【解決手段】不要細胞を含む細胞Cが収容された培養容器Pを支持する支持部3と、不要細胞にレーザー光を照射可能な照射状態と、不要細胞にレーザー光を照射しない非照射状態と、の間で切換可能なレーザー光照射装置5と、支持部3又はレーザー光照射装置5を移動させることで、レーザー光の照射位置を不要細胞に対して相対移動させる移動装置4と、レーザー光照射装置5及び移動装置4の動作を制御することによって、不要細胞にレーザー光を照射する制御装置と、を備える。制御装置は、移動装置4によってレーザー光の照射位置を不要細胞に対して相対移動させながら不要細胞にレーザー光を照射する際に、単位時間中にレーザー光照射装置5を照射状態とする時間の割合を変更することで、不要細胞へのレーザー光の照射量を調整する。
前記不要細胞に前記レーザー光を照射する際に、前記移動装置が、前記支持部又は前記レーザー光照射装置を、停止状態から所定速度まで加速させ、前記所定速度で定速移動させた後、前記所定速度から減速させて停止させる場合、
前記制御装置は、前記支持部又は前記レーザー光照射装置の加速時及び減速時に、単位時間中に前記レーザー光照射装置を前記照射状態とする時間の割合を、定速移動時よりも小さくすることを特徴とする請求項1に記載の不要細胞除去装置。
前記制御装置は、前記支持部又は前記レーザー光照射装置の加速時に、単位時間中に前記レーザー光照射装置を前記照射状態とする時間の割合を徐々に大きくするとともに、前記支持部又は前記レーザー光照射装置の減速時に、単位時間中に前記レーザー光照射装置を前記照射状態とする時間の割合を徐々に小さくすることを特徴とする請求項2に記載の不要細胞除去装置。
前記制御装置は、前記不要細胞に前記レーザー光を照射する際に、前記不要細胞の厚みに応じて、単位時間中に前記レーザー光照射装置を前記照射状態とする時間の割合を変更することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の不要細胞除去装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、レーザー光により不要細胞を除去する際には、上記支持部又はレーザー光照射装置を所定速度で定速移動させながら、レーザー光を不要細胞に照射するのが一般的である。この場合、上記所定速度への加速時及び所定速度からの減速時には、定速移動時よりも移動速度が遅くなる。このため、支持部又はレーザー光照射装置の加速時及び減速時には、不要細胞へのレーザー光の照射量が過多となり、培養容器や周りの目的細胞に損傷を与えてしまうおそれがある。一方、支持部又はレーザー光照射装置の加速時及び減速時に適切な照射量となるようにレーザー光の出力を抑えると、定速移動時のレーザー光の照射量が過少となり、不要細胞を除去できなくなるおそれがある。このような問題を解決するために、レーザー光の出力を随時調整可能なレーザー光照射装置を用いることも考えられるが、このようなレーザー光照射装置は高価である。
【0004】
本発明は、上述の課題を鑑みて、不要細胞へのレーザー光の照射量を安価な構成で調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る不要細胞除去装置は、不要細胞を含む細胞が収容された培養容器を支持する支持部と、前記不要細胞にレーザー光を照射可能な照射状態と、前記不要細胞にレーザー光を照射しない非照射状態と、の間で切換可能なレーザー光照射装置と、前記支持部又は前記レーザー光照射装置を移動させることで、前記レーザー光の照射位置を前記不要細胞に対して相対移動させる移動装置と、前記レーザー光照射装置及び前記移動装置の動作を制御することによって、前記不要細胞に前記レーザー光を照射する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記移動装置によって前記レーザー光の照射位置を前記不要細胞に対して相対移動させながら前記不要細胞に前記レーザー光を照射する際に、単位時間中に前記レーザー光照射装置を前記照射状態とする時間の割合を変更することで、前記不要細胞への前記レーザー光の照射量を調整することを特徴とする。
