【課題】持続的気道陽圧法又は非侵襲的陽圧換気法などによる睡眠呼吸障害の治療における療法効果及び患者による療法の順守を向上させるマスクシステムの代替構成を提供する。
【解決手段】加圧された呼吸可能な気体を供給するためのマスクシステムは、少なくとも1枚のパネルとシール部材とを含み、パネルは布地を含む。パネルは、患者の鼻を受け入れるようになされた空洞部を画定する。シール部材は、患者の顔に密封係合するようになされている。パネルとシール部材は、一部材で一体的に形成されてもよい。
前記ヘッドギアは本質的に前記ストラップのみから成り、前記ストラップは前記マスクの前記第1の側部及び反対側の第2の側部に結合されていることを特徴とする請求項5に記載のマスクシステム。
前記ストラップは、前記マスクの前記第1の側部に固定して結合されるとともに、前記マスクの前記第2の側部に調節可能に結合されていることを特徴とする請求項6に記載のマスクシステム。
前記ストラップは、前記マスクを前記患者の顔と密封係合するように引っ張る張力を前記マスクにかけるように構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のマスクシステム。
前記アンカー部材は、前記マスクが着用されるときに前記患者の後頭部の下となるように位置付けられた位置で前記ストラップに取り付けられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のマスクシステム。
前記アンカー部材は、前記マスクが着用されるときに前記患者の首筋に近接するように位置付けられた位置で前記ストラップに取り付けられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のマスクシステム。
前記アンカー部材は、前記マスクが着用されるときに前記患者の耳の下となるように位置付けられた位置で前記ストラップに取り付けられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のマスクシステム。
前記アンカー部材は、前記給気導管が前記患者の耳の下かつ前記ストラップの上において前記ストラップに平行に前記患者の顔に沿って経路付けられるのを容易化するように構成されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のマスクシステム。
前記アンカー部材は、前記給気導管を、前記患者の耳の下で前記患者の顔に沿って、前記ストラップの経路に従って導くように構成されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のマスクシステム。
前記マスクの前記第1の側部に取り付けられたカフをさらに備え、前記給気導管が前記カフに接続されていることを特徴とする請求項4〜15のいずれか一項に記載のマスクシステム。
前記マスクは、布地材から構成された後部パネルを含み、前記後部パネルは、患者の鼻を受け入れるように適用された空洞部を少なくとも部分的に画定することを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載のマスクシステム。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1-1】開示される技術の一例による患者の顔の上に位置する鼻マスクシステムの側面図である。
【
図1-2】患者の顔から取り外された
図1の鼻マスクシステムの側面図である。
【
図1-3】
図1−2の鼻マスクシステムの第1の斜視図である。
【
図1-4】
図1−2の鼻マスクシステムの第2の斜視図である。
【
図1-5】
図1−2の鼻マスクシステムの背面図である。
【
図1-6】
図1−2の鼻マスクシステムの正面図である。
【
図1-7】
図1−2の鼻マスクシステムの上面図である。
【
図1-8】
図1−2の鼻マスクシステムの底面図である。
【
図1-9】
図1−2の鼻マスクシステムの第1の分解斜視図である。
【
図1-10】
図1−2の鼻マスクシステムの第2の分解斜視図である。
【
図1-11】
図1−5の線1−11−−1−11に沿った断面図である。
【
図1-12】
図1−5の線1−12−−1−12に沿った断面の斜視図である。
【
図1-13】
図1−5の線1−12−−1−12と同様な線に沿った断面の側面図である。
【
図2-1】開示される技術の一例による患者の顔の上に位置する後部パネル及びシール部材の正面図である。
【
図2-2】
図2−1の後部パネル及びシール部材の斜視図である。
【
図3-1】開示される技術の一例によるマスクの垂直断面図である。
【
図3-1A】開示される技術の一例による患者の顔の上に位置するように示されている
図3−1のマスクの水平断面図である。
【
図3-2】開示される技術の一例による患者の顔の上に位置するマスクの水平断面図である。
【
図4-1】開示される技術の一例によるマスクの垂直断面図である。
【
図4-1A】開示される技術の一例による患者の顔の上に位置するように示されている
図4−1のマスクの水平断面図である。
【
図5-1】開示される技術の一例による隆起部を有するマスクの斜視図である。
【
図5-2】
図5−1のマスクの一部の斜視図である。
【
図5-2A】開示される技術の一例による患者の顔の上に位置する
図5−2のマスク部分を示す図である。
【
図5-3】開示される技術の一例による患者の顔の上に位置するマスクの部分断面を示す概略図である。
【
図5-4】開示される技術の一例による患者の顔の上に位置するマスクの水平断面図である。
【
図5-5】開示される技術の一例によるマスクに連結された詰め物を示すマスクの部分断面図である。
【
図5-6】開示される技術の一例によるマスクに連結された詰め物を示すマスクの部分断面図である。
【
図5-7】開示される技術の一例によるマスクに連結された詰め物を示すマスクの部分断面図である。
【
図5-8A】開示される技術の一例による詰め物を含むマスクの斜視図である。
【
図5-8C】開示される技術の一例による比較的小さい鼻梁高さを有する患者上に位置する
図5−8Aのマスクの断面図である。
【
図5-8D】開示される技術の一例による比較的大きい鼻梁高さを有する患者上に位置する
図5−8Aのマスクの断面図である。
【
図6-1】開示される技術の一例による剛体化部材を含むマスクの垂直断面図である。
【
図7-1】開示される技術の一例による剛体化部材を含むマスクの部分の正面図である。
【
図7-2】開示される技術の一例による剛体化部材を含むマスクの部分の斜視図である。
【
図7-3】開示される技術の一例による患者の顔の上に位置する剛体化部材を含むマスクの部分の斜視図である。
【
図8-1】開示される技術の一例による患者の顔の上に位置する剛体化部材を含むマスクの水平断面図である。
【
図8-2】開示される技術の一例による患者の顔の上に位置する剛体化部材を含むマスクの水平断面図である。
【
図9】比較的幅の狭い鼻を有する患者及び比較的幅の広い鼻を有する患者上に位置するマスクの概略図である。
【
図10-1】開示される技術の一例による多層シール部材を有するマスクシステムの斜視図である。
【
図10-2】開示される技術の一例による多層シール部材の分解斜視図である。
【
図11-1】開示される技術の一例による患者の顔の上に位置するシール部材のベース層を示す図である。
【
図11-3】開示される技術の一例による、
図11−1のベース層が患者の顔の上の所定の位置に引っ張られた状態を示す正面図である。
【
図11-4】開示される技術の一例による、
図11−1のベース層が患者の顔の上の所定の位置に引っ張られた状態を示す側面図である。
【
図12-1】開示される技術の一例による、シール部材のベース層及び緩衝層を示す正面図である。
【
図12-2】開示される技術の一例による、患者の顔の上に位置する
図12−1のベース層及び緩衝層を示す図である。
【
図12-3】開示される技術の一例による、患者の顔の上に位置する緩衝層を有さないシール部材を含む緩衝体の概略図である。
【
図12-4】開示される技術の一例による、患者の顔に緩衝層が位置するシール部材を含む緩衝体の概略図である。
【
図13-1】開示される技術の一例によるシール部材のベース層、緩衝層、及び界面層を示す正面図である。
【
図13-3】開示される技術の一例による、
図13−1のベース層、緩衝層、及び界面層が患者の顔の上の所定の位置に引っ張られた状態を示す正面図である。
【
図13-4】開示される技術の一例による、
図13−1のベース層、緩衝層、及び界面層が患者の顔の上の所定の位置に引っ張られた状態を示す側面図である。
【
図14】開示される技術の一例によるシール部材の各層を示す図である。
【
図15-1】開示される技術の一例によるマスクシステムの斜視図である。
【
図15-2】開示される技術の一例による、
図15−1のマスクシステムが患者の顔の上に位置する状態を示す図である。
【
図15-3】
図15−1のマスクシステムの上側パネル及び下側パネルの正面図である。
【
図15-5】開示される技術の一例による、患者の顔の上に位置する上側パネルの概略図である。
【
図15-6】開示される技術の一例による、患者の顔の上に位置する下側パネルの概略図である。
【
図15-7】開示される技術の一例による、
図15−1の上側パネル及び下側パネルが患者の顔の上の所定の位置に引っ張られる状態を示す正面図である。
【
図16-1】開示される技術の一例によるマスクシステムの分解図である。
【
図16-2】開示される技術の一例によるマスクシステムの分解斜視図である。
【
図16-3】開示される技術の一例によるマスクシステムの斜視図である。
【
図16-4】
図16−3の線16−4−−16−4に沿った断面図である。
【
図16-5】
図16−3の線16−5−−16−5に沿った断面図である。
【
図17-1】開示される技術の一例によるマスクの斜視図である。
【
図17-4】開示される技術の一例による、患者の顔の上に位置する
図17−1のマスクの側面図である。
【
図17-5】開示される技術の一例による、組立て前のマスク各部を示す正面図である。
【
図18-1】開示される技術の一例によるマスクシステムの斜視図である。
【
図18-2】開示される技術の一例によるマスクシステムの斜視図である。
【
図18-3】
図18−2の線18−3−−18−3に沿った断面図である。
【
図18-4A】開示される技術の一例による、患者の頭部上に位置するヘッドギアの正面斜視図である。
【
図18-4B】
図18−4Aのヘッドギアの側面斜視図である。
【
図18-5】開示される技術の一例によるマスクシステムの斜視図である。
【
図18-6A】開示される技術の一例によるヘッドギアの斜視図である。
【
図18-6B】開示される技術の一例によるヘッドギアの斜視図である。
【
図18-6C】開示される技術の一例によるヘッドギアの斜視図である。
【
図18-6D】開示される技術の一例によるヘッドギアの斜視図である。
【
図18-6E】
図18−6Dのヘッドギア締結部の拡大正面図である。
【
図18-7A】クッションタブを含むマスクの斜視図である。
【
図18-7B】クッションタブを含むマスクの斜視図である。
【
図19-1】開示される技術の一例によるマスクシステムの斜視図である。
【
図19-2】開示される技術の一例による、患者の顔の上に位置する部分マスクシステムの正面図である。
【
図19-3】開示される技術の一例による、患者の顔の上に位置する部分マスクシステムの正面図である。
【
図19-4】開示される技術の一例による、患者の顔の上に位置する部分マスクシステムの側面図である。
【
図19-5】開示される技術の一例による、患者の顔の上に位置する部分マスクシステムの側面図である。
【
図20】開示される技術の一例によるマスクシステムの斜視図である。
【
図21-1A】開示される技術の一例による給気チューブを示す図である。
【
図21-1B】開示される技術の一例による給気チューブを示す図である。
【
図21-2】開示される技術の一例による給気チューブを示す図である。
【
図21-3A】開示される技術の一例による給気チューブの正面図である。
【
図21-3B】開示される技術の一例による、給気チューブ及びマスクの前部分の連結部の拡大詳細図である。
【
図21-4】開示される技術の一例による給気チューブの断面図である。
【
図21-5A】開示される技術の一例による、給気チューブを製造するプロセスを示す図である。
【
図21-5B】開示される技術の一例による、給気チューブを製造するプロセスを示す図である。
【
図21-5C】開示される技術の一例による、給気チューブを製造するプロセスを示す図である。
【
図21-5D】開示される技術の一例による、給気チューブを製造するプロセスを示す図である。
【
図21-6A】開示される技術の一例による給気チューブの斜視図である。
【
図21-7A】開示される技術の一例によるチューブシートの正面図である。
【
図21-7B】開示される技術の一例による、
図21−7Aのチューブシートがチューブに形成される状態を示す斜視図である。
【
図21-8A】開示される技術の一例による支持構造の上面図である。
【
図21-8B】開示される技術の一例による
図21−8Aの支持構造を含む給気チューブの端面図である。
【
図21-9】開示される技術の一例による支持構造の斜視図である。
【
図21-10】開示される技術の一例による支持構造の斜視図である。
【
図21-11】開示される技術の一例による支持構造の斜視図である。
【
図21-12A】開示される技術の一例による支持構造の斜視図である。
【
