特開2018-202231(P2018-202231A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧
特開2018-202231放射線撮影システム及び画像処理装置
<>
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000006
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000007
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000008
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000009
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000010
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000011
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000012
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000013
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000014
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000015
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000016
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000017
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000018
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000019
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000020
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000021
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000022
  • 特開2018202231-放射線撮影システム及び画像処理装置 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-202231(P2018-202231A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】放射線撮影システム及び画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20181130BHJP
【FI】
   A61B6/00 330Z
   A61B6/00 350Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-188785(P2018-188785)
(22)【出願日】2018年10月4日
(62)【分割の表示】特願2015-128503(P2015-128503)の分割
【原出願日】2015年6月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】巻渕 千穂
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA08
4C093CA01
4C093EA11
4C093EB24
4C093EC22
4C093FB12
4C093FD03
4C093FD05
4C093FF18
4C093FF21
4C093FF33
4C093FF41
(57)【要約】
【課題】マーカー等の特殊な器具を用いることなく、画像データから、放射線撮影装置と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する。
【解決手段】放射線撮影システムにおけるコントローラー5の制御部51は、微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像のうち少なくとも二つの画像の信号値(画像データ)について回帰分析を行って、画像間の関係性を示す指標値を算出し、算出した指標値に基づいて、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの格子が放射線の照射軸方向に設けられ、前記照射軸方向と直交方向に被写体を搬送する機構または自装置を移動させる機構を有し、前記被写体または自装置を移動させることで、複数の周期パターン画像を取得する放射線撮影装置と、
前記放射線撮影装置により取得された複数の周期パターン画像に基づいて、微分位相画像、吸収画像、小角散乱画像のうちの少なくとも二つの再構成画像を生成する再構成手段を備える画像処理装置と、
を備える放射線撮影システムであって、
前記微分位相画像、前記吸収画像を微分した微分吸収画像、前記小角散乱画像を微分した微分小角散乱画像のうち少なくとも二つの画像の信号値について回帰分析を行って、前記少なくとも二つの画像間の関係性を示す指標値を算出し、算出した指標値に基づいて、前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する検出手段を備える放射線撮影システム。
【請求項2】
前記検出手段は、前記微分位相画像、前記微分吸収画像、前記微分小角散乱画像のうち二つの画像を一組として、少なくとも一組の画像について単回帰分析を行って、前記少なくとも二つの画像間の関係性を示す指標値を算出し、算出した指標値に基づいて、前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項3】
前記検出手段は、前記微分位相画像、前記微分吸収画像、前記微分小角散乱画像の三つの画像を一組として、前記三つの画像について重回帰分析を行って、前記三つの画像間の関係性を示す指標値を算出し、算出した指標値に基づいて、前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項4】
前記指標値は、回帰係数、決定係数、回帰式を基準とした標準偏差、相関係数、回帰式との誤差のうち一つまたは複数である請求項1〜3の何れか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項5】
前記検出手段は、予め前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動がない画像データから求めた前記指標値を基準値として記憶しておき、前記算出した指標値の前記基準値との差又は前記算出した指標値を前記基準値で除算した変化率に基づいて、前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する請求項1〜4の何れか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項6】
前記被写体が人体である場合、前記回帰分析の対象とする画像から骨部の画素を抽出する抽出手段を備え、
前記検出手段は、前記抽出手段により抽出された骨部の画素データのみを利用して回帰分析を行い、前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する請求項1〜5の何れか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項7】
前記回帰分析の対象とする画像に対して、前記回帰分析を行う前にビニング処理またはフィルター処理を施す前処理手段を備える請求項1〜6の何れか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項8】
前記回帰分析の対象とする画像からノイズ画素を抽出するノイズ画素抽出手段を備え、
前記検出手段は、前記ノイズ画素抽出手段により抽出されたノイズ画素を回帰分析の対象から除外する請求項1〜7の何れか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項9】
前記検出手段により前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動による画質劣化が検出された場合に警告を出力する出力手段を備える請求項1〜8の何れか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項10】
少なくとも1つの格子が放射線の照射軸方向に設けられ、前記照射軸方向と直交方向に被写体を搬送する機構または自装置を移動させる機構を有し、前記被写体または自装置を移動させることで、複数の周期パターン画像を取得する放射線撮影装置により取得された複数の周期パターン画像に画像処理を施す画像処理装置であって、
前記放射線撮影装置により取得された複数の周期パターン画像に基づいて、微分位相画像、吸収画像、小角散乱画像のうちの少なくとも二つの再構成画像を生成する再構成手段と、
前記微分位相画像、前記吸収画像を微分した微分吸収画像、前記小角散乱画像を微分した微分小角散乱画像のうち少なくとも二つの画像の信号値について回帰分析を行って、前記少なくとも二つの画像間の関係性を示す指標値を算出し、算出した指標値に基づいて、前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する検出手段と、
を備える画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影システム及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計を用いた放射線撮影装置により高精細の画像を得るには、格子のうちのひとつを格子のスリット周期の1/M(Mは正の整数、M>2)ずつスリット周期方向に移動させM回撮影した画像(モアレ縞画像)を用いて再構成を行う縞走査方式が用いられる。
【0003】
しかし、M枚のモアレ縞画像を撮影する間に放射線撮影装置と被写体の相対的な位置関係が変化した場合、撮影により測定される物理量に誤差を生じ、再構成により得られる再構成画像に画質劣化が生じることになり好ましくない。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1、2には、被写体表面にマーカーなどを取り付けて撮影し、被写体の移動量を検出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−206162号公報
