特開2018-202338(P2018-202338A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-202338バイオフィルム量判定方法及び水処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-202338(P2018-202338A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】バイオフィルム量判定方法及び水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20181130BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   C02F1/44 C
   C02F1/44 A
   B01D65/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-111790(P2017-111790)
(22)【出願日】2017年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】岩本 健輔
(72)【発明者】
【氏名】松友 伸司
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006JA53Z
4D006JA57Z
4D006JA64Z
4D006KC02
4D006KC16
4D006KD30
4D006KE03P
4D006KE14P
4D006KE30Q
4D006LA06
4D006PA01
4D006PB02
(57)【要約】
【課題】バイオフィルム生成初期の段階でバイオファウリングを検知することが可能な、バイオフィルム量判定方法及び水処理システムを提供する。
【解決手段】供給水W13を透過水W20と濃縮水W30とに分離する、ろ過膜モジュール10と、ろ過膜モジュール10で分離された濃縮水W30が通過する濃縮水ラインL3と、濃縮水ラインL3に接続され、濃縮水W50を系外へ排出する濃縮排水ラインL5と、を備える水処理システム1で用いられる判定方法であって、ろ過膜モジュール10の自動間欠洗浄時に、濃縮排水ラインL5において、洗浄排水として系外に排出される濃縮水W50のATP(アデノシン−5’−三リン酸)値を測定し、測定したATP値に基づいて、系内に発生したバイオフィルム量を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給水を透過水と濃縮水とに分離する、ろ過膜モジュールと、
前記ろ過膜モジュールで分離された濃縮水が通過する濃縮水ラインと、
前記濃縮水ラインに接続され、濃縮水を系外へ排出する濃縮排水ラインと、を備える水処理システムで用いられる判定方法であって、
前記ろ過膜モジュールの自動間欠洗浄時に、前記濃縮排水ラインにおいて、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のATP(アデノシン−5’−三リン酸)値を測定し、測定した前記ATP値に基づいて、系内に発生したバイオフィルム量を判定する、バイオフィルム量判定方法。
【請求項2】
前記ろ過膜モジュールの自動間欠洗浄時に、前記濃縮排水ラインにおいて、前記ATP値に加えて、更に、前記濃縮水のAMP(アデノシン−一リン酸)値を測定し、測定した前記ATP値及び前記AMP値に基づいて、系内に発生した前記バイオフィルム量を判定する、請求項1に記載のバイオフィルム量判定方法。
【請求項3】
前記バイオフィルム量に基づいて、自動間欠洗浄のプログラムの変更の必要性を判定する、請求項1又は2に記載のバイオフィルム量判定方法。
【請求項4】
前記ATP値の測定時には、前記濃縮排水ライン内の濃縮水をメンブレンフィルタで濾し、前記メンブレンフィルタ面上のATP量を測定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバイオフィルム量判定方法。
【請求項5】
供給水を透過水と濃縮水とに分離する、ろ過膜モジュールと、
前記ろ過膜モジュールで分離された濃縮水が通過する濃縮水ラインと、
前記濃縮水ラインに接続され、濃縮水を系外へ排出する濃縮排水ラインと、
前記濃縮排水ラインに設置され、前記ろ過膜モジュールの自動間欠洗浄時に、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のATP(アデノシン−5’−三リン酸)値を測定するATP測定部と、
測定した前記ATP値に基づいて、系内に発生したバイオフィルム量を判定する判定部と、を備える水処理システム。
【請求項6】
前記濃縮排水ラインに設置され、前記ろ過膜モジュールの自動間欠洗浄時に、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のAMP(アデノシン−一リン酸)値を測定するAMP測定部を更に備え、
前記判定部が、測定した前記ATP値及び前記AMP値に基づいて、系内に発生した前記バイオフィルム量を判定する、請求項5に記載の水処理システム。
【請求項7】
供給水を前記ろ過膜モジュールに向けて供給する供給水ラインと、
前記供給水ライン及び前記濃縮水ラインのうちの一つ以上の供給水が流通するラインに洗浄剤を添加する洗浄剤添加装置と、
前記バイオフィルム量に基づいて、前記洗浄剤添加装置による前記洗浄剤の添加を制御する制御部と、を更に備える、請求項5又は6に記載の水処理システム。
【請求項8】