図21-13】開示される技術の一例による支持構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下の説明は、共通の特性及び特徴を共有することのできるいくつかの例(大部分の例は図示されているが、図示されていない例もある)に関する。任意のある例の1つまたは複数の特徴を他の例の1つまたは複数の特徴と組み合わせてもよいことを理解されたい。更に、任意の例の任意の単一の特徴または特徴の組合せが更なる例を構成してもよい。
【0042】
本明細書では、「comprising」という用語はその「オープン」な意味、すなわち、「including(含む)」という意味で理解されるべきであり、従って、その「クローズ」な意味、すなわち、「consisting only of(のみからなる)」の意味に限定すべきではない。対応する意味は、「comprise」、「comprised」、及び「comprises」が現れたときにそれらの用語に帰する。
【0043】
「air(空気)」という単語は、呼吸可能な気体、例えば補助酸素を含む空気を含むものと解釈される。本明細書で説明する呼吸療法装置または送風装置は、空気以外の流体を送るように設計されてもよい。
【0044】
1つまたは複数の例は例示的な寸法を含んでもよい。特定の寸法及び範囲が示されることがあるが、これらの寸法及び範囲が例示的なものに過ぎず、用途に応じて他の寸法及び範囲が可能であることを理解されたい。例えば、示される範囲から±10%変動する範囲が特定の用途に適切であることがある。
【0045】
本明細書では、「resilience(弾力性)」という用語の任意の参照は、変形後に跳ね返るかまたは元の形状に戻ることのできる材料を意味すると定義される。この材料が元の形状に戻るかまたは跳ね返るのにかかる時間は、約1秒未満であってもよい。
【0046】
本明細書では、手触り(handle or hand)は、接触の感覚から得られる反応によって評価される生地または糸の品質を意味すると定義され、粗さ、滑らかさ、ゴツゴツ感、柔軟性、厚さ等の判定に関する。
【0047】
実質的な剛性は、指の圧力を受けても容易に変形しないことを意味すると解釈される。実質的な非剛性は、指の圧力を受けたときに容易に変形することを意味すると解釈される。
【0048】
1.0 マスクシステム
開示される技術の各例は、目障りではなく、心地よく、見た目がよく、密着しやすく、大量生産が可能であり、患者に対する効果的なシールを構成し、且つ/あるいは多くの人に適合するマスクシステム(例えば、鼻マスクシステム)を対象とする。以下の各例は、鼻型インターフェースを含むように記載されているが、本技術の各態様は、他の適切なインターフェースタイプ、例えばフルフェース、口腔鼻、口、枕、プロング等と一緒に使用できるように構成されてもよい。
【0049】
図1−1〜
図1−13に示す開示される技術の一例によれば、マスクシステムは、患者の顔に係合して患者の顔を密封し呼吸可能な気体を患者の気道に送るように構成された患者インターフェース(例えば、マスク10)を含む。患者インターフェースは、気体を呼吸装置から患者の気道へ送るように構成されたチャンバ、ポケット、または包囲部分を形成してもよい。
図1−2に示すように、マスク10は、患者接触側12と非患者接触側14とを含む。
図1−10〜
図1−12に最もよく示されているように、後部パネル20と前部パネル30が接合され、患者の鼻を受け入れる空洞部16を形成している。シール部材40が、後部パネル20に取り付けられ、患者の顔に係合して患者の顔に対するシールを形成している。
【0050】
マスク10の各側はカフ50に結合されてもよい。カフ50は、呼吸可能な加圧された気体の供給を給気チューブから受け入れるように給気チューブに結合されるように構成される。マスクが1つのカフのみに結合されてもよいことが理解されよう。カフは、必要に応じてプラグまたはシール装置によって密封されてもよい。マスクは、ヘッドギアによって患者の顔の上に保持されることが好ましい。
【0051】
後部パネル20は、患者の顔の近くにまたは患者の顔に近接して位置するように構成され配置されてもよい。後部パネル20は、概ね三角形状または台形状を有する。しかし、他の形状、例えば楕円形、円形、方形等が使用されてもよい。後部パネル20は、マスクの向きに関して患者に視覚的な手掛かりを形成するように形作られることが好ましい。例えば、三角形は、後部パネル20の頂点が鼻梁領域に位置付けられるべきであり、且つ後部パネルの各辺が患者の頬または鼻の側面に沿って位置付けられるべきであることを患者に示す傾向がある。
【0052】
後部パネル20は、患者の顔を横切って(鼻の左側から右側にかけて)概ね凹状を有してもよい。そのような構成は、人間の顔の形状に解剖学的に一致するので患者の顔をより容易に密封することができる。
【0053】
後部パネル20は、本体21と、本体の上側周縁に沿った上側フランジ22と、本体の下側周縁に沿った下側フランジ24とを含む。上側フランジ22は上側係合面23を含み、下側フランジ24は下側係合面25を含む。上側係合面23と下側係合面25は、以下に説明するように、互いに密封係合し、前部パネル30の対応する面に結合されてマスク10を形成する。開口部26は、後部パネル20の本体21に形成され、患者の鼻を受け入れ且つ呼吸可能な気体が患者の気道まで通過するのを可能にするように構成される。開口部26は、概ね三角形状または任意の他の適切な形状を有してもよい。
【0054】
後部パネル20の本体21は、
図1−9及び
図1−10に示すように、上側フランジ22から下側フランジ24に至る湾曲を有することが好ましい。そのような湾曲は、前部パネル30と一緒に、空洞部16を形成する空間を形成する。本体の左側面部及び右側面部は、カフ50に密封係合するカフ連結面28、28を含んでもよい。
図1−11及び
図1−13に示すように、後部パネル20の本体21は、シール部材40に密封係合する係合部分21−1を含む。
【0055】
代替構成において、後部パネル20の本体21は、実質的に平坦または平面状であってもよく、患者の顔の湾曲に合わせて撓むかまたは湾曲に適合することができる。
【0056】
図1−10に最もよく示されているように、上側フランジ22は、患者の顔の鼻梁領域に適合するように構成された中央頂点を形成するように傾斜してもよい。下側フランジ24は、患者の上唇及び鼻の下側部分に適合するように形作られてもよい。例えば、
図1−9に最もよく示されているように、下側フランジ24は、より低い程度の波形部27を形成する中央部分29を有する少なくとも2つの湾曲部分または波形部27を備えてもよい。中央部分29は、患者の中隔領域または人中領域を収容するように構成された凸状湾曲を形成してもよい。
【0057】
後部パネル20は布地で構成されてもよい。そのような布地は、気体を布地の繊維を通過させ得ない空気保持布地または気密布地であってもよい。例えば、布地は、生地の第1の層とポリマーの第2の層とを有する複合材(すなわち、コーティングされた布地)であってもよい。ポリマーの第2の層は、膜、スプレー塗装、または第1の層を密封するように構成された他の構成であってもよい。
【0058】
後部パネル20は患者の顔に接触することがあるので生地は柔らかく適合性であることが好ましい。従って、生地は柔らかい布地、例えば綿、サテン、マイクロフリース、ナイロン、ポーラフリース、ベルベット、コーデュロイ等であってもよい。寝具に使用されるような材料はマスクの心地よさ及び望ましい性質を向上させるので、このような材料を外面に備えると患者がマスクに適応するうえで助けになる。この場合、マスクは、患者にとって、より魅力的である場合がある非医学的な外観を有する。ポリマーは、例えばポリウレタン、ポリエステル、シリコーン、ナイロン等であってもよい。
【0059】
一例において、後部パネル20は、高さ(例えば、中央部分29から上側フランジ22の頂点まで)が約45mm〜80mm(例えば、50mm〜70mm、または約60mm、または約65mm)である。
【0060】
一例において、後部パネル20は、幅(例えば、下側フランジ24の一方の端部から下側フランジの他方の端部まで)が約80mm〜120mm(例えば、90mm〜110mm、または約100mm、または約96mm)であってもよい。
【0061】
一例において、開口部26は、高さが約20mm〜50mm(例えば、35mm〜60mm、または約35mm、または約40mm)である。
【0062】
一例において、開口部は、幅が約20mm〜50mm(例えば、25mm〜45mm、または約35mm)である。
【0063】
前部パネル30は、マスク10の非患者接触側に位置する。前部パネル30は全体として三角形または台形を形成するが、楕円形、円形、方形のような他の適切な形状を使用してもよい。前部パネル30は後部パネル20の形状に類似した形状を有することが好ましい。
【0064】
図1−9及び
図1−10に最もよく示されているように、前部パネル30は、本体31と、本体の上側周縁に沿った上側フランジ32と、本体の下側周縁に沿った下側フランジ34とを含む。上側フランジ32は上側係合面33を含み、下側フランジ34は下側係合面35を含む。上側係合面33と下側係合面35は、互いに密封係合し、後部パネル20の上側係合面23及び下側係合面25に結合されてマスク10を形成する。
【0065】
前部パネル30の本体31は、
図1−1、
図1−10、及び
図1−11に示すように、上側フランジ32から下側フランジ34に至る湾曲を有することが好ましい。この湾曲は、空洞部16を形成して患者の鼻を収容する空間を形成するのを助ける。本体31の各側面部は、カフ50に密封係合するカフ連結面38を含んでもよい。
【0066】
図1−6に最もよく示されているように、上側フランジ32は、患者の顔の鼻梁領域に適合するように中央頂点を形成するように傾斜してもよい。下側フランジ34は、患者の上唇及び鼻の下側部分に適合するように形作られてもよい。例えば、
図1−9に最もよく示されているように、下側フランジ34は、波形部37の最下方位置を形成する中央部分39を有する少なくとも2つの湾曲部分または波形部37を備えてもよい。中央部分39は、患者の中隔領域または人中領域を収容するように構成された凸状湾曲を形成してもよい。
【0067】
前部パネル30は布地で構成されてもよい。この布地は、気体を布地の繊維を通過させ得ない空気保持布地または気密布地であってもよい。例えば、布地は、生地の第1の層とポリマーの第2の層とを有する複合材(すなわち、コーティングされた布地)であってもよい。ポリマーの第2の層は、膜、スプレー塗装、または第1の層を密封するように構成された他の構成であってもよい。代替形態では、前部パネル30は、患者の鼻が臨床医から見えるように、例えばポリカーボネート、ポリプロピレン、またはシリコーンを含む透明な材料または概ね透明な材料で構成または形成されてもよい。
【0068】
前部パネル30は通気部分を含んでもよい。例えば、通気構成部材(グロメットまたは挿入可能な通気構成部材)が前部パネル30に密封可能に取り付けられてもよい。通気構成部材は、通気穴の開存性を維持し且つ通気雑音を低減させるように実質的な剛性または半剛性を有してもよい。代替として、前部パネル30の生地は、生地の一部が気密ではなく、それによって通気口として働くように選択的に密封されてもよい。
【0069】
使用に際して、マスク内に陽空気圧を加えたときに薄い材料のシール部材(例えば、この例では、布地及び/またはエラストマから作られたフラップシール)が自己密封作用を有することができ、従って、前部パネル30の布地を硬直させることができ、それによって、患者の鼻を収容するより大きい空間が形成される。
【0070】
一例において、前部パネルは、高さが約45mm〜80mm(例えば、50mm〜70mm、または約60mm、または約65mm)である。
【0071】
一例において、前部パネル30は、幅(例えば、下側フランジ34の一方の端部から下側フランジの他方の端部まで)が約80mm〜120mm(例えば、90mm〜110mm、または約100mm、または約96mm)である。
【0072】
一例において、前部パネル30は、
図1−2に示すような、垂直軸に沿った曲率半径αが約10mm〜30mm(例えば、10mm〜25mmまたは約15mm)である。
【0073】
一例において、前部パネル30は、
図1−7に示すような、水平軸に沿った曲率半径βが約10mm〜30mm(例えば、10mm〜25mmまたは約15mm)である。
【0074】
マスクの使用に際して前部パネル30が最も目につくので生地は見た目が良いことが好ましい。生地は、見た目が分厚くない柔らかい布地、例えばナイロン、綿、リネン、ダズル、絹等であってもよい。ポリマーはポリウレタン、ポリエステル、シリコーン、ナイロン等であってもよい。
【0075】
後部パネル20と前部パネル30は一体的に形成されてもよい。後部パネル20と前部パネル30は、溶接、熱処理、またはその他の方法によって密封係合されてもよい。代替として、後部パネル20と前部パネル30は、縫製またはその他の適切な方法によって密封係合されてもよい。
【0076】
一例において、後部パネル20の上側フランジ22と前部パネル30の上側フランジ32が揃えられてもよい。同様に、後部パネル20の下側フランジ24と前部パネル30の下側フランジ34が揃えられてもよい。後部パネル20及び前部パネル30の上側係合面23、33、と下側係合面25、35は、高周波溶接または超音波溶接を使用して溶接されてもよい。高周波溶接部は、気密の空洞部を形成するうえで好ましいことがあるより頑丈なシールを形成することができる。溶接部は、マスク10の形状が3次元になるように3次元でありうることが好ましい。更なる例では、まず高周波溶接部を形成し、その後超音波切断部を形成してもよい。超音波切断部は、布地の縁部を丸くするかまたは別の形で湾曲させて顔に痕が付くのを防止し、それによって患者の心地よさを向上させることができる。