【特許文献2】特開2011−206188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2に記載の技術においては、被写体表面に取り付けられたマーカーが投影される画素の位置変動や強度変化を利用して被写体の動きを検出するため、被写体が三次元的に動いた場合(回転や放射線照射軸方向への移動)、マーカーが配置された場所と配置されていない場所で動きが異なる場合、被写体表面と内部で動き方が異なる場合等において、正確に被写体の動きを検出することができない。
【0007】
また、操作者が放射線撮影装置と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を再構成画像やモアレ縞画像から判断できればよいが、放射線撮影装置または被写体が大きく動き、強い偽像が発生した場合を除き、動きによる信号の変化を正確に判断することは困難である。例えば、医療用途において関心対象が写っていない場合、もともと存在しないのか、放射線撮影装置または患者の動きによる画質劣化によるものか、患者のポジショニング不良なのか、装置起因などの他の誤差によるものかを切り分けることができないため、誤診や不必要な再撮影による余計な被曝に繋がる。産業用途においても同様に誤った検査結果や余計な検査時間に繋がる。
【0008】
本発明の課題は、マーカー等の特殊な器具を用いることなく、画像データから、放射線撮影装置と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
少なくとも1つの格子が放射線の照射軸方向に設けられ、前記照射軸方向と直交方向に被写体を搬送する機構または自装置を移動させる機構を有し、前記被写体または自装置を移動させることで、複数の周期パターン画像を取得する放射線撮影装置と、
前記放射線撮影装置により取得された複数の周期パターン画像に基づいて、微分位相画像、吸収画像、小角散乱画像のうちの少なくとも二つの再構成画像を生成する再構成手段を備える画像処理装置と、
を備える放射線撮影システムであって、
前記微分位相画像、前記吸収画像を微分した微分吸収画像、前記小角散乱画像を微分した微分小角散乱画像のうち少なくとも二つの画像の信号値について回帰分析を行って、前記少なくとも二つの画像間の関係性を示す指標値を算出し、算出した指標値に基づいて、前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する検出手段を備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において
前記検出手段は、前記微分位相画像、前記微分吸収画像、前記微分小角散乱画像のうち二つの画像を一組として、少なくとも一組の画像について単回帰分析を行って、前記少なくとも二つの画像間の関係性を示す指標値を算出し、算出した指標値に基づいて、前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記検出手段は、前記微分位相画像、前記微分吸収画像、前記微分小角散乱画像の三つの画像を一組として、前記三つの画像について重回帰分析を行って、前記三つの画像間の関係性を示す指標値を算出し、算出した指標値に基づいて、前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
前記指標値は、回帰係数、決定係数、回帰式を基準とした標準偏差、相関係数、回帰式との誤差のうち一つまたは複数である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の発明において、
前記検出手段は、予め前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動がない画像データから求めた前記指標値を基準値として記憶しておき、前記算出した指標値の前記基準値との差又は前記算出した指標値を前記基準値で除算した変化率に基づいて、前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の発明において、
前記被写体が人体である場合、前記回帰分析の対象とする画像から骨部の画素を抽出する抽出手段を備え、
前記検出手段は、前記抽出手段により抽出された骨部の画素データのみを利用して回帰分析を行い、前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の発明において、
前記回帰分析の対象とする画像に対して、前記回帰分析を行う前にビニング処理またはフィルター処理を施す前処理手段を備える。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか一項に記載の発明において、
前記回帰分析の対象とする画像からノイズ画素を抽出するノイズ画素抽出手段を備え、
前記検出手段は、前記ノイズ画素抽出手段により抽出されたノイズ画素を回帰分析の対象から除外する。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8の何れか一項に記載の発明において、
前記検出手段により前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動による画質劣化が検出された場合に警告を出力する出力手段を備える。
【0018】
請求項10に記載の発明は、
少なくとも1つの格子が放射線の照射軸方向に設けられ、前記照射軸方向と直交方向に被写体を搬送する機構または自装置を移動させる機構を有し、前記被写体または自装置を移動させることで、複数の周期パターン画像を取得する放射線撮影装置により取得された複数の周期パターン画像に画像処理を施す画像処理装置であって、
前記放射線撮影装置により取得された複数の周期パターン画像に基づいて、微分位相画像、吸収画像、小角散乱画像のうちの少なくとも二つの再構成画像を生成する再構成手段と、
前記微分位相画像、前記吸収画像を微分した微分吸収画像、前記小角散乱画像を微分した微分小角散乱画像のうち少なくとも二つの画像の信号値について回帰分析を行って、前記少なくとも二つの画像間の関係性を示す指標値を算出し、算出した指標値に基づいて、前記放射線撮影装置と前記被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する検出手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、マーカー等の特殊な器具を用いることなく、画像データから、放射線撮影装置と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る放射線撮影システムの全体構成を示す図である。
図2】マルチスリットの平面図である。
図3図1の本体部の機能的構成を示すブロック図である。
図4図1のコントローラーの機能的構成を示すブロック図である。
図5】タルボ干渉計の原理を説明する図である。
図6図3の制御部により実行される撮影制御処理を示すフローチャートである。
図7】5ステップの撮影により得られるモアレ縞画像を示す図である。
図8】被写体が動かなかった場合(DATA1)と動いた場合(DATA2〜3)のシミュレーションにより生成した画像である。
図9】(a)は、DATA1〜3の微分位相画像(DPH)のプロファイル(上下方向中央)であり、(b)は、DATA1〜3の微分吸収画像(DAT)のプロファイル(上下方向中央)であり、(c)は、DATA1〜3の微分小角散乱画像(DSC)のプロファイル(上下方向中央)である。
図10】(a)は、微分吸収画像と微分位相画像のDATA1の散布図であり、(b)は、微分吸収画像と微分位相画像のDATA2の散布図であり、(c)は、微分吸収画像と微分位相画像のDATA3の散布図である。
図11】(a)は、微分吸収画像と微分小角散乱画像のDATA1の散布図であり、(b)は、微分吸収画像と微分小角散乱画像のDATA2の散布図であり、(c)は、微分吸収画像と微分小角散乱画像のDATA3の散布図である。
図12】(a)は、微分位相画像と微分小角散乱画像のDATA1の散布図であり、(b)は、微分位相画像と微分小角散乱画像のDATA2の散布図であり、(c)は、微分位相画像と微分小角散乱画像のDATA3の散布図である。
図13】実験によりモアレ縞画像を生成したときの被写体位置の組合せを示す図である。
図14】実験のSET1、SET5〜SET9の微分位相画像、吸収画像、小角散乱画像を示す図である。
図15】(a)は、回帰直線の傾きa1を示すグラフであり、(b)は、決定係数Rを示すグラフであり、(c)は、回帰直線を基準とした撮影データの標準偏差σを示すグラフであり、(d)は、基準直線を基準とした撮影データの標準偏差σを示すグラフである。
図16】(a)は、基準a1と傾きa1の差の二乗和平均平方根を示すグラフであり、(b)は、基準Rと決定係数Rの差の二乗和平均平方根を示すグラフであり、(c)は、回帰直線を基準とした標準偏差σの二乗和平均平方根を示すグラフであり、(d)は、基準直線を基準とした標準偏差σの二乗和平均平方根を示すグラフである。
図17】(a)は、重回帰分析を行って得られた回帰係数a1、a2を示すグラフであり、(b)は、a1誤差、a2誤差を示すグラフであり、(c)は、a1誤差とa2誤差の二乗和平均平方根を示すグラフである。
図18図4の制御部により実行される再構成画像生成処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態では、本発明をタルボ・ロー干渉計を用いた放射線撮影システムに適用した例について説明するが、本発明は、タルボ・ロー干渉計を用いたものに限定されるものではなく、少なくとも第1格子を用いて、第1格子の投影またはタルボ効果によって変調された放射線強度に基づく周期パターン画像を複数枚撮影し、縞走査の原理に基づく計算により、微分位相画像、小角散乱画像、吸収画像のうち二種以上の画像を取得する放射線撮影システムであれば適用することが可能ある。
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る放射線撮影システムを示す。放射線撮影システムは、放射線撮影装置1とコントローラー5を備える。放射線撮影装置1はタルボ・ロー干渉計によるX線撮影を行い、コントローラー5は当該X線撮影により得られた複数のモアレ縞画像を用いて被写体の再構成画像を生成する。なお、本実施形態では、X線を用いて撮影を行う放射線撮影システムを例にとり説明するが、他の放射線、例えば、ガンマ線等を用いてもよい。
【0023】
放射線撮影装置1は、図1に示すように、放射線源11、マルチスリット12、被写体台13、第1格子14、第2格子15、放射線検出器16、保持部17、本体部18等を備える。
放射線撮影装置1は縦型であり、放射線源11、マルチスリット12、被写体台13、第1格子14、第2格子15、放射線検出器16は、この順序に重力方向であるz方向に配置される。放射線源11の焦点とマルチスリット12間の距離をd1(mm)、放射線源11の焦点と放射線検出器16間の距離をd2(mm)、マルチスリット12と第1格子14間の距離をd3(mm)、第1格子14と第2格子15間の距離をd4(mm)で表す。なお、被写体台13の位置は、第1格子14と第2格子15との間に設けられていてもよい。
【0024】