前記ATP測定部は、前記濃縮排水ライン内の濃縮水をメンブレンフィルタで濾し、前記メンブレンフィルタ面上のATP量を測定する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の水処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオフィルム量判定方法及び水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、食品工場、機械工場、化学工場等の洗浄工程等においては、不純物を含まない高純度の純水が使用される。この種の純水を製造するため、水処理システムにおいて、逆浸透膜(以下、「RO膜」ともいう)を用いることにより、供給水から、塩分、重金属イオン、溶解シリカ、硝酸性窒素、細菌類、変異原性物質、有機塩素化合物等を取り除くことができる。しかし、逆浸透膜の使用においては、生物汚染による目詰まり、すなわち逆浸透膜の表面におけるバイオフィルムの生成によって逆浸透膜が閉塞してしまうバイオファウリングの問題が存在する。
【0003】
上記の水処理システムにおいては、バイオフィルムの生成の度合いに応じて、逆浸透膜を間欠的に洗浄(以下、「CIP洗浄」ともいう)する必要がある。この生成の度合いを計測する手段として、例えば、特許文献1は、逆浸透膜を含む圧力容器内の汚れを判断するために、流路差圧や膜間差圧等の差圧を用いる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−126635号公報
【特許文献2】特開2014−188385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、差圧を用いてバイオファウリングの度合いを判断する場合には、差圧の上昇が検知できた時点では、既に、バイオファウリングがある程度以上進行しているケースが多く見られる。
【0006】
この点、特許文献2は、差圧の代わりに、被処理水や濃縮水中のATP(アデノシン−5’−三リン酸)値を用いて、バイオファウリングの進行状態を把握する技術を開示している。
【0007】
しかし、特許文献2に係る技術においては、被処理水や濃縮水中のATP値が小さいために、特許文献1に係る発明と同様に、バイオフィルム生成初期の段階では、バイオファウリングを検知できないという問題がある。
【0008】
従って、本発明は、バイオフィルム生成初期の段階でバイオファウリングを検知することが可能な、バイオフィルム量判定方法及び水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、供給水を透過水と濃縮水とに分離する、ろ過膜モジュールと、前記ろ過膜モジュールで分離された濃縮水が通過する濃縮水ラインと、前記濃縮水ラインに接続され、濃縮水を系外へ排出する濃縮排水ラインと、を備える水処理システムで用いられる判定方法であって、前記ろ過膜モジュールの自動間欠洗浄時に、前記濃縮排水ラインにおいて、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のATP(アデノシン−5’−三リン酸)値を測定し、測定した前記ATP値に基づいて、系内に発生したバイオフィルム量を判定する、バイオフィルム量判定方法に関する。
【0010】
また、上記のバイオフィルム量判定方法において、前記ろ過膜モジュールの自動間欠洗浄時に、前記濃縮排水ラインにおいて、前記ATP値に加えて、更に、前記濃縮水のAMP(アデノシン−一リン酸)値を測定し、測定した前記ATP値及び前記AMP値に基づいて、系内に発生した前記バイオフィルム量を判定することが好ましい。
【0011】
また、上記のバイオフィルム量判定方法において、前記バイオフィルム量に基づいて、自動間欠洗浄のプログラムの変更の必要性を判定することが好ましい。
【0012】
また、上記のバイオフィルム量判定方法において、前記ATP値の測定時には、前記濃縮排水ライン内の濃縮水をメンブレンフィルタで濾し、前記メンブレンフィルタ面上のATP量を測定することが好ましい。
【0013】
また、本発明は、供給水を透過水と濃縮水とに分離する、ろ過膜モジュールと、前記ろ過膜モジュールで分離された濃縮水が通過する濃縮水ラインと、前記濃縮水ラインに接続され、濃縮水を系外へ排出する濃縮排水ラインと、前記濃縮排水ラインに設置され、前記ろ過膜モジュールの自動間欠洗浄時に、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のATP(アデノシン−5’−三リン酸)値を測定するATP測定部と、測定した前記ATP値に基づいて、系内に発生したバイオフィルム量を判定する判定部と、を備える水処理システムに関する。
【0014】
また、上記の水処理システムにおいて、前記濃縮排水ラインに設置され、前記ろ過膜モジュールの自動間欠洗浄時に、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のAMP(アデノシン−一リン酸)値を測定するAMP測定部を更に備え、前記判定部が、測定した前記ATP値及び前記AMP値に基づいて、系内に発生した前記バイオフィルム量を判定することが好ましい。
【0015】
また、上記の水処理システムにおいて、供給水を前記ろ過膜モジュールに向けて供給する供給水ラインと、前記供給水ライン及び前記濃縮水ラインのうちの一つ以上の供給水が流通するラインに洗浄剤を添加する洗浄剤添加装置と、前記バイオフィルム量に基づいて、前記洗浄剤添加装置による前記洗浄剤の添加を制御する制御部と、を更に備えることが好ましい。