【0006】
本発明に係る不要細胞除去装置によれば、単位時間中にレーザー光照射装置を照射状態とする時間の割合を変更することで、不要細胞に照射されるレーザー光の照射量を調整する。したがって、レーザー光の出力を随時調整可能なレーザー光照射装置を用いなくても、一定の出力のレーザー光を照射する比較的安価なレーザー光照射装置でレーザー光の照射量を調整することができ、不要細胞へのレーザー光の照射量を安価な構成で調整することが可能となる。
【0007】
本発明において、前記不要細胞に前記レーザー光を照射する際に、前記移動装置が、前記支持部又は前記レーザー光照射装置を、停止状態から所定速度まで加速させ、前記所定速度で定速移動させた後、前記所定速度から減速させて停止させる場合、前記制御装置は、前記支持部又は前記レーザー光照射装置の加速時及び減速時に、単位時間中に前記レーザー光照射装置を前記照射状態とする時間の割合を、定速移動時よりも小さくするとよい。
【0008】
支持部又はレーザー光照射装置の加速時及び減速時には、定速移動時よりも移動速度が遅くなるため、不要細胞へのレーザー光の照射量が定速移動時よりも大きくなり、培養容器や周りの目的細胞に損傷を与えてしまうおそれがある。しかしながら、上述のように、加速時及び減速時にレーザー光照射装置を照射状態とする時間の割合を定速移動時よりも小さくすることで、加速時及び減速時におけるレーザー光の照射量を抑えることができ、培養容器や周りの目的細胞に損傷を与えてしまうことを防止できる。
【0009】
本発明において、前記制御装置は、前記支持部又は前記レーザー光照射装置の加速時に、単位時間中に前記レーザー光照射装置を前記照射状態とする時間の割合を徐々に大きくするとともに、前記支持部又は前記レーザー光照射装置の減速時に、単位時間中に前記レーザー光照射装置を前記照射状態とする時間の割合を徐々に小さくするとよい。
【0010】
このようにレーザー光照射装置を制御すれば、不要細胞へのレーザー光の照射量を概ね一定に維持することができ、不要細胞を好適に除去することができる。
【0011】
本発明において、前記制御装置は、前記不要細胞に前記レーザー光を照射する際に、前記不要細胞の厚みに応じて、単位時間中に前記レーザー光照射装置を前記照射状態とする時間の割合を変更するとよい。
【0012】
こうすれば、例えば不要細胞の厚みが大きい領域では、単位時間中にレーザー光照射装置を照射状態とする時間の割合を大きくすることで、不要細胞を確実に除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(不要細胞除去装置の構成)
以下、本発明に係る不要細胞除去装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示す不要細胞除去装置1は、機台2と、ステージ3と、ステージ移動装置4と、レーザー光照射装置5と、撮影装置6と、照明装置7と、制御装置8(
図2参照)と、を備える。
【0015】
機台2は、不要細胞除去装置1を構成する各部材を支持する箱状の部材である。機台2の内部には、レーザー光照射装置5及び撮影装置6の一部構成が収容されている。
【0016】
ステージ3は、機台2の上方に配置されており、可視光やレーザー光が透過可能な透明の部材からなる。ステージ3には、培養容器Pが載置される。培養容器Pは、可視光やレーザー光が透過可能な透明の部材、例えば透明のプラスチック部材からなる。培養容器Pの中には培養液Lが入れられており、細胞Cが培養容器Pの底面に付着している。細胞Cには、培養対象としている目的細胞と、目的細胞とは異なる細胞に変化した不要細胞とが含まれている。
【0017】
ステージ移動装置4は、ステージ3を水平方向(左右方向及び前後方向)に移動させるための装置である。ステージ移動装置4によってステージ3を移動させることにより、培養容器Pを後述の照射用対物レンズ14及び撮影用対物レンズ21に対して水平方向に相対移動させることができる。
【0018】
