(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-201483(P2018-201483A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】釣用スピニングリール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20181130BHJP
【FI】
A01K89/01 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-143773(P2017-143773)
(22)【出願日】2017年7月25日
(31)【優先権主張番号】201710424166.X
(32)【優先日】2017年6月7日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】509344157
【氏名又は名称】ピュア・フィッシング・ジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517260906
【氏名又は名称】ジャ ドゥン スポーツ エキップメント カンパニー、リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】517260917
【氏名又は名称】ピュア フィッシング (クワンチョウ) トレーディング カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォン モン
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅敬
(72)【発明者】
【氏名】ロイ キー
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BH03
2B108BH06
(57)【要約】
【課題】
スピニングリールの操作の円滑性が未だ十分ではない。
【解決手段】
釣用スピニングリールのハンドルの回転運動をスプールの往復運動に変換するためのリール本体の内部に備えられたオシレート機構において、ハンドルの回転を、スプールの往復運動へ変換するオシレートギアへ伝達するための複数のギアの1組を、樹脂製のはすば歯車で構成して、ハンドル操作の円滑性に優れた釣用スピニングリールを提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体と、これに回転可能に装着されたハンドル、前記リール本体の前部に回転可能に装着された釣糸案内用のロータ、該ロータの前部に配置され、釣糸を巻取るための前後に往復移動するスプール、釣糸の動きを制御するベールから構成された釣用スピニングリールにおいて、該釣用スピニングリールは
前記ハンドルの回転を前記スプールの前記往復移動に変換するためのオシレート機構を前記リール本体内部に備え、
前記オシレート機構は、前記ハンドルの軸に結合された第1のギアと、前記ハンドルの回転運動を前記スプールの往復移動に変換する機構に嵌合して該変換機構を駆動するオシレートギアと、前記第1のギアの回転を前記オシレートギアに伝達するための第2のギアを少なくとも含み、
前記第1のギア、前記第2のギア、及び前記オシレートギアの内、少なくとも1組が樹脂製のはすば歯車である
ことを特徴とする釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記第2のギアと前記オシレートギアとの間に、前記第2のギアの回転を前記オシレートギアに伝達するための樹脂製のアイドルギアをさらに備えた、請求項1に記載の釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記第2のギア及び前記アイドルギアの回転軸が、前記リール本体に、前記回転軸の軸心の位置が前記リール本体に対して軸径方向に調整可能に螺子で固定される、請求項2に記載の釣用スピニングリール。
【請求項4】
前記変換機構は、前記スプールに結合して往復移動を伝達するスプール軸の他の端部が結合され、S字状の中空の溝を有する板状のオシレートスライダーと、前記オシレートギアの側面から突起したポストとを含み、該ポストが前記溝に嵌合されて前記溝に沿って動くことにより前記オシレートギアの回転を前記スプール軸の往復運動に変換する機構である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の釣用スピニングリール。
【請求項5】
前記樹脂の材料が、ポリアセタール、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイト及びポリエーテルエーテルケトンの内の少なくとも1つである、請求項1に記載の釣用スピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドル操作の円滑性に優れた釣用スピニングリールの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
釣用スピニングリールは、