【0016】
また、上記の水処理システムにおいて、前記ATP測定部は、前記濃縮排水ライン内の濃縮水をメンブレンフィルタで濾し、前記メンブレンフィルタ面上のATP量を測定することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、バイオフィルム生成初期の段階でバイオファウリングを検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る水処理システムの全体構成図である。
図2】洗浄排水中のATP値の経時変化を示すグラフである。
図3】本発明の第2実施形態に係る水処理システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態である水処理システム1について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の水処理システム1の全体構成図である。
【0020】
図1に示すように、水処理システム1は、洗浄剤添加装置5と、加圧ポンプ8と、インバータ9と、逆浸透膜モジュール(以下、後述のUF膜モジュールと共に、「ろ過膜モジュール」とも総称する)10と、定流量弁12と、ATP測定部14と、AMP測定部16と、排水弁17と、流量センサFMと、制御部30と、を備える。なお、制御部30と被制御対象機器との電気的接続線の図示については、省略している。
【0021】
水処理システム1は、ラインとして、供給水ラインL1と、透過水ラインL2と、濃縮水ラインL3と、循環水ラインL4と、濃縮排水ラインL5と、を備える。「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、その由来(出所)やその水質によらず、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3又は循環水ラインL4を流通する水を、「供給水」ともいい、濃縮水ラインL3、循環水ラインL4又は濃縮排水ラインL5を流通する水を、「濃縮水」ともいう。
【0022】
供給水ラインL1は、供給水W11〜W13を逆浸透膜モジュール10に向けて供給するラインである。供給水ラインL1は、上流側から下流側に向けて、第1供給水ラインL11と、第2供給水ラインL12とを有する。
【0023】
第1供給水ラインL11の上流側の端部は、原水W11の水源2に接続されている。第1供給水ラインL11の下流側の端部は、接続部J1において、第2供給水ラインL12及び循環水ラインL4に接続されている。
【0024】
第2供給水ラインL12の上流側の端部は、接続部J1に接続されている。第2供給水ラインL12の下流側の端部は、逆浸透膜モジュール10の一次側入口ポートに接続されている。第2供給水ラインL12には、洗浄剤添加装置5、及び、加圧ポンプ8が、上流側から下流側に向けてこの順で設けられる。
【0025】
洗浄剤添加装置5は、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3及び循環水ラインL4のうちの一つ以上の供給水が流通するラインに洗浄剤を添加する装置である。本実施形態においては、洗浄剤添加装置5は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水W12に洗浄剤を添加することにより、供給水W13を得る装置である。洗浄剤添加装置5は、制御部30と電気的に接続されている。なお、供給水W12に対する洗浄剤の添加量や供給水W12の水質によらず、洗浄剤添加装置5の洗浄剤添加位置よりも下流側で、逆浸透膜モジュール10よりも上流側の供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する水を「供給水W13」ともいう。
【0026】
本実施形態においては、洗浄剤添加装置5は、逆浸透膜モジュール10に発生したバイオフィルムを洗浄するために、間欠的に洗浄剤を添加する。洗浄剤の例としては、クロラミン等の結合塩素を挙げることができる。
【0027】
加圧ポンプ8は、供給水W13を吸入し、逆浸透膜モジュール10に向けて圧送(吐出)する装置である。加圧ポンプ8には、インバータ9から周波数が変換された駆動電力が供給される。加圧ポンプ8は、供給(入力)された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0028】
インバータ9は、加圧ポンプ8に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。インバータ9は、制御部30と電気的に接続されている。インバータ9には、制御部30から指令信号が入力される。インバータ9は、制御部30により入力された指令信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を加圧ポンプ8に出力する。
【0029】
供給水W13は、加圧ポンプ8を介して逆浸透膜モジュール10に供給される。また、供給水W13(及びW12)は、供給水W11及び循環水W40(後述)からなる。
【0030】
