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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-201790(P2018-201790A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】ゲームプログラムおよびゲーム装置
(51)【国際特許分類】
   A63F 13/54 20140101AFI20181130BHJP
   A63F 13/55 20140101ALI20181130BHJP
   G10K 15/04 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   A63F13/54
   A63F13/55
   G10K15/04 302G
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-109705(P2017-109705)
(22)【出願日】2017年6月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000129149
【氏名又は名称】株式会社カプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細井 秀基
(72)【発明者】
【氏名】小森 繁伸
(57)【要約】
【課題】 音の発音表現をより多様化することができるゲームプログラムおよびゲーム装置を提供する。
【解決手段】 コンピュータを、仮想空間を生成する仮想空間生成手段、所定の第1音源の初期位置を、仮想空間に配置された所定のオブジェクトの位置に基づいて設定する音源初期位置設定手段、第1音源の発音を制御する発音制御手段、および第1音源の発音の開始後、第1音源を初期位置が設定されたオブジェクトとは独立して移動させる音源移動手段、として機能させ、発音制御手段は、第1音源の位置に基づいて第1音源の発音を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
仮想空間を生成する仮想空間生成手段、
所定の第1音源の初期位置を、前記仮想空間に配置された所定のオブジェクトの位置に基づいて設定する音源初期位置設定手段、
前記第1音源の発音を制御する発音制御手段、および
前記第1音源の発音の開始後、前記第1音源を前記初期位置が設定された前記オブジェクトとは独立して移動させる音源移動手段、として機能させ、
前記発音制御手段は、前記第1音源の位置に基づいて前記第1音源の発音を制御する、ゲームプログラム。
【請求項2】
前記コンピュータを、
前記仮想空間を移動する所定のキャラクタを制御するキャラクタ制御手段として機能させ、
前記音源移動手段は、前記第1音源の発音の開始後、前記第1音源を前記キャラクタに向かって移動させ、
前記発音制御手段は、前記キャラクタの位置を基準とする前記第1音源の相対位置に基づいて前記第1音源の発音を制御する、請求項1に記載のゲームプログラム。
【請求項3】
前記発音制御手段は、前記キャラクタの位置と前記第1音源の位置との距離が近いほど前記第1音源の音量が大きくなるように制御する、請求項2に記載のゲームプログラム。
【請求項4】
前記発音制御手段は、前記第1音源の移動に伴う音の周波数変化を反映した前記第1音源の発音を実行する、請求項1から3の何れかに記載のゲームプログラム。
【請求項5】
前記第1音源とは別に、前記第1音源の前記初期位置が設定された前記オブジェクトの位置に基づいて所定の第2音源が配置され、
前記発音制御手段は、前記第1音源の発音と前記第2音源の発音とを同時に開始させ、
前記音源移動手段は、前記第1音源および前記第2音源の発音の開始後、前記第1音源を前記オブジェクトとは独立して移動させ、前記第2音源が前記オブジェクトに配置された状態を維持させる、請求項1から4の何れかに記載のゲームプログラム。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載のゲームプログラムを記憶したプログラム記憶部と、