【0077】
一例において、後部パネル20の上側係合面23及び下側係合面25並びに前部パネル30の上側係合面33及び下側係合面35は幅が約1mm〜10mm(例えば、2mm〜6mm)である。
【0078】
ヘッドギアは、マスクに取り付けられるかまたはその他の方法で連結されてもよい。代替として、ヘッドギアは、前部パネル30及び/または後部パネル20と一緒に形成されるかあるいは前部パネル30及び/または後部パネル20の一部として形成されてもよい。
【0079】
剛体化装置(または硬直部材)(rigidizer (or stiffening element))が、前部パネル30及び/または後部パネル20と一緒に形成されるかあるいは前部パネル30及び/または後部パネル20に取り付けられてもよい。剛体化装置は、構造を安定させ、マスク10を支持することができる。例えば、剛体化装置は、ポリマーのシャフトまたはフレームのような半剛性または剛性を有する構成部材であってもよい。剛体化装置は、例えば、(患者の顔の鼻梁領域(nasal bridge region)及び/または鼻梁領域に隣接する患者の鼻の側面で顔の湾曲を密封するのは特に困難であるので、これらの領域を確実に密封するように)患者の顔の鼻梁領域に位置してもよく、且つ/あるいは例えば、患者の顔の上唇領域及び/または鼻の角部に位置してもよい。更に、剛体化装置はカフ(cuff)50同士を相互に連結してもよい。
【0080】
シール部材40は、
図1−5及び
図1−10に最もよく示されているように、患者の顔に密封係合するように構成される。シール部材40は、本体41と本体に形成された開口部46とを含む。本体41は、後部パネル20の係合部分21−1に密封係合するかまたは別の形で係合部分21−1に取り付けられた連結部41−1を含む。
【0081】
シール部材40は、患者の気道に近接し且つ患者の気道に密封係合するように位置付けられるように構成され配置されてもよい。シール部材40は、概ね三角形状または台形状を有する。代替形状も可能である(例えば楕円形、円形、方形等)。シール部材40は、マスクの向きに関して患者に視覚的な手掛かりを形成するように形作られることが好ましい。例えば、三角形は、シール部材40の頂点が鼻梁領域の近くに位置付けられるべきであることを患者に示す傾向がある。
【0082】
シール部材の本体41に形成された開口部46は三角形状または三角小葉形状を有してもよいが、他の適切な形状を使用してもよい。
【0083】
シール部材40はポリマーで構成されてもよい。このポリマーは、患者の顔の形状に容易に適応し適合するように低い硬度を有しうることが好ましい。例えば、このポリマーは、タイプA硬さまたはショアA硬さが5〜20であり厚さが約0.3mm〜2mmである(例えば、ショアA硬さが5〜10であり厚さが0.3mm〜2mmである)シリコーン、熱可塑性エラストマ、ポリウレタン等であってもよい。このポリマーは、デュロメータ硬さが低くてもよく、例えばタイプ00硬さまたはショア00硬さが20〜40であってもよい。
【0084】
更なる代替例では、シール部材40は、患者の顔をよりうまく把持し、それによって、より頑丈なシールを形成するように粘着性または付着性を有する材料で構成されてもよい。粘着性は、表面仕上げ、接着剤の塗布、または材料特性(例えば、低デュロメータ硬さのシリコーン、例えば、タイプ00硬さまたはショア00硬さが5〜20のシリコーンは、本来粘着性を有する)によって付与されてもよい。
【0085】
更なる代替例では、シール部材40は布地で構成されてもよい。代替として、シール部材40は、粘着性材料と布地のような材料の組合せで構成されてもよい。
【0086】
前述のように、シール部材40は後部パネル20に密封係合する。シール部材40は、後部パネル20に熱成形、オーバーモールド、接着、溶接、またはその他の方法で連結することが可能である。シール部材40の連結部41−1と後部パネル20の係合部分21−1が重なり合い、シール部材40と後部パネル20が確実に密封係合して漏れ経路を防止することが好ましい。一例において、重なり合う部分は幅が約1mm〜10mm(例えば、2mm〜6mm)であってもよい。
【0087】
一例において、シール部材40は高さが約30mm〜60mm(例えば、40mm〜60mm、または約55mm、または約45mm)である。
【0088】
一例において、シール部材40は幅が約50mm〜80mm(例えば、60mm〜70mm、または約65mm、または約53mm)である。
【0089】
一例において、シール部材開口部46は高さが約15mm〜35mm(例えば、20mm〜30mm、または約25mm、または約30mm)である。
【0090】
一例において、シール部材開口部46は幅が約20mm〜40mm(例えば、30mm〜40mm、または約35mm)である。
【0091】
マスクシステムは、
図1−5及び
図1−9に最もよく示されているように、マスク10の側部に結合された1つまたは複数のカフ50を含んでもよい。カフは、雄カフであってもよく(すなわち、マスク10から突き出していてもよく)、または雌カフであってもよい(すなわち、マスク10の境界内に含められていてもよい)。図示の例では、カフ50は雄カフである。各カフ50は、本体51とフランジ54とを含む。中空部分52は、給気チューブによって供給される呼吸可能な気体を通過させるために、本体51及びフランジ54を貫通するように形成される。
図1−1及び
図1−10に示すように、フランジ54は、例えば接着、熱成形、または溶接(例えば、高周波、超音波)によって後部パネル20と前部パネル30のカフ連結面28、38を密封係合させるように構成される。
【0092】
カフ50は、概ね管状を有し、例えば楕円形断面を有する形状を有してもよい。円形、方形、丸い角部を有する矩形、卵形のような代替形状及び代替断面を使用してもよい。
【0093】
フランジ54は、給気チューブを位置付けるのを助けてもよい。例えば、給気チューブは、給気チューブが正しく位置付けられたことを示すように配置することのできるフランジ54に達するまでカフ50の上方を滑ってもよい。
【0094】
カフ50はポリマーで構成されてもよい。ポリマーは、給気チューブからマスク10に送られる空気が制限されないように半剛性または剛性を有しうることが好ましい。カフ50は、例えばナイロン、ポリプロピレン、ポリカーボネートで構成されてもよい。
【0095】
一例において、カフ50は、その最長軸に沿った内のり幅が約15mm〜25mm(例えば、約20mm)である。
【0096】
一例において、カフ50は、その最短軸に沿った内のり幅が約5mm〜15mm(例えば、約8.5mm)である。
【0097】
一例において、カフ50は、厚さが約1mm〜3mm(例えば、約2.5mm、または約1.5mm)である。
【0098】
単一の給気チューブが一方のカフ50に連結されてもよく、一方、他方のカフ50はプラグ(不図示)によって密封される。代替として、2本の給気チューブがそれぞれ2つのカフ50に連結されてもよい。
【0099】
ヘッドギアはカフ50に取り付けられてもよい。ヘッドギアは、呼吸可能な気体をカフ50に送るための導管として形成されてもよい。
【0100】
一方または両方のカフまたは連結部50に通気口が設けられてもよい。通気口は、排出された気体(例えば、CO
2)をマスク10から流出させるように構成された一連の穴を備えてもよい。カフは、通気穴の開存性を維持し通気雑音を低減させるように実質的な剛性または半剛性を有することが好ましい。
【0101】
カフは、マスク10のサイズを小さくし、チューブとより容易に連結できるようにし、且つ取付け及び取外しがカフではなくチューブまたはコネクタ(雌カフに連結されるように構成されたコネクタ)によって行われるようにチューブまたはコネクタが解放ボタンを有するのを可能にするように雌カフとして構成されうることが好ましい。
【0102】
カフは、ヘッドギアに組み込まれて(例えば、ヘッドギア剛体化装置の一部を形成して)よい。カフは、ヘッドギアまたはヘッドギアコネクタとの連結点を形成してもよい。
【0103】
2.0 密封構成
図2−1及び
図2−2に示す例において、シール部材40−1は後部パネル20−1に結合され、シール部材40−1と後部パネル20−1の両方が患者の鼻を受け入れる開口部を含む。前部パネルは、
図2−1及び
図2−2では図示の都合上取り外されている。
【0104】
後部パネル20−1は、患者の皮膚との界面を有する柔らかい接触面を形成してもよい(例えば、フリースまたはCoolmax(登録商標)仕上げ)。心地よさを向上させるために、厚い詰め物部が、後部パネル20−1の、鼻梁領域及び上唇領域のような高圧領域の周りに形成されてもよい。更に、後部パネル20−1は、後部パネルを支持し且つ/あるいは後部パネルを形作るように剛性を有する部分を含んでもよい。
【0105】
ヘッドギア60は、ストラップ62を含み、後部パネル20−1に連結されてもよい。ヘッドギアは、ループタブまたはその他の連結構造によって調整可能であってもよく、且つ/あるいはストラップ62に弾性を付与することによって自動調整可能であってもよい。
【0106】
シール部材40−1は、薄い弾性部材として構成されて、且つ例えば積層またはオーバーモールドによって、例えば布地、ポリマー(例えば、シリコーン、ポリウレタン)、または布地とポリマーの組合せで形成されてもよい。薄い弾性シール部材40−1は、患者の顔(例えば、鼻)の形状に適合するように構成される。ヘッドギア60によって力が後部パネル20に加えられ、更にシール部材40−1に加えられると、シール部材40−1は患者の鼻及び/または顔の形状に更に適合する。シール部材はまた、チャンバ形成部分(または空洞部)内の呼吸可能な気体の圧力によって作動し、且つシール部材は、マスク内部のシステム圧力に容易に反応できるように高度の可撓性を有しうることが好ましい。マスク内に陽圧が加えられると、シール部材の自己密封作用が働き、患者の鼻の形状に係合し適合して患者の鼻に対するシールを形成する。
【0107】
シール部材が支持されない(すなわち、後部パネルまたはその他の材料の下層を有さない)長さに起因して、シール部材は自由に移動し、且つより容易に撓んで患者の顔の形状に適合することができる。
【0108】
開示される技術の各例によれば、シール部材は、後部パネルに取り付けられることによってマスク上に位置付けられてもよく、あるいは後部パネルまたはマスクの他の適切な表面上に他の方法で形成され(あるいは後部パネルの一部またはマスクの他の部分として形成され)てもよい。シール部材は、いくつかの構成を含んでもよく、後部パネルと一緒に使用されたときに、シール部材と後部パネルは、患者の顔との界面を有して密封し、且つ呼吸可能な気体が患者の気道に効果的に送られるようにする様々な構造またはシール構成を形成するようにいくつかの方法で個別に構成されるかまたは互いに組み合わされてもよい。
【0109】
例えば、別個のシール部材の代わりに、シール部材を後部パネルの一部として形成してもよい。更に、マスクに支持詰め物を含めて心地よさを向上させ且つ/あるいは鼻の側面の溝等、密封することが困難な領域の周りのシールの質を改善してもよい。また、マスクの様々な部分が剛体化構造を含んでもよい。以下の節では、いくつかのそのような構成または構成体について説明する。1つの例に関して説明する任意の特徴を異なる例における別の特徴と一緒に使用するかまたは組み合わせてもよいことが理解されよう。
【0110】
2.1 別個のシール部材
図3−1に示す例では、シール部材40−2が後部パネル20−2に結合される。シール部材40−2は、後部パネル20−2に溶接するかまたは後部パネル20−2と共成形されてもよい。
図3−1Aに最もよく示されているように、シール部材は、患者の顔及び/または鼻に適合するように可撓性を有する。シール部材は、後部パネルに連結された第1の端部分40−2(1)と、患者の顔及び/または鼻を密封する第2の端部分40−2(2)とを含む。シール部材は、例えばシリコーンまたはポリウレタンで形成されてもよく、単一壁構成または二重壁構成を更に含んでもよい。
【0111】
図3−2に示す更なる例において、シール部材40−3は、シール部材40−2とは異なり、後部パネル20−3に連結された第1の端部分40−3(1)と、患者の顔及び/または鼻を密封するように位置付けられた第2の端部分40−3(2)とを有するS字形断面を有する。シール部材40−3のS字形によってシール部材はばねとして働く。そのようなばね作用は、シール部材に患者の顔にばね力を作用させる傾向がある。このばね力は、シール部材40−3が患者の顔及び/または鼻の湾曲によりうまく適合するのを可能にすることができ、それにより、顔に対する圧力がより漸進的に加わるようにすることによってシールの質及び患者の心地よさを向上させることができる。
【0112】
第1の端部分40−3(1)を厚くして支持を強化してもよく、一方、第2の端部分40−3(2)を薄くしてシール部材40−3の可撓性を高めてもよく、それによって、シール部材が患者の顔及び/または鼻の湾曲によりうまく適合するのを可能にすることができる。
【0113】
2.2 一体的なシール部材を有する後部パネル
一例において、シール部材40−4は、
図4−1に示すように後部パネル20−4の一部として形成されてもよい。シール部材40−4を形成する布地部は、患者の顔の特徴によりうまく適合するように後部パネル20−4よりも薄くてもよい。そのような構成は、製造の複雑さ及びコストを低減させることができ、マスクを視覚的により望ましいものにすることができる。