逆浸透膜モジュール10は、供給水W13を透過水W20と濃縮水W30とに分離する設備である。詳細には、逆浸透膜モジュール10は、加圧ポンプ8から吐出された供給水W13を、溶存塩類が除去された透過水W20と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W30とに膜分離処理する設備である。逆浸透膜モジュール10は、単一又は複数の逆浸透膜エレメント(図示せず)を備える。逆浸透膜モジュール10は、これら逆浸透膜エレメントにより供給水W13を膜分離処理し、透過水W20と濃縮水W30とを製造する。
【0031】
透過水ラインL2は、逆浸透膜モジュール10で分離された透過水W20を送出するラインである。透過水ラインL2の上流側の端部は、逆浸透膜モジュール10の二次側ポートに接続されている。透過水ラインL2の下流側の端部は、貯留タンク(図示せず)に接続されている。透過水ラインL2には、流量センサFMが設けられる。
【0032】
流量センサFMは、透過水ラインL2を流通する透過水W20の流量を検出する機器である。流量センサFMは、制御部30と電気的に接続されている。流量センサFMで検出された透過水W20の流量(以下、「検出流量値」ともいう)は、制御部30にパルス信号として送信される。
【0033】
濃縮水ラインL3は、逆浸透膜モジュール10で分離された濃縮水W30が流通するラインである。濃縮水ラインL3の上流側の端部は、逆浸透膜モジュール10の一次側出口ポートに接続されている。また、濃縮水ラインL3の下流側は、接続部J2において、循環水ラインL4及び濃縮排水ラインL5に分岐している。
【0034】
循環水ラインL4は、濃縮水ラインL3に接続され、供給水としての濃縮水(循環水W40)を供給水ラインL1に返送するラインである。本実施形態においては、循環水ラインL4は、濃縮水ラインL3を流通する濃縮水W30を循環水W40として、供給水ラインL1における加圧ポンプ8よりも上流側(詳細には、洗浄剤添加装置5よりも上流側)に返送(循環)させるラインである。循環水ラインL4の上流側の端部は、接続部J2において濃縮水ラインL3に接続されている。また、循環水ラインL4の下流側の端部は、接続部J1において、供給水ラインL1に接続されている。循環水ラインL4には、定流量弁12が設けられる。
【0035】
定流量弁12は、循環水ラインL4を流通する循環水W40の流量を所定の一定流量値に保持するように調節する。定流量弁12において保持される「一定流量値」とは、一定流量値に幅がある概念であり、定流量弁12における目標流量値のみに限られない。例えば、定流量機構の特性(例えば、材質や構造に起因する温度特性等)を考慮して、定流量弁における目標流量値に対して、±10%程度の調節誤差を有するものを含む。定流量弁12は、補助動力や外部操作を必要とせずに一定流量値を保持するものであり、例えば、水ガバナの名称で呼ばれるものが挙げられる。なお、定流量弁12は、補助動力や外部操作により動作して、一定流量値を保持するものでもよい。
【0036】
濃縮排水ラインL5は、濃縮水ラインL3に接続され、濃縮排水W50としての濃縮水を系外へ排出するラインである。本実施形態においては、濃縮排水ラインL5は、接続部J2において濃縮水ラインL3に接続され、逆浸透膜モジュール10で分離された濃縮水W30を、濃縮排水W50として装置外(系外)に排出するラインである。濃縮排水ラインL5には、ATP測定部14と、AMP測定部16と、排水弁17が設けられる。
【0037】
ATP測定部14は、逆浸透膜モジュール10の洗浄時に、濃縮排水ラインL5において、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のATP値を測定し、測定値を制御部30に送信する。ATP値の測定方法としては、例えば、以下の方法を用いることが可能である。すなわち、濃縮水に対し、塩化ベンザルコニウム等の細胞溶解液を注入して、濃縮水に含まれる生菌の細胞を溶解する。更に、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、及び酢酸マグネシウムのうちのいずれかを濃縮水に注入して、溶解した細胞に含まれていたATPを発光させ、この発光の強度に基づいて、ATP値を算出することが可能である。このATP値は、洗浄排水に含まれる生菌の量に比例するため、ATP値が小さいほど、水処理システム1に備わる配管の内面や、逆浸透膜モジュール10の逆浸透膜面へのバイオフィルム生成量は少ないと判断される。ATP値が小さい状態が継続していると、バイオフィルム生成の抑制が出来ていると判断することが可能である。なお、ATP値の測定は、洗浄排水の排出開始初期等、所定のタイミングで行うとよい。また、ATP値の測定は、ATP測定部14が自動的に実行してもよく、手動で実行してもよい。
【0038】
AMP測定部16は、逆浸透膜モジュール10の洗浄時に、濃縮排水ラインL5において、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のAMP値を測定し、測定値を制御部30に送信する。AMP値の測定方法としては、例えば、以下の方法を用いることが可能である。すなわち、ATP値の測定方法と同様に、濃縮水に対し、塩化ベンザルコニウム等の細胞溶解液を注入して、濃縮水に含まれる菌細胞を溶解した後、例えば、ホスホエノールピルビン酸又はピロリン酸を注入することにより、AMPをATPに変換する。その後、ATP値の測定方法と同様に、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、及び酢酸マグネシウムのうちのいずれかを濃縮水に注入して、溶解した生菌の細胞に含まれていたATPと、AMPが変換されたATPとを発光させ、この発光の強度に基づいて、総ATP値を算出する。この総ATP値から、ATP測定部14によって測定された生菌のみに由来するATP値を差し引く。AMPは死菌にも含まれるため、AMPを考慮することにより、死菌も含めた形でのATP値の評価が可能となる。なお、AMP値の測定は、洗浄排水の排出開始初期等、所定のタイミングで行うとよい。また、AMP値の測定は、AMP測定部16が自動的に実行してもよく、手動で実行してもよい。