レーザー光照射装置5は、レーザー光生成器11、コリメートレンズ12、光学ミラー13、及び、照射用対物レンズ14を有する。レーザー光照射装置5においては、レーザー光生成器11で生成されたレーザー光が、コリメートレンズ12及び光学ミラー13を経て照射用対物レンズ14に至るように、光路15が規定されている。レーザー光生成器11は、主に近赤外線(波長が約780〜2000nmの範囲の光)からなる一定の出力の近赤外線レーザー光を生成する。照射用対物レンズ14は、ステージ3の下方に配置されている。ステージ移動装置4によって培養容器Pを水平方向に移動させながら、細胞Cに含まれる不要細胞が照射用対物レンズ14の鉛直上方にきたタイミングでレーザー光を照射することで、不要細胞を培養容器Pの底面から剥離させることができる。
【0019】
レーザー光照射装置5の光路15上には、遮断部材16が配置されている。
図3は、遮断部材16を光路15に沿った方向から見た図である。遮断部材16は、支軸17周りに揺動可能であり、
図3(a)に示すように光路15を遮断する遮断状態と、
図3(b)に示すように光路15を遮断しない開放状態と、の間で切換可能となっている。遮断部材16は、駆動部18によって揺動駆動される。
【0020】
遮断部材16が開放状態のとき、レーザー光照射装置5は、レーザー光生成器11で生成されたレーザー光が、照射用対物レンズ14を介して不要細胞に照射可能な照射状態となる。一方、遮断部材16が遮断状態のとき、レーザー光照射装置5は、レーザー光生成器11で生成されたレーザー光が不要細胞に照射されない非照射状態となる。なお、遮断部材16の具体的な構成は、
図3に示したものに限定されない。また、
図1では、コリメートレンズ12と光学ミラー13との間に遮断部材16を配置しているが、光路15上の他の位置に遮断部材16を配置してもよい。
【0021】
撮影装置6は、撮影用対物レンズ21、光学ミラー22、23、及び、撮像部24を有する。撮影装置6においては、撮影用対物レンズ21の視野内の画像が、光学ミラー22、23を経て撮像部24で撮像されるように、光路25が規定されている。撮影用対物レンズ21は、ステージ3の下方に配置されている。撮像部24は、例えばCCDやCMOSからなるイメージセンサを有している。ステージ移動装置4による培養容器Pの水平方向への移動と、撮影装置6による撮影とを順番に繰り返すことで、培養容器P内に存在している細胞Cの全領域を撮影することができる。撮影装置6によって撮影された画像データは、制御装置8に送られる。
【0022】
照明装置7は、撮影用対物レンズ21の鉛直上方に配置されており、撮影装置6による撮影に必要な光量を供給する。
【0023】
図2に示すように、制御装置8は、ステージ移動装置4、レーザー光照射装置5、撮影装置6、及び、照明装置7の各動作を制御する。制御装置8は、画像処理部8a及び記憶部8bを有する。画像処理部8aは、撮影装置6によって撮影された細胞Cの画像データに画像処理を施すことによって、細胞Cに含まれる不要細胞を検出してその位置情報を取得する。記憶部8bは、画像処理部8aによって取得された不要細胞の位置情報等を記憶する。
【0024】
(不要細胞除去処理)
以上のように構成された不要細胞除去装置1により、培養容器P内の細胞Cに含まれる不要細胞を除去する不要細胞除去処理の流れについて、
図4を参照しつつ説明する。ここで、細胞Cの培養について簡単に説明する。はじめに、培養容器Pに培養液Lを入れ、目的細胞を投入する。培養が進むにつれて、目的細胞が成長するが、その過程で、不要細胞が発生することもある。不要細胞を放置しておくと、不要細胞に養分が奪われることで目的細胞の成長が阻害されるため、適宜、不要細胞を除去することが必要となる。このような不要細胞の除去に使用されるのが、不要細胞除去装置1である。なお、実際には、多数の目的細胞が集まって目的細胞群を構成し、多数の不要細胞が集まって不要細胞群を構成するが、本明細書では、目的細胞群及び不要細胞群を単に目的細胞及び不要細胞と言う。そして、目的細胞群と不要細胞群とを含む細胞群全体を単に細胞Cと言う。
【0025】