図1に内部構造が模式的に示されているように、釣竿に装着されたリール本体11と、これに回転可能に装着されたハンドル12、リール本体の前部に回転可能に装着された釣糸案内用のロータ13、ロータの前部に配置された釣糸を巻取るための前後移動するスプール14、釣糸の動きを制御するベール15等、多くの可動部品から構成されている。
【0003】
現用の釣用スピニングリールにおいて特に従来問題とされてきたのが、特許文献1及び2に詳細に述べられているように、往復運動するスプール14に釣糸をいかに均一な厚さに巻取るかという問題である。それを達成するために、ハンドルの回転をスプールの往復運動に変換する摺動機構(オシレート機構)16のうち、オシレートギア19の突起20に係合する、スプール軸17に固定された摺動子(オシレートスライダー)18に設けられた溝21の形状について種種提案され、これにより釣糸の巻取りの均一性が改良されてきた。
【0004】
しかし現在の釣用スピニングリールの問題点はそれだけでなく、操作の円滑性も未だ十分ではないという課題もある。使用者がリールの操作が滑らかであると感じるためには、これらロータ、スプール、ハンドルのギア等の可動部品が、バックラッシュすることなく、円滑に回転、往復動作することが求められる。特にスプールは、それ自体に重量があり、それが往復運動するため、スプールの移動方向が反転する際に動作の不連続性を感じさせやすくなり、また、釣糸を巻取る場合には大きな張力がかかるため、前後の動作が非対象となりバックラッシュが生じて動作の不連続性を感じさせる、あるいは異音が発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3292366号公報
【特許文献2】米国特許第7290728号明細書
【特許文献3】米国特許第5513814号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述した従来の釣用スピニングリールの操作性の問題を解消して、リール操作、特にハンドル操作の円滑性を向上させた釣用スピニングリールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
図1に示されているように、ハンドル12を回転させることにより、ロータ13が回転すると共に、その回転に連動して、スプール14は釣糸をスプールに均一に巻取るために前後に往復運動する。ハンドルの回転運動をスプール14の往復運動に変換するための機構としてオシレート機構16が設けられているが、本発明では、ハンドル12の回転をオシレートギア18に伝達するための中間ギアとして、樹脂製のはすばギアを用いるようにしたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の釣用スピニングリールを提供する。
【0009】
リール本体と、これに回転可能に装着されたハンドル、前記リール本体の前部に回転可能に装着された釣糸案内用のロータ、該ロータの前部に配置された釣糸を巻取るための前後に往復移動するスプール、釣糸の動きを制御するベールから構成された釣用スピニングリールにおいて、該釣用スピニングリールは
前記ハンドルの回転を前記スプールの前記往復移動に変換するためのオシレート機構を前記リール本体内部に備え、
前記オシレート機構は、前記ハンドルの軸に結合された第1のギアと、前記ハンドルの回転運動を前記スプールの往復移動に変換する機構に嵌合し、該変換機構を駆動するオシレートギアと、前記第1のギアの回転を前記オシレートギアに伝達するための第2のギアを少なくとも含み、
前記第1のギア、前記第2のギア、及び前記オシレートギアの内、少なくとも1組が樹脂製のはすば歯車である
ことを特徴とする釣用スピニングリール。
【0010】
また、本発明の釣用スピニングリールは、前記第2のギアと前記オシレートギアとの間に、前記第2のギアの回転を前記オシレートギアに伝達するための樹脂製のアイドルギアをさらに備えてもよい。
また、本発明の釣用スピニングリールは、前記第2のギア及び前記アイドルギアの回転軸が、前記リール本体に、前記回転軸の軸心の位置が前記リール本体に対して軸径方向に調整可能に螺子で固定されてもよい。
【0011】
また、前記変換機構は、前記スプールに結合して往復移動を伝達するスプール軸の他の端部が結合され、S字状の中空の溝を有する板状のオシレートスライダーと、前記オシレートギアの側面から突起したポストとを含み、該ポストが前記溝に嵌合されて前記溝に沿って動くことにより前記オシレートギアの回転を前記スプール軸の往復運動に変換する機構としてよい。
【0012】