逆浸透膜モジュール10の洗浄が進み、死菌が増えていくと、ATP値/AMP値のバランスが変化するため、このバランスに基づいて、生菌数だけではなく死菌数も考慮することにより、殺菌の是非についてより詳細に確認することが可能となる。
【0039】
更に、とりわけ洗浄排水中のATP含有量やAMP含有量が少ない場合には、ATP測定部14及びAMP測定部16でメンブレンフィルタを用いることも可能である。具体的には、例えば、洗浄開始から所定時間経過後の洗浄排水を採取し、採取したサンプル100mLを0.1μmメンブレンフィルタで濾し取り、メンブレンフィルタの表面にATP及びAMPを濃縮させて、このATP及びAMPの量を測定してもよい。なお、メンブレンフィルタの分画分子量は、100−1000が好ましい。より好ましくは、100−500が好ましい。更により好ましくは、100−200が好ましい。とりわけ、ATPに比較するとAMPの方が分子量が小さいため、AMP値を含めた定量が必要な場合には、分画分子量が100−500以下のメンブレンフィルタを用いることが好ましい。
【0040】
排水弁17は、濃縮排水ラインL5から装置外に排出される濃縮排水W50の流量を調節する弁である。排水弁17は、制御部30と電気的に接続されている。排水弁17の弁開度は、制御部30から送信される駆動信号により制御される。制御部30から電流値信号(例えば、4〜20mA)を排水弁17に送信して、弁開度を制御することにより、濃縮排水W50の排水流量を調節することができる。
【0041】
制御部30は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(図示せず)により構成される。制御部30において、マイクロプロセッサのCPUは、メモリから読み出した所定のプログラムに従って、水処理システム1に係る各種の制御を実行する。以下、制御部30の機能の一部について説明する。
【0042】
制御部30は、透過水W20の流量が予め設定された目標流量値となるように、透過水W20の検出流量値(系内の物理量)をフィードバック値として、加圧ポンプ8を駆動するための駆動周波数を演算し、駆動周波数の演算値に対応する指令信号(電流値信号又は電圧値信号)をインバータ9に出力する(以下、「流量フィードバック水量制御」ともいう)流量制御部として機能する。なお、流量フィードバック水量制御における駆動周波数の演算には、例えば、速度形デジタルPIDアルゴリズムを用いることができる。
【0043】
また、制御部30は、通常運転時に、洗浄剤添加装置5に対し、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水(供給水W12)に、所定量の洗浄剤の添加を指示する洗浄剤添加制御部として機能する。
【0044】
制御部30は、ATP測定部14から、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のATP値を、AMP測定部16から、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のAMP値を受信する。また、制御部30は、受信したATP値及びAMP値に基づいて、水処理システム1の系内に発生したバイオフィルムの量を判定する。更に、制御部30は、このバイオフィルム量に基づいて、洗浄剤添加装置5を用いた自動間欠洗浄のプログラムの変更の必要性を判定する。更に、制御部30は、この判定結果に基づいて、洗浄剤添加装置5による洗浄剤の添加を制御してもよい。
【0045】
ここで、一部繰り返しとなるが、本発明に係る水処理システム1における洗浄効果の確認方法、及び、制御部30による洗浄剤添加装置5の制御方法について、図面を参照しながら詳述する。
【0046】
図2は、逆浸透膜モジュール10の洗浄前と洗浄後とでの、洗浄排水又は濃縮排水中のATP値の変化を示すグラフである。図2において、点A、点C、点Eは、洗浄前の時点におけるATP値を、点B、点Dは、洗浄後の時点におけるATP値を示す。
【0047】
点A、点C、点Eで示される洗浄前の時点においては、図1の水処理システム1における濃縮水ラインL3、延いては、濃縮排水ラインL5に対して、逆浸透膜モジュール10に発生したバイオフィルムが、ほとんど流れてきていないので、濃縮排水W50に含まれるバイオフィルムの量は、洗浄時に比較して少ない。これに伴い、洗浄排水中のATP値も、点B、点DにおけるATP値に比較すると低い値となっている。
一方で、点B及び点Dにおいては、逆浸透膜モジュール10の洗浄に伴い、濃縮水ラインL3、延いては、濃縮排水ラインL5に対して、逆浸透膜モジュール10に発生したバイオフィルムが流れてきているので、上記の点A、点C、点Eで示される洗浄前の時点に比較すると、洗浄排水としての濃縮排水W50に含まれるバイオフィルムの量は多くなる。これに伴い、洗浄排水中のATP値も、点A、点C、点EにおけるATP値に比較すると高い値となっている。
【0048】
