試験では、特定の油脂を含むホイップクリーム用油脂組成物を含む水中油型乳化油脂組成物を用いて調製したホイップクリームの口どけ、乳風味、造花性、冷水分散性、ホイップクリームの凍結解凍による硬度変化、ホイップクリームの凍結解凍によるオーバーランの変化を検証した。
【0067】
(1)水中油型乳化油脂組成物及びホイップクリームの調製
【0068】
[実施例1〜10]
表2に示した比率で油脂を混合した植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)24.54質量部に、飽和モノグリセリン脂肪酸エステル0.1質量部、不飽和モノグリセリン脂肪酸エステル0.05質量部、レシチン0.20質量部を加え、油相部を調製した。
【0069】
【表2】
【0070】
固体脂含量(SFC)
ホイップクリーム用油脂組成物(植物性油脂)の固体脂含量(SFC)を、基準油脂分析試験法(2.2.9−2013 固体脂含量(NMR法))に従って測定した。
【0071】
融点
ホイップクリーム用油脂組成物(植物性油脂)の融点を、基準油脂分析試験法(2.2.4.2−1996 融点 上昇融点)に従って測定した。
【0072】
一方、水22.9質量部と脱脂粉乳2質量部、飽和ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB11.6)0.3質量部、メタリン酸Na0.1質量部、生クリーム(乳脂肪分47%)34.81質量部を加えた後、分散させて水相部を調製した。油相部と水相部を混合し、70℃で予備乳化を行い、次いで、75kg/cm
2、20kg/cm
2の圧力下で均質化した。
次いで、85℃で加熱殺菌を行い、5℃〜10℃まで冷却後、5℃、1晩のエージングをして、ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物を得た。ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物におけるホイップクリーム用油脂組成物(植物性油脂)と乳脂肪の含有量はそれぞれ25%、16%である。
【0073】
このホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物1000gに砂糖60gを添加し、5.0℃に温調し、10分立て(硬度130〜150)までホバートミキサーにてホイップした。硬度は、ホイップしたクリームを45.5ml容器に入れ、ミクロペネメーター:RIGOSHA製のPENETRO METER使用、円スイ(1g)を使用し、平らにしたクリームへの円スイの針入度(単位は1/10mm)として測定した。
【0074】
[実施例11]
表2に示した比率で油脂を混合した植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)30.47質量部に、蔗糖脂肪酸エステル(HLB5)0.076質量部、乳酸モノグリセリン脂肪酸エステル0.188質量部、ソルビタン脂肪酸エステル0.76質量部、レシチン0.188質量部を加え、油相部を調製した。一方、水39.875質量部と水あめ15質量部、砂糖10質量部、脱脂粉乳3質量部、カゼインナトリウム1質量部、メタリン酸Na0.1質量部、カラギナン0.025質量部を加えた後、分散させて水相部を調製した。油相部と水相部を混合し、85℃で殺菌を兼ねた予備乳化を行い、次いで、150kg/cm
2、20kg/cm
2の圧力下で均質化し、5℃〜10℃まで冷却後、5℃、1晩のエージングをして、実施例のホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物を得た。このホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物1000gを5.0℃に温調し、10分立て(硬度130〜150)までホバートミキサーにてホイップした。硬度は、ホイップしたクリームを45.5ml容器に入れ、ミクロペネメーター:RIGOSHA製のPENETRO METER使用、円スイ(1g)を使用し、平らにしたクリームへの円スイの針入度(単位は1/10mm)として測定した。
【0075】
[比較例]
実施例において、表3に示す油脂を用いて植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)を調製し、実施例1と同様の方法で水中油型乳化油脂組成物及び、ホイップクリームを得た。
【0076】
【表3】
【0077】
(2)評価項目
(凍結前の評価)
ホイップ時間
ホイップを開始してから、目標硬度に達するまでの時間を測定し、該時間をホイップ時間とした。
【0078】
オーバーラン
ホイップ後(10分立て)の体積増加率(%)を測定した。ただし、体積増加率は、式:((a)(一定体積の水の重量−水と同体積のホイップ後のクリームの重量)/(b)(水と同体積のホイップ後のクリームの重量))×100に従って計算した。
【0079】
(凍結解凍後の評価)
凍結解凍後の評価は、ホイップ済みクリームを三角袋に詰め、−20℃で3日以上凍結した後、5℃にて1晩解凍し、評価に供した。
【0080】
硬度
解凍したホイップ済みクリームの硬度を、凍結前と同様の手順で評価した。
【0081】
オーバーラン
解凍したホイップ済みクリームのオーバーランを、凍結前と同様の手順で評価した。
【0082】
口どけの評価
専門パネラー5名により、ホイップクリーム(10分立て)を実際に食して口溶けを評価した。表1には、5名による評点の平均値を示した。
5…非常に良好
4…良好
3…普通
2…やや悪い
1…悪い
【0083】
乳風味
専門パネラー5名により、解凍後のホイップ済みクリームを実際に食して乳風味を5点満点で評価した。表1には、5名による評点の平均値を示した。
5…乳風味がとても強く感じられる
4…乳風味が強く感じられる
3…乳風味が十分感じられる
2…乳風味を感じるが、弱い
1…乳風味が殆ど感じられない
【0084】
造花性
凍結解凍後のホイップ済みクリームを三角袋から絞り出し、荒れの有無を評価した。
5…荒れがなく、非常に良好な外観である
4…荒れが殆どなく、良好な外観である
3…わずかに荒れはあるが、問題ない外観である
2…荒れがあり、好ましくない外観である
1…荒れが多く、非常に好ましくない外観である
【0085】
冷水分散性
市販アイスコーヒー100gに氷40gを入れ、1〜2℃に調温した状態で、解凍したホイップ済みクリーム30gを絞り、スプーンで100回撹拌した際の分散状態を評価した。
○:ダマが少なく、良好な外観である