【0114】
2.3 隆起密封構成
図5−1〜
図5−8Dを参照すると、緩衝体は、心地よさを向上させ且つ患者の顔(特に密封が困難な領域)に対するシールを改善することのできる隆起(すなわち、突出)部を含んでもよい。
【0115】
図5−1に示すように、マスク10−1は、前部パネル30と、前部パネルに結合された後部パネル20−5と、後部パネル20−5上に配設された隆起部90と、隆起部90上に形成されるかまたは位置するシール部材40−5とを含む。後部パネル20−5が前部パネル30から取り外された
図5−2に最もよく示されているように、隆起部90は、例えばフォームで形成されてもよい緩衝部、詰め物、または詰め物部材92を含む。フォームは、シリコーンフォーム(例えば、密度が低く、デュロメータ硬さが低く、且つ/あるいは洗浄可能であるシリコーンフォーム)であってもよい。他のフォームまたは緩衝性付与材料を使用してもよい(例えば、ポリウレタンフォーム、連続気泡フォーム若しくは独立気泡フォーム、スキン層付きフォーム若しくはスキン層無しフォーム、ゲル、スペーサ生地、及び/またはパイル材料)。
【0116】
図5−2A及び
図5−3に示すように、マスク10−1を装着すると、隆起部90が患者の顔の方へ突き出し、詰め物92を圧縮することによって、鼻の側面の溝等、密封するのが困難な領域まで延びる。言い換えれば、詰め物が均等に分散される軽い力をシール部材40−5に加えるのでシール部材40−5は患者の顔の湾曲によりうまく適合することが可能である。従って、患者の顔とのシールの質を向上させることができる。更に、詰め物92は、圧力点(例えば、上唇の上方の点及び鼻梁の所の点)に緩衝効果をもたらすので患者の心地よさを向上させる。更なる代替例では、緩衝部または詰め物92は、患者の顔の輪郭に一致するように形作られてもよい。
【0117】
詰め物92は、様々な構成においてマスク10−1において具現化されてもよい。
図5−3及び
図5−4に示す例において、詰め物は、後部パネル20−5に連結された第1の端部分と、シール部材40−5の第1の端部分40−5(1)に連結された第2の端部分とを有する。シール部材40−5の第2の端部分40−5(2)は、詰め物92から内側に容易に延びる。
【0118】
別の例では、後部パネルが詰め物を収納するエンクロージャ(または受入れ空洞部)を形成してもよい。
【0119】
特に、
図5−5に示すように、後部パネル20−6は内側層20−6(1)と外側層20−6(2)とを含む。内側層20−6(1)は、気密をもたらすコーティングされた布地層(例えば、ポリウレタンがコーティングされた布地)であってもよい。外側層20−6(2)は、患者の皮膚に接触する柔らかい外面を形成してもよい。外側層20−6(2)は、内側層20−6(1)から分割されて受入れ部分94−1(例えば、凹状構成またはU字形構成)を形成してもよい。受入れ部分94−1と内側層20−6(1)は一緒に、詰め物92を受け入れる受入れ空洞部95を形成する。更に、シール部材40−6は、受入れ部分94−1に連結された第1の端部分40−6(1)と、受入れ部分94−1から半径方向内側に延びる第2の端部分40−6(2)とを有してもよい。シール部材40−6は、射出成形、圧縮成形、接着、超音波溶接、またはその他の技術によって受入れ部分94−1に連結されてもよい。内側層20−6(1)と外側層20−6(2)との接合部の縁部は、患者の心地よさ及びマスクの全体的な見た目を最大限に高めるように超音波溶接または別の技術によって丸くされてもよい。
図5−5に示す構成は、詰め物が密閉され、従って、より清浄なままにすることができるので有利であり得、更に、装置全体の見た目をより向上させることができ、且つ製造をより簡素にすることもできる。
【0120】
図5−6に示す更なる例では、後部パネル20−7は内側層20−7(1)と外側層20−7(2)とを含む。内側層20−7(1)及び外側層20−7(2)は、上記に後部パネル20−6を参照して説明したのと同じ複合材を有してもよい。外側層20−7(2)は、内側層20−7(1)から分割されて受入れ部分94−2(例えば、L字構成)を形成する。同様に、内側層20−7(1)は、外側層20−7(2)から分割されて受入れ部分97−1(例えば、L字構成)を形成する。受入れ部分94−2と受入れ部分97−1は一緒に、詰め物92を受け入れる受入れ空洞部95を形成する。
【0121】
外側層20−7(2)は、空洞部95を越えて延びて連結リップ121を形成してもよい。内側層20−7(1)は、外側層20−7(2)の連結リップ121に接合されシール部材40−7の取付け構造124を形成する連結リップ122を有してもよい。シール部材40−7は、取付け構造に連結された第1の端部分40−7(1)を含む。第1の端部分40−7(1)は、第1の脚部152と、第2の脚部154と、受入れ空間155とを備える。受入れ空間155は、取付け構造124を受け入れてシール部材40−7を後部パネル20−7に固定するように構成される。第1の脚部152は、第1の脚部152自体が後部パネル20−7の内側層20−7(1)に当接するのを可能にする長さを有してもよく、一方、第2の脚部154は、第1の脚部152よりも長い長さを有してもよく、それによって、第2の脚部154は、シール部材40−7を後部パネル20−7に安定して取り付けるのを確実にするのに十分な距離だけ後部パネル20−7の外側層20−7(2)に沿って延びる。この構成は、フォームが密封され、それによってゴミ及びその他の望ましくない材料から遮蔽または保護されるので、好ましい構成でありうる。シール部材40−7は、後部パネル20−7との複数の接触面を有するだけでなく後部パネルと接触する表面積が広いので、後部パネル20−7によりしっかりと取り付けることができ、内側層20−6(1)と外側層20−6(2)との接合部の縁部(例えば、取付け構造124)を利用してシール部材40−7を取り付け、従って、シール部材40−7の一部を支持することができる。
【0122】
別の例において、シール部材40−7は、上記にシール部材40−6及び後部パネル20−6を参照して説明したのと同様に構成され後部パネル20−7に連結されてもよい。
【0123】
別の例において、詰め物92は、
図5−7に示すように後部パネル20−8に成形または接着あるいはその他の方法で連結される。後部パネル20−8は受入れ部分97−2(例えば、L字構成)を形成する。詰め物92(例えば、シリコーンフォーム)は、詰め物92の上面92(1)及び第1の側面92(2)が後部パネル20−8に係合し、且つ下面92(3)及び第2の側面92(4)が後部パネル20−8から露出されるように成形によって受入れ部分97−2に連結される。この構成は、必要な材料が少なくなるので(すなわち、前部パネルが不要である)有利である場合があり、フォームは患者の顔に接触することができ、このため、患者は心地よく装着することができる。フォームは、露出されると、寿命インジケータとして働く(すなわち、フォームが汚れると、患者に新しいマスクを入手することを指示するインジケータとして働く)。
【0124】
図5−8A及び
図5−8Bを参照すると、密封構成は、鼻深の身体的な差異に対処するように構成されてもよい。例えば、密封構成は、鼻深がより小さい鼻梁を有する患者と鼻深がより大きい鼻梁を有する患者の両方に心地よく密着するように構成されてもよい。より小さい鼻梁深さd1を有する患者が
図5−8Cに示され、より大きい鼻梁深さd2を有する患者が
図5−8Dに示されている。言い換えれば、d1はd2よりも小さい。
【0125】
詰め物92は後部パネル20−9に連結されてもよい。
図5−8C及び
図5−8Dに示すように、上唇領域の詰め物92は、鼻梁領域の詰め物よりも厚くてもよい。すなわち、鼻梁領域は詰め物を殆ど有さないかあるいはまったく有さなくてもよく、上唇領域と比較して、より長い皮膜を有してもよい。この理由は、鼻梁領域のシールが好ましくは、皮膜またはフラップ型のシールであるからであり、この種のシールは、身体的差異により容易に対処することができる。更に、皮膜型のシールは、ユーザの鼻梁用の空間を最大にするように、前部パネルの方へ延びて前部パネルに直接連結するかあるいは隣接してもよい。(フォームを特に鼻の角部の溝及びしわに押し込んでこれらの領域の密封を容易にすることができるように)圧縮型のシールをもたらすように鼻の側面及び上唇領域のフォームを多くし皮膜を少なくすることが好ましい。フォームの心地よさをこれらの領域において、より高くなるようにしてもよい。別の例において、フォームは、患者の鼻を一周するように圧縮型シールを形成するようにシール部分の周囲に沿って同じ鼻深を有してもよい。
【0126】
図5−8A〜
図5−8Dの図示の例において、シール部材40−9は、詰め物92に更に連結される。シール部材40−9は、少なくとも患者の顔の鼻梁領域においてU字形構成を有してもよい。シール部材40−9の第1の端部分40−9(1)は詰め物92に連結され、シール部材40−9の第2の端部分40−9(2)は患者の顔に係合するように構成される。第1及び第2の端部分40−9(1)、40−9(2)は全体として、U字形シール部材40−9の脚部を形成する。そのような構成は、シール部材40−9が、鼻深がより小さい患者の顔に達するように延びるのを可能にすることができる。更に、U字形構成は、シール部材40−9が、より大きい鼻梁深を有する患者に位置付けられたときに潰れて患者の顔に適合する(すなわち、第1の端部分40−9(1)と第2の端部分40−9(2)を互いに接近させる)のを可能にする。シール部材は、潰れるときの状態が制御されるように事前に形成された湾曲を有してもよい。
【0127】
詰め物92は、シール部材40−9に対する圧力を均等に分散させるように働き、それによって患者の心地よさを向上させる。U字形シール部材40−9は、鼻梁領域に近接するシール部材の領域に限定されてもよく、その理由は、この領域が患者ごとに著しく異なるからである。シール部材40−9は、概して患者の上唇の所または上唇の近くに位置するシール部材の他の領域では実質的に平坦であってもよく(
図5−8C及び
図5−8D)、その理由は、この領域では身体的差異がより少なくなる傾向があるからである。
【0128】
2.4 剛体化構造
開示される技術によれば、剛体化構造をマスクに組み込んで、マスクに例えば、支持力、形状、外形、及び/または強度を付与すると共に、マスクの歪みを防止してもよい。更に、剛性要素が2つ以上の他の剛性構成部材同士を相互に連結して、製造を容易にし、且つ剛性構成部材同士を安定させ互いに対して位置付けることができる。この剛体化装置は、支持バンドを形成してもよい。剛体化装置は、平坦であり、ある曲率で屈曲することが可能であってもよく、あるいは事前に湾曲した状態に成形されてもよい。マスク自体はその自重を支持することができず、また加力(例えば、チューブ抗力)を支持することができないので、剛体化装置は、マスクの一部を支持するように構成され配置されてもよい。
【0129】
図6−1を参照すると、マスクは、後部パネル20−2の上部に重ねられた剛体化装置フレーム70を含む。剛体化装置フレーム70は、カフに隣接するマスクの側面に沿って延びる側面部分70(2)を含む。一例において、側面部分70(2)はカフ50に連結されてもよい。相互連結部分70(1)は、患者の上唇領域及び鼻梁を横切って延びるかまたは側面部分70(2)同士を相互連結する。相互連結部分70(1)は、後部パネル20−2及び/またはシール部材40−2を患者の顔の上唇領域に安定して係合させることができる。これによって、患者の顔に対するシールを向上させることができる。更に、剛体化装置フレーム70は、マスクの両側に延びることによって、ストラップを過度に引っ張ることに起因する場合があるマスクの歪みに抵抗する。
【0130】
図7−1〜
図7−3を参照すると、剛体化装置フレーム72が後部パネル20−2上に位置するように示されている。剛体化装置フレーム72は、患者の頬に隣接して位置するように構成された頬部分72(2)、頬部分72(2)から患者の鼻の一部を横切って鼻梁の方向に延びる鼻側面部分72(3)と、患者の上唇領域を横切って延び、または頬部分72(2)同士を相互連結する相互連結部分72(1)とを含む。相互連結部分72(1)は、上述の相互連結部分70(1)と同様に働く。
【0131】
患者の鼻梁と頬との間を延びる部分において、後部パネル20−2(及び/またはシール部材40−2)と患者の顔との間に隙間が形成される傾向がありうる。マスクの左側及び右側に示されている鼻側面部分72(3)は、この領域において後部パネル20−2及びシール部材40−2に支持力及び形状を付与する。鼻側面部分72(3)は、後部パネル20−2及び/またはシール部材40−2を患者の顔の湾曲に適合させて漏れを低減させるかまたは防止することができる(患者の頬から鼻梁までの)患者の顔の湾曲と同様の湾曲72(3)aを有してもよい。スロット72(4)が、剛体化装置フレーム72の一部として形成されてもよく、且つヘッドギアストラップを受け入れてもよく、あるいは例えばカフに連結されるように構成されてもよい。
【0132】
図8−1を参照すると、一例において、剛体化装置フレーム74はカフ50−1から延びてもよい。剛体化装置フレーム74は、カフ50−1に連結された別個の部材であってもよく、あるいはカフと一体的に形成されてもよい。
図8−2に示す別の例において、剛体化装置フレーム76は、カフ50−2から延びてもよく、前部パネル30に接触して重ねられカフ50−2同士の間の隙間を埋めるかあるいはカフ50−2同士を相互に連結して形状及び外形を付与し、且つストラップを過度に引っ張ることに起因する場合がある歪みに抵抗する相互連結部分76(1)を更に含んでもよい。