さらに、本発明の釣用スピニングリールは、前記樹脂の材料を、POM(ポリアセタール)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイト)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)の内の少なくとも1つとしてよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のような構成のオシレート機構にすることによって、リール操作の円滑性に優れた釣用スピニングリールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、従来の釣用スピニングリールにおける各部品の配置の概要を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態によるオシレート機構を模式的に示した斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態によるオシレート機構を横方向から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図2は、本発明の実施形態による釣用スピニングリールの、ハンドルの回転をスプールの往復運動に変換するオシレート機構200の部品の配置を模式的に示した斜視図である。また
図3はこの機構を真横から見た模式図である。これらの図を参照して本発明のオシレート機構を説明する。ハンドル(図示せず)に直結したハンドルのシャフト(図示せず)は、シャフトのホルダ201に固定され、該ホルダ201に固定された第1のギア202は、ハンドルを回すことにより回転する。別の回転軸211には第2のギア212、及びアイドルギア213が保持され、第2のギア212の歯は第1のギア202の歯に係合し、第1のギアの回転に伴い第2のギア212は回転軸211を中心に第1のギアと逆方向に回転する。
図3に示すように、回転軸211は、リール本体230に螺子226により軸径方向の調整幅をもって固定され、螺子226の締め付け時に回転軸211の軸心の位置を調整可能としている。そして第2のギア212よりも半径の小さいアイドルギア213も第2のギア212に連動して逆回転する。アイドルギア213の歯は半径の大きいオシレートギア221の歯に係合しており、アイドルギア213の回転がオシレートギア221を減速回転させる。なお、
図2、3の実施例では、第2のギア212及びアイドルギア213は一体的に回転するが、これらは一体であっても、各々が個別に回り止め結合されていてもよい。
【0017】
オシレートギア221にはそれに固定された突起部分であるポスト222が設けられている。このポスト222がオシレートスライダー224に設けられたS字状の溝223に嵌め込まれており、また、オシレートスライダー224にはメインシャフト225が固定されている。オシレートギア221の回転に伴ってポスト222はS字状の溝223の内側に沿うように移動し、メインシャフト225がこれに伴って(摺動運動)往復運動する。S字状の形状にすることにより、メインシャフト225の反転時以外の速度がなるべく一定となるように構成されている。このようにしてハンドルの回転がメインシャフト225の往復運動に変換される。
【0018】
従来、特許文献1及び2からも分かるように、第1のギア、第2のギアには一般的に平歯車が用いられてきたのに対して、本発明でははすば歯車を用いる。はすば歯車同士の噛合いは平歯車同士の噛合いと比較して「噛合い率」が高くなり、歯同士の接触が平均して回転が安定する。従って、より円滑性の高い回転の伝達が可能となる。さらに、回転軸211の固定時において軸径方向の位置を調整することにより、第1のギア202、第2のギア212の噛合い位置、及びアイドルギヤ213、オシレートギア221の噛合い位置を、バックラッシュの無い最適な位置に保つことができる。
【0019】
さらに本発明では、第1のギア211、第2のギア212及びアイドルギア213の材質として樹脂を用いている。樹脂が持つ柔軟性により、第1と第2のギア同士、及びアイドルギアとオシレートギアの歯の接触時の衝撃が緩和され、また噛合い時の歯の接触面積を増やすことができる。これによりさらに円滑性の高い回転の伝達が可能となる。樹脂の材質としてはPOM(ポリアセタール)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイト)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の硬質の材料を用いることができる。なお、本実施例ではオシレートギア221にはZn合金、Al等の金属を用いているが、前述の樹脂を用いてもよい。
【0020】
上記実施例では、ハンドルの回転のオシレートギア221の回転への伝達を、第1のギア211、第2のギア212及びアイドルギア213を介して行う構成について説明したが、ハンドルシャフトの回転を最終的にオシレートギアに伝達する構成は、これに限定されず、他のギアの組合せが可能である(例えば特許文献3)。その場合、可能な限り多くのギアの組合せを、樹脂製のはすば歯車とすることが望ましい。
【符号の説明】
【0021】
10 従来の釣用スピニングリールの構造
11 リール本体
12 ハンドル
13 ロータ
14 スプール
15 ベール
16 オシレート機構
17 スプール軸
18 オシレートスライダー
19 オシレートギア
20 突起
21 溝
200 オシレート機構
201 シャフトのホルダ
202 第1のギア
211 回転軸
212 第2のギア
213 アイドルギア
221 オシレートギア
222 ポスト
223 溝
224 オシレートスライダー
225 メインシャフト
226 螺子
230 リール本体