前記プログラム記憶部に記憶されたプログラムを実行するコンピュータと、を備えた、ゲーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲームプログラムおよびゲーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、仮想空間内にて、プレイヤキャラクタを操作してゲームを進行させるアクションゲームが市販されている。この種のアクションゲームでは、ゲームの面白さ、興奮度、リアル感などの向上のために、例えば爆発、敵キャラクタであるモンスターの咆哮等の効果音による演出が行われる。
【0003】
このような効果音は、当該効果音を発音するオブジェクトに発音源が配置される。効果音の音量は、当該発音源とプレイヤキャラクタ等の音の聴取位置との間の距離等によって制御される。このような発音源が配置されるオブジェクトは固定オブジェクトに限られず、移動オブジェクトも含まれる(例えば、特許文献1参照)。移動オブジェクトに発音源が配置される場合、発音源は移動オブジェクトに固定された状態で移動オブジェクトの移動に伴って発音源も移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−194208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような態様では、効果音に立体感が不足し、迫力がない等、音の発音表現が十分でない場合があった。
【0006】
そこで本発明は、音の発音表現をより多様化することができるゲームプログラムおよびゲーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るゲームプログラムは、コンピュータを、仮想空間を生成する仮想空間生成手段、所定の第1音源の初期位置を、前記仮想空間に配置された所定のオブジェクトの位置に基づいて設定する音源初期位置設定手段、前記第1音源の発音を制御する発音制御手段、および前記第1音源の発音の開始後、前記第1音源を前記初期位置が設定された前記オブジェクトとは独立して移動させる音源移動手段、として機能させ、前記発音制御手段は、前記第1音源の位置に基づいて前記第1音源の発音を制御する。
【0008】
前記ゲームプログラムは、前記コンピュータを、前記仮想空間を移動する所定のキャラクタを制御するキャラクタ制御手段として機能させ、前記音源移動手段は、前記第1音源の発音の開始後、前記第1音源を前記キャラクタに向かって移動させ、前記発音制御手段は、前記キャラクタの位置を基準とする前記第1音源の相対位置に基づいて前記第1音源の発音を制御してもよい。
【0009】
前記発音制御手段は、前記キャラクタの位置と前記第1音源の位置との距離が近いほど前記第1音源の音量が大きくなるように制御してもよい。
【0010】
前記発音制御手段は、前記第1音源の移動に伴う音の周波数変化を反映した前記第1音源の発音を実行してもよい。
【0011】
前記第1音源とは別に、前記オブジェクトの位置に基づいて所定の第2音源が配置され、前記発音制御手段は、前記第1音源の発音と前記第2音源の発音とを同時に開始させ、前記音源移動手段は、前記第1音源および前記第2音源の発音の開始後、前記第1音源を前記オブジェクトとは独立して移動させ、前記第2音源を前記オブジェクトに配置された状態を維持させてもよい。
【0012】
また、本発明の他の態様に係るゲーム装置は、上記のゲームプログラムを記憶したプログラム記憶部と、前記プログラム記憶部に記憶されたプログラムを実行するコンピュータとを備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、音の発音表現をより多様化することができるゲームプログラムおよびゲーム装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係るゲーム装置の内部構成を示すブロック図である。
図2図1に示すゲーム装置が備える制御部の機能的な構成を示すブロック図である。
図3】本実施の形態における仮想空間に配置された第1音源の一例を示す仮想空間の平面図である。
図4】本実施の形態における第1音源の距離に対する音量を示すグラフである。
図5】本実施の形態における仮想空間に配置された第1音源の変形例を示す仮想空間の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係るゲームプログラムおよびゲーム装置について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、家庭用ゲーム装置において実行されるアクションゲームを例として説明する。本実施の形態に係るアクションゲームは、仮想のゲーム空間内でプレイヤキャラクタを操作して、敵キャラクタを討伐する、アイテムを探索する、所定のイベントを攻略する等の所定のクエストを攻略することにより進行する。