制御装置8は、ステージ3を移動させながら、撮影装置6で撮影を行う(ステップS11)。撮影装置6が1回で撮影できる範囲は限られているため、収容部Pa内の領域を複数の撮影範囲に区切り、区切られた各範囲の撮影が順番に行われる。撮影装置6で撮影された画像データは制御装置8に送られる。制御装置8は、画像処理部8aで画像データに画像処理を施すことによって、その画像から細胞Cを検出する(ステップS12)。さらに、制御装置8は、不要細胞を検出するとともに不要細胞の位置情報を取得し、当該位置情報を記憶部8bに記憶する(ステップS13)。次に、制御装置8は、培養容器Pの全領域の撮影が終了したか否かを判断し(ステップS14)、全領域の撮影が終了するまで、ステップS11〜S13を繰り返し実行する。
【0026】
培養容器Pの全領域の撮影が終了すると、制御装置8は、記憶部8bに記憶されている不要細胞の位置情報に基づいて、ステージ移動装置4及びレーザー光照射装置5を制御し、不要細胞が照射用対物レンズ14の直上に位置するタイミングでレーザー光を照射させる(ステップS15)。これにより、不要細胞は培養容器Pの底面から剥離して、培養液L中に浮遊した状態となる。最後に、制御装置8は、全領域の不要細胞にレーザー光を照射し終えたか否かを判断し(ステップS16)、全ての不要細胞にレーザー光を照射し終えるまで、ステップS15を繰り返し実行する。以上のような不要細胞除去処理を実行することで、細胞Cに含まれる不要細胞を除去することができ、目的細胞のみを効率的に培養することができる。なお、培養容器Pの底面から剥離して培養液L中に浮遊している不要細胞は、培養液Lの交換とともに廃棄される。
【0027】
図5及び
図6を参照しつつ、不要細胞にレーザー光を照射する際の、詳細な制御について説明する。
図5に示すように、目的細胞Caと不要細胞Cbとは隣接して存在する場合が多い。そこで、
図5の複数の矢印で示すように、不要細胞Cbの領域内において、レーザー光を不要細胞Cbに対して相対的に横方向(縦方向でもよい)に順番に移動させることで、不要細胞Cbの全域に対してレーザー光を相対的に走査させるようにする。こうすることで、不要細胞Cbのみにレーザー光を照射させ、目的細胞Caにはレーザー光を照射しないようにすることができる。
【0028】
図6では、
図5に示した複数の矢印のうち、上から3つ目の矢印で示すように、不要細胞Cbに対して左側から右側にレーザー光を相対的に走査させる場合、換言すると、ステージ3をレーザー光照射装置5(照射用対物レンズ14)に対して右側から左側に相対的に移動させる場合を示している(後の
図8も同様)。
図6(a)は、不要細胞Cbの断面を模式的に示しており、
図6(b)は、ステージ3の移動速度を示しており、
図6(c)は、遮断部材16の状態を示している(後の
図8も同様)。
【0029】
不要細胞Cbにレーザー光を照射する際には、
図6(b)に示すように、基本的に所定速度Vでステージ3を定速移動させる。しかしながら、ステージ3が停止状態から所定速度Vとなるまでの加速時(時間0〜t1の間)、及び、ステージ3が所定速度Vから停止するまでの減速時(時間t2〜t3の間)では、移動速度が定速移動時(時間t1〜t2の間)の所定速度Vよりも遅くなる。したがって、レーザー光生成器11にて一定の出力のレーザー光が生成されている場合、移動速度が遅い加速時及び減速時において、不要細胞Cbへの単位面積当たりの照射量が過多となって培養容器Pや周りの目的細胞Caに損傷を与えてしまうおそれがある。
【0030】
そこで、本実施形態では、
図6(c)に示すように、不要細胞Cbにレーザー光を照射する際に、単位時間中にレーザー光照射装置5を照射状態とする時間の割合を変更することで、不要細胞Cbへの単位面積当たりのレーザー光の照射量を調整している。具体的には、制御装置8は、ステージ3の定速移動時には、単位時間中に遮断部材16を開放状態とする(すなわちレーザー光照射装置5を照射状態とする)時間の割合(以下、「開放時間率」という)を100%としており、ステージ3の加速時及び減速時には、開放時間率を100%未満としている。
【0031】