距離d1は好ましくは5〜500(mm)であり、さらに好ましくは5〜300(mm)である。
距離d2は、一般的に撮影室の高さは3(m)程度又はそれ以下であることから、少なくとも3000(mm)以下であることが好ましい。なかでも、距離d2は400〜3000(mm)が好ましく、さらに好ましくは500〜2000(mm)である。
放射線源11の焦点と第1格子14間の距離(d1+d3)は、好ましくは300〜3000(mm)であり、さらに好ましくは400〜1800(mm)である。
放射線源11の焦点と第2格子15間の距離(d1+d3+d4)は、好ましくは400〜3000(mm)であり、さらに好ましくは500〜2000(mm)である。
それぞれの距離は、放射線源11から照射されるX線の波長と第1格子14と第2格子15の周期から、第2格子15上に第1格子14による格子像(自己像)が重なる最適な距離を算出し、設定すればよい。
【0025】
放射線源11、マルチスリット12、被写体台13、第1格子14、第2格子15、放射線検出器16は、同一の保持部17に一体的に保持され、z方向における位置関係が固定されている。保持部17はアーム状に形成され、本体部18に設けられた駆動部18aによりz方向に移動可能に本体部18に取り付けられている。
放射線源11は、緩衝部材17aを介して保持されている。緩衝部材17aは、衝撃や振動を吸収できる材料であれば何れの材料を用いてもよいが、例えばエラストマー等が挙げられる。放射線源11はX線の照射によって発熱するため、放射線源11側の緩衝部材17aは加えて断熱素材であることが好ましい。
【0026】
放射線源11はX線管を備え、当該X線管によりX線を発生させて重力方向(z方向)にX線を照射する。X線管としては、例えば医療現場で広く一般に用いられているクーリッジX線管や回転陽極X線管を用いることができる。陽極としては、タングステンやモリブデンを用いることができる。
X線の焦点径は、0.03〜3(mm)が好ましく、さらに好ましくは0.1〜1(mm)である。
放射線源11のX線照射方向には、X線の照射範囲を狭めるための図示しない照射野絞りが設けられている。
【0027】
マルチスリット12(第3格子)は回折格子であり、図2に示すようにx方向に複数のスリットが所定間隔で設けられている。マルチスリット12はシリコンやガラスといったX線の吸収率が低い材質の基板上に、タングステン、鉛、金といったX線の遮蔽力が大きい、つまりX線の吸収率が高い材質により形成される。例えば、フォトリソグラフィーによりレジスト層がスリット状にマスクされ、UVが照射されてスリットのパターンがレジスト層に転写される。露光によって当該パターンと同じ形状のスリット構造が得られ、電鋳法によりスリット構造間に金属が埋め込まれて、マルチスリット12が形成される。
【0028】
マルチスリット12のスリット周期は1〜60(μm)である。スリット周期は、図2に示すように隣接するスリット間の距離を1周期とする。スリットの幅(x方向の長さ)はスリット周期の1〜60(%)の長さであり、さらに好ましくは10〜40(%)である。スリットの高さ(z方向の長さ)は1〜500(μm)であり、好ましくは1〜150(μm)である。
マルチスリット12のスリット周期をw(μm)、第1格子14のスリット周期をw(μm)とすると、スリット周期wは下記式により求めることができる。
=w・(d3+d4)/d4
当該式を満たすように周期wを決定することにより、マルチスリット12及び第1格子14の各スリットを通過したX線により形成される自己像が、それぞれ第2格子15上で重なり合い、いわばピントが合った状態とすることができる。
【0029】
図1に示すように、マルチスリット12に隣接して、マルチスリット12をz方向と直交するx方向に移動させる駆動部12aが設けられる。駆動部12aとしては、例えばウォーム減速機等の比較的大きな減速比系の駆動機構を単体で又は組合せて用いることができる。
【0030】
被写体台13は、放射線源11からのX線照射経路上の被写体配置位置に設けられた、被写体を載置するための台である。
第1格子14は、マルチスリット12と同様にx方向に所定の周期の複数のスリットが設けられた回折格子である(図2参照)。第1格子14は、マルチスリット12と同様にUVを用いたフォトリソグラフィーによって形成することもできるし、いわゆるICP法によりシリコン基板に微細細線で深掘加工を行い、シリコンのみで格子構造を形成することとしてもよい。第1格子14のスリット周期は1〜20(μm)である。スリットの幅はスリット周期の20〜70(%)であり、好ましくは35〜60(%)である。スリットの高さは1〜100(μm)である。
【0031】
第1格子14として位相型を用いる場合、スリットの高さはスリット周期を形成する2種の素材、つまりX線透過部とX線遮蔽部の素材による位相差がπ/8〜15×π/8となる高さとする。好ましくは、π/2又はπとなる高さである。第1格子14として吸収型を用いる場合、スリットの高さはX線遮蔽部によりX線が十分吸収される高さとする。
【0032】
第1格子14がX線透過部とX線遮蔽部の素材による位相差がπ/2の位相型である場合、第1格子14と第2格子15間の距離d4は、次の条件をほぼ満たすことが必要である。
d4=(m+1/2)・w/λ
なお、mは整数であり、λはX線の波長である。
【0033】
第2格子15は、マルチスリット12と同様にx方向に所定の周期の複数のスリットが設けられた回折格子である(図2参照)。第2格子15もフォトリソグラフィーにより形成することができる。第2格子15のスリット周期は1〜20(μm)である。スリットの幅はスリット周期の30〜70(%)であり、好ましくは35〜60(%)である。スリットの高さは1〜100(μm)である。
【0034】
本実施形態では第1格子14及び第2格子15は、それぞれの格子面がz方向に対し垂直(x−y平面内で平行)であり、第1格子14のスリットの方向と第2格子15のスリットの方向とは、x−y平面内で所定角度だけ(わずかに)傾けて配置されているが、両者を平行な配置としても良い。
【0035】
上記マルチスリット12、第1格子14、第2格子15は、例えば下記のように構成することができる。
放射線源11の焦点径;300(μm)、管電圧:40(kVp)、付加フィルター:アルミ1.6(mm)
放射線源11の焦点からマルチスリット12までの距離d1 : 240(mm)
マルチスリット12から第1格子14までの距離d3 :1110(mm)
マルチスリット12から第2格子15までの距離d3+d4:1370(mm)
マルチスリット12のサイズ:10(mm四方)、スリット周期:22.8(μm)
第1格子14のサイズ:50(mm四方)、スリット周期:4.3(μm)
第2格子15のサイズ:50(mm四方)、スリット周期:5.3(μm)
【0036】
放射線検出器16は、照射されたX線に応じて電気信号を生成する変換素子が2次元状に配置され、当該変換素子により生成された電気信号を画像信号として読み取る。
放射線検出器16の画素サイズは10〜300(μm)であり、さらに好ましくは50〜200(μm)である。
【0037】
放射線検出器16は第2格子15に当接するように保持部17に位置を固定することが好ましい。第2格子15と放射線検出器16間の距離が大きくなるほど、放射線検出器16により得られるモアレ縞画像がボケるからである。
放射線検出器16としては、FPD(Flat Panel Detector)を用いることができる。FPDには、検出されたX線を光電変換素子を介して電気信号に変換する間接変換型、検出されたX線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。
【0038】
間接変換型は、CsIやGdS等のシンチレータプレートの下に、光電変換素子がTFT(薄膜トランジスタ)とともに2次元状に配置されて各画素を構成する。放射線検出器16に入射したX線がシンチレータプレートに吸収されると、シンチレータプレートが発光する。この発光した光により、各光電変換素子に電荷が蓄積され、蓄積された電荷は画像信号として読み出される。
【0039】
直接変換型は、アモルファスセレンの熱蒸着により、100〜1000(μm)の膜圧のアモルファスセレン膜がガラス上に形成され、2次元状に配置されたTFTのアレイ上にアモルファスセレン膜と電極が蒸着される。アモルファスセレン膜がX線を吸収するとき、電子正孔対の形で物質内に電圧が遊離され、電極間の電圧信号がTFTにより読み取られる。
なお、CCD(Charge Coupled Device)、X線カメラ等の撮影手段を放射線検出器16として用いてもよい。
また、第2格子15を使用せず、第2格子15の強度変調効果を与えた放射線検出器16を使用しても良い。この場合、シンチレータに第2格子15と同等の周期および幅で不感領域を与えるために、シンチレータに溝を掘り、格子状のシンチレータとしても良い(参照文献1:特許第5127246号公報)。
【0040】
本体部18は、図3に示すように、制御部181、操作部182、表示部183、通信部184、記憶部185等を備えて構成されている。
制御部181は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)等から構成され、記憶部185に記憶されているプログラムとの協働により、各種処理を実行する。制御部181は、放射線源11、駆動部12a、駆動部18a、放射線検出器16等の各部に接続されており、後述する撮影制御処理等を実行することにより、例えば、コントローラー5から入力される撮影条件の設定情報に従って、放射線源11からのX線照射のタイミングやX線照射条件、放射線検出器16による画像信号の読取タイミング、マルチスリット12の移動等を制御する。
【0041】
操作部182は、曝射スイッチ等を備え、これらの操作に応じた操作信号を生成して制御部181に出力する。
表示部183は制御部181の表示制御に従って、ディスプレイに操作画面や放射線撮影装置1の動作状況等を表示する。
【0042】
通信部184は通信インターフェイスを備え、ネットワーク上のコントローラー5と通信する。例えば、通信部184は放射線検出器16によって読み取られ、記憶部185に記憶されたモアレ縞画像をコントローラー5に送信する。
【0043】
記憶部185は、制御部181により実行されるプログラム、プログラムの実行に必要なデータを記憶している。また、記憶部185は放射線検出器16によって得られたモアレ縞画像を記憶する。
【0044】
なお、本実施形態では、放射線撮影装置1は縦型として説明したが、横型でも斜め型でも良い。また放射線源11、マルチスリット12、被写体台13、第1格子14、第2格子15、放射線検出器16の順序を重力と反対になるように配置しても良い。
【0045】
コントローラー5は、オペレーターによる操作に従って放射線撮影装置1の撮影動作を制御する。また、コントローラー5は、画像処理装置として、放射線撮影装置1により得られた一連のモアレ縞画像に画像処理を施す。例えば、放射線撮影装置1により得られた一連のモアレ縞画像を用いて被写体の再構成画像(吸収画像、小角散乱画像、微分位相画像)を生成する。
【0046】