【0016】
[ハードウェアの構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係るゲーム装置1の内部構成を示すブロック図である。図1に示すようにゲーム装置1は制御部30を備えている。該制御部30は、CPU11、描画データ生成プロセッサ12、RAM(Random Access Memory)13、ROM(Read Only Memory)14、描画処理プロセッサ15、および音声処理プロセッサ18を含んでいる。さらに、ゲーム装置1は、この他にもVRAM(Video-RAM)16、アンプ19、スピーカ20、イヤホン端子21、操作部22、メディアインタフェース23、無線LANモジュール24、およびバス25を備えている。そして、これらのうちCPU11、描画データ生成プロセッサ12、RAM13、ROM14、描画処理プロセッサ15、音声処理プロセッサ18、操作部22、メディアインタフェース23、および無線LANモジュール24が、バス25によって相互にデータ伝送可能に接続されている。
【0017】
操作部22は、方向キーおよびその他のボタン群(図示せず)を含んでおり、ユーザの操作を受け付けて、その操作内容に応じた操作情報(操作信号)をCPU11に入力する。また、方向キーおよびボタン群が有する各種のボタンは、プレイヤキャラクタの特定の動作を指示するための操作子である。また、操作部22には、これら操作子以外にゲーム装置1の電源の入/切を行うための電源スイッチ等が含まれる。
【0018】
メディアインタフェース23は、図示しないメディア装着部にセットされたゲームメディア5にアクセスしてゲームプログラム5aおよびゲームデータ5bを読み出す。このうちゲームプログラム5aは、例えば、プレイヤキャラクタと敵キャラクタとが仮想空間にて対戦する内容のゲームを、ゲーム装置1に実行させる。
【0019】
また、ゲームデータ5bには、上記ゲームを実行する上で必要なデータとして、キャラクタや背景の画像データ、ステータスなどの情報表示用の画像データ、効果音やBGMなどの音声データ、文字や記号によるメッセージデータ等が含まれている。なお、記録媒体であるゲームメディア5は、半導体メモリのほか、光ディスクの一種であるUMD(Universal Media Disc)(登録商標)を採用することができる。
【0020】
RAM13には、ゲームの進行に応じてゲームメディア5から読み込まれたゲームプログラム5aおよびゲームデータ5bを格納するロードエリア、ならびに、CPU11がゲームプログラム5aを処理する際に使用するためのワークエリアが設定されている。ROM14には、ディスクローディング機能などのゲーム装置1の基本的機能、ゲームメディア5に記憶されているゲームプログラム5aおよびゲームデータ5bの読み出し処理を制御する基本プログラムが記憶されている。
【0021】
CPU11は、ゲームメディア5に記録されているゲームプログラム5aおよびゲームデータ5bの全部または一部を、メディアインタフェース23を通じてRAM13に読み込む。CPU11は、ユーザによる操作部22の操作に応じてゲームプログラム5aを実行し、ゲーム進行を制御する。より具体的には、ユーザに操作されることによって操作部22から操作信号が入力されると、CPU11は、ゲームプログラム5aに従ってその操作信号に対応する所定のゲーム進行処理を行う。
【0022】
CPU11は、処理結果に基づいて、ゲーム進行を示す画像(以下、「ゲーム画面」)としてディスプレイ(表示部)2に表示する。さらに、CPU11は、処理結果に基づいて、ゲーム進行を示す音声信号を音声出力部(スピーカ20またはイヤホン端子21)に出力する。
【0023】
上記ゲーム画面の描画は、CPU11の指示により、描画処理プロセッサ15が行う。すなわち、CPU11は、操作部22から入力される操作信号に基づき、ディスプレイ2に表示すべきゲーム画面の内容を決定する。描画データ生成プロセッサ12は、その内容に対して必要な描画データを生成する。そして、その描画データは、描画処理プロセッサ15に転送される。
【0024】