より詳細には、制御装置8は、ステージ3の加速時には、開放時間率を徐々に大きくするとともに、ステージ3の減速時には、開放時間率を徐々に小さくしている。こうすることで、不要細胞Cbへの単位時間当たりのレーザー光の照射量が、ステージ3の移動速度に概ね比例する。その結果、不要細胞Cbへの単位面積当たりのレーザー光の照射量を概ね一定に維持することができ、好適に不要細胞Cbを剥離させることができる。なお、ステージ3の定速移動時の開放時間率を100%とすることは必須ではなく、このときの開放時間率を100%未満としてもよい。
【0032】
次に、
図7に示すように、不要細胞Cbに不要細胞Cb1と不要細胞Cb2とが含まれ、不要細胞Cb1の上に不要細胞Cb2が重なって、不要細胞Cbの厚みが一部で大きくなっている場合の不要細胞除去処理について説明する。この場合には、厚みが大きい領域にレーザー光を多く照射させる必要があるため、レーザー光が不要細胞Cb2の領域を照射している間の開放時間率を、不要細胞Cb2の領域外を照射している間の開放時間率よりも大きくするとよい。
【0033】
図8では一例として、ステージ3が所定速度Vで定速移動しており、且つ、レーザー光が不要細胞Cb2の領域を照射している間の開放時間率を100%とし、ステージ3が所定速度Vで定速移動しており、且つ、レーザー光が不要細胞Cb2の領域外を照射している間の開放時間率を100%未満としている。ステージ3の加速時及び減速時の開放時間率については、
図6の場合と同様に調整している。なお、ステージ3が所定速度Vで定速移動しており、且つ、レーザー光が不要細胞Cb2の領域を照射している間の開放時間率を100%とすることは必須ではなく、このときの開放時間率を100%未満としてもよい。
【0034】
(効果)
以上のように、本実施形態では、制御装置8は、ステージ移動装置4(移動装置)によってレーザー光の照射位置を不要細胞Cbに対して相対移動させながら不要細胞Cbにレーザー光を照射する際に、単位時間中にレーザー光照射装置5を照射状態とする時間の割合を変更することで、不要細胞Cbへのレーザー光の照射量を調整する。したがって、レーザー光の出力を随時調整可能なレーザー光照射装置を用いなくても、一定の出力のレーザー光を照射する比較的安価なレーザー光照射装置5でレーザー光の照射量を調整することができ、不要細胞Cbへのレーザー光の照射量を安価な構成で調整することが可能となる。
【0035】
本実施形態では、制御装置8は、ステージ3(支持部)の加速時及び減速時に、単位時間中にレーザー光照射装置5を照射状態とする時間の割合を、定速移動時よりも小さくしている。ステージ3の加速時及び減速時には、定速移動時よりも移動速度が遅くなるため、不要細胞Cbへのレーザー光の照射量が定速移動時よりも大きくなり、培養容器Pや周りの目的細胞Caに損傷を与えてしまうおそれがある。しかしながら、上述のように、加速時及び減速時にレーザー光照射装置5を照射状態とする時間の割合を定速移動時よりも小さくすることで、加速時及び減速時におけるレーザー光の照射量を抑えることができ、培養容器Pや周りの目的細胞Caに損傷を与えてしまうことを回避できる。
【0036】
本実施形態では、制御装置8は、ステージ3の加速時に、単位時間中にレーザー光照射装置5を照射状態とする時間の割合を徐々に大きくするとともに、ステージ3の減速時に、単位時間中にレーザー光照射装置5を照射状態とする時間の割合を徐々に小さくしている。このようにレーザー光照射装置5を制御すれば、不要細胞Cbへのレーザー光の照射量を概ね一定に維持することができ、不要細胞Cbを好適に除去することができる。
【0037】
本実施形態では、制御装置8は、不要細胞Cbにレーザー光を照射する際に、不要細胞Cbの厚みに応じて、単位時間中にレーザー光照射装置5を照射状態とする時間の割合を変更している(
図8参照)。こうすれば、例えば不要細胞Cbの厚みが大きい領域では、単位時間中にレーザー光照射装置5を照射状態とする時間の割合を大きくすることで、不要細胞Cbを確実に除去することができる。
【0038】