【0133】
別の例において、
図3−2のシール部材40−3の第1の端部分40−3(1)を剛体化装置フレームとして働くように厚くしてもよい。
【0134】
上述の剛体化装置フレームは、組立ての前にマスクパネルに、例えばオーバーモールドされ、接着され、または溶接されてもよい。剛体化装置フレームは、マスクが組み立てられた後でマスクに挿入される取外し可能な別個の構成部材を形成してもよい。
【0135】
剛体化装置フレームは、剛性または半剛性を有してもよい。例えば、剛体化装置フレームは、ポリプロピレン、ナイロン、ポリカーボネートのような可撓性の半剛性プラスチックで作られてもよい。更に、マスクは、高密度フォームに布地パネル(例えば、前部パネル及び後部パネル)を積層することによって剛体化されてもよい。これらの積層構造は、(例えば、積層構造の厚さを変化させ且つ/あるいはリブ付けのような特定の設計上の特徴を追加することによって)形状及び強度を付加するように熱成形されてもよい。
【0136】
マスクの剛体化または補強は、(例えば、前部パネル及び後部パネルに)非弾性布地を使用することによって実現されてもよい。非弾性布地は、マスクを形成してもよく、あるいは所望の剛体化効果または補強効果を実現することを目的として、戦略上、マスクに付加されてもよい。そのような非弾性布地は、マスク、より詳細には前部パネル、後部パネル、及び/またはシール部材を歪ませることがある特定の方向(例えば、上唇領域を横切って)への過度の伸びを防止することができる。
【0137】
一例において、剛体化装置フレームは、布地マスクの軽く、柔らかく心地よい感触を維持するように制限的に使用されてもよい。更に、鼻梁領域及び上唇領域のような影響を受けやすい領域の上方に剛体化装置フレームを使用することを回避してこれらの領域における圧力負荷を低減させることによって患者の心地よさを向上させることができる。
【0138】
更なる代替例において、剛体化装置フレームは、鼻梁、上唇、または影響を受けやすいその他の領域を覆うように位置付けられてもよいが、影響を受けやすい患者の顔領域との接触を回避するように構成され配置されてもよい。すなわち、剛体化装置フレームは、患者の顔から離れて上向きに張り出すか、隆起するか、あるいは湾曲するように形成されてもよく、それによって、影響を受けやすい領域との接触を回避し、しかもマスクの安定化及び/または補強を実現し且つ/あるいはマスクの形状を支持するように働く。
【0139】
2.5 広範囲の鼻サイズに適合するように構成されたマスク
図9に示すように、後部パネル20−1の開口部の幅d5は、あるマスクサイズを有するユーザ群の大部分に適合するように大部分の鼻サイズを収容するように設計される。幅d5は、幅の広い鼻の幅d4を収容するのに十分な程度に広く、一方、シール部材40−1は、伸びていない状態のシール部材40−1開口部の幅d1が(幅d2を有する)幅の狭い鼻に対する良好なシールを形成するのに十分であるように後部パネル20−1から半径方向内側に十分に延びる。
【0140】
更に、シール皮膜は、伸長して幅の広い鼻の幅d4を(幅d3まで)閉塞させずに収容するように薄い高伸縮性部材(例えば、布地、シリコーン、またはポリウレタン皮膜)で作られることが好ましい。
【0141】
後部パネル20−1は、シール部材40−1の形状を保持し、且つシール部材40−1を患者の顔まで引き下げるのを助けるように働く。
【0142】
2.6 多層シール部材
図10−1を参照すると、マスクシステム100は、多層シール部材140を有するマスク110を含んでもよい。マスクシステム100は、ヘッドギア160と、呼吸可能な気体をマスク110に供給する給気チューブ180とを含む。ヘッドギアは、マスク110(例えば、後部パネル及び/または前部パネル)に連結されたストラップ162を含む。ストラップ162は、連続していてもよく、あるいは調整可能な連結部を有する2つのストラップを含んでもよい。いずれの構成でも、ストラップ162は単一のベクトルV1を有する(マスクの一方の側のみのベクトルが示されている)。
【0143】
マスク110は、シール部材140が連結された後部パネル120を含む。マスクは、前部パネル(不図示)を含んでもよい。マスクは、患者の鼻を受け入れて呼吸可能な気体を患者の気道に送るための空洞部を形成する。シール部材140は、患者の鼻が空洞部に受け入れられたときに患者の顔及び/または鼻を密封するように構成される。シール部材140は、
図10−2に示すように、後部パネル120に連結されたベース層141と、患者の顔との界面層145と、ベース層141と界面層145との間に配設された緩衝層または緩衝部143とを含む。
【0144】
図11−1及び
図11−2を参照すると、ベース層141は、概ね三角形状を有するが、他の形状が使用されてもよい。患者の鼻を受け入れる開口部141(1)がベース層141に形成されている。開口部141(1)も概ね三角形状を有するが、他の形状が使用されてもよい。開口部141(1)は、患者の鼻を囲むようになっている。
【0145】
開口部141(1)の幅d1は、患者の鼻を受け入れるためにベース層141を(ストラップ162からの張力によって)伸ばすことが必要になるように平均/標準身体測定値よりも小さくされる。開口部141(1)の高さd2は、
図11−3に示すようにベース層141の上側部分が鼻梁の下端上に位置し、マスクが患者の視覚を妨げるのを防止するようなサイズを有する。幅d1は、長さが約25mm〜60mm、例えば約30mm〜45mm、例えば約40mmであってもよい。高さd2は、長さが約15mm〜50mm、例えば約20mm〜40mm、例えば約30mmであってもよい。
【0146】
シール部材140は、ストラップ162から張力を受けると、引き込まれて患者の顔に密封係合する。特に、ベース層141は、シール部材140に上唇領域及び鼻梁領域にシールを確立させるように働く。
図11−3及び
図11−4に示すように、上唇密封領域141aは、患者の上唇に広がり、鼻の角部まで延びる。鼻梁密封領域141bが鼻梁の下端に配置されている。
【0147】
ベース層141は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)膜のような高伸縮性で空気不透過性の材料から作られてもよい。ベース層141は、ナイロンライクラのような高密度で伸縮自在な生地から作られてもよい。他の適切な材料が使用されてもよい。ベース層141の伸縮性及び弾性によって、張力が加えられたときにベース層141が患者の顔に押し付けられる。この作用によって界面層145が患者の顔に押し付けられ、上唇密封領域141a及び鼻梁密封領域141bのシールが確立される。
【0148】
緩衝層143は、ベース層141の周囲形状と同一の周囲形状を有することが好ましい。緩衝層143は、隆起した(またはより厚い)外形を有し、シール部材140の緩衝をもたらすようになっている。緩衝層143の開口部143(1)は、ベース層141の開口部141(1)の幅d1及び高さd2に概ね相当する幅d3及び高さd4を有する。
【0149】
シール部材140が鼻梁を横切る張力を受けて引っ張られると、
図12−3に示すように、鼻の横方向部分に広がるシール部材の部分が、シール部材140と患者の顔(例えば、鼻の横方向部分)との間の患者の顔形成隙間177(または別の形で漏れ経路)から上向きに張り出す傾向がある。緩衝層143は、
図12−4に示すように、隙間177を充填するように鼻の横方向部分との「質量」を形成し、同時に、鼻梁の上方にも詰め物を形成する働きをする。
【0150】
緩衝層143は、界面層145に積層することのできるフォーム、スペーサ生地、立ち毛メリヤス生地、パイル生地、繊維、及び/またはゲルを含んでもよい。シール部材140に詰め物を付加すると、(例えば、鼻の横方向部分に沿って隙間を充填することによって)患者の顔の密封を助けることができる。詰め物は、特に鼻梁領域において患者の心地よさを向上させることもでき、マスクの見た目も良くする。緩衝層143の好ましい材料特性には、患者の顔に適合する能力と、シール部材140に容積/質量を付加する能力を有することが含まれる。
【0151】
界面層145は、患者の顔に接触するように構成される。界面層145は、
図13−1及び
図13−2に示すように患者の鼻を受け入れるための開口部145(1)を含む。開口部145(1)は、概ね逆T字形を有し、概ね三角形を有する中央切欠き145(1)aと、中央切欠きの上側部分から垂直方向に延びる上側スリット145(1)bと、中央切欠き145(1)aの左下側及び右下側から延びる下側スリット145(1)c、145(1)dとを含む。開口部145(1)が他の形状を有してもよいことに留意されたい。
【0152】
開口部145(1)の幅d5は、ベース層141の開口部141(1)の幅d1よりも大きくてもよい。この構成は、緩衝体を押して患者の鼻の角部に密封係合させるのを助けることができる。すなわち、ベース層は、支持力を加えると共に、患者の鼻側面部分に位置する溝に緩衝体を押し込んで伸ばすための追加的な力を加えることができる。幅d5は幅d1よりも約1mm〜5mm小さくてもよい。開口部145(1)の高さd6は、ベース層141の開口部141(1)の高さd2以下であってもよい。
【0153】
界面層145の開口部145(1)は2つのフラップ176、178を形成する。患者の鼻がマスク110に形成された空洞部に進入すると、フラップ176、178が折り畳まれて患者の鼻の横方向部分に適合し、シールを確立する。
図13−3及び
図13−4に示すように、各フラップ176、178はそれぞれ、鼻密封領域176a、178bの側部において鼻の横方向部分に沿って患者の顔を密封する。ストラップ162によって張力が加えられると、界面層145が上唇及び鼻梁を横切る張力を受けて引っ張られ上唇密封領域141a及び鼻梁密封領域141bにシールを確立する。
【0154】
界面層145は、心地よさを有する布地から作られてもよい。界面層材料の好ましい材料特性には、最低限の伸縮性、空気不透過性、患者の顔に対する適合性、及び/または患者の顔に対して心地よい界面を形成する能力が含まれる。界面層145の最低限の伸縮性によって、シールを鼻孔の周りに固定する制限壁が形成される。
【0155】
界面層145は、患者の顔に対して頑丈なシールを確立するうえでシール部材140を助けることのできるシリコーンを含むことが好ましい。シリコーンは、鼻の横方向部分の上方のシールを改善するうえで有利な適切なレベルの摩擦及び適合性をもたらす。シリコーンを使用すると、マスクの全体的な安定性も向上させることができる。代替材料には、熱可塑性エラストマ(TPE)、ポリウレタン(PU)がコーティングされた布地、コーティングされていない布地が含まれる。
【0156】
ベース層141と緩衝層143と界面層145は、高周波溶接、超音波溶接、縫製、シームテープ、接着、熱かしめ、オーバーモールド、またはその他の気密密封方法によって接合されてもよい。代替として、この接合は気密性でなくてもよく、その代わり、縫い目による通気を可能にしてもよい。
【0157】
別の例では、
図14に示すように、緩衝層143を使用せずにベース層141と界面層145を使用してシール部材140−1を形成することができる。
【0158】
界面層145は、例えば縫製または熱成形によってベース層141に接合されてもよい。ベース層141の形状は、患者の鼻を囲み、界面層145が周りで折り畳まれる制限壁を形成する。
【0159】
2.7 連続面シール部材
図15−1を参照すると、マスクシステム200は、患者の鼻を密封する連続面を有するマスク210を含む。特に、マスク210は、上側パネル220aと下側パネル220bとを有する後部パネル220を含む。開口部222(1)が上側パネル220aと下側パネル220bとの間に形成されている。開口部222(1)は、患者の鼻がマスク210に形成された空洞部に挿入されるときに患者の鼻を受け入れる。マスク210は、前部パネル(不図示)を含んでもよい。
【0160】
上側パネル220a及び下側パネル220bは、コーティングされた布地(例えば、PUがコーティングされた布地、オーバーモールドされた布地)から形成されてもよい。上側パネル220aと下側パネル220bは薄い気密生地を形成することが好ましい。
【0161】
上側パネル220aは、マスク210から外側に突き出るピーク221を有する、開口部222(1)の周りに延在する湾曲部分を上側パネルに形成させる2つの折り目またはダーツ222を有し(1つしか示されていない)、すなわち、上側パネル220aは、患者の鼻に係合するように構成された湾曲部分を形成する。
図15−2に示すように、マスク210は、ピーク221を患者の鼻に係合させることによって患者の顔の上に位置付けられる。患者の鼻は、マスクに進入すると、上側パネル220aを強制的にマスクの空洞部内に延ばす。上側パネル220aは上述のように外側に突き出るように構成されているので、患者の鼻が上側パネル220aを裏返した後、上側パネル220aを外側に突き出させるのと同じ力が今度は、上側パネルを患者の顔に押し付け、それによって患者の顔の特徴に対する適合を向上させる。
【0162】
図15−3を参照すると、上側パネル220aは、上側パネルのタブ220a(1)、220a(2)を下側パネルのタブ220b(1)、220b(2)に接合し、タブを縫い目線224、225及び226、227に沿って縫うことによって下側パネル220bに連結されてもよい。縫い目線228は、上側パネル220aを別のマスク部分(例えば、前部パネル)に接合するための縫い目を表すことができる。同様に、縫い目線229は、下側パネル220bを別のマスク部分(例えば、前部パネル)に接合するための縫い目を表すことができる。