コントローラー5は、図4に示すように、制御部51、操作部52、表示部53、通信部54、記憶部55を備えて構成されている。
制御部51は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)等から構成され、記憶部55に記憶されているプログラムとの協働により、後述する再構成画像生成処理をはじめとする各種処理を実行する。制御部51は、検出手段、抽出手段、前処理手段、ノイズ画素抽出手段として機能する。
【0047】
操作部52は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードで押下操作されたキーの押下信号とマウスによる操作信号とを、入力信号として制御部51に出力する。表示部53のディスプレイと一体に構成されたタッチパネルを備え、これらの操作に応じた操作信号を生成して制御部51に出力する構成としてもよい。
【0048】
表示部53は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等のモニターを備えて構成されており、制御部51の表示制御に従って、操作画面、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化が検出された旨の警告等を表示する。表示部53は、出力手段として機能する。
【0049】
通信部54は、通信インターフェイスを備え、ネットワーク上の放射線撮影装置1や放射線検出器16と有線又は無線により通信する。例えば、通信部54は、放射線撮影装置1に撮影条件や制御信号を送信したり、放射線撮影装置1又は放射線検出器16からモアレ縞画像を受信したりする。
【0050】
記憶部55は、制御部51により実行されるプログラム、プログラムの実行に必要なデータを記憶している。例えば、記憶部55は、図示しないRIS(Radiology Information System)やHIS(Hospital Information System)等により予約された撮影の情報である撮影オーダー情報を記憶している。撮影オーダー情報は、患者ID及び患者名等の患者情報、撮影部位(被写体部位)情報等を含む。
【0051】
また、記憶部55は、被写体部位と、その被写体部位の撮影に適した撮影条件とを対応付けた撮影条件テーブルを記憶している。
また、記憶部55は、撮影オーダー情報に基づいて放射線撮影装置1で取得されたモアレ縞画像、モアレ縞画像に基づき生成された再構成画像等を当該撮影オーダー情報に対応付けて記憶する。
また、記憶部55は、放射線検出器16に対応するゲイン補正データ、欠陥画素マップ等を予め記憶する。欠陥画素マップは、放射線検出器16の欠陥画素(画素がないものも含む)の位置情報(座標)である。
更に、記憶部55は、予め放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動がない状態で生成された画像間で算出された、画像間の関係性を示す指標値(例えば、傾きa1等)を基準値として記憶する。
【0052】
<放射線撮影装置1の動作>
ここで、上記放射線撮影装置1のタルボ・ロー干渉計によるX線撮影方法を説明する。
図5に示すように、放射線源11から照射されたX線が第1格子14を透過すると、透過したX線がz方向に一定の間隔で像を結ぶ。この像を自己像といい、自己像が形成される現象をタルボ効果という。自己像を結ぶ位置に第2格子15が自己像と概ね平行に配置され、第2格子15を透過したX線によりモアレ縞画像(図5においてMoで示す)が得られる。即ち、第1格子14は、周期パターンを形成し、第2格子15は周期パターンをモアレ縞に変換する。放射線源11と第1格子14間に被写体(図5においてHで示す)が存在すると、被写体によってX線の位相がずれるため、図5に示すようにモアレ縞画像上のモアレ縞は被写体の辺縁を境界に乱れる。このモアレ縞の乱れを、モアレ縞画像を処理することによって検出し、被写体像を画像化することができる。これがタルボ干渉計の原理である。なお、上記周期パターンはモアレ縞だけに限定されず、自己像を直接撮影しても良いし、タルボ効果を用いずに第1格子14の影を観測しても良い。
【0053】
放射線撮影装置1では、放射線源11と第1格子14との間の放射線源11に近い位置に、マルチスリット12が配置され、タルボ・ロー干渉計によるX線撮影が行われる。タルボ干渉計は放射線源11が理想的な点線源であることを前提としているが、実際の撮影にはある程度焦点径が大きい焦点が用いられるため、マルチスリット12によってあたかも点線源が複数連なってX線が照射されているかのような効果が得られる。これがタルボ・ロー干渉計によるX線撮影法であり、焦点径がある程度大きい場合にも、タルボ干渉計と同様のタルボ効果を得ることができる。
【0054】
本実施形態においては、縞走査法により撮影を行う。縞走査とは、一般的には、格子(マルチスリット12、第1格子14、第2格子15)のうちの何れか1枚(本実施形態では、マルチスリット12とする)または2枚をスリット周期方向(x方向)に相対的に動かしてM回(Mは正の整数、M>2)の撮影(Mステップの撮影)を行い、1枚の再構成画像を生成するのに必要なM枚のモアレ縞画像を取得することをいう。具体的には、移動させる格子のスリット周期をd(μm)とすると、d/M(μm)ずつ格子をスリット周期方向に動かして撮影を行うことを繰り返し、M枚のモアレ縞画像を取得する。
【0055】
図6は、放射線撮影装置1の制御部181により実行される撮影制御処理を示すフローチャートである。図6を参照して撮影制御処理の流れについて説明する。
【0056】
まず、オペレーターにより操作部182の曝射スイッチが操作されると(ステップS1;YES)、制御部181は、放射線源11、放射線検出器16、駆動部12aを制御して複数ステップの一連の撮影を実行し、モアレ縞の位相が異なる一連のモアレ縞画像を取得する(ステップS2)。
【0057】
一連の撮影では、まず、マルチスリット12が停止した状態で放射線源11によるX線の照射が開始される。放射線検出器16では前回の撮影により残存する不要な電荷を取り除くリセット後、X線照射のタイミングに合わせて電荷が蓄積され、X線の照射停止のタイミングに合わせて蓄積された電荷が画像信号として読み取られる。これが1ステップ分の撮影である。1ステップ分の撮影が終了するタイミングでマルチスリット12の移動が開始され、所定量移動すると停止され、次のステップの撮影が行われる。このようにして、マルチスリット12の移動と停止が所定のステップ数分だけ繰り返され、マルチスリット12が停止したときにX線の照射と画像信号の読み取りが行われる。マルチスリット12がスリット周期1周期分移動した撮影が終了したときに、1枚の再構成画像を生成するのに必要な複数のモアレ縞画像を取得するための一連の撮影が終了する。
【0058】
一連の撮影におけるステップ数Mは3〜20、さらに好ましくは3〜10である。視認性の高い再構成画像を短時間で得るという観点からすれば、5ステップが好ましい(参照文献2:K.Hibino, B.F.Oreb and D.I.Farrant, Phase shifting for nonsinusoidal wave forms with phase-shift errors, J.Opt.Soc.Am.A, Vol.12, 761-768(1995)、参照文献3:A.Momose, W.Yashiro, Y. Takeda, Y.Suzuki and T.Hattori, Phase Tomography by X-ray Talbot Interferometetry for biological imaging, Jpn. J. Appl. Phys., Vol.45,5254-5262(2006))。
例えば、マルチスリット12のスリット周期を22.8(μm)とし、5ステップの撮影を10秒で行うとする。マルチスリット12がそのスリット周期の1/5に該当する4.56(μm)移動し停止する毎に撮影が行われる。撮影時間でいえば曝射スイッチON後、2、4、6、8、10秒後にそれぞれ撮影が行われる。理想的な送り精度によりマルチスリット12を一定の送り量で移動できた場合、図7に示すように、5ステップの撮影で、マルチスリット12のスリット周期1周期分のモアレ縞画像5枚が得られる。
【0059】
一連の各ステップの撮影が終了すると、制御部181は、通信部184によりコントローラー5に、各ステップのモアレ縞画像を送信させる(ステップS3)。通信部184からコントローラー5に対しては各ステップの撮影が終了する毎に1枚ずつ送信することとしてもよいし、各ステップの撮影が終了し、全てのモアレ縞画像が得られた後、まとめて送信することとしてもよい。
【0060】
なお、本実施形態においては、被写体台13に被写体を配置した撮影(被写体撮影)と被写体台13に被写体を配置しないBG撮影が行われ、被写体モアレ縞画像(被写体有りのモアレ縞画像)及びBGモアレ縞画像(被写体無しのモアレ縞画像)が取得される。
【0061】
コントローラー5においては、通信部54により本体部18からの一連の被写体モアレ縞画像及びBGモアレ縞画像が受信されると、受信した一連の被写体モアレ縞画像及びBGモアレ縞画像に基づいて、吸収画像、微分位相画像、小角散乱画像の再構成画像や、微分吸収画像(吸収画像を微分処理した画像)、微分小角散乱画像(小角散乱画像を微分処理した画像)、位相画像(微分位相画像を積分処理した画像)等を生成する。
【0062】
ここで、複数枚のモアレ縞画像から生成される微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像の信号値(画素値)は、それぞれ異なる物理量を表しているが、例えば、被写体が骨の場合、それらの信号値間に一定の相関関係を有する。複数のモアレ縞画像を撮影している間に放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置が変化した場合、縞走査の原理に基づく再構成処理の特性により、モアレ縞の位相と被写体の相対位置の変化に応じて三つの画像で異なる誤差(信号値の変化)が生じ、画像間の関係性に変化を与える。本願発明者は、この関係性の変化を利用して放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出できることをシミュレーションと実験により検証した。
【0063】
<シミュレーションによる検証>