×:ダマが多く、好ましくない外観である
【0086】
(3)結果
結果を以下に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【0089】
パーム核分別油の低融点部のエステル交換油(エステル交換油A1)のみからなる植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)を使用し製造したホイップクリーム(実施例1)は、比較例に比して、口どけ、造花性、冷水分散性に優れていた。
【0090】
また、パーム核分別油の低融点部のエステル交換油(エステル交換油A1)の他に、エステル交換油A1以外の油脂を含有する植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)を使用し製造したホイップクリーム(実施例2〜8)も、口どけ、冷水分散性に優れていた。
そして、実施例9の結果より、植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)中にパーム核分別油の低融点部のエステル交換油(エステル交換油A1)を50質量%以上含むホイップクリームも、口どけ、冷水分散性に優れていた。
【0091】
また、パーム核油90%、ハイオレイックひまわり油10%の混合油のエステル交換油(エステル交換油A2)のみを含む植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)を使用し製造したホイップクリーム(実施例10)も、比較例に比して、口どけ、造花性、冷水分散性に優れていた。
【0092】
また、植物性油脂のみを使用し製造したホイップクリーム(実施例11)も、口どけ、冷水分散性に優れていた。
【0093】
また、パーム核分別油の低融点部のエステル交換油(エステル交換油A1)の他に、エステル交換油A1、ラウリン系油脂以外の油脂を20質量%未満含有する植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)を使用し製造したホイップクリーム(実施例1〜4及び、実施例6〜10)は、乳脂肪の乳風味を際立たせる効果に優れていた。
【0094】
また、パーム核分別油の低融点部のエステル交換油(エステル交換油A1)の他に、非エステル交換油かつ非硬化油である油脂を30質量%未満含有する植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)を使用し製造したホイップクリーム(実施例1〜6及び、実施例8〜11)は、造花性に優れていた。
【0095】
一方、パーム核分別油の低融点部(A1非エステル交換油)のみを含む植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)を使用し製造した水中油型乳化油脂組成物及びホイップクリーム(比較例1)は、冷水分散性の点で実施例のホイップクリームに劣るものであった。また、比較例1の植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)を用いたホイップクリームは、実施例のホイップクリームに比して、ホイップクリームの凍結解凍による硬度変化が大きかった。
【0096】
また、ヤシ油のエステル交換油(エステル交換油B1)のみを含む植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)を使用し製造した水中油型乳化油脂組成物及びホイップクリーム(比較例2)は、冷水分散性の点で実施例のホイップクリームに劣るものであった。また、比較例2の植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)を用いたホイップクリームは、実施例のホイップクリームに比して、ホイップクリームの凍結解凍による硬度変化が大きかった。
【0097】
また、パーム核低融点部45%、パーム低融点部25%、ハイオレイックひまわり油30%の混合油のエステル交換油(エステル交換油B2)のみを含む植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)を用いた水中油型乳化油脂組成物及びホイップクリーム(比較例3)は、起泡しなかった。
【0098】
(4)考察
以上の結果から、エステル交換油A1(実施例1)とエステル交換油A2(実施例10)に共通し、かつA1非エステル交換油(比較例1)、エステル交換油B1(比較例2)、エステル交換油B2(比較例3)にはない特徴を有する油脂を含有する植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)には、ホイップクリームの口どけ及び冷水分散性に有意な効果が望める。
【0099】
すなわち、表1より、下記特徴(a)〜(d)を有する油脂(A)を含有する植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)を用いたホイップクリームは、冷水分散性に優れる。
油脂(A)
(a)構成脂肪酸としてラウリン酸を30質量%以上含む。
(b)構成脂肪酸としてC18以上の不飽和脂肪酸を10質量%〜45質量%含む。
(c)トリグリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素数の合計が36である第1のトリグリセリドを4質量%〜18質量%含む。
(d)トリグリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素数の合計が42である第2のトリグリセリドを13質量%〜25質量%含む。
【0100】
また、上記特徴(a)〜(d)を有する油脂(A)を含有する植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)を用いたホイップクリームは、凍結解凍による硬度変化の抑制効果を有する。
【0101】
また、実施例5と他の実施例の比較から、油脂(A)を含有し、かつ油脂(A)、ラウリン系油脂以外の油脂を20質量%未満含有する植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)を用いたホイップクリームは、乳脂肪の乳風味を際立たせる効果を有する。
【0102】
また、実施例7と他の実施例の比較から、本発明の油脂組成物において、油脂(A)を含有し、かつ非エステル交換油かつ非硬化油である油脂を30質量%未満含有する植物性油脂(ホイップクリーム用油脂組成物)を用いたホイップクリームは、優れた造花性を有する。