【0163】
上側パネル220aは、
図15−7に示すように患者の鼻を密封する上側シール部分246を含む。上側シール部分246は、鼻梁と鼻の頂部との間の鼻の部分から下方に鼻の広がる部分(すなわち、外鼻孔)を横切って鼻の角部まで延びる。
図15−7に示すように、下側パネル220bは、患者の上唇を密封する下側シール部分248を含む。下側シール部分248は、ストラップ162から張力を受けると、上唇領域を密封する。次いで、上側シール部分は、患者の鼻がマスクに進入する際に患者の鼻に適合する。呼吸可能な気体を送るときには、上側シール部分246と下側シール部分248を患者の顔に更に係合させてもよい。
【0164】
図15−4を参照すると、上側パネルは、タブ220a(1)とタブ220a(2)との間を延びる下側境界242を含む。タブ220a(1)とタブ220a(2)との間の幅d1は、
図15−1に示す開口部222(1)の周りに形成された上側パネル220aの余分な部分に相当する。この余分な部分は、
図15−7に最もよく示されているように患者の鼻を密封するのに使用される。幅d1は、上側パネル220a(例えば、上側シール部分246)を患者の鼻の周りで伸ばすことが必要になるように標準よりも(例えば、平均/標準身体測定値に対して)小さくすべきである。幅d1は、約50mm〜90mm、例えば約60mm〜75mm、例えば約70mmであってもよい。この構成は、漏れ経路を生じさせがちな上側シール部分におけるひだ及びしわが生じる可能性を低減させる働きをする。従って、上側パネルを形成する材料は、ある種の可撓性または伸縮性を有してもよい。
【0165】
下側境界242は、曲率半径r1を有してもよい。曲率半径r1は、
図15−5に示すように患者の鼻の先端(すなわち、鼻尖部)に対する下側境界242の位置を決定する。一例において、半径r1は約60mm〜90mmであってもよい。例えば、半径r1は約65mm〜80mmであってもよい。例えば、半径r1は約75mmであってもよい。
【0166】
図15−6を参照すると、下側パネル220bは、タブ220b(1)とタブ220b(2)との間を延びる上側境界244を含む。タブ220b(1)とタブ220b(2)との間の幅d2は、開口部222(1)の幅に相当する。幅d2は、約20mm〜50mm、例えば約30mm〜45mm、例えば約38mmであってもよい。幅d2は、患者の鼻を受け入れるために下側パネル220bを伸ばさせるように平均/標準身体測定値よりも(例えば、0.5mm〜2.5mmだけ)小さくすべきである。上側境界244は、密封部の下側周面を形成するように構成され、患者の中隔及び/または人中に適合するように形作られる。
【0167】
縫い目225、227は、上側シール部分246に基礎、剛性、及び/または形状を付与する。縫い目225、227は、開口部222(1)の周りに広がる上側パネル220aの部分の角度及び/または向きに影響を与えるように傾斜していてもよい。
【0168】
3.0 マスク組立体
図16−1〜
図16−5を参照すると、マスクを形成するために、布地(例えば、生地)マスク部(例えば、パネル、シール部材、カフ)同士を溶接可能である(例えば、高周波溶接、超音波溶接)。マスク部は、溶接に加え、接着、縫製、及び/またはオーバーモールドによって接合されてもよい。呼吸療法を施すために、布地パネルは気密性であるべきである。更に、縫製及び溶接では漏れを最小限に抑えるべきである。従って、隙間なく織られた布地及び/またはコーティングされた布地(例えば、ポリウレタンまたはシリコーンがコーティングされた布地)が使用されてもよい。
【0169】
図16−1及び
図16−2を参照すると、後部パネル20の上側フランジ22及び下側フランジ24と前部パネル30の上側フランジ32及び下側フランジ34は、各部を連結するように互いに固定され溶接されてもよい。カフ50は、後部パネル20と前部パネル30との間に位置付けられ、所定の位置に溶接されてもよい。
【0170】
後部パネル20及び前部パネル30は、布地で作られることが好ましく、パネルの形状を得るように熱成形されてもよい。シール部材40は後部パネル20上に溶接または熱成形されてもよい。
【0171】
前部パネル30及び後部パネル20は、(例えば、布地の重量を変化させ、布地パネルに様々な密度のフォームを積層し、且つ/あるいは半剛性のフレームを含めることによって)局所的に剛体化または軟化されてもよい。
【0172】
図16−3及び
図16−5に示すように、2つのカフ50をマスクの各端部に挿入して2本の給気チューブとの連結を可能にしてもよい。
【0173】
一例において、前部パネル30と後部パネル20を裏返した状態で溶接させ、次いで溶接が完了した後で元に戻して溶接継ぎ目を隠してもよい。
【0174】
本明細書で説明するいくつかの例は前部パネル及び後部パネルに関するが、開示される技術によるマスクが任意の数の布地パネルから構成されてもよいことが理解されよう。例えば、
図17−1〜
図17−4に示すマスク310は5枚の布地パネル上に構成される。第1のパネル322及び第2のパネル324がマスクの後部に広がっている。第1のパネルにはシール部材340が形成される。シール部材340は、患者の鼻を受け入れるための開口部346を有する。第3のパネル332、第4のパネル334、及び第5のパネル336が互いに連結されマスクの前部分に広がっている。
図17−2に示すように、第3のパネル332は第1のパネル322に連結され、第5のパネル336は第2のパネル324に連結される。図示の例では、パネル322、324、332、334、336は互いに縫い合わされる。いくつかのパネルまたはすべてのパネルが異なる材料特性を有してもよい(例えば、パネル322は、患者の顔との界面の大部分を形成するので柔らかく心地よいものであってもよい。)。パネル322は、例えば布、テリー織りタオル生地、フェルト、またはその他の柔らかい生地であってもよい。パネル324は、患者の鼻に近接して位置するので吸湿発散性生地であってもよく、湿気の高い呼気を吸収することができる。パネル334は、マスクの形状を支持することが必要になる場合があるので比較的硬い生地から作られてもよい(例えば、スペーサ生地または強化織物)。パネル332及び336は、様々な患者の身体に適合することが必要になる場合があるので比較的高い可撓性を有してもよい(例えば、リネン)。
【0175】
図17−3及び
図17−4に示すように、カフ50がマスク310の側面から延びてもよく、ストラップ362がマスクに連結されてもよい。
【0176】
図17−5に示す別の例では、後部パネル420、底部パネル480、及び前部パネル430を(例えば縫製によって)接合してマスクを形成してもよい。後部パネル420は、開口部446を有するシール部材440を含む。後部パネル420は、上側タブ422と下側タブ426とを更に含む。
【0177】
底部パネル480は、マスクの非顔接触側で患者の上唇に近接して位置してもよい。底部パネル480は、上側タブ484と下側タブ486とを含む。前部パネル430は、マスクの非顔接触側で患者の鼻梁領域に近接して位置してもよい。前部パネルは、上側タブ432と下側タブ434とを含む。前部パネル430は、中央鼻梁係合部分の各側に配置されたダーツ435または縫い目を含んでもよい。ダーツ435は、前部パネル、従ってマスクに3次元形状を付与するように(例えば、折り目のステッチ線435(1)に沿って(例えば、中心線435(2)に沿って))縫われてもよい。
【0178】
本例によれば、まず前部パネル430にダーツ435が形成される。ダーツ中心線435(2)をダーツ中心線の両側に位置するダーツステッチ線435(1)によって目立たせてもよい。ダーツステッチ線435(1)は、ダーツ中心線435(2)の上方に折り畳まれ、前部パネルに折り目を形成するようにステッチまたはその他の連結手段がダーツステッチ線に沿って形成される。これらの折り目は、前部パネルの布地を屈曲させるように3次元形状を形成し、従って、前部パネルは顔の湾曲に適合するように形作られる。
【0179】
ダーツ435が前部パネル430に形成された後、底部パネル480の上側タブ484を前部パネル430の下側タブ434に接合することによって前部パネルを底部パネル480に縫い付けるかまたはその他の方法で連結してもよい。次いで、前部パネル430及び底部パネル480を後部パネルに縫い付けるかまたはその他の方法で連結してもよい。例えば、後部パネル420の上側タブ422を前部パネル430の上側タブ432に接合してもよく、後部パネル420の下側タブ426を底部パネル480の下側タブ486に接合してもよい。
【0180】
4.0 ヘッドギア
ヘッドギアは、治療時にマスクを患者の顔の上に効果的に位置付けるのに使用される。ヘッドギアは、単一のマスクシステムを広範囲の人に適合するのを可能にするように調整可能であってもよい。更に、患者は、そのヘッドギアを日常的に調整する必要があると感じることが多い。
【0181】
ヘッドギア調整はマクロ調整とミクロ調整に分類されうる。マクロ調整は、マスクの全体的なサイズ(例えば、小サイズ、中サイズ、大サイズ)に関するより大規模な調整を指す。このような調整は通常、(例えば、1回目の設定時に)1回のみ行われる。代替として、マスクシステムは、マクロ調整を不要にするために2つ〜3つの異なるサイズ群に分けて提供されてもよい。
【0182】
初期設定後、例えば漏れ及び/または顔/首の移動に応じて、より小規模な(ミクロ)調整のみが必要になる。ミクロ調整は、日常的に行われうるごく小規模な調整を指す。このような調整は通常、漏れを低減させ、患者の顔に対する褥瘡に対処し、立位と臥位との間の首の移動に応じた調整を施し、且つ/あるいは夜毎に変化する傾向がある患者の頭部上のストラップの位置に応じた調整を施すように行われてもよい。
【0183】
ヘッドギアストラップに弾性を付与すると、ヘッドギアにミクロ調整を自動的に施させることができる。弾性ストラップは、首の曲げ及び頭部の旋回のような特定の動きに対するある程度の「許容差」を保持する。言い換えれば、弾性ストラップが使用されるので、あるサイズ群内の十分な身体的差異を許容することができ、ヘッドギアは、自己適合が可能になり微調整を必要としない。
【0184】
図18−1に示す例では、マスクシステム500は、ヘッドギア560が連結されたマスクを含む。ヘッドギア560は単一のストラップ(例えば、弾性ストラップ)を含む。底部ストラップは、耳の下及び患者の首の後ろ部分の周りにおいて患者の顔に沿って(例えば、顎骨に沿って)延びるように構成される。カフ550が、マスクの側面に連結され、且つ給気チューブ580に連結されている。チューブアンカーまたはアンカー部材592が、ストラップ562に取り付けられており、チューブ580を受け入れる。チューブアンカーはチューブ管理システムを提供するように構成される。チューブアンカーは、チューブの重量をある程度吸収することが可能であるので布地マスクの使用を推進することができる。布地マスクは(プラスチックマスクのような他のマスクと比較して)軽量であるので、チューブの重量がマスクに悪影響を与えることがある。更に、(図示のような)単一のストラップの方が目障りにならないので好ましいが、この構成は、他のいくつかのマスクシステムと比較して布地マスクに対する支持力が弱い。従って、チューブの重量は布地マスクを患者の顔から引き離す傾向を有することがある。チューブアンカーは、チューブの重量の一部を吸収することができ、従って、布地マスクによる密封を可能にする。
【0185】
単一のストラップ562を設けると、ストラップ及びヘッドギア用の連結点の数が最小限に維持される。この構成は、患者の視覚の擾乱及び妨害を軽減し、且つ使いやすさを向上させる。ストラップ562は、上述の例で参照したようにマスクに張力を加える単一のベクトルV1を有する。
【0186】
図18−2及び
図18−3を参照すると、ヘッドギア660が示されている。ヘッドギアは、マスク510の各側面に単一側面連結点を有する。単一側面連結点は、見た目の大きさを最小限に抑え、(複数側面取付け点と比較して)患者による取付けをより容易にするので有利である。ヘッドギア660は、マスク510に連結された下側部分668(1)と下側部分から上向きに延びる上側部分668(2)とを有する側部ストラップ668を含む。下側部分668(1)は、患者の視覚を妨害するのを回避するために、患者の頬に沿ってあるいは患者の頬骨の下方に位置するように構成される。上側部分668(2)は、患者の顔の両側面に沿って位置し、患者の目と耳との間を延びるように構成される。弾性底部ストラップ662が、側部ストラップ668の下側部分668(1)に連結され、耳の下及び患者の首の後ろ部分の周りにおいて患者の顔に沿って(例えば、顎骨に沿って)延びるように構成されている。底部ストラップ662の弾性によって、頭部の上げ下げのような首の動きに対処するように自動的な調整が施される。
【0187】
側部ストラップ668の上側部分668(2)は、側部ストラップ668の下側部分668(1)から上向きに斜めに延びる。側部ストラップ668は、マスク510に上向きベクトルを付与するように剛体化されてもよい。側部ストラップ668は、患者の頭部の形状に適合するように形作られてもよく、あるいは患者の頭部の形状に適合するのに十分な可撓性を有してもよい。図示の例において、側部ストラップは、下側部分668(1)に対応する第1のベクトルV1と上側部分668(2)に対応する第2のベクトルV2とを有する。
【0188】