描画処理プロセッサ15は、描画データに基づいて描画処理を行う。描画処理プロセッサ15は、描画データに基づいて1/60秒毎にゲーム画面を生成し、生成したゲーム画面をVRAM16に書き込む。ディスプレイ2は、半透過型カラー液晶ディスプレイとバックライトLED(Light Emitting Diode)とを有し、VRAM16に書き込まれたゲーム画面を表示する。
【0025】
また、CPU11は、ゲームの進行に応じて、スピーカ20から出力すべき効果音やBGM等の音声を決定する。CPU11は、決定した音声を出力するための音声データをRAM13から読み出して音声処理プロセッサ18に入力する。すなわち、CPU11は、ゲームの進行に伴って発音イベントが発生すると、その発音イベントに応じた音声データ(ゲームメディア5からロードされた音声データ)をRAM13から読み出して音声処理プロセッサ18に入力する。
【0026】
音声処理プロセッサ18は、DSP(Digital Signal Processor)で構成されている。音声処理プロセッサ18は、CPU11によって入力された音声データに対して所定の効果(例えば、リバーブ、コーラスなど)を付与したのちアナログ信号に変換して、アンプ19に出力する。アンプ19は、音声処理プロセッサ18から入力された音声信号を増幅したのち、スピーカ20およびイヤホン端子21に出力する。
【0027】
無線LANモジュール24は、通信規格IEEE802.11b(使用周波数帯2.4GHz、通信速度11Mbps)に準拠した無線LANによって他のゲーム装置1とデータ通信を行い、ネットワークを構成するための通信モジュールである。
【0028】
[制御部の機能的構成]
図2は、図1に示すゲーム装置1が備える制御部30の機能的な構成を示すブロック図である。図2は、主に、上述したゲームシステムを実現するのに必要な機能を示している。前述したとおり、制御部30は、CPU11、描画データ生成プロセッサ12、RAM13、ROM14、描画処理プロセッサ15、および音声処理プロセッサ18を含むコンピュータとして動作する。そして、このコンピュータとして動作する制御部30は、ゲームメディア5から読み込んだゲームプログラム5aおよびゲームデータ5bを実行することによって、以下に説明するような機能を備える。
【0029】
すなわち、制御部30は、例えば、仮想空間生成手段31、音源初期位置設定手段32、発音制御手段33、音源移動手段34、およびキャラクタ制御手段35といった機能を発揮する。
【0030】
このうち、仮想空間生成手段31は、キャラクタが行動する3次元の仮想空間Vを生成する。仮想空間Vには、プレイヤキャラクタCおよび敵キャラクタEが対戦する仮想空間も含まれる。仮想空間Vには仮想カメラ(図示せず)が配置され、仮想カメラの撮像範囲が二次元画像としてゲーム画面に表示される。仮想カメラは、例えばプレイヤキャラクタCの所定距離後方に配置される。
【0031】
キャラクタ制御手段35は、仮想空間VにおけるプレイヤキャラクタCおよび敵キャラクタを含む様々なキャラクタの動作を制御する。例えば、キャラクタ制御手段35は、ユーザによる操作部22の操作に応じて、プレイヤキャラクタCの移動、攻撃、および防御を含む各種動作を制御する。また、キャラクタ制御手段35は、敵キャラクタによる移動、攻撃、および防御等の各種の動作も制御する。
【0032】
また、音源初期位置設定手段32は、仮想空間Vに所定の第1音源の初期位置を設定する。また、発音制御手段33は、第1音源の発音を制御する。また、音源移動手段34は、第1音源の発音の開始後、第1音源をオブジェクトとは独立して移動させる。
【0033】
[音源の配置態様]
図3は、本実施の形態における仮想空間に配置された第1音源の一例を示す仮想空間の平面図である。3次元の仮想空間Vには、地形がポリゴン、テクスチャ等で描画され、当該地形上に各種のオブジェクト(岩等の固定オブジェクト、各種キャラクタ等の移動オブジェクト等)が配置される。
【0034】
本実施の形態において、所定のオブジェクトには、第1音源S1の初期位置S1が設定される。すなわち、音源初期位置設定手段32は、仮想空間Vに配置された所定のオブジェクトの位置に基づいて第1音源S1の初期位置S1を設定する。図3の例においては、所定のオブジェクトとして敵キャラクタEに第1音源S1の初期位置S1が設定されている。この第1音源S1は、例えば敵キャラクタEの咆哮またはブレス攻撃時の効果音を発音するための音源である。なお、第1音源S1の初期位置S1は、発音イベント開始時に設定されてもよいし、発音イベントを開始したか否かによらず所定のオブジェクトに予め設定されていてもよい。