点Bと点Dとを比較すると、共に洗浄後のATP値でありながら、点DにおけるATP値の方が点BにおけるATP値よりも低くなっているが、これは、点Dにおいて洗い流されたバイオフィルムの量が、点Bにおいて洗い流されたバイオフィルムの量よりも少ないためである。このことから、点Dの直前において逆浸透膜モジュール10に発生したバイオフィルムの量が、点Bの直前において逆浸透膜モジュール10に発生したバイオフィルムの量よりも少ないことが推察される。すなわち、点Bの時点に比較すると点Dの時点において、逆浸透膜モジュール10に発生しているバイオフィルムの量が減っていることが推察される。従って、図2に示されるように、洗浄時における洗浄排水中のATP値が減っている場合、及び、低い値で安定している場合には、現時点における間欠洗浄のプログラムに問題はなく、洗浄効果が得られていると判定することが可能である。逆に、洗浄時における洗浄排水中のATP値が増加傾向にある場合、及び、高い値で変化がない場合には、現時点における間欠洗浄のプログラムに問題があり、洗浄が追いついてないと判断することが可能である。この場合には、洗浄剤添加装置5を用いて添加する洗浄剤の濃度、洗浄時間(逆浸透膜モジュール10と洗浄剤との接触時間)、所定期間あたりの洗浄回数等を、人為的に増加することも可能であり、制御部30が洗浄剤添加装置5を制御することにより、自動的に増加することも可能である。また、洗浄剤の種類を変更することも可能である。
【0049】
以下の表1は、およそ1日に1回の頻度で逆浸透膜モジュール10を洗浄した際の、洗浄排水中のATP量とAMP量の合計の測定値、モジュール間差圧、及び透過流束の測定値を示す。
なお、洗浄剤としては、当初は結合塩素化合物を用い、4回目の洗浄時から臭素系物質を用いた。洗浄排水中のATP量とAMP量の合計の測定値としては、洗浄工程毎に測定したものを合算し、1回の洗浄での総排出量として示す。より具体的には、洗浄工程毎の洗浄排水100mLを0.2μmメンブレンフィルタで捕捉して測定したATP量及びAMP量の合計の測定値と、ろ液80μLに含まれるATP量及びAMP量の合計の測定値とを合算し、総排出水量ベースに換算している。また、測定器としては、キッコーマン(登録商標)社製のルミテスター(登録商標)PD−20を用い、試薬としては、キッコーマン(登録商標)社製のルシパック(登録商標)PENを用いた。
【0050】
【表1】
【0051】
表1から、測定回数1回目〜3回目、すなわち、洗浄剤として結合塩素化合物を用いている期間における、ATP量及びAMP量の合計の測定値は、高い値のまま変化がない。また、この期間における透過流束の初期比は、60%台に留まっており、モジュール間差圧は、0.185〜0.190MPaと高い値を推移している。これは、洗浄剤として結合塩素化合物を供給水に添加しても、その都度、新たなバイオフィルムが生成され、逆浸透膜モジュール10にバイオフィルムが付着する度合いが高止まりしているためである。これにより、透過流束は低い値に、モジュール間差圧は高い値に維持されると共に、洗浄排水に含まれるATP量及びAMP量の合計の測定値は、高い値に維持される。すなわち、表1からは、洗浄剤として結合塩素化合物を用いても、洗浄効果が得られておらず、現時点における間欠洗浄のプログラムに問題があることが示される。
【0052】
そこで、洗浄剤を臭素系物質に変更すると、測定回数4回目のデータに見られるように、測定回数3回目のデータに比較して、洗浄排水に含まれるATP量及びAMP量の合計の測定値、及び、モジュール間差圧の値は下降し、透過流束の値は上昇した。
これは、洗浄剤の変更により、逆浸透膜モジュール10に付着していたバイオフィルムが剥離し、透過流束は高い値に、モジュール間差圧は低い値に改善され、これに伴い、洗浄排水に含まれるATP量とAMP量の合計の測定値が低下したことによる。すなわち、表1から、洗浄剤を臭素系物質に変更したことにより、洗浄効果が上昇したことが示された。また、測定回数5回目のデータにも見られるように、洗浄剤として臭素系物質を用いている期間は、洗浄排水に含まれるATP量及びAMP量の合算値は、低い値に維持されることが示された。すなわち、表1から、洗浄剤として臭素系物質を用いている限りは、バイオフィルムの生成が抑制されており、この期間における間欠洗浄のプログラムには問題がなく、安定運転ができている状況であることが示された。
【0053】
本発明においては、とりわけ洗浄排水中のATP量を検出している。上記のように、洗浄排水中には、逆浸透膜モジュール10に発生したバイオフィルムが多く含まれるため、洗浄排水のATP値やAMP値を測定した場合には、例えば濃縮水W30や循環水W40のATP値やAMP値を測定した場合に比較すると、測定結果がより高い値となる。従って、洗浄排水のATP値やAMP値を測定することにより、バイオフィルム発生初期の段階、とりわけバイオフィルムの発生により、逆浸透膜モジュール10における差圧に変化が出る前の段階で、逆浸透膜モジュール10へのバイオフィルムの発生を検知することが可能となる。
【0054】
その具体例として、以下の表2は、定常運転時の濃縮水と洗浄排水とに含まれる、ATP量の測定値を示す。なお、ATP量の測定値は、1回当たりのサンプル量を80μLとして測定している。また、洗浄排水中の元々のATP量とAMP由来のATP量の合算値として、薬剤導入時及び薬剤押出時の合算値を示す。測定器としては、キッコーマン(登録商標)社製のルミテスター(登録商標)PD−20を用い、試薬としては、キッコーマン(登録商標)社製のルシパック(登録商標)PENを用いた。
【0055】
【表2】
【0056】