ヘッドギア660は、側部ストラップ668の上側部分668(2)に連結され下向きに患者の頭部の周りを延びる弾性後部ストラップ664を更に含む。後部ストラップ664は、底部ストラップ662に当接するかまたは底部ストラップ662に接合され、患者の頭部の後ろ部分に二重ストラップ部を形成してもよい。更に、上部ストラップ667が側部ストラップ668の左上部分及び右上部分668(2)に連結され、患者の頭の上部にわたって延びている。上部ストラップ667は、側部ストラップ668に上向きの力を加え、それによってマスクに上向きのベクトルを付与することができる。
【0189】
給気チューブ680が、給気チューブ680の端部に配設されたチューブ連結部682を介してカフ550に連結されてもよい。カフ550は、呼気を排出するための通気穴55(1)を備えてもよい。カフ550は、1個〜100個の通気穴、例えば約10個〜30個の通気穴、例えば約20個〜50個の通気穴、例えば約3個〜20個の通気穴、例えば約40個〜70個の通気穴、例えば約50個〜80個の通気穴を含んでもよい。
図18−3に示すように、給気チューブ680は2つの流路または管腔680(1)、680(2)を備えてもよい。代替として、給気チューブ680は、(二重管腔チューブと比較して)製造効率を向上させ障害を軽減するために単一の管腔を備えてもよい。
【0190】
図18−4A及び
図18−4Bを参照すると、ヘッドギア760が示されている。ヘッドギア760は、耳の下及び患者の首の後ろ部分の周りにおいて患者の顔に沿って(例えば、顎骨に沿って)延び、マスクの側面部分(例えば、後部パネル20−1)に連結される弾性底部ストラップ762を含む。上述のように、弾性底部ストラップ762は、底部ストラップ762の長さを変化させることがある頭部の上げ下げのような首の動きに対処するように自動的な調整を施すことができる。
【0191】
代替例において、ストラップは、弾性でなくてもよく、あるいは弾性と非弾性の組合せであり、従って、調整機構を組み込んでもよい(例えば、フックアンドループ材料(hook and loop material))。従って、ストラップは、調整機構によるマクロ調整と、ストラップの弾性部分によるミクロ調整とを有してもよい。
【0192】
側部ストラップ768がマスクの側面部分(例えば、後部パネル20−1)に連結されている。別の例では、側部ストラップは、底部ストラップ762に連結されてもよく、あるいは場合によっては部分的にマスクと底部ストラップの両方に連結されてもよい。側部ストラップ768は、側部ストラップ768自体が患者の視覚を妨げるのを回避するように延びるのを可能にする湾曲部分769または屈曲部を有する。側部ストラップ768は、湾曲部分769の一方の側の第1の部分と、湾曲部分の他方の側の第2の部分とを含んでもよく、第2の部分は第1の部分よりも比較的上方に延びてもよい(すなわち、実質的に患者の頬骨を辿り、次いで患者の目と耳との間を上向きに延びる)。側部ストラップ768は、支持力及び/または上向きベクトルを緩衝体に付加するように剛体化されてもよい。側部ストラップ及び上部ストラップは任意であってもよく、すなわち、患者は必要に応じてこれらのストラップを選択的に取り付けてもよい。
【0193】
上部ストラップ767がそれぞれの側部ストラップ768に連結され、患者の頭の上部にわたって延びている。上部ストラップ767は、側部ストラップ768に上向きの力を加え、それによってマスクに上向きベクトルを付与することができる(従って、チューブの重量によってマスクが患者の顔から引き離されるのを防止するのを助けることができる)。
【0194】
更に、後部ストラップ764がそれぞれの側部ストラップ768に連結され、患者の頭部の周り(例えば、後頭部の周り)を延びている。
【0195】
図18−5を参照すると、マスクとの3点連結部を有するヘッドギアが示されている。ヘッドギアは、上述のように、耳の下及び患者の首の後ろ部分の周りにおいて患者の顔に沿って(例えば、顎骨に沿って)延び、マスクの側面部分(例えば、後部パネル20−1)に連結される弾性底部ストラップ862を含む。上側コネクタ869がマスク510との第3の連結点を形成し、マスクの上側部分から延びて前部ストラップ866に連結されている。
【0196】
上側コネクタ869は、比較的軽量で可撓性であってもよく、ナイロン、ポリプロピレン、またはポリカーボネート等のプラスチックで構成されてもよい。代替として、上側コネクタ869は生地または布地で構成されてもよい。上側コネクタ869は、生地等の材料とプラスチック剛体化装置の組合せで構成されてもよい。上側コネクタ869は弾性であってもあるいは非弾性であってもよい。理想的には、上側コネクタ869は薄く、患者の目及び視線を回避する。上側コネクタ869には、患者の前頭部または顔の領域に痕を付けるのを回避するように詰め物を施すかまたは選択的に詰め物を施すことが好ましい。
【0197】
頭頂部ストラップ864が患者の頭頂部を囲むようになっているループを形成している。ヘッドギア860が装着されていないときにヘッドギア860に外形を付与し、更にヘッドギアをより確実に患者の頭部上に配置するように、より低い程度の頭頂部ストラップ864が底部ストラップ862に接合されてもよい。
【0198】
前部ストラップ866が頭頂部ストラップ864の上側部分から延び、上側コネクタ869に連結されている。例えば、上側コネクタ869は、前部ストラップ866が通されるスロット869(1)を有してもよい。前部ストラップ866は、前部ストラップ866上に折り畳まれて取り付けられるように構成された(例えば、フックオアループ材料(hook or loop material)の嵌合部分によって構成することのできる)取付け部分886(例えば、フックオアループ材料)を更に含む。
【0199】
図18−6A〜
図18−7Bを参照すると、マスクシステム900は、底部ストラップ962に連結されたマスク910を含む。
図18−7A及び
図18−7Bに最もよく示されているように、マスク910の一方の端部は、底部ストラップ962に直接連結することのできる(例えば、縫い付けることのできる)緩衝体タブ910(1)を含む。カフ950が緩衝体タブ910(1)に隣接して位置付けられ、給気チューブに連結されるように構成されている。マスク910の他方の側は、底部ストラップ962に形成された連結部材963(例えば、開口部)に受け入れられるように構成されたコネクタ911(例えば、隆起したL字形タブ)を含んでもよい。
【0200】
底部ストラップ962(すなわち、底部ストラップの前部)は、弾性でありミクロ調整を可能にする。底部ストラップ962は、マクロ調整を可能にする調整可能な連結部を含む後ろ部分964を有してもよい。後ろ部分964は、弾性または非弾性であり、あるいは底部ストラップ962と比較して異なる(低い)弾性を有してもよい。一例において、スロット965(1)を有するコネクタ965は底部ストラップ962の第1の側に連結される。後ろ部分964は、底部ストラップ962の第2の側に連結され、スロット965(1)に通される。後ろ部分964は、後ろ部分964の長さを調整するのを可能にするための取付け部分964(1)(例えば、フックオアループ材料)を更に含む。
【0201】
別の例では、
図18−6Cに示すように、底部ストラップ962の一方の側のみが弾性であってもよく、他方の側は調整可能な連結部を有してもよい。
【0202】
図18−6D及び
図18−6Eに示す別の例において、底部ストラップ962の後ろ部分1074は、底部ストラップ962の第1の側に連結された第1の部分1074(1)と、底部ストラップ962の第2の側に連結された第2の部分1074(2)とを含んでもよい。第1の部分1074(1)は、第2の部分1074(2)の取付け部分1074(2)a上に形成されたプラグ1078を受け入れるための穴1076が形成された取付け部分1074(1)aを含んでもよい。
【0203】
図18−6Eに示すように、第1及び第2の部分1074(1)、1074(2)は、ヘッドギアサイズに相当する視覚的な手掛かり及び/またはマーカを有してもよい。一例において、取付け部分1074(1)aは、ヘッドギアのサイズの視覚的手掛かり1075(例えば、文字S、M、L、または小、中、大についての他の指標)に関連付けられた視覚的マーカ(例えば、線、溝、エンボス加工等)に揃えられるように構成された縁部1077を有してもよい。例えば、縁部1077が視覚的手掛かり1075「L」に関連付けられた(視覚的手掛かり1075「L」の隣に位置する)視覚的マーカ1079に揃えられたときに、患者は、ヘッドギアが「大」サイズに調整されたことを理解する。
【0204】
図18−6Bに示すように、チューブアンカー992が底部ストラップ962に取り付けられて給気チューブを保持してもよい。チューブアンカー992は、チューブを覆ってチューブをヘッドギアに対して所定の位置に維持する。チューブアンカー992は、例えば弾性材料、プラスチック材料、またはその他の材料から作られたループであってもよい。ループは、縫製、溶接、成形、またはその他の方法によって連続的なループに形成されてもよい。ループは、選択的に開放可能であってもよく、あるいはチューブを受け入れるように伸縮自在であってもよい。
【0205】
チューブアンカー992を患者の頭部の後ろ部分に位置付けることが好ましい場合がある。この位置では、チューブを流れ発生装置に垂直に位置付け、従ってチューブ抗力を弱めることができる。更に、チューブアンカーを患者の首の首筋に位置付ける場合、チューブアンカーに対する患者の心地よさを向上させることができ、且つチューブアンカーが後頭部の下の患者の首の湾曲部分に保護されるので外れる可能性を低くすることができる。
【0206】
5.0 旋回エルボ
一例において、マスクシステムは、マスク1110に対して回転可能な給気導管1180を含んでもよい。給気導管は、エルボ1118を介してマスクに連結されてもよい。エルボは、間に角度(例えば、90°)を有する第1の脚部と第2の脚部とを有する。エルボ1118の第1の脚部は、給気導管1180のコネクタ部分1180(1)に連結される。エルボ1118の第2の脚部は、マスク1110の環状のエルボ連結部1115に連結される。エルボ1118と環状のエルボ連結部1115は、エルボが環状の連結部1115に対して旋回するのを可能にする嵌め合い構成を有する。適切なエルボが、参照により全体が本明細書に組み込まれている、2012年5月18日に出願された米国特許仮出願第61/648807号に記載されている。
【0207】
環状のエルボ連結部1115は、マスクの布地部に力が加わるのを回避するように内部マスク剛体化部分(例えば、剛体化フレーム)に連結されるかまたは内部マスク剛体化部分の一部を形成してもよい。この剛体化装置は、カフ及びヘッドギアに連結され、従って、チューブの重量及びチューブに加えられる力をヘッドギアに伝達してもよい。これによって、マスクを所定の位置に安定させるのを助けることができる。代替として、環状のエルボ連結部1115は、布地マスクの支持されない部分に取り付けられ、それによって、チューブに力が加えられたときにマスクが撓んで自由に動くのを可能にしてもよい。すなわち、布地は、可撓性であるので、チューブを介して布地に加えられる力に応じて布地の形状を容易に適応させることが可能であり、従って、マスクの密封部からチューブ抗力を分離することができる。
【0208】
6.0 チューブ管理
夜間に患者が動くと、給気チューブ(またはチューブ)に加えられた力(例えば、抗力)が、患者の顔に対するシールを分断するようにマスクに伝達されることがある。従って、チューブ抗力を最小限に抑えると、確実に良好なシールが維持され、更に治療の効果が向上する。
【0209】
一例において、チューブの重量の一部を支持するようにチューブを患者の身体上(例えば、ヘッドギア上の頭部の後部)に固定することによってチューブ抗力を最小限に抑えるかまたは妨げることができる。この構成では、チューブの短い部分のみがマスクと固定点との間に懸垂し、それにより、マスクによって支持されるチューブ重量が実質的に少なくなる。
【0210】
チューブを患者の頭部の後ろに経路付け、ヘッドギアに取り付けられたチューブアンカーに連結するのを容易にするために、チューブをマスクの側面部分においてマスクに連結してもよい。この構成は、マスクシステムの見掛けの大きさ(サイズ)を小さくして、マスクシステムを目障りにならないようにすると共にマスクシステムの見た目を良くする。この側面での連結ではまた、マスクから固定点までの距離が最も短くなり、それによって、マスクシステムのサイズによって生じる患者に対する妨害が最低限に抑えられると共に、チューブ抗力が生じる可能性が最低限に抑えられる。
【0211】
図19−1〜
図19−5に示す例において、ヘッドギアに取り付けられたアンカーによるチューブの支持を推進するには、チューブを底部ストラップと同じ線に沿って(例えば、顎骨に沿って)経路付けることが好ましい。この構成によって、患者の頭部がチューブ上に載る可能性が高くなる。身体の一部がチューブにわたって位置する患者の心地よさを向上させるために、平坦な外形を有するチューブを使用して患者がもたれかかるための平坦な表面または一様な表面を設けることができる。平坦なチューブをヘッドギアの上方に経路付けると、チューブを覆いストラップで隠すことによって見た目の大きさを小さくし、且つ/あるいは各構成部品を簡素化することによって設計をより簡素にすることができる。
【0212】
代替として、別の例において、チューブは自由に口の近くを下方にマスクから離れる方向に延びてもよい(チューブ断面に対してチューブ長軸方向及びチューブ短軸方向に撓む)。
【0213】