【0035】
ゲームデータ5bには、第1音源S1に関するデータとして、音声データ、配置先データ、相関関係データ、移動データ、または音響効果データ等が含まれる。音声データは、第1音源S1から発音する音のデータである。配置先データは、第1音源S1の初期位置S1が配置されるオブジェクトを示すデータである。相関関係データは、第1音源S1と聴取位置Lとの距離に対する音量の関係を示すデータである。移動速度データは、第1音源S1が移動する方向および移動速度等の移動内容を示すデータである。音響効果データは、第1音源S1の発音時に付加する音響効果(リバーブ等)の種類、適用要否等を示すデータである。
【0036】
本ゲームにおいて、音の聴取位置Lは、プレイヤキャラクタCに基づいて設定される。図3の例では、プレイヤキャラクタCの中心(頭部)位置に設定される。これに代えて、音の聴取位置Lは、プレイヤキャラクタCの所定距離前方または後方に設定されてもよい。また、例えば、プレイヤキャラクタCの後方にゲーム画面を撮像するための仮想カメラ(図示せず)が配置される場合、当該仮想カメラの位置に基づいて音の聴取位置Lが設定されてもよい。また、プレイヤキャラクタCと仮想カメラとの間に音の聴取位置Lが設定されてもよい。
【0037】
発音制御手段33は、所定の条件を満たした場合、第1音源S1に基づく発音イベントを発生させる。例えば、キャラクタ制御手段35は、敵キャラクタEとプレイヤキャラクタCとの距離が所定の距離未満となった場合に、敵キャラクタEが大音量で咆哮する叫び動作を行うよう制御する。この際、発音制御手段33は、叫び動作に伴う発音イベントを発生させる。
【0038】
発音制御手段33は、この発音イベントが発生すると、第1音源S1に関するデータを読み出し、第1音源S1から所定の音(本例ではブレス音)の発音を開始する。また、音源移動手段34は、第1音源S1の発音の開始後、第1音源S1を初期位置S1が設定された敵キャラクタEとは独立して移動させる。発音制御手段33は、プレイヤキャラクタC(音の聴取位置L)の位置を基準とする第1音源S1の相対位置に基づいて第1音源S1の発音を制御する。
【0039】
本例において、音源移動手段34は、第1音源S1の発音の開始後、第1音源S1をプレイヤキャラクタC(音の聴取位置L)に向かって移動させる。より具体的には、まず、音源移動手段34は、所定のタイミングごとに、第1音源S1の現在位置の座標およびプレイヤキャラクタCの位置座標を取得する。音源移動手段34は、取得した各座標からプレイヤキャラクタCの位置座標に向かう第1音源S1の移動方向を算出する。音源移動手段34は、第1音源S1の移動データから第1音源S1の移動速度を読み出し、第1音源S1を当該方向に向けて読み出した移動速度で移動させる。
【0040】
図3には、複数の時刻におけるプレイヤキャラクタCと第1音源S1とが図示されている。同時刻におけるプレイヤキャラクタCと第1音源S1とにおいて同じ添え字が付されている。すなわち、発音開始直後(第1音源S1が初期位置S1である場合)のプレイヤキャラクタの位置がCoで表され、発音開始後の時刻t(i=1,2,3,…)における第1音源の位置がS1で表され、同時刻tにおけるプレイヤキャラクタの位置がCで表されている。
【0041】
図4は、本実施の形態における第1音源の距離に対する音量を示すグラフである。図4には、プレイヤキャラクタCの位置と第1音源S1の位置との距離が近いほど第1音源S1の音量が大きく、距離が遠いほど第1音源S1の音量が小さくなるような音量曲線が示されている。この音量曲線は、相関関係データとしてゲームデータ5bに含まれている。発音制御手段33は、第1音源S1の発音を行う際に、当該相関関係データを読み出し、プレイヤキャラクタCの位置と第1音源S1の位置との距離に応じた音量で対応する音声データを再生する。このようにして、発音制御手段33は、プレイヤキャラクタCの位置と第1音源S1の位置との距離が近いほど第1音源S1の音量が大きくなるように制御する。
【0042】