表2から、定常運転時における濃縮水に含まれるATP量の測定値は、50〜65RLUとなっている一方で、洗浄時における洗浄排水に含まれるATP量の測定値は、500RLU以上となっている。とりわけ、薬剤導入時に測定した洗浄排水中のATP値は、すべて、3,000RLU以上となっている。すなわち、洗浄排水を用いて測定したATP値は、定常運転時の濃縮水を用いて測定したATP値よりも遥かに高い値となっており、メンブレンフィルタを用いて濃縮する必要がないため、測定が行いやすい。また、洗浄排水を用いた場合には、定常運転時の濃縮水を用いた場合よりも遥かに高い値が検知されるため、バイオフィルム発生初期の段階、とりわけバイオフィルムの発生により、逆浸透膜モジュール10における差圧に変化が出る前の段階で、逆浸透膜モジュール10へのバイオフィルムの発生を検知することが可能となる。
【0057】
〔第1実施形態の効果〕
上述した水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
本発明のバイオフィルム量判定方法は、供給水を透過水と濃縮水とに分離する、ろ過膜モジュールと、前記ろ過膜モジュールで分離された濃縮水が通過する濃縮水ラインと、前記濃縮水ラインに接続され、濃縮水を系外へ排出する濃縮排水ラインと、を備える水処理システムで用いられる判定方法であって、ろ過膜モジュールの自動間欠洗浄時に、濃縮排水ラインにおいて、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のATP(アデノシン−5’−三リン酸)値を測定し、測定した前記ATP値に基づいて、系内に発生したバイオフィルム量を判定する。
【0058】
自動間欠洗浄時には、ろ過膜モジュールに蓄積されたバイオフィルムが、濃縮排水ラインにまとめて排出されるため、濃縮排水ラインの濃縮水は、それらのATP値よりも高いATP値を示すことが見込まれる。そこで、水処理システムの被処理水や濃縮水のATP値ではなく、この濃縮排水ラインの濃縮水のATP値を測定することにより、差圧上昇以前の段階であってバイオフィルム生成初期の段階で、バイオファウリングを検知することが可能となる。また、被処理水や濃縮水ではなく、濃縮排水ラインの濃縮水のATP値を測定することにより、高感度な測定方法を用いる必要はない。
【0059】
また、本発明のバイオフィルム量判定方法においては、ろ過膜モジュールの自動間欠洗浄時に、濃縮排水ラインにおいて、ATP値に加えて、更に、濃縮水のAMP(アデノシン−一リン酸)値を測定し、測定したATP値及びAMP値に基づいて、系内に発生したバイオフィルム量を判定する。
【0060】
これにより、ATP値とAMP値とのバランスに基づいて、生菌数だけではなく死菌数も考慮することにより、殺菌の是非について確認することが可能となる。
【0061】
また、本発明のバイオフィルム量判定方法においては、バイオフィルム量に基づいて、自動間欠洗浄のプログラムの変更の必要性を判定する。
【0062】
これにより、バイオフィルム量の増加により、ろ過膜が以前よりも汚れたことが推察される場合には、洗浄スケジュールを適切に変更することにより、ろ過膜フィルタの寿命を延ばすことが可能となる。
【0063】
また、本発明のバイオフィルム量判定方法においては、ATP値の測定時には、濃縮排水ライン内の濃縮水をメンブレンフィルタで濾し、メンブレンフィルタ面上のATP量を測定する。
【0064】
これにより、濃縮排水中のATP量が少なくても、ATP値を測定することが可能となる。
【0065】
また、本発明の水処理システムは、供給水を透過水と濃縮水とに分離する、ろ過膜モジュールと、ろ過膜モジュールで分離された濃縮水が通過する濃縮水ラインと、濃縮水ラインに接続され、濃縮水を系外へ排出する濃縮排水ラインと、濃縮排水ラインに設置され、ろ過膜モジュールの自動間欠洗浄時に、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のATP(アデノシン−5’−三リン酸)値を測定するATP測定部と、測定したATP値に基づいて、系内に発生したバイオフィルム量を判定する判定部と、を備える。
【0066】
自動間欠洗浄時には、ろ過膜モジュールに蓄積されたバイオフィルムが、濃縮排水ラインにまとめて排出されるため、濃縮排水ラインの濃縮水は、それらのATP値よりも高いATP値を示すことが見込まれる。そこで、水処理システムの被処理水や濃縮水のATP値ではなく、この濃縮排水ラインの濃縮水のATP値を測定することにより、差圧上昇以前の段階であってバイオフィルム生成初期の段階で、バイオファウリングを検知することが可能となる。また、被処理水や濃縮水ではなく、濃縮排水ラインの濃縮水のATP値を測定することにより、高感度な測定方法を用いる必要はない。
【0067】
また、本発明の水処理システムにおいては、濃縮排水ラインに設置され、ろ過膜モジュールの自動間欠洗浄時に、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のAMP(アデノシン−一リン酸)値を測定するAMP測定部を更に備え、判定部が、測定したATP値及びAMP値に基づいて、系内に発生した前記バイオフィルム量を判定する。
【0068】
これにより、ATP値とAMP値とのバランスに基づいて、生菌数だけではなく死菌数も考慮することにより、殺菌の是非について確認することが可能となる。
【0069】