図8に、被写体が動かなかった場合と動いた場合のシミュレーションにより生成した画像を示す。シミュレーションにおける縞走査回数は4回で、マルチスリット12を1/4周期ずつ移動させながら4枚のモアレ縞画像を生成し、縞走査の原理に基づいて微分位相画像(DPH)と吸収画像(AT)と小角散乱画像(SC)を生成した。更に、微分吸収画像(DAT)、微分小角散乱画像(DSC)を生成した。ここに示す例では、モアレ縞は完全に広がった状態として計算している。被写体は、人体の関節を模擬したもので、軟骨の球の中に骨の球を配置し、周囲は水である。図8のDATA1は被写体が動かなかった場合を想定したシミュレーションの画像である。DATA2は縞走査毎に被写体位置を右上に50umずつ、合計200um移動させたシミュレーションの画像である。DATA3は縞走査毎に被写体位置を右上に100umずつ、合計400um移動させたシミュレーションの画像である。本シミュレーションでは、被写体によるX線の位相変化と吸収変化を考慮しているが、被写体での散乱は無いものとして計算している。図9(a)に、DATA1〜3の微分位相画像(DPH)のプロファイル(上下方向中央)を示す。図9(b)に、DATA1〜3の微分吸収画像(DAT)のプロファイル(上下方向中央)を示す。図9(c)に、DATA1〜3の微分小角散乱画像(DSC)のプロファイル(上下方向中央)を示す。図8図9から分かるように、被写体が動いた場合、微分位相画像(DPH)、微分吸収画像(DAT)、微分小角散乱画像(DSC)の信号値が変化するが、被写体が動いたことによる誤差の入り方(信号値の変化の仕方)が三つの画像で異なる。これは、縞走査の原理に基づく処理の特性であり、モアレ縞画像の位相や被写体の物理量、被写体の動いた方向や量に応じて三つの画像で異なる誤差となる。
【0064】
図10(a)〜図12(c)に、図9(a)〜(c)のプロファイルの信号値をプロットした散布図を示す。水の部分の信号値は三つの画像で0となるため除外した。
図10(a)〜(c)は、微分吸収画像と微分位相画像のDATA1〜DATA3の散布図である(xは微分吸収画像の信号値、yは微分位相画像の信号値)。図11(a)〜(c)は、微分吸収画像と微分小角散乱画像のDATA1〜DATA3の散布図である(xは微分吸収画像の信号値、yは微分小角散乱画像の信号値)。図12(a)〜(c)は、微分位相画像と微分小角散乱画像のDATA1〜DATA3の散布図を示している(xは微分位相画像の信号値、yは微分小角散乱画像の信号値)。各散布図には、グラフ上のx、yの値について単回帰分析を行うことにより得られた回帰式及び決定係数Rを併せて示している。回帰式は、最小二乗法により求めたものである。
【0065】
図10(a)〜図12(c)に示すように、撮影中に被写体が動いた場合、全ての画像の組合せで被写体が動かないときに比べて回帰直線の傾きa1が変化していることが分かる。これは、前述したように、微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像で誤差の入り方が異なることに起因する。図10では被写体の動きにより傾きa1が大きくなる傾向が見られるが、モアレ縞画像の位相や被写体の動き方によっては逆に傾きが小さくなることもある。被写体毎(人体の場合部位など)、撮影条件毎(管電圧など)に、被写体の動きがない場合の基準となる回帰直線(基準直線と呼ぶ)の傾きを予め求めて記憶部55に記憶しておき、その基準直線の傾き(基準a1)と、撮影データ(撮影により取得されたモアレ縞画像に基づいて生成された微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像の画像データ。以下同様。)から求めた回帰直線の傾きa1を比較することで被写体の動きによる画質劣化を検出することができる。
【0066】
なお、シミュレーションでは、被写体の散乱成分を考慮していないため、微分小角散乱画像を含む図11(a)及び図12(a)のDATA1の回帰直線の傾きはほぼ0となっているが、被写体で散乱しない場合においても、被写体が動くと微分小角散乱画像に誤差が生じ傾きa1が変化する。図11図12では、微分小角散乱画像の信号値がほぼ0であるため、決定係数Rもほぼ0となっているが、微分小角散乱画像の信号があれば決定係数Rも変化することが分かっている。これについては実験データを用いて後述する。
【0067】
また、撮影中に被写体が動いた場合、被写体が動かない場合に比べて撮影データのばらつきが大きくなっていることがグラフから見てとれる。決定係数Rは傾きに応じて変化する指標であるため、被写体の動きがあると一概に低下するとは言えないが、被写体毎(人体の場合、撮影部位など)、撮影条件毎(管電圧など)に被写体の動きがない場合の基準となる決定係数Rを予め求めて記憶部55に記憶しておき、その基準の決定係数Rと撮影データから求めた決定係数Rを比較することで被写体の動きによる画質劣化を検出することができる。ただし、決定係数Rは被写体の動きに応じて平均的には低下する傾向があるため、決定係数Rの低下を利用して大まかに被写体の動きによる画質劣化を検出しても良い。さらに決定係数R以外の相関を表す指標である相関係数Rなどを用いても良い。
【0068】
また、撮影データから求めた回帰直線、または予め求めておいた被写体の動きがない場合の基準直線と撮影データの誤差(残差)dの総和量(標準偏差σでも良い)は被写体の動きに応じて大きくなる傾向があり、これに基づいて被写体の動きによる画質劣化を検出することも可能である。
【0069】
ここでは単純化のため、線形モデルの単回帰分析を用いているが、高次モデルを用いた高次回帰を用いても良い。例えば、微分位相画像は信号の急峻な変化に対して信号が低下する特性を持つため、高次回帰を用いた方が動きをより正確に検出できる可能性がある。要求される検出精度、モデルの安定性、処理速度などを考慮の上、モデルの次数を決定することが好ましい。また用途や被写体に応じて次数を切り替えても良い。
【0070】
また、微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像の三つの画像を用いた重回帰分析を行い、重回帰係数や重回帰式との誤差、決定係数を使用して、被写体の動きを検出しても良い。
【0071】
<実験データによる検証>
ここからは、実験データを用いて、回帰分析により得られる複数の画像間の関係性を示す指標値に基づいて被写体の動きによる画質劣化を検出できるか否かを検証した結果について説明する。
【0072】
実験に使用した被写体は、人体を模擬した手ファントムで、縞走査回数は4回とした。4枚のモアレ縞を撮影する間に手ファントムを動かすことが難しかったため、手ファントムの位置を変えずに縞走査した4枚のモアレ縞画像を撮影し、その後、手ファントムの位置を僅かに変えて、再度縞走査した4枚のモアレ縞画像を撮影した。これを4回繰り返し、手ファントムの位置が異なる4セットのモアレ縞画像(合計16枚)を撮影した。これらを組み合わせることで、被写体の動きを疑似的に再現した。
【0073】
図13に、実験によりモアレ縞画像を生成したときの被写体位置の組合せを示す。SET1〜SET4は、撮影した実験データのセットであり、SET内の被写体位置は同じであるが、SET毎に被写体の位置を変えたものである。SET毎の被写体の移動は約100〜200um程度で動かす方向を変えている。画素サイズは約75um、被写体の拡大率は約1.3倍であるため、移動量は2画素程度である。SET5〜SET8は、SET1とSET2のデータを組み合わせたもので、4枚の内1枚だけが被写体の位置が僅かに異なるデータセットである。SET9は、SET1〜SET4のデータを1枚ずつ使用し、4枚とも被写体位置が異なるようにしたデータである。図13におけるSET5〜SET9で網掛けで示したモアレ縞画像が被写体が動いたデータに相当する。SET毎に再構成処理を行い、微分位相画像、吸収画像、小角散乱画像を生成した。また、吸収画像を微分処理して微分吸収画像を生成するとともに、小角散乱画像を微分処理して微分小角散乱画像を生成した。
【0074】
図14に、被写体の動きがないSET1、被写体の動きがあるSET5〜SET9の微分位相画像(DPH)、吸収画像(AT)、小角散乱画像(SC)を示す。微分位相画像の表示階調は-0.2π〜0.2π、吸収画像の表示階調は0.9〜2.3、小角散乱画像の表示階調は0.0〜1.2である。
【0075】
図14を見てわかるように、被写体が1回だけ僅かに動いたことを想定したSET5〜8の画像変化は小さく、SET1とSET5〜SET8を目視で被写体の動きによる影響を判断することは困難である。SET1と見比べれば違いを判別することができるが、実際の撮影では被写体位置や被写体角度などのポジショニング違い、個体差(人体の場合個人差や経時変化)によってSET1のような理想的な正解画像が得られることはなく、見比べて比較することはできないためである。
また、SET5〜8は4枚のモアレ縞画像のうち一枚だけ被写体を同じ方向に同じ量だけ動かしたものであるが、データを入れ替える縞走査位置(モアレ縞の位相)によって微分位相画像、吸収画像、小角散乱画像に与える影響が異なっている。例えば、SET7はSET1に対して微分位相画像の信号は全体的に強く、吸収画像の信号は少し弱く、小角散乱画像は少し弱くかつ骨梁の描写性が低くなっているのに対して、SET8はSET1に対して微分位相画像はほぼ同じであるが、吸収画像は少し弱く、小角散乱画像は強くかつ骨梁が明瞭に描写されている。
また、SET9は、4枚のモアレ縞画像全てで被写体の位置が異なるようにしたものであり、人体を撮影する場合を想定している。1回あたりの移動量はSET5〜8とほぼ同等であるが、4回とも異なる方向に動くことにより、被写体の動きによる画質劣化、偽像が比較的強く表れている。しかし、理想的な正解画像が得られることがない実際の撮影では、SET9の画質劣化や偽像が被写体の動きによるものなのか、被写体自体の信号なのか操作者が断定することは難しく、また操作者の個人差による判断のばらつきが問題となる。
【0076】
(一組の画像間の単回帰分析による指標を用いた検出)
図15(a)〜(d)に、被写体が動いていないSET1〜SET2及び被写体が動いたSET9のそれぞれについて、微分位相画像(DPH)、微分吸収画像(DAT)、微分小角散乱画像(DSC)のうち二つを1組として単回帰分析を行い、回帰直線の傾きa1(図15(a))、回帰直線のあてはまりの良さの尺度である決定係数R図15(b))、回帰直線を基準とした撮影データの標準偏差σ(図15(c))、基準直線を基準とした撮影データの標準偏差σ(図15(d))を求めた結果を示す。グラフ中の凡例は画像の組合せを示しており、DAT-DPHは、微分吸収画像を従属変数y、微分位相画像を独立変数xとして単回帰分析
した結果であり、DAT-DSCは、微分吸収画像を従属変数y、微分小角散乱画像を独立変数xとして単回帰分析した結果であり、DSC-DPHは、微分小角散乱画像を従属変数y、微分位相画像を独立変数xとして単回帰分析したときの結果である。図15(a)〜(d)のグラフに示している破線は、それぞれ、予め求めておいた被写体の動きがないときの値(基準値)であり、ここでは、被写体の動きがないSET1〜4の値を平均して求めたものである。最も間隔の短い破線はDAT-DSCの基準値であり、2番目に間隔の短い破線はDAT-DPHの基準値であり、最も間隔の長い破線はDSC-DPHの基準値である。
【0077】
なお、実験においては、単回帰分析を行う前処理として、微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像に対して4×4画素でビニング処理を行った後、小角散乱画像を利用して骨部を抽出し、抽出された骨部領域を回帰分析の対象としている。
【0078】