上記態様によれば、第1音源S1は、その発音開始後、初期位置S1が設定された敵キャラクタEから離れ、オブジェクトとは独立して移動する。すなわち、図3に示す第1音源S1〜S1には対応して位置するオブジェクトが存在しない。より具体的には、第1音源S1は、音の聴取位置Lが配置されたプレイヤキャラクタCに向かって移動しながら発音する。本実施の形態では、第1音源S1が敵キャラクタEから独立して移動を開始した後、プレイヤキャラクタCが移動している場合、当該プレイヤキャラクタCの移動に追従して第1音源S1が移動する。すなわち、第1音源S1の進行方向が変化し、移動経路Pが曲線または折れ線になる。
【0043】
なお、上記態様は、例えば敵キャラクタEの位置から炎のような飛翔オブジェクトを飛ばすことにより、敵キャラクタEが口から炎などを吐くブレス攻撃を表現する態様とは明らかに異なる。すなわち、上記のようなブレス攻撃では、飛翔オブジェクト(炎)に音源が設定され、当該飛翔オブジェクトの移動に応じて音源も移動する。一方、本実施の形態における態様では、飛翔オブジェクトなどは存在せず、第1音源S1が独立して移動する。
【0044】
このような態様により、プレイヤキャラクタCの位置で聴取した場合の音を、第1音源S1の初期位置S1および移動開始後の第1音源S1とプレイヤキャラクタCとの位置関係に基づいて複雑に変化させることができる。特に、第1音源S1が音の聴取位置Lが位置するプレイヤキャラクタCに向かって移動するため、ユーザに、第1音源S1で発音される音(効果音等)がプレイヤキャラクタCに迫ってくるように感じさせることができる。このように、第1音源S1から発音される音について、より迫力のある発音表現を行うことができる。このような態様で発音を行うことにより、発音表現をより多様化することができる。
【0045】
また、上記態様によれば、第1音源S1の初期位置S1が所定のオブジェクトである敵キャラクタEに設定される。これにより、当該敵キャラクタEから発した音であることが明確となる。
【0046】
さらに、上記態様によれば、第1音源S1とプレイヤキャラクタCとの位置関係が近いほど当該第1音源S1の音量が大きくなり、当該第1音源S1の発音が強調される。また、第1音源S1は、プレイヤキャラクタCに向かって移動する。したがって、第1音源S1の音量は発音開始後だんだん大きくなる。このように、発音されてから音量が大きくなるまでに時間がかかる(徐々に音量が大きくなる)ため、より音が迫ってくるような迫力のある発音表現を行うことができる。また、例えば敵キャラクタEとプレイヤキャラクタCとの距離が遠い場合に、敵キャラクタEのブレス攻撃動作(視覚情報)に対して、それに伴う第1音源S1の発音がはっきりと聞こえてくるまでに時間がかかる。したがって、音速(視覚情報との時差)を表現することができる。
【0047】
なお、本実施の形態において、音源移動手段34は、第1音源S1が所定範囲A内に位置したか否かを判定する。音源移動手段34は、第1音源S1が所定範囲A内に位置したと判定した場合、その後は、現在の移動方向を維持する。図3に示すように、時刻tにおいて第1音源S1は、プレイヤキャラクタCを基準とする所定範囲A内に位置する。すなわち、時刻t以降において、第1音源S1は、直線移動する。この結果、第1音源S1は、プレイヤキャラクタCに接近した後、遠ざかるように移動する。
【0048】
さらに、発音制御手段33は、第1音源S1の移動に伴う音の周波数変化を反映した第1音源S1の発音を実行する。より具体的には、発音制御手段33は、第1音源S1がプレイヤキャラクタCに最接近するまで(発音開始から時刻tまでの間)は、第1音源S1から発音される音の周波数を高くし、第1音源S1がプレイヤキャラクタCから離れはじめてから(時刻t以降)は、第1音源S1から発音される音の周波数を低くする。
【0049】
これにより、第1音源S1の移動に基づいたドップラー効果の表現が可能となり、より迫力のある発音表現を行うことができる。
【0050】
なお、所定範囲Aは、本例のようなプレイヤキャラクタCを中心とする円に限られない。例えば、プレイヤキャラクタCの位置を含み、第1音源S1の移動方向に直交する面を基準面として第1音源S1が当該基準面を越えたか否かで移動態様およびドップラー効果の適用を切り替えてもよい。すなわち、基準面が、第1音源S1がプレイヤキャラクタCに近づいてくる期間において第1音源S1と対向する第1面と、第1面の反対側の第2面とで構成され、仮想空間Vを平面視した場合における基準面の第2面側の領域を所定範囲Aとしてもよい。
【0051】