また、本発明の水処理システムにおいては、供給水をろ過膜モジュールに向けて供給する供給水ラインと、供給水ライン及び濃縮水ラインのうちの一つ以上の供給水が流通するラインに洗浄剤を添加する洗浄剤添加装置と、バイオフィルム量に基づいて、前記洗浄剤添加装置による前記洗浄剤の添加を制御する制御部と、を更に備える。
【0070】
これにより、バイオフィルム量の増加により、ろ過膜が以前よりも汚れたことが推察される場合には、洗浄スケジュールを適切に変更することにより、ろ過膜フィルタの寿命を延ばすことが可能となる。
【0071】
また、本発明の水処理システムにおいては、ATP測定部は、濃縮排水ライン内の濃縮水をメンブレンフィルタで濾し、メンブレンフィルタ面上のATP量を測定する。
【0072】
これにより、濃縮排水中のATP量が少なくても、ATP値を測定することが可能となる。
【0073】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態である水処理システム1Aについて、図面を参照しながら説明する。図3は、本発明の水処理システム1Aの全体構成図である。なお、水処理システム1と同一の構成要素については、同一の符号を用いて参照すると共に、その機能の説明は省略する。
【0074】
図3に示すように、水処理システム1Aは、洗浄剤添加装置5と、加圧ポンプ8と、インバータ9と、UF膜モジュール11と、ATP測定部14と、AMP測定部16と、排水弁17と、流量センサFMと、制御部30と、を備える。なお、制御部30と被制御対象機器との電気的接続線の図示については、省略している。
【0075】
水処理システム1Aは、ラインとして、供給水ラインL1と、透過水ラインL2と、濃縮水ラインL3と、濃縮排水ラインL5と、を備える。また、その由来(出所)やその水質によらず、供給水ラインL1、又は濃縮水ラインL3を流通する水を、「供給水」ともいい、濃縮水ラインL3、又は濃縮排水ラインL5を流通する水を、「濃縮水」ともいう。
【0076】
水処理システム1Aを水処理システム1と比較すると、逆浸透膜モジュール10がUF膜モジュール11に置き換わっている点と、水処理システム1Aにおいては、循環水ラインL4が存在せず、濃縮水W30が循環水ラインL4を経て供給水ラインL1に返送されない点で異なる。
【0077】
なお、水処理システム1Aにおいては、濃縮水W30が流通する濃縮水ラインL3と、濃縮排水50が流通する濃縮排水ラインL5とを同一のラインとして扱うことも可能であるが、ここでは、説明の便宜上、別個のラインとして扱う。
【0078】
UF膜モジュール11は、供給水W13を透過水W20と濃縮水W30とに分離する設備である。詳細には、UF膜モジュール11は、加圧ポンプ8から吐出された供給水W14を、溶存塩類が除去された透過水W20と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W30とに膜分離処理する設備である。UF膜モジュール11は、単一又は複数のUF膜エレメント(図示せず)を備える。UF膜モジュール11は、これらUF膜エレメントにより供給水W13を膜分離処理し、透過水W20と濃縮水W30とを製造する。
【0079】
上記の繰り返しとなるが、この濃縮水W30は全て、供給水ラインL1に循環することなく、濃縮排水ラインL5により、濃縮排水W50として装置外(系外)に排出される。
【0080】
水処理システム1と同様に、濃縮排水ラインL5には、ATP測定部14と、AMP測定部16と、が設けられる。
【0081】
ATP測定部14は、UF膜モジュール11の洗浄時に、濃縮排水ラインL5において、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のATP値を測定し、測定値を制御部30に送信する。
【0082】
AMP測定部16は、UF膜モジュール11の洗浄時に、濃縮排水ラインL5において、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のAMP値を測定し、測定値を制御部30に送信する。
【0083】
水処理システム1と同様に、制御部30は、ATP測定部14から、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のATP値を、AMP測定部16から、洗浄排水として系外に排出される濃縮水のAMP値を受信する。また、制御部30は、受信したATP値及びAMP値に基づいて、水処理システム1の系内に発生したバイオフィルムの量を判定する。更に、制御部30は、このバイオフィルム量に基づいて、洗浄剤添加装置5を用いた自動間欠洗浄のプログラムの変更の必要性を判定する。更に、制御部30は、この判定結果に基づいて、洗浄剤添加装置5による洗浄剤の添加を制御してもよい。
【0084】
水処理システム1Aにおいても、水処理システム1と同様の、洗浄効果の確認方法、及び、制御部30による洗浄剤添加装置5の制御方法を実行することが可能である。
【0085】
〔第2実施形態の効果〕
上述した水処理システム1Aによれば、第1実施形態に係る水処理システム1と同様の効果が奏される。
【0086】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0087】
1,1A 水処理システム、5 洗浄剤添加装置、
10 逆浸透膜モジュール、11 UF膜モジュール、
14 ATP測定部、16 AMP測定部、30 制御部、
L1 供給水ライン、L2 透過水ライン、L3 濃縮水ライン、
L4 循環水ライン、L5 濃縮排水ライン、
L11 第1供給水ライン、L12 第2供給水ライン
図1
図2
図3