図15(a)に示すように、微分吸収画像と微分位相画像(DAT-DPH)の回帰直線の傾きa1、微分小角散乱画像と微分位相画像(DSC-DPH)の回帰直線の傾きa1、微分吸収画像と微分小角散乱画像(DAT-DSC)の回帰直線の傾きa1は、被写体の動きがないSET1とSET2では基準値とほぼ同じ値となっているが、被写体が動いたSET9ではそれぞれ基準値の1.91倍、1.23倍、1.64倍に変化している。このように、被写体が動いたときに傾きa1が変化することを利用して、被写体の動きによる画質劣化を検出することができる。具体的に、回帰直線の傾きa1と基準値との差の絶対値又は回帰直線の傾きa1を基準値で割った変化率等の、回帰直線の傾きa1と基準値との乖離量が部位や撮影条件毎に予め設定した閾値以上となった場合に、被写体の動きによる画質劣化が検出されたと判定することができる。
閾値は被写体の個体差やポジショニングの影響、X線曝射条件などによるばらつきを誤検出しないように設定することが好ましい。また閾値は注意や警告など段階的に複数設けても良い。
【0079】
人体を撮影対象とした場合、骨は、微分位相画像と微分吸収画像の相関が高く関係性が安定しているため、微分位相画像と微分吸収画像の組合せを用いて骨の動きによる画質劣化を検出することが好ましい。また、傾きa1を被写体の動きによる画質劣化を検出する際の指標とするメリットの一つとして、後述する決定係数Rや誤差d(各撮影データ点からy軸に沿って回帰直線まで引いた線分の長さ)と比べて画像の粒状性による影響を受けにくく、X線の線量や被写体のX線照射方向の厚みが異なっても比較的安定して検出することができることが挙げられる。また、後述する決定係数Rや誤差dは照射線量や被写体の厚みに応じて基準値を変える必要があるが、傾きa1の場合はその基準値の数を減らすことが可能である。
【0080】
また、図15(b)に示すように、微分吸収画像と微分位相画像(DAT-DPH)の決定係数R、微分小角散乱画像と微分位相画像(DSC-DPH)の決定係数R、微分吸収画像と微分小角散乱画像(DAT-DSC)の決定係数Rは、被写体の動きがないSET1とSET2では基準値とほぼ同じ値となっているが、被写体が動いたSET9ではそれぞれ基準値の0.66倍、0.62倍、1.19倍に変化している。このように、被写体が動いたときに決定係数Rが変化することを利用して、被写体の動きによる画質劣化を検出することができる。具体的に、決定係数Rと基準値との差の絶対値又は決定係数Rを基準値で割った変化率等の、決定係数Rと基準値との乖離量が部位や撮影条件毎に設定した閾値以上となった場合に、被写体の動きによる画質劣化が検出されたと判定することができる。閾値は、被写体の個体差やポジショニングの影響、X線曝射条件などによるばらつきを誤検出しないように設定することが好ましい。また閾値は注意や警告など段階的に複数設けても良い。
【0081】
また、図15(c)に示すように、微分吸収画像と微分位相画像(DAT-DPH)の回帰直線を基準とした撮影データの標準偏差σ、微分小角散乱画像と微分位相画像(DSC-DPH)の回帰直線を基準とした撮影データの標準偏差σ、微分吸収画像と微分小角散乱画像(DAT-DSC)の回帰直線を基準とした撮影データの標準偏差σは、被写体の動きがないSET1とSET2では基準値とほぼ同じ値となっているが、被写体が動いたSET9ではそれぞれ基準値の3.27倍、1.3倍、1.65倍に変化している。また、図15(d)に示すように、基準直線を基準とした標準偏差σについても同様に、被写体の動きがないSET1とSET2では基準値とほぼ同じ値となっているが、被写体が動いたSET9では基準値と離れた値に変化している。このように、被写体が動いたときに標準偏差σが変化することを利用して、被写体の動きによる画質劣化を検出することができる。具体的に、標準偏差σと基準値との差の絶対値又は標準偏差σを基準値で割った変化率等の、標準偏差σと基準値との乖離量が部位や撮影条件毎に設定した閾値以上となった場合に、被写体の動きによる画質劣化が検出されたと判定することができる。閾値は、被写体の個体差やポジショニングの影響、X線曝射条件などによるばらつきを誤検出しないように設定することが好ましい。また、閾値は、注意や警告など段階的に複数設けても良い。
【0082】
被写体の動きによる画質劣化を検出するための指標値としては、上記の回帰直線の傾きa1、決定係数R、回帰直線や基準直線(回帰式)を基準とした標準偏差σの他、相関係数Rや、回帰直線と撮影データとの誤差dの絶対値の加算平均などの一般的な誤差の指標を用いても良い。また被写体の動きがない時の基準直線と撮影データとの誤差dの絶対値の加算平均などの一般的な誤差の指標を用いても良い。
【0083】
なお、標準偏差σなどの撮影データのばらつきを指標として用いる場合は、上述のように基準値との差を用いても良いが、被写体が動いた場合ばらつきが大きくなる傾向があることを利用して、単純に指標値の大きさによって、被写体の動きによる画質劣化を検出しても良い。決定係数同様、一組の画像の指標だけでは被写体の動きによる画質劣化を正しく検出することができないケースが存在するが、被写体が比較的大きく動いた場合(SET9)は検出することができる。
【0084】
(複数組の画像間の単回帰分析による指標を用いた検出)
図16(a)〜(d)に、被写体が動いていないSET1〜SET2、及び被写体が動いたSET5〜SET9のそれぞれについて、微分位相画像(DPH)、微分吸収画像(DAT)、微分小角散乱画像(DSC)のうち二つを1組として単回帰分析を行い、複数組の指標値を組み合わせた結果を示す。図16(a)は、回帰直線の傾きa1と被写体の動きがない時の基準直線の傾き(基準a1)との差の二乗和平均平方根(rms)の値をグラフ化したものである。図16(b)は、決定係数Rと被写体の動きがない時の決定係数(基準R)との差の二乗和平均平方根をグラフ化したものである。図16(c)は、回帰直線を基準とした撮影データの標準偏差σの二乗和平均平方根をグラフ化したものである。図16(d)は、被写体の動きがない時の回帰直線(基準直線)を基準とした撮影データの標準偏差σの二乗和平均平方根をグラフ化したものである。
【0085】
図16(a)〜(b)に示すように、傾きa1の変化および決定係数Rの変化を用いたケースでは、被写体の動きがないSET1〜4と被写体が僅かに動いたSET5〜8の間においても大きさの違いがみられている。即ち、回帰直線の傾きa1と基準a1との差の二乗和平均平方根、又は決定係数Rと基準Rとの差の二乗和平均平方根を利用して、被写体の動きによる画質劣化を検出することができる。例えば、回帰直線の傾きa1と基準a1との差の二乗和平均平方根、又は決定係数Rと基準Rとの差の二乗和平均平方根が部位や撮影条件毎に設定した閾値以上となった場合に被写体の動きによる画質劣化が検出されたと判定することができる。
また、図16(c)〜(d)に示すように、回帰直線を基準とした撮影データの標準偏差σの二乗和平均平方根、および被写体の動きがない時の回帰直線(基準直線)を基準としたデータの標準偏差σの二乗和平均平方根では、被写体が僅かに動いたSET5〜8の値はSET1、2とほぼ同じため、被写体の動きによる画質劣化を検出することは難しい。しかし、閾値を緩めに設定し比較的大きく動いたSET9などを検出することは可能である。
【0086】
なお、被写体の動きによる画質劣化を検出するために用いる指標値としては、図16(a)〜(d)に示したものに限られず、例えば、回帰直線の傾きa1の二乗和平均平方根や決定係数Rの二乗和平均平方根としてもよい。また、傾きa1や決定係数Rの代わりに、相関係数Rや、回帰直線と撮影データとの誤差(残差)dの絶対値の加算平均、被写体の動きがない時の基準直線と撮影データとの誤差dの絶対値の加算平均の二乗和平均平方根、或いは、これらと基準値との差の二乗和平均平方根を用いてもよい。
また、複数の指標を組み合わせて総合的に被写体の動きを判断してもよい。例えば、回帰直線の傾きa1が所定の閾値より大きく、かつ標準偏差σが所定の閾値より大きいことを被写体の動きによる画質劣化を検出する際の条件にしても良く、また複数の指標を正規化してから平均や二乗和平均平方根したものを使用しても良い。また各指標に重みづけしてから平均や二乗和平均平方根を行っても良い。
【0087】
(重回帰分析による指標を用いた検出)
図17(a)〜(c)に、被写体が動いていないSET1〜SET2及び被写体が動いたSET9のそれぞれについて、微分小角散乱画像(DSC)と微分位相画像(DPH)を従属変数、微分吸収画像(DAT)を独立変数として重回帰分析を行い、回帰係数a1、a2(図17(a))、回帰係数a1、a2と被写体が動かない時の基準値との差(それぞれa1誤差、a2誤差と呼ぶ。図17(b))、およびa1誤差とa2誤差の二乗和平均平方根(図17(c))を求めた結果示す。
【0088】
図17(a)〜(c)に示すように、回帰係数a1,a2、回帰係数a1,a2と被写体が動かない時の基準値との差、a1誤差とa2誤差の二乗和平均平方根の全てで被写体が動いた場合と動かない場合で大きく値が異なり、重回帰を用いても単回帰同様に被写体の動きによる画質劣化を検出することが可能である。
【0089】
なお、上記シミュレーション及び実験データを用いて被写体の動きによる画質劣化を検出する方法を説明したが、放射線撮影装置1が被写体に対して動くことと被写体が放射線撮影装置に対して動くことは同じ効果であり、放射線撮影装置1が振動などによって動いた場合においても同様に画質劣化が発生する。即ち、放射線撮影装置1が被写体に対して動いた場合の画質劣化についても同じ手法で検出可能である。非破壊用途では、対象となるアルミ鋳物や電子部品などが動くことはないが、放射線撮影装置1が動くことによって画質が劣化することが想定される。
【0090】
<コントローラー5の動作>
以下、コントローラー5の動作について説明する。
コントローラー5においては、再構成画像生成処理を実行することにより、放射線撮影装置1から送信されたモアレ縞画像に基づいて再構成画像を生成するとともに、上述の回帰分析により得られる複数画像間の関係性を示す指標値に基づいて再構成画像に放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を生じているかを判定する。
【0091】
図18に、コントローラー5の制御部51により実行される再構成画像生成処理のフローチャートを示す。再構成画像生成処理は、制御部51と記憶部55に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0092】
まず、制御部51は、通信部54により放射線撮影装置1の本体部18から受信した一連のモアレ縞画像をRAMに記憶し、受信した一連のモアレ縞画像に基づいて、再構成画像を生成する(ステップS11)。
具体的に、制御部51は、M枚の被写体モアレ縞画像及びM枚のBGモアレ縞画像に基づいて、吸収画像、微分位相画像、小角散乱画像の3種類の再構成画像を生成する。
【0093】
上記3種類の再構成画像は、例えば、国際公開第2012/029340号パンフレットに記載のように、公知の手法により生成することができる。