次に、本実施の形態における変形例について説明する。図5は、本実施の形態における仮想空間に配置された第1音源の変形例を示す仮想空間の平面図である。本変形例においても図3の例と同様の態様については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0052】
本変形例においては、第1音源S1の初期位置S1が固定オブジェクトBに配置される。さらに、当該第1音源S1とは別に、固定オブジェクトBの位置に基づいて所定の第2音源S2a,S2bが配置される。なお、本変形例において、第2音源S2a,S2bは、固定オブジェクトBの基準位置(第1音源S1の位置)からそれぞれ所定距離離れた2つで一対の音源として構成されている。
【0053】
第2音源S2a,S2bから発音される音は、各音源からそれぞれ発音された音が組み合わせられることにより1つの音(効果音)を構成する。なお、第1音源S1の数および初期位置S1、ならびに、第2音源S2の数および位置は上記に限定されない。例えば、第2音源S2を1つとし、これを固定オブジェクトBの基準位置(図5の第1音源S1の初期位置S1)に配置してもよい。この場合、第1音源S1を2つとし、基準位置から所定距離離れた2か所(図5の第2音源S2a,S2bの位置)にこれらを配置してもよい。また、第1音源S1の数および/または初期位置S1が第2音源S2の数および/または位置と同じ位置であってもよい。
【0054】
発音制御手段33は、第1音源S1の発音と第2音源S2a,S2bの発音とを同時に開始させる。音源移動手段34は、第1音源S1および第2音源S2a,S2bの発音の開始後、第1音源S1を固定オブジェクトBとは独立して移動させ、第2音源S2a,S2bが固定オブジェクトBに配置された状態を維持させる。
【0055】
例えば、時刻tにおいて、プレイヤキャラクタCはCに位置している。第1音源S1は発音開始からプレイヤキャラクタCに向かって移動した結果S1に位置している(移動を継続している)。一方、第2音源S2a,S2bは、固定オブジェクトBに配置された状態が維持されている。
【0056】
例えば、第2音源S2a,S2bは、建物等の固定オブジェクトBが爆発する音として構成される。また、例えば、第1音源S1は、当該固定オブジェクトBが爆発した際の爆風の音(破片が飛び散る音等)として構成される。
【0057】
この場合、プレイヤキャラクタCと固定オブジェクトBとの距離がある程度以上離れていれば、第2音源S2a,S2bの発音(爆発音)が実行された後、第1音源S1の発音(爆風の音)が実行される。このとき、第1音源S1の発音は、プレイヤキャラクタCが固定オブジェクトBから遠ざかるように移動中であればプレイヤキャラクタCを追いかけるような音となる。また、第1音源S1の発音は、音量がプレイヤキャラクタCに近づくほど大きくなる。
【0058】
したがって、爆発が生じた後、爆風がその後からプレイヤキャラクタCに迫ってくるような発音表現をよりリアルに実現することができる。本例に限られず、第1音源S1と第2音源S2a,S2bとを組み合わせた発音表現を行うことで、より迫力のある発音表現をより多様に行うことができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0060】
例えば、第1音源S1の初期位置S1が設定されるオブジェクトは、上記例に限られない。当該オブジェクトは、固定オブジェクト(壁、天井、岩、木、家具、建物等)および移動オブジェクト(ノンプレイヤキャラクタ、飛翔物、乗物等)の何れでもよい。また、移動オブジェクトには、敵キャラクタEがブレス攻撃を行った際に敵キャラクタEの位置から移動を開始する飛翔オブジェクトも含まれる。この場合、飛翔オブジェクトが岩などのオブジェクトに当接した際の当該飛翔オブジェクトの位置に基づいて第1音源S1の初期位置S10が設定される。このときの第1音源S1は、例えば、飛翔オブジェクト(炎など)がオブジェクトに当接して飛散する音等として構成される。
【0061】