いずれの場合も、適合性または可撓性のより高いチューブは、チューブの向きに関して最高の融通性を可能にすることができる。
【0214】
図19−2〜
図19−5を参照すると、ヘッドギアに取り付けられたチューブアンカーを利用するマスクシステムが示されている。このマスクシステムは、剛体化装置フレーム1072が重ねられた後部パネル20−1を含む。剛体化装置フレームは、相互連結部分1072(1)と、相互連結部分の両端に取り付けられた頬部分1072(2)とを含む。
【0215】
底部ストラップ1062がマスクの側面部分(例えば、後部パネル20−1または剛体化装置フレーム1072)に連結され、耳の下及び患者の首の後ろ部分の周りにおいて患者の顔に沿って(例えば、顎骨に沿って)延びている。マスクの一方の側に、スロット1065(1)が形成された(例えば、後部パネル20−1に取り付けられた)コネクタ1065を含んでもよい。底部ストラップ1062をスロット1065(1)に通し、折り畳んで底部ストラップ1062自体の張力を調整することができる。底部ストラップ1062は、底部ストラップ自体に固定される取付け部分1062(1)(例えば、フックオアループ材料)を含んでもよい。
【0216】
カフ1050がマスクの側面部分(例えば、後部パネル20−1または剛体化装置フレーム1072)に取り付けられ、給気チューブ1080の連結点を形成している。図示の例において、マスクシステムは、カフ1050に連結された隣りあわせの2本の給気チューブ1080を含んでもよい。
【0217】
図19−5に最もよく示されているように、チューブアンカー1092が患者の頭部の後部(または後ろ)で(あるいはそこに向かって)(例えば、後頭部の下方に、首筋に隣接した、または耳の下方に)、底部ストラップ1062に取り付けられている。図示の例において、チューブアンカー1092は給気チューブを受け入れるためのループを形成する。給気チューブ1080は、給気チューブ1080の重量を支持するのを助けるチューブアンカー1092に通される。チューブ連結部を患者の頭部の後部に位置付けて患者の運動範囲を広げ、且つチューブが横に引っ張られるのを防止することが好ましい場合がある。
【0218】
図示の例において、マスク(例えば、後部パネル20−1及び前部パネル(図示のために取り外されている))は布地で作られる。更に、マスクは、単一のストラップ1062のみによって患者の顔の上に保持される。図示の例の布地マスクは、他のマスクシステム(例えば、プラスチックフレームを有するマスクシステム)よりも剛性が低い場合があるので、チューブアンカー1092を設けて給気チューブの重量を支持するのを助けると、布地マスクシステムの性能を向上させることができる。
【0219】
チューブアンカーを底部ストラップ1062に沿った他の位置に位置付けてもよいことが理解されよう。更に、例えば
図18−2〜
図18−5において図示し説明したヘッドギアストラップのような他のヘッドギアストラップ上にチューブアンカーを設けることが可能である場合がある。
【0220】
6.1 給気チューブ
図21−1A〜
図21−2を参照すると、支持構造が設けられた給気チューブ1280が示されている。この支持構造は、チューブに形状、外形、及び耐閉塞性を付与することができる。一部に支持構造を有するチューブが、参照により本明細書にその全体が組み込まれている、国際公開第2012/167327号パンフレットに記載されている。国際公開第2012/167327号パンフレットに記載されたチューブは、本出願に記載された例のいずれかに実装されてもよい。
【0221】
図21−1A〜
図21−2に示す例には、チューブ壁1230と、チューブ壁1230に設けられた支持構造1240とを有するチューブが示されている。このチューブは、カプセルまたはレーストラック形の断面を有する。ただし、他の形状が使用されてもよい(例えば、卵形、丸い縁部を有する矩形、4つの辺を有する構造(すなわち、互いに向かい合う2つの辺が、互いに向かい合う他の2つの辺よりも実質的に長い))。チューブ壁1230は可撓性のテープを備えてもよい。支持構造1240はチューブ壁1230をらせん状に覆う。支持構造1240(例えば、リブ)は、露出されるチューブ壁1230部分と比較して比較的広い。チューブカフ1260が、チューブの端部に設けられ、マスク及び/または流れ発生装置上に配設されたカフに連結されてもよい。
【0222】
比較的広い支持構造1240は、チューブが患者の顔に近い部分にあることが望ましい場合があり、その理由は、支持構造が広いほど、患者の顔に痕を付ける恐れがある材料のストリップが少なくなるからである。丸い外形と比較して、より平坦な外形を有するチューブ上に位置する方が患者の心地よさが向上する場合がある。
【0223】
例えば、
図19−1〜
図19−5に示す構成において、
図21−1Aに示すチューブ構成体は、マスクから患者の首の周りを延びてチューブアンカー1092に延びるだけでもよく、従って、チューブのこの部分は、極端に屈曲する必要がなく、このチューブ構成体はこの部分に適している。支持構造1240の幅をチューブの各部が患者の顔から遠くなるにつれて小さくし、チューブの可撓性を高めることができる。
【0224】
図21−3A及び
図21−3Bを参照すると、チューブ壁1230−1が、呼吸可能な気体が通過するのを可能にするように構成された2つの流路1232、1234を囲んでいる。チューブ壁1230−1に支持構造1240−1(例えば、リブ)が設けられている。チューブカフ1260−1が、支持構造1240−1に係合し、支持構造1240−1から延びて、マスク1210に取り付けられたカフ50−3に連結されてもよい。チューブカフ1260−1とカフ50−3は、例えば蟻継ぎ連結部、または任意の他の適切な連結部を形成してもよい。チューブ壁1230−1は任意の構成部材であってもよい。チューブ壁1230−1は例えば生地またはプラスチック押出し品であってもよい。チューブカフ1260−1はチューブ壁1230−1上にオーバーモールドされてもよい。
【0225】
図21−4を参照すると、給気チューブ1380は、協働してチューブを形成する第1及び第2のチューブカバー1321、1331を含む。チューブカバー1321、1331は、フィルムラミネート(例えば、ポリウレタンまたは医療用フィルム)の内側層と布地または生地(例えば、合成生地または指定された生地)の外側層とを含んでもよい。剛性または半剛性を有する支持基材1340をチューブに挿入して耐破砕性及び外形を付与してもよい。図示の例において、支持基材1340は、中央ベース1340(1)と、ベースのそれぞれの側から延びる概して湾曲した上側アーム1340(2)及び下側アーム1340(3)とを含む。
【0226】
図21−5A〜
図21−5Dを参照すると、シート形態のチューブカバー1421、1431には支持構造1440が形成されていてもよい(例えば、共押出し成形、印刷、オーバーモールド、熱成形)。各チューブカバー1421、1431は、チューブカバー1421、1431を支持構造1440と一緒に半チューブ状に熱成形する器具1400に配置されてもよい。次いで、
図21−5Cに示すように、2つのチューブカバー1421、1431を互いに溶接させる。溶接後、接合されたチューブカバー1421、1431のフランジ1421(1)、1431(1)を超音波によって切断し、
図21−5Dに示すように丸い端部1450を残す。
【0227】
図21−6A〜
図21−6Cを参照すると、給気チューブ1580は、剛性または半剛性を有する支持基材1540を挿入することのできるチューブカバー1521を含む。図示の例において、支持基材1540は、中央ベース1540(1)と、ベースのそれぞれの側から延びる概して湾曲した上側アーム1540(2)及び下側アーム1540(3)とを含む。
【0228】
図21−7A及び
図21−7Bに示す別の例では、一体化された一部材複合自己支持布地導管を形成するように、チューブシート1620に支持構造1640が設けられてもよい。チューブシート1620は、耐空気透過性を有するかあるいは完全な気密性を有する生地であることが好ましい(例えば、フィルムラミネートまたは気密層を含んでもよい)。支持構造1640は、1つまたは複数のリブ構成を含むリブ構造を備えてもよい。チューブシート1620は、比較的平坦な器具に挿入されてもよく、支持構造1640は、チューブシート1620上のパターンとして成形されてもよい。別の例において、支持構造は、チューブシート1620上にオーバーモールドされてもよい。
【0229】
チューブシート1620は、チューブシートの端部に取り付けられたファスナ1650を含んでもよく、それによって、チューブシートを丸めてチューブ状にしてファスナ1650同士を連結し、給気チューブとしてのチューブ形状を維持することができる。チューブシートの各端部が他の手段によって接合されてもよいことに留意されたい。
【0230】
図21−6A〜
図21−6Cに示すチューブ1580と同様なチューブ1780が
図21−8A及び
図21−8Bに示されている。チューブカバー1721には、剛性または半剛性を有する支持基材1740が挿入されてもよい。図示の例において、支持基材1740は、中央ベース1740(1)と、ベースのそれぞれの側から延びる概して湾曲した上側アーム1740(2)及び下側アーム1740(3)とを含む。中央ベース1740(1)の一方の側から延びる各アームは、中央ベース1740(1)の他方の側から延びる各アームに対してずれてもよい。
【0231】
別の例において、
図21−9に示すように、支持基材1840は、交互に設けられた数組の左右リンク1843と中央リンク1844によって連結された一連の本体部分1842を含む。交互に設けられたリンク1843、1844は、水平方向と垂直方向の両方において支持基材1840に構造上の支持を実現し、同時に可撓性を付与するように設計される。
【0232】
図21−10に示す別の例において、支持基材2040は、らせん状コネクタ2042によって連結された一対の本体部分2012、2014を含む。らせん状コネクタ2042は、支持基材2040の底部に沿って概ね平坦に延びる一連の平坦な脚部2042(1)を含む。平坦な脚部2042(1)は斜めに延びてもよい。一連の垂直脚部2042(2)が、それぞれの平坦な脚部の端部に連結され、空気通路として働く空間をらせん状コネクタ2042の中央部に設けるように概ね垂直に延びている。一連の連結脚部2042(3)が斜めに延びて、垂直脚部2042(2)を隣接する平坦な脚部2042(1)と相互連結してもよい。
【0233】
図21−12A及び
図21−12Bに示す更に別の例において、支持基材2140は、第1の波部材2143と第2の波部材2144によって連結された2つの支持部材2142を含む。第1の波部材と第2の波部材は、互いに一致する鏡像正弦形状または互いに逆の鏡像正弦形状を有し(すなわち、波部材2143、2144は、一方の波部材の山が他方の波部材の谷に揃うように位相が外れている)、互いに反対側の点で各支持部材2142に連結され、空気通路として働く空間を波部材2143、2144同士の間に形成する。波部材2143、2144は、同一の形状を有すると記載されているが、当業者には、波部材同士が異なる形状を有することができ、それにも拘わらず構造上の支持、外形、及び/または耐破砕性を付与することが認識されよう。任意の適切な数の波部材を支持部材2142同士の間に連結してもよい。中間支持部材2142を設けてもよい。波部材2143、2144はチューブの長手方向軸の周りで(波の曲線の頂点の所で)湾曲してチューブの丸い縁部を形成し、すなわち、カプセル状断面を形成しうることが好ましい。
【0234】
複数の支柱2145が第1の波部材2143と第2の波部材2144との間を延びて第1の波部材2143と第2の波部材2144を連結し、構造上の支持を実現してもよい。
【0235】
図21−11を参照すると、この例は、
図21−12A及び
図21−12Bに示す技術と同様の技術を示しているが、第1の波部材2243及び第2の波部材2244は同位相であり、すなわち、各波の山と谷が揃っている。更に、支柱2245は、
図21−12A及び
図21−12Bに示すように各波の山と谷の中間に位置するのではなく各波の山と谷の所に設けられてもよい。
【0236】
図21−13を参照すると、支持基材2340は、リンク2352によって連結された一連の本体部分2346を含む。支持基材2340は、
図21−9の支持基材1840に類似しており、支持力を加え、一方、可撓性を付与するように同様に設計される。支持基材1840とは異なり、支持基材2340は、重量を軽くし且つ/あるいは可撓性を高めることのできる開口部または切欠きを本体部分2346に含んでもよい。緩衝体及び/または流れ発生装置のカフに連結されるように構成することのできるカフまたはコネクタ2342に端部分2344を連結してもよい。
【0237】
本技術についていくつかの例に関連して説明したが、本技術が、開示された例に限定されず、逆に、本技術の趣旨及び範囲内に含まれる様々な修正形態及び均等構成に及ぶものであることを理解されたい。更に、上述の様々な例は、他の例に関連して実施されてもよく、例えば、一例の1つまたは複数の態様を別の例の1つまたは複数の態様と組み合わせて更に別の例を実現してもよい。更に、任意の所与の組立体の各々の独立した特徴または構成部材が更なる例を構成してもよい。更に、本技術は、OSAを患う患者に特定の用途を有するが、他の疾患(例えば、鬱血性心不全、糖尿病、病的肥満、脳卒中、肥満手術等)を患う患者が上記の教示から利益を得られることを諒解されたい。更に、上記の教示は、非医療用途において同様に患者と非患者に適用することができる。