まず、被写体モアレ縞画像とBGモアレ縞画像に、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理、X線強度変動補正等が施される。次いで、補正後の被写体モアレ縞画像に基づいて、被写体有りの3種類の再構成画像(吸収画像、微分位相画像、小角散乱画像)が生成される。また、補正後のBGモアレ縞画像に基づいて、被写体無しの3種類の再構成画像(吸収画像、微分位相画像、小角散乱画像)が生成される。
具体的には、M枚のモアレ縞画像のモアレ縞を加算することにより吸収画像が生成される。また、縞走査法の原理を用いてモアレ縞の位相が計算され、微分位相画像が生成される。また、縞走査法の原理を用いてモアレ縞のVisibilityが計算され(Visibility=振幅÷平均値)、小角散乱画像が生成される。
【0094】
次いで、被写体無しの再構成画像を用いて、被写体有りの再構成画像から、モアレ縞の位相の除去と、画像ムラ(アーチファクト)を除去するための補正処理が行われ、最終的な再構成画像が生成される。
例えば、被写体有りの再構成画像が微分位相画像である場合には、被写体有りの微分位相画像の各画素の信号値から被写体無しの微分位相画像の対応する(同じ位置の画素)の信号値を減算する処理が行われる(参照文献4;Timm Weitkamp,Ana Diazand,Christian David, franz Pfeiffer and Marco Stampanoni, Peter Cloetens and Eric Ziegler,X-ray Phase Imaging with a grating interferometer,OPTICSEXPRESS,Vol.13, No.16,6296-6004(2005)、参照文献5;Atsushi Momose, Wataru Yashiro, Yoshihiro Takeda, Yoshio Suzuki and Tadashi Hattori, Phase Tomography by X-ray Talbot Interferometry for Biological Imaging, Japanese Journal of Applied Physics, Vol.45, No.6A, 2006, pp.5254-5262(2006)参照)。
被写体有りの再構成画像が吸収画像、小角散乱画像である場合には、参照文献6に記載されているように、被写体有りの再構成画像の各画素の信号値を被写体無しの再構成画像の対応する画素の信号値で除算する割り算処理が行われる(参照文献6;F.Pfeiffer, M.Bech,O.Bunk, P.Kraft, E.F.Eikenberry, CH.Broennimann,C.Grunzweig, and C.David,Hard-X-ray dark-field imaging using a grating interferometer, nature materials Vol.7,134-137(2008))。
【0095】
次いで、制御部51は、ステップS11で生成された吸収画像を微分処理して微分吸収画像を生成するとともに、小角散乱画像を微分処理して微分小角散乱画像を生成する(ステップS12)。
【0096】
次いで、制御部51は、微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像に回帰分析前の前処理を施す(ステップS13)。
【0097】
ステップS13においては、前処理として、回帰分析の対象画素の抽出及びビニング処理等を行う。
【0098】
再構成画像生成処理では、再構成画像に生じている放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出するために、上述した微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像の関係性の変化を利用するが、被写体が複数の素材で構成される場合、素材毎に画像間の関係性が変わるため、相関が低下し、また関係性の変化がランダムとなり、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出できないか、または検出が安定しない要因となる。そのため、回帰分析は、できるだけ組成が同じ画素データのみを使用することが好ましい。
【0099】
例えば、被写体が人体のように複雑な組織で構成される場合は、骨または皮膚表面を描画している画素を抽出して回帰分析の対象とすることが適している。骨と皮膚表面は、微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像の全てでコントラストが得られ、かつ三つの画像間に一定の関係性を有する。また骨の場合は骨梁構造、皮膚の場合は皺などによって信号が大きく変化するため、関係性の変化を検出し易い。
骨部を抽出するためには小角散乱画像の信号を使用すると良い。小角散乱画像は骨で強い信号が得られ、軟部はコントラストが付かないため、軟部の厚みが変化しても安定して骨だけを抽出することができる。また、皮膚と空気の境界は、微分位相画像や小角散乱画像で非常に強いコントラストが得られ、周辺は空気であるため信号がフラットであることを利用すれば容易に検出することができる。非破壊検査の場合においても、できるだけ組成が同じデータのみを使用することが好ましい。
【0100】
回帰分析の対象とする画素を選別する前後で、微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像に対してビニング処理またはフィルター処理を施すことが好ましい。ビニング処理によって光量子ノイズによるばらつきを抑えることができ、線量や被写体の厚みに対しての安定性を向上させることができる。またビニング処理を使用するメリットとして計算量の低減が挙げられる。フィルター処理の場合、周波数フィルターまたは空間フィルターを用いて画像をぼやかすことで同様の効果が得られる。
【0101】
また、回帰分析の対象としてノイズが強い領域を使用した場合、画像間の関係性はランダム成分が支配的となり、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を正しく検出できなくなる。そこで、前処理において、ノイズが強い画素(ノイズ画素)を抽出し、抽出されたノイズ画素を回帰分析の対象から除外しておくことが好ましい。ノイズ画素を抽出する手法としては、特に限定されないが、例えば、BGモアレ縞画像の各画素の位相誤差σΦ(x,y)を求め、予め定められた閾値よりも位相誤差σΦ(x,y)の値が大きい画素をノイズ画素として抽出することができる。
位相誤差σΦ(x,y)は、下記の式により定義できる。
【数1】
【数2】
【数3】
ここで、IはX線強度信号値、x,yはモアレ縞画像の2次元座標を表す。Mは縞走査回数である。αは、放射線検出器16の感度に関わる係数(以降、感度係数と呼ぶ)であり、X線フォトンを検出器信号に変換する係数である。感度係数はX線エネルギーに依存する。
【0102】
また、被写体モアレ縞画像とBGモアレ縞画像を同時に撮影することはできないため、それぞれ別個に撮影を行うが、これらの撮影間で撮影条件(格子配置等)が変化した場合、微分位相画像にアーチファクトが出てしまう。その場合、微分位相画像と他の画像の関係性に統計誤差が含まれ、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を正しく検出できなくなる可能性がある。そこで、回帰分析を行う前に、予め撮影条件の変化に起因するアーチファクトの補正処理をしておくことが好ましい。撮影条件の変化に起因するアーチファクトの補正処理としては、例えば、特開2012−170618号公報に記載されている、一次関数による補正、二次関数による補正等を用いることができる。なお、X線の入射角の影響を低減させるため湾曲させた格子を用いる場合は、曲率の変化などが懸念され、3次関数以上の高次関数で補正しても良い。
【0103】
前処理が終了すると、制御部51は、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化の検出処理を行う(ステップS14)。
ステップS14においては、上述のように、微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像のうち二つを一組として単回帰分析を行い、二つの画像間の関係性を示す指標値、例えば、回帰直線の傾きa1、決定係数R、回帰直線を基準としたデータの標準偏差σ、基準直線を基準としたデータの標準偏差σ等を算出する。そして、算出した指標値に基づいて、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化の検出を行う。具体的には、算出した指標値と記憶部55に記憶されている予め定められた基準値との差の絶対値、又は算出した指標値を基準値で割った変化率が予め定められた閾値以上である場合に、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化が検出されたと判定する。
または、上述のように、微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像のうち二つを一組として、複数組の指標値を組み合わせた指標(例えば、複数の指標値の二乗和平均平方根等)が予め定められた閾値以上である場合、或いは、予め定められた基準値との差の絶対値又は算出した指標値を基準値で割った変化率が予め定められた閾値以上である場合に、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化が検出されたと判定することとしてもよい。
または、上述のように、微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像の三つの画像を一組として重回帰分析を行い、重回帰係数や重回帰式との誤差や決定係数を三つの画像間の関係性を示す指標値として算出し、算出した指標値に基づいて、単回帰と同様の手法により放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出することとしてもよい。
【0104】
検出処理の結果、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化が検出された場合(ステップS15;YES)、制御部51は、表示部53に再構成画像及び放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化が生じている旨の警告を表示し(ステップS16)、ステップS18に移行する。
検出処理の結果、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化が検出されなかった場合(ステップS15;NO)、制御部51は、表示部53に再構成画像を表示し(ステップS17)、ステップS18に移行する。なお、表示部53には、再構成画像や警告とともに、併せて、再構成画像を保存することを指示するための保存ボタンと、再構成画像を保存せずに削除することを指示するための削除ボタンとが表示される。
【0105】