所定のオブジェクトの位置に基づいて設定される第1音源S1の初期位置S1を、仮想空間Vの所定位置(座標)を設定することにより間接的に設定してもよい。例えば、所定のノンプレイヤキャラクタが登場する仮想空間Vの位置に、当該ノンプレイヤキャラクタの鳴き声のための第1音源S1の初期位置S1が設定されてもよい。また、例えば、仮想空間Vの所定の投下領域内にランダムで爆弾が投下されるようなゲームにおいて、当該投下領域内にある所定の位置に、当該爆弾が爆発する音のための第1音源S1の初期位置S1が設定されてもよい。また、例えば、所定の移動オブジェクトが通過する通過領域内に、当該移動オブジェクトが通過する音のための第1音源S1の移動経路Pが位置するように設定されてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態において、当該第1音源S1が向かう対象となるプレイヤキャラクタCが移動した場合、オブジェクトから独立して移動している第1音源S1が、それに追随するように移動する態様を例示したが、これに限られない。例えば、音源移動手段34は、第1音源S1を、オブジェクトから独立して移動を開始するときのプレイヤキャラクタCの位置に向かうように第1音源S1を移動させてもよい。すなわち、第1音源S1の進路は、直進のみとしてもよい。
【0063】
また、上記実施の形態において、第1音源S1はプレイヤキャラクタCに向かって移動するように構成したが、これに限られない。例えば、音源移動手段34は、第1音源S1を、仮想空間Vの所定の位置(座標)、所定の固定オブジェクト、所定の移動オブジェクトの何れに向かって移動させてもよい。
【0064】
また、上記実施の形態においては、音の聴取位置LがプレイヤキャラクタCに基づいて配置される場合について説明したが、これに代えて、所定のオブジェクトまたは仮想空間Vの所定の位置に基づいて音の聴取位置Lが設定されてもよい。なお、音の聴取位置Lは、第1音源S1が向かう対象に配置されていてもよいし、それとは別に配置されていてもよい。
【0065】
音源移動手段34は、条件に応じてまたはランダムで、第1音源S1の移動態様を変更してもよい。第1音源S1の移動態様は、例えば、移動方向、第1音源S1が向かう対象、移動速度等の少なくとも何れか1つを含む。例えば、音源移動手段34は、プレイヤキャラクタCの位置(第1音源S1が向かう対象)を基準とする第1音源S1の位置に基づいて第1音源S1の移動速度を変更してもよい。例えば、音源移動手段34は、プレイヤキャラクタCと第1音源S1との距離が近いほど第1音源S1の移動速度が速くなる、または、遅くなるように制御してもよい。
【0066】
また、音源移動手段34は、条件に応じてまたはランダムで、第1音源S1をオブジェクトとは独立して移動させる場合と、第1音源S1がオブジェクトに固定された状態を維持する場合とを切り替えてもよい。
【0067】
また、音源移動手段34は、第1音源S1の発音後に、プレイヤキャラクタCが第1音源S1の移動方向に対して左右方向に移動した場合、プレイヤキャラクタCの移動方向とは反対側を通過するように第1音源S1を移動させてもよい。この場合、プレイヤキャラクタCの背後を第1音源S1が通過する。これにより、例えば第1音源S1が敵キャラクタEのブレス攻撃の音等である場合に、プレイヤキャラクタCの回避行動によってブレス攻撃を避けられた場合の音として、迫力のある音を実現することができる。
【0068】
第1音源S1が2つで一対となるように構成され、第1音源S1の発音後に、プレイヤキャラクタCが左右方向に移動しなかった場合、音源移動手段34は、プレイヤキャラクタCの両側を通過するように第1音源S1を移動させてもよい。
【0069】
また、上述した説明では、一人のユーザがオフラインゲームを行う場合について例示したが、本発明は、複数のユーザが各自のプレイヤキャラクタを同一の仮想ゲーム空間内に登場させ、これらを協力させて行動させるオンラインゲームにおいても適用することができる。
【0070】
また、上記実施の形態では携帯型のゲーム装置について説明したが、据え置き型のゲーム装置、携帯電話機、およびパーソナルコンピュータなどのコンピュータについても、本発明を好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、音の発音表現をより多様化することができるゲームプログラムおよびゲーム装置を提供するために有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 ゲーム装置
30 制御部(コンピュータ)
31 仮想空間生成手段
32 音源初期位置設定手段
33 発音制御手段
34 音源移動手段
35 キャラクタ制御手段
C プレイヤキャラクタ
S1 第1音源
S2a,S2b 第2音源
S1 初期位置
V 仮想空間
図1
図2
図3
図4
図5