本実施形態では、レーザー光の光路15上に、光路15を遮断する遮断状態と、光路15を遮断しない開放状態と、の間で切換可能な遮断部材16が設けられており、制御装置8は、遮断部材16を開放状態にすることでレーザー光照射装置5を照射状態とし、遮断部材16を遮断状態とすることでレーザー光照射装置5を非照射状態とする。一般的に、レーザー光の出力が安定するまでには、ある程度の時間を要するため、レーザー光の出力自体をON/OFFすることにより照射状態/非照射状態を切り換える構成だと、照射量の調整にタイムラグが生じるおそれがある。これに対し、上述のように、遮断部材16を用いた構成にすると、レーザー光の出力をONにしたままでも迅速に照射状態/非照射状態を切り換えることができるので、上記タイムラグの問題を解消することができる。
【0039】
(他の実施形態)
上記実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0040】
上記実施形態では、揺動可能な遮断部材16を用いるものとしたが、遮断部材の具体的な形態はこれに限定されない。例えば、
図9に示すように、遮断部材26を、円盤状の部材に周方向に複数の切欠き27が形成された部材としてもよい。遮断部材26は、ステッピングモータ29に連結された回転軸28周りに回転する。このような構成によれば、遮断部材26を回転させることで、光路15が遮断部材26で遮断される遮断状態と、光路15が切欠き27を通過する開放状態とに切り換えることができる。そして、遮断部材26の回転角度や回転速度を調整することで、開放時間率を調整することができる。また、モータを用いることで応答性を向上させることができる。また、光路15を遮断する部位が複数(
図9の例では4つ)あるので、光路15を遮断する部位を変更することで、遮断部材26にレーザー光が照射されることによる遮断部材26の劣化を軽減することができる。
【0041】
上記実施形態では、遮断部材16の開放状態/遮断状態を切り換えることにより、レーザー光照射装置5の照射状態/非照射状態を切り換えるものとした。しかしながら、上述したタイムラグの影響がほとんどない場合には、レーザー光生成器11をON/OFFすることにより、レーザー光照射装置5の照射状態/非照射状態を切り換えるようにしてもよい。
【0042】
上記実施形態では、撮影用対物レンズ21と照射用対物レンズ14とを個別に設けるものとした。しかしながら、
図10に示すように、撮影用及び照射用の両方に用いられる対物レンズ41を設けるようにしてもよい。この場合、基本的な構成に大きな変更はないが、レーザー光照射装置5の光路15と撮影装置6の光路25との合流点には、可視光を透過させ、且つ、レーザー光を反射させるダイクロイックミラー42が配置される。このように、1つの対物レンズ41を撮影用と照射用とに兼用することで、撮影時とレーザー光の照射時とで、ステージ3を移動させる距離を短くすることができ、不要細胞除去処理を効率的に実行することができる。
【0043】
上記実施形態では、ステージ移動装置4が培養容器Pが載置されたステージ3を移動させることで、細胞Cの全領域を撮影したり、細胞Cの全領域において不要細胞にレーザー光を照射するものとした。しかしながら、レーザー光照射装置5及び撮影装置6を可動式に構成し、レーザー光照射装置5及び撮影装置6を移動させることで、細胞Cの全領域を撮影したり、細胞Cの全領域において不要細胞にレーザー光を照射するようにしてもよい。
【0044】
上記実施形態では、細胞Cの全領域の撮影が終わってから、不要細胞にレーザー光を照射するものとした。しかしながら、細胞Cの撮影と、不要細胞へのレーザー光の照射とを、順番に繰り返すようにしてもよい。
【0045】
上記実施形態では、不要細胞Cbの厚みが大きい領域では、単位時間中にレーザー光照射装置5を照射状態とする時間の割合を大きくするものとした。しかしながら、単位時間中にレーザー光照射装置5を照射状態とする時間の割合を一定に維持したまま、不要細胞Cbの厚みが大きい領域では、ステージ3の移動速度を所定速度Vよりも遅くすることで、厚みが大きい領域でのレーザー光の照射量を多くするようにしてもよい。