このように、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化が検出された場合、再構成画像とともに、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化が生じている旨の警告を表示することで、撮影技師等の操作者は、画質劣化が生じていること及びその原因が放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動であることを認識することができる。その結果、例えば、被写体が動かないように注意を促したり固定したりして再撮影を行う等の適切な対処を行うことができる。また、警告が表示されていないが目視で画質劣化を認識した場合、操作者は、その原因が放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動以外のものであることを知ることができるので、例えば、被写体のポジショニング(位置や角度)を変えて再撮影を行う等の適切な対処を行うことができる。
【0106】
ステップS18において、制御部51は、操作部52により再構成画像の保存が指示されたか又は削除が指示されたかを判断する。
操作部52により再構成画像の保存が指示された場合(ステップS18;YES)、制御部51は、再構成画像及び一連のモアレ縞画像を患者情報に対応付けて記憶部55に保存し(ステップS19)、再構成画像生成処理を終了する。
操作部52により再構成画像の削除が指示された場合(ステップS18;NO)、制御部51は、再構成画像及び一連のモアレ縞画像をRAMから削除し(ステップS20)、再構成画像生成処理を終了する。
【0107】
以上説明したように、コントローラー5の制御部51は、微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像のうち少なくとも二つの画像の信号値(画像データ)について回帰分析を行って、画像間の関係性を示す指標値を算出し、算出した指標値に基づいて、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する。
例えば、制御部51は、微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像のうち二つの画像を一組として、少なくとも一組の画像について単回帰分析を行って、画像間の関係性を示す指標値、例えば、回帰係数、決定係数、回帰式を基準とした標準偏差、相関係数、回帰式との誤差を算出する。そして、算出した指標値と、予め放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動がない画像データから求めた指標値(基準値)との差又は算出した指標値を基準値で除算した変化率に基づいて、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出する。
【0108】
従って、マーカー等の特殊な器具を用いることなく、画像データから、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出することが可能となる。
【0109】
また、被写体が人体である場合、回帰分析の対象とする画像から骨部の画素を抽出し、抽出された骨部の画素データのみを利用して回帰分析を行って放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出することで、安定した検出を行うことが可能となる。
【0110】
また、回帰分析の対象とする画像に対して、回帰分析を行う前にビニング処理またはフィルター処理を施しておくことで、光量子ノイズによるばらつきを抑えることができ、線量や被写体の厚みに対しての検出の安定性を向上させることができる。
【0111】
また、回帰分析の対象とする画像からノイズ画素を抽出し、抽出されたノイズ画素を回帰分析の対象から除外しておくようにすることで、被写体の動きを精度良く検出することが可能となる。
【0112】
また、放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化が検出された場合に、表示部53に警告を表示するようにすることで、生成された再構成画像に画質劣化が生じていること、及びその原因が被写体の相対的な位置変動によるものであることを操作者が認識することができるので、例えば、被写体が動かないように注意を促したり固定したりして再撮影を行う等の、適切な対処を行うことが可能となる。
【0113】
なお、上述した本実施形態における記述は、本発明に係る好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0114】
例えば、上記実施形態では、撮影時にマルチスリット12を第1格子14及び第2格子15に対して移動させる方式のタルボ・ロー干渉計を用いた放射線撮影装置を例にとり説明したが、本発明は、マルチスリット12又は第1格子14又は第2格子15の何れか又はそのうちの二つの格子を移動させる方式のタルボ・ロー干渉計を用いた放射線撮影装置に適用してもよい。また、本発明は、第1格子14又は第2格子15の何れかを他の格子に対して移動させる方式のタルボ干渉計を用いた放射線撮影装置に適用してもよい。
【0115】
また、上記実施形態においては、マルチスリット12、第1格子14及び第2格子15を一次元格子とした放射線撮影システムを例にとり説明したが、本発明は、二次元格子を用いて二次元状に縞走査を行う放射線撮影システムに適用することも可能である。
【0116】
また、上記実施形態においては、微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像の間の関係性の変化を用いて、被写体と放射線撮影装置1の相対的な位置変動による画質劣化を検出する場合について説明したが、微分位相画像を積分した位相画像(PH)と、吸収画像(AT)と小角散乱画像(SC)の間にも一定の関係性があり、位置変動による画質劣化が生じた場合、上述した微分画像間(微分位相画像と、微分吸収画像と、微分小角散乱画像の間)の関係性と同様に、被写体の動きとモアレ縞の位相に応じて関係性が変化する。そのため、微分画像の代わりに、位相画像と吸収画像と小角散乱画像の少なくとも二つ(重回帰分析を用いる場合は三つ)の画像間の関係性の変化を用いて放射線撮影装置1と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出しても良い。
【0117】
また、特表2009−543080号公報に記載されているような、複数のライン型検出器と複数のライン型格子を組み合わせた放射線撮影装置での撮影により得られた画像おいても、本実施形態に記載した方法で放射線撮影装置と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出することが可能である。この装置構成では、被写体を動かすか、放射線撮影装置を動かしてスキャンする必要があり、被写体を搬送する装置が変動したり、放射線撮影装置をスキャンする際に変動したりすることが想定される。この装置構成の場合、複数のライン検出器で逐次的に取得されるモアレ縞データは一次元となるが、それらを繋ぎ合せて二次元相当の画像が得られる。一次元データから求めた微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像の一次元データに対して回帰分析を行って、放射線撮影装置と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出しても良いし、二次元に繋ぎ合せたモアレ縞画像から微分位相画像、微分吸収画像、微分小角散乱画像を用いて回帰分析を行って、放射線撮影装置と被写体の相対的な位置変動による画質劣化を検出しても良い。ただし、一次元データの取得タイミングの誤差や搬送方向または装置のスキャン方向の速度変化などにより、ライン毎に搬送方向または装置のスキャン方向のずれが発生する場合は、前者のライン毎に処理した方がより正確に動きを検出できるため好ましい。
【0118】
また、縞走査しながら複数枚のモアレ縞データを取得し、これを被写体に対する角度を変えながらデータを収集し再構成処理することでCT画像やトモシンセシス画像を作成することが可能であるが、各角度毎のデータに対して本実施形態に記載した方法で被写体の動きを検出することも可能である。
【0119】
また、上記実施形態においては、三種の再構成画像を生成する場合について説明したが、少なくとも二種の再構成画像を生成する放射線撮影システムであれば本発明を適用することが可能ある。
【0120】
また、上記実施形態においては、3つの格子を用いた装置構成について説明したが、X線の可干渉性が十分である場合、マルチスリット12を使用しなくても良く、この場合においても本発明を適用することが可能ある。マルチスリット12を使用しない装置例としてタルボ干渉計があり、前述した参照文献3に記載されている。
【0121】
また、自己像の周期が放射線検出器16の画素サイズの2倍以上となり、自己像を放射線検出器16で直接観測できる装置構成の場合は、第2格子15を使用しなくても良い。この場合、複数枚の自己像画像を撮影し、自己像の強度変化から縞走査の原理に基づく計算により微分吸収画像、小角散乱画像、吸収画像を取得可能である。画素サイズの2倍以上の周期を持つ自己像と、画素サイズより小さい周期の自己像と第2格子15の周期の包絡線であるモアレ縞は本質的に同じものであり、被写体の動きによる誤差や画像間の関連性の変化は同じである。そのため自己像を直接観測する装置構成においても本発明を適用することが可能ある。
【0122】
また、参照文献7(特開2012−085995号公報)に記載されているような吸収型格子の投影を利用する装置構成としても良い。例えば、第1格子14に吸収型格子を用いて、第1格子14の投影によって強度が変調された縞画像を複数枚の撮影し、強度変化から縞走査の原理に基づく計算により微分吸収画像、小角散乱画像、吸収画像を取得可能である。吸収格子の投影による周期パターンであってもタルボ効果による自己像であっても被写体の動きが画像に与える影響は同じであり、また縞走査の原理に基づく計算の過程で発生する再構成画像の誤差のメカニズムも同じである。そのため吸収型格子の投影を利用する装置を用いても本発明を適用することが可能ある。吸収格子の投影像、タルボ効果による自己像、自己像を第2格子15で変換したモアレ縞をまとめて周期パターンと呼ぶ。
【0123】
その他、放射線撮影システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0124】
1 放射線撮影装置
11 放射線源
12 マルチスリット
12a 駆動部
13 被写体台
14 第1格子
15 第2格子
16 放射線検出器
17 保持部
17a 緩衝部材
18 本体部
181 制御部
182 操作部
183 表示部
184 通信部
185 記憶部
18a 駆動部
5 コントローラー
51 制御部
52 操作部
53 表示部
54 通信